もう少しだけ、そばにいて

mousukoshi dake, sobani ite

もう少しだけ、そばにいて
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神128
  • 萌×220
  • 萌4
  • 中立1
  • しゅみじゃない1

38

レビュー数
23
得点
733
評価数
154
平均
4.8 / 5
神率
83.1%
著者
白野ほなみ 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

媒体
漫画(コミック)
出版社
リブレ
レーベル
クロフネコミックス
発売日
電子発売日
価格
ISBN
9784799768495

あらすじ

「晴人と、一緒に生きていきたい」

小説家の晴人とサラリーマンの晃は、
大学時代からの恋人同士で同棲中。

数年前の事故以来、
晴人は車椅子生活になったけど、
大好きな人と一緒に暮らす毎日に
ささやかな幸せを感じていた。

でも、誰よりも晃のことを想うからこそ、
晴人には『小さな秘密』があって……

誰にでも起こりうる「人生の選択」を描いた、
ボーイズ・ラブストーリー!

表題作もう少しだけ、そばにいて

晴人の恋人,(大学生→)サラリーマン
晃の恋人,(大学生→)車椅子の小説家

その他の収録作品

  • 番外編①②
  • 描き下ろし:後日談
  • 描き下ろし:エピローグ
  • あとがき

レビュー投稿数23

胸の奥の奥、深いところに響きました

ちるちるのランキング上位だったので購入しました。

表紙の絵柄とタイトルから抱いた印象とは全く違うお話でした。

生きること、と、愛すること、この2つの大切なことがらを、とても感情豊かに、リアルに描いた作品でした。

事故により下半身不随、車いす生活になった小説家の晴人。
事故で人生激変の影響を受けますが、不安定な職業ではあるけれど、小説家、なので、自分で収入を得続けることはできます。

恋人の晃は大学時代は世界を旅してまわり、将来も世界を回りたいと公言していましたが、晴人の事故をきっかけに、考えを変えて就職し、晴人を誘って同棲を始めます。

愛があるから障害を乗り越えられる、というような、感動の物語ではなく、2人それぞれ、起こる問題、抱える問題、などに、遭遇し、ひとつひとつ、対応したり、しないでやり過ごしたり、乗り越えたり、日々、選択しながら、そして相手を想いながら過ごして良く様がとても丁寧に描かれていて、考えさせられました。

晴人の日常生活の困難、苦労、体調不良など、とても細かくリアルに描かれています。限られたページ数での中で、こうしたエピソードを丁寧に描いているところが、この物語の軸にもなっていたと思います。

晴人の想い、覚悟、決意。そして、晃の想い、覚悟、決意。
お互いが大切だからこそのそれぞれの気持ちがとても、切なく、温かく、胸に響きました。

そして彼ら2人をよく理解しており、かつ、2人のどちらの立ち位置、考えとも異なる先輩がいることで、見えてくる、気づくものがありました。
それぞれが持つ愛情、行動、言葉、想い、丁寧に綴られていて、とても素敵でした。

描きおろしで、2人が高齢になってからの姿、やりとりを読むことができたのも、とてもよかったです。めでたし、めでたし、ではない、その先の2人の姿に触れることができ、感動とともに、本編終了からこの姿に至るまでの2人のあれやこれや、楽しいこと、苦しいこと、苦労したこと、乗り越えたこと、などに想いを馳せました。

読む前は、かわいらしく甘いお話なのだと予想していたのですが、読了後に、改めてタイトルを見て、そういうことか、とはっとして、改めて感動しました。


1

生きにくい世の中で、大切な人と居られること

ちるちるのランキングでお見かけし、購入しました
あらすじも読まずに買ってしまったのですが、表紙のアットホームな感じもありつつ、障害を持ちながら生きていくことの辛さ、生きにくさを感じました
BL、というだけでは表しきれない作品ですね

私自身、看護師として働いていて事故により下半身が動かず生活を制限されている方を沢山知っています
そんな方々の生活について、色々考えて退院に向け支援をしていますが、やはり細かいところでの生きにくさは残るのだなと
特に晴人くんのように、この若さで障害を背負うことは本当に辛いとおもいます
晃くんの献身、サポートにもありがたいと感じつつ、彼の人生に影響している事への後ろめたさ、、、
本当に考えさせられますね

特に2人は男性同士の恋人
いくら多様性に理解が増えてきた昨今でも、なかなか受け入れにくい部分がありますよね

そんな中でも、もう少しだけ、もう少しだけ、今を一緒に過ごしたいという2人の姿に泣いてしまいました


キスのみでエロはありません
本当に良い作品だと思います
ぜひ、色んな人に見ていただきたいです


1

もう少し、もう少し、と

会社員の晃には学生時代から付き合っている恋人がいます。
恋人の晴人は数年前に事故に遭い、後遺症から車椅子生活に。
それでも二人で支え、支えられ、穏やかな日々を送っていましたが…。

一見すると、これは障害を乗り越えて愛し合う温かな二人の物語。
けれど、読み進めていくと深みに嵌る。

本作では決して優しいだけではない、
愛だけではどうにもならない現実が描かれています。

事故後の晴人が向き合うことになる“現実”は
正直はじめて読んだときにはショックを受けました。
事故の後遺症として半身不随になった晴人は自然な排泄ができない。
暑くても汗をかくこともできないし、眠る前には神経痛に襲われる。
ささいなことがきっかけで感染症にかかり、入院することも少なくない。

健常者として生きていればまず知らない現実。
ただ、生きているだけなのにこんなにもしんどいものか。
BL作品でここまでリアル描いてしまうのか、と
著者が本作に込めた熱を感じました。

これだけでも結構な衝撃だったのに、
作中で明かされる晴人の“秘密”には打ちのめされてしまいました。

晴人にとって晃といることが幸せであると同時に、
生きることはそれほどに苦しいことだったのだ、と。

いつもは淡々としている晴人が抱える生きることへの辛さ、
それを晃にだけは伝えられなかった優しさなど色んな感情が渦巻き、
涙が出てきてしまう。

ただ日々を過ごすことも、
晴人にとってはこんなにもままならないことだらけ。
健常者にとっては何のこともないことでも、
晴人にとってはこの世界はこんなにも生き難いのだ。

だけど、そんなしんどい日々も晃の存在に救われる。
晴人の身体が自由を失ったとしても、あくまで自然体で、
恋人として晴人と一緒にいようとする晃。

今の晴人を受け容れ、ただ一緒にいられれば、と
いつも柔らかく笑って傍にいてくれる彼の温かさに癒されながらも、
彼がいなければ今頃、晴人は…とぞっとする。

晃なしには晴人は生きてこられなかっただろう。
だけど、同時にそんな晃の優しさが晴人を苦しめもする。

自分がいなければ晃は自分の夢を諦めることはなかった。
そんな葛藤に苛まれ、晃に別れを決心する晴人ですが、
愛しているからこそ晃に別れを告げずにはいられなかった
晴人の気持ちが切ない。

愛が重たくて、優しくて、それがとても苦しい。
愛し合っているからこそ、どうしようもなくなってしまった二人。

だからこそ、そんな二人を誰よりも理解して、
傍で見守ってくれる先輩の気楽さがありがたかった。
二人だけではきっと壊れてしまっていたかもしれない。
二人の糸を繋げて、修復してくれた先輩。
本作において彼は脇役などではなく、間違いなく大切な主要人物なのでした。

結果として、晴人は“秘密”を捨てきることはできませんでした。
晃にははじめからバレていたのだから実際は秘密でもなんでもないのだけれど。
それでも晴人にとって、“秘密”が希望になるというのなら
彼から“秘密”を奪うことは晃だってできないはずだ。

晴人にとっての辛い現実はこれからもなくなることはなく、
晴人が毎日を乗り越えていくためには“秘密”が必要なのだ。
でも、それでもいい。
それを持ち続けることで晴人が少しでも長く
「もう少しだけ」とほんの少し先の未来に想いを馳せてくれるなら。

願わくば「もう少しだけ」がずっと続きますように。

描き下ろしでは二人の後年が描かれ、救われた。
だけど、老いた晴人の独白に悲しいのと切ないのと、幸せと
色んな感情がないまぜになって涙が溢れて止まりませんでした。

7

地に足ついたBL

普段はハッピー甘々ラブコメを好むのですが、たまに読みたくなるタイプのどっしりと地に足ついた重めのお話です。
あくまでもフィクションですが、リアルだなあと感じました。晴人も晃もお互いを想っているだけなのに、ぶち当たる壁、壁、壁。読んでいるこちらまで苦しくなります。
そんな中ですがるような本書タイトルの切実なこと。なんて尊い願いなのでしょう。「もう少し」の積み重ねがエピローグに繋がったのだと考えると切なくて嬉しくて涙が出ました。
2人が最後まで一緒にいられてよかったです!

6

電子で読んで、紙でも買った。

SNS試し読みで読んで惹かれ、
その場で電子を購入し、
読み終わった瞬間に紙本をポチっていました。

タイトル「もう少しだけ」の意味が本当にグッとくる。

人生まるごと描いてくれる作品が好きで、
今年一番胸に刺さった。
ずっと手元に置いて何度も読み返したくなる作品です。

車椅子生活になった晴人の不自由な生活や
心情が思った以上に克明に描かれていて、
ほっこりしたタッチなのに
彼が追い詰められていく描写が本当に凄まじい。

そのため、
読者に晴人の秘密をうっすら感じさせるのも
秘密が明かされた時に晴人の選択に納得感を抱かせるのも
すごく上手いなと感じました。

個人的に今作のようなタイプのエピローグが大好きで、
彼らの人生の歩みを感じさせながら、
想像する余白を与えてくれているのがとても良いです。

「もう少しだけ」があそこまで積み重なってくれたのだな、
とわかる皺の刻まれ方に感動しました。

14

No Title

もう少しだけ、そばにいて…タイトルが持つ意味が読み終わるとまたグッとくる。
今年ベスト級かもしれない...事故で車椅子になってしまった晴人と晃の物語。ラストに向けて泣いてしまった。事故による人生の変化、障がいを抱えること、周囲の過度な気遣い、同性のパートナーに何かあってもずっと傍にいられる状況にないこと...。考えさせられることがたくさんあった。あらためて、同性婚は実現してほしいなと願う物語でした。2人の人生の物語...素晴らしかった

10

綺麗事だけではない

BLと言う枠に収まりきらない作品です。
交通事故で障害を負い車椅子生活になる
一生誰かの世話に(迷惑)になって生きていく
その誰かが最も愛する人だなんて、、、死にたい、、、その思いが胸に痛く迫ります。
愛する彼のためにたくさんのものを諦めた、、、ただ彼を守りたい、、、それでも等身大の青年が障害を持った人間を1人で抱え込むのはとても難しいことで、、、
互いに愛するが故に苦しむ二人
そんな2人の姿が、ご都合主義に走らず描かれています。
決して、楽しい気持ちで読める作品ではないですが、是非2人の愛の形と選択を観て欲しい!!

9

じっくりと読み余韻に浸る

すごい、、すごすぎる作品でした
ランキングに入っていて何となく夜中に読み始め、
ボリュームと内容の濃さにすごくじっくりと時間をかけて読みました

途中切なくて休憩を挟まないと読めなかった
当事者の2人は、どんな思いで暮らしているんだろう
自分にもまだまだ理解は足りてないから軽率に言うのは間違っているかもしれないけど、生きやすいやさしい世の中になって欲しいなと思った

エピローグがまた中々…無くても終われたと思うけどそこで終わりにせず、2人(晴人)の人生を描き切るという先生の責任?とか覚悟みたいなものを感じた

2人にとって悲劇じゃなければ、幸せな日々ならば、それが全て!
元になった描き下ろしのあきらがすごく素敵だったので本編でも見たかったな〜それがあっての2人の旅の日々なんだなあと妄想します!

14

涙でぐちゃぐちゃになりながら

あらすじを読んだ時点から涙ぐんでしまい、覚悟を決めて読み始めました。

読んでいる間中、そして読後直後の今も涙が止まらず、うまく言葉が出てこない。。

自分にも突然訪れるかもしれない未来、老いていった先の可能性の一つである
未来が、容赦なくリアルに描き出されていると感じました。

朝起きた時の体の痙攣、夜中襲ってくる神経痛、汗がかけないため下がらない熱、
尿道から管を入れての排尿と感染症の恐怖、3日に1度の3時間の排便…

そんな日々の辛さをできるだけ直視せずに、淡々とこなし生きていくということ。

そしてそんな自分のそばにいるために、大好きな旅を手放してしまった
パートナーへの罪の意識…

晴人も晃もどちらにも責任はなくて、どちらも悪くなんてなく、
ただそれでもどうしても生じてしまうすれ違いや寂しさに胸が締め付けられました。

そばにいられることが一番で、そこに後悔はないけれど
何かを捨てた、諦めたことも事実だという晃のセリフが胸に突き刺さる。

そして作中、「別れよう」と告げられた晃が取り乱し落ち込む描写がありましたが、
その言葉を告げた晴人自身が、きっと誰よりも傷ついているんですよね。

スイスの安楽死制度についても、考えさせられる描写がありました。
晃(攻)から見れば、パートナーの命を奪う恐ろしいもの。
けれど晴人にとっては、「自分が選択権を持っている」と思え、まだこれから先
したいことを思い、生きていこうと決意できる”希望”であって…

数え切れないほどの葛藤の中で、正反対の二人が選んだ”そばにいる”という選択。
そこに込められた決意や覚悟に、ただただ頭の下がる思いがした作品でした。

エピローグ、年老いて認知症になった晴人の車椅子を晃が押しながら
スイスの街を歩くシーン。もう、もう、ただただ号泣でした。

”僕らの物語は悲劇だろうか?”という最後の問いかけ。

晴人と全く同じ答えを、読者として返したい、そんなことを思って本を閉じました。

11

私たちはどう生きるべきか

考えさせられました。

男性同士の同棲カップルのお話ではありますが、このお話は全ての人にとって無関係ではありません。
ある日突然身近な人が車椅子になったら?
介護が必要になったら?
今まで何不自由なく普通に生活できていたことが出来なくなったら?

そんなとき自分はなにが出来るだろう、どうしたらいいんだろう……たくさん考えることがあります。もちろん、その状況は自分自身にも起こり得るという可能性も含めた上で。
パートナーとの関係、親と子の関係、きょうだいとの関係……色んな人と人の関係性の中でとるべき行動や受け入れなきゃいけない行動は変わっていくでしょう。
この作品を通して見える景色はきっと1つだけではない。読み終わる頃には見える世界が変わっているかも知れません。


この物語の主人の晃と晴人も、恋人同士としての当たり前の時間……バリアフリー席を気にせず映画を観たり、ベッドの上で肌を重ねたり。小説を思いっきり書ける、世界中を飛び回れる……そんなことがずっと続くと信じていました。
だけど、ある日の事故によって生活が一変します。
仕事以外の時間は晴人の生活のサポートをする晃と、事故によって下半身が不自由になってしまった晴人。恋人に献身的に尽くす晃の甲斐甲斐しい姿が眩しく映る一方、晃に無理をさせているのではと心苦しく思う晴人の心情が痛さと切なさでいっぱいでした。

BLの枠に収めるには重めのストーリーかなと思います。社会的問題も絡んでくるので仕方ないですが、それ故に読み応えは十分。パートナーシップ制度の問題、多様性の物語、介護の問題、尊厳死の問題など、リアルな問題に直結しているストーリー展開に引き込まれます。
色んな感情や葛藤、苦悩を経て、愛情や絆の深さを通して見えてくる彼らの想いは非常に共感性が高く、胸に熱く込み上げるものを感じながら読み入りました。


私たちはどう生きるべきか……そんな強いメッセージ性を感じました。
未来に目を向けた目線も確かに大事です。でも私はこの物語から、"当たり前"に生きることは"当たり前"ではない。何気なく普通に生活を過ごす時間を大事に生きて欲しい、というメッセージも感じました。
その時その時を普通に過ごせる日常は、地味であっても実は幸せなこと。その有り難みには気付きにくいけど、忘れないようにしたいものです^ ^

晴人には、晃との日々を共有して生きて欲しい。
決して生かされていると思うのではなく、生きていたいと感じる人生であればと願っています。

14

読んでほしい

泣ける、とか、感動とか、そんな安っぽいものではなくとても辛くもある作品でした。
題材についてとても誠実に向き合われ、取材された上で描かれたのだなと思います。
不覚にもたくさん泣いてしまったのですが、この涙や感情は一体なんなのか、もう何回か読んでよく考えようと思いました。
BLというジャンルにとらわれずたくさんの方に読んで欲しい作品です。
この話をBLというジャンルで描くことにもすごく意味があるのかなとも思いました。

10

No Title

ジャンルがBLなのが勿体無いかも?
括りがなければ☆4.5

晴人のルーティンがかなりリアル。普通は知らないこと(痙性や神経痛とか)を細かく書いてる。作者さんは、細かく取材をしてるんだなーと思った
それに、障害受容の精神状態や変化の表現が上手くて、かなり考えさせられる。
晃の覚悟や言動は愛がないと絶対できない。晃すごいよまじで。

BLとしての要素はあるけど…
障がいから波及する当事者の悲観や、心理的変化をリアルに表現してるからこそ、自分だったら…とか、自分もきっと…と考えてしまい、ずっしり重みが来て自分には辛かったです

4

もう少しを積み重ね

事故で車椅子生活を余儀なくされた晴人と一緒に暮らす恋人の晃のお話です。

自由に動けない身体を抱えて生きていくことの難しさが描かれていて泣きながら読みました。
尊厳死に希望を見出して、もう少しだけ生きていようと日々を過ごしていく晴人に胸が締め付けられます。

晴人が自由に生きていた晃を縛り付けてしまったと思う気持ちも、晃が晴人の傍にいたいと思う気持ちも痛いほど分かるので、お互いを想うあまりすれ違う二人に胸が痛みました。
一緒に生きることを選んでくれて本当に良かったです。

もう少しを積み重ねながら最期まで一緒にいたんだと思うと涙が止まりません。

10

付けられるだけの☆を付けたい作品に出会いました 

テーマは繊細だと思いますが決して暗いお話しではありません
だけど胸にドッシリと響くお話しでした

「生活」と「生きる・活きる」という事を考えてしまいます
誰しも?大抵の人かな?は「日々すべき事」と「いつかしたい事」があったりして、その狭間で目の前の日常をこなしていって、そして束の間「したい事」を楽しんだりしていく日常

その基準に「出来るか?出来ないか?」は時間と金銭面を除けばあまり考えない
だけど晴人と晃はそうではない
制約が互いにある生活

それでも彼らが使った「お互いの生活を分け合う」という言葉がとても胸に刺さりました
出来る方がする、という感覚は出来る方からすれば極当たり前だし、きっと驕りもない
だけど一方出来ない方からしたらやっぱりしてもらう、させてる、、、という受け身な事に歯痒さや悔しさが滲んでしまうし、そんな自分にも嫌気がさす
そして出来る方もその想いを察して苦しくなる
どうしようもないようなこの負のスパイラルに風穴を開けてくれる「分け合う」という言葉
この言葉がとても救いになりました

それでもきっと負い目や窮屈な想いはゼロにはならない
そんな晴人にとってあの決断は自分を強く確認できた行為だったんだと思います
「逃げ」とは違う、自分にもまだ自分を「生かす」権利がある事を確認出来た事
事故直後に自分の気持ちの整理も付かない中始まるリハビリや、自分の気持ちはさておき感情をぶつける両親、、、
そんな中において「あの決断」だけは晴人が晴人自身の意思で下せた事故後唯一の事だったのだろうと思います
そこにすぐ行き着く事が目的ではなく、そこが手段として自分に遺されているという事実が大事なんだと感じました

そして晴人らしく、人として「生きていく・活きていく」
その人生を側で「晃らしく生きた・活きた」お話し
巻き込まれ、巻き込んで、、、分け合った人生
今、このレビューを書いていても最後の晴人の作中作著書、エッセイ「まどろみながら君と」が描かれた電子限定の描き下ろしのエピローグを想うと涙が止まらない
晴人の決断を尊重し、彼の人生を晃とともに尊び、想いを馳せたいと思います

17

もう少しの向こうに…

小説家の晴人とサラリーマンの晃は、大学時代からの恋人同士で同棲中です。
数年前に交通事故にあった晴人は車椅子での生活で身の回りのことでままならない事も多く、晃はそれを支えるような形で同棲をしています。

pixivの連載の方でも読んでいたのですが、涙なくしては読めません。本当に。号泣。
車椅子生活を余儀なくされた晴人とそれでも一緒にいたい晃、晃を自由にしてあげたい晴人との気持ちのすれ違い。
きれいごとだけではない、苦しくなるような描写もたくさんあります。
晴人には晃に秘密にしていることがあり、それが死についてのことなんですよね。
かなりデリケートな問題にも触れていて、先生がそれをとても丁寧に描いてくれていることに涙が止まりませんでした。

明るく楽しいという種の本ではないので、誰にでも薦められるかは分かりませんが、私はものすごく心を打たれたし、間違いなく神作であり、読んだ人の心に刺さる、残る1冊になると思います。

11

身体障碍とBL

今まで何作かの身体的に障碍のある人物が主人公のBLを読んできましたが、どれもBLファンタジーの中のキャラだなと感じていました。ところがこの作品ではそう感じることはありませんでした。とは言えわたし自身、リアルで知っているわけではないのですが、この物語を読んで今まで気になっていたところも気にならずに読んでいけました。

物語は、大学生時代からの恋人同士のサラリーマンの晃と若手小説家の晴人のふたりが同棲して約2年の日々が描かれています。
受けの晴人が数年前の事故以来、車椅子生活になっています。攻めの晃は暮らしていく中で少しずつ晴人の気持ちを尊重しながら、互いに助け合って生活していく様子が丁寧に描かれています。
セックスはできないんだと思います。それでもふれあっていたいというふたりを素敵だなと感じます。

そんなふたりの元に大学時代の友人、芝先輩が家にやってきます。真面目で堅物だった芝先輩は、まるで昔の晃のように自由気ままに写真を撮りながら旅をしています。ふたりが出会うキッカケをくれた芝先輩はずっとふたりを身近で見てきた理解者であり、苦言も呈します。一緒に生きていく意味を。

でも、誰よりも晃のことを想うからこそ、晴人には秘密がありました。それは事故に会うまでに自由に世界中を旅していた晃をサラリーマンとして縛り付けてしまったことについての罪悪感や、不自由な身体で生きていく辛さ、そして自分で死を選ぶという決断について。

そしてとうとう晴人が緊急入院することになりますが、晃は仕事で出張に行かなくては行けなくなります。一番側にいたいときにいられない辛さ、「家族」になれない苦しさ、誰にも言えない哀しさなどでいっぱいいっぱいになり、晴人もそんな晃を見ているのが辛くて別れを切り出してしまいます。

きれいごとではないふたりの気持ちの揺れ動き、そして芝先輩の助言。白野ほなみ先生は取材をしたり経験したりされたのか、よく描かれているなと感じられました。
晴人と晃は少し距離を置き、自分だけの時間を過ごしながら今だけでなく未来の自分、そしてふたりのことを考えていきます。
タイトルのように「もう少しだけ、そばにいて」と。どんな道でも「ふたりで行こう」と。


この物語には大きな事故による身体障碍、尊厳死、自死について描かれています。
BLはファンタジーであって明るいラブストーリーが好み、という人には向かないかもしれません。でも漫画だからこそ気軽に読めて、こう言ったあまり気軽に話せないテーマについて考えるいい機会になるのではないかとも思います。
とても素晴らしい作品に出会えました。

21

エピローグで鳥肌が立った作品。

ずっとpixivコミックスで追っていました。

初めて読んだとき、受けの設定にびっくりしたのと、美談にはしないリアルな車椅子生活を描いて、さらにびっくりした記憶が。
BLでここまで赤裸々に描いてるって、挑戦よね??と。
だったらこちらも、心して読まねば! と、背筋が自然と伸びました。



普通のどこにでもいるはずの恋人たちを襲った悲劇。
2人の人生は大きく変わってしまったわけですが、だからと言って無駄に前向きハッピー! みたいには描かず、もがきながらあがきながら、最終的に2人の幸せとは、、、を見つけていく展開には涙が自然と溢れていました。


たくさんの人に読んでみて! と伝えたいですが、辛いシーンもあるので読む人を選ぶ作品でもあると思います。

タイトルの「もう少しだけ、そばにいて」。
すべて読み終えたあとにこの意味を考えると、ギュッと苦しく、けれどそのあとで「もう少しだけ、」の積み重ねが描き下ろしのエピローグの冒頭のエッセイ発行に繋がったのかなあと思うと、泣けてきてしまいました。

幸せなんだね、今、2人は(またしても、泣き出すまりあげは)、、、


難しい題材を描ききってくださった白野先生の今後の作品も、とても楽しみです!

8

この物語は悲劇だろうか?

ある日突然世界が変わる
自分だけでなく、周りの大切な人達も
当たり前に思えてたものを沢山無くして
恋人の愛ですら苦しくて……
もう読んでて苦しいです。
愛が深すぎて苦しいです。
でも読んで良かった
1人でも多くの人に読んでもらいたい
そう強く思う1冊です。

この重くて苦しい物語の中で先輩の存在がすごく重要で、
大切な人の人生が変わってしまった事は、「あの事故のせい」であり、晴人のせいではないってなんて言う先輩はもう最高にステキで。
あきらの世界旅行の夢の事も、
夢は諦めたのでなく、世界が変わると共に夢も変化しただけで
この変化は今までぼんやりした夢が、形ある夢になってて
それはマイナスの変化などでないと気付くきっかけになってたと思いました。

健常者や異性愛者と比べると困難も多い人生だったと思うけど、でもラストに問われた「悲劇だろうか?」の答えは、これだけ愛し合った2人が悲劇な訳なく、最高のラブストーリーだと思います。

「準備はいいか?」
この最期の言葉の意味を誰かと語り合いたいです。

14

自分の人生を生きる

心が打たれる
そんな1冊でした

あらすじから分かる通りの2人のお話し
だけどあらすじだけでは分からない2人の心の葛藤、想いが赤裸々に綴られます
それぞれ2人の当事者としての想いを吐露する描写もあれば、第三者の視点で諭して気付かせてくれる所もあります

穏やかなだけではありません
苦しい事だって描かれています
それでも、それだからこそ、胸に響き心が震え、打たれます

この作品を読んで心が軽くなる人もいれば、強い気持ちを持ちたくなる人も、中にはもどかしさややるせなさを覚える人もいるかも知れない
それでも必ず何かを感じる「無味乾燥」とは対極にある、人を揺さぶる作品だと思います

私に取っては「人生」を描くという真摯な想いが流れ込む出会えた事に感謝したくなる作品でした

多くの人に読んで欲しくてネタバレなしレビューにしたためほぼ感想に徹してしまいましたが、じっくり作品と向き合い何かを作品から感じたい…そんな作品をお求めの方には是非とも手に取って欲しい作品です

12

No Title

心があたたまる、優しい気持ちになれる、泣ける。
そんな単純な作品ではありませんでした。
晴人が抱えている苦しさ、焦燥感、孤独は、とてもじゃないけど私には想像もつきません。
それでも、そんな苦しい状況でも、けして周りに当たらず、不平不満も言わず。
そんな優しい二人だからこそ、読んでいて苦しかった。
読み終わった後は、幸福感よりも苦しさの方が私の場合は大きかったです。

二人が老人になってからも描かれていますが、そこもまた、ただ「晴人頑張って生きたんだね」とか「二人は老人になってからも一緒に生きているんだね」とか、手放しで喜べるものではなく。
正直、晴人が認知症になっている描写まで盛り込む必要はあったのかなと…思わなくもないですが…。
二人はとても幸せそうで、きっとハッピーエンドなんです。
でも読者としては、あくまで私の場合は苦しさの方が強かった。


9

残酷すぎる!痛くて苦しい・・・心が沈んでしまう

晃×晴人


交通事故によって一変した人生の残酷さが恐ろしくて、
読んでいると心が沈んでしまった。

切ないどころか、
想像以上に心身ともに痛くて苦しい。
確かに感動はするけれど
正直、全く良い気分にはならなかった。

単なるほのぼのものを超えて、
「人生の選択」が、まさに・・・重厚。
ラストシーンで涙がじわりと滲んだ。
晴人の最後のセリフの意味!込められた2人の決意と深い愛情・・・。


大学時代から付き合っている2人。

晴人は数年前の交通事故で車椅子生活を余儀なくされたけれど、
それでも晃と一緒にいること
晃が晴人のために尽くす姿や、
晴人が晃の優しさに包まれて、
日々の生活に小さな幸せを見出してほっこりと温かくなる。
でも、その幸せは決して単純ではない・・・

やっぱり交通事故の当時からの残酷さ、
その後の「歩けない」という現実だけでなく、
心身に残る後遺症で苦しんでいる晴人。
耐え難い体と心の痛み、去来する不安、さらに、
晃との時間を過ごす中で、
晃の人生まで巻き込むという自責の念・・・という
繊細に描かれている複雑な感情が切なくも痛々しい。
晴人の「決断」が2人の関係をどのような影響を与えるのかーー?
迫りくる晃と別れたい気持ちにまた胸をえぐる。

明るく見えても、
晃が見せないその裏側には、
晴人を愛するがゆえの悩みがある。
晴人を支えたい気持ち一方で、
晴人の抱える苦痛に向き合わなければならない奮闘が刺さる。

大学時代のエピソードから、
事故後の日々までが描かれて、
痛いほどに深く感情移入させられる。

事故により変わってしまった人生。
2人が共に生きる毎日に潜む小さな幸せと大きな不安で、
諦めようとする晴人を包む、
絶対に諦めない晃の愛情が強い。
苦しみや痛みを抱えながらも、
2人が共に未来へ歩んでいく姿には、感動せずにはいられません。

6

埋もれてはいけない日々の現実を伝え切る それぞれの「普通」を想う琴線作品

朝6時に起きてベッドから降りる
それまでの描写を約1ページで9コマ
そして描かれたスマホの時計は起床時の6:00から6:42へ、、、
リアルにその日常を映す これが現実を”伝える”という描写

とても丁寧です
どこまでも「嘘」がないな、と思えます

これは確かに身体的に不自由のある晴人の物語ではあると思います
でも、身体的な不自由だけが「特別」な事ではなく例えば過去の経験や、将来への不安などから来る心が不自由な事になる事を知っている人にとってもきっと「分かる」話しでもあると思います

だからと言って身体的な不自由と心の不自由を曲解して「同じ」だという事でもありません

ただ、人には人それぞれの「自分の普通」がある、という事
そしてかつて「普通」だった事が突如普通じゃなくなる

例えば今の私たちならほぼ全員が分かる経験…
突然の未知のウィルスに襲われ、今までの「普通」がどんどん失われた日々
あの時の恐怖、、、
色んな環境や立場であの恐怖や焦り、孤独を感じた人も居たのではないでしょうか
それから数年
今、あの頃よりは生活はしやすくなっています
でも、あの時に感じた感覚は覚えているし、そしてそれ以前の「普通」と今の「普通」は違う

そういう意味で身体的な特徴にだけ囚われてこのお話しを読む事は出来なかったです
すごく「自分事」として読んでしまう
どこかで晴人の事、晃の事、晃と晴人のお話しだよ、って敢えて切り離しながら読みたい、と思ってもどうしてもこの作品の中で語られるストーリー、想い、セリフ、、、ひとつひとつが心に寄り添ってしまう

色々想う事があります
そのどれもが、心が晴れやかになる!よし、明日も元気にやってこーー!と「右向け右!」と言わんばかりの「絶対的なポジティブ」ではありません
でも、静かに気付いたら「よし、まだ大丈夫」と自分の足の裏、手の平、視線の先に「温度を感じる」感覚をしっかりと意識するような、背筋を少しだけ伸ばして「上を向かなきゃ」って思える、そんな忘れてはいけない感覚を想わせてくれます

かつての「普通じゃなかった」事を今の「普通にする」
妥協でもあり折り合いでもある
でもそれを受け入れるだけの自分の許容量が増えた事を忘れちゃいけない
そして一緒に居たい人が居たり、自分自身が自分をを哀しませたくない、という想いがあるから「大丈夫」と思える
気付くと温かい温度に包まれています

間違いなく生涯忘れられない、忘れたくない1冊です

芝先輩、ありがとう
ともすれば重くなってしまったり、啓蒙的な側面が強く出そうになるようなこの物語に於いてこの先輩の存在がどれだけ揺るぎない支点になっていたか、、、!
空気を軽くしながらも引き戻すところは引き戻す
芝先輩のお陰で晃と晴人が出会えたことも含めて芝先輩にはMVPを贈りたい!!
本当にありがとう

そして1番のありがとうは、、、
白野ほなみ先生!
こんな素敵な作品を送り出して下さってありがとうございます
読ませて下さった事に心からの感謝をお届けしたいです
素晴らしいBL…Boys LoveでありBoys Lifeでした!!!!!
電子限定になってるあのエピローグ、、、
あれは限定で良かったのだろうか、、、
あそこまで読んでのBoys Lifeと私は強く思いましたので、是非電子での購入をおススメしたい(紙にもあるのでしょうかね?彼らのその後、、、)


これから読まれる読者さまへ
誇張無しにタオルかBOXティッシュは用意して読む事をおススメします
泣きます、きっと
それでも1人でも多くの人にその涙の温度を感じて欲しい!

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読みながら泣き、余韻に浸って大号泣

事故でへそから下の感覚をなくし車いす生活をしている作家と一緒に暮らす明るいリーマンのお話。

Xで宣伝を見た際にとても自分好みそうな車いすという大変な部分はありながらも2人仲良く暮らすゆるふわ日常物語だと思って発売を心待ちにしていました。
正直表紙から受けたその印象とはだいぶ異なるお話ではありましたが、ものすごく感情がゆさぶられる間違いなく読んでよかったと思える1冊になりました。

何よりも印象に残っているのは序盤で会社を誰よりも早く出て春人が待つ家にるんるんで帰り、朝起きて憂鬱になっている春人を文字通り太陽のごとくパーっと照らしてくれる晃の笑顔でした。誰が見ても文句の付け所がないくらい本当に楽しそうなんです。その笑顔が、楽しそうな顔が、頭にずっと残っていたから春人が晃に我慢させていると言った時も、絶対我慢じゃない!と確信を持っていました。

春人の気持ちにも胸がつまりました。春人の中で手放しに幸せだったと思い出せるのは大学の時の思い出で、きっと物語を紡ぐたびに晃の夢を見るキラキラの瞳を反芻してはそれを自分が失わせてしまったという思いに苛まれていたのだと思うと、きっと自分が大変なのよりもずっと苦しい気持ちでいたのだろうと思います。でも人の夢は生きているうちに変化していくものだから、夢を見ていたときみたいにキラキラな笑顔で春人に向き合う晃を見てあげてくれ~~~ともどかしい気持ちも。

最後の明るい2人を見たら、きっと晃は春人を心配しすぎていたし、春人は晃に余計な罪悪感を抱いていたのだろうな、それが少しでも歩み寄れてよかったなと心の底から思いました。
きっとこれからも悩んだり苦しかったりすることが多い人生かもしれませんが、どうか少しでも多くの幸せを掴んでほしいと願います。
最期まで少なくとも2人は一緒にいたよ、という未来をのぞかせてもらえて大満足です。

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