NIGHTS BEFORE NIGHT

NIGHTS BEFORE NIGHT
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神338
  • 萌×281
  • 萌27
  • 中立7
  • しゅみじゃない5

--

レビュー数
34
得点
2102
評価数
458
平均
4.6 / 5
神率
73.8%
著者
ナツメカズキ 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

媒体
漫画(コミック)
出版社
東京漫画社
レーベル
MARBLE COMICS
シリーズ
MODS・NIGHTS BEFORE NIGHTシリーズ
発売日
価格
¥777(税抜)  
ISBN
9784864423373

あらすじ

『MODS』本当の完結。

元ヤクザでゲイ向けデリヘル「Rain」のオーナー・春は、一条組組長の息子である雪鷹を自宅で預かり、謹慎させることになる。
暴力沙汰を起こす問題児の雪鷹は、春の想い人で今は亡きヤクザ・一条時雨の腹違いの弟だった。
時雨の死に囚われながら不眠を患う春は、性格は真逆だが、時雨と似た相貌の雪鷹にしだいに翻弄されていき……。

眠れぬ夜の終わり、哀しき男たちの愛と救済を描く、ナツメカズキ最長編作!

表題作NIGHTS BEFORE NIGHT

一条雪鷹,26歳,一条組組長の本妻の息子
春,33歳,ゲイデリヘルオーナー、元ヤクザ

同時収録作品NIGHTS BEFORE NIGHT

時雨,33歳,雪鷹の異母兄,ヤクザ
春,22歳,ヤクザのイロ

その他の収録作品

  • あとがき
  • カバー下にキャラクター紹介とキャラクタープロット

レビュー投稿数34

時雨さんの存在が大きすぎる(;ω;)

特装版購入。
小冊子はCab vol.46に掲載された内容です。(表紙のみ描き下ろし)
CDはその小冊子を音声化したものとなってます。


時雨さんの存在が大きすぎる。春・シロ・雪鷹はもちろん、読者にとっても。
読みすすめるごとに存在感は増すばかりで時雨さんが居ない事実が重くてかなり堪えます。
でも時雨さんの残した優しさはみんなの中に息づいていて、寂しくて切なくて愛のあるお話でした。


お話は、時雨の腹違いの弟・雪鷹が春の前に現れることから展開します。
外見は時雨ソックリでも中身は大きな子供のような雪鷹。
素行の悪さから謹慎処分となり、お目付役にと春は押しつけられ一緒に暮らし始めます。

時雨さんが死んでから11年。それからずっと眠れない春。
最初のうちは反発してばかりの雪鷹でしたが、少しずつ春に興味を持つようになりーーー。
帯のキャッチコピーにあるように過去に捕らわれた春さん救済のお話です。


春さんと時雨さんが一緒に過ごした日々の回想も交えながら進みます。
春さんもシロ同様、時雨さんに救われた1人だったのですね…(;ω;)
ただ、シロと違うのは、時雨さんの苦悩や闇もずっと見てきた。傍で支えた。
時雨さんの性格をよく知っていた。

…だから時雨さんが亡くなるキッカケになったのは自分のせいだと責めています。時雨さんの性格ならシロの為に連れて逃げる可能性はあったけれど、足抜けしても尚ヤクザの世界から切り離してもらえない時雨さんの逃亡は許されるハズがなく。事故に見せかけて殺されたのだと読み取れました。そして春さんはシロと引き会わせなければこんなことにはならなかった、と。
失った悲しみと自責の念に11年も雁字搦めになっていて見てる方がツライ。。。

今回明らかになった時雨さんの最後の前、春さんに会いに行ってたのはもぅもぅ!言葉にならない!
不器用すぎる男は最後の最後まで大切な一言を濁したまま…(;ω;)
アカンです、これキッツイ。時雨さんのこと考えるだけで涙腺が死ぬ。

で、時雨さんにソックリな雪鷹。
外見は時雨さんそのままだから、見てるのがシンドイ。(萌え的にも精神的にも)
でも中身がね…高校生の子供に見えちゃったよ…。26か。そうか。(見えん)

最初は時雨さんに似すぎてて戸惑いが大きかったけれど、段々と可愛く見えてくるから不思議ですw「雪さん」と呼ばれるのが不満で「鷹と呼べ」といちいち言い返してたり、春が眠れるようにとヒーリンググッズをせっせと買ってみたり。年下攻めの可愛さをグイグイ出してくるヾ(*´∀`*)ノ冒頭はどうしようもないガキって感じだったのに、春さんの為にどんどん成長するのが胸熱でした!中身が少しづつ外見に追いついてきてキュンキュンが止まらない(∩´///`∩)

兄の時雨はヤクザの世界に囚われたまま命を落とし、
春もヤクザの世界から逃げられずにいて。
その事実を知った雪鷹が出た行動。
春さんは望まない結果でも雪鷹が春にしてあげられる精一杯に涙腺が緩みました。

「もう苦しませたくない」
「…それでいつかは 誰かと 幸せになれ」

雪鷹のセリフだけど時雨さんからのメッセージにも感じられます。
皆が皆、不器用で愛おしくて、このページはホント泣ける。

他、様子のおかしい春に気付いてシロが動くのもジンワリきます。11年間春さんの近くにいたのはシロで、春さんの深い傷を痛いほど理解してるのもシロで。時雨さんという大きな存在を失った者同士で通ずるものがあって、口にはしないけど互いが互いの幸せを願っていて、2人の後ろには時雨さんがいるなぁと感じました。

ただ、春さんが雪鷹に惹かれた理由が曖昧だったかな?でも、
・時雨さんソックリな面影に本人に言えなかった言葉を言えた。
・力強い言葉で自責の念を溶かしてくれた。
・あたたかな温もりで眠らせてくれた。
春さんにとっては充分すぎるキッカケかもしれません。性格が違いすぎるから雪鷹と時雨さんを重ねて惚れたのではないとわかるので、雪鷹のガキっぽさが逆に良かったかもです。

雪鷹の性格が捻くれたのは時雨さんのせいでもあるんだけれど、その辺りの救済は中途半端に終わってしまった印象で残念でした。兄弟の交流や、雪鷹が兄への反発心が解けた部分の描写が見たかったです。

雪鷹が完全にヤクザ者になってしまった以上、結局春さんはまだまだ切っても切れない世界になってしまい完全救済か?といったら夢半ばな気もしますが、それでも春さんの自責の念は消え、ただ時雨さんを愛してた気持ちだけを残したまま眠れるようになり。時雨さんには直接言えなかった「愛してた」「愛してる」の言葉が口に出来たのはとても良かったです。シロも春さんも雪鷹も、どうか幸せになってほしい。

(余談)
読み返していて時雨さんはシロと雪鷹を重ねてたのかなと感じました。弟にはしてやれなかった、あの家から救ってあげられなかった。だからこそ余計にシロに肩入れしてたのかな~と…。最後の言葉についてもアレコレ考えが止まらない;;

※特装版・通常版ではカバーイラスト・口絵カラー・封入特典も違います。
詳細は通常版封入特典カードにレビューしました。

21

春さんの素敵さに悶える

作家買い。作家買いですが、『MODS』のスピンオフでしかも春さんのお話、と聞いたら嬉し過ぎて、テンションMAXで発売を心待ちにしていました。

通常版に加え、小冊子+CDが添付された初回限定特装版も同時発売されました。もちろん特装版をお買い上げ。『MODS』を未読の方は人間関係等理解しづらい面があるので、まずそちらを読まれてから今作品を読まれることをお勧めします。

ということで、レビューを。すみません、ネタバレ含んでいます。






デルヘリ「Rain」のオーナー・春のもとに、一人の男が訪れるところから物語はスタートします。

「Rain」の事務所のカギを壊し、勝手に不法侵入していたのは一条組組長の息子・雪鷹。
春がかつて深く愛し、そして亡くした時雨の腹違いの弟。

不始末をしでかして謹慎を命じられ、現在はカタギの春のもとに勝手に送られることになったのだという。春が盃を交わした矢代組(一条組の傘下)組長に頼み込まれ、義理もあって仕方なく雪鷹を受け入れるが、時雨にそっくりな顔をした雪鷹の存在は春の表面上の平穏を揺るがす存在になり―。


『MODS』も分厚かったですが、『NIGHTS BEFORE NIGHT』も相当分厚いです。

この厚さを裏切らない、濃厚な内容でした。

時雨を失ったことで不眠症を患うことになった春。
時雨への忘れることのできない深い愛情と、断ち切ることのできない懺悔の想い。

春と時雨が出会うことになった出来事から、二人が身体を重ねるようになった経緯、そして、時雨がシロに少しずつ惹かれていくさまを横でじっと見ることしかできなかった春の哀しみ。

そういうものが、少しずつ、けれど圧倒的な世界観でもって描かれています。

『MODS』の時から、春という男性の魅力にドはまりしましたが、彼が『MODS』で見せた大人で余裕のある表情は彼の見せかけでしかなかったのだと。

彼の過酷な過去、時雨への想い、「愛されたい」と願う孤独な心。

これでもかと春の内面が描かれていて、萌えが滾って、とどまるところを知りません。

そして一方の雪鷹も。
極道の家に生まれ、周囲からは腫れもののように扱われ、父親からは愛された記憶がなく、唯一慕っていた兄にも見放された(と思い込んでいた)。

誰にも必要とされず、愛されず、そんな彼が、春という一人の男と出会い変わった。
春の心の叫びが聞こえたのもまた、雪鷹だけだった。

毛嫌いしていた「極道の世界」に、春を守るために自ら入っていった彼の深い愛情に、思わず落涙しました。

ナツメさんて、濡れ場の回数こそ少ないものの、とにかく濡れ場がエロい…!

体つきや表情がエロカッコいいというのもあるし、tnkの描き方がエロいんだよなあ…。
エロに特化しているわけではないのですが、とにかく相手のことが大切で、というのが透けて見えてくるので読んでいて温かい気持ちになります。

春の過去が痛々しく、読んでいて切なくなるのですが、そんな彼が雪鷹と出会い、そして幸せを手に入れた。極道とカタギということでまだまだ前途多難な二人ではあるのですが、最後に雪がつぶやいた、

おやすみ、雪鷹
また 明日

のセリフに、萌えと優しさが詰まっていて幸せな気持ちになりました。

『MODS』の完結編、とのことですが、トラ×シロ、そして雪鷹×春、の4人に、またいつかどこかで会えるといいな、と思います。

あ、そうそう。
お値段は2300円(税抜き)とちょいお高めではあるのですが、それでも初回限定特装版を激しくお勧めします。

付属してくる小冊子+CDが、最高に素晴らしいです。

13

泣けました…

前作『MODS』で亡くなった時雨さんが軸になり、数人の男が苦しんだり悲しんだり…その苦しみを乗り越えたりします。。

『MODS』が(私の中では)かなり印象深かったので、スピンオフはさほど期待してませんでしたが…期待はあっさり裏切られ…めちゃめちゃ泣けました。。

春さんにとっての時雨さん。。
想像以上に存在が大きく、またお互いに思う愛情の深さも想像以上でした。。

時雨さんに救われた人…一体何人いるのか…

シロをこの人なら救ってくれる…と時雨さんに託した春。その事でまさか時雨さんが死ぬなんて。。どれ程苦しんだのか。。とてつもなく長い間不眠症は春を苦しめました。

不眠症から徐々に解き放たれたのは時雨さんの腹違いの弟…雪鷹の存在。雪鷹は春を救いたいと頑張りますが、私には雪鷹も春に救われたようにも見えました。。

たくさんの傷を背負った男ばかり出てきますが(笑)

誰かのせいにせず、自分で何とかしようとする(だからそれぞれ苦しんでるんですが*><*)…基本的に優しい男の集まりです(笑)

次はCD発売を楽しみに待ちます!!

あと、時雨さんにスポットを当てたお話を読みたいなぁ~と願っています。



12

春さん大好きです。

春さん好きです。
作者さんの作り出すキャラがもう好き。全部好き。
その中でも春さん大好きです。髪が長いのも中ぐらいの時も今の短髪も。

CDは特に欲しかったわけじゃないんですけど小冊子の方が欲しくてそっち買いました。

春さんの「愛してた」「愛してる」にもうっ もうっ なんて言っていいかわかりません。
時雨さんもちゃんと春さんの事は愛してたんでしょうね。
きっとお互い互いの気持ちはわかってたのに・・・ せつない。

シロ改め空さんの幸せな日々が見られて良かったです。
この人本当に素直な人ですよね。無垢っていうか。純粋な人。

厚くて読み応えばっちりでした。読んで良かった。

11

スピンオフ

※小冊子+ドラマCD付き初回限定特装版での購入。

『MODS』に出てきた「Rain」のオーナー・春が主役の物語。
もう一ページ目からやられました。
時雨との出会い、シロとの出会い、時雨に預けるに至った経緯、そのことによる感情等が描かれていて前作のエピソードの隙間を埋めて春の輪郭が浮かび上がっていました。
『MODS』では、時雨との関係は裏設定な感じではっきり描かれていませんでしたが、こちらでしっかり描かれています。(特典漫画では少し関係ある描写がありました)
そして、春にこんな悩みがあったんだな・・・と改めて切なくなりました。

時雨の異母弟・雪鷹との関わりが、春の時雨への想いや現在の苦しみと共に浮き彫りにされてます。
雪鷹が抱いている異母兄・時雨への複雑な感情もあわさって、雪鷹と春の関係の変化、雪鷹の成長等読み応えたっぷしの一冊でした。

ぜひ、『MODS』と併せて!

9

この世界が好き。

前作のMODSが大好きで、心待ちにしておりました。内容は、デリヘルオーナーの春さんの物語です。亡くなった恋人が忘れられない…というか、その死の原因は自分にあると考えていて、11年も不眠症という、言葉にまとめると陰鬱なのですが…暗いとか病んでるとか、そんな印象は受けず、春さんの心に寄り添いながら、幸せの芽を見つけられる、じんわり胸が温かくなるお話でした。
いや、しかし、34歳でじじい、おっさん、と…まあ、皆の距離感が近いからそう呼ぶんだとは思いますが…全編、春さん色気バリバリですよ。
個人的にイチオシな虎くんはほぼ出てこないのですが、特装版を購入したので、小冊子とCDを楽しみたいと思います。

9

そして、春風に包まれる。

静かで冷たい雨はやみ、暖かな春風に包まれる。

前作『MODS』で、デリヘル「Rain」オーナー春が主人公の作品。

愛した人の夢で目覚めた春。
事務所に行くと、あの人と同じ顔をした男が居た。
時雨の異母弟 雪鷹だった。

忘れ形見のシロも去り、店を畳むつもりの春だったが、
最後の依頼として、雪鷹を預かることになる。

若く自由で豪快奔放な雪鷹の、時折見せる表情に時雨が重なり
春の心が乱される。

雪鷹の中の兄 時雨
雪鷹を可愛がり「やさしくなれ」と抱きしめた日もあった。
いつしか2人は疎遠となり、雪鷹の心はささくれて行く。
オレにとっては、アイツはいいやつでは、なかった。

自分を通して時雨を見る春が、兄のイロだと雪鷹は知る。
訪ねた雪鷹に、春は遠くを見てつぶやく「愛していた」と。

時雨が死んだ11年前から、春の心は雨の中に佇んだままだった。
眠れぬ夜を、何万時間繰返しても、その雨はやまない。

コレで良いと思う春に、雪鷹が救いの手を差し伸べる。

雪鷹は時雨との刹那な関係も
春の中に去来する、時雨への謝罪と思いも
忘れる必要はないと、春を抱きしめる。
春は「愛してた」と泣き、雪鷹の胸の中で、
11年ぶりに安寧で深い眠りにつけた。

組長死去後、組を継ぐ決意をした、雪鷹。
雪鷹の計らいで事務所を畳めたことを知る、春だに。
「誰かと、しあわせになれ」と雪鷹は残して行くが。
春はそんな言葉を望んではいなかった。

そんな折、雪鷹が春の目の前で刺されてしまう。
大切な人、失いたくない人は誰なのか?
もうこんな思いはしたくない、雪鷹を抱きしめ、春は「愛してる」と叫んだ。

春はめくり、冷たい雨はそこにはない。
時雨が注いだ愛は、時を重ね新たな愛を生み
春も、雪鷹も、シロも、穏やかにそこに存在する。

1年ぶりに再会した雪鷹と春は、久々の逢瀬、初めての密夜を交わす。


静かで、美しく、優しく、春風が吹き抜けるよな、お話でした。

雪鷹の道は、簡単には行かぬのでしょうが、
少なからず、安らぎの場所を互いに見つけた、春と雪鷹。
心が満たされゆくこれからに、幸多からんことを。

8

やばい、メチャクチャおいしい(泣)

『MODS』のスピンオフなのでかなり期待していたのですが、期待以上(泣)なんなの〰️このおいしすぎる設定。

ベタベタした優しさじゃないけど、気づかいはできるし、さらには何か暗い過去がありそうなところが雰囲気があっていい男だなぁ~と思っていた春が今回の主人公。過去のしがらみから組長のドラ息子・雪鷹の謹慎のお守りを押し付けられて…なんて始まりだったら、もっとドタバタした笑いの要素が強い話になるのかと思いきや、すごいイイ話でメチャクチャはまりました…(泣)

雪鷹の腹違いの兄・時雨との過去の話は、大人の男の優しさと苦しみと弱さが溢れていてすごくぐっとくるのに対し、瓜二つの雪鷹の方はやんちゃでバカで時雨とは正反対。それでも時雨との過去に縛られ不眠に苦しんでいる春にあれこれ安眠グッズを試して寝かせようとするなど、とにかく一生懸命。そんな年下が必死に頑張る可愛さと急に男前なところを見せちゃうギャップにきゅんきゅんきてしまいました。時雨も雪鷹もどっちも私のドストライクでめちゃくちゃ楽しかったです。

極道という世界で、血生臭いことから逃れられず苦しみながら生きることや、しがらみから抜けることの難しさ、それでも誰かのために生き直そうとする強さなど、とてもドラマチックで内容自体もすごく読み応えがあって面白かった~。超オススメです!

8

未亡人萌え

 前作「MODS」読了後、ぐずぐずと胸の内にわだかまってたフラストレーションを思いっきり晴らしてくれる一冊でした。そう、私はこんなお話が読みたかったんです。大好きなこの絵で。春と、彼がこよなく愛した時雨と、あとひとり、時雨と同じ貌を持つ異母弟雪鷹の物語。

 施設育ちの男娼上がり、ヤクザのイロを経て本物の極道となるも、今は一応足を洗った格好でゲイ向けデリヘルのオーナーに収まってる春。11年前、事故を装った謀殺のような形で時雨を失ってから、ずっと不眠症を患う。眠れない夜は長く、苦しい。でも一方で春は、そのつらさを甘んじて受け入れてもいた。それが片時も忘れず時雨を想い続けている証しであるかのように。新しい恋に身を投じることもなく、時雨の残した「忘れ形見」のシロと身を寄せ合って、まるで未亡人のようにひっそりと日々をやり過ごしていた。

 でもそんな彼にも転機は訪れる。ひとつはシロの「巣立ち」。まだ危なっかしいとはいえ、新しい伴侶をみずから選んで裏社会と縁を切ったシロの姿に、春は自分の役割がひとつ終わったことを実感する。そして、忘れられない男と同じ貌をして突然、春の静かな生活に乱入してきた雪鷹。11年前、時雨の葬儀の時に見た彼はまだ15の子供で、とりたてて兄に似ているとも思わなかった。なのに時を経てすっかり大人に育ち切った姿は時雨そのもので、クールにあしらいつつも内心の動揺を抑えきれない春。もっともそっくりなのはあくまで見た目だけで、中身は真逆。穏やかで包み込むような温かさのあった時雨に対し、刹那の衝動に身を任せて暴力沙汰を繰り返す雪鷹には春もあきれるが、よんどころない筋からの押し付けで、謹慎中の彼の身を預かる羽目になってしまう。

 前作ではやり手の経営者の顔しか見せてなかった春だけど、こちらではもっといろんな顔が見られます。ある時は口うるさいオカン。時には喧嘩上等のやんちゃ坊主を一撃の下に黙らせる武闘派。そして時雨にだけ見せていた特別な顔も。時雨と出会った頃の春はたぶんまだ十代で、髪は長く線は細くて、はかなげな美少女とでもいった風情なんだけど、窮地をさりげなく救ってくれた時雨を一途に慕い、背中を追うように本格的に裏社会に足を踏み入れる。時雨の囚われていた闇は春の想像以上に深くどす黒く、「ただずっとそばにいたい」というささやかな望みさえあっけなく奪われてしまうのだけれど。

 謹慎という名の一か月の同居で、そんな春のいろんな顔を間近に見てしまった雪鷹。時雨を思って眠れない春にイラつくうちに、もっと別の感情が芽生える。初めて自分の腕の中で朝を迎えた春。安らかなその寝顔に心震わせる。もう春を苦しませたくない。彼を縛るしがらみを完全に断ち切ってやりたい。そして最後に雪鷹は、自分が今持つありったけを擲って、春の望みをかなえようとする。「いつかは誰かと幸せになれ」―別れ際、どんな思いで雪鷹がそうささやいたのか、痛いくらいに春には分かってて。でもある意味それは、11年前、時雨の死の直前に聞きそびれた言葉より残酷に、春の胸をえぐりもして。

 そこからラストまでの展開は、やや急すぎてバタバタの感もありますが、収まるところに収まります。「今夜はお前が眠らせてくれるんだろ」それが本編最後の春の台詞で、その直後、描き下ろしの怒涛のエッチシーンになだれ込むので、多分春はその晩ほとんど寝かせてもらってないです。にしても、これが二人の初夜なので、出会いからすると一年以上。周囲のみんなに、本能だけで突っ走るバカ犬認定されてたにしてはよく我慢したよね雪鷹。出会ったときは精神年齢15のままって感じだったけど、この恋で急速に成長したのは確か。でも、この先も裏社会で生きてゆく以上、もっともっとしぶとく、したたかになって、どんなことをしても生き延びるくらいの覚悟が欲しい。ストイックな春の未亡人姿にそそられはするけど、やっぱりもう見たくない。以前春が、シロを託すとき虎に言ってた言葉、今度はアンタにそっくり贈ります。「もしあいつがお前を選ぶなら、その時は手を離さないでやってくれ」

6

開始4ページで号泣

こんなに早いスピードで心を持っていかれたのは、「ライオンキ◯グ」のオープニングで号泣したとき以来です。
いつもスピンオフを先に読んで「しまった!」となることが多いのですが、今回はちゃんと先に「MODS」を読んでおいて良かったと心から思いました。

「MODS」でシロと信虎が働いていたデリヘルのオーナー・春の話です。
愛していた時雨を失ってから11年。
あれ以来、眠れない夜を過ごしていた春に時雨の弟を預かれという命令が来て…。

シロを救おうとしていた時雨の最期の1日が明らかになります。
あちらだけではただ不幸な事故が起きただけかと思っていましたが、そういうことだったんですね…。
あれほどシロを大事にしようとしていたのも、シロが弟と同じ年というのと、「組織の犬」だった自分と「俺は犬だから」と言うシロが重なっていたからで。
「MODS」だけでは知り得なかったことがたくさん描かれています。
絶対に「MODS」を読んでから読むべしです。

時雨が死んだのは自分がシロを連れて行ったからだと、愛するひとを失った悲しみだけでなく、死なせてしまった自分を責め続ける苦しみがどんなに重いものか。想像しただけで息ができなくなりそうです。
11年という長い年月をひとりで耐えてきた春が、時雨にそっくりに育った雪鷹と生活することで自戒の念に駆られながらも、少しずつこころが寄り添っていっていただけに、その後の893の事情的展開が余計につらい。

こころに残るシーンがたくさんありすぎて、挙げるとキリがないのでひとつだけ。
星空が出てくるシーンは全部良いのですが、それを差し置いて一番こころにぎゅっと来たのが、雪鷹を戻すという話を春が雪鷹に伝えるシーンです。
前の日の夜からその日の朝にかけて、すごく意味のある時間を経てからの突然の別れに、
「昨日抱いちまえばよかった……」
と、春を抱きしめながら雪鷹が言うコマ。
このとき、雪鷹は春を包み込むように抱きしめているのですが、背中しか描かれていない春の方は直立したままなんです。
思いのまま抱きしめ返すことは簡単なのに、抱き締めない。
春の握られた両手に拒絶しなければいけない、という気持ちが表れていて、一方の雪鷹の絞り出すような言葉も痛くて、こころに焼き付いたシーンでした。

まとまりませんが。
思い出しただけで、まだ泣けそうです。
最近泣くほどこころが動いてないなという方には、ぜひとも読んでほしい!

4

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