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女性ポッチさん

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今巻も神。

「さよなら恋人、またきて友だち ~宮内ユキについて~」の5巻目。
この作品を読むと、正義とか、愛とか、物事の正しさ、とか。いわゆる世間一般的には「良いこと」とされることの定義の曖昧さに自信がなくなります。

それは人によって、あるいは時と場合によって、形を変えるものだからかもしれません。だからこそ、前巻でルカが「みんなが笑顔になれること」を良しとしようと思うと決めたときに、ルカがそれを受け入れたシーンに胸が打たれました。自分のすべてを受け入れてくれる人がいることは、間違いなく幸せだと思うから。

春人にはエムがいて、エムには春人がいるように。

ぼちぼちみんな幸せに向かってもいいんじゃなかろうかと思いつつ手に取った今巻。前巻からの続きのナツメの出来事がどう動くのかとやきもきしながら手に取りましたが。

ルカという男の子は鬱々とした内容の今シリーズにおいて、まぎれもなく一筋の光です。彼の純真さ、という意味でもそうですし、事件解決の糸口になるのもまた、彼の存在あってこそ。ルカが出会ったナツメを介し、鳴海さんは少しずつ真相に近づいていく。

けれど、鳴海さんとユキの関係は?
すべてを、自分自身の身体さえ差し出し春人の行方を探そうと奮闘するユキと、無理をしているだろうと思いつつもユキの行動を制限しない鳴海さん。お互いに大切な人でありながら、いやだからこそか?気持ちがすれ違ったままの2人がなんとも切ない。

そして外村。
まー、外道ですけれども、彼は。でも、きっと彼には愛してくれる人も愛する人もいなかったんじゃなかろうか、と思うんです。それゆえに、ユキが彼のウィークポイントになるんじゃないのかな。始めは便利なコマだと思い使ってきたユキ。でも、外村にとって、ユキは代わりのいない、大切な人になり始めている。そんな風に思いました。

春人は逃げ出し、今はトラウマに悩まされつつエムと暮らしている。
けれど、だから良し、ではなく、捕らわれ搾取され続けているオメガも救って初めて鳴海さんとユキの贖罪の旅は終わるのかもしれません。途方もないことですが、少しずつ繋がっていく人の縁をきっかけに、大団円を迎えてほしいと願ってやみません。

読めば読むほど深いストーリーで、甘々エチエチなお話が読みたいときには正直お勧めできない作品ですが、「人」の奥深くまで描き切った良作。上っ面だけを繕ってはおらず、汚い部分も、見えない・見せない部分もしっかり描いています。

しんどい描写もありますが、彼らの行く末をしっかり見届けたいなと思います。

独特な世界観が癖になる

2005年に刊行された『神官は王に愛される』を1作目とする、吉田先生の人気シリーズの一つである「神官シリーズ」の最新刊。サブタイトルに「神官シリーズ番外編集三」とついているところからも推測できるように、SSの詰め合わせです。

が、このSS、上手に繋がっていてですね、短編ではありますがちょっとずつ繋がっているうえに、過去の話ともリンクしていて、さながら「総集編」のような1冊でした。

侈才邏国国王・羅剛の妃であり、虹霓教の最高位の「聖虹使」でもある冴紗は、ある日羅剛にお祭りに連れて行ってもらうことに。かつて、今は亡き両親と一緒に行ってみたいと願っていた祭りに行くことができ喜ぶ冴紗だったが、そこで彼が見たのは、その日に食べることもままならない貧しい人々だった。聖虹使に一目会いたいと願う国の民と出会った冴紗は…。

というところから今巻は始まります。

黒髪・黒い瞳をもって生まれた、というただそれだけで疎まれ続けた子ども時代を過ごした羅剛は、冴紗を愛しそして愛され今は賢王と名をはせるほどになり、そんな彼が、国の民と、そして冴紗の心を痛める姿を見て行った政策はー。と話は続きます。

このエピソードから、羅剛の実父で前国王の敷いた悪政の話につながっていたり、冴紗を助けてくれた娼婦の雪花、羅剛のいとこにあたる伊諒からの冴紗への横恋慕など話が多岐にわたります。今シリーズの序盤で描かれていたような痛い展開は今は皆無で(ここ最近の作品にも言えることですが)終始甘々。しかも羅剛の暑苦しい話し方は健在なので、もうこの作品の持つ世界観はもはや誰にもまねできない独特なものになっていると言えると思います。

新刊が出るとつい手に取ってしまう不思議な魅力を持つ今シリーズ。
もう完結かな…?と思わせつつの、数年おきに出る今作品は、私にとってのボーナスみたいな感じ。甘く優しい作品で、読後心がほっこりしました。

ENNEAD 2 コミック

MOJITO 

早く続きが読みたい!

「ENNEAD」の2巻目。
1巻の序盤にも書かれているのですが、太陽神・ラーの産んだ子たち(さらにその子たちが産んだ子も含めて)9人いる神、つまり9柱(神の数え方は「柱」だからか?)とを「エネアド」と呼ぶんですね。

2巻は、エネアドの裁判の続きから。
暴政を敷いたセトと、エジプトの最高神であったオシリスの息子のホルスのどちらがエジプトの神としてふさわしいのかを見極めるために、彼らは様々なテーマに乗っ取り闘うことになりー。

ほかの神たちの思惑も絡み、勝負の勝ち負けというだけではなく彼らを巻き込んだ心理戦も始まっている。これが、え、どゆこと?という謎解きも孕んでいてどうストーリーが展開していくのか全く想像できない。

セトとホルスの勝敗の行方も気になりますが、それと同時に気になるのが「どことどこがくっつくんです?」という部分。どこに愛が芽生えるんだろう…。

個人的萌えツボは、ホルスとアヌビスという、時代と生まれに翻弄されてきた二人の青年たち。いい子たちなんです、二人とも。幸せになってほしいと願ってやみませんが、彼ら二人の存在が今後のキーになるんじゃないかな。

あー、続きが気になる!でも3巻は1か月後に刊行されるんですね。正座して待っていようと思います。

1巻の表紙はセト。
2巻はホルス。
そして3巻はオシリス。
ということは時間はオシリスがメインのお話だったりするのかな…。

ENNEAD 1 コミック

MOJITO 

ヤバいくらいに面白い。

少し前に大きな話題をさらった今作品。
単話で電子書籍さんで取り扱いがありましたが、ワタクシ、婆なせいなのか?縦読みの漫画があまり好きではなくて食指が動くことがなかったのですが、本屋さんに行ったらコミックが販売されていまして。

表紙も綺麗だし、人気もあるようだし、と思ってお買い上げ。1、2巻同日発売です。

単話で読まれていた方は内容をご存じだと思いますが、私のように初見の方に向けて内容をざっくりと。

今作品は古代エジプトの神話を軸に描いた作品です。

混沌の川の丘から自らを誕生させた太陽神・ラー(今作品ではラーは女性として描かれています)は6人の神を生み出しますが、その中のテフヌトとシューが愛し合いヌトとゲブを生み出します。

ヌトとゲブは愛し合い子を孕むが、その二人の間に生まれてきた子がエジプトの支配者となると聞いたラーはヌトに子を産めない呪いをかけてしまいます。困り果てたヌトは知識の神・トトに救いを求め、無事4人の子を産み落とします。

この4人の子が、生命の神・オシリス、魔法の神・イシス、戦争の神・セト、そして調和の神・ネフティス。人々から敬愛を尊敬を受けるオリシスはイシスと愛し合いますが、そこに横やりを入れたのがセト。セトはオリシスを殺め身体を9つに切断しナイル川に流してしまいます。

が、イシスはオリシスの身体を集め復活させることに成功。イシスはオリシスとの間に子をなし、生まれてきた子がホルス。

というですね、えー、相関図必須な複雑な人間関係を孕む作品であります。何度も行きつ戻りつしながら、ちょっと待って、この神って誰だっけ?を繰り返しつつ読み進めました。1巻の中盤に相関図があるので、ぜひともそれをフル活用していただきたく思うところなのであります。

で。

ヤバいです。
めちゃめちゃ面白いです。
現段階で2巻まで刊行されていますが、これってBLなん?と思うドシリアスさ。しかも濡れ場も甘さも無い作品であります。これってどこがどうやってBLになるんです?と思ってしまうのですが。

まず「古代エジプト」「エジプト神話」をバックボーンにしたところが斬新で面白い。あくまで個人的な意見ですが、神さまってめっちゃわがままだし図々しいし態度がでかい。今作品もそのイメージを損なうことのない神がいっぱい出てきて、あまりの解釈の一致さに一気に引き込まれてしまいました。

彼らはすべからく「自分」中心なんですよ。
「自分」がどうしたいか。
「自分」のいうことが世界のすべて。
全世界は「自分」にひれ伏すべし。
そのくらいの勢いで存在しています。だからこそ軋轢を生むしトラブルも発生する。武力だけではなく心理戦なところも面白い。相手の裏をかくために、相手を倒すために、「神」の力をも使いながら闘うシーンはめちゃめちゃ面白くどうなってしまうのか気になってページをめくる手が止められませんでした。

セトは「戦争の神」で、とにかく武力ですべてを制圧しようとする人物です。オリシスを滅したときも、イシスに迫る時も。そして、彼自身の息子に対しても。まさに「血を血で洗う」を地で行く人物です。が、彼が「そう」なってしまったのには理由がありそうで、それが何なのかめっちゃ気になるところ。

1巻の終盤に描かれているのですが、セトはオリシスの身体を分断してしまいますが、この二人の間にも何かあったのでは…?BL的な意味で。そんな風に読み取れるシーンがあってヤバいくらいに萌えてしまった…。

1巻はまだまだ序盤に過ぎず、何ならセトたち神々の関係性や今現在の状況を読者に読ませる巻、くらいの立ち位置にいますが、とにかくストーリーが面白くって強制的に沼に引きずり込まれる感じ。まさに「沼」。

ストーリーも面白いですが、絵柄も綺麗でめっちゃ良い。セトがめちゃめちゃ嫌な奴なんですが、ビジュが良すぎる予感しかしない。ご尊顔ははっきり見えないのにイケメンなんです。ヤバいです。とはいえ、息子のアヌビスに対する態度が胸糞で。アヌビス、ええ子や…。なので余計に。

オールカラーページ、韓国BL漫画、ということもあるんでしょうか。1冊1200円(税抜き)という強気なお値段設定ではありますが、これはもう続巻を買っちゃうなー、という感じ。人気があると聞いてはいましたが、いやー、言うてそうでもないんじゃない?と思っていた自分を殴りたいです。

ただ、先述しましたように流血、人を殺める、暴力シーン、などの描写もしっかりありますのでもしかしたら苦手な方もいらっしゃるかも。苦手な方は自衛してくださいね。

というところで2巻へ続きます。

深く優しい愛情を描き切った良作。

初読みの作家さま。
綺麗な表紙とあらすじに惹かれて手に取りました。表紙に描かれている青年の首元に巻かれた首輪からも推測できるように、今作品はオメガバものです。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。




大学に通う有馬くん(アルファ)は、ある朝目覚めた時に一人の男性が自分の部屋にいるのを見つける。状況的に彼と「そういうこと」をしたことは間違いないようだけれど、その彼が誰なのか全く思い出せない。が、自分が自分で設定したであろう通知が何度もスマホから発信され、そしてその通知に従って確認したスマホに残されていたメモから、その「彼」の名前が佐久さんだということ、そして何度も佐久さんと会い共に時間を過ごしてきたことを知る。

「佐久さん」が誰なのか、自分とどんな関係だったのか全く分からないまま、けれど佐久さんにまた会いたいという欲求を抱いていることを自覚した有馬くんは…?

というお話。

αという性を持つ彼はそのことを理由に親の会社を継ぐように言われているが、会社は弟が継げばいいと思っており(彼の家庭環境はなかなかに複雑なのですが)、その為に親に言われるがまま入った大学でも勉強に身が入らない。退屈な日々を過ごす彼に差し込んだ光が、佐久という男性の存在なんですね。

が、有馬くんと佐久さんの関係が今ひとつわからない。
スマホのメモから「自分は佐久さんのことを忘れてしまう」ということは理解できるもの、急速に惹かれていく佐久さんのことをなぜ忘れてしまうのか、佐久さんが一歩引いた様子なのはなぜなのか、そういったことが有馬くんにはさっぱりわからない。

そしてそれは読者もまた同じ状況なのです。

なのでなぜ有馬くんが佐久さんのことを忘れてしまうのか、佐久さんは何か知っているようなのに教えてくれないのはなぜなのか、気になって気になってページをめくる手が止められませんでした。

が、読み進めるうちに、少しずつ見えてきます。このストーリー展開が秀逸です。

佐久さんの作家という職業、佐久さんと一緒に見に行ったプラネタリウム、佐久さんの地元に伝わる伝承。そういったものから、少しずつ有馬くんがなぜ佐久さんのことについてだけ忘れてしまうのか見えてきます。

何度忘れても、そのたびに思い出し佐久さんを求める有馬くんの深い愛情に萌えながら読み進めましたが、個人的には佐久さんがめっちゃツボキャラでした。

有馬くんのためには自分のことは忘れたままの方がいいと思いつつ、何度忘れられても、それでも一心に有馬くんを愛し続けた佐久さん。終盤、身を切られる思いで身を引く佐久さんがめっちゃ健気で可哀想で、思わず涙腺が緩みました。

オメガバースものってどうしても同じような展開になるものも多い中、独特な設定で描かれていてめちゃめちゃ面白かった。「信仰」という部分にも絡んでいて、閉鎖的に一見みえますが、大切なオメガを守るための神さまならではの愛情だったのだと思うとなんか可愛いお話だなー、と。

読み始めた時はどういうこと?という謎解きを孕んだお話だと思っていましたが、読後は心がほっこりする、そんな心温まる1冊。

すぎちよ先生のほかの作品も読んでみたいと思わされる、そんな素敵な1冊でした。

本橋兄弟 6 コミック

RENA 

堂々、完結!

「本橋兄弟」の6巻目にして完結編。
6巻が発売になるという情報を知った時、発売日に買いに行かなきゃ、と思ったの同時に目に飛び込んできたのは「完結」の文字。

うそーん。
大好きな『本橋兄弟』、終わっちゃうんだ…。

としょんぼりしたのは否めず。
でも、書影を拝見して、いい笑顔で笑う二人の姿を見た時に最高な完結編になるんだろうな。とも思ったり。というわけで、泣いても笑っても最終巻となる今巻の発売日を心待ちにしていました。

同じ高校に通うDKの貴也、智也の本橋兄弟を軸に、彼らの良き友人、そして彼らを見守る大人たちのドタバタコメディーを描いた今作品。

貴也の方がお兄ちゃんですが、智也の方が先に卒業式を迎える。
高校を卒業する智也と、智也の一つ下の学年の貴也と彼らの友人でもあるとみちゃんと恵くん。という年齢の彼らが思い悩むのは、高校を卒業してからの進路について。

家の経済力、好きなもの、これからの展望。
全く異なるバックボーンを持つ彼らは、けれど深い友情と絆で繋がっていて。「本橋兄弟」は基本的にコメディ寄りのお話なので読んでいて思わず吹き出してしまうエピソードで展開していきますが、今作品の大きな魅力は、そのコミカルさと同時に描かれている、深い、様々な形の「愛情」です。

家族愛、友情、恋心、そして大人と若人たちの間で築いてきた信頼関係。
そこを軸に、高校を卒業し大人になっていく貴也たちの「これから」が時にコミカルに、そして時に真摯に描かれていて、もうとにかくめっちゃ良かった。

今まさに青春を送っている若人にも、自分の進路を決め夢に向かって奮闘している人にも、そしてかつての若人にも。様々な世代の人の心に訴えかけてくる、そんな最終巻でした。

貴也が2留している理由とか、要司さんの貴也への想いは成就するのか、とか、その辺りははっきりと描かれてはおらず、読み手のお好きなように解釈すればいいのかなあ、とそんな風に思いました。

序盤は今シリーズらしい智也のダル絡み(いい意味ですよ!)や、とみちゃんのイベントに同人誌を出したいエピソードで爆笑しながら読み進めていましたが、最終話がもうもう…!涙腺直撃されました。最終話は、登場人物たちのセリフが描かれていません。描かれていないのに、どんな会話が交わされているのか分かる描き方が秀逸。そして、描かれていないからこそ彼らの会話の中身を、読み手それぞれの想いで紡いでいけばいい。なんと最高な描き方か、と感心しました。

そして、智也の卒業式の時に、貴也が思い出す「思い出」がもう、これまた泣けて泣けて…。

最終巻にあたる今巻の発売にあたり、特典がそれぞれ趣向が凝らされています。
私は電子で購入しましたが、電子の特典の内容をちょびっと。

タイトルは「数年後」。
卒業式から数年後。
とある場所に、全員で集まって…。

というお話なのですが、これが本編の伏線をきちんと回収した内容になっていて最高すぎる特典でした。いつも一緒だった高校生時代とは異なり、物理的な距離が離れてしまった「今」。でも、いつでも心はともにあって。

最後の最後まで、深い愛情に満ちた1冊。
電子の特典がめっちゃ良くて大満足なのですが、個人的にアニメイトさんの特典も気になる…。とみちゃんの同人誌絡みなのか…?めっちゃ読みたいので、紙媒体のものも買いに行こうかと検討中です。

大好きなシリーズが終わってしまって寂しい限りですが、きっと彼らはこれからもずっと楽しい毎日を送っていくんだろうな。またどこかで彼らに会えることを願って。

今巻も最高。

『無能な皇子と呼ばれてますが中身は敵国の宰相です』の3巻目。
続きものって続巻が進むごとに面白さが半減してしまうものってあったりしますが、さすが夜光先生。巻数が進むごとに面白さがマシマシです。素晴らしいです。

アンティブル国の若き宰相・リドリー。
落雷事故に巻き込まれた彼は敵国・サーレント帝国の第一皇子のベルナールと入れ替わってしまっていた。自国に舞い戻り、そしてリドリーの身体を取り戻したい彼はー。

というストーリーの今作品。

3巻は、白豚皇子と呼ばれていたベルナール(中身は有能なリドリー)がメキメキと頭角を現すようになり、疎ましく思った皇帝から竜退治を命じられてしまいー?

というお話。

いやもう!
リドリーがカッコいい!
竜退治に向かう彼は、決して国のために行動しているわけではない。自分が元に戻るために行動しているだけ。なのに、それが結果的に国のためになり周囲からの支持が上がっていくという。単なる「良い人」「スパダリ」ではないのでめちゃめちゃ面白い。行く先々でトラブルを解決していくさまがクソほどかっこいいのであります。

彼が言い放った「罠に嵌めて抹殺しよう」というくだりにはもう爆笑。彼の本質をズバッと言い表したセリフにしびれました。そして、悪には鉄槌が下り、正義が勝つ瞬間は胸がすく思いです。

そして3巻に入り、なぜリドリーとベルナールが入れ替わってしまったのか?という部分に触れる描写が出できました。今後、どうなっていくのかめちゃめちゃ気になります。

王族であるがゆえに浮き彫りになる世継ぎ問題。
クソでクソな皇帝の存在。
入れ替わってしまったリドリーとベルナール。
今巻で退治に向かった竜の存在。そしてその過程で知り合う国民たち。

バックボーンはてんこ盛りなのに、それらがきちんと繋がり伏線を回収していくさまは読んでいて圧倒されます。

ちなみにですが、リドリーに(術を掛けられているために)忠誠を誓っているシュルツ。この二人がやっと本懐を遂げます。おめでとう、シュルツくん。ページ数はさほど多くはありませんが、この濡れ場がめちゃめちゃエロいです。リドリーの秘密と、シュルツにかけられた術の件もあって身も心も、という感じではないですが、それがまた良い。ジレジレと進む二人の行方もこの作品の大きな魅力の一つだなあとしみじみ。

あとは忘れちゃいけない、サマミヤさんの描かれた挿絵。
もう最高。
リドリーがカッコよすぎて悶絶しました。

何もかもがパーフェクトな今シリーズ。続きが今から待ち遠しいです。

シリアスと甘々のミックスが最高。

作家買い。
兼守さんの描かれた表紙が麗しくも可愛らしく、西野作品ではありますがエロ度は低い作品かな?と思いつつ手に取りました。タイトルの「勇者」「元魔王」というところからも推測できるように、今作品は魔王討伐を描いたファンタジーものです。

ということでレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。





勇者リカルドは、仲間たちとともに今まさに魔王討伐を果たそうとしていた。
「深淵の黒珠」と呼ばれるその魔王・イシュメルを斃すことに成功した彼らだが、実はイシュメルはかつて同じパーティーで魔物を斃していた仲間でもあった。

10年前、魔王を斃した際に魔王が吐き出した「魔王の種子」を吸い込んだことでイシュメルは新しい魔王になってしまったのだった。そして今、仲間であり、そしてほのかな恋心を抱いていたイシュメルを退治する敵として滅したリカルドだったがー。

というお話。

イシュメルという男性がすごくとてもカッコいいナイスガイでして。
彼は魔族ではありますが、とにかく心根の優しい人物として描かれています。彼が魔王になってしまった経緯とか、もうとにかく萌えツボ持っていかれてしまう素敵な男性なのです。

そんなイシュメルを何とか救いたいリカルドも。
彼は王道のスパダリさんです。ザ・スパダリ攻めです。彼もカッコいいです。
魔王を斃す勇者でありながら、彼のすべてはイシュメルのためにある。

ストーリーとしては、魔王になってしまったイシュメルを何とか助けたいリカルド、という展開なのですが、そこにですね、西野さんらしいエロがぶっこまれています。もうエロエロです。イシュメルの体内に残る「魔王の種子」が育っていかないようにするために…、というある意味王道の展開です。1冊のうち半分くらいは服着てないんじゃないかな?と思ってしまう濡れ場の多さです。

が、それでも、かつての仲間たちとのやり取りや、リカルドのイシュメルに向ける深い愛情がきちんと描かれているので、読んでいて心がほっこり温かくなります。敵同士でありながら、今なおお互いに想いあうリカルドとイシュメルの行く末は、というストーリーも面白く、一気に読んでしまいました。シリアスに振り切ろうと思えば振り切れるバックボーンでありながら、甘さと優しさが上手にミックスされた良作。

そして、兼守さんの描かれた挿絵がとにかく美しいです。
この作品の持つ世界観にぴったりで、萌え度は確実に上がりました。

完結編ではありません

世迷いさん原作、りゆま先生コミカライズの「かわいいきみ」の2巻目。
今巻で完結かなと思いましたが、まだ完結していません。世迷いさんが描かれた原作も拝見しましたが、原作で描かれている部分については今巻で完結しているので、今後は原作にないエピソードに突入するものと思われます。

ということでレビューを。前巻ふくめたネタバレがあります。ご注意ください。




DKのナホにはイケメンの幼馴染・カナがいる。
いつもナホに「可愛い」という言葉を投げかけてくれる優しい幼馴染を、ナホも大切に思っている。イケメンのカナが「可愛い」といってくれる自分は可愛いはず。そう信じ込んで今まで過ごしてきたが、高校のクラスメートやカナの友人たちのセリフから、「自分は可愛いどころか、むしろモブ顔なのでは…?」と気づいたナホは…。

というところまでが描かれていた1巻。
2巻は、カナの友人たちの言動から自分はカナから離れた方がいいと思ったナホはー、というところからスタートします。

所々で描かれている描写から、カナはナホに対して恋愛的な意味での執着心を抱いているのだろうと。そう読み取れる部分はたくさんあります。それがりゆま先生の可愛らしい絵柄で紡がれていくので、ドジっ子なナホと、そんなナホに惚れ切っているカナ、というほのぼのなストーリーになっていてもおかしくない。

なのに、ほんのりとシリアスムードが漂う。
理由は二つあると思いました。

一つは、ナホが「自分を可愛い」と信じ切っている痛い子だから。
そしてもう一つは、カナの無表情。
ナホの天然さに対して、カナの感情が読み取れない。カナの表情から彼の感情が読み取りづらいんです。

ナホは高校生なわけで、カナが喜んでくれたという理由だけでお礼に折り紙で折った鶴を渡し続けている。それに対してカナの友人たちはナホに白い目を向けるわけですが、んー、確かに高校生にもなって鶴を渡し続けるナホはちょっと天然ちゃん、というかはっきり言ってしまうと痛い気はするんですよね。

ただ、それを本当にカナが喜んでいる感じならいいのですが、ナホの行動に対してカナが無表情なのでナホへの想いが読み取りづらい。

終盤、カナと想いを通じ合わせたナホ、ということで濡れ場もありますが、そこから一気に甘々展開になっていくのですが、そこもなんかしっくりこない、というか。カナの友人のアオイ、ハクサともに、ナホに対して辛辣だった態度が急にフレンドリーになるのも「?」となってしまった。急展開すぎる感じ。

ただこの辺りはお好みかなとも思います。甘々になって安心した、と思われる方も少なくないんじゃないかなと思いますので。

今作品は、ナホとカナの恋の成就の物語というよりは、ナホの成長物語だったように思います。今まで彼の世界は「カナ」だけで成立してしまっていた。が、彼が自分を客観的に見ることができるようになったことで友人もでき、世界が広がっていく。

カナが、その執着心からナホを囲い込んできたようにも読み取れ、そこには萌えしかない。原作はすでに完結していますが、今後どのようにストーリーが展開していくのかも気になります。

まだ続く作品なので、完結してから読む派の方はしばしお待ちを。
ただ、ストーリーとしては一旦の完結を見せてはいますので(原作はここで終わり)、まず読まれてみてもいいかな、と思います。


読後、心がほっこりします。

櫛野先生は人外ものを多く描かれる作家さまのイメージが個人的に強いのですが、今作品はゴブリンが主人公。ゴブリン、というか、ゴブリンと人間のハーフが受けちゃん、という設定のお話です。





森の奥深くで、ひっそりと一人で生活しているリュイが主人公。
表紙の右側の彼です。

22歳の彼が生まれる前の30年ほど前のお話。世界には魔王が魔物を操り、人間たちを恐怖に陥れていた。が、一人の勇者が立ち上がり魔王をせん滅。魔王亡きあと、操られていた魔物たちは正気を取り戻し、世界に平和が訪れた。

これからは魔物も人間も仲良くしようー。

そんな時にリュイの両親は出会い恋をして、リュイが生まれた。
リュイの父親は人間、母親はゴブリンだ。が、人間の姿をしているもののゴブリンの特徴でもある緑色の肌は斑に広がり、そしてとがった耳を持つリュイは人にも魔物にも受け入れられる存在ではなかった。それでも、両親はリュイを愛し、三人平和に暮らしていたが、ある日母は病にかかり、その病を治す薬を手に入れるために父は森を出ていき、それっきり3年という月日が流れた後も森に帰ってくることはない。

孤独に一人で父を待つリュイではあるが、魔物の友人やリュイが育てている薬草を買いに来てくれる商人もいて、それなりの日々を過ごしている。

が、そんなある日、森でリュイはケガを負った一人の騎士を見つける。こんな森になぜ?と思ったものの、彼の目に失明してしまう危険性のある花粉が付着しているのを見て、思わず助けるために声をかけてしまったリュイだったがー。

というお話。

リュイ視点でストーリーは始まりますが、この騎士・レオン視点と交互に切り替わりながら描かれていくので、二人の感情が分かりやすく感情移入しやすい造りになっています。

リュイは人間とゴブリンのハーフ。ということで孤独に生きてきた過程が読み取れて、序盤から一気に萌えを掴まれました。リュイが可愛いんよ…。母を病で亡くした過去から、彼は病で苦しむ人たちの助けに少しでもなりたいと尽力を惜しまない。

そして、一方のレオンも。
彼が傷つき、森の奥に逃げ込んできた経緯。
彼の素性。
そして、彼が成し遂げたいと願っている「こと」。
レオンもまた、リュイと同じように清廉な魂を持つナイスガイなのです。

一時的に目が見えなくなっているレオンと、ゴブリンと人間ハーフであるという素性を隠したいリュイは、けれどお互いを思い遣り優しい日々を過ごすうちに少しずつ心惹かれあっていくけれど。

レオンの素性と、リュイの隠したい魔物とのハーフであるという因子。
これらが上手に絡み、レオンの目的と、二人の恋の成就というバックボーンが過不足なく進んでいくストーリー展開に圧倒されました。

リュイは一人で暮らしていますが、でも、彼にかかわる人物はいます。
人間の商人であるカガリ。
魔物の友人・フラム。
彼らがまた良い味出していてですね、最後の最後までナイスなのです。

魔物と人間の、過酷な過去から生み出されてしまったすれ違い。
これに関してもきちんと描かれていて、バックボーンとしてはシリアス寄りなのですが、シリアスすぎずに、けれど軽視することなく終始温かな展開を見せるところも非常に良かった。見た目とか種族とか。自分と違うものを排除しようとするのではなく、お互いに歩み寄り、心を割って話し合うことで信頼関係は築けるのだと。多くの方に読んでほしいと願わざるを得ない、心温まるストーリーです。

挿絵を描かれている石田さん。
石田さんて綺麗な絵柄を描かれる作家さまですが、ちょっと色香が強いっていうのか。エロ度が高いというのか。そんなイメージがあるのですが、今作品の絵柄はとっても優しくてきれいでめっちゃ良かった。

今作品には、様々な形の「諍い」が描かれています。
けれど、それを上回る、愛情とか人の優しさとか、家族愛とか。それらもきちんと描かれています。

話し合い、相手を尊重し、自分と違うものにも歩み寄ることの大切さを説いた一冊。読後心がほっこりと温かくなる、そんな優しい作品でした。