条件付き送料無料あり!アニメイト特典付き商品も多数取扱中♪
fusaide
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
栄さんにあんな事があったとは・・・すごい話だったな。天才肌で感情剥き出しで当たり散らす印象だった栄さん、走り続けたのは設楽さんに応えようとしていたんだなあと思いつつ不器用すぎるハリネズミのようだな。ストの時の神がかった指示痺れた!しここで錦戸さん出すとか胸熱すぎて!そしてあの国江田さんの立ち回りっぷり。番外編読んで計に痺れるの何度目かしら。設楽さんが睦人に一生許さないって言ったのお腹にズシンときた。栄のためにあれずっと撮ってたんだよな・
イエスノーシリーズの3カプ目。プロディーサーの設楽と栄のおはなし。
どうして今はこんな関係なのか、過去の奥様の事件、すべてが胸を締め付けられてしんどかったです。前作までがたつきとなっちゃんのほわほわカップルだったせいでこんなにも落差があるのか、一穂ミチ先生おそるべしとなりました。
一穂ミチ先生のnoteに奥様目線の熱海のサンビーチでのはなしがあるので是非読んで欲しいです。何度も読んでいますが読む度に泣いています。
番外篇1、2で名和田深くんがテレビ業界に飛び込むほど憧れ、子分として必死に食らいついていた相馬栄が主役でビックリでした。なぜってパワハラ発言当たり前の独裁者のイメージだったから。何となく「悪人」みたいなイメージでした。
そんな栄の新人時代から、ゴーゴーダッシュが終了するまで、そしてそれからのお話…。とても興味深く読みました。
本編でも一穂ミチ先生は「悪人」を作らないなと思っていたのですが(潮父がその例で)、やはり今回もそうでしたね。
栄が何故他人を信用して人に仕事を振らないのか、もちろん性格によるものが大きいのですが、新人時代に仲の良かった奥睦人の存在がとても大きいように思います。信用していた人間に本人は思いやりのつもりだったかもしれないけど、裏切られる。そのつらさを知っているから他人を信じない、そして呪いのようにテレビの仕事を辞めるなと設楽さんに言われたことがきっと本人に自覚は無いけど仕事をする原動力になっていたと思うんです。
ゴーゴーダッシュで体を壊すまで走り続けた栄にはそれだけの過去があり、ワンマンで仕事をしていたことにもちゃんと理由があって、でもそれをちゃんと距離はあっても見守り続けてくれていた存在があったことに正直とてもホットしています。
そして設楽さんという人はほんとにすごい人ですね。相手の言葉や態度だけではなく、仕事ぶりをきちんと正当に公平に評価してくれる、そんな上司が日本中にいたらと思いますが…。栄のことを後輩として可愛がるだけではなく、嫉妬も抱えて見守っていたなんて…。実際にこんな腹の見えない人がいたら怖いと思うんでしょうが(笑)、口の悪い、そして素直になれない栄にはピッタリの御相手です。
この本で設楽さんが栄に言ったセリフで凄くいいなと思ったのがあって、「お前の悪いところなら俺は50個くらいすぐ言えるけど~」のところですが、こんな告白されたらそりゃ白旗あげるに決まってます!(?)いい所も悪いところも含めてちゃんと好きだってすごい告白だなと思ったんですよね。恋愛っていい面だけを見せれる訳では無いから。そんな告白をBL小説で拝めてとても幸せな、満たされた気持ちになりました。
設楽×相馬は、全く頭にもよぎらなかったのでかなり驚いた番外編。
しかし一穂先生の魔法の筆の力を以ってすれば、こんなにも素晴らしい仕上がりになるのですね。設楽×相馬……アリです。
名和田と竜起カプの番外編で登場していた相馬に特段思い入れもなかったけど、こうして物語の主人公として彼の視点でストーリーを追うと、こんな展開があるのか…こうくるのか…と相馬に興味が膨らんでいきました。
やっぱりただのBL小説じゃなかった。
奥深いヒューマンドラマを観た気持ちです。
同僚と上司の不思議な3人の関係や、心のトラウマ、相馬の仕事への向き合い方など、私の言葉では言及し尽くせないたくさんの大きなドラマや小さなドラマがありました。
番外編3は一穂先生の作品ではあるけど、プロデューサー相馬によって作り出されたもので、私は彼の才能によって創出された世界にいるんじゃないかと思いました。後半の相馬の報道番組の仕切り…えげつなかった。あまりにも凄すぎてそう錯覚してしまいました。それを可能にしたのは圧巻の筆致と繊細で隙のない描写、そしてその画を動き回る魅力的なキャラクターたち。
相馬というキャラクターを描くのって難しいと思うんですよ。態度も口も悪いし、天才だし、気難しくて一筋縄じゃいかない、そんな人。こんな相馬の側に、スッと入ってくる設楽の存在感と空気感がすごく良い。絶妙な距離感です。
2人は両想いから身体を繋げたわけじゃないけど、それでも良いと思える流れでした。心が荒れていた相馬を救う意味でも、設楽の欲情の意味でも見応えあるシーン。この出来事があったから、11年後の相馬があります。
相馬は腐らずに制作の仕事を見事にこなしていたのは設楽のおかげだったんですね。設楽=テレビ業界にしがみつくことが相馬の身体に染み付いたんだと思います。仕事に忙殺することが相馬の才能を開花させ、そしてテレビ電波を使って遠方の設楽にメッセージを送り続けた。
設楽がどれだけ嬉しかったことでしょうか。彼が本社に戻る大きな原動力になったのかも知れませんね。
設楽の相馬に抱く愛は、フワッと包み込むように優しい印象でした。相馬の危なっかしいところも全部理解して抱きしめてくれるような、大人の愛。相馬の方は、設楽への愛情を明確な言葉で返事しなかったけど、設楽のことを本能的に求めて愛しているのが伝わりました。
ボーイズラブというより、メンズラブといった大人の香り漂う2人のセックスシーンは、情熱的でゾクゾクしました。設楽の畳み掛けるベッド上での愛の告白は、現場にいたら鳥肌&腰砕けすること間違いなし。
2人のその後がとても気になります。
番外編4も楽しみです!
今まではシリーズ通して明るいキャラクター同士のほのぼのBLだったので、今回は大人な雰囲気でびっくり。
今までは脇役として登場していたプロデューサー設楽と栄のお話でした。
あの2人の若かりし頃そんな過去があるとは想像もしてなかったので驚きました。
中盤で2人とも異動させられてしまうのですが、別れのエッチシーンに入っても、2人の関係に戸惑いました。
というか栄が受けなのか!?意外すぎます!
終盤のシーンである事件がきっかけで疎遠になってしまった友人へのインタビュー映像を2人で観るシーンは感動しました。
見せ方の上手い作家さんだなと感心します。
話の雰囲気はだいぶ違いましたが、あいかわらず心理描写が秀逸で先の展開が気になり一気読み。意外な展開が多くて面白かったです。
イエスノーシリーズ第6作目です。
シリーズ通しての登場人物設楽Pと、第4作目に登場した相馬Pが主役になります。
人気深夜バラエティ番組のPとして自他を犠牲に走り続けた相馬栄は結果、体調を壊し倒れる。病院で目覚めた時傍にいたのはかつて報道にいた頃の上司、設楽宗介だった。11年離れていた彼と相対し、栄は彼が自分の元を去らざるを得なくなった11年前、なにもかもふさいで欲しいと請うた11年前に、思いを馳せる…。
という感じの導入で、話は11年前に移ります。2年目で報道のDになった栄さんがPの設楽さんと同い年のデザイナーの奥くんに出会い、映画を観たり呑んだりと気の置けない関係を築いていきます。しかしある事件をきっかけにその心地良い日常は崩れ去ってしまうのです。
ところでシリーズ4作目「横顔と虹彩」は読了済みでしょうか。こちらを単発で読もうとしている方、最低でも4作目はご覧になった方が良いです!栄さんが主役カップルを喰う勢いでキレッキレに大暴れ…活躍しておりますので、また今作の導入にも関わります、出来れば先に読んでおいて頂きたいです。
栄さん設楽さんの性格もそちらを読んで頂ければお分かりだと思いますが軽く紹介すると、栄さんは新人ながらセンス溢れる仕事ぶりと歯に衣着せぬ堂々とした物言いで周囲に敵を作り続ける、なかなかぶっ飛んだ性格をしています。傍若無人で傲慢で恐れ知らず、口が悪く酷い罵り方もするけど理不尽な怒り方はしない(設楽さん曰く「怒る理由は常識的、度を越してるのが表現の仕方」)、一本筋が通った案外まっすぐな性格で、ただの性格の悪い奴ではないのですぐに好感を持てます。現実にいて欲しくはないけど(笑)
設楽さんは、軽くて緩くて親しみやすく、基本好きにやらせて最後の責任だけは取ってくれる、理想の上司のようですが反面冷たく無慈悲なところも見え隠れする…といった敵に回したくないタイプの人ですかね。(初対面の栄さんをして「俺より口悪いっすね」と言わしめた)
そんな二人が11年かけて互いの隙間を埋めていく、紛れもない愛の話なのですが、BLだけに留めておくには勿体ないほどに壮大なストーリーなのです…!放送業界で働く人々の葛藤、裁けない罪を裁いてしまった罪と罰、裏切り、憎悪……。読み終わった後、溜め息が出て、目頭が熱くなって、映画でもないのにそれぞれの場面が映像として頭の中を駆け巡りました。熱海の海辺の美しさが脳に焼き付いてます…行ったことないけど。
シリーズものの番外編であることが勿体ないと思う一方、このイエスノーシリーズのうちの一作で良かったとも思います。
一穂先生の作品の魅力の一つである「セリフ回しも地の文(細かな描写)も一言一句漏れなく萌える」によって、笑いっぱなしきゅんとしっぱなし、切なくなってわくわくしっぱなしで、改めて読書っていいなあと感じました。
それから後半で11年後の退院後、夜ニュースの助っ人に呼ばれた栄さんが一日Pとしてキレッキレになるんですが、この話まじで面白くて最高です。とにかく面白い。シリーズの主人公国江田さんは笑顔の下、心の中で毒を吐きまくりますが、栄さんは毒をそのまま直接吐き捨てます。大先輩たち相手にも。そのやり取りがもうおかしくてたまりませんので是非。
あとはカップリングとしてですが、設楽さんは栄さんの飾らなさ(「おかしくもねえのに笑えるかよ」「思ってもないこと、言えるか」)にどれだけ救われてきたんだろうと、そんなところにどんどん惹かれていったんだろうなと思います。栄さんは栄さんで、自分の作るVを見てきらきら目を輝かせて楽しむ設楽さんの期待に応えるのが楽しくて、つまらないとがっかりされたくなくて、離れてからもずっと設楽さんという存在が心から消えなくて走り続けた。間違いなく、二人とも11年前から両想いだったんですよ…!おっふ尊い…。
濡れ場も一穂先生は相変わらず濃厚です。直接的にドエロいわけではないのに一つ一つの文章や言葉選びやちょっとした描写が濡れ場としめの甘さと濃さを垂れ流してます。設楽さんの包容力と情熱にメロメロです。栄さんのエロカッコ可愛さにイチコロです。ラブラブやーん!
シリーズで一番好きな話とカップリングです。相馬栄にやられました。勿論次作「つないで」も最高ですので是非このカップルにハマってください!
性格は破綻しているけれど才能があってテレビプロデューサーとしては秀でた栄。
これまでのシリーズ中では良くも悪くも引っ掻き回したり焚きつけたりしていた彼の過去と現在です。
登場するたびに性格も人間性も最悪と思いつつも気になる人で不思議に思っていました。
そして、設楽とただならぬ過去がありそうななさそうな雰囲気が面白くていつか取り上げてほしいと思っていました。
栄は若いころからとんがって全身ハリネズミのようにいつも周り中敵だらけみたいな様子でしたが、仲間との交流があったり友情を感じてもいたころがあったのは意外でした。
そして将来自分にあこがれて業界にやってきた若い子(名和田)を子分にする流れになるというのがよくわかりました。
業界の描写が細かくて面白いので恋愛の展開以外もすごく興味深く楽しめました。
なんといってもやっぱり大好きな国江田さんの活躍が見れたのはうれしかったです。
どんなに無茶を言われても、当たり前のようにさらっと実行して何事もなかったような顔をしてるところが彼らしくていいです。
出来ればその時の心情(本音)を聞かせてほしいところです。
前作の栄氏登場時の印象が最悪で、「あーこういうマネジメントできないプレーヤー型の平成パワハラおじさん本当に嫌い!」って思ってたので本作にハマるか不安だったのですが、そんな栄氏が受で設楽氏に絆されてるのがたまらなくて結果的に大好きな作品になりました。
一穂作品の、新聞社シリーズをはじめとする平成を駆け抜けたお仕事おじさんが好きで、本作も令和のモラルやルールに乗り切れていないクセのある受けが、信頼と尊敬を預ける攻めとの関係に恋愛を足す感じがすごく好きでした。
一穂作品の醍醐味が詰まってると思います。
あとちょびっと出てくる国江田さんのかっこよさにしびれました!国江田さん最高。
イエスノーシリーズ、スピンオフ第2弾、3カップル目、こちらの主人公は飄々としたニュース番組の統括プロデューサー・設楽と、才能はあるけど性格に難がある一匹狼プロデューサー・栄。
この作品は2人の出会いと別離からの再会までを追う物語です。
設楽は本編第1作から飄々としているけど油断ならない人物として、ちょこちょこ登場しています。
栄はスピンオフ虹彩シリーズ第1作で、かなりのインパクトを残した人物。そちらで重大イベントだった出来事がこの作品でも設楽&栄側から改めて描かれているので、あわせて読むと感慨深いです。
さて、あらすじはというと。
2人の出会いは設楽がプロデューサーを務めるニュース番組に、入社2年めの栄がディレクターとして異動したところから。
元々栄の作ったVTRに惚れ込んでいた設楽は、無愛想でトゲトゲした栄の傍若無人な態度をものともせず、ひとまわり年下の部下のくせして態度がでかい栄に楽しそうに関わり、栄の仕事を称賛します。
そういう人物に初めて出会った栄は、警戒しつつも、何を考えているかわからない設楽に興味を惹かれ、設楽とつるんでいる奥と共に、裏表のない交流を持つようになります。
そんな矢先、とある出来事がおこります。
抜身の刃のような攻撃性の裏に、本人は認めない無防備で繊細な感性を持つ栄は、その件のショックで身体を壊し、心を閉ざします。
設楽は設楽で、その件のせいで遠方へ左遷され栄の元を離れることになります。
それでも栄の才能が活かせるようにと、彼を制作部門に送り込むのですが、設楽が自身のキャリアを犠牲にして自分を庇ったことに対し、栄は憤りを覚え、2人は一旦は袂を分かつことになります。
それから11年。
栄は制作部門でその才能を開花させ、のめり込むように番組作りをしますが、才能が突出するが故に周りがついていけず、さらには生来の傍若無人な一匹狼ぶりでどんどん孤立して行き、最終的にはトラブルによって心血を注いだ番組が打ち切られるまでになり、また身体を壊してしまいます。
地方を転々としていた設楽はようやく栄がいる東京に返り咲き、そんな状態の栄と再び対峙して…、という。
本作品、BLであるにも関わらず、恋心などのいわゆる恋愛的な要素はあまり語られません。
代わりに丁寧に描かれるのは互いの互いの仕事に対する執着です。設楽はクリエイターとしての栄の才能に嫉妬し執着します。他方栄は設楽の人を見る目と活かす手腕をかなわないと思い、設楽の観賞眼を常に意識します。
バラエティの番組作りは、鶴の機織り、身を削ってする事だと設楽は言う(「横顔と虹彩」参照)のですが、離れている時も常に設楽の目を意識して身を削って作品を作る栄と、離れていても常に栄の番組を追い続けた設楽。
それは一般的な恋愛とは違うかもしれないけれど、心と身体の捧げ具合でいえば、一般的な恋愛も真っ青なほどの捧げっぷりです。
この二人、本当に触れ合えるのなら、何より互いの脳味噌に触れ合いたそう。相手の思考を丸ごと食べたそう。
I love youというより、I want youという感じ。
そして求める「貴方」とは、まず何より相手の脳味噌で、その脳味噌に近づくために、容れ物としての身体に触れるセックスをしているのでは、とさえ思えます。
特に栄については、自身の身体にも世間の常識にもあまり頓着しないこと、とにかく設楽自身の思考ややりたいことが知りたくて仕方ない、そのためには自分の身体丸ごと投げ出しても構わない、と言った風なのでその趣きが強いです。
一昔前の壮大なファンタジーだと「魂が求め合う」的な、こういう関係もちょいちょい見かけたものですが、現実にあるお仕事の場を舞台に、しかもお仕事小説としてのリアリティを保った上で(この物語、番組プロデューサー同士の仕事ありきの話というのもあってテレビ局のお仕事の描写が実に丁寧で魅力的なのです)、こういう関係性を描けるのってすごいなぁ。惚れ惚れします。
そういう仕事ありきの関係性なのと、本心が読めない人物として設楽が描かれている事もあって、設楽主導で初めて身体関係を結ぶシーンは若干唐突にも思えたのですが、本作で描かれる二度目のシーンや、次作&未単行本化の番外編を読むと、栄はともかく設楽は、クリエイターとしてだけでなく、生身の人間として栄の身体と心を欲していることがじわじわと伝わってくるので、それを踏まえて読み直すと違和感はなくなります。(とはいえいつかディレクターとしてではなく恋愛対象として栄を意識するまでの物語も読みたいところではありますが。)
あとこの物語で面白いのは2人の人物造形でしょうか。
「本編の悪キャラが、スピンオフでは実は心に傷を負った可哀想な良キャラだった」なんていうテンプレ展開は特になく、栄は生育環境のせいにすることなく、栄の責任において社会不適合レベルの傍若無人さを保っています。
そして設楽は設楽で、BLにありがちな「設定では読めない人物となっているけど、物語内では内面だだもれの執着攻め」ではなく、容易に本音をみせない、読めない人物としての造形を保っています。
悪い大人と読めない大人のままだからこそ、そんな2人が、生身で、本気で、本音で邂逅する姿が一層魅力的に映るんですよね。
そして、だからこそ少しずつ本音が見えてくる、続編への期待が高まるのかも知れません。
本作での二人の関係は、包容力に富んだ保護者×傷ついた天才被保護者、あるいは世渡りに慣れた親鳥×まっさらな雛鳥、といった面が割と強くでているのですが、続巻の「つないで」では、そんな二人が背中を預けあえる戦友、パートナーとなっていく姿が見られて、それもたまらなく魅力的です。
気が狂うほどあまりにも大好きすぎてレビューできていませんでしたが、続篇「つないで」が出たのでこの機会に。
イエスノー本篇はとても面白いけれど、どハマりのCPではないかな~と思った人にこそ、読んでいただきたい「ふさいで」。
過去・喪失・再会・仕事・才・葛藤・嫉妬…、この辺りのワードに高まる方には刺さるのではと思います!
なお、イエスノー番外篇1「横顔と虹彩」だけは、何が何でも先に読んでから手に取ってもらえたら…
冒頭に少し不穏なワードを並べてしまいましたが、読後に感じるのはとても〝優しい〟話だということ。
もがき苦しまなければならない道へ進ませるのも、明るい場所へと導いてくれるのも、誰よりも自分を分かっているたった一人の男。
番組作りの天才・相馬栄と、「ザ・ニュース」のプロデューサー・設楽宗介、二人の11年間の道のりです。
栄の才に執着し続けた設楽。イエスノー1巻の時点から、彼は栄のために動いていたのかと考えたら震えてしまう…
11年前、デザイン室の奥睦人を交えて三人で過ごした日々は、キラキラ光る青春時代のよう。
これまで人との交流をほぼしてこなかった栄にとって、純粋に楽しい時間だったんだろうなと思うと涙が出てくる…
天邪鬼な本人はひと言もそんなことは言いません。が、読者(というか私)にはそう見える!
陽の光、夏の植物、熱海の海、栄の目を通して見る世界は美しく、とても印象的です。こういう風に世界が見えているから、なっちゃんが「優しい」と感じるような、素晴らしいVを作れるのかなと。
また、始めは警戒していた栄の心を動かした、ニコラシカ、睦人の嘘のない目、設楽の「栄」呼び…このどれもが色褪せず鮮明に、栄の心に刻まれているのだと思います。
しかし、作中でひときわ濃く描かれた楽しい時間はたった数カ月で終わりを告げることに。
「現実なんか撮って何が面白いんだよ」、「横顔と虹彩」で出てきた栄の台詞の理由が痛いほど分かります。
ボロボロに傷ついた栄を、自分にしかできない方法で安心させる設楽。
テレビの世界につなぎ留められた栄は、心の奥底に設楽からの憧れと嫉妬を抱えて走り続け―。
そして現在、再び倒れた栄の前に現れた設楽。
いつも食えない笑顔を装備する彼が、栄に関することで見せる怒りやエゴ、懸命さがたまりません。
憧れとともに嫉妬をぶつけてくる設楽に対し、実は栄も悔しい・恥ずかしいといった思いを持っていて。正反対なようで、あるベクトルでは似ているんですよね、この二人。
お互いごちゃまぜのドロドロした複雑な感情を、読者として掘り下げていく楽しさといったらもう…
終盤、まるで詐欺師のように栄を丸め込もうとしてくる設楽の手腕はお見事(褒めてます)。
自分からはなかなか行動しない栄に対しては、それくらいでないと!
それにしても、「好き」とは言わないけれど「俺の男」という響きに気分がよくなる栄がかわいすぎる…!
もうとっくに好きだと思うよ…と言いたくて仕方がないけれど無粋なので自重します(いや、声すら届かないけど)。
どんなに後悔しても、現実は巻き戻せない―。
物語中盤で涙したこの言葉。一時停止も巻き戻しもできないけれど、進めば新しい世界が始まる、そう栄が思えるようになったことがもう本当に嬉しくて嬉しくて…何度でも泣いてしまう。
三人で過ごした日々から立ち上がれず、ふさがれたままだった栄が前へ。その先には、設楽が作り上げた栄のための場所が待っています。
最後になりましたが、忘れてはいけないストライキパート。かっこいい国江田アナが読者の心をかっさらっていきそうですが、どうか、どうか相馬栄をお見逃しなく!
設楽がここまで執着するだけの栄の能力のとてつもなさに、一人でも多くの方が打ちのめされますように。
まんまとやられた皆さま、沼の底でお待ちしております。