これが初恋だなんて気づかなかった

白のころ

shiro no koro

白のころ
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神33
  • 萌×221
  • 萌7
  • 中立2
  • しゅみじゃない2

--

レビュー数
15
得点
272
評価数
65
平均
4.2 / 5
神率
50.8%
著者
三田織 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

媒体
漫画(コミック)
出版社
東京漫画社
レーベル
MARBLE COMICS
発売日
価格
¥629(税抜)  
ISBN
9784864420563

あらすじ

片田舎で暮らす太一の中学に、都会から転校生・藤がやって来た。
背が高くクールな藤とチビで元気者の太一、見た目も性格も真逆なふたりだったが、バスケをきっかけに意気投合。
格好いい友達が出来たことに、ひとり浮かれる太一だったが、藤から突然キスをされて―?

(出版社より)

表題作白のころ

太一,中学生→大学生
藤本,中学生→大学生,転校生

同時収録作品春は半歩先/春が来ちゃった ~幸男のきもち~(描き下ろし)

朝見幸男(サラリーマン、社長の甥)攻め受けなし
森口(サラリーマン)攻め受けなし

同時収録作品オフィーリア/その後のふたり ~葉山のきもち~(描き下ろし)

木下由良(高校生、美術部)攻め受けなし
葉山(大学生、美術部のOB)攻め受けなし

同時収録作品クリスマスブルー/お正月ピンク ~むっちゃんのきもち~(描き下ろし)

橘あおい(大学生)攻め受けなし
岩尾睦彦(サラリーマン)攻め受けなし

同時収録作品まほうのおくすり

日野(サラリーマン)攻め受けなし
羽田頼正 攻め受けなし

その他の収録作品

  • 青のころ ~藤のきもち~(表題作の描き下ろし)
  • あとがき

レビュー投稿数15

切なくて優しい三田織ワールド

三田織先生のデビューコミックス。短編集です。
デビュー作の「まほうのおくすり」以外は、描きおろし後日談ありです。
特に好きな2作を。

表題作「白のころ」はザ・三田織ワールドといった作品。
都会からの転校生・藤。なかなか馴染めなかった藤の心をピュアな太一が解いてゆく。
太一への想いを自覚する藤。恋を知らず藤との関係性に戸惑う太一。そして藤は再び都会へ。
初恋のほろ苦い思い出で終わるかと思いきや、描きおろし「青のころ」でその後大学生になったふたりが・・・想像と受け攻め逆だったw
チビだった太一がでっかいワンコになってて可愛いかったです。

「クリスマスブルー」この作品がいちばん泣けた。
大学生あおいのバイト先の定食屋のお客さん睦彦さん。
あおいへ密かに想いを寄せる睦彦さんは、彼女へのクリスマスプレゼント代を工面しようとしているあおいに時給4000円の「お話相手」のバイトを提案する。話の展開としては正直言って突飛だなーと感じたんだけども、睦彦さんが「そうでもしないとホモの自分の相手なんかしてくれるわけない」と気持ちを吐露するシーンは思わず泣いちゃいました。睦彦さん健気すぎる(泣)
結局あおいは睦彦さんからもらったお金は使わず、彼女へプレゼントも渡さず別れることに。
お正月はなぜか睦彦さんちで過ごすあおい。睦彦さんへの想いが育ち始める…。

三田先生の描くちょっと切なくて優しい世界観にあふれた作品集でした。

0

優しさの詰め合わせ

作家買いしてる三田織先生の短編集でした。
5つのお話と、4つにはその後の描き下ろしつき。
最後のお話は三田先生のデビュー作だそうで、描き下ろし無しでした。

どのお話も優しさに満ちていて、読後はほっこりとした温かい気持ちになれます。
短編だけでは物足りない部分を描き下ろしで補足してもらえる、安心感。そんなところまで優しい。

どれかにフォーカスするとすれば、最後の『まほうのおくすり』でしょうか。
高校時代の辛い思い出から、出会い、幸せな現在の2人の生活。
"まほうのおくすり"はもう必要ないんだよっていうお話なのですが、くすりの中身をああいう風にすることで母親の気遣いや愛情も感じられて、ちょっと辛い設定ですがそれを昇華できる展開になってるのが素晴らしいと思いました。
こんなに短いお話で色々考えさせられて、読後感の良い作品はなかなか無いのでは。

こういう作品をもっと読みたいなぁ、って思える一冊です。

1

愛おしさの連続

◆白のころ(表題作)
 初っ端から可愛い中学生達だなぁと、萌えと胸キュンが止まらない2人でした。背が小さくて丸っこく、目も純真でくりくりな太一が可愛いのはもちろん、思春期に都会から田舎に転校になりもっと不貞腐れていてもおかしくなさそうな藤本が、バスケや雪ではしゃげるところも年相応で可愛くて。藤本の告白によりぎこちない別れになってしまった2人は大学で再会し、恋人に。ここで体格差が逆転して、太一が攻めなのがまたたまらないんです。顔は可愛い系のままだし、おっとりした性格も変わらないけれど、幸せ過ぎて不安がる藤本を、穏やかでどっしり構えた言葉で安心させるところに、イイ男になったなぁと思いました。

◆オフィーリア
 好きな絵の作者だという先輩・由良を、真っ直ぐ追いかけ続けた葉山が素敵でした。何か気に障ることを言ってしまったかも、と思ったらすぐ戻ってきて話したり。本当に素直なんです。一緒に海に行って楽しそうにしている様子も、これは愛おしいと思わずにはいられないよなぁと。傷心だった由良が、新しい恋に踏み出せた嬉しそうな表情が印象的でした。

◆クリスマスブルー
 大学生に時給4000円を払って話し相手になってもらうサラリーマンの話。なかなかのトンデモ導入ですが、あおいとただ一緒に過ごしているだけで満たされている睦彦を見ていると、いくつになっても純粋な恋ってできるものなんだなぁと温かい気持ちになります。でも、今までの寂しさが募りに募って爆発した、彼の本音は切なくて。結局はなあなあで付き合っていた彼女と別れたあおい。彼はただ孤独な睦彦に絆されたわけではなく、今まで共に過ごした時間が彼の心に沁み込んでいたんだろうなぁと思います。

1

その一つ一つがいとおしい。

『白のころ/青のころ ~藤のきもち~』
中学生の太一の通う学校に都会から藤が転校してきます。
田舎っ子たちの間で都会の子として浮いている藤でしたが、
バスケをきっかけに2人は仲良くなり…。

坊主頭に太眉の純朴な太一とイケメンで
同年代の子たちに比べると大人びた藤。
恋の甘酸っぱさを先に知ったのは藤でした。

友情から恋に変わるとき、一足先に恋をしてしまった藤と
真っ白なままでまだ恋を知らない太一のすれ違いが切ない…

このまま終わってしまうの?と思ったら…
なあんだ、そういうことか。
思わず頬が緩んでしまいました。

描き下ろしは2人の再会と恋人同士になるまで、なってから。
小さくて、子ザルのようだった太一が大きくなっていてびっくりです。
これは完全に攻受交代です(笑)
でも、中身は相変わらずで、大きくなっても素直なまま。
幸せいっぱいな2人がすごくいいなぁ~


『春は半歩先/春が来ちゃった ~幸男のきもち~』
彼氏にフラれてしまった森口。
気持ちの整理がつけられず、元カレの花屋を覗きに通っていると、
現場を社長の甥っ子に目撃されて、花屋の〝女性〟店員に恋している
と勘違いされてしまい…。

社長の甥っ子・幸男が能天気でおせっかいで、
はじめのうちはそんな彼にイラっ☆としてしまいました。
だけど、ちがった、本気で良かれと思っているみたいで、いい奴でした。

酔った森口にゲイであることをカミングアウトされて、
「ゲイの苦しみがわかるのか」って言われて、
引くでもなく、逆ギレするでもなく、真顔で考え込んで
「わかんないや」と真摯に答える姿にイメージアップ!

描き下ろしでは
「俺のこと好きになってもいいよー」なんて言われて
赤面しちゃう森口と、ゲイじゃないくせに
そんな森口の反応にドキドキしちゃう幸男のやりとりにニヤリ。
もはやバカップルでは?と恋の予感を感じ終えます…。


『オフィーリア/その後のふたり ~葉山のきもち~』
一枚の絵が繋いだ2人。
学園祭の催しで由良はずっと憧れてきた絵画の作者に出会います。
過去に悲しい恋の思い出を抱える葉山だけれど、由良に救われて良かった…。

描き下ろしでは由良の憧れが恋に発展して…。
葉山の方ではとっくに恋になっていたんだね。
鈍くて、初々しくて、もじもじする由良が可愛かったです。
葉山先輩、頑張って!


『クリスマスブルー/お正月ピンク ~むっちゃんのきもち~』
彼女に高価なクリスマスプレゼントを買うために
掛け持ちバイトを探していたあおいに常連客の睦彦が声をかけてきます。
それは突然の〝愛の告白〟と、〝話し相手になる代わりに時給4000円払います〟
というものでした。
怪しみながらもお金が必要だったこともあり、引き受けてしまうあおい。

そこにある想いは誰よりも純粋なものなのに、
お金という不純な動機から繋がった睦彦とあおい。
はじめはただのお金目当てで、睦彦には無関心なあおいだったけれど、
一緒の時間を過ごすうちにあおいの中で何かが変わり始めて…。

「俺ホモだもん」なんてそんなこと言わないで。
お金でしかあおいを繋ぎ留めれないって思ってるの?
なんでそんな悲しいこと…
だけど、きっとこんな風に自虐的になるしかないような
たくさんの辛いことがあったのかな…と切なくなりました。
睦彦が健気で、一途すぎて泣きそうに泣きそうでした。

描き下ろしではそんな睦彦がほんの少し報われます…よかった~(´;ω;`)
本編でがんばった睦彦へのご褒美パート。
睦彦の健気さに心打たれ、やっと正面から向き合いはじめたあおい。
まだ恋にまではいかないけれど、これはきっと恋の予感♡
ばあちゃんが寝たふりしたり、フォロー入れようとしたり
しているのに笑いました。


『まほうのおくすり』
同性愛者の息子を病気といい薬を作り、
幸せになれないなんて呪いの言葉を吐き続けてきたお母さん。

だからこそ、今、好きな人に出会い、愛し合い、
幸せそうな2人があることにこの上なく幸せを感じた。

ある意味、このお母さんもちょっと病気なのかもしれない。
ありのままの自分を見ようとせず、受け容れるようで拒み続けてきた
母親を捨てるでもなく、受け容れようとする終わりは意外に後味は悪くない。

恋未満のお話から、恋が成就するお話、
恋に破れてまた新たな恋の予感が訪れるお話、
と色んな恋の形が詰め込まれた短編集でした。

決して派手ではないけれど、どれも心に突き刺さる
すごく素敵な話ばかりでした。
一つ一つのお話が読めば、いとおしさで胸がいっぱいになりました。
描き下ろしだけでは物足りなくて、もっともっと
その後の彼らのお話を読んでみたいなあと思ってしまいました。

1

これは運命の二人だよ、きっと

三田織さんの初コミックです。

良かった!なんか上手く言えないけど空気感とか距離感とかキャラとか時間の流れとかみんな良かったです。

表題作は田舎の中学に横浜から藤が転校してきて。都会からのイケメン長身バスケもできる転校生。
太一が裏庭のバスケットゴールを使わせてあげて仲良くなっていきます。

しかしこの時点ではまだ太一が子供過ぎて…藤の想いに応えられません。一緒にかまくら作って中学卒業と同時にお別れ。

そして3年後大学受験会場で太一が腹痛を起こして座りこんでる所に知らずに助けに声をかける藤。
びっくりする二人。
そして太一が藤が初恋だったよと告げて。

そして現在、同じ大学に通ってお付き合いもしてて。藤にとっては太一は忘れられない人で、出会ったのも再会できたのも付き合えたのもみんな奇跡の連続で、一生の運を使い果たしたのではないかと。

そしたら太一が運命だよって。

あー太一だなあ。ちょっと大人になって藤を受け止められて。
本当に良かったなあ。あの頃には出来なかった事が分からなかった言えなかった恥ずかしかった事が皆出来るよ。

0

うーやっぱり天然ってかわいいなあ・・・。

三田先生の別作品「僕らの食卓」が神りすぎていたので
過去作購入しました。

絵の素朴さは変わらず、作品集としては色々なものが読めましたので満足です。

一番好きなのは「オフィーリア」です。
恋人を亡くした大学生×天然後輩
この天然具合がすごくいいとこつくんですよね。

「先輩より長生きするから!」とかキュンとします。
本人には特別な好意がないけれど、相手をキュンとさせるのって
こういうところなんだよ・・・とグッときます。

その後のデートの短編もよかった。
にぶいっていうか、先輩もちゃんと言えよ!!雰囲気でこの天然が気づくか!!
とこっちがヤキモキするのをこのページ数で感じさせるとは・・・
大好きです。

あー早く新しい作品でないかなー。次の作品が楽しみです。

0

愛おしいキャラばかり

三田さんの作品に登場するキャラが好きです。
声高に主張せず穏やかで人当たりが良くて、それゆえ時々傷つくようなことがあってもどこかグッと我慢しちゃうような読んでてつい愛おしくなってしまうキャラたち。
そういうキャラが出てくると、どうかこのキャラがこれから先、辛い目に会いませんように…とか、さらなる幸せがいっぱい降り注ぎますように…とか読みながらついつい願ってしまうことが多いのだけど、この一冊の中にもそういうキャラがたくさんいます。

【白のころ】【青のころ・描き下ろし】
これが一番好き。
都会からやってきた転校生の藤と太一は仲良くなるのだけど、藤からキスをされてしまい…。
藤は恋を自覚しているけれど、恋を知らない太一はクラスメイトに揶揄われたこともあって俺はホモじゃない…と動揺してしまいます。
そんな矢先、藤が再び横浜に戻ることが決まり、これで全部元どおりじゃ!モヤモヤともおさらばできる!と思った太一は、藤に「ふるさとに戻れるんじゃ!ほんまに良かったー!うれしいじゃろ?わしもうれしいっ!」と笑顔で言っちゃう。ぎゃー残酷。
藤がキスしてきた意味もわからないような太一、そしてこんなことを面と向かって言えてしまうくらい太一は子供だった訳で…。
再会してからのお話はとても嬉しい。藤が幸せすぎて不安に感じるほど太一のことが好きなんだというところが、なんだか過去の思い出と相まって切なくなるのだけど、「運命じゃ」と言い切る太一が身長だけではなくちゃんと心も成長したんだなと思わせてくれて好きです。

その次に好きなのが【クリスマスブルー】
彼女からのクリスマスプレゼントのリクエストは5万円のブランド財布。それを買うためにバイトを掛け持ちしようかと思っていたところ、それを聞きつけたバイト先の常連から時給四千円で話し相手になってほしい、好きです…と告られて…。
この告ってきたリーマン・むっちゃんは普段はきっと物静かで控えめ(どころか引っ込み思案だと思う)な人だと思うんだけど、ただただ一緒にいたい…!という気持ちが募った末の申し出でして、恋は人を大胆にするんだなと。
あおいは友人からぜったい掘られるぞ!なんて警告を受けていたんだけど、そんな雰囲気はさらさらなく二人でのんびりこたつにあたっておしゃべりしたり、テレビを観たりしてまったり過ごすだけ。

むっちゃんが純でめちゃくちゃいい人なんで、このむっちゃんのことを絶対に傷つけないで〜!あおい頼んだぞー、お前がしっかり幸せにしてやれよー!といつも思ってしまう。

【春は半歩先】【春がきちゃった】
花屋勤務の恋人に振られてしまったゲイの森口。彼の事が諦め切れなくて、変装して花屋で働く元恋人の様子をこっそり伺っていたところ、同じ会社で働く社長の甥っ子にその現場を目撃されてしまいます。
おまけに花屋の女店長狙いだと勘違いされてしまい…。森口さんの恋を応援する!とおせっかいを焼かれるのに辟易していた森口が、俺がつきあってたのは、ずっと見てたのは男の方だ!バァーカ!と泣くところが切なくなります。

【オフィーリア】【その後のふたり ~葉山のきもち~】
高校の美術室にある絵に一目惚れして美術部に入った由良。その絵を描いた葉山先輩と出会って…。
絵のモデルは高校時代の葉山の恋人(男)でこの絵を描いた直後にそのモデルは事故で死んでしまい…という過去持ちの葉山。

由良が超ワンコ気質で可愛いんです。
悲しい過去を抱える葉山のことをこのままほおっておけない、なんとかしたいと思った末に、辛いことがあったらためこまないで俺に言ってね、「先輩より若いし、長生きするし、だから安心して大丈夫!」とか何そのセリフ、かわいいー。長生きするし…とか癒される。
「恋ってどういうものですか?先輩とこうして二人でいると楽しくてドキドキしてこれって恋なのかなぁ。こんなの初めてでよくわかんなくって…っ」って葉山に聞いちゃうところもかわいいんです。
そして超無自覚&超ニブチンなんだけど、自覚したら無敵のワンコになって葉山のことを愛情でくるんでくれること間違いなし。

【まほうのおくすり】
同性愛を治すお手製の薬をせっせと作り続けている母親。同性愛が治る薬があったら死ぬほど欲しいと願っていた時もあったけど、今、恋人と幸せに暮らしているからそんなものがあったとしても必要ないと思える二人。
同性愛を病気だと決めてつけている母親という何とも胸がざらつくようなキャラが登場するけれど、後味は悪くないです。お母さんはお母さんなりに幸せを願っているんだと思えるからかな。

萌萌よりの神です。
三田さんの作品読みたい病真っ最中で久しぶりに読み返しましたけど、やっぱり好きだー。
コミックス未収録の短編をまとめたやつでいいので、来年はコミックスなにか出てほしいです。

4

優しいお話。…ですが

とても優しいタッチの表紙に惹かれ、ジャケ買い。
内容も、絵柄を表すようにとても柔らかで優しいお話でした。
…しかし、問題なのはカップリングです。(一番重要)
私は表紙のイメージから藤本×太一だと思い手に取りましたし、それを想像しながら読み進め、とてもほっこりしていました。
表題作の「白のころ」だけではどちらとも取れる内容なので、勘違いは勘違いのままで良かったと思うのですが、問題は書き下ろしの「青のころ」です。
一気に想像していたカップリングが崩れましたし、柔らかで優しい世界観も音を立てて壊れていくようでした…正直に言って蛇足です。
こちらが勝手に勘違いしたまでですが、作者様とカップリングの趣向が合わなかったのだと思います。
絵柄が好きなだけにとても残念でした。

2

手元に置いておきたい短編集

良作です。短編集なんですが、方言やリーマンやちゃらい大学生や純真な高校生や同棲カップルといろんなカップルが見られます。ほのぼのしつつ繊細で、ちょっとシリアスもある作風は共通していますが、いがいと傾向ばらばらなので飽きずに読めるかと。
読むとじんわり心にしみる話が多いので、手元に置いておいてたまに読み返したいです。

絵柄は羽海野チカみたいなかんじ。きれいめの男の子のまつげがひたすら美しい……。目も澄んでる。こういう絵好きです。エロはないけど甘い雰囲気にきゅんときます。

3

やわらかく、ほのかな棘と繊細な世界

表紙の印象から想像していた内容と、実際の中身とは良い意味でずいぶん違っていました。好みのド真ん中を撃ち抜かれたのです。

ふわっとした印象のあるイラストですが、漫画ではむしろコツコツしてかつ、くっきりとした絵です。ざくざくがりがり、それでいて丁寧な線で描かれた横顔や目元もすてきです。
短編集ですが、ここで終わり?なんて物足りなさはあまりなく(欲を言えばそりゃあもうもっと彼らの話を読みたいです!)まとまっていると思います。

【白のころ・青のころ】
この太一の性格ですよね。
無垢で無邪気で純粋でまっさらでそして真っ直ぐで自然のままの厭らしくないこの性格!
なかなか転校してきたばかりの子を遊びに誘えません、太一の社交性が藤の心を溶かしたんだと、だからこそ藤は心許したんだと、よく分かります。
藤もまだまだ子供で(田舎に越してきた心境を語る口調なども、子供です)スレてしまってもおかしくなかったろうに、太一に救われていたのでしょうね。そして思い余っても、太一は困り果てながら藤の笑顔の方を取っちゃうような良い子でした。
いやぁでも…優しすぎるのも罪ですけれども!
なんというかこの優しすぎる太一の気持ちも、そしてそれと分かりながらつい甘えたままの藤の気持ちも、でもそれぞれが叶えたい想いや感情があるということも、離れたくはないけれど諦めなきゃならない現実も、上辺も本音も、理解できたり太一同様感情が付いてこなかったり…とにかく苦しかったです。ほんの数ページなのに、白い雪・最後の旅行・田舎町、そんなことがすべて絡んでいるからかもしれません。
ああもうだからこれが過去のお話でほんとうに、ほんとうに良かった…!!
太一ではないけれど、今生の別れかと思いました!

そこからの青のころ、がまた良いんです。
えっちがしたい、なんてこれもストレート(しかし変な方向へ純粋さが育ってしまっている…!笑 うでまくらしたげればええもんね…かわいい!)な誘い文句でかわいいというかカッコいいというか、太一らしい!
感想を話しだすと藤と太一それぞれに対してもうたまらなく萌え転がって仕様がなくなりますので控えめに…と思いつつもひとつ! ひとつだけ!
運命って太一! チューも太一! 藤の心臓がもたないよ~っ でもこれからもぜひそのままでーー!

【春は半歩先・幸男の気持ち】
陰気と陽気は相反するものだけれども、少しずつ混ざり合うことはできる…と思うのです。恋愛叶えようぜ!な幸男のことを、森口はたしかに面倒だったかもしれませんが、きっかけひとつで暗いだけの気持ちが上向いて登りはじめますもの。
このご陽気全開!エブリディハッピー☆な幸男だから、ただ面倒くさいだけの人かと思いきや、傷心で泥酔した森口が盛大に感情を吐き出したとき、きちんと痛みを受け止めてくれていたことで印象が変わりました。「分かんないや…」と言ってくれること、簡単に「分かるよ~」なんて言わないところ、好きです。ていの良い嘘よりも、こういうときは本音が欲しいと思うのです。
鉢を一緒に育てるはずなのですが、幸男ってば森口の心にも自分の心にもニブちんなようで、前途多難ですな…がんばれ森口! まずは自覚させるところから!笑

【オフィーリア・その後】
と言えばかの絵画が浮かんだわけですが、そういう絵を残していたのでしょうか葉山先輩…。すこし、つらいな。
由良との出会いが彼にとって癒しになるのですよね。
亡き彼女が導いてくれた巡り合わせ、なんて言ってしまうと彼女をダシにしたようで悪い気がしてしまうのですが、葉山先輩のことを彼女も心配しているでしょうし、葉山先輩の世界観を好いて慕ってくれる由良ならば大丈夫だと思います。
あの頃の思い出をひとつひとつ昇華するように、絵筆を運んでいたのでしょうか。
粘土こねてる由良もかわいいのですが、先輩に詰め寄られてドギマギしている由良もまた可愛らしいですね。おもちシリーズ、付けてくれているじゃないかっ!

【クリスマスブルー・お正月】
むっちゃんてばハイパー突飛な行動ですが(下手すればタカられますし付け込まれますしヒドいことも考えられるのに!)結果オーライで良かったね、となんだか親心ならぬむっちゃんのおばあちゃん視点で読み進めてしまいました。
お話自体の視点はあおいくんなのですが、なんとなくこのむっちゃんのホワッとした雰囲気を感じ取るからか、どうしてもおばあちゃん目線に…笑
あおいくんがまた、少しキツめな見た目とは裏腹に良い子というか、偏見とか嫌な感情とかを持たないところも好きです。ややおっとりしたむっちゃんと、まっとうな恋愛してほしいなぁ。

【まほうのおくすり】
やわらかいタッチで、でも残酷な思い出が描かれていました。身体的にではなく、精神的に。
でも“おくすり”のなかにクローバーの種を入れてくれていたということは、なによりもよりちゃんの幸せを願っているからだと信じたいです。
人によって幸せのかたちは違うし、万人が同じ方向には進まないし、だから理解できたりできなかったり…たったひとりでも、理解してくれたときに救われると思うのです。それが、よりちゃんにとっては日野くんだったんですよね。
母の好意だけれども、治さなくったっていいもの。大切な幸せを大切にしていいんだよよりちゃん。
三田先生の繊細な世界観の根幹が表れている作品でした。

既に次の作品たちが楽しみになるほどです。評価は迷いに迷いました、萌えるところ、たくさんありました…。
延々と三田先生の作品を色々拝読していたいです。とにかくとてもとても、好きな作風!

4

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