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冷凍保存から目覚めて、未来。
500nen no itonami
500年的依恋
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
なんという物語を書いてくれたのか。
泣きました。読み終わってもあとからあとから涙が止まりません。
号泣というのではなく、いつまでもぽろぽろと止まってくれないのです。
タイトルに小さく添えられた英題「HIS ROMANCE OF 500YEARS」。確かにそのままの意味であろうと思います。その先の意味は、言葉にできない。言葉にしようとしても、涙になっていくばかりです。
「火の鳥」と「A.I」「アンドリュー」を思い出しました。
それらに揺さぶられたことがあるなら、きっとこれにも心を動かされるのではなかろうかと思います。
私はこの状態でベストだと思いました。余白が残されているからこそ、カタチにならないものが含まれていると思います。言葉に収めるにはあまりに複雑なものを描いているからで、そうして作者の意図した方向へ読者の意識を向けさせるに十分なものはしっかりと描かれていると思います。
祈りを覚えた4QPが出てきます。祈るのは誰の為なんでしょう。なぜ祈りたいと思うのか。自分でない誰かの幸せを願う、それが愛なんじゃないかと。だからこそ、彼は人間らしいと評したのではないでしょうか。
人間らしさというのは、報われなくとも不器用でも独りよがりでも、誰かを愛し愛されたいと願いもがく様であり、それを原動力に生きる生き物が人間なのではないかと。人が一番の幸せを感じるのは、愛し愛されるときだから。
知っていること、覚えていてくれること、返事をしてくれること、笑いかけてくれること、自分のために何かしてくれること。
BLですからヒカルや光との感情に注目してしまいますが、これは寅雄が愛を知る物語なんじゃないかと思うのです。親の愛情を知る場面は非常に短いですが、「勝手なことしてごめん」というセリフに集約されていると思います。幼い愛から恋愛、親の愛、アンドロイドの言う「好きだよ」にすがる自分も、意味を分かっているのかも知れないヒカルBも含めた世界への肯定に至る大きな愛に到達するまでの本当に広大な愛の物語だと思うのです。
だからこそ、500年という時間が必要だったのだと。
この辺の構造が「火の鳥」を思い出させました。確かに凍結されている間は眠っているので、500年という時間を生活したわけではありませんが、目覚めた時にその時間は十分に体感したでしょう。250年ごとに繰り返された絶望によって、寅雄はそこに到達したんだろうと思います。
たった1冊で、これだけの時間と熱量を余さず描いているなんて。むしろ非常に丁寧に作られていると感じました。
なぜもっと早く読まなかったんだろう!
きっとずっと大切にしてしまう1冊です。いつかBLを読まなくなる日が来ても、これは手放せないかもしれません。
AI(人工知能)という言葉を知ったのは、学生の頃にリアルタイムで読んでいた三原ミツカズさんの『DOLL』という漫画でした。
人そっくりだけど人にはなり得ない機械の存在が、人しか持ち得ない矛盾とか孤独とか空虚とか絶望といったものは決して要らないものではないんだよ、ってことに気付かせてくれたのですよね。
以来、AIモノには弱いです。
と前置きはさておき、
こちらの作品、そんな私のAIモノに対する過剰な期待を裏切ることなく、とても良かったです!
他のレビュアー様方が立て続けに書かれているように、ガツンとくるというよりかは、じんわりと沁み渡ってポロポロと溢れてくるような、スローにカタルシスを得られるそんな一冊だと思います。
onBLUEのコミックを読むたび言ってる気がするけど、さすがはonBLUEという感じで自分が漫画に求めているど真ん中でした。
祥伝社ってなんでこんなアタリが多いんだろう。
因みに前述の『DOLL』も祥伝社なんですよね。BL以外でも昔から良作の宝庫です(^^)
光を失った世界は、生きていても仕方のない世界。
〔寅雄〕にとっての“全て”だった恋人〔光〕を事故で亡くした絶望は何のためらいもなく彼をビルの屋上から飛び降りさせる、という衝撃的なシーンからお話は幕を開けます。
(恋人の名前が〔光〕なのはきっと敢えてですよね)
そして、250年後。
冷凍保存から目覚めた寅雄は先ずそこで、ずっと疎ましく思っていた両親の自分に対する無償の愛を知り、自分の身勝手さを悔いて泣きながらもう既にこの世にはいない両親への謝罪を口にするのですが、そんな寅に、
「泣いてるの?寅 うれしいの? かなしいの?」
人間ならば先ずかけない言葉をアンドロイドの〔ヒカルB〕は投げかけます。
恋人に似せて造られたはずなのに、本物には似ても似つかない出来損ないのアンドロイド。
だけど似てなかったからこそ寅はヒカルBを光と同一視せずに済み、ヒカルBに少しずつ救われていきます。
第5話で本物の光にそっくりのヒカルA(ヒカルBはヒカルAのプロトタイプとして造られた代用品でした)が現れた時、そのヒカルAには目もくれずヒカルBの心配をする寅の姿には思わずぐわっと込み上げるものがありました。
「泣いてるの?とらさん うれしいの? かなしいの?」
ヒカルBが最初と同じ問い掛けをもう一度寅雄にした時、最初とは違う展開が始まります。
ヒカルBは“自分で気付く”のですよね、寅の涙の意味に。
その後の寅がヒカルBに対してはずっと言えなかった「好き」という言葉をすごく自然に口にしたシーン、めちゃくちゃ良かった…(TT)
作中に出てくる登場人物達のセリフやモノローグがいちいち胸に刺さります。
この辺はSHOOWAさんの『ニィーニの森』(これもonBLUEですね)を読んだ時の感覚に近いかな。
言葉の意味を幾重にもして届けられる感じ。
最後の博士とD-4QP(ロボットの名前)の会話には全てを持っていかれました。
この最後の1ページを伝えるためのストーリーでもあるんだろうな。
矛盾を抱えてしまうことこそが人が人として生きている証だと思いますしね。
そして描き下ろしの『250年の営み』がまた色々考えさせられます。
寅がヒカルBと離れ離れになって二度目の仮死状態になっていた後半250年間のヒカルBの日々が描かれているのですが、人間の一生を85年くらいと考えるとざっと3回分に相当する年数です。
そんな気の遠くなるような年月をたった独りで過ごすってどんなに果てしないことだろうかと。
人間ならば孤独感と生きる意味のなさに先ず耐えられないでしょう。
だけどアンドロイドであるヒカルBは事も無げにその途方もない年月をなんにもない場所で独りで過ごしていて、でもまぁ奴はアンドロイドだからね~と思った矢先の、ヒカルBの「オレも人間だったらいいのになー!人間だったらきっと…」の先に続く言葉が…(TT)
そのたったの一言がもたらすパンチ力たるや……
寅だけでなく、ヒカルBにとっても、寅と交わした“約束”が(ロボットならば本来必要ないはずの)“生きる糧”になってたのかなと考えたら堪らなくなりました。
250年という途方もない時間の意味が一気に重みを増します。
500年というスパンで描かれているストーリーには多すぎるほどの空白が存在し、それに加えて余白も多い作品です。
こういうのは好き嫌いの分かれ目になってしまうのでしょうが、その空白と余白に色んな想いを馳せることが出来るのが私的には良かったです。
次に寅が目覚めた時に次こそ間違いなく手にするであろう幸せを想像すると、それだけでまた堪らない気持ちになりました。
この先の二人は同人誌で少し描かれているみたいですごく読みたいです…
山中ヒコさん、他の作品もぜひ読んでみたくなりました。
SHOOWAさん同様、どハマりしそうな気がします。
『うれしいの?かなしいの?』
寅雄が泣く度に、ヒカルは問いかける。
目からこぼれるしょっぱいもの、
知識としてヒカルは涙について知っている。
でも、人間じゃないアンドロイドは、涙の本当の意味を知る由もない。
愛しい恋人・光の死により、
この世に何の未練もなくなり自殺を図った寅雄。
それから250年、目覚めた傍らに愛しい人がいた。
いや、愛しい人によく似たアンドロイドがそこにいた。
不器用で何をやらしても駄目な、3割減のアンドロイド・ヒカル。
愛しい人と重ねて、比較して、八つ当たりをしても
『好き』と伝えてくるヒカルに、意地っ張りな寅雄は心開いていくのだが―
完成形のアンドロイド・ヒカルAの代用品としての役目を終え
自分の前から姿を消したヒカルを探し出し、涙を流す寅雄にとって
ヒカルはもはや愛しい人の代用以上の存在になっているのだ思うと
胸がぎゅっと締め付けられました。
そして、涙を流す寅雄を見て、知識としてではなく
涙の本当の意味を知ったヒカルと寅雄の抱擁は、切なさで満ちており、
ヒコさんのこういう想いのこもった描写には
本当に毎回痺れさせられます。
そしてまた250年。
眠りから覚めた寅雄は、再びヒカルを探す無謀な旅に出る。
いつか交わしたヒカルとの約束、
『あの約束の為に生きたい』というクライマックスは
読み手の心を強く打つ非常に秀逸なシーンで、
当初、光の死に絶望し自死を選んだ寅雄が
最後にヒカルのために生きることを望むというコントラストこそ、
”500年の営み”の中で見出されたものなのだと実感し
涙が溢れて止みませんでした。
エンディングで用意された希望もヒコさんらしくて良い。
博士とD-4QPの穏やかな会話と、
これから果たされるであろう約束に込められた希望。
その希望は、これから素直に愛を注ぐ青年と
人間のように感情を知っていくアンドロイドを優しく包み込むはず。
次に寅雄が目覚めて涙を流せば、やっぱり問いかけるんだろうか。
『うれしいの?かなしいの?』
でもアンドロイドは知っている。涙の意味も、その美しさも。
ヒコさん流、切なく美しい、時をかける物語。
わたしにとって、これからも大切に読みたい一冊となりました。
寅雄の自殺の描写は、よく言えば潔い、悪く言えば後先も考えずなんて浅はかな、若い衝動だろうと思わせる唐突さですが、1話目が終わる頃にはその衝動も理解できている自分がいました。
250年間の冷凍保存から覚醒した寅雄に与えられたのは、恋人だった光に似せて作られたアンドロイドだけれど、なんだかちょっと違う「ヒカルB」。
もし、寅雄にはじめから「光」と全く同じアンドロイドが与えられたとしても、寅雄はその”矛盾”とともに生きてゆくことができるのか、できたところで、いつかはこの先生きてゆく”疑問”を持たないのだろうか、そう思っていたところで、リンゴの”サイコロステーキ”が出てきて、ヒカルBが、逆にちょっと抜けていたからこそ、寅雄は反発心というか怒りという生きるベクトルを持てたのでは、とも思いました。
雑誌掲載時は、最後が不安なのか、ハッピーなのか、はっきりとは分からず、この読了感をどうしたらよいのか頭の中でこねくりまわしては、何日ももてあそんでいました。
寅雄は今度こそ、絶命してしまったのか、また何百年も眠って、目が覚めたらヒカルBが側にいてハッピーなのか。
単行本になって、最後の最後の1Pで連載終了時から空を切っていた、見えない先が、全てではないけれども、回収できて、自分の中でやっとで消化できたと思います。
人間の寿命には終わりがあるけれど、これからの二人を想うと、永遠を見たような気がしました。
「はげの予防薬」にはウケたけれど(この時代になっても悩みどころはソコか、と)、D-4QPが語る”美しい矛盾”には人間が人間である感情を抱きながら生きることの「希望」を肯定してくれる、素敵な言葉だと感じました。
毎回、「onBLUE」を購読していて連載を追っていたのですが、これがまた発行の間が長くて、”早く続きが読みたいのにこの待ち期間!う〜わ〜!”とか思いながら毎号待っていて、毎回”ちょっと待て、あっちは250年も冷凍保存されてたんだぜ、そんなのに比べたら数ヶ月なんてあっという間だって!”とか一人自分に言い聞かせて待っていたのを思い出します(笑)
頻繁に読み返すようなストーリーではないのですが、忘れかけた頃に読み直したいというか、自分のなかで何度も反芻してしまうお話です。
グッと引き込まれてどきどきしてしまうというよりも、胸にじんわりと温かいものが広がってきて、他の方も言っていたように、私も毎回ぽろぽろと涙が溢れちゃいます。
お話はどこか淡々と進んでいくのですが、とにかく人の優しさが暖かくて。
とても魅力的な人物だったオリジナルの光。その死を受け入れたくなくて、ヒカルBをはじめ拒絶する寅雄。そんな寅雄に必死に尽くそうとするダメダメアンドロイドのヒカルB。
このヒカルBがとてもいとおしくなってしまうようなキャラクターで。アンドロイドの癖にオリジナルより3割減なダメダメ具合で、そのダメさが人間くさくて。完璧なコピーのはずのヒカルAをより無機質っぽく見せていたな~と思いました。
途中で出てくる老夫婦や、寅雄を想う両親の姿。QPや博士など、登場人物が皆いい人ばかりでそれにも泣かされました。
漫画なのですが、読了後の心境としては漫画を読んだというよりも絵本を読んだあとの気持ちに似てる気がします。うまく伝えられませんが。言葉で言い表しにくい新しい感情が自分のなかに反芻するお話です。私は読み返すたびに新しい感情が芽吹くので、時間をあけて何度も読み返してほしい一作。
私は出逢えて良かったと深く思います。
もう何十回も読みました。そしてその倍泣きました。
初めはただ主人公が可哀想で仕方なくそれと同時にアンドロイドの少し寂しそうな表情にやるせなさを感じました。
しかし後半からただただ切なく胸が締め付けられて自然と涙が流れてました。
この作品は読めば読むほど感情が作品に入り込みより理解が深まると思います。
特にボーナストラックの【250年の営み】がグッときました。
ここまで泣ける作品に私はまだ出会ったことがありません。
是非皆さん、損はしないので読んでみてください。
長らく読まず嫌いだったことを深く後悔&反省の山中ヒコさんの初読みです。
読後の気持ちが言葉に表せなくて苦しいです。
切なさやその他の溢れる自分の感情を共通語として変換できない。
手にすることを躊躇っていた山中ヒコさんの淡々とした線の絵が、この作品のSF(すこしだけファンタジー)的な未来の空気感や冷凍保存から目覚めて少しだけ空虚な山田寅雄の感情を伝えてきました。
寅は苦しみます。
光ではないアンドロイドのヒカルが【光との思い出】を共有していること。
(三割減とはいえ)光のデータを持っているものが存在する。
でもそれは光ではない。
最初の数十ページで寅が光をどれだけ大切に想っていたかがわかるので、躊躇いなく空に身を踊らせたあのコマ(けして見せゴマではない普通の)はやりきれなさに胸がつぶれそうになりました。
寅はヒカルに当たります。
似てない、と。
ヒカルは寅に謝ります。
『あんまり似てなくてごめんね。』
でも寅の役に立ちたいと林檎をむく練習をしたり、謝る気持ちはヒカルのオリジナルの気持ちですよね。
寅のベッドの周りにたくさんの贈り物が用意されています。
どんなものが好きか、というデータはインプットされていても、それを用意して寅が喜ぶ姿を待つのはヒカル自身の気持ち。
そんなヒカルに対する寅の気持ちが変化してきた矢先に、またひとつの出来事が寅を打ちのめします。
光を喪った時、寅は気持ちを持ち続けることを飛んで放棄しましたが、ヒカルを失った時は歩き出します。
光も
ヒカルも
たった1人しかいない。
たったひとつの【その人】への気持ちはその人だけへのものです。
今日、この日だって同じ日なんてない。
号泣ではなく、ゆっくりゆっくり涙が出ました。
眠るときは独りぼっちなんですよね。
目がさめた時、隣に愛しい人がいてくれるというのは幸せなことなんだろうなぁ…と今更ながらに考えました。
山中ヒコさん、他のも読もうっと!
よーく考えちゃダメな作品なんだと思う。
SFとしてどうだとか、何故太田光なんだとか。
2010年、小さい頃から意識してきていつしか愛していた光を失った主人公は
「生きていてもしょうがない」と、ある種の潔さをもってビルから飛び降りる。
そして、どうも一命を取り留めたらしい彼が目覚めて目にしたものは
光にそっくりなアンドロイドと、250年後の世界だった……。
何をやってもぶきっちょな光の3割減のアンドロイド。
そうインプットされているのかいないのか、健気でひたむき。
でも、光じゃない。こんなの光じゃない、とごねる寅。
(そう、一方が太田光ならば、もう片方は山田寅雄って言うんです。)
☆
美しい表紙や、雰囲気とか、テーマとか、とても好みだけれど
ある種の薄さに大きくは心揺さぶられずに読んでいたのだけれど、
不覚にも涙してしまったのは、アンドロイドならぬロボットの4QPが
「祈りを覚えました」という下り。
その前の4QPと寅雄とお会話や、その後のパダム博士との会話もすごくいい。
ああ、これは美しい話だ。
BLという感動ではないし、SFとしてはあちこちスカスカ。
でも逆にこの安易とも言える力の抜けた感じが
独特のおとぎ話のような世界を作り出しているのだろう。
本編の映画のラストのような終わりも好きだけれど、
ボーナストラックの最後は、……再び泣かされます。
I see
読後、じわっと涙が出てくる作品です。
この作家さんは、トラウマや痛い系と言われることが多いのですが、この作品も同様で、胸の奥にじわりと突き刺さってくるものを投げてきます。
絵柄の好みが分かれるかと思います。
どちらかといえば、はじめ私は避けていました。
しかし、たまに表れるギャグっぽいツッコミのコマにはちょうどピッタリで、設定やテーマとのギャップに微笑ましく引き込まれました。
世界観もキチンと説明されていて、SFに馴染みがなくてもわかりやすくなっています。
blに期待される色気のあるシーンはありませんが、登場人物の心が徐々に近づき結ばれる様子にああ良かったと安心できる内容です。
レビューを読んで、読みたいなぁとは思ってたんですが中々コミックスが見つからず先にドラマCDを購入しました。その後 無事コミックスもゲット。
CDで結末は知ってましたが、やはりコミックスを読んで泣きました。寅とヒカルの直接的な絡みは本当にごく最小なんですがとにかく色々ぶわーと考えられる話でした。むしろもうblの域を超えてるんじゃないかと思うほど!
すごく悲惨な話なわけではないですが、有頂天に明るい話でもないので好みが分かれる作品ではないかと思いますが私は何度も読み返したくなりました。