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それを、人は愛と呼ぶ
2055

人を、”その人”たらしめるものは何か。
そんなどこか哲学的な問いが頭に浮かび、深く考えさせられる一冊です。
ただただ一言、素晴らしかった。
「ネタバレあり」のレビューを書いていて言うのもなんですが、
特に最初のお話はネタバレなしでぜひ、読んでいただきたい…
そして今回自分はコミコミさんから紙本をお迎えしたのですが、
装丁と手触りが素晴らしいです...
有償小冊子も読んで損なし、いや読もう!読んでー!と言える、救いの光見える内容でした(サガミ×スルガ)。
保管場所等問題ない方には、ぜひ紙の本をおすすめしたく...!
ストーリーテラー・三月えみ先生による、3編からなる近未来SFファンタジー。
2055年、2072年、2075年。
時代は違いますが、それぞれのお話には繋がりがあります。
どれも切なく胸締め付けられる”黄昏”のお話でしたが、
わずか26ページと一番短い「2055」のインパクトの大きさたるや。
圧巻でした…
以下、3編それぞれについて、簡単な内容とレビューを。
全てのお話が、「AIが人間を管理下に置き、支配する近未来の世界」をベースにしたものです。
◆「2055」
AIによる管理が始まって間もない世界に生きる、
サーファーのアオイ×病気治療のためもうすぐ遠くへ旅立つ弥凪(ヤナギ)。
離れる自分の代わりにヤナギが注文し届いたヤナギそっくりのアンドロイドに、アオイは嫌悪感を示すがー
と続くお話。
やーーーーこれ…
「そっち!?」と思わず声が出ましたよー…
びっくり。。
人が亡き後、記憶と感情をアンドロイドに移したら、
それは元の人間と”同じ”と言えるのか。
人はその”復元”されたアンドロイドを、心から愛せるのか。
その一つの答えが、最大限に切ない形で提示されているお話でした。
生前と同じように性行為をし、共に暮らしていても
心から満たされることはなく、寂しさが消えることはない。
それはなぜなのかー
毎朝胸の痛みに泣いていたーというヤナギの苦しみがダイレクトに胸に響きます。
涙なしには読み終わることのできない、深い余韻の残るお話でした。
◆「2072」chapter.1&chapter.2
人間が作ったAI(オールドAI)から記憶を消去し、
弔うことを仕事にしている「記憶の掃除屋」、
サガミ×スルガのお話。
「2055」のアオイも登場し、重要な役割を果たします。
このお話にも「2055」のように、
あっと驚く事実が隠されていました。
途中から度々出てくるスルガの「頭が痛い」という言葉、
そして三月先生のあとがきにある
”どこからスルガの吹き出しが手描きになっているか”
という点が見事にリンクしていて、鳥肌が…!
あとがきを読んだら絶対にもう一度読み返し、
”そのポイント”がいつなのか、探し出したくなるはず。
サガミの台詞の吹き出しは、最初から最後まで
一貫して手描きで描かれているという細かな仕掛け。
いや、もう本当、すごすぎて言葉が出てこない…!
サガミの愛によって生み出された、
”ニューオーダー(AIによって作り出されたAI)”による頭部を持つオリジン(人間)。
泣きながらスルガを抱くサガミの表情が美しくて、切なくて、やるせなくて。。
スルガの元データが当初の約束どおり消去されることになり、
それを受け入れざるを得ないサガミ。
あまりにも切なすぎる黄昏のエンディングですが、ここで終わりではなく…!
この後の「2075」のラストに繋がっており、救いを見い出すことができました。
まだ元データを消される前、
「人間は 頭部以外にも少し記憶を保持してる」
と語ったスルガ。
抱きしめられたとき、自分の体は確かにサガミの体温を覚えていたー
との言葉に、涙が堪えきれませんでした。
一体どうしたら、こんな物語を考え出すことができるんだろう、、
言葉も出ず、ただただひれ伏したくなるほどの壮大なストーリーでした。
◆「2075」
「2072」の続きの世界観。
AIに反発し収監されている人間のミカ×彼を監視・管理するAI家事ロボット・トートとのお話です。
トートの見た目が、トイレットペーパーみたいで(←)可愛い!!!
名前もトイレの某有名企業を連想させますね(。-∀-)
家事を頑張るものの、ポンコツなところも愛らしくってほのぼのさせられます。
(もしかしたらこのシリーズで唯一の、”ほのぼの” シーンかも...)
「2072」にも出てきた爆発大事故の際、
自分を庇って散ったオールド(人間によって作られたアンドロイド)たちのことが忘れられないミカ。
ニューオーダー(AIが作ったアンドロイド)を受け入れられず、トートを新型に変更するよう勧められるも、うんとは言えずー
と続きます。
まさかまさかの、トート先導での逃走劇とその後の展開にはハラハラしたけれど…。
人型ニューオーダーとなったトートの変わらぬ愛らしさに頬が緩む!
自然と口角上がります☺︎
で、アップデートの際に起こる、奇跡のような出来事。
(この時トートの意識下に出てきた人物は、ヤナギですよね…!?)
そしてそのトートが繋いでくれた記憶の断片により、スルガが…
と繋がってゆくストーリー、震えてしまうよ。。
切なさと、簡単には言語化できない深い感動を与えてくれる3編の物語。
何一つ、本当に何一つ文句などなし!!の、「神」評価一択です・:*+.
★修正:不要な描かれ方(紙本)
★コミコミ有償小冊子:
スルガとサガミが初めて結ばれたある日の記憶についてと、その後。
切ない濡れ場と、ラストのスルガの武者震いが印象的な美しいお話でした
近未来的SFファンタジーの世界でありながらも全くの他人事ではない世界観に少なからずゾッとしました。
「2055」の作品が世に出たのは2022年とのことですが、そのときより更に世界はAIに依存するシチュエーションが増え、AIは私たちの生活にとって欠かせない身近な存在となりました。
AIを搭載したアンドロイドの普及という点においてはまだその段階にはきていませんが、この今の世界情勢を考えるとあと20年後には本当に人型アンドロイドが人間と何ら変わらずに普通に生活をする日がくるかも?……経済目的だったり、介護目的、または軍事目的かもしれませんが、この作品が何だか近い未来の預言書のように思えてならなかったです。
「2055」では、大切な人を喪った喪失感はどれだけオリジンに忠実に模したものであっても埋められないやるせなさが伝わってきて、あのラストはとても悲しかった…。弥凪の笑顔が、全てを物語っていますよね。大事なのはアオイという人間そのものだったんだと。
元のアオイは、アンドロイドの弥凪を前にしてきっと勃つことはない。その状況から見て、弥凪は目の前にいるのはアオイであってアオイじゃないんだと確信したのかもしれません。
すごく切ない終わりを迎えた「2055」のアフターストーリーとして、「2072」や「2075」との横の繋がりがあることもこの作品の面白さだと思います。55年のときから更に17年後…20年後と、人間とアンドロイドの共生の意味を問うストーリーの重みがめちゃくちゃ響くストーリーでした。
ここでこう関係していくのかよ〜!((((;゚Д゚)))))))と驚く場面もあり、ストーリーの深さにただただ平伏と拍手。人間と、人間が作ったオールドAI、そしてニューオーダーAI……この三者の複雑な関係性をベースに、「2072」と「2075」のストーリーが動いていくことの不可思議性や神秘性をたっぷりと味わって下さいね。
まぁ、最も驚くべきは、こうした繊細な感情と、AIと人間を取り巻く複雑な環境をここまで突っ込んでアプローチする作者さんの脳内で間違いない。すごいなー…どんな頭の中になってるんだろう、覗いてみたいです。
BLだということを忘れさせてしまう壮大な近未来の世界に最後の最後までひたすら没入でした。世界観、ストーリー、キャラクター、どれもが最高に素晴らしかったです。
えみ先生のストーリーテラーぶりに
ファンの方も多いと思います。
去年リリースされた『金色のいつか』では、
スピンオフでありながら、骨太な社会派人間ドラマが繰り広げられ、救済モノであるのを予感させつつも先の読めない展開で続刊が待たれる話題作でした。(書き下ろし小冊子がほんとニクい演出!)
今作は、そんなえみ先生がアンソロから単話読切としてリリースされた話から、その後に連作され三部作としてオムニバス形式で一冊にまとめられた近未来SFモノの作品。
「本人たちのAI搭載のアンドロイドだけが現世に残される」という話を描いたのがはじまりとなったAIシリーズです。(あとがきから)
タイトルにもなっている第一部「2055」は、↑のとおりなんですが、
全ての人間のパーソナルデータがAIによって管理され、そのバックアップデータから蘇らせたい人のアンドロイドを作るのが可能、許可されている社会。
失った恋人のアンドロイドを造ってはみたものの、本人の代わりにはならなかったと自分も後を追う主人公。残されたアンドロイドの為に、また自分のアンドロイドを造って…
という、まだAIは無機質なシステムで、ヒトの作り出したものの限界であり、その後も真正性がテーマの一つとして引き継がれていくわけですが、AIとの共存は成し得ないという結論、そしてAIに取って代わられる未来は現実となってしまうのか、というリアルな問いを残して終わります。
第一部を描かれた時は、現実世界ではAIが世に出て間もないころだったそうで、確かにそんな事を言われていましたよね。そうやってこの作品を読むとまた違った味わいというか、BLというか社会派的な側面を多分に感じます。手◯治虫先生のア◯ムとか思い出されてしまったんですけど。
ヤバい、こんな作家様に巡り会えた幸せに改めて震えてます。
話を戻して、とにかくこの第一部を読んだ時の物悲しさ…!
当時はオムニバスになると思っていなかったので、残った余韻が重く残ってとにかく切なかったんですが、
このたった一人の恋人への想いが
同じように誰かを想う人へ
時には助け手として出現しながら派生していく
ように第二部、第三部と展開していきます。
えみ先生が素晴らしいストーリーテラーであることは周知の事実で承知していましたが、
この壮大なスケールを伝える造形力というのか、そして縦横無尽のようにフラグが繋がり物語が進行していく読み応えに
改めてほんと面白すぎる…!と。ぜひ堪能していただきたいです。
BLって、と個人的に思っているのは
かけがえのないものの存在に気付くこと
それは誰かの存在、また己でもあり
共にいる今この瞬間全てが連続していることであるかもしれない。
そして誰かを想い、心を通わせることで
救われたり、心を強められる尊さが
テーマとしてすごくあると感じているんですけど、
この作品でも見事にそのことを描かれていて、正に圧巻といったところ。
AIという身近になってきても尚、関わり方というよりかは、使う側である自分に向き合えていないような不安定な現実感を少し思い出したりもして。社会派マンガと前述しましたが、BLから派生し、進化し続ける作家様の読み応えのある作品として是非、楽しんでほしいと思います。
書き下ろし小冊子は外せないのテッパンになりそうです。物語のエッセンスというのか、ここを読んでやっと本を閉じられる気すらします。
ですが、続きは続きで読みたい笑。
あとがきで披露された裏設定も面白すぎる…是非検討いただきたいですー!
表題作を含む続き物の短編三部作です。
AI搭載のアンドロイドが当たり前になった世界でのBL、という情報だけで読みましたが予想とはまったく異なった、壮大なストーリーでした。
エロ要素はほぼないし、男性同士の恋愛だからこそのあれこれとかもないので、BLを読みたいという方には向かない作品かと思います。
私は三部作とも本当に大好きです。それぞれのお話も好きだし、一つの物語としてもすごく良かったです。ハッピーエンドなだけではなく、切ないストーリーもありましたが、三部作として繋がれていくことで救いもありました。短編で読んだら、「切ない」が一番強い感情として残りそうだけど、続けて読んだことでそのラストが悲しいだけではなかったと感じられました。
愛とは何か、愛するとは何か、幸せとは何か。ひたすらに葛藤する登場人物たち。それぞれが悩んで苦しんで選んだ選択を見届けられた、そんな読後感です。読んでいてもいろいろと考えさせられます。
それぞれの登場人物も魅力的で…!!個人的には3作目のキスシーンが激推しです。なんて切なくて愛しいキスシーン…!!それ以外にも、心揺さぶられる場面が多々あります。
描き下ろしも良かった…!!あと電子限定描きおろしとカバー下がとんでもなくかわいいです。
描き下ろしを読んだことで満足感がさらにアップしたとともに続きが読んでみたくなりました。すごく。
三月先生のエロ多めのお話も好きなのですが、エロほぼなしでも大満足でした。続き読みたい…