パブリックスクール-ロンドンの蜜月-

public school London no mitsugetsu

パブリックスクール-ロンドンの蜜月-
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神206
  • 萌×223
  • 萌10
  • 中立6
  • しゅみじゃない4

148

レビュー数
26
得点
1158
評価数
249
平均
4.7 / 5
神率
82.7%
著者
樋口美沙緒 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
シリーズ
パブリックスクール
発売日
価格
¥693(税抜)  
ISBN
9784199009785

あらすじ

美術系出版社に勤めていた中原礼の恋人は、イギリスの巨大海運業CEOで
貴族の御曹司エドワード・グラームズ。
長らく長距離恋愛を続けていた礼は、ついに会社を辞めて渡英し、
エドとの同居生活を始めることに──。
けれど、いざ仕事探しを始めた礼は、日本での経歴が全く役に立たない
厳しい現実に向き合う。
エドの名前に頼りたくない礼は、ひとり奔走するけれど…!?

表題作パブリックスクール-ロンドンの蜜月-

28歳,英国貴族で社長
26歳,ギャラリー勤務のキュレーター

その他の収録作品

  • 展覧会と小鳥

レビュー投稿数26

一生、対等にはなれなくても。。

2、3日前から積読になっていたのを読み始めたこちらのシリーズ、読み始めたら本当に本当にページをめくる手・次の巻を求める手が止まらず、読み耽っています。

タイトルには「ロンドンの蜜月」とありますが、蜜月というより、切なさ辛さが大きく、またもや泣きながら読んで少し休んで、また読んで泣いて…を繰り返しました。

日本で僅かながらも築いてきたと自負するものが、イギリスで粉々に打ち砕かれ、「何者でもない自分」を自覚させられる礼。

礼ほどの苦労も経験もしていないけれど、自分自身も会社を辞め、失業期間もあり転職も経験したため、読みながら礼と一緒に打ちひしがれ、どっとエネルギーを持っていかれた気がしました。

最終的にエドの力によって立ち上がり、自分の言葉でデミアンに勇気を与える礼の姿、心底格好よかった。。

決してエドと対等にはなれず、権力や金でエドを救うことはできなくても、、
愛する人の力を借りることに傷つきながらもそれを受け入れ、デミアンの作品を世に出したこと、一人の作家を殺さず光を当てさせたこと、それは礼だけではできなかったことだけれど、確実に、礼がいたことで成し遂げられたことなんだな、と。

そして作中で言及されている「欧米と比べ遅れている」と言われる日本のアートシーン。なんとなく知っていたけれど、登場キャラのセリフによって語られる内容はやはりショッキングでした。

数年前に大々的に行われていた「怖い絵」展を思い出し、どんな多大な人の努力によってあの美術展が開かれたのか、、と、のほほんと鑑賞を楽しんでいた自分が恥ずかしくなったりして;

決してロマンティックに語るだけでは済まない、商業主義の面を強く見せるアート界の現実があり、日本のアート界、携わる人々の意識が今後変わっていかなくてはいけないとしても。

礼の心にも強く残ったギャラリー客の一人のセリフ、「アートは、私の心にも宿っている」という言葉が、何か心に明るい希望を与えてくれる気がしました。

何者でもない存在である礼だけが与えられる、エドへの愛。
一生、対等ではいられないことを受け入れ、諦めること。
男としての自分の矜持やプライドを諦め、与えられる唯一とも言えるものを惜しみなくエドに与える礼の姿も、エドに負けないぐらい男らしく(あんまりこの言い方は好きじゃないけれど;)覚悟があり、最高にかっこいいー

そんなことを感じた一冊でした。うまくまとめられない。。

そしてやっぱり、自分は不器用で皮肉屋で、でも「認められたい」と心底願っている引きこもり(?)芸術家・デミアンというキャラが大好き!
愛すべき人物。デミアンがいつか、誰かに愛で包まれるといいな、、包まれてくれー…!!
と、そんなことを願いながら本を閉じました。

0

No Title

エドと「対等」でいるために自分の力で仕事を見つけたいと頑張るのですが……蜜月なんてとても言えない、礼にとってはハードな出来事の連続で胸が痛かった。 ここまで大きな権力、富を持っているパートナーと生きていくにはどう折り合いを付けるべきかという事がずっとテーマだった気がするなぁ。それは出会った時から付きまとっている事実で、エドはずっとそれがわかっていたんだよね。 礼にとってはほろ苦い経験でもあったかもしれないけど、礼の「らしさ」が発揮された物語でもあったなぁと思いました

0

とても素晴らしい作品でした!

0

お互いの矛盾に寄り添って心を紡いでいく

礼とエドの遠距離恋愛が終わり、いよいよ始まったイギリスでの同棲生活。

タイトルにある蜜月というワードから甘々なエピソードを予想していたのですが、今作はイギリスで働き始める礼の、新しい世界に対する戸惑いや自分にとってのアートとは何なのか、なるべく自分の力で努力しエドと対等でありたいと思う、そんな様々な心の葛藤にいろんな感情が揺さぶられました。

前作で登場したデミアンが礼にすっかり心を開いていて、礼が職場でまともな仕事を任せてもらえないという悩みを吐露すると、黙ってギャラリーに連絡し礼を担当者に指名して展覧会への出品を申し出る姿に、デミアンにはこんな優しい一面があって礼は特別本当に信用されているんだなとほっこりした気持ちになりました。

ただ、それが地獄の始まりだったとその時は知らず・・・。

新しく登場したロブが二人の関係をかき乱してくれちゃいましたね。
どうして礼を自分の担当にしたがるのか、どうしてそこまで必死に礼にこだわるのか不信感と謎が増えるばかり。

嫌な予感を感じながら読み進めていくと、展覧会前のセレモニーでのロブの裏切りで、その謎の答えがわかり一気に怒りの気持ちが溢れてきました。

でも、一番つらかったのは、セレモニーの一件で礼がデミアンをひどく傷つけ信頼を裏切ってしまったこと。せっかく表にでてきてくれるようになったのに、自分のせいでまた心を閉ざしてしまうかもしれない。

この最悪の状況をどうすればよいのかわからず途方に暮れる礼が本当に痛々しくて可哀想で、思わず自分も悔し涙を流してしまいました。

ギル、オーランド、ジョナスが集まり、礼を励まし合うシーンは本当に癒しで、特にパブリックスクール時代に描いた舞台美術の背景絵の写真を見せられそこから自分の原点を思い出し、自分にとってのアートとは何かが明確になり気づきを得る心理描写は礼が向かうべき道が定まったようで、それまでの鬱屈した気持ちから前向きな気持ちになることができました。

エドがロブの盗作証拠を握っている事実を知り、あとはその証拠をどう利用するか、一人で決断をしかねる礼に、ギルが指輪物語を例えに伝えてくれた、エドが礼に一生言わないであろう言葉、これがすごく心に真っ直ぐ響いてきました。

ギルのおかげでエドの力を使う決心がついた礼は、あくまでその使い方は礼らしく、人を傷つけず悪く言わないというお母さんからの言葉を大事にしていて、礼はやっぱりどの人にも等しく愛を与えられる聖母のような子だなぁと改めてその優しさに癒されました。

礼がデミアンを説得するシーンもおもわずプロポーズか???と思うくらい情熱的で、あんなに作家と作品を理解してくれて愛してくれる人は礼以外いないんじゃないかと思ってしまうくらい、心に響きました。

エドがハリーを【スクエア】から引き抜き新ギャラリー【パルム】のギャラリストとして迎え入れたことに、大丈夫かな?礼との関係も良くなかったのに・・・と不安を感じていましたが、ハリーの礼に対する印象が変わったのは、礼が日本にいたときに関係を構築してきた作家たちからの連絡がキッカケだったと話す場面は、日本でやってきたことは無意味だったのかと打ちひしがれたいた礼にとって、とても救われる嬉しい言葉だなと思ったし、きみともうしばらく仕事がしてみたいというセリフは礼のひたむきな努力が報われたと感じられる瞬間でとても感動的でした。

なかなか頼ってもらえないエドの悲しみや苦しみも、ようやく報われて良かったなと思います。底知れない愛情の深さとスパダリ力はもはやカンストしてますね。

持つものと持たざるものの違いをはっきり思い知らされ、エドと対等になることはないと悟ってしまう礼が少し哀れで寂しく感じるけれど、それでも二人はお互いを愛し合っているから、その関係は成り立っているし、今後も葛藤を抱えながら二人寄り添って生きていく姿を想像すると尊い気持ちになります。

なるべく二人が穏やかに想い合って過ごしていってくれたらいいなと願うばかりです。

礼とエドのお話はこれで終わりなんですかね?
この二人が大好きなので、またどこかで二人のお話を読めることを楽しみにしたいと思います。                                                 

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王様の持てるもの

国立美術館の企画展で、デミアンの作品を展示することができ、成功を掴んだ礼。
やっと日本から英国に住むことになったが、今度は就職難に…最後はやはりエドの力を借りた形でギャラリーに拾われる。

エドの、力を借りてでも、礼がそばに居てくれることができるなら本望、な考えと、礼の何とか自立して、エドと対等な立場で愛し合いたいという思いがそこかしこで対立するストーリーになっています。
結局、何をやっても礼はエドの力からは逃れられず、持たざるものなのだと痛感するところは、読んでいて切ないけれど、持つものの側であるエドの気持ちもわかるような気がしました。
持つものの力の強さって、誤ると怖いんだな。

ギルがいい役割を引き受けていて、彼がいるせいで礼は視野が広がっていくんだと。
礼のなけなしのプライドというか、対等な立場でいたい、という願いは難しいと悟るのもギルトの会話でです。でも愛は1mmも変わらない、というセリフが良かった。

樋口さんはちょうど10周年だそうで、これ以外にもシリーズがありますし、すごい作家さんだなと思いました。

1

礼の成長

内容は言わずもがな神ですし、
今更触れるのもあれなのですが、
良かったものには良かったと言いたい。
そしてそれが作者様に少しでも伝われば嬉しい。

エド&礼の4冊をここ数日で再読しましたが
改めて、まずこのシリーズBLとしては言わずもがななのですが、英国やその他の国についての知識がとんでもなく深いと感じます。
これほどの知識を作品に落とし込んで違和感なく(と言っても日本から出たことがないので圧巻されるばかりでしたが)文章を紡げることが凄いとしか言いようがないです。あっぱれ。
樋口先生も素晴らしいアーティストだと、読み終えて本を閉じたあと思いました。

エド&礼のお話はいくらでも読みたいと思ってしまいます。
それと同時にパブリックスクールでの閉鎖的な空間に生きる危うい年頃の少年たちのお話ももっとたくさん読みたいです。
スタン&桂人ももちろん大好きですが、また新たに…なんて贅沢な願いでしょうか。
なにはともあれ、この世にこんなにも素敵な作品を残してくださったことに感謝いたします。

1

まさに蜜月

エド礼編4冊目。礼が日本での大仕事を終えてイギリスに移住し、仕事探しを始めるーというお話です。

やはり抗えなかったイギリスでの貴族と庶民の壁。そしていくら日本で美術に携わる仕事をしていたとしてもイギリスでは何も持たない人間。持ってるものと言えばエドワードという後ろ盾だけ。でも礼はエドの威光を使わずに自分の力で立っていきたいと願う。もう散々分かってたことなのに、やっぱりここまでつきまとうか、という身分差。

どうにかエドの名前を借りて就職できても雑用しかさせてもらえず自分の存在感さえぐらつく礼。エドもそんな礼を見るのは辛いはずで。

礼のピンチを救ったのはやっぱりエド。でも権力だけで押し通さず、ジョナスやオーランド、ギルという学生時代からの友人を介してサポートしてくれたり、礼にとって仕事のしやすい環境を作ってくれたり…。こんなスパダリいる???学生時代のつらい経験を経たからこそのエドの優しさが心にしみます。

そして何より嬉しかったのは貴族社会がまだはびこるイギリス社会で礼の忖度のない、真摯な人柄で付き合ってきたことが全く無駄ではなかったこと。それはイギリスでいじめらたこともあるギルとの関係もそうですが、日本の出版社で働いていたことやイギリスでのスクエアでもそう。ちゃんと礼の真心が色んな人にそれも礼が大切にしたい人たちに伝わっていたことがとても嬉しいことでした。こんなことを言うと礼の親戚のおばちゃんのようですが(笑)

副題にロンドンの蜜月とあるけど、まぁ正直、礼がイギリスに到着して最初の1週間は蜜月だったけど、礼にとって試練しかないじゃん!!と憤ってしまいましたが、最後まで読み切るとエドが礼に差し伸べる優しさや愛情に、うん、これは蜜月だな。と納得。

まだまだイギリスでの生活に不安がないわけではないだろうけど、これだけの辛苦を乗り越えてきた2人ならもう大丈夫だろうな、とやっと安心して本を閉じることができました(だからと言って続編を希望してないわけではないです、続編ほしいです)。

1

歯がゆさ

遂にイギリスにやってきた礼。
就職活動するのですがなかなかうまくいかずー…。

今回は礼が凄く頑張ったなぁと思った回でした。
でも、同じぐらいエドもグッとこらえてて、読んでいてすごく辛い気持ちになりました。
エドの名前を使えばどうとでもなるのに、それはしたくない礼とそんな礼の考えを尊重するエド。

礼の気持ちはすごくわかるんです。
でも、エドサイドになるとすごく歯がゆかっただろうなぁって。
使えるモノがあるのに使わずに、恋人がすごく辛そうなんですよ…。
そんな時にすーっと礼の心の中に入ってくるギルの言葉。
ギルってほんと…いい人なんだよなぁ。
彼がいて、大事な場面でエドの気持ちをわかりやすく礼に伝えてくれるから
二人が拗れずにすんでるんだなぁってすごく思います。


途中すごくハラハラして切なくて悲しい気持ちになったけど
個人的にはデミアンの気持ちが救われてほんとに良かったです。
そしてデミアンが前に進むきっかけが出来て良かったです。

今回もすごく素晴らしいお話でした。
ずっとずっとこのシリーズを読んでいきたいなぁと思いました(*´▽`*)

0

神の上を行く作品

神の上ってなんですか?

いや、もうほんと、前3巻分が秀逸だな。すごく面白い。これ以上はもうないだろうと思ってた時期がわたしにもありました。

あったよ!!!!!!
これ以上、あった!!!!!

もうとにかく読んでほしい。
正直言うと、途中までの展開がほんと辛い。
エドに無視されて続けてたレイが一番しんどいと思ってたけど、私の視野が狭かったです。
レイの世界がどんどんどんどん広がっていって、つまりはそれって大人になるということなんですが、その成長段階に合わせた辛さを問題提起してくる神業がほんともうとにかく読んでください。

BLはちょっと…とか言ってる人にも、私は胸を張って勧めたいです。
男同士のえっちが嫌いなら読み飛ばしていいから、物語だけ純粋に読んで!って押し付けたいです。

私は何を読まされたんだ状態です。

エドほどの美男子がいるなら、映画化してもいいくらいには壮大。そして、その壮大さが嫌味でもないし、無理もないし、矛盾もないし、突飛な展開でもなく、レイを苦しめて、救うという完璧なストーリーでした。

1

『愛する』という至ってシンプルで1番生きていく上で大切な事

パブリックスクール (エド×礼)4巻目にあたる最新刊。この作品は今年のBLアワード2021で第一位に輝いた作品。

お話はエドと暮らすため、日本からイギリスに渡英した礼がイギリスで就職活動をはじめるも全くうまくいかず、自分の仕事への価値観や自分にとってのアートとは、恋人のエドと一緒になる覚悟を何度も考え、苦しみながら、自分なりの答えを出していく..礼の人生の大きな大きなターニングポイントになる巻になったかと思います
.

相手が自分の事をどう思おうが、目の前の人を愛する、今はできなくてもきっとこれから先そうあれるよう願う。そんな礼は本当に凄い、強い人だと思う。
.
生きていると惨めに思うことも、裏切られたと感じることもあるかもしれないけど、そこで捻くれない強さや誰に対しても誠意をみせる礼に心を打たれました。
.
このシリーズは、ロマンチックな感動作という言葉だけでは語れない、『愛する』という至ってシンプルで、でも1番生きていく上で大切な事を突き詰めて書いた作品だと思います✍️

1

もっと早く出会いたかった

最近一気読みしてハマりました。
受けの健気な礼もスパダリ執着攻めのエド。そして、身分差…全てが好みです。
しかし、このような褒め言葉の羅列はBL作品にはありふれています。
それ以上にこの作品には個性豊かなキャラクター、描写があり「BLを超えた」素晴らしい作品になっています。

愛とは何なのか、友達とは、国家の違いとは、仕事をする意味とは…

これは幼くして母親を亡くした礼が壮絶な人生をかけて答えを見つけていく物語でもあります。本当に出会えてよかったです!

3

余韻がすごい

すみません、エドレイが気になりすぎて、八年後の王と小鳥の後スタン桂人編飛ばして読んじゃいました。(この後読みます)
すごく良かったです。
読後の余韻がすごい。
名台詞もたくさん、マーカーで線を引きたくなるくらいグッとくる台詞の数々。
今回は、さまざまな愛のかたちが描かれていました。
懐かないネコ(デミアン)が心を開く。
一緒に美術館行こうって誘ってきたり、自分からメール送ってくるとか。ホント礼くんは人たらしだな。
そんな礼くんが新天地では今までの実績は評価されず認められず、エドの愛人としかみてもらえない辛い日々。
それが、ラスト近く気持ちいいくらいの巻き返しでカタルシスを感じられた。
半○○樹的な、爽快さ。

親友のピンチに駆けつけるギル、オーランド、ジョナスの登場、みんなを呼び寄せたエドそれにブライトとロードリー。このシーンで胸熱で思わず泣いてしまった。

日頃の誠実な人柄のレイに引き寄せられたみんなが結局助けてくれる、辛い経験も全て未来に繋がっている。全部自分に返ってくるのだな。

最後に、礼のセリフ。
[世界にはいろんな表現がある。音楽や詩、小説や演劇。映像や、アートもそうです。それらは少なからず誰かが生きる助けになる‥‥表現は、神さまが入念に選んだ人にだけ与えられている奇跡です。僕はそのお手伝いをする奇跡をもらった。あなたは‥‥あなたなりの表現の奇跡を、生まれてくるときにもらったんじゃないでしょうか]

心が動いた作品を良かった!と言う事はみんなができる事。これからも作品の感想を書いていきたい。

4

まだ好きになれない

やっぱり私はレイが好きじゃありません。
大人しい顔してブライドが高くて、ここぞという時に何も言えない弱さに腹が立ちます。
だから、私はきっとレイとはずっと分かり合えないのだと思う。
今はそれでもいい。
でも、いつか理解できたらいいなと思います。

ストーリーには、今回もボロッボロに泣かされました。
それは、エドの包容力にでもレイの愛にでもなく、ヘッジズの無念さにです。
本作の影の主人公は、間違いなくヘッジズです。

相変わらず考えが甘いレイ。
エドの名前でギャラリーに就職しておきながら、エドありきにしか扱われないことに不満を抱えています。
しかも、アートを売値で評価することに違和感を感じている……
ギャラリーに勤めておいて、それはないよと思います。
しかも、ヘッジズを地の底に落とすような大失態……
全てレイが悪いわけじゃないのは勿論分かっています。
悪いのはヘッジズの作品を盗作し、その罪をヘッジズに着せようとしたロブです。
でも、この結果は読めてたよ?
自分の都合のいいように考えていたレイもやっぱり悪いと思う。

それでも、後半の仕返しにはワクワクしました。
エドの権力と財力をフル活用し、友人たちのコネを利用してヘッジズを救ったところ。ここは胸が熱くなった。
天才だけど不器用なヘッジズが、最高に愛しいキャラ。
誰かに見せるために作ってるわけじゃない……そう言うのは評価されなかった時のための予防線で、傷つきたくないヘッジズの強がり。
本当は誰よりも理解され、愛されたがってるのが分かる。

アートは心の糧だと思います。
なくても生きていけるけど、あれば心は豊かになる。
そして、その価値を決めるのは見る人である。
有名なアートよりレシートの裏の落書き、母の日の似顔絵、ここに価値を見出す人もたくさんいると思うし、それでいいと思う。
だけど見てもらわなくては何も始まらない。
なんだかんだ、ヘッジズの作品を世に出したレイの功績は偉大だと思います。
いつかヘッジズの作品が誰かの杖になっていくのだと思うと、それだけで胸がいっぱいです。

そして、世の中は矛盾に満ちている。
エドと生きていくためには、それを受け入れる強さを持てるかどうかなのでしょう。
何度も出てくる〝矛盾〟という言葉に違和感を感じていましたが、なるほど、ここに繋がるのかと納得。
持つものはその権力を使う事に、持たざる者は悩みながらその権力を甘受することに苦しみます。
矛盾があるけど愛があるから受け入れられるし、それでいいじゃないかと思います。
エドと肩を並べる事は出来ないと知ったレイの辛さは理解できるけど、レイが日本で撒いた種はちゃんと育ってたじゃない!
もっと自信を持ってほしい。
そして、自分なりの努力でいいのだと感じてほしい。

続編があるか分かりませんが、レイはこのままでは終われないと思う。
いつも書いているけど、もっと強くなって欲しい。
たくさん泣いてたくさん考えさせられました。
こんな作品、他にはない。
蜜月というほど甘くないけど、たくさんの人に読んで欲しい。
そういった意味で、間違いなく神作品だと思います。

5

現代アートシーンも学べるし色々

現代アートシーンを学べてすげえ!てのが1つ。

てかもう。語り尽くせません。

お仕事のお話が中心でエロ少なめですご注意を。
エドは糖度5000%以上でした。ニヤケしか出ません。
でも礼が少しでも嫌がれば辞めます。(エド紳士!)

樋口先生の素晴らしい点。今回も、物語の材料に対しての情報収集に余念が無いです。
好きだからこそすごい熱量。脱帽です。
つい実在かな?と思って見てます。
現代アートのお話も純粋に勉強になりました。より興味を持てば、もっと奥が深そう。

本編ですが、何しろ3巻も経てぶつかり合ってるエドと礼。2人の衝突はあまりありません。
礼と社会のぶつかり?礼が社会を受容する印象が強いです。

いつも思いますが、本当に本当に本当に礼は頑固ですよね。
まあそこはね!!!3巻読んで分かってはいましたので、今回は覚悟して読みました笑笑
相変わらずでしたが、それでも頭ごなしにエドにすぐ突っ掛からなくなったし、レベルの差などを受け入れなかった頑なさが減ってきてました。進歩!

とにもかくにも感動したのは、周りが倍速で大人になっていて…!
精神的な話です。
エド、ギル、オーランド、ジョナスが、学生時代以上に、精神的に大人でした!!!感動した!!!
礼の性格を隅から隅まで理解し、見守り、本人から救いの手を求められた時に初めて、諸手をあげて全力で力になる。

もはや、礼は生まれて初めて1人で歩こうとしている幼児であり、エド達4人は、それをさりげなく、でも転んだ時にすぐ助けられるようにと全神経を注いで眺めて見守り、初めて歩き出す瞬間を待ちわびる親のようです。

さすが会社のトップに立つ者、それも経済界でも上位に立つ者達のスキル!!人を成長させる為の腕前!!!
私もその会社に入りたい!!!(静かに)
エドもだし、ギル、オーランド、ジョナスも登場シーンが少なめで少し寂しさはありますが、存在感は学生時代よりあります!!!
痺れます!!!

エドが!!!エドがほんとに!!!ようやくやっと礼と一緒の暮らしを手に入れたにも関わらず、それでも、自分の持つ力で礼を傷付けないかと不安を見せる!!!
たまりません!!!
さらに、礼に「3日やる。覚悟を決めれば俺の力をお前のために行使できる」的なことを言ったあの時の本当になんというか、ようやく自分のやりたいことをできる、みたいなエド。感動します。
エド、エド、あーほんとに、礼と出会って礼を愛して、今まで権力に縛られても耐え抜いて本当に良かったね…(号泣)です。

礼を助けたいけど力は押し付けない。
しかも気遣ってる風にも見せない。
痺れる…じわじわと、4人の凄さを感じています。
本当に素晴らしい恋人と友人を持ったものですよね、礼。

礼に対していつも、素直になればいいのに、と辟易してしまうのですが、お恥ずかしながらいつも終盤で気付くんです。

礼がどうしてこの4人と渡り合えるかといえば、やはりそれはずっとこだわっている「対等でありたい」という思いから。
見栄でもなんでもなく、心から敬愛するからこそ。
相手に敬意をはらっているからこそ出る「対等でありたい」とする高潔な精神を持つ礼。
だからこそ4人は力になりたいと思い、礼の悩みに寄り添いたいと思うのだなと…。

礼は今回の巻でしきりに自分のことを「何も持っていない者」と認識して落胆していますが、圧倒的な権力を持つ恋人、友人がおり、しかも彼等は心の1番大事なところで礼に対しても敬意を表している。
そのような人脈があることそのものが「持っている者」だということなんですね。
ただ、礼はそのことを気付けず、ずっと4人のことを自分の「持つもの」ではなくて、「利用」することになるのではと引け目に感じていました。
覚悟が決まってよかった。大事なことですよね。

4人のことばかり言ってしまいますが、デミアンとロブについてだって語り足りないし語り尽くせない。
一歩間違えばお互いにお互いを傷付けて大変なことになっていた2人の関係。
どこかでもっと交わってくれたらいいなと思いつつ、でも交わらないながらすれ違いを重ねる関係も良いなと思いつつ。
終盤、デミアンがスピーチするシーンでは泣きました。人の成長はなんとも美しいですよね。

樋口先生は本当に素晴らしい作家だと思います。
BL枠なのがもったいなく、お金をかけて映画を作ってもらえないかなと思ってしまう。
今回は特に、アートシーンの理想と現実は、割とどこの業界でも持ち合わせている問題だし、読み応えがありました。
この作品も読めて良かったです。

8

ロンドンにスペイン少々

この作品、エドが自由に振る舞えば振る舞うほど好きなので、小さな可愛いお家へ連れ込んだり、ホテルに乗り込んできたり、暴力的な程の金で解決してくるところ大好き!

2割目から6割目ぐらいまで、礼の幼稚さに辟易としていました。王道以外を選ぶなら、リスクと覚悟が必要だと思ってるから、学生のうちは可愛いで受け入れられた部分が、あまり成長していないように思えてなんだかモヤモヤして。
8割目ぐらい以降、正直うまく行き過ぎの感はありつつも、そして世の中の金の重要度をまざまざ見せつけられつつも、なんとなく納得するようねじ伏せられました。エドのスピーチが好き。結局エドが好きなのよ笑
デミアンと礼の精神の交感にドキドキしてしまう。エドが嫉妬しちゃうよ〜

礼がエドと一緒にいることで被るマイナス以上にプラスを得るべきだって発想は、すんなり受け入れられるので、なにをそんなに礼が嫌がるのかとも思うけれど、そんな礼をエドは愛してるからな。
考え方が全然違うのに愛し合ってる2人という構図が大好きであとがきで先生が書かれている通り、アートへのアプローチとか2人には全く相容れて欲しくないし!

最近ハッピーエンドとは言い難い作品に気持ちが沈んだりもしたせいか、大団円にほっとしたり。皆んなが幸せで、礼とエドが幸せなら嬉しい。

7

レイの苦悩と見守る愛

あらすじを見たら、ようやく遠距離恋愛を卒業して一緒に暮らしてラブラブな日々が送れるのね…と思って手に取りました。

とはいってもまじめで自立した男な礼くんがダーリンの権力を利用することもなく実力で地位を獲得していこうと頑張っちゃうんだろうなと思いっていました。

そんな礼の成長物語でした。

健気で努力家の礼を温かく見つめるエドが、もっと自分に甘えてくれないかなといつでもおいでと両手を広げて待ち構えている様子が見て取れて、それでも強引に割り込んだり手早く片を付けることもなくじっと見守る姿に愛を感じました。

そして、礼とともに周りにいる人たちも巻き込むように変わっていくという展開がとてもよかったす。

そういうわけで甘いロンドンでの生活に至るまでが長かったです。
でも、異国の地のアート業界で歩き始めた青年をが成功に向かっていく歩みを見るのは楽しかったです。

これからも二人がどうなっていくのか楽しみです。

6

No Title

礼の仕事とデミアンのアートに関してが7割位でした。
もう少し甘さがあっても良いかな、今まで一番大人な作品なのですが礼の子供っぽさと少しミスマッチに思いました。

最初はエドの口添えに近い形でギャラリーに就職する礼ですが、盗作騒ぎなど色々な騒ぎが出てきます。
礼は今回で闇に足を一歩踏み入れましたね、着々とエドの思惑通りになってる気が。

サイラス最初大嫌いだったのですがこのシリーズで一番憐れでさすがに同情です。

6

各所で涙あふれました

読み始めた途端、随分久し振りだというのにこのシリーズの空気感を思い出し甘く幸せな気持ちにさせてくれる。
これって凄いことですよね。


今回はイギリスでの礼の仕事にスポットが当てられていましたが、深みある描写に一緒に嬉しくなったり心痛めたりと夢中になりました。
共感し感情移入させてくれる魅力がありすぎる!!!

このお話を通して誰もが何かしら思い出したり考えることがあったのではないでしょうか。
自分に通じるものがあり思わず泣きたくなる何かを私はかなり味わいました。
正論だの合理的だの頭では分かるけどそうなりたくない気持ちだったり、圧倒的な力の違いを感じつつも対等でいたい気持ちだったり、いくら愛してくれているからこそとはいえ、自分の心が納得できないことだったり…。


また舞台は日本からイギリスへと戻っています。
考え方や価値観の違いに戸惑う礼の気持ちがことごとく分かり本気で応援したくなりました。
日本人ならではな気持ちをこんなに色濃く書きつつも、相変わらず英国側の表現も巧みで、先生本当は何人なの?と疑いたくなりました(笑)

アートに特に興味のない私でもその魅力が伝わってくるし、デミアンのこともむちゃくちゃ好きになってました…!あんなに扱いにくい人間なのに、同じく愛おしいと思える人間性を見事に書ききってくれている!

そして揺るがぬ強大な愛と共に寄り添ってくれているエド……末長く二人で幸せに暮らしていくビジョンが見えます。
今回も素晴らしいお話でした。

自分の生き方についても、なんだか前向きになれる気がします。

このシリーズは読み終わった後の胸いっぱい感が半端ないですよね。
今回も大事にしたいと思える一冊でした。

15

愛とは苦しくも愛おしい

パブリックスクール4作目。
この2人の続編が読めるだけでも嬉しいというのに、ページ数の厚さに嬉しい悲鳴が出てしまいます。
今作は、あとがきにも書かれていた通り、中原礼という男の子の人生のお話でした。
樋口先生の筆力の高さが今回も見事。
タイトルに「蜜月」とありますが、想像するような甘々の蜜月ばかりではありません。
途中途中、読んでいて本当に苦しかったです。
それくらい、レイという1人の人間の人生が丁寧にリアルに描かれていました。


日本での仕事を終え、イギリスで暮らすことを決めたレイ。
海外で職に就くということ・差別や偏見・挫折・社会的に力を持っている恋人を愛するということ…
次から次へと試練と壁が立ちはだかります。
終始レイにとって辛く苦しい状況が続きますが、ポンポンと簡単に上手くいかない辺りが現実味があって非常にリアルです。
エドと出来るだけ対等でありたいと、自分1人の足でどうにかしようともがくものの、これがなかなか上手くいきません。
逆境に負けず、頑固なくらい誠実に立ち向かう姿が痛々しくも真っ直ぐなレイらしくて良かったです。
悩みに悩み、様々な困難に打ち当たった末にようやく辿り着いた答え。
やっとエドの愛に気付き、理解し、素直に受け取る事が出来たのかなと感じました。

良くも悪くも働いてしまうエドワード・グラームズという大きな権力に、レイは勿論のこと、エドも苦しんでいるんですよね。
本当はもっと頼って欲しかったり、そっと手助けをしたいのをグッと堪えて静かにレイを見守るエド…
前作よりも更に成長した姿が見られ、レイに対する深い愛が伝わりました。
内側ではきっとぐるぐるとしているのでしょうけれど(笑)
余裕があるように見せて、どうすればレイを助けてあげられるのかと物凄く考えていたんだろうなと思うと、なんだか可愛らしくてですね…
ホットワインのシーンもいじらしくて…
でも、シリーズ1作目と比べると紳士的で頼れるとても素敵な大人になりましたよね。
これからはお互いに愛し愛され、頼り頼られる存在となって生きて行けるのでしょうか。
今後の2人の生活ももっと追いかけたいと思いました。

そしてデミアン。彼無しでは今作は語れません。
レイだけではなくデミアンの成長物語でもありました。
前作で強烈な印象を与えたデミアン。
今作では思わず愛おしくなってしまうような部分も見えて来ます。
彼にも大きな出来事が降りかかりますが、前へと進もうとする姿がとても良かった。
あれほど頑なで、繊細で、複雑なものを沢山抱えていた彼のスピーチのシーンには息が詰まるものがありました。
いつか彼と彼の作品がもっと自由に羽ばたけると良いなと思います。


苦しいばかりではなく、蜜月な部分もあるのですが、今作はどちらかというとお仕事やキャラクターの成長がメインです。
そのかわり、ベッドシーンではレイがどんどんエドに開発されてとっても可愛らしい事になっていますよ。
2人のラブなシーンや、もう少しエドも出て欲しかったなあと思いましたので、神寄りの萌2評価とさせていただきました。
いつものパブリックスクール時代のメンバーがちょこちょこと出て来るのも嬉しかったです。
彼らの今後の生き方を楽しみにしつつ、春に刊行される続刊も楽しみに待ちたいと思います。

10

心が震えます

このふたりの続編が読めるなんて…
樋口先生ありがとうございます!

今作品は、ようやく英国に渡った礼が「エドに相応しい自分とは…」ということを軸に、ダミアンの自己理解と表現者としての葛藤や、人種差別やマイノリティの現実など苦しさがそこかしこにこめられ、いつもながらでありますが、とても深みがあるストーリーでした
ギル、オードリー、ジョナスの懐かしい面々に支えられ、礼が更に魅力的に成長していく物語に、どんどん引き込まれていきます そしてエドの果てしない礼への愛の深さとその行動力にも感嘆です!

これからふたりが紡いでいくロンドンでの暮らし、是非とも垣間見たいです。まずは、また1作目から読み返そうと思います!

8

この1冊だけでも素晴らしく面白い

シリーズを丁度読み始め順に読んでいき、ようやく新作まで読めました。
タイトルには蜜月とありますが、蜜月なんてとんでもないですね。ようやく二人のただ甘いだけの日常が見れるかと思いきや、今回も試練の連続でした。

今作から読み始める方は誤って買ってしまった方くらいかな?と思いますが、今作だけでも読めるつくりにはなっていたと思います。勿論シリーズ最初から読むのがおすすめ。

パブリックスクールの凄いところは、本編2作はもちろん、続編の2冊もただの番外編に留まらず作品として1冊で素晴らしく面白いつくりだということ。

レイがイギリスに戻り、エドと共に暮らしていく。この地で働き、生きていく。仕事をどうするのか、生きていく上では大事な問題です。もちろんエドがいる限り働かなくてもいきていけます。エドは絶対にそれでもレイを愛すと思いますが、レイはなるべく対等でいたいと考えている。たくさんの葛藤を抱えながら成長していく。

母親からもらった言葉が今もレイの中で生きていて、やり返す権力と知恵をエドがくれたとしてもそれを不用意には使わない。使うべきところで、正しく使う。素晴らしいです。

それからエッチなシーンも勿論あるのですが、レイがどんどんエッチになっていってたまらないですね。かわいいです。エドの嫉妬は今回は少なめかな。神シリーズです。

10

最愛の人のために

本シリーズは巨大企業の社長でもある名門貴族の御曹司と
彼の恋人で日英ハーフのキュレーターのお話です。

日本から英国に拠点を移した受様が絶大な力をもつ攻様と共に生きる為
様々な軋轢を受けながらも自分らしい生き方を見出すまでの本編と
受様の日本での最後の仕事となる前日譚を収録。

受様は母により天涯孤独となった受様は英国貴族だった父の親族を頼り、
英国に渡ります。受様が引き取られた家は攻様の実家で、受様は否応な
く英国の貴族社会の末端に組み込まれていきます。

受様は攻様の義弟としてして進学したパブリックスクールで貴族社会特
有の様々な軋轢に晒されながらも、誠実で真面目な人柄で徐々に自分の
居場所を見出していきます。

攻様は伝統を重んじる名門貴族の御曹司として、持てる者特有の寛大さ
と冷酷さ、そして孤独な心を抱えて生きていました。受様の存在はそん
な攻様の心を揺さぶり、受様もまた攻様に惹かれていくのですが、互い
の手を取る術を知らず、恋が成就するまでには多くの時間が必要でした。

日本の出版社でキュレーターとして働いていた受様ですが、攻様と生き
るために英国への移住を決意、最後の仕事となった国立美術館の企画展
も盛況のうちに終え、日本を旅立ちます。

そして向かった英国で受様は最愛の攻様と濃密な1週間を過ごします。
そして職探しを始めるのですが、日本での出版社勤務でのキュレーター
実績は英国では経験として認められず、美術館でも出版社でも全く相手
にされません。

英国では現代アートに多大な影響力を持ち、美術館顔負けの企画をも行
うギャラリーも多く、めぼしい出版社にほとんど落ちた受様はロンドン
市内でも大規模なトップギャラリーの1つ「スクエア・ギャラリー」を
訪れます。

訪れたギャラリーではチーフ・ダイレクターと対面しますが、受様の日
本での経験を悪くないとはいうものの日本のアート市場の未熟さを指摘
され、受様自身のアートに対する姿勢を質され、受様は打ちのめされる
のです。

すげなく門前払いされた受様でしたが、ギャラリストからの攻様の縁故
者を無下にできないという指示により、アシスタントとして採用が決ま
ります。しかしながら経験不足を指摘されている受様のギャラリー内の
仕事はデレクターの雑用係で、受様は1週間もすると個々で働いている
意味を見出せなくなります。

そんな中、ギャラリストが次の企画展を人気アーティストの競作とさせ
ると言い出します。1人は企画展に出資している投資家のお気に入りの
アーティストでしたが、もう1人は攻様をパトロンに持ち、受様と懇意
にしている気難しいと評判のアーティストだったのです。

どうやら彼は受様のために企画展への出品を打診してきたらしく、受様
が担当しするなら半年で新作を作成するというのです。ギャラリストは
大乗り気で受様も彼ならと担当する事となりますが、競作相手のアーテ
ィストまでもが受様を担当にと言い出して!?

英国の名門貴族の御曹司である攻様と彼の義弟として育った受様の恋を
綴ったパブリックスクールシリーズの最新作は、前日譚である雑誌掲載
作をおさめての受様の英国での新生活の始まりの章となります。

2人の恋が成就した3巻目の後にハードカバーでスピンオフが出たので、
2人の続編がまた読めるなんて思っておらず、かなりびっくりしました。
嬉しいほうのびっくりはいつでも大歓迎です♪

再び英国に舞台を移した2人の恋物語は2人の恋よりも、受様のこれから
の未来、生き方そのものに重点を置いたお話でたいへん面白かったです。

受様は日本での企画展を成功させて花道を飾り、名門貴族の御曹司であ
る攻様に相応しくありたいと意気揚々と職探しを始めますが、なかなか
上手くいきません。受様はパブリックスクール時代に散々受けた偏見や
差別に再び直面することになるのです。

攻様の紹介ならどんな職でも思いのままですが、名門貴族としても経営
者としても影響が大きすぎるし、受様はそんな攻様だからこそ彼の隣に
いるために自らの足で立たなければならないと思っていたのです。

そんな受様と受様を見守る攻様、攻様が出資しているアーティスト、
競作相手のアーティスト、そしてギャラリーの面々が複雑に絡み合い、
物語りは進んでいきます。

競作相手のアーティストの画策も先見の明のあり過ぎる(笑)攻様の対策
によって阻まれ、受様が選んだアートという世界にどう関わりたいのか、
アーティストとのどうやって関っていくのかという答えを見出すまで
ハラハラし通しでした (>_<)

受様を愛するが故に受様を苦しめる全てから遠ざけたいと願う攻様です
が、今回は受様が助けを求めるまで動こうとしません。愛する人に頼ら
れない辛さ、自分が動く事によって受様の気持ちを思いを踏みにじる事
になる事を恐れる攻様もまた裏ではすごく辛い日々を送っていたと思わ
れて、そんな攻様の愛にも萌え萌えでした♡

特定書店で頂けるペーパーがそのあたりの攻様の状況が語られていて
すごく良いので、ペーパーの付く店舗で買われる事をおススメします。

本作から4ケ月連続発刊が予定されていますが、4月ラストの刊行が
本シリーズの続編です。今からもうワクワクです (^O^)/

11

10周年おめでとうございます

文句なしに神でした。

今作は何でも持っているエドがその力を使わずに、礼が自分で決めて踏み出すまでをじっと見守っていました。

序盤は日本に居る礼と遠距離恋愛中のエド、ようやくイギリスに移住して来て2人きりで過ごす甘々な様子にエド可愛いと悶えながら読みました。

日本にいてもイギリスに来てもエドの名前で理不尽な思いをする礼でしたが、意固地にエドに頼ろうとしません。読者さえも危なっかしいとハラハラするのだからエドはいかばかりであったのかは、秘書のロードリー視点の初回限定ペーパーで語られてます。

ダミアンにアーティストとしての存亡の危機が訪れて、悩んで悩んで考えた礼はようやく愛するものを守るためにエドの力を借りる事を決心します。

それはこれからエドと対等にはなれないと言うことでもありますが、力があるのに礼から求められない事で傷ついて来たエドの愛に気が付いたからでもあります。

礼が礼としてエドの側にある為に、乗り越えなければならない壁でした。

献身的な礼の説得と友人達の働きによって危機を脱したダミアンも他者との関わりを持つことを始めました。

礼がエドの側でどう生きて行くのかを傷付き挫折しながら模索して、ようやく結論を出せたようです。

イギリスに行った事があるので空気感が凄く伝わって来て樋口先生は凄いと思います。

凄いボリュームなのに長いと全然感じませんでした。

続巻も4月に出るようなので楽しみにしています。

25

エドの紳士ぶり上昇

大好きなパブリックシリーズの新刊!
ということで過去作もおさらいしてから本作を読ませてもらいました。

レイがロンドンに来てからのお話でレイが就職に苦しんだり、エドの影響を痛感したりなどしています。
前作と比べると本作はレイの世界が広くなっていて、エドと生きていく苦労が現実感を持って感じられ、2人の関係性をよりリアルに考えることが出来たかなと思います。
また、エドの紳士ぶりと甘々な台詞レベルが上昇していて、こんなハイスペック紳士に尽くされたら
そりゃ転職活動とかどうでもよくなっちゃうよね。と納得。

ただ、私は学園時代のあの独特の世界観と雰囲気が好きだったなあと思いました。
狭い世界でのお話ではありましたが、逆にその閉塞感がレイはエドしか見えていない感があり
エドの独占欲も強くて、正直学園時代の作品の方が好きです。

時が経つにつれエドの束縛と傲慢さが少し薄れているように感じ
エドも成長しているんだなと思いつつ
個人的には樋口先生が産み出す執着心が強い変態度高めの束縛したがりの攻が好きなので
エドのそういう側面がもっと見たかった!という気持ちがあります。
すごく私的な性癖の話ですが。

2人のラブラブシーンがもっと見たい!
エドの嫉妬心溢れる姿をもっと見たい!
ということで、萌評価に致しました。

9

デミアンの成長とレイの覚悟

パブリックスクール、エドとレイのお話4冊目。雑誌掲載のお話34P+レイがロンドンにいってからのお話340Pほど+あとがき。レイがやっとロンドン行ったよーと安堵するかと思いきや、そんな訳なかったですね、相変わらずハラハラドキドキのどえりゃーずっしり来る二人の愛+デミアンの再生のお話でした。レイの辛い気持ちに引っ張られてちょっとキツかったので萌2にしました。

ヒースロー空港でエドに迎えてもらったレイ。エドったら「一週間休みとった、二人で過ごそう」とかって知人から借りた家にレイを連れて行って♡きゃっ♡
ここまでは良かった。
そっからはレイの試練試練試練試練・・・と続きます。頑張って気持ちを持ちこたえないと「イギリス人キライ!」ってうっかり言ってしまいそう。

エド、レイ以外の登場人物は
デミアン(ひねくれ者アーティスト)、ギル、オーランド、ジョナス(3巻までに既出の親友たち)、ヒュー・ブライト(ちょっとチャラ目なアーティスト)、新しい勤務先の関係者複数(ハリー、メイソン、ブライアン)、ロブ・サイラス(アーティスト)、ロードリー(エドの秘書)ぐらいかな。3巻までを読んでないと無理です。

++良かったところ

レイが苦しみ、エドも苦しむところは、想定内、勿論良かったのですが。
それよりなにより一番好きだったのは、デミアン。デミアンが自ら一歩前に進むところが猛烈に良かったです。

今回レイと同じように災難に遭うデミアン。ひねくれものの裏側にある繊細さを、今回レイと一緒に見つけて、レイ同様、愛おしく感じるようになりました。これから彼が作りたいと思うものを産み出し、レイがそれを最善の形で人々に届けられると良いなあと強く思います。そしていつかデミアンもレイ以外の誰かと一緒に歩もうと思うようになると良いな。

そして思った以上に可愛かったのがエド。あの傲慢ちきなエド。くそ憎ったらしかったはずのエド。
「ふっ」って鼻で嗤ってしまうほど、レイのことを必死に考え嫌われないように一生懸命あれこれ行動するのが、もういじらしいったらありゃしない。ああ可愛い。今までも可愛い側面を見せてくれていたと思いますが、今回も「ああやっぱりこいつ可愛い・・」と生意気にも思ってしまいました!

レイとデミアンとそしてエドの人生を共に祝いましょう。(そしてロブの人生も)
既刊読んでいる方は是非。まだ読んでいないという方は、是非1巻から。

11

礼の葛藤。アートへの姿勢。表には出てこないエドの苦しみが切ない…。

まず感じたのはエドはとても素敵な紳士になったなーということ。
以前のように礼に無断で手助けをして口論になったりすることはほぼなく。
身を切り刻む思いに耐えながら、ひたすら礼から助けを求められるのを待つのですね。

そんなエド側の想いは特典ペーパーで読めます。
本編じゃ見られないんですよ。というか…。
エドの出番が少なすぎませんか…???(;ω;)

ストーリーを動かす軸となるのが、
礼が英国で思うように就職出来ない苦しみ。
どこでもついて回る「エドワード・グラームズ」の重圧。
現代アートとは何か。礼のアイデンティティが崩れる音。
そしてデミアンと深い関係を築いていく描写が延々延々。

これらは英国で暮らすと決めた礼にとって最初に乗り越える壁だと理解は出来ます。

だ・け・ど!!!
私はもっとエドと礼が絡むところが見たかったんだー!!
礼が奮闘している間のエドの葛藤が本編にないのはモニャる…(;ω;)

出だしからマイナスなことを書きましたが…。
共に生きるために必要な強さ。権力との付き合い方。
持つ者と持たない者の格差を受け入れる覚悟。
いろんなモノに傷つけられながらも愛を貫く尊さ。

涙するシーンもあり、全体的にはとても良かったです。
神寄りの萌え×2評価です。


最初に収録されているのは「展覧会と小鳥」
渡英前の最後の仕事の様子や、礼との生活を心待ちにしているエドの様子が窺えます。
やっかみに当たられながらも大仕事を達成しエドが待つ英国へと旅立ちます。

英国に着いた直後はまさに「ロンドンの蜜月」…!
長く会えない時間が続いた2人は離れてるのが焦れったいとばかりにたっぷりたっぷり愛し合って。
いや~~~もう堪らーーーーん!!!って感じでニヤニヤが止まらなかった…(∩´///`∩)良き
あああ甘い。甘い。あのエドがレシピを調べてホットワインを作る姿とか愛に溢れておる+゚。*

しかし、ひとときの夢のような時間を過ごしたあとは、現実が襲ってきます。
日本での経験は英国ではなんの役にも立たず。
また「アートに対する哲学がない」とはねのけられ。
パブリックスクール時代に味わった偏見・差別・既成概念にまたしても苦しめられるのですね。

そんな中ようやく雇用してもらえたギャラリーも、
結局は「エドワード・グラームズと縁故」が漏れ伝わっただけの理由でした。

所詮エドからお金を引き出すために雇われたにすぎない扱いをうけ、
少しずつ足下から崩れるような毎日にアイデンティティを失いつつあります。
礼には理解しがたい価値観に「アートとは?」という概念にぶち当たって悩む日々。

そんな弱音をデミアンにポロリと零したところ、
ギャラリー内での礼の立場が一気に変わって事件が巻き起こりーーーと展開します。


あとがきを引用させて頂きまして…
「中原礼という男の子の、人生のお話と捉えていただけたら」と書いてありました。
確かにそうでしたね。大半がアートとの向き合い方に当てられていた気がします。

特にアーティストとの関係を大事にする礼の仕事スタンスは、
結果的にデミアンへ惜しみない愛情を注ぎ続ける描写に繋がるのですね。
礼の精一杯の気持ちを伝える術としてギュッと抱きしめ「愛しています」と。

上にも書きましたが私はエドとの生活や、
英国での生活のしずらさもエドと手を取り合って乗り越える姿を願ったので、
デミアンとの蜜月っぷりに少々淋しさを感じてしまいました…。
それが礼の仕事に対する誠実さ・姿勢だとわかるんですが…でも…でも…。

礼が奮闘している最中のエドの描写はあまりありません。
礼がしょんぼりして帰宅した時ににっこり出迎えて温かく優しく包み込むんで深い愛情を与える。
仕事の相談となると非常に合理的で礼を傷つけてしまうシーンはありましたが、
俺様のような荒っぽさが抜けて懐深い英国紳士の振る舞いに成長したなぁ…とジンワリ。

その裏では体調が悪くなるほど礼を心配していたのですが(※特典ペーパー参照)
礼視点の本編ではそんな雰囲気を一切感じさせなかったのが
エドの紳士たる所以であり、素晴らしさであり、不器用なところでもあり。

エドはいっぱいいっぱい苦しんでるんですね。
持ってる力を使っても使わなくても礼が苦しむのがわかるから。
だったら礼から求められるまで見守るしかない。
助けたいけど助けられない。
礼を泣かせたくないのに泣いてる姿を慰めるしかできない。
見守るのが正しいのか否かも本当はわからない。

そんなエドの本音をやんわりとアシストしたギルの言葉に泣きました。
2人の身分差はこの先一生付き合わなきゃいけない事実。
礼の清廉さはいいところでもあり、面倒な部分でもあるな…と思っちゃいました;

なので巻き起こる事件でよくやく礼がエドを頼った時はホッと。
(というか遅いくらいだよ~(;ω;))
そんでエドの周到さがカッコイイ。ちょっと怖いこともやらかしてたけどカッコイイ。
頼られた際はすぐさま動けるように準備してたのかとおもうと切なキュンなのですよ(∩´///`∩)
礼への愛が重いエドの姿にキュンキュンしっぱなしでした…!!!

というわけで初回特典ペーパー付きオススメします。
エドがお好きな方は絶対狙った方がいいですよー!!

ーーー(切り取り)ーーー
(Amazonでもペーパー付くから地方民でも大丈夫)
(初回限定ペーパー付きと書いてあるのを注文してくださいね)
(なくなり次第終了なのでご注意)

20

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