わたしにください

watashi ni kudasai

わたしにください
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神66
  • 萌×219
  • 萌3
  • 中立8
  • しゅみじゃない11

--

レビュー数
21
得点
423
評価数
107
平均
4.1 / 5
神率
61.7%
著者
樋口美沙緒 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
チッチー・チェーンソー 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫
発売日
電子発売日
価格
¥734(税抜)  
ISBN
9784592877479

あらすじ

クラスメイトのほとんどから名前も覚えてもらえていない「学級委員長」の路は、自分とは何もかも正反対で、クラスでもカリスマ的人気の森尾が嫌いだった。
もちろん森尾も、路のことなど歯牙にもかけてはいなかった。
ところがある事件をきっかけに、路は森尾に組み敷かれ、その体をめちゃくちゃにされてしまう。
突然の憎しみをぶつけられ、森尾が自分を嫌いなことに、思いがけず傷つく路だったが──。
多感な高校生たちの、切な痛い恋と葛藤を描いた衝撃作!

表題作わたしにください

森尾祐樹,高校生,クラスの中心的存在
崎田路,高校生,学級委員長

その他の収録作品

  • あの子がほしい
  • あの子にあげたい
  • 世界の隅っこで、ひとり(書き下ろし)

レビュー投稿数21

心と身体、憎しみと愛、絶望と希望

大人しく真面目な「学級委員長」と、人気者のクラスメイト。
「強姦」と言う、とてつもない失敗と痛みを経て、二人の関係がいかに変化して行くかー。

今作ですが、強姦がとても重要なファクターとなります。
主人公は繰り返し輪姦されますし、陰湿で酷いイジメも受けます。
痛々しいなんて言葉じゃ済まされない、とてつもなく苦しいお話なんですよ。
もがき苦しむ主人公の心情描写が凄絶で、読んでいてただただ圧倒されるんですよ。
だからこそ、この作品を通して作者さんの訴えたかった事に、強く心を打たれる。

本編を読んでる間はこらえることが出来たのに、あとがきを読んだら一気に泣いちゃって。
作者さんの訴えたかった事ですが、「もがいてももがいても助けは来ない。それでも必死にあがいてれば、不意に差しのべられる手がある。その事を書きたい」なんですよね。
私が樋口先生の作品に惹かれる理由って、強いメッセージ性だったりします。
それぞれの作品に、私達に訴えかけて心を揺さぶるメッセージがある。
今作も容赦無しで苦しい作品でしたが、このメッセージ故に、読後感は優しくあたたかいです。

ザックリした内容です。
クラスメイトから名前も覚えてもらえない「学級委員長」の崎田路。
人気者で存在感のある生徒・森尾を、自分と正反対だからこそ嫌っているんですね。
そんなある日、不幸な誤解とスレ違いが重なった事により、教室で森尾に強姦されてしまう路。
森尾から向けられる憎しみや侮蔑に深く傷付きますがー・・・と言うものです。

実は最初の1/3くらいですけど、とてつもなく痛いです。
主人公である路ですが、不幸なスレ違いから怒りをぶつける形で、森尾に強姦されます。
その後、担任教師からイタズラされ、それが他の生徒にバレた事で酷いイジメを受けるようになる。
更に、彼に目をつけた他の生徒達からも、輪姦されるようになる。

不祥事を揉み消そうとする大人達も、子供故の残酷さで傷付けて喜ぶクラスメイト達も、性欲発散の為の道具にする生徒達も、もうとにかく酷いです。
これ、しんどいのが、路の心情描写の凄絶さなんですよね。
リアルさなんですよね。
もう、容赦無く書かれてる。

どれもこれも心を抉ってくるんですけど、個人的に一番しんどかったのが、実は輪姦シーンでして。
助けが来る事を祈りながら読みましたが、助けは来ないのです。
路は道具のように扱われ、心も身体もズタズタにされる。
一度ならず。
繰り返しになりますが、この時の路の心情描写がただただ凄絶で。
自分は大きな筒で、崎田路じゃない。だから傷付かない。
そう、自分に繰り返し言い聞かせる。
いやもう、あまりにショックで涙すら出てきやしない。

路と言うのは真面目で大人しく、また強いコンプレックスのかたまりなんですよね。
彼が森尾を嫌う理由ですが、読んでると羨望の裏返しなんじゃないかと思うのです。
自分が努力しても手に入れられないものを、易々と最初から持っている森尾。
また、森尾が路に対して強い苛立ちを向けるのも、自覚しきれないほのかな恋心の裏返しなんだろうと。

この二人、出会ったのがもっと後だったら、ここまで手痛いスレ違いにはならなかったんだろうなぁとも思うんですよ。
森尾のした事は、誉められたもんじゃないのです。
ただ、多感な時期の、「学校」と言う特殊な環境と若さ故に、ブレーキが効かなかった。
そして路もまた、若さ故の未熟さで、ここまでズタズタになってしまった。
もう少し世渡りが上手ければ。
ズルくなれれば。

読んでいて、もどかしく悲しくて仕方ない事ばかりですよ。

と、かなり痛いし苦しいパートを経て、ようやく見える希望の光。
輪姦されている路に森尾が気付き、助けに入りと続きます。

実はここからも、二人の仲は近付いたかと思うと離れと、簡単には上手くいかないです。
ただ、どん底でもがいていた主人公が、少しずつ少しずつ救われと、ここに得も言われぬ喜びを感じます。
深く感動するのが、これほど傷付いていても、主人公が前に進もうとする事なんですよ。
そして、そのキッカケになるのが、森尾の差し伸べた手だと言う事。

先に、あとがきで泣いたと書きましたが、あがき続けていれば、不意に差しのべられる手がある。
傷付くだろけど、それでもいい。頑張ってみよう。
優しい人間になろうと、路が決意するシーンにすごく心を打たれて。
そう、決して一人じゃないんだよと。

ところで、ご存知の方が多いとは思いますが、今作で完結はしません。
来月刊行の続巻で完結です。
二人はやっとスタートラインに立ったばかりで、まだ結ばれてすらなかったりします。
一応、キリがいいラストなので、来月まで悶え苦しまなきゃいけない感じではないですけど。
あと、本当に痛いです。
イジメとか強姦とか地雷の方は、とても読めないと思う。
でも、本当にすごい作品だと思う。
読む事で、人によってはガラッと意識が変わるんじゃないでしょうか。

ところで、何が一番驚くって、これをデビュー前に書いてたって事ですけど。
そう、デビュー十周年と、おめでとうございます!
イベント目白押しで、もうワクワクですよ。
とりあえずは、来月の続巻を楽しみに待ちたいと思います。
今回は路に光が当てられましたが、次巻で森尾のターンですかね?

19

萌え的にも精神的にもシンドイ

これは感情の言語化が難しい…。
振り幅が広くて萌え的にも精神的にもシンドかったです(;ω;)
うん。でもこの痛みが突き刺さる感じは個人的にかなり好き。

苦手な方にご注意して頂きたいのは、
輪姦や虐めの描写がそれなりにあること。
攻めからも酷い仕打ちがあること。
容赦ない描写がシッカリはいっています。

前半は受けが道具のような扱われ方をして目を背けたくなる痛々しいシーンがありました。
けれど後半に入ると高校生の切ない片想いがメインになってきて、これがめちゃくちゃ萌える!!

あらすじに【多感な高校生たちの切な痛い恋と葛藤】とあるように
転んで、傷ついて、泣いて、臆病になって、また立ち上がる高校生の恋にグッときました。
個人的には刺さる設定も多かったのでシンドイけれど読んで良かったです。


受け:崎田は視力が弱く小柄な体躯。
生まれつき身体が弱いのがコンプレックスで周囲を羨み、性格を卑屈にさせています。
悪いことはすべて人のせいにする。自分の弱さすら他人のせい。これには少々辟易しました;
当然(という言い方もアレですが)友人もおらず、自分の存在価値を見出せずにいます。

攻め:森尾は体格も能力も恵まれた側。
カーストでいえば涼しい顔でトップにいるタイプの人間です。

崎田は自身の弱さが原因で森尾にめちゃくちゃ嫌われてしまうのですね。
そして怒りまくった森尾から手酷く強姦されてしまう。
以降、崖を転がるように起こる不幸の数々…。
教諭からの強姦未遂・卑猥な虐め・輪姦。

森尾の友人・黒田だけは虐めから庇ってくれたけれど、
崎田は庇われる惨めさすら苦痛でキツくはねのけてしまいます。
それがますます森尾に嫌われる結果になり…。

ある日、またも輪姦されそうに追い込まれた場面でなぜか森尾が助けてくれました。
その一件をキッカケに森尾と少し縮まる距離。
崎田は今までの卑屈さを反省し、自分を変えようと努力をはじめてーーーと展開します。


うわ~!もう…なんだろうな。
完璧な人間なんていないのですよ。ましてやまだ未成熟な高校生。
これとにかくシンドイ。萌え的にも精神的にもシンドイ。
友人の黒田は兄貴肌のひたすらイイコで読み手としても存在に救われました。

崎田は無自覚だけど、幼い頃からずっと森尾に憧れてたのですね。
けれど次第に可愛さ余って憎さ100倍的な方向にいってしまう。
奇しくも森尾に強姦され、同級生に輪姦され、
そこで初めて森尾への感情に気付くのが切な痛い(;ω;)

森尾も森尾で、崎田が輪姦されそうな場面を見て気付くのです。
それまで強姦したことをなんとも思ってなかったけれど、いかに非道な行為だったのかを。

森尾が崎田に恋をした過程は描かれていなかったのですが
最初は強姦への贖罪もあって崎田を見守っているだけだったのが、
自分が犯した罪を丸ごと許してくれた温かさに包まれたからなのかな?と。

崎田が自分を奮い立たせる姿や、森尾に嫌われ傷つく場面は
切な痛くて何度も涙腺が崩壊しました(;ω;)
でも傷つき萌え属性持ちには刺さりに刺さりまくった…。
攻めが受けを嫌う設定も個人的に萌えを感じるので更に。

本編のあとに
森尾視点の「あの子がほしい」
崎田視点の「あの子にあげたい」
というSSがあるのですが、
お互い好きで好きでどうしようもないくらいなのに
清々しいほどすれ違っててこれまた萌えるのですよ!!!
挿入手前までしててキスして手を繋いでるのに、ですよ!?
なんでそこまでしてて両片想いしてるのよーーーーー!(床ローリング)

そう。この2人は始まりが強姦だったばかりに
すれ違いや誤解を生むのが切ない…苦しい…萌える…。

崎田が輪姦のトラウマに苦しむと、森尾は罪悪感でいっぱいになる。
そんな森尾に気付いてても、崎田は森尾の側にいたくて解放してあげられない。
好きで仕方ない恋心は純粋なのに仄暗い影もついてまわるのが萌え的にシンドい。

すれ違いは圧倒的に言葉が足りないんですが、
臆病になって中々素直になれない高校生の姿も堪らなく萌えます。
個人的に後半は高校生BLの尊さすら感じながら読んでました+゚。*(人;///;)*。゚+

続編はただただ幸せなのがみたいけど…多分色々あるのでしょうね。
また傷ついたりしないか少し読むのが怖いですがその先にハッピーがあると信じて!
両片思いの気持ちが繋がる瞬間が楽しみです。

13

性格と”トラウマ”が受け入れられるかが重要。


まず初めに、”強姦”というワードに嫌悪感、地雷がある人にはオススメしません。
これがかなりの鍵となるので注意です。

私は電子で読んでなかったので初読みです。尚且つ1日で読み終えてしまいました。
それを踏まえてどうぞ!!


この巻だけじゃ終わらなかったーー!!
来月(12月)に続編(?)が出ることは知っていたのですが、勝手に番外編とか短編集かなーと思っていたのですが終わり方的に続きますよね。。

今回のお話は受攻共に性格に難ありです。
私はふたりの性格についてお話しますね。
序盤の受けさんの性格には正直驚かされました。卑屈です。とっても。努力しているのを皆知らないくせに。こいつら俺(僕)を良いように使いやがって。みたいな。。
自分に対してにこやかに話してくれる人(この人はとてもいい子)に対して卑屈さが勝り、手を跳ね除ける人です。
ここも評価の分かれ目ですね。私はストーリーが纏まっていれば性格とか気にしないので平気でした。
この性格からの因果応報といいますか、受けが侵したものに対して罰が重すぎますが、だからこそ残る”トラウマ”今回は”強姦”が重要ですね。
この”トラウマ”が小さすぎると話の内容に違和感が出てしまうので仕方ないことだと思います。

後半受けさんの性格が90度程変わるので「え、あ、ここまで変われたのね。」となりますが、卑屈さは健在です。もう、これは”トラウマ”も相まってるので多少の違和感で留まりました。

さて、攻めさんですが、ちょーっとどこで好きになったのかわかりにくかったかな?これは次の巻でわかるのかな?期待してます。
こちらも性格に難といいますか、執着ですね。一度好きになったらなりふり構わずという感じです。
優しいのですが、嫉妬や受けへの罪悪感がない混ぜになって暴走し結果自分も受けさんも傷つけてしまうという感じです。


私は樋口先生の文章が大好きなので(受けどん底からの〜というのも好きです。)多少贔屓目ではありますが買って良かったなと思います。
普通に心が痛いなという描写もあるのでそこを含めて吟味してください!
私は勿論次巻も購入します。特典もゲットするつもりです。
次の巻では彼らの成長が見られるのではないかとワクワクしています!

12

樋口先生らしい

致命的なネタバレはなしです。
あらすじやキャラクターについては他の方が詳しく書いてらっしゃるので、サラッといきます。

第一印象は、樋口美沙緒先生の萌ポイント剥き出しできましたね…ってかんじ。
個人的には大好きです。
樋口先生の好きなパターンなのか、こう…序盤からの受けの境遇がめちゃめちゃ辛い。そこから徐々に報われていく感じ。
今回は日本の学校が舞台ですが、主人公のアウェイな感じは樋口美沙緒先生の有名作パブリック・スクールと似てるかも。
ただこの序盤の切ない・辛いモード…今回はモブによる無理矢理シーンもあったりするので、辛さマシマシです。
わりと露骨ないじめもあるので、苦手な人は苦手かも。

こんな言い方するとアレですが、かわいそうな受けや切ないのが(報われていくの含め)好きな人は好みだと思います。
ただしんどさレベルはまぁまぁ高めなので、人にはちょっとおすすめしづらいかもしれませんが笑
下巻…続編?が楽しみです!

7

足りない子どもたち

暴力やレイプを肯定するわけではなく、ただ、可哀想で不幸で優しい受けがたまらなく好きな人間には刺さりすぎる話でした。

一番最初に怒りにまかせて受けをレイプした攻めが、途中から受けを好きになってまるでヒーローのようになるのですが、本当は昔から好きだったとか、最初にレイプした時から好きだったとかじゃなく、レイプは本当にただのレイプでしかなく(愛情があったとしてもレイプはレイプですが)、あとあと好きになって、「ああなんで俺はあんな最低なことをしてしまったんだろう」とどうしようもない後悔を抱くのが残酷ですよね。
せめて、別の感情が勝っていたとしても少しくらい好意があれば救われたかもしれないのに、受けをいじめる人間に腹を立てながら、でも自分もなにも変わらないなと思うのが卑下でもなんでもなく事実としてある。
そう反省するなら手を出すなよと思うのに、どうしたって、感情がショートすると衝動を制御できなくて言葉を尽くすより先に手が出てしまう攻めを馬鹿だなあと一蹴出来ないのが、樋口先生の書かれる人間の魅力なのかなと思います。

樋口先生のインタビュー記事で、この話の登場人物は何かしらが足りない、とおっしゃっているのを見て、登場人物たちの歪な感情がしっくりきました。
誰かから見て、完璧で、なんでも持っているように見える人間も、どこかなにかが欠けていて、そのせいで少し生きづらかったり、どうしようもない失敗をしてしまったりする。
そんな彼らが、欠けている部分をなにかで埋めるのか、埋まらなくても生きていく術を身につけるのか、噛み合わない攻めと受けの会話も含め、続刊でどうなるのか楽しみです。

暴力もレイプも同意のない性行為もすべてダメだからね!!!!と思いながら、それらをトリガーにして進む話は同時に絶対に穢されない美しいものを見せてくれるので、べしゃべしゃに泣きながら読みました。

7

読中の痛みから目を逸らさないで。読み応えに変わるから。

何もここまで痛めつけなくても…と最初は思いました。
序盤から受のネガティブな独白と不憫なアクシデントが続きます。
シンクロしてズブズブと沈んでしまえば、読むのは相当しんどく、思わず手を止めてしまいそうになる。
慣れ親しんだBL=ファンタジーの世界感とは対照的な愛のないレイプという辛口なテーマ。テンプレートから外れるからこそ、気持ちの良い感情だけでは読み進められません。
初回は気持ちにゆとりを持って読むことをお勧めします。

それでも、ただ、一つ言いたいのは、
次巻も含めて最後まで読んで欲しい。
途中で挫折せずに読み切って欲しい。

当初感じた痛みや辛さは、読み応えに変わっていくから。
その読み応えは上っ面のときめきやスリルじゃなく、この作品でしか味わえない価値のあるものだから。
決まり切ったストーリーやテンプレートの恋愛では満たせないものがそこにはあるから。

逆に言えば、登場人物の痛みに上手く乗れなかったり、拒絶で物語の内容が入らないのであれば、この作品の面白さは半減します。
単なる「カラダ先行・両片思い」系のお話に括られてしまうかもしれない。

でも、実際は違うと思う。
既存のBLとは異種のものだと思う。

前半「わたしにください」は受の崎田が理不尽な境遇の中でボロボロになりながらも再生し、レイプ加害者で攻でもある森尾への気持ちを深めていくまでが描かれます。
後半「あの子がほしい」から、攻視点となり森尾の感情がフィーチャーされます。
ここにきて、それまでのもやもやが嘘のように作品に引き込まれました。

セルフ突っ込み満載の攻視点で浮かび上がるのは、あまりにも愚かで、浅はかで、臆病で、いびつで、哀れな青年の姿でした。
勝手にレイプして、勝手に罪悪感を持って、勝手に好きになって、勝手に嫉妬して傷つけたり、手を出したり。そしてまた勝手なルールで自分を戒める。
情動と、懺悔と自分ルールと、言い訳で雁字搦めになりながら受を振り回す攻。
言葉だけ並べると相当に最悪な人物。
でも不思議なことに、「あの子がほしい」を読みながら、私はこの愚かな攻めに対して愛しさを感じるようになり、気づけばこのパートをリピートしていました。
よくある攻めザマアとは少し違いますが、弱さやいびつさ、狡さを散々に露呈し、なお罪深い攻がもがく姿には心打たれるものがあります。

このあたりはさすが樋口作品。
衝撃的ストーリーやマイナスの感情を惜しみなく出して心を揺さぶりながら、気づくと愛しさや面白さに昇華させてくる。
結果、心に残る作品になる。

当初は受の境遇に対して心を痛めていたはずが、いつの間にか愚かな攻の罪深さに心を痛めるようになっていて自分でもびっくり。


最初、直観的にこのレイプ展開は嫌だと感じました。
きっと他にもそう感じる人は多いと思う。
でも、その嫌な感情ごと、この作品の魅力でもあるのだと思う。
それがなくても恋愛小説として成り立たせることはできるけど、際立たないし、心を掴まない。
何よりこの攻めの愚かさと罪深さを出すことはできない。

不快だったけれど、読んで良かった。
そんな矛盾した感想を初めて持った作品でした。

この哀れで愛しい攻の愚かぶり、次巻に続きます。

4

ばたん

読了後、このレビューを読めて良かったです。

感想

とっても良かった!!!しんどくて最高に萌えました、、、。

黒田くんがいい人すぎて途中本気で「路くんあなた森尾はやめて黒田くんと付き合ったほうがいいんじゃない??」と言いたくなりました笑

でも路にとっての森尾は昔からどうしようもなく魅力的で憧れで、自分を見てくれないから嫌いになっちゃうくらい(無意識に)恋してしまっている。
森尾はどう考えてもズレててやばい奴だろ〜と私は思うけど、恋しちゃってるならこればっかりは仕方ない。

森尾は森尾でどこか欠けている自分に苦しんで、あとからあとから自分のしでかしたことを悔やんでてどうしようもないやつ。

でもそんなどうしようもない男をきっかけに、卑屈だった路が勇気を出して自分を変えようと努力しているから、絶妙なバランスで成り立っているふたりだなあと思います。

などなど、 

真面目な感想を抱いている自分ももちろんいるのですが、それとは別で「受けちゃんがかわいそうでかわいい、、もっと痛めつけてもいいのに、、めちゃくちゃに萌える、、」という欲望に忠実な自分もいます....
ここまで痛めつけてくれる作品はなかなかないのでありがたいですね...
ごめんなさい、、、現実でのいじめや強姦を擁護する気持ちは一切ないので許して、、、。

「あの子がほしい」
トラウマに苦しむ路とそんな路をみて死ぬほど後悔する森尾、という状態に大変萌えました。
森尾視点で、路のことを(心の中で)かわいいかわいいしてるのも良かったです。

路視点の「あの子にあげたい」とあわせて見事にふたりが両片想いですれ違ってるのも切なくて最高でした。

2

ツンデレ攻めに萌えた

想像以上に辛かったけど想像以上に萌えられました。

受けの路の境遇がつらくてつらくて、どんだけどん底に追い込むんだと読んでる側も胸が痛くてしんどかったです。
途中、黒田にごめんと謝って泣きじゃくるシーンでは一緒に号泣してしまった…

この受けのすごい所はそのどん底の状況から、誰に救われるわけでも助けを求めるわけでもなく、自らを省みて悪い部分に気付き、そしてそんな自分を変えようと努力するところ。
正直最初は受けの暗さと卑屈っぷりが感じ悪くて好きになれなかったんですが、あの状況からそう思えることは素直にすごいと思ったし一気に好感が持てました。

BL的には普通攻めが守ったり庇ったりするんだろうけどこの攻めは逆に前半は傷付けてばかりのクズっぷり。
受けはそんな攻めが大嫌いだと言いつつも、最初から意識しまくりで恋してるのは明らか。
そんな恋する相手と少しでも近づきたい、友達になりたいと思う心が路の原動力になったんでしょうね。
恋する力ってすごい!

森尾は確かにグズですが、私は嫌いにはなれませんでした。
むしろツンデレ攻めが好きなので、後半路が気になり出してからの態度はめちゃくちゃ萌えました。
嫉妬してカッとなってひどいこと言ったり、理性が抑えられずにキスしたり、前半の無関心ぶりからは一転して路に振り回されたり溺愛してる様がツボでした。

攻めが赦せるか赦せないかによって評価が別れるかと思います。
攻めの成長や二人の行き先も気になるので続き読むのも楽しみです。

2

”辛い”という感情でBL史上、初めて泣いた


前半、受けの境遇が辛すぎて、感動以外で初めて泣きました。

こんな辛いシーン、人が書くことが出来るんだ…と読んだ後に驚きました。しかもそれを伝えられる文才って本当にすごいんだな…と、月並みな感想ですが痛感させられました。

思わず「私はどうなってもいいから、この子だけは幸せになってほしい」と願ってしまうほど…(笑)

樋口美沙緒先生はムシシリーズを始め、パブリックスクールなど大好きな作家さんのお一人です。
他の作家さんとは違う作風で、受けが辛い思いをしてハピエンになる…という傾向があるような気がする、と最近気づきました。

今回もあらすじ、レビューを見ずのネタバレなしで拝読。
安定の作家買いだからできるんだなぁ、ここまでハマらせてくださってありがとうございます先生…。

内容もさることながら、印象的だったのはタイトル「わたしにください」。
いつもは小説の表題はあまり気にならないのですが、今回は読んでる最中に何度も頭を過りました。

とにかく希望を求めてご飯を食べるのも忘れて読みました。

最後は「えっ!?待って!?どうなるの!?」と気になるところで一巻終了。
ただ、今回はめったにしない二巻ダブル買いをしていたので一安心…。
絶対に続きは気になると思うので、続巻も買っておくことをオススメします。

2

強い受けに泣かせれる

ずっと読まずに積んでいた本。
重そうと思って躊躇っていましたが、読み始めれば一気読み。
樋口先生がデビュー前に描いた小説……嘘でしょ⁉︎
才能がすごすぎる!
強い受けを書かせたらピカイチの作家さんですよね。

ちょっとしたボタンの掛け違い、少しの誤解から運命の歯車が狂っていくストーリー。
健気で不憫、そして強い受け……と、いう今の樋口先生のルーツであり真骨頂であると思いました。

同級生の森尾からレイプされた路は、その後次々と教師、不良グループからレイプ(未遂含め)されていきます。
不幸の連鎖……その原因が路が恋する男だというところに、運命の悪戯を感じました。

噂が先行し、クラスメイトから虐められて蔑まれて、挙句に性欲処理の筒とされてしまう路が切なくて悲しくてやるせなかったです。
もう逃げてもいいよ……何度そう思ったことか。

それでも逃げずに学校に行き続け、自分から変わる努力を始めた路の姿に涙が止まりませんでした。
そんな路に好意を抱き始めた森尾。
だけど、2人は被害者と加害者の関係で……と、両片想いながらも、すれ違っていく様子が苦しくてもどかしい。

「後悔先に立たず」とはよく言ったもので、既に終わったことを悔いても取り返しはつかないのですよね。
ただ、クソだった森尾が路に恋をして、自分の行為を恥じ、後悔するところは共感できたし、人間的に成長していく森尾にホッとする気持ちにもなったり。

シリアスで重い展開の中、友人の黒田が唯一の救いでした。
この人、男前過ぎるでしょ!
普通にしたら黒田の方を好きになるよね?
だけど、路はレイプされた後に森尾を好きになった訳じゃなく、好きだった相手にレイプされた。この差が大きい。
小学生の頃からずっと憧れて焦がれてきた相手だからこそ、酷い事をされても許せたし、好きでいられたんだと思う。

この2人、一体どうなるんだろう……と、いうところで終わっているので、続編が出る前に読んでたらモヤモヤしただろうなあ;

1

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