猫、22歳

neko 22sai

猫、22歳
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神15
  • 萌×213
  • 萌8
  • 中立4
  • しゅみじゃない1

--

レビュー数
8
得点
155
評価数
41
平均
3.9 / 5
神率
36.6%
著者
柳沢ゆきお 

作家さんの新作発表
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媒体
漫画(コミック)
出版社
KADOKAWA(メディアファクトリー)
レーベル
フルールコミックス
発売日
価格
¥680(税抜)  
ISBN
9784040687148

あらすじ

「これは、躾だからな?」ある日やってきたのは、ひとりの『猫』。

彼は、「にゃあ」と鳴き、床に手をついてミルクをすする。
甥の志朗はなんの前触れもなく突然そうなった。
志朗を預かることになったポルノ小説家の昇平は、『猫』としての彼と暮らしはじめる―…。

表題作ほか、殺人犯×ゲイの教師『皿の上の明くる日。』
『戦争』の擬人を描いた『戦争は平和』など、4本を収録。

決して真っ当ではない。けれど、まごうことなき、愛の短編集。

※この作品には、死を想起させる表現が含まれています。

表題作猫、22歳

同時収録作品皿の上の明くる日

同時収録作品男と男と蚊帳の中

同時収録作品戦争は平和

レビュー投稿数8

短編集とは思えない深さです(*´Д`*)

一癖も二癖もある短編集です。日常の中に毒をはらんでいるといった感じ。「真っ当ではない。けれど、まごうことなき愛の短編集」となってますが、本当にその通りなんですね。ごくごく一般的な愛の形では無いのだけど、確かに愛なのです。読み終えた後は、泣きたいような切ないような。自分の気持ちを上手く整理出来ない程衝撃を受けました。
そして、帯に「*死ネタ注意」とありますが、直接的なものではありません。しかし「ああ、これは…。」と、想起させます。苦手な方は注意して下さい。

「猫、22歳」「猫、35歳」
22歳の方をフルールで読んで、面白かったので購入したのですが…。突然「にゃあ」と鳴き、猫のようになってしまった甥(受け)を預かる事になったポルノ小説家(攻め)の話。「猫」になってしまった受けと暮らしますが、猫の為トイレも一人で出来ない受けを戸惑いながら面倒をみます。そんな時に「猫」に発情期が来て…という展開です。
厭世的で、雪深い田舎で暮らしている攻めが臆病な印象を受けます。そして受けはかなりしたたか。攻めを手に入れる為に一芝居打ちましたって所です。絡みが結構濃厚で、エッチの時も「にゃああ」と声を出す受けが、なんだか妙に嗜虐心をそそります。そのせいか、攻めもちょいSが入ってます。エッチの翌日の受けの言動が、「ええー!」と見物です。
これだけなら、ちょっと毒があるけど面白いで終わりなのですが、続く「35歳」の方で、この話を非凡な物にしてます。受けが35歳になっていて、攻めと静かに暮らしています。50歳になる攻めは、自分の死を意識し始めるのですね。まだ若い受けを置いて逝く事に、深い悲しみを感じています。そんな攻めに、受けがかける言葉がとても深くて素敵です。ここはネタバレなしにしときますが、全て受け入れるというのが究極の愛かもなぁと感慨深く思いました。そして窓の外を流れる景色が、時の流れを意識させて、切なさを増してくれます。本当にいい話です!! それにしても、50歳ってまだまだこれからでしょう!!

「皿の上の明くる日」
殺人犯×ゲイの教師。毒が強めです。逃亡中の殺人犯と、ゲイが噂になりクビになった教師が、一緒に刹那的な時間を過ごす話です。メリーバッドエンドで、読んだ後は気分が沈む…。ちょっと私には荷が重い話でした。

「男と男と蚊帳の中」
怪我で選手生命を絶たれて、引きこもりになった元プロレスラー?の攻めと、現役のプロレスラー?で攻めの世話を焼く受けの話。自分一人だけのヒーローになったと無邪気に笑う受けが印象的です。しかし、これも毒が入ってる…。エンディングが明るいので、後味は悪くないです。

「戦争は平和」
戦争が擬人化されてます。「戦争(受け)」のセリフが深い!! そして、こちらも擬人化された「正義」がちょっとカワイイです。「友愛」だけぽっちゃりなのもプッときますね。意見を聞く為に呼び出された「人類代表(攻め)」と「戦争」がエッチを始めちゃうのですが、背中の引っかき傷を「戦争の爪痕」という攻めのセリフが秀逸でした。最後のこの話が、作品全体の重苦しさを緩和してくれてます。

甘さやさわやかさとは程遠い作品ですが、一つ一つが胸にグサッと来る作品集でした。

*「猫、22歳」ちょっとだけ補足です。
なんで50歳という若さで、そこまで悲観的なんだ?と腑に落ちなかったのですが…。
結婚とか、子どもとか…、確かな形が何も残らない状態で一人残していくのが辛かったのだろうなぁと。
私も自分に置き換えたら、心が引き裂かれそうな哀しさですね。

11

猫萌え、筋肉、擬人化、考え応えのあるストーリー

面白い!
でもレビューしにくい作品。
読む人やタイミングによって解釈がガラリと変わりそうだから。
「皿の上の明くる日」なんかは特にどう読んだらいいのか迷います。
でも面白い!
面白いというかテーマが深い。
萌え目当てに軽く読むのもあり、じっくり深く考え込むのもありな1冊だと思います。

「猫、22歳」「猫、35歳」
叔父×甥。
猫になった甥をポルノ小説家の叔父が引き取る話。
「にゃー」しか言わない黒猫みたいな甥がとにかく可愛い!これに尽きます。
萌えエロもたっぷり♡
でも単なる萌えBLでは終わりません。
ライトな「猫、22歳」に対して、描き下ろしの「猫、35歳」が凄いインパクト。
絵柄も違うし、なんだかもう全く別のお話みたいになってるんですけど、ガツンときました。
人生の終わりを見据えた男の深い愛情の物語。
作中の台詞が哀歌のようにずしりと沁みます。
SHOOWAさんの「逃げ水」を読んだ時の読後感に似てるかも。

「皿の上の明くる日」(全2話)
ゲイを理由に解雇された教師〔はじめ〕と殺人犯〔晴海〕の束の間の幸福を描いた話。
冒頭でも書いたように正直どう読んだらいいのか迷うんだけど、自分なりの解釈でレビュー残します。
このお話の何が悲しいかって、殺人犯に恋してしまったことが悲しいんじゃなくて、はじめと晴海が思い描く愛と幸せの形が重なり合わなかったところが悲しい。
はじめの寂しい人生の中で晴海に出会えたことは幸せ以外のなにものでもなかっただろうし、「幸せ」が覚束ない夢のようなものでしかないはじめにとっては叶いようもない未来の約束よりも確かな体温の方に飢えていただろうと思う。もっと言えば、晴海に殺してもらえたら幸せだとすら思ったかもしれない。
でも晴海の方は訪れない「いつか」に想いを託そうとする。自分が死んだ後もはじめに生きててもらうことがロクでもなかった人生の中でただ一つ遺せる自分の生きた証になると思ったんだろうか。
んー難しいな…(T_T)
晴海が殺していた被害者達はどんな人達だったんだろう。そこが読後なんだか凄く気になりました。
はじめのその後のプロットがあるとちるちるのインタビューで書かれているので、ぜひ読めますように!

先の「猫、35歳」と「皿の上の明くる日」は上手い具合に対比になっている気がします。
今の自分の年齢・現状的に普段の自分がグルグルと考えていることと重なって、読み終わってからずっとこの二つの話が頭を離れないです。色々考えてしまいました。

「男と男と蚊帳の中」
筋肉×筋肉。
これは分かりやすいヤンデレもの。
怪我で選手生命を絶たれて引きこもりになった男と、今も現役の元チームメイトのお話。
作品情報にプロレスラーと登録されているけど、正しくはサッカー選手じゃないかな?
どちらも凄い筋肉で、みっちりと重そうな肉のぶつかり合いがむさ苦しいやら眼福やら。

「戦争は平和」
概念の擬人化です。
自分の倫理や正義を振りかざす人々への皮肉とブラックユーモア。
この作品は今まるっとフルールのサイトで読むことができるので、気になった方はまずは読んでみてください!

この作家様の作品は私にはいまひとつ難解で、これまでのも読みはするもののレビューとしてはまとめられず…といった中で、今回は比較的解りやすくグサグサと刺さってきた1冊でした。
BLとして万人受けは難しいでしょうけど、ハマる人にはガツンとハマりそう。

5

実にえぐい

この方の商業単行本も、これで4冊目となりました。
短編集→長編→連作集、そして今般の中編集+αと言う変遷が
ある訳ですが、ここへ来てデビュー単行本で魅せた様な
えぐみをサラッと持ち出してくるとは、と驚いています。
でもそれを旨味と感じ取ってしまうのは、長編と連作集で
会得したであろう部分と熟成の為せる業なのやも知れません。

そして、手法の取り込み方にもまだまだ余念がない様で。
江戸時代の手法を平成の世のBLで観るなんざ予測して
いなかっただけに不意打ちを喰らった気分です。
いいぞもっとやれな気分ではござんすが。

3

難しいけどおもしろい

柳沢先生作品を読むのは「俺が君を殺すまで」に続き2作目です。
俺が〜もそうでしたが、設定というか発想が独特で私には難解なところがありました。

□表題作
どういうオチかと思いましたが「この猫被りが」でおあとがよろしいようで…となりおもしろかったです。
人間なんて猥雑なもの、としながら、老い、才能、死、受け継ぐことなど、2人の間で愛情があるからこそ生まれるものというお話かなと解釈しました。もっと深く複雑かもですが。

□皿の上の明くる日、
難しかったです。私の場合、わかった気になってはいけないような気がしました。
晴海が殺人をしたことに理由はない。
言葉には嘘が入る。そこから生じる意味は面倒。
生きることや死ぬこと、善悪などに意味があるのかと問いかけられているようでした。
そんな晴海が死なないでと言ったのが創で。それが愛であると。
愛し愛される人でも相応の罪を犯せば死刑になる。こらは「俺が君を殺すまで」でも描かれたテーマかと思います。

□戦争は平和
いろんな思想が擬人化されているのがおもしろい。
戦争と平和は同一人物? 裏表…戦争があるから平和が存在する…悪があるから善があるのか、苦があるから幸があるのか、など思いますね。
「人権」が「戦争」に死んでくれと言うのが皮肉だとわかります。
「正義」が「俺の戦争が…」と嘆き、好きなんじゃんと言われるのがおもしろい。戦争は正義をかざすものですもんね。正義は戦争によって大義名分になる。正義によって戦争が起こる。

柳沢先生の他作品も読んでみたくなりました。

0

詩集のような短編集

この作者様の作品は初読みです。
短編集ですが、それぞれが特異な世界を持ったユニークな物語達だと感じました。

「猫、22歳」
突如「猫」になってしまった甥を押し付けられたポルノ小説家、昇平。
「猫」は本当に「これはどういう病気だろう?」と思うくらい。
「発情期」が来た猫と突発的に寝る昇平だが、その翌日……え〜っ…

「猫、35歳」
絵が違う事に驚く。でもこれすらわざとかも。??
50才で、病気ならともかく、リアルに死を捉える。同世代の私からすれば大げさって感じるけど、表現者の繊細さ、また自分のいない世界でもまだ何かを、誰かを所有していたいという執着心を描いているのかな。小説を書いているのにまだ遺すものが欲しいのか、作品の映画化を許可する昇平。
終盤、解釈が分かれそうな気がします。昇平は生きてるの?それとも……

「皿の上の明くる日。」前編・後編
ゲイ教師の初めての男は、行きずりの連続殺人犯。
8人も殺した男は、なんで創(はじめ)は殺さなかったんだろうね。
バッドエンド?メリーバッドエンド?不明エンド?………詩みたいなエンド。

「男と男と蚊帳の中」
怪我して、サッカー選手を辞めて引きこもってる睦朗に、異常に優しいチームメイトの圭。皆のヒーローが俺だけのヒーローになったから、と。
ガチムチ筋肉2人の絡みのお話でした。

「戦争は平和」
ウイットに富んだ擬人化の短編。
そう、人間が戦争を抱くんですよね。そして人間の背中に戦争が爪を立てる……

4

重いけど読みごたえあり

なんとも複雑な気持ちになる短編集だった。
表題作とその後のふたりを描いた 「猫、35歳」は、叔父×甥という私の大好きなカップリング。
まるで猫のようになってしまった甥を引き取った叔父さん。ファンタジーというか、狐憑きのようなものを想像したのだが、実は甥っ子は叔父に想いを寄せていて、こうでもしなきゃ叔父さんは手に入らなかった、とのたまうなかなかの策士。ガッツリ絡みのシーンがあるので、近親もの無理な人は無理だと思うが、私はめっちゃ萌えた。

続きの「猫、35歳」でガラリと絵柄が変わって、完全に男性向け作品のような雰囲気になってるのがびっくりする。年齢差のあるカップルって好きなんだけど、そんなふたりの闇に切り込んだ作品。当然歳上が先に老い、歳下が置いていかれる訳で…。すべてを悟り、飲み込んでいるような甥の表情、言葉に胸が詰まる。ラストシーンはどのようにも解釈できるので、単純に死ネタとは言い切れないと思う。


「皿の上の明くる日」
これはかなり重い話。よしながふみ先生の「本当に、やさしい」を思い出した。どちらも考えさせられる作品なのだが、こちらは殺人犯の動機がなんだかよくわからなくて、なんとも言えない読後感。「はじめちゃんは死なないでね」というセリフ、やはり受けに恋をしたから、受けのことは殺さなかった、ということになるんだろうか。恋をして、体を重ねても到底理解しえない関係が悲しい。

残り二作品は一転して軽い気持ちで読めるお話で、重い気分が若干浮上する。
この作者さんは正直絵柄も独特で萌えにくいのだけど、ストーリーもキャラもしっかりしていて、描きたいものがはっきりと伝わって来るので、どのお話にも引き込まれるものがあり好感触。

1

設定が振り切っていて好き

◆猫、22歳(表題作)
 猫っぽいとかじゃなくて、本当に猫なの!?と驚かせてくれた導入でした。四足歩行し、にゃあとしか鳴かず、用の足し方すら分からなかった志朗。けれど、ある日彼は普通の人間に戻る。そういうことだったのか、と納得すると同時に、その思い付きと行動力に再び仰天させられます。叔父の昇平のことをよく理解しているんだなぁと。それから2人が少しずつ歳を重ねてからの日々も描かれていて、ほのぼのとした日常を楽しめました。

◆皿の上の明くる日
 連続殺人犯の晴海と、そうとは知らず彼をナンパしてしまった創。私はこの作品が一番お気に入りです。晴海は創の前では狂気を一瞬も見せることなく、ただ、見ず知らずの相手と性交できる軽い男という風に映る。ゲイである創を初めて受け入れてくれた男。2人は確かにこの短い間に、心を通わせていたんだなぁと。晴海が捕まったことに驚いても、彼に面会し、また会おうと叶わない約束すら交わしてしまう創。被害者達には悪人でしかない晴海ですが、創にとっては確かに大切な人間なのだなぁと思いました。

◆戦争は平和
 概念と哲学も取り入れた作品で、斬新でした。確かに、平和であっても人は誰かをいじめ、差別し、人権を奪ったりもしますね。戦争中だからこそ、平和のありがたみを痛感し、それを心底望み、味方の間では一致団結できるというのにも一理あるかもしれません。それでも簡単に殺し殺される世界は真っ平ですが、愚かな人間と、戦争は切っても切り離せないものなのだと見せつけられました。

0

好き嫌いの問題かな

皆さんレビューされているように好き嫌いが分かれる作品だと思います。私は残念ながら、趣味じゃないよりの中立です。でも、神評価の方が沢山いて、好みって人それぞれなんだなと感じます。

そんな私が唯一面白かったと感じたのが表題作の『猫、22歳』『猫、35歳』でした。
同じカップルの22歳の時と35歳の時のお話です。ともにえっ?!と驚かされる事があり、35歳の話は果たして最後は35歳なのか…。驚き系の話なのでネタバレは極力避けたいのでこれ以上は書けませんが、とにかく面白かったです。

全体的に萌えなかった原因として、絵のタッチが力強いことでした。版画とか筆ペンで描いたかのような黒っぽい線とか、リアルな影の付け方とか男性向けの大人の漫画みたいな印象を受けました。同じ内容でももっと線の細いふにゃふにゃしたイラストなら猫の話もかなり違うものになったのだろうなと思います。

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