パブリックスクール ―ツバメと監督生たち―

public school tsubame to kantokuseitachi

パブリックスクール ―ツバメと監督生たち―
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神123
  • 萌×229
  • 萌5
  • 中立2
  • しゅみじゃない6

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レビュー数
22
得点
748
評価数
165
平均
4.6 / 5
神率
74.5%
著者
樋口美沙緒 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
シリーズ
パブリックスクール
発売日
価格
¥750(税抜)  
ISBN
9784199009891

あらすじ

名門パブリックスクールの監督生として
最上級生となった桂人。
寮の運営や大学受験の準備と、忙しないけれど充実した毎日を送っている。
唯一の気掛かりは、想いを伝え合ってから、恋人のスタンが一度も「愛してる」と言ってくれないこと。
自分との将来をスタンはどう考えているんだろう──。
そんな不安を抱えていた矢先、初めての寮代表会議が開催された。そこで顔を合わせた他寮代表のアーサーは、どうやらスタンの顔なじみらしい。
けれどそれ以来、なぜかスタンの様子がおかしくて…!?

大人気「パブリックスクール」シリーズ第6巻! !
「ツバメと殉教者」のスタン&桂人、書き下ろし続編が大ボリュームで登場!!
デビュー10周年記念、4冊連続刊行の最後を飾る待望の最新刊! !

表題作パブリックスクール ―ツバメと監督生たち―

17歳,ウェリントン寮の監督生・桂人の恋人
17歳,ウェリントン寮の監督生・スタンの恋人

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数22

No Title

もうべっしょべしょに泣きながら読んだ……乗り越える為にスタンが向き合うべきものはやはり母との問題なわけですが…。 スタンの弱さが私は好きだけどねぇ桂人の胸中を思うと泣けてたまらない瞬間がいくつもあった… 桂人が寮のことにしてもスタンにしても覚悟を決めて発言する時はいつでもかっこよくて美しかった。そして彼の言葉には魂を揺さぶる強さがあるよなぁ。いったいどんな大人になってどんな仕事につくのか彼のこれからも気になりました

0

ラブは少なめ

前作で結ばれた二人がどうやって付き合っていくのか、楽しみでページを捲っていきましたが、なるほど今回はこういう話か……となりました。

内容は文句なしに面白かった。
でもそれはBLとしての面白さではなく、人がどうやって成長していくかということから目を離せないという意味での面白さだった。

スタンが過去のトラウマでどれほど傷ついているかもわかる。
桂人がどれだけ愛が深くて、優しいかもわかる。
でもいくらスタンが今のままの自分じゃダメだとか、ダメな自分を桂人に見られたくないからと言って、言っていいことと悪いことがあるし、あんなに酷いことを言ったのに「いつか完璧な自分になれたらまた桂人と一緒になりたかった」的なことを言っていたのには少なからずショックを受けました。
でもまぁ彼も17歳。言ったそばから後悔はしていたのでしょう。

とはいえ、内容のほぼ9割はもやもや、ジリジリという感情にさせられて、できればもっとスタンと桂人、二人の話が読みたかったし、今回は桂人の愛が深く大きかったからスタンと最後大団円でしたが、言ってしまえばあんなに自分勝手に桂人から離れようとしたスタンには一度痛い目を見て欲しかった、というかスカッとした気分にさせて欲しかった。

でもそもそもずっとスタンは一冊を通してずっと痛い目を見ていたといえば見ていたと思うので、桂人に一度でも拒絶されてしまったらもう二度と立ち直れなかったのでしょうから、それは仕方がないのかなとも思います。

シリーズ通してどれも神評価したくなるほどの面白さですが、今回は物足りなさを感じたので萌×2です。
ぐるぐるした場面ばかりが多く、その割に爽快感がないような。
とはいえ大好きなシリーズなので、次回作がまた出ればいいなと心から思います。
パブリックスクールシリーズで、新たなCPも読んでみたいです。

0

ボリューミーで、感動で泣ける

2作前のツバメと殉教者のスタン桂人CPの2作目のお話。前作でも親からの虐待に心に傷を負った2人の相互救済に泣けましたが、今作はそれを上回りました。

前作で相互救済したかに思えたものの、スタンは自分を虐待した母を許せず、そんな母が自死したときに喜んだ自分を許せないでいた。その贖罪から、スタンは"それなりの幸せ"があればいいと思っていた。そんな中、スタンの双子の兄アルバートは母親が死ぬ前のスタンを取り戻してほしいと母親の死後きちんと練習をしていなかったバイオリンを再開することを勧める。バイオリンを再開することに難色を示すものの、周囲からの策略で桂人を巻き込む形で再びバイオリンを手にするスタン。そしてバイオリンを再開するためには必要だと桂人に別れを告げる。

しかしいくら3年のブランクを埋めるための猛練習をしても、技術を高めるだけでは音楽に感情が乗らない演奏になってしまう。桂人はスタンが母親の死を乗り越えないとスタンの持つ感情豊かな演奏はできないと気付き、嫌われる覚悟で母親の死と向き合うよう強く迫り…というのが話の本筋ではありますが、それと並行して(というか絡み合って)本来の自身の寮ではないブルーネル寮で過ごさねばならなくなる桂人。

メンベラーズに見出され、ウェリントン寮で寮の運営の才覚を発揮した桂人は内部分裂をしているブルーネル寮の問題点をいち早く見つけ、ブルーネル寮が再び結束するための一石を投じる。

ここであらすじを書くだけでも話の主軸が2つあり、かなりのボリュームの今作(厚さは今までで一番だと思います!)。やはり今回の見どころはスタンが母の死を乗り越えられるのか、乗り越えるとしたらどのように乗り越えるのか、そしてスタンと桂人の未来はどうなるのか。一番泣いて感動したところは見どころに関するところなのであえてここでは言いませんが、自分が作り上げた居場所があれば、未知の場所でも真実を知ることも怖くないということ。いろんな表現で樋口先生が何度も何度も説いて下さっていて、心が洗われるようでした。

そして桂人をあえて内部崩壊しているブルーネル寮に送り込んだのはやはりメンベラーズでした。前作に引き続き、メンベラーズ、恐ろしい子。

1

愛情深い、紆余曲折ありながらも最後は感動できる作品


【ツバメと殉教者】の続きものです
今巻もとても良かったな、んも〜泣きました。やはり樋口先生は『愛とは何なのか』を追求されるような作風の先生ですねこの【ツバメと監督生たち】も各々の家族や友情、恋人との関係性や自分自身がどうありたいかを、生温いところで有耶無耶にせず自分にも他人にも向き合う事で一歩大人になるようなこれぞ2作品目!といえるクォリティでした。
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サブタイトルに監督生たちとあるように主人公の桂人が他寮の監督生達にも影響を強く与える存在になっていて、ウェストン寮だけじゃなく、異動で行くことになったブルーネル寮まで状態を立て直した桂人は今まで以上に男前でカッコよかったなぁそれもこれも、桂人の真っ直ぐな愛情が周りに影響を与えていて、でも桂人がそうなれるきっかけを作ったのがスタンだということがいいよね、
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読み返したくなる作品であり、カップルです。

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愛情深い、紆余曲折ありながらも最後は感動できるBL小説をお探しの方はオススメです。

1

ぜひ続編を!

樋口先生の作品の中で一番好きな作品です。けど本当に何度読み返しても辛い…。ツバメシリーズの前巻を読んだところで、桂人は救われたけどスタンは?あんな経験をしたのなら、あれだけで救われるとは思えない…と正直思っていたので、今回丁寧にスタンの心の傷について描いてくれてとても良かったです。

今回は桂人とスタンの差異がよく書かれているなと個人的には思ったのですが、何度も読むうちに、桂人とスタンって、やっぱりちょっと似てるかも?と思いました。スタンの、臆病さゆえの言葉足らずな言動によって桂人を傷付けているのは勿論ですが、桂人も桂人で自己肯定感の低さからスタンからの愛を低く見積もって傷ついたりしてるんですよね。スタンより桂人の方が健やかな強さを持ってはいるけど、どちらも自分の評価が低くて、自分に向けられる愛の程度を上手く把握できない、不器用な、似てないようで似ている二人だなと思いました。また、おそらく前回の話で(違っていたらごめんなさい)スタンが成長するアルビーや桂人に対して、焦りや自分だけ置いて行かれたような気持ちを抱いていたように、桂人もアルビーに対して今回似たような気持ちになっている記述があったりと、細かなところで2人の似ているところが書かれているなと何度も読み返してから気付きました。

何度読み返しても、スタンが音楽に取り憑かれたように練習している描写が本当に辛くて。桂人を置いて、スタンは音楽の国に行ってしまうのだろうか。音楽といった、魂が呼ぶものにはどんな人も勝てないのだろうかと考えると、本当に苦しくて仕方ありませんでした。凡人の私には才能ある音楽家の見えている世界がまるでわからないし、音楽に没頭する姿を見ると、美しいと思う反面、神様がその人をどこか遠くへ連れていってしまうような、そんな危機感と寂しさを抱いてしまいます。これは以前から思っていたことなのですが、今回この小説を読んで、まさかこの複雑な思いに対する回答が得られるとは思いもしませんでした。桂人の見つけた、ステージを下りた先にも、人生は続いているという答えに、私自身も勝手に救われました。スタンが音楽の中に桂人を感じたように、ステージの下での人生が、ステージ上での演奏に関わることもある。音楽とは単に孤独で閉ざされた世界のことではなく、多くの人と繋がることが出来る素晴らしいものだと、読んでいて気付くことが出来ました。また、桂人にとって音楽とヴァイオリンは競うものではなく、桂人が愛するスタンそのものという考えも本当に素敵で、この考えに辿り着けるのは桂人の強さだなーと改めて思いました。本当に桂人は凄い。強い。美しい。

スタン、桂人に「それなりの幸せ」って言った時はおい!!なんだその言い方!!と思いましたが、それは桂人の存在がその程度っていうよりも、スタンの中でヴァイオリンが、スタンが自分らしく生きるために必要不可欠なもので、ただ単にその部分が欠落してる状態ってことなのかな〜と思いました。一口齧られた林檎みたいに、一部分だけ足りない状態というか。うまく言えないけど。桂人もヴァイオリンも、どちらもスタンには必要不可欠な存在だと思います。2人が別れたら、桂人はなんだかんだ生きていけそうだけど、スタンはボロボロになるんじゃないかな。

今回、スタンは大きな山を越えたけど、桂人もスタンも、彼らが抱えた傷が完璧になくなるなんてことはなくて、この先人生の思いがけないところでも、彼らの抱えた傷が影を落とすこともあるかと思います。けど、精一杯傷と向き合って、互いに愛して欲しいと縋りつけるようになった2人なら、乗り越えていけるんじゃないかと思います。本当にこの話の先の二人が見たい!続編が来る日を楽しみに待っています。小説charaに載せられた後日談もいつか読めるようになりますように…。

2

続編あるのかな

前巻からの推しキャラであるメンべラーズが相変わらず暗躍してました。ただ最早"彼の寮生"ではないので、やや放置気味。

正直に前作のまとまり方が好きだったなぁと思ってしまう。今回どうも桂人が説教くさいんですよね。選ばれた才ある者の人生を導くにはそら説法も必要でしょうが、凡庸な自分は"それなりの幸せ"もいいもんじゃあないかと思ってしまう。スタン程の天才に出会ってしまったら、周囲はそうも言ってられないのも分かる。
ブルーネル寮での桂人も説教くさくて…前作の陰で動く彼が好きだったもので。

それでもまだ桂人のことは好きなので、スタン以外ともっと素晴らしい恋愛経験が出来るのではと思ってしまった。スタンとは「何年も経ったころには、忘れられている青春の思い出」で終わらせても全く構わなかった。商業BL作品のセオリー的にそれはないと分かりつつ。それ程スタンがカッコよくないんだよ…少なくとも自分には。かつて「愛されるなら、体も差し出せるのか……っ?」と激昂した彼の桂人に対するレイプにもガッカリした。暗がりの路地裏に放置して桂人が二次被害に遭ってたらどうするつもりだったのかスタンは。取り返せないものがこの世にはある。

これを読んだ時点でもう一冊発売されていて、そこに自分好みの2人がいたら神にしていたかもしれないけれど、単体では萌2にしちゃう…続きがあるなら絶対読みます。

1

引き込まれるようだった

桂人がとてもいい

0

・・・

読了記録。
幼児虐待のPTSDを扱う、単に恋愛を描いた作品と言えない、難しい課題を抱えた作品。
著者が理解した範囲で、対PTSDの対処法を述べているんだな、と(萩尾望都さんの「残酷な神が支配する」と比較しながら)読みました。

メンベラーズの策に嵌って、素人の手探りを、ケイト君が物語の中でスタンに対して一生懸命に行います。誰にも相談できない状態で、ケイト君に一生懸命考えさせて、ケイト君なりの思惑で動いた記録、といった印象です。
心に心的傷 PTSDを持つ二人の共依存のような関わり方は、三歩進んで二歩下がる、それでも一歩前進しているからいいのかなーと思ったり。「共依存恋愛」という視点で読むと構成に不足を感じます。
離れた方が良いのに、戻ってしまう。無理に引きはがすと心の傷からどくどくと血が流れるみたいな二人。

★こうなる切っ掛けを作った策士メンベラーズ。物語の中で、誰も専門家に相談をしていないけれどメンベラーズだけが相談していそう。

こういう生殺しは、「しゅみじゃない」
どれもこれも中途半端で終わっているのは、まだ続きを書く気持ちがあるからかも。完結していません。

2

シリーズ集大成のような作品

 桂人とスタンが結ばれた後のアフターストーリーの様な位置付けと思っていたら、全然違いました。内容が素晴らしかった…。前作は内容の理解が難しかったですが、今作はストーリーに入りやすく、読み終えた時にこみ上げる物が大きかったです。
1ページ1ページの内容が深いのと、ボリュームが多いので、読むのに時間がかかりました。この内容が現実に起これば、心身共に消耗しそう。スタンと桂人凄い。。

 読み出した時には、ピンとこなかったスタンの母という壮絶なトラウマ。想像するのが流石に難しくて。。人は自分で経験した事ければ、本当の意味で理解することはできないと言います。それでも、このボリュームのある一冊の後半まで進んだ頃には、スタンの母への複雑な想いに胸がいっぱいになりました。スタンは母への想いを桂人への想いと共に墓場まで持っていくんだろうな。

 スタンが葛藤しつつも音楽に一心不乱にのめり込む姿が良かった。今作では、非常に人間的な姿に共感できる部分が多く、前作よりずっとスタンが好きになりました。
 私は昔の少年漫画の主人公の様な受けが好きなので、樋口先生が描く女性的な受けはどちらかというと苦手なのですが、今作の桂人はカッコ良かったです。時々荒治療な行動もあり、読んでいてヒヤヒヤしましたが。。
スタンのライバルのアーサーも憎めないキャラでいい味出していました。彼の開き直り方がイイわ。

 音楽をする人は、他の演奏者と楽器を合わせて奏でる時間は、他で経験する事が出来ない魂の共感ができるので病みつきになると耳にします。その為に日々の鍛錬も生涯続けられると、、。スタンが自らの魂を震わせてヴァィオリンを奏でる事により、それを聴く人の世界に干渉し、多かれ少なかれ日常に影響を与える。。これからのスタンの人生はかけがいのない物になりそう。それを支える桂人の人生も。

 パブリックスクールの日常や演奏者の音楽との向き合い方や世界との関わり方についての描写についても非常にリアリティがありました。何度も樋口先生はイギリスに留学されていないの?昔音楽されてたんじゃないの?と疑問符があふれました。力量ある作家さんは分野外の事もまるで経験した事があるかの様に描くのが、流石上手いなーと感心しました。余談ですが、樋口先生が沖縄出身と知り、作風のイメージとのギャップにビックリしました。

1

NoTitle

序盤に多少いちゃつく場面はあるけどスタンと桂人は早々に距離を取るので甘い展開は期待しない方がいいかも、メインはスタンとアーサーのバイオリン対決。

あとエドが本当に少しですが登場します、yocoさんの挿絵付きなのでエド好きな方は一読の価値あります。新キャラのアーサーは6年生でありながら寮代表となりやたら黒い感じで登場しますが、根はバイオリン大好きなお坊ちゃんで最後は桂人と友人に。地雷の心配は無いです。

1

スタンを救う話

前作ではケイトが救われる話、今回はその恋人であり救った人となったスタンが救われる話でした。
実は、もっとラブラブ甘いのを期待していたのですが、甘さは控えめ。スタンとケイトの苦悩が描かれています。

亡き母との事を今なお苦しんでいるスタン。
父との事を思い悩んだケイト。
2人で一緒にいたい、大学でもずっと。
そんな中、バイオリンと、とある寮を巡って2人にとって大きな問題が起こります。
分厚い本の中で、多くを占めているのが、スタンとケイトの、離れている故の苦しみです。お互い好きな故にやきもきしたり、苦しんでいる。

あとは、ケイトが非常にカッコよかったー!美しくて強いって最強。

5

愛する故の不安

このシリーズの好きな所は、恋人同士になった彼等のその後が読めるところです。

前作では色々あったけど上手く行って良かったね。で、終わった後も学生生活は続く訳で、進級して新しい生徒が入って来る一方で年長者はスクールを去り、当人達には進学問題が浮上して来るのです。

まさかスタンに類稀なるヴァイオリンの才能があって、桂人と進学先が別れるとは思いませんでしたが…

冒頭から幸せなはずなのにどこか不安を感じている桂人でしたが、まさにその通りの展開でした。
自分との未来をそれなりの幸せと言うスタンの言葉に傷付く桂人の気持ちも分かるし、それなりを望むスタンの気持ちも理解出来てしまいました。

桂人のように何がスタンにとっての幸いなのかと一緒に悩みながら読み進めました。


それでもケンブリッジでのスタンの演奏に衝撃を受けた桂人が取った選択もうなずけたし、桂人を遠ざけようとしたスタンの気持ちも分かってしまい。


2人の行動が相手への愛故だと確信を持って読めていたので、展開への不安はありませんでした。

桂人はより良い未来をスタンに与えたかっただけだし、スタンは桂人を必死で取り戻したかっただけなんですよね。


ちょっとだけ桂人の方がスタンより強かっただけだと思いました。でもそれはスタンが与えた強さだったりもするわけで。
初めからスタンの音楽の中には桂人がいたのですが、それを掴みとるまでがスタンには辛かったと思います。
在学中に問題を解決出来たので、スタンがプロの道に進んでも2人の愛は揺るがないと思いました。


そう考えるとエドの強さは凄かったと思うのです。ストーク家での夜会コンサートにゲストとして来てましたが迫力が違いました。

出来ればもっともっとこのシリーズを読みたいです。どんなに分厚い鈍器でも待ちます!今回も読み終わるのが惜しかったです。

12

愛すればこそ

今回は何事も弟をたてる監督生と攻様と寮代表を支える監督生のお話です。

攻様が母や弟、受様との未来のためと辞めた音楽の道を再び歩み出すまで。

受様は英国の伝統的全寮制パブリックスクールであるリーストンの11ある
寮の1つ、ウェリントン寮の監督生です。

監督生は5年生から7年生までの格学年から3人ずつ選ばれ、最高学年であ
る7年生から選ばれる寮代表の元、日々の生活を監督し、寮行事を取り仕切
ったりと細かく寮を運営する役目を担っています。

高い爵位や歴史、名家の名前を背景に背負った生徒達は、将来の箔付けの
ために寮代表の座が競われるのが常です。成績優秀で優等生な受様は前寮
代表の引き合いで監督生となりますが、政治的な駆け引きとは無縁でした。

しかし受様と同学年の監督生である双子の兄弟と幼馴染ともいえる関係だ
った前寮代表の画策によって2人と深くかかわる事となった受様は、兄であ
る攻様とは恋人に、弟とは親友という密接な関係を築くようになるのです。

前寮代表の策に踊らされた感のある3人でしたが、日本人を父にもつ事から
アジアンと蔑まれる事もあった受様は大切だと思える人を得、寮の中にも
自分の居場所を感じられるようになったのです。

攻様の恋人となって10ケ月が過ぎ、9月となったウェリントンでも新入生
を迎え、攻様の弟である受様の親友は新たな寮代表となります。受様が監
督生を務めるのはあと1年弱、これから先はまだぼんやりとしか見えません
が、愛する攻様の隣という居場所は変わる事が無いと信じしています。

そんなある日、ケンブリッジに進学した前寮代表からオープンモーニング
に誘われます。それは出願を考えている生徒に向けて開かれる大学解放日
です。受様はケンブリッジに進学を考えている親友と攻様とともに訪れる
と応えます。

そして入寮から1週間後、今年度初めての寮代表会議が開かれます。善良な
性格で寮をまとめる親友が、頭の切れる他寮の代表からの皮肉や揶揄に対
せるのかと受様も攻様も心配していましたが、腹をくくった親友は悠然と
彼らに対し、受様は生まれながらの貴族に叩き込まれているノブレス・
オブリージュの精神と、彼の成長に感心します。

しかしそれ以上に受様を驚かせたのはブルーネル寮の新代表でした。ブル
ーネル寮の本来の代表は警察沙汰になって退学となり、6年の監督生から
新代表が選ばれていた上に、彼は1人だけ年下なのにも拘わらず、周りか
らの嫌味にも生意気に口上を返すのです。

しかも彼はかつて攻様と同じ教師の下でヴァイオリンを学んだ弟弟子で、
攻様が3年前のコンクールで勝ち逃げされたと難癖をつけてくるのです。

きみがヴァイオリンをやめたままなのは納得できない。
もうそろそろ再会できるだろう。次のコンクールに出て入賞しろ。
頷くまで、このきれいなツバメちゃんを口説くけど?

ブルーネル寮代表は今やプロデビューした演奏家だとそうですが、受様
にはなぜこんな展開になるのかがわかりません。攻様は眼に激しい怒り
を滲ませて受様の二の腕を掴んで歩き出してしまいます。

攻様のヴァイオリンの真価を知らずにいた受様は、攻様に演奏家を目指し
ていたのかと訊ねますが、攻様は習わされた中で一番得意だっただけだと、
苛立ちに戸惑いながらも攻様が納得してやめたのならそれでいいと思うの
ですが、それを良しとしない人々が攻様の退路を断つべく動き出し・・・

「パブリックスクール」シリーズ6作目に当たる本作は本カプが巣立った
後、後輩カプの恋を描いた「パブリックスクール―ツバメと殉教者―」の
続刊になります♪

前作にて攻様と恋人同士になった受様は攻様と良好な関係を保っていまし
た。受様は恋人ならもっと頼ってくれたり、ベッド以外でも甘やかな時を
過ごしたいと望みますが、昼間の攻様はそっけないままです。

受様は攻様兄弟と関わる事で居場所を見つけ、受様の弟も受様と言う親友
を得、兄とも良好な関係を築けた事で、求められる立場に相応しくあろう
と変っていく事を選びます。

しかしながら攻様は母への確執と弟への贖罪から、弟を支えて生きる未来
を己に科します。それこそが罪を犯した己の道だと信じ、罪を犯した自分
を許す事ができないのですよ。

攻様が優秀な人であるが故に何をしてもそれなりに上手くいってしまい、
攻様の歪みはさらに育っていったのでしょう。そしてそんな歪みを知って
しまった受様はブルーネル新代表と親友が画策した提案にのる事を是とす
るのです。

他人を許す事はそれほど難しくはないと思います。対して己を赦す事は難
しいです。自分に厳しい人ならなおさらです。そして攻様もそんな厳しい
人なのでしょう。

今回のお膳立てをした全ての人は攻様なら乗り越えられると信じています。
受様は愛する人の手を離してもなお、彼が幸せであるようにと願います。
そして愛に戸惑い、これからの人生に悩みながらも、目の前で傷つく人、
理不尽な目に合う人に迷うことなく手を差し伸べて世界を広げていくの
です。

揺れ動く2人とともにハラハラ&ドキドキしながら、とっても楽しく読ませ
て頂きました♪

同月発売の小説誌「小説Chara vol.42」に攻様視点の本作後日譚が掲載され
ています。気になる方は是非チェックしてみて下さいね。

キャラ文庫での10周年記念発刊は本作が最後です。サイン会は中止になりま
したが、コラボカフェは秋に順延との事なのでで開催が待ち遠しいです♡

10

不器用なヴァイオリニストたち

「パブリックスクール ―ツバメと殉教者―」の続きで、まだ17歳のころのお話。ちょっと長いなと感じましたが、無事スタンが自分の音楽と愛情を取り戻せたことに安堵したので萌2にしました。本編450Pほど+あとがき。

七年生になったスタンと桂人。仲良く過ごしていましたが、スタンが夜うなされていたり、「それなりにずっと幸せだ」と言ったりする様子に引っかかっています。ある日ブルーネル寮の代表が急遽変更となり、それがスタンの知り合いらしいアーサー・ウェストで・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
アルバート(スタンの双子の弟)、メンベラーズ(卒業した前の寮代表)、アーサー・ウェスト(プロデビューしているヴァイオリニスト)、スキナー先生(スタンの昔の師匠)、エド((⋈◍>◡<◍)。✧♡ゲスト出演!)、ウェリントン寮、ブルーネル寮の生徒たち複数ぐらいかな。アルビ―もメンベラーズも好きだけど、ちょい出のスキナー先生も良かったなあ。スタンの音を愛してくださって、スタンが戻る後押しをしてくださって有難う。

**以下 内容により触れる感想

正直いうと、最初「長いなあ&スタン、ヘタレすぎ」と思ってたんです。そして「17歳でこの思考?」とちょっとひいてしまったところもあります。

でも読み返して、17歳というところをちょっと横に置いておくと、スタンのどヘタレなところも、音楽に真摯に向かうところも、アーサーが自分の音楽と人生への向かい方を見直すところも、桂人が自分の進み方を見直すところも、良いなあと思いました。前向きに進む姿は心地良いものでした。

スタンのヘタレは一生ものなのでしょうか。それがあるから可愛いのかもしれないです。
一緒に悩み共に歩んでいこうとする桂人はしなやかな頑張り屋さんでなので、音楽という最強のツールを取り戻せたこの後、二人で歩んでいく将来が、よりはっきり見えたのではと思います。スタンの母という最大のトラウマも超えたように思いますしね。

できればもう少し大人になってからの二人の姿を読んでみたいです。アルビ―とメンベラーズと一緒にスタンのコンサートに出かける等の小話でもいいですし、今度は将来に悩む桂人のお話でも嬉しいかも。大人になって超絶カッコいいのにヘタレってるスタンもいいなあ・・先生、またいつか二人に会わせてください、どうぞよろしくお願いいたします。

10

こちらのキャラ達の方が好き

パブリック…シリーズは私は本シリーズよりこちらのキャラクター達のお話の方が好きです。攻め受け同級生だし良家のおぼっちゃま達のお話とはいえ高校生っぽい青春を感じられるからです。

前作の自分レビューで貶しまくってた攻めの双子であるアルビーは真人間として成長し、かなりいい奴になってました。そんな短期間で人って変わるかな?とひねくれた目で見ないこともないけど。寮の監督生代表という自分の能力以上の地位について苦労しているようですが、攻めスタンと受け桂人の有能な2人に支えられて何とか頑張っている模様。

今回は前作とガラッと変わりスタンのバイオリン奏者としての芸術家の道、というのがテーマになっています。自分の過去とも向き合いもがき苦しむスタンに傷付けられながらも、スタンの人生の幸せを最優先に考える桂人。賭けの対象として他の寮監督生として借り出され(エロい意味ではないよ)真面目に頑張り他寮でも大活躍。特に健気なだけでなく途中でキレて言うべき事をビシッと言える所が強気でカッコよかったです。強気受け大好きなので。

スタンは今回「お前ちょっと言葉足りなすぎだよ!」とイラつかされる所もありましたが、まあ17歳だし桂人を嫌いになった訳ではなかったし、許容範囲です。

10

読まなくていい……でも……。

正直、前作のラストが気に入ってる方は読まなくてもいい作品かもしれません。
幸せな余韻を打ち破る辛すぎる展開に胸が苦しくて、
この作品の萌えはどこにあるのかと心が折れそうでした……

スタンの母親に対するトラウマは根深かったのです。
治っていない傷口に被せた瘡蓋ーーそれがケイト。
現実から目を逸らして、ケイトとの〝それなりの幸せ〟を望むスタン。
そんなスタンに、母親と共に失った音楽(バイオリン)を取り戻させようと画策し、奔走する人々……

音楽と恋愛を両立できず、スタンに別れを告げられたケイトに胸がキューっと苦しくなり、スタンには憤りを感じました。
もう、ずっと苦しい。ずっと悲しい。
最後の最後までずっと切なかったです( ;∀;)
ケイトとスタンのすれ違い、口論、暴力……スタンの気持ちの分からない、憂鬱な展開が続きます。

そんななかでも、やっぱりケイトが強くて聡明で本当に素敵。
私が今まで読んだ作品の中で、一番好きな受けかもしれない。
ケイトが、スタンのライバルであるアーサーが寮代表を努めるブルーネル寮に訳あってヘルプに行くのですが、滅茶苦茶なブルーネルとアーサーを一喝しちゃう!
その時のケイトがクッソかっこいい‼︎
スカっとした。ケイト最高に好き♡

そんなワクワクするところもあるのですが、やっぱりケイトとスタンは最後の最後まで交わらない。
それでも、どんなに拒絶されても諦めず、スタンの心をノックし続けるケイト。
母親から音楽を取り戻したスタンと、やっと心を通わせます。

犠牲が犠牲を呼ぶ負の連鎖に悩まされた二人だけど、きっと愛も連鎖するんだと思います。
愛すれば愛されるし、愛されれば愛す……

スタンがケイトに本当に言いたかったことは、「愛してる」じゃなく、「愛して欲しい」だったんですね。
意地っ張りでカッコつけで、意地悪で弱いスタンがやっと自分と向き合い、トラウマを乗り越えた姿にホッと胸を撫で下ろしました。

ラストはより強固な関係になった二人が見られて胸アツなのですが、やっぱりこの二人なんだか危うい気がする。
特に、スタンが……なんかモヤる。

萌えを探して彷徨い続けながら分厚い本を読み切ったときは、もう放心状態でした。
ハッキリいっちゃうと、私は前作の方が好きです。

17

肝っ玉母さんケイト

あらすじなどは他のレビュアー様が丁寧に説明してくださってるので省きます。
樋口先生の攻様はいつも傲慢で自分勝手で自己中なキャラが多いですが、今回スタンはまぁすごい。途中読みながら心の中で何度ぶん殴った事でしょうか。
ケイトも健気に全てを受け入れる……かと思いきや、途中でわりと開き直って読者の代わりにスタンを叩いてくれたりしてるので、よしいいぞ!ケイト!もっとやれ!みたいな気分になりました。
そしてケイト。
めっちゃ強くなってる。
ブルーネル寮で辣腕ぶりを披露し、ぐちゃぐちゃだった人間関係を僅かな日数で立て直してしまう。
その立て直し方が!ゴリラの如く(褒めてます)キレ散らかし(褒めてます)正論ぶちかまして全員を黙らせねじ伏せる!
読みながら、いいぞ!もっとやれ!!ケイト!って心躍りました。
不憫受なはずなのに、ケイトはめちゃくちゃ強い。
そしてもれなく、回りの人間を赤ちゃんに変えママになる……。
聖母ケイト。

苦しい内容のお話でしたが、ケイトが終始強くあり、安心して読むことが出来ました。
途中で別れるシーンは泣けましたが、スタンがケイトから離れられる訳がないと信じていたので苦ではありませんでした。
分厚くて読み応えがあり、やっぱりパブリックスクールシリーズ好きだなぁと思いました。
サプライズ的に、エドと礼もチラリと出てきて嬉しかった!
まだまだ続いて欲しいシリーズです。

14

愛を求めた彼らのその後

作中にクラシック楽曲が登場するからか、小説を読んでいるのに、頭の中でシーン毎にBGMとして音楽が流れて来るような不思議な感覚になりました。
登場楽曲のどれもが登場人物達の心情を表現しているようにも感じられる部分があったりもして。
樋口先生はそこまで考えられて楽曲を選んだのでしょうか。
今作も濃厚な人間ドラマが丁寧に描かれた素晴らしい作品でした。
読後にカバーや口絵を見返すと、yoco先生のお仕事の細やかさにため息が出ます。
書きたい事が多過ぎて文字数が足りません。

前作で、歪んだ形の愛し方や愛され方しか知らなかった者同士が寄り添い合うようにして恋人関係となったスタンと桂人。
恋愛面では確かにスタンと桂人の物語のようだけれど、私にはどちらかと言うと桂人とアルバートの成長途中の物語であったように思えてしまっていたのです。
桂人は何度も愛していると伝えていましたが、ではスタンは?桂人に何度口に出して愛を伝えた?
そんな疑問が残るラストだったように思います。

今作は前作から約1年後、最終学年の7年生となった双子と桂人。
アルバートは寮代表に、スタンと桂人は監督生として両端からアルバートを支えながら3人で上手くやっている様子。
一見穏やかで幸せな寮での日常のようでいて、僅かな違和感と不安を桂人も感じ取っているようで…
私は前作のレビューで、アルバートの「ずれ」が怖いと書きました。
今作では「ずれ」や「引っ掛かり」のようなものをスタンに感じたのです。
そんな小さな違和感が、他寮代表でありスタンの過去を知るアーサーとの再会によってぐるぐると渦巻いていき、まだ過去から解放されていなかったスタンの危うさが浮き彫りになっていきます。

何でもそつなくこなす完璧なスタン。
彼は決して完璧ではありません。
まるで譜面の上を指示通りに、正確に歩くように、人から望まれる通り完璧に生きなければ、何かを与えなければ、自分は人から愛される資格がないと思い込んでしまっている不器用で悲しい子供です。
桂人の事が好きで、本当は愛しているけれど、完璧ではない状態の自分は愛していると軽々しく口に出してはいけない。
前作で乞うように「どうしたら、まだ好きでいてくれる?」「どんな男になれば?」と言っていた理由がやっと分かったような気がします。
自分のために生きる事を知らない彼は、他者には優しい言葉や思いやりに満ちた言葉をかけられるというのに、自分自身にも同じ言葉をかけても良いのだという事に気付けないのです。
ヴァイオリンというスタンと過去を繋ぐ物を通して、過去と向き合い、悲しみや憎しみ、怒りや弱さ、優しさといった自分自身の中にある不安定で不完全なものまで全てを認めて、自分らしく未来を生きて行けば良い。
その1番シンプルで大切な部分に自分の足でたどり着くまでのスタンの苦悩と葛藤、周囲の人々が心を痛めながら荒療治をするシーンがあまりにもつらい。
正直、読んでいて苦しい部分や、桂人に対するスタンの行動や言動には思うところもありました。
ですが、彼が本当の意味で解放され、ただの17歳のスタン・ストークという少年に戻る為には、この本に描かれていた全てが必要なものだったのだと思います。
苦しんで苦しんで、最後には母親が好きだった「亡き王女のためのパヴァーヌ」を葬るのではなく、慈しむように奏でる事が出来たスタンの姿には胸が詰まるようでした。

アーサーの、大好きなヴァイオリンと音楽だけで構成された完全な円形の幸せな世界。
これはスタンの言う「それなりの幸せ」と似た世界だったのかも。
心地良いその場所から出てしまうと苦しい。
でも出なければ分からないものもある。
この、似ていないようで似ている2人の対比も見事でした。
アーサーのこれからの変化も楽しみです。

そして、アルバートの急成長も頼もしかったですね。
あの目が開いていなかったアルビーがここまで変わり、こんなに魅力的で愛おしいキャラクターになるなんて誰が想像したでしょうか?
自分の足でしっかりと立てる男になって来ました。
発言の端々にも成長が感じられて、ストーク家を継ぐ彼の覚悟のようなものが見られます。
サブキャラクター達の成長もこのシリーズの楽しみのひとつだと思います。

最後に。スタンの不安定さに気付きながら、つついてしまったら幸せが崩れるのではないかと不安で、目を逸らしてしまいたかった桂人。
人は皆臆病です。出来る事なら楽な方向に逃げたい。
それでも逃げずに、折れずに、何度倒れかけても立ち向かって行く桂人は本当に愛情深くて強く逞ましい人でした。
桂人の凄いところは、自分なりの人を愛する形を探しながら、周りの人間をも救って良い方向へと変えていってしまうところ。
ブルーネル寮での出来事もそのひとつですよね。
様々な人と関わり合って生きていく。
隠れるように息を潜めて生きていた桂人はもう居ません。

2人にとって本当に長く苦しい日々が続きましたが、スタンの愛する人が桂人でなければ、桂人の愛する人がスタンでなければ、この2人はここまで成長出来なかった。
自分なりの愛する心を得たスタンと桂人はどう生きていくのか。
それは、もしかしたらロンドンではないかもしれないし、どこかの小さな町なのかもしれない。
スタンはもっと広い世界へ飛び出して忙しくなるのでしょうし、桂人もやりたい事を見つけて羽ばたくはず。
パブリックスクールという小さな箱庭を飛び出した先には、まだまだ乗り越えなければならない困難が訪れるのかもしれません。
けれど、いつか語っていたように、デルフィニウムの花を食卓に飾って同じ家で暮らす2人の姿が見られるのだと信じたい。
デルフィニウムの花言葉は「あなたは幸福をふりまく」「あなたを幸せにします」
大きな壁をひとつ乗り越えた2人の今後が、幸せに満ち溢れたものであって欲しい。
幸せも居場所もきっとある。
そんな希望が見えるラストでした。

13

待ってた!!

大好きなシリーズの大好きなふたりのお話で、ずっっっと続刊待ってました!!いっきに読んでしまいました。このふたりの話を読める幸せの、なんたることか。
内容はどちらかというとスタンとケイトのそれぞれの苦悩や葛藤シーンが多く、読んでいるこちらも心を砕きながら見守ることしかできないけれど、それでもふたりは絶対に乗り越えるから大丈夫と信じて読み進められる。
本当に本当に大好きです。続きもよろしくお願いします…ぜひとも!!!
小冊子はその日のうちに応募しました。こちらも楽しみ!
今夜再び読み返します。

7

愛ってなんだろう

シリーズ6作目。
スタン×桂人CPは「-ツバメと殉教者-」に続く2作目になります。

読んでいる間中、ずっと愛とはなんだろうか…と考えさせられました。心が痛み、涙し、まだ少し未熟な彼らがもどかしく、愛おしい。前作同様、とても分厚く読み応えがあって、個人的に樋口美沙緒さんが描く愛を訴えかけるお話はとても琴線に触れる(と最近気付きつつある。まだまだにわかですが…;)ので、今作も泣きながら萌えて・萌えながら泣いてを繰り返しながら読み終えました。

前作の桂人はスタンから愛を与えられ、背中を押され、過去や親の呪縛から立ち上がることが出来ました。またアルバートも同様、ねじれを正して前へ進み始めて。(今回アルバートの成長は目を見張るものがあります…!)序盤のスタンと桂人は愛を育み、とても幸せそうです。けれどスタンだけは今だに過去の呪縛から動けずに居たのですね。

桂人はスタンに愛され愛すことで自己を確立できたけれど、スタンは……、そうじゃなかったんです。スタンは心の中にある大きな穴から目を逸らしていました。桂人がいて、アルバートがいて、それなりの幸せと適当な生活が一番だと言いながら大きく空いた穴を見ようとせず、埋める勇気もなく。

桂人は自分の愛では穴が埋められないと酷くショックを受けながらも、スタンがスタンで居られるためにどうあるべきか悩み苦しみ、アルバートもスタンの為にと動きます。スタンが自分の愛を取り戻すキッカケになるのはヴァイオリンだろうと、再びヴァイオリンの世界へ半ば無理矢理放り込んでーーーと展開していきます。


いや~~…、スタンの口から"それなり""適当"とか出た時は驚きましたよもう…。マジか?と。なに言ってるかわかってる?と。そんな言葉で愛されて喜ぶ恋人がいいるかーーーー!!!( `д´)⊂彡☆))Д´) パーン

決して愛し方も愛され方も知らない男じゃないはずなんです。前作で桂人へかけた言葉で「愛されるときが、ちゃんとくる。愛するときも。俺には、そう見える。」がとても印象的で心に残っていました。そんな風な言葉で相手を思いやれるスタンは決して無神経ではないはず。だからとても違和感を覚えました。

でもこの辺りがスタンの難しいところで、他者への気配りや思いやりや優しさは持ち合わせているのに、自分のこととなるととことん不器用。桂人が絡むと更に拗らせちゃうんです(;///;)そうだった。この人、桂人に釣り合う男になるまで「愛してる」すら言わないつもりの男だったわ…。

なんていうか…この表現が正しいかはわからないんだけど、スタンは愛を崇高しすぎている?というのかな。愛するのには資格がいると思っている節があって、自分には人を愛す資格がないと思っていそうなんですよね…。けれど愛は身近で自然にあるもので桂人への愛は確実に抱えている。矛盾したようねじれが生じて情緒不安定になっているように見えました。

ヴァイオリンは荒療治になってしまい、スタンも、桂人も、アルバートも、皆が皆苦しんでいるのは読んでいてかなり辛かったです。失った愛を再構築するために一度ぶっ壊して叩きならしているような感覚。それが正しいのか、間違っているのか、わけがわからなくなるぐらい痛々しかった…。

そんな中で桂人がもがきながらもスタンへの愛情を、愛し方を、少しずつ見つけていくのは心が打たれました。元々決して弱い人間ではなかったし、根気よく愛情深い人間ではあったんですが、恋しい相手への愛は簡単にはいかないですからね。どこまで踏み込んでもいいのか、愛していいのか、伝えても良いのか、悩みながらも強くなり、良い意味でしたたかになっていくのが非常に良かったです…!(臆病者のスタンには胸倉掴んで振り向かせるぐらいがちょうどいいw)桂人が自分の居場所を自覚した点も涙腺が緩みました。

またアルバートの成長もほんとにすごかった。少し頼りなくてスタンと桂人が両脇から支えて"3人で1体"となっていたけれど、スタンが自由でいられる為には自分がまず独り立ちしないとって。子供だったアルバートはもういませんでした。ストーク家の当主としてこれから立派になっていく片鱗もみられて、おばちゃん心にグッときて泣けます(;///;)

そしてスタン。
桂人に「愛しているけど、たぶん、愛せない」と言った時はめちゃくちゃ泣きました。言われた桂人も傷つき、言葉を吐いたスタンも傷ついている。心の中に愛を持つのと、愛を伝えていくのは別物で、スタン自身はそのバランスが取れずにいる。苦しかったです。だからこそスタンがスタンを取り戻して、愛を取り戻して、蹲った世界が広がっていくのに心がグワッと握りつぶされるぐらい…萌えた。良かった。ほんと良かった。

今作は音楽・芸術を通じて、人と人の繋がり、愛の繋がりを描かれているのも印象的でした。世界は舞台の上だけじゃない。舞台から降りたところにも世界はあるし、それらは全て繋がっているんだーーーと。読み終えた時の感情を上手く言葉に出来なくてもどかしいのですが、これから広い世界に羽ばたく若者の後ろ姿が眩しくもありました。

惜しむらくは恋人復活後が少なくてッッ(;ω;)ラブラブな2人がもっと読みたいよーーー!

※余談追記をコメント欄に書きました。その後が読めると紹介されてた小説Charaについてです。(ここではネタバレしませんが最新雑誌なので念のため…)

23

いるいる

その後が読めるという小説Chara vol.42 購入しました。スタン視点でその後の様子(ブルーネル寮の現状なども含む)や、スタンの胸の内を語る内容が主でした。イチャイチャは求めてたほど多くはなかったかな。
(小説Charaにレビュー入れます。)

胸いっぱいで食事がのどを通らない

初レビューだし、自分の想いをうまく書ける気も全くしないけど、読み終わったあと胸がいっぱいで何かせずにはいられない気持ちになりました。
桂人の愛、スタンの苦悩、アルバートの成長…どれをとっても涙なしに読めません。
読後の余韻に浸りつつも、彼らの続きを早くも読みたいと思う自分。。

特典ペーパーのメンベラーズとの話もよかった!

5

覚悟して読みましょう

待望のパブリックスクールシリーズ六冊目。
こちらはシリーズ四冊目のツバメと殉教者の続編になります。

鈍い桂人と振り回されるスタン、二人の甘い学内えっちとさらにお互いの関係を深いものにするちょっとしたスパイスを楽しめるのだと、読む前は思っていました。
そんな自分を引っ叩いてやりたいですよ。読むなら覚悟しろ!!と。

最終学年となった桂人とスタンは、寮代表であるアルバートを影ながら支え夜に何度も逢瀬を重ねていました。嫉妬深いスタンは健在ですが、情熱的に桂人を抱くのに愛の言葉は囁かず、二人っきりの時にしか恋人らしい振る舞いをしないスタン。そのことに何か思うとこがあっても言葉にしない桂人。
序盤から、ん?不穏だな…と思いましたが一応安定した恋人関係を続けていた。
そんな二人の前に、六年生ながら別寮の代表に選ばれたアーサーが現れます。

アーサーは簡単に言うとスタンとヴァイオリンの先生を同じくしていた弟弟子で、コンクールで何度もスタンに負けた過去がある、現プロのヴァイオリニストです。そんな彼がスタンに再びヴァイオリンを弾かせようとするのが、今回の始まりですね。
このアーサーの考えにはアルバートもメンベラーズも協力的で何度もスタンにヴァイオリンをやるように迫るのですが、スタンは頑なに拒否します。そんな中メンベラーズたちの計らいでステージ上で演奏するスタンの音楽を耳にした桂人は、スタンにヴァイオリンの道へ行くよう進めます。
しかしスタンはやはりそれを激しく拒否して、挙句の果てにヴァイオリンを選ぶことは桂人との未来を蹴ることだ、とまで言いやがりました。

いや~~~ほんとスタンふざけんな~~~~というのが本音ですね。
わかってますよ?スタンは物凄く傷ついてる。実の母親から性的虐待を受けて、その母親が自殺した後はアルバートのために自分を犠牲にしてきた彼が傷ついてないわけがない。
でもだからって桂人に面と向かってヴァイオリン弾いてたらお前といられないだとか、桂人といるのがそれなりの幸せだとか、桂人を愛しても何も変わらなかったとか。二人で過ごした十か月を踏み躙っていい訳じゃないでしょ!!
今作は本当に桂人がかわいそうで見てて、つら…つらい…。最大のネタバレしますけど、スタンはヴァイオリンを選んで桂人と別れます。はぁ???って思ったでしょ?私は思いました。
そんな桂人にとって苦しい状況の中で不意に出てきたエドワード・グラームズ。礼を一身に愛する姿に安堵しました。まさかエドに癒される日が来るとは…。

三年のブランクを抱えながらヴァイオリンと向き合うスタンは、凡人には理解できない世界にいるのでしょう。天才というのは、こういうものなんでしょうね。身近に芸術家も天才もいないので憶測ですが、才能ある人はやはり普通の人にはわからない、踏み込めない世界を持っているのだと思います。
そんなスタンの姿に要らないものとして切り捨てられたと苦悩する桂人は、色んなことの発端である音楽家アーサーと関わることで、自分がどうしたいのかを改めて自覚します。

最後はもちろんハッピーエンドですが、そこにいくまでの過程が本当につらい。桂人はもちろんだけど、スタンも苦しんでる。今まで見ないふりしていた傷に桂人が容赦なくグッサグッサ切り込んでいくから色々と心臓に悪いし…。
ちゃんと自分の気持ちを吐き出したスタンに安堵しました。これまでの言動の裏の気持ちを吐露するとこは読んでて安心した。当然ですけど、ちゃんと桂人への愛もありました。
ただ、絶対にそれはあかんことをスタンが二回やらかしてますが桂人が許してるから許すよ。

当初思っていた、二人の関係を深いものにするちょっとしたスパイスとはかけ離れていて、正直劇薬のようにも思いましたが、スタンが救われるためにこれは絶対に必要なことでした。そして寮やストーク家でスタンの誘いを待つだけだった桂人にも、会いに行くという気持ちが芽生えたのはとても大きなものだったと思います。
今作も素晴らしかったです。まだまだ桂人とスタンの話が読みたい。次回作、お待ちしてます。

-追記-
ラブが物足りない方は5/22に発売した小説Chara vol.42「ヴァイオリニストは甘やかしたい」をぜひ!タイトル通りのスタンが拝めます笑

15

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