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上下巻同時発売!!
mune ni togesasu koto bakari
上巻はタイトル通りで終盤楽しくなりそうだなという気配を見せ始めたところで終わり。
全てフリだったと思うので下巻楽しみにしていました。
結論として、じんわり感動。
人への好意がどういう種類のものが曖昧ではっきり言葉にできないこととか、それがわかっていく過程とか、舟のセリフを通して描かれるのがめちゃくちゃおもしろかったです。
はっきり直接的なよくある理屈っぽい言い方でないのがいい。
日夏父、阿部、昭への気持ちを説明するくだり、言葉にしながら気づくことがあったり、考えたり、わからない部分があったりするのがリアルだなと。
当て馬と言っていいのかわかりませんが、阿部の使い方が上手と思いました。
BLでよくある当て馬は相手に嫉妬させるパターンが多いですが。
阿部の行動は舟の気持ちやセクシャリティを気づかせる、かつ昭は自分を投影する役割だったのがよかったなと。
同居し始めた2人の仲の良さを椿山に語らせ
舟の視線や態度から昭への好意、かわいいとかおもしろいと思っていそうだなと見ていたら
行動に出るのが早かったですね。
さすが自分で切り替えが早いというだけあるw
昭は下心があったわけだし拒むこともなく。
誠実な相手と付き合ったことがないから舟はそりゃいい男だししあわせを感じるだろうなと。
舟によってゲイであること、父へのわだかまりも払拭され、そりゃ惚れない理由はない。
短髪の舟はいちだんとイケメンで。
短髪好きなので喜びました。
年相応の若さが出ててかわいかったです。
背景や引きの絵、体の描き方、構図など好きなんですが、キスや絡みの絵もめちゃくちゃいいです。
正直なところそこまでBLBLはしていないので、そういう作風を好む方には物足りないかも知れませんね。
私は人物、心理、関係性の描き方が絶妙にお上手なのでそこがたまらなく好きです。
昭と舟の距離がグッと近づいた下巻。
人生何があるかわからないな、としみじみ思ってしまう展開でした。
昭の亡き父は良くも悪くもいつもの中心にいて、どうしても切り離すことのできない存在なのだけど、遺された彼らがそれぞれに抱いた感情や見てきた一面が
その後のふたりの関係性を変えていったのが面白いなと思いました。
舟も昭も変に取り繕うことなく、その時々で揺れる感情がストレートに描かれていて
いったりきたり焦れったく思うところもあったけれど
それがあるからこそ人間味のあるお話になったんだろうな、とも感じました。
明確な終わりではなく、ふたりなりのこれからを探していくようなラストも良かったです。
ストーリーだけなら1冊に収まるのかもしれません。しかしかながら本筋とは思えない部分が集まって形作られているから一層この作品が面白いと思う。
父親が何を考えていたのか、結局舟は昭の父にどこまでの感情を抱いていたのか、舟のセクシュアリティはどこにあるのか、昭のフラフラふわふわした生き方、もーやもやするところばかりなんですよ。自分はそこがたまらなく好きでした。そういった抜けないままの棘のもやもやしてるところがこの作品の魅力とすら思う。
それはそうとして短髪の舟くんセクシーすぎる。こんな年下の彼氏がいりゃ人生薔薇色さ。
お互い昭父に関するわだかまりが解消されたようでほっと一安心しました。舟と昭の関係性が緩やかに発展していくのももちろん見所ですが、今まで昭が知らなかった、見ようとしてこなかった父親の姿が徐々に明らかになっていくところもこの物語の軸なのかな、と。今となっては本人に聞くこともできなくなった故人の想いを静かに想像してみる、そんな昭の心情の変化に共感しました。舟に対しても、険悪ムードだった初対面からまさかここまで心地良い関係になれるとは夢にも思わなかったでしょうね。人と人との出会いには無限の可能性があるということを改めて感じさせてくれた作品でした。
うーむ…。
うううーーーむ。
スッキリしない!
わたし的に雁さんの作品はズバッと胸のど真ん中に刺さるか、ミットを構えたところから微妙にずれた辺りに球が返ってくるかのどっちかで、この作品は後者でした。
核心をつかないんだよなあ。
決定的な言い方をしない。
そのものズバリなモノローグもなくて、とにかく周辺をふわふわとするものばかり。
匂わせですな。
芸能人の彼女が匂わせをすると「マウントか!?」とファンが反応しますが、作品で匂わせばかりだと、短気なわたしは「はっきり言ってくれ!」と暴動を起こしたくなります。
そんなわけでみんなスッキリしない。
日夏父に対して、「そういう気持ち」は抱いてなかったし、何もなかった!と言う舟。
だけど夢や回想では明らかに「そういう気持ち」がある行動を取るんですよ。
どっちなの!?っていう。
日夏父にしても、日夏は「舟の気持ちを分かっててそばに置いていた」と言う。
でも舟は「先生に限ってそれはない」と言う。
その上で、「わかってたなら、ちょっとは…」ってまた邪な妄想が入る。
舟は結局、日夏父をそういう意味で好きだったのか、他人から言われて初めて自覚しただけなのか。
はっきりしない。
日夏の方も「イケメンと2人暮らし」とか「イケメンとやれる機会は逃さない」っていう「イケメン」部分だけで、舟の顔だけしか見てない感じ。
結局、この話は何がテーマだったんだろう。
教師としてもひとに慕われまくり、個人としてもモテまくっていた父。
その父が可愛がっていた生徒たちと、可愛がられた記憶のない実子。
死後に、父が本当は自分を愛してくれていたと知る、というのがテーマだとしたら、何かちょっと違う気がする。
外面というものが人にはあって。
私事ですが、昔、バイト先でみんなから「お母さん」と慕われているパートさんがいたのですが、一度そのひとに頼まれて、お嬢さんの進路相談に乗ったことがありまして。
外では物分かりが良くて寛容な「お母さん」だったパートさんが、実の娘には「だめ!だめ!あんたにできるわけがない!だからわたしの言うことを聞いてればいいの!」と怒鳴る姿を目の当たりにして衝撃を受けたことがあります。
所詮はよその子だから綺麗事で接することができるんだな、と。
この父親も同じじゃないかと。
外面がいいからみんなに「いいひと」だと慕われるけど、自分の子供には「どうせ分かってもらえない」と思われるような接し方しかして来なかったんじゃないかと。
それを「外面」しか知らない他人に「先生はあなたのことを大事に思ってた」と言われたところで、ぐぬぬぬ…、納得できます?
だって実際、探しもしてない。
いくらでも見つけ出す手段はあるのに、手をこまねいて、ゲイバーに行けば息子の気持ちが分かるかもなんて遠回りなことはしても、向き合ってない。
わたし、この父親が良いひとに思えないんです。
舟を手元に置いたのも、もし日夏が言うように「わかって置いていた」としたら、息子への贖罪と、思われる心地良さを味わっていただけなんじゃないかと。
性格悪すぎるのかな、わたし…。
そんなわけで、肝心の舟は日夏とのセックスに溺れているけど、こころのどこかには日夏父への自覚したての思いもあって。
日夏は父へのわだかまりが取れたみたいだし、長くは続かないと決めつけていた舟との関係に腰を据えて向き合うことにしたようだし、めでたしではあるけど、スッキリしなかった…。
やはりすばらしい。飄々としたようでいて、しっかり考えられたお話運びと、セリフ、表情。
下巻は舟がカバー。内容を表すように、舟側の視点で進む。
ドストライクのイケメン、舟との同居生活という、やましい心持ちもあった昭。しかし、それはそんな軽い下心にとどまらず、ついにカミングアウトした上に、舟にキスしてしまう。
そこから、舟のターン。
二人の関係を進めるに当たって、舟に果敢にアタックする高校生、阿部が当て馬くんとなる。男同士ということで対象と思っていなかった舟に、ちゃんと向き合えと迫る昭。
愚直と言ってもいい、純粋で一本気な舟は、阿部に向き合い、そして次に自分に向き合う。
あのとき、日夏先生に感じたもの、今、昭に感じるもの。
短髪にした舟に、沸騰する昭と同じ目線で読みました。かっこいいね。
そして、Hになっちゃう舟もかわいい。
何度もするめのように読み返すだろうな、という作品。
上巻は主人公にモヤモヤするだけでしたが、下巻はお話そのものにもモヤモヤしてしまったなぁと思います。
胸にとげさすことばかり、も、喉元過ぎればなんとやらなんでしょうかね。
イイ話風に描かれているけど、昭自身は結局何も変わってないと思うなこれ。
恋人ができてセックスして心と身体が満たされ始めるとこういう感じの変化見せる人いるよなぁって感想だけが残りました。
心の余裕というのは確かにそういうことから生まれるのだろうし、人の角っていうのはそうやって少しずつなくなっていくのだろうと実際の世の中を見ていても思うけれど、それっていいことなの?単に鈍感になっているだけでしょう?って私は思ってしまうんですよね。
昭の棘はもうチクチク胸を刺さなくなったかもしれないけど、代わりに私の胸に棘が残る作品でした。
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雁須磨子さん作品を「あぶりだし」だと表現した友達がいます。
それを聞いた時に、これ以上的確に雁須磨子作品を評した言葉はない!!と雷に打たれたような気がしました。
(その方ご自身はレビューをしないそうで、代わりにこの言葉を私のレビューで使ってくださいとのことなのですが、本当に素晴らしい表現だと思いません?言葉のセンスに脱帽です。)
直接核心には触るような事は描かず、エピソードや行間を読ませることで、じわじわと本質が浮かび上がってくる。
一度読んだ時には掴みきれずピンとこないこともある。
だけど、そこには素晴らしい何かが隠れているという確信に導かれるように、二度、三度と繰り返し読むうちに、その輪郭が姿を表し、次第に核心が浮き上がってくる。
気づいたらすっかり雁須磨子中毒になってるというおまけ付き。恐ろしい。
この作品は、まさに「あぶりだし」作品です。
だから、このうえなくレビューが書きづらい。
あらすじをまとめたとしても何も意味をなさない作品だし、もっともっと繰り返し読めば更に浮き上がってくるのではないかと思ってしまう。
一体いつになったら納得のいくレビューが書けるのかと思ったけど、多分、一生満足のゆくレビューなんか書けそうにないので、現時点の感想を書きます。
美術教師だった亡き父親。
父親にゲイばれをし、逃げた息子。
曰くありげな父の元教え子。
優しくてとっつきやすい先生としての一方、プライドは高く硬くさわると石のような冷たさがある人間だったと息子の昭は思っていたけど、見ようともしてこなかった生前の父親の姿が、周囲にいる人々の思い出によって浮き上がってくる。
その知らなかった、見ようともしてこなかった父親の姿を知っていく昭。
何もかも捨てて東京へ逃げたけど、捨てたはずの故郷で逃げたものと向き合う昭。
父親は、そして世界は、昭が思っていたような固くて冷たいものではなかった。
そう思わせていたものの正体は、昭の中にあるものだったのかもしれない。
その棘が、未だ自分の胸にあるということも認めることができた時、世界はただすべすべでやわらかいものだと気づくことができた。
父親は、たった一人の息子に対して父親らしいことができずに死んでしまうことを、最後の最後まで悔やんでいただろうし、息子の行く末を何よりも心配していたと思うんです。
だから舟とこういう関係になったことを一番喜んでいるのは、昭本人よりも父親じゃないかな。
彼の人柄に惹かれていた人々との縁、生前の父親が紡いだ縁によって、昭が故郷に戻ってきても、自分の居場所を見つけることができた。
良かった良かったと草葉の陰で言ってる気がしてなりません。
上巻ではほとんど進展のなかったストーリーですが、最終的には収まるように収ります。
うん、まあこれで収まりませんでした、みたいな話になるはずがないので、ザックリ言いいすぎてネタバレと言えばネタバレかもしれないけど、結末についてはまあ置いとくとして、
この話のメインは「それとこれとは関係ない。全く別の話なんだ」ってことが、見えるか、見ようとできるかって所にあって、そこを見極めることができたからこそ、舟は昭と一緒になることを選び取った。
昭も舟と一緒になって、それまで、見えなかった、見ようとしなかったものを、胸に残った棘だと認められるようになった。
上下巻、2冊揃って「神」です。
これはやられた!
そう来るのか!
個人的には、上巻が昭編で下巻は久留米編という感じです。
阿部のアプローチに真面目に向き合う様に伝えるために、昭は自分がゲイであることを久留米に伝えます。それによって久留米は自ずと、日夏先生(昭の父ですね)に対する自分の想いを振り返らざるを得なくなり……
ネタバレしようにも出来ません!
あらすじを書いてしまうと、全く別物になってしまうんですもの。
何と言いますか、理屈で作られたお話ではないのですね。
昭も久留米も、日夏先生に言えなかったこと、言わなかったこと、そのためにどこかスッキリしていなかったことを解決し、自分なりの『和解』を行えたのだと思います。でも、それは何か劇的なことがあってそうなった訳ではないのです。
強いて言えば、日常の積み重ね。
その人が暮らしていた街で、その人の暮らしの中にいた人達と、話したり、一緒に仕事をしたり、飲んだり、その人が経験しただろうことと似たような経験をしたりする中でじわじわーっと解ってくる。そういう日常は、どこか間抜けだったりみっともなかったり、端から見るとコメディそのものなのだけれど、でも、とても愛おしい。
解った後、昭も久留米も失ってしまった時間を悔やむのではなく、日夏先生との関わりを大切なものとして暮らしていくであろう結び方もとても素敵でした。
あ、上巻では薄かったLOVEもたっぷりありましたし(これ、大切)。
あー、読んで良かった!幸せだ!
最後に、おまけマンガは泣けます。
それなのに最後のコマの書き文字で、またしてもクスッと笑えるという。
最高です。