すみれびより

sumirebiyori

すみれびより
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神145
  • 萌×276
  • 萌39
  • 中立14
  • しゅみじゃない6

--

レビュー数
36
得点
1160
評価数
280
平均
4.2 / 5
神率
51.8%
著者
月村奎 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
草間さかえ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
価格
¥620(税抜)  
ISBN
9784403523724

あらすじ

淡い恋の記憶と思い出の本を大切にする芙蓉の前に、初恋のひと・西澤が現れたことから……?
ひそやかに咲く、一輪の可憐な恋の物語。

表題作すみれびより

芙蓉の小6時の同級生で大学1年生
祖母の営む下宿屋で働く18歳

その他の収録作品

  • あじさいびより
  • ふようびより
  • あとがき

レビュー投稿数36

泣けて仕方なかった、、

母親にネグレクトされていた芙蓉の境遇。そしてその初恋の行方に、泣けて仕方ない作品でした( ; ; )

他の方のレビューにもありましたが、小学校時代、ぼろぼろの服を着て誰も触れようとしなかった芙蓉に西澤が手を差し出し、一緒にフォークダンスを踊るシーン…気付いたらぼろぼろ泣いてました。

たった2行程度の描写なのに鮮明にそのシーンがイメージできて、芙蓉のはちきれんばかりの喜び、羞恥や申し訳なさが伝わってきて……込み上げてくる思いはあるのですが、うまく文字で表現できずもどかしいです。(プロの小説家の先生方って本当にすごい)

優等生然とした西澤が、恋した人(芙蓉)の前では余裕をなくして嫉妬したり、思わず唇を奪ったりと、一人の恋する男になる様子もたまらなかった。

”芙蓉は不要”なんて呟いていた小学校時代の芙蓉。
そんな彼が西澤に情熱的に求められ、”大切な存在だ”と言葉でも態度でも余すことなくぶつけられ、満たされていく過程に、じんわりじんわり込み上げるものがあり、読後しばらく放心してしまいました。

一番最初に載っている、金子みすゞさんの詩「草の名」。
本編読了後にもう一度読むと、読む前とはまた違った思いが沁みてきます。

草間さかえ先生のイラストも、繊細な作品の雰囲気にぴったりで、、

大切に、何度も読み返したくなる作品。
今まで読んできた月村先生の小説の中で、個人的に一番好きで記憶に残るものでした。

2

幸せ♡しかない読後感

作者&挿絵買いです。
タイトルもほのぼのとしてて、絶対甘キュンなやつだろうと見当をつけ購入しました。

主人公の芙蓉はかなり壮絶な過去持ちですが、どこか達観しているようで、繊細そうなんだけど芯の強さを感じさせます。
そんな芙蓉の初恋の王子様、西澤と6年ぶりに再会し…というお話でした。

健気な薄幸受けが無条件に愛される、そんな作品ですのでハッピーしか求めてないという姐様にも安心設定です。
終始キュンの嵐ですし、すれ違いもありますがそこまで拗れないので読んでいて悲しくなるような事は無かったです。

幼少期に全くいい思い出がなかったという記憶を西澤がいることで、生まれてよかったという希望に変えてくれる設定にホッとさせられます。
素っ気ないような態度の祖母にも実は愛されていたって所で涙が滲んだりしました。

本編が終わり、あとがきの文字が見えた時にエッもう終わり?って残念に思ってしまうほど、もっと2人のお話を読んでいたかったです。

1

教訓があった

「うん。毎朝、そこの窓から下を見ると、大町が膝をかかえて俯いてるのが見えて、いったい何を落ち込んでるんだろうと思って。一緒に昼飯でも食べながら、訊いてみようと思ってたんだけど、単なる植物観察だったんだな。」


家族に恵まれず施設で育った主人公と、隣にいて手を繋ぎ話しかけてくれていた転校生との再会のお話。派手な出来事の起こらない、食事や季節や植物など日常に恋が展開していくのを落ち着いて読む一冊でした。
無口な芙蓉が叔母に同じ遺伝子を感じて安心したり、西澤から借りた本の知識だけを頼りに雑草を愛でたり、西澤だけにお弁当のおかずをおまけしたり。すごく良い・・・

読んでいくと、周囲にはいじめていた人以外に芙蓉を見守っていた人、見えないところで心を砕いていた人がいると分かってくる。西澤の優しさも、ずっと優等生然とした性格や正義感がそうさせると思っていたけれど、実は芙蓉を思ってくれていたからこそのもの。
人は生きてきた中で視野と考え方が固まり、こんなにも人がしてくれた行動と自分で感じたものが違って見えることがあるのだと再確認するような話でした。素直に受け取らないことは、こんなに相手が見えていなくて勿体ない。僻みや自己嫌悪が強過ぎるのは良くないですね。

叔母や周囲の優しさ、相談できる相手がいて話す事で自分の出来事を再確認すること、何かあったときに飛び込める場所(叔母の真意を知って西澤の胸に飛び込んだ芙蓉の、その変化が愛しい!)があるっていいなぁとじんわりしました。

1

菫に込めた意味

タイトルの「すみれ」は、野草の和スミレの事。
踏むと、はんなり薫る、道端に咲く花。
 別名  「墨入れ」「相撲取草」「マンジュリカ」
 花言葉は  「謙虚」「誠実」「小さな幸せ」

そして、この本の紹介文は、「初恋は実らない。花すら咲かない。だから再会なんてしたくなかった――。」
・・どうして、タイトルに「すみれ」を入れたのかな・・と興味を持って購読。

冒頭は、金子みすずの詩 「草の名」・・
・・人が知っている草の名は わたしはちっとも知らないの・・


★登場人物
西澤浩一郎:
芙蓉の小6時の同級生。大学1年生、祖母の下宿の住人。

大町芙蓉:不要の芙蓉?
実母に育児放棄。祖母に引き取られて、祖母の営む下宿屋で働く18歳

1 すみれびより:すみれのエレイオソーム・・芙蓉は、雑草に詳しい、草好きな子だった。
2 あじさいびより:色変わりする花
3 ふようびより:酔芙蓉のことで、色変わりする

そういえば、「すみれ香水/村下孝蔵」という曲があったな、と読みながら思いだした。

0

野花のようにひそやかで美しい初恋

何度も読み返して、何度読み返してもしみじみ良いと思える大切で大好きな本です。
『包容力のある攻め×不遇な生い立ちから自己否定しがちな受け』という、月村先生のライフワークのような取り合わせで、もう何度も同じような二人を読んできたのにそれでも新鮮に楽しく読めるのは長年BLを執筆している先生の力量なのでしょうか。
再会して、小学生の頃にぷっつりと途絶えてしまった想いを温め直す二人。
大切に包んで仕舞っていた初恋の思い出を優しく慎重に開いてゆくような月村先生の文章と、アクセントのように登場する野花の描写がとてもイイ…!
あまり対格差のあるBLを描かないイメージの草間さかえ先生と月村先生の組み合わせが意外だったのですが、草間先生の独特なタッチと草花のある風景に佇む二人のイラストもものすごくマッチしていて、紙の本でいつまでも大切にしたいと思える本です。

3

慈しみに溢れている作品

ボロボロ泣ける!みたいな派手な感情は引き起こさないんだけど、心のやわらかい部分にじわっと沁み入っていくような、そしてそれにつられて涙がじわじわ滲んで、しかもそれがなかなか引かないような感じ。

とにかく受けの芙蓉がいじらしくて、俯きぎみながらも健気に頑張っている姿には読んでてたまらない気持ちになるものがありました。
母親から育児放棄されて育ち、薄汚い風貌ゆえにクラスメイトからも疎まれて、「芙蓉は不要」と自分を茶化すことでやり過ごしてきたとか、攻めが所有していた雑草図鑑を唯一の宝物にして育ったとか、もうたまらない。

そして攻めの西澤は正義感溢れる優等生タイプなだけかと思っていたら、テレビにちらっと映った芙蓉の姿を追って下宿屋を選んだりという執着が見えるところがイイ。
六年越しの想いだと西澤から聞かされても、最初は芙蓉と同様に私自身もあまり実感が湧かなかったのだけど、読み進めるに従って西澤の気持ちはガチだ!と確信できるようになっていくところも良かった。

特に酔芙蓉のくだりときたら‥‥
「クールなインテリメガネ面して、パッションある(田上先輩ナイス!)」ってやつで、パッション野郎、最高じゃないか!と思わず泣いてしまった。
それに、ふ〜ん……と当初読み流していた冒頭の金子みすゞの詩が、こんなに感慨をもたらすとはねぇ。
これからもどんどん、芙蓉の前限定でパッション見せておくれ!

こんなに再び出会えて良かったなぁと思える二人もそうそういないような気がします。
西澤と出会えたから、それを支えに何とかやってこれた少年時代や、再会してから西澤の側で自分の生を肯定できるようになっていく姿が本当に良かったです。

私がいいなと思ったところは、西澤のお母さんと再会して手を握りしめてくれた時の描写。
「昔、体育の授業で西澤が手を繋いでくれたときの感触を思い出す、さらりと乾いた、やさしい手だった」というところ。
芙蓉の中で、それがどれほどのものだったのか、そしてそれをどれほど支えにして生きてきたのかが余すことなく伝わってくる。
そしてその手を産み出してくれた人であるということや、この人が気に留めてくれたから今の芙蓉があり、西澤もいるという優しさの連鎖みたいなものを感じることができて、ここの一文で泣きました。

そして誰も目にも止めないような雑草を一人慈しむ芙蓉の姿や、朝顔の数を数えることを楽しむ姿、細々とした日々の雑事(洗濯やらアイロンがけやら庭仕事など)に励む姿など、細やかな日常を慈しむ視線に満ちていて、とても良かったです。

10

フランク

シトリンさま コメントどうもありがとうございます!
あのおばあちゃんからの言葉には思わず泣いてしまいました。
いいですよね、あそこも。ジワっとなります。
そんな重要な涙目ポイントなのに、レビューに書くの忘れてました……。

こちらこそレビューを読んでくださり、本当にありがとうございます。

シトリン

フランクさま、こんばんは。
この小説は、何度読んでも涙目になってしまうお話です。
口下手なおばあちゃんと芙蓉が心のうちを話せて、堪えていた思いをぶつけられる西澤という存在があって、本当に良かったと思います。

素敵なレビューをありがとうございました。

よい話でした

一人で月村積ん読消化祭りをしていたところ、これを読んでいないのかと友人から突っ込みがあったので、探してみたところ、イラストが好みじゃなかったので購入していなかったんですが、おすすめされてたので購入。
確かに、月村テンプレの後ろ向きネガティブな自己評価の低い受けでしたが、生い立ちが悲惨なので、かわいそうなだけで、イライラはしませんでした。攻めのほうが、あざとかったかも。それでも、おばあちゃんとの関係とか、帰郷したときにあった同級生の女の子の告白や、それに対しての受けの独白には涙。確かに、よい話でした。BLとしてはイマイチですが、話としてはよかった。
でも、やっぱりイラストは好みではなかったです。らくがきみたい。

3

甘酸っぱい初恋っていいなぁ~

ハードな作品続きで食傷気味となり、たまにはちょっと優しい話が読みたいなぁ~と軽い気持ちで読み始めたこの作品。

母親には「産まなきゃよかった」と言われ、同級生からは「貧乏草」と蔑まれ、愛情に飢えた芙蓉の前に、ルックスも抜群で成績も優秀、運動神経も良くて、精神的にも大人な完璧な西澤が現れ、一端は離れ離れになりなからもなお、揺るぎない愛情を持って現れる…って一体なんなのよ、出来すぎじゃないっ、なんかの罠じゃないかってたじろぎましたが、そんな天邪鬼の私でさえいつの間にかきゅん…となってしまう程、あまりに二人が爽やかで優しくて、誠実に恋をするピュアな展開に最後まで一気読みしてしまいました。

芙蓉の視点で語られる中、少しずつタネ明かし的に西澤の想いが明らかにされるにつれ、ネガティブで何もかも自分のせいにしてしまう芙蓉が頑なな心を解きほぐし、一歩一歩二人の距離が近づいていく過程はとてもほほえましく、触れるか触れないかの軽いフレンチ・キスでさえ、きゅんきゅんしました。

そんなウブな二人なので、後半に訪れるエロもかなり軽めなのですが、見てはいけないものを見てしまった背徳感があり、むしろ私としてはドキドキ…でした。

危機的状況に陥るわけでもなく、大きな障害に立ち塞がれるわけでもなく、ただただ二人が恋心を確かめ、育てていく日常を描いた話なのですが、とても暖かくて、ほっこりと幸せになるおとぎ話のような作品でした。草間先生のほのぼのとした挿絵も二人にぴったり合っていて素敵‼

やっぱり初恋っていいなぁ~、カルピスが飲みたくなりました(笑)

1

足湯に使っているような幸せな気分になれました

朝電車に乗って読み始め、降りる時にうっかり落涙しそうになりました。はや。
うそ、もう落涙?と焦ってしまいましたが、3編はいっていて1篇目が90P。
1篇目の山場ということで落涙ポイントに間違いなかったようです(笑)
本当にしょっぱなからキュン死にしそうになりました。
そして幸せーな気分で終われました。ので神。
ネグレクトがダメな方は、ちょっと考えた方がいいかもしれないです。
悲惨な記述は少ない方だと思いますが。。。

この表紙でまさか、そんなものを求める方はいないと思いますが念のため(笑)
エロとか激しさを求める時期の方は、また別の機会に手にとった方がよいと思います。

受けさん:すれていない 真面目ないい子の健気さん。
どろどろ泣いてる子なら、ネガティブ思考だなあ って切って捨てたんですが
すごく冷静。
芙蓉は不要 なんて自分でクールにつぶやかれると、本当にいたたまれない・・・
このフレーズはまじ辛かった。

攻めさん:受けさんの小学校に転校してきた 生徒会長系優等生。
穏やかないい人。でも受けさんにはべたぼれ(と後でわかる)。
両親のいるまっとうな家庭で育つ。

ばあちゃん:受けさんの母方のばあちゃん。下宿屋(レトロな建物)やってる。
小学生のころ受けさんを引き取る。口数少なし。
母親が子供を愛せなかったのを、少し辛く思っているのかな。
その表現加減が、ちょうどいい塩梅ですごく納得感あり。

1篇目でくっつくまで。
2編目でくっついてからのすったもんだ。
3編目で攻めさんの実家=受けさんの小学校時代のふるさとに行く話。
でした。どの話もキュン死にコースです。

不器用ながらも孫に寄せる じみーな愛情。
受けさんがばあちゃんに寄せる愛情。
攻めさん、受けさんのじんわり愛情。
どれもこれも ほっこり、人って捨てたもんじゃないわと思わせる
素敵な愛情ばかりで、読み終わった後のまったり幸せ感倍増。
草間先生のほんとにぴったりな挿絵とあいまって、足湯につかっているような
幸せな本でした。
二人してぜひ幸せになってほしいです。
もう少し後日談あると もうちょっと嬉しかったかも です。
何年か後の、就職した攻めさんと、下宿屋をやってる受けさんのお話とか。
読んでみたいなあ。

5

あとがきにも注目して下さい(^^)

黄金の包容力攻め×不憫な健気受けです。

この芙蓉が人を思いやる事が出来る芯の強いいい子なんですが、極端に自己評価が低いんです。常に自分なんかが西澤と居ていいのか悩みます。自分が傍に居る事で、西澤が周りから不当な評価を受ける事を恐れているんですね。
この「自分なんかが〰」があまりにも出てきて、本来なら卑屈すぎるだろ!とイラつく所ですが、それを不憫に感じさせてしまうのが月村先生の上手い所。
芙蓉の過去が静かなタッチで丁寧に書かれていて、「自分なんかが」と思ってしまう芙蓉の心情が自然に理解出来ます。

ネグレクトされていたせいで薄汚れていた芙蓉は小学校でもハブにされています。その度に、「芙蓉は不要」と自分を茶化して痛みを誤魔化してるんですが、もう本当にこの当たりが不憫で…。(ノД`)
そこに転校生として、西澤が颯爽と現れます!
誰も相手をしてくれない自分と、いつも進んでペアを組んでくれる大人びたクラスメイトなんて、特別な存在になるのが当たり前ですよね。

その後は祖母に引き取られ、祖母の営む下宿屋で二人は再び出会います。偶然ではなく西澤の執念の賜物なんですが(笑)
この大人になった二人が再び出会って…というシチュエーションが個人的にめちゃくちゃ滾ります。( ´艸`)

芙蓉が非常に臆病なので、なかなかくっつかないんですが、このジレジレ感にキュンキュンしながら読みました。なかなか懐かない野生の鳥を餌付けして、隙あらば自分のテリトリーに連れ込もうとするような西澤の行動力にもニマニマしちゃいます。

そして当て馬として出て来る田上がとても魅力的です。彼女がちゃんと居るんですが。
こちらも包容力があり、何かと芙蓉を構って手助けしてくれます。もうこっちとくつっいてもいいんじゃない?って思うくらい。彼のスピンオフをぜひ読んでみたいですが、彼女持ちじゃ望みは薄そうです…。(笑)

本編には関係ありませんが、個人的に強くお薦めしたいのが、あとがきのメルヘンババアのくだりです。
月村先生のあとがきは毎回面白く、こんな所でまで楽しませてくれようという作者の心意気を感じます!!
メルヘンババアには爆笑させてもらいました。(≧∇≦)

9

優しい可愛らしいお話でした

挿絵も相まってとーってもふんわり優しいテイストのお話でした。漫画ではこのような感じのお話を読んだことがあったのですが、小説では痛い系、エロ系、JUNE系を読むことが多い私にとってはとても新鮮でした。月村先生の本は初めてだったのですが、他の本も買ってみようと思います。そして、イラストは私の大好きな草間先生。この話には草間先生以外あり得ない、と思うくらい合っていました。最高です!!ありがとうございました!!
このお話は終始、超超ネガティブ思考の受けの芙蓉目線で進みます。芙蓉は、攻めの西澤のことを好きすぎて、彼を何か偉大な神と勘違いしているような雰囲気でした。実際の西澤は、真面目な学生ですが芙蓉に執着し、独占欲も隠さない普通の男の子です。芙蓉は最後までそのことに気づかないまま、西澤に愛され続けていました。西澤目線の芙蓉の様子がどんな感じなのかも知りたかったので、西澤目線の章があってもよかったのではないかと思いました。何しろ健気に西澤を想う芙蓉が可愛いもので...。懐かれた西澤が羨ましい!!笑
このお話には、芙蓉の趣味であるお花、主に雑草が沢山登場します。お花のことを全然知らない私にとっては普通に勉強になりました。笑 また、雑草や花が、この物語の優しい部分により厚みも持たせていたと思います。草の匂いや、庭の虫の鳴き声、梅雨の湿気が物語から匂いだつようで、安らかな気分になりました。そして… 雑草を眺める芙蓉が妖精のようでした。西澤も、彼のことを緑の精とか呼んでいましたね...笑 物語終盤で、西澤の実家の酔芙蓉が出てきます。酔芙蓉をググってみると、とても可愛らしい白い大きなお花が出てきました。また、酔っ払った時のように、時間が経つに連れ、白から薄いピンクに、そして濃いピンクに変わるという儚いお花。本当に健気で美しい彼にぴったりの名前だと思いました。また、その場面の草間先生の描くイラストが素敵すぎてため息が出ました...
ゆっくりとした下宿の日常の中で、小学校の頃の初恋の二人がゆっくりと愛を育んでいく物語。優しい時間の中でうるっとくる瞬間も沢山ありました。是非オススメしたい小説の一つです。



最後に。 何気ないセリフで萌える時ってありますよね?
今回はこのセリフに全て持っていかれました。
芙蓉『西澤と、れ、恋愛するなんて、絶対無理だ。ドキドキし過ぎて、心臓が壊れて、きっと死ぬ』
西澤『そんなかわいいことを言われたら、俺の方が死ぬよ』
私も死ぬよ!!!!!!

4

小さな幸せ

冒頭に金子みすゞの詩が出てくるのが、印象的ですね。
草花の様に純粋な芙蓉が、小学6年生のときに恋した相手は正義感の強い優等生西澤。母親のネグレクトにより、地元を離れることになった芙蓉は、西澤から借りたままの植物図鑑を枕元にまで置いて寝るほど大切にしていた。
初恋が叶うはずない、それどころかもう二度と西澤に会えないから、思い出と植物図鑑だけを宝物にしてひたむきに生き、祖母を手伝う姿に、わりと序盤から涙目でしたよ、私。下着にまでアイロンかけちゃうとか、かわいすぎる。
西澤も、モテるタイプだろうに余所見することなく、ずっと芙蓉を好きでいたんだなーと思うと健気ですねー。
直子さんとか、田上とか、芙蓉に優しい人たちが多い大町館に私も行きたくなりました。雑用係とかで。

3

優しくて心温まるお話

CD化されるということもあり、こちらでの評価も高いので、ついつい期待して読んでしまいました。残念ながら特筆する良さや萌えは読み取れませんでしたが、優しくて心温まるお話だったと思います。18歳同士とは思えない落ち着いたラブストーリーでした。

私は月村奎さんの作品は恋愛より家族愛の描写に感動してしまいます。今作も、芙蓉とお祖母ちゃんの絆に目頭が熱くなりました。

2

両片想いの初恋の成就

読み始めてすぐに、わずか6歳にして恋など幻想だと理解した芙蓉に幸せな恋の出会いがあるようにと願わずにいられませんでした。

貧しくネグレストされていた芙蓉にとって果物が貴重な品なのに「苦手だからあげる」と言ってあげたのは、貴重だからこそ大切なものを感謝の印に差し出した子供だった芙蓉と、竜田揚げ1個の贔屓をする大きくなった芙蓉の健気さに涙が滲みました。

風呂に入れてもらえなかったトラウマから自分んが臭うのではないかと不安になるところもかわいそすぎます。

『あじさいびより』
自虐的な芙蓉と振り回される西澤。
なんでも良くないことは自分のせいだと思ったり、自分なんかがと卑屈になってしまう芙蓉に愛と自信を教えてあげたい。

『ふようびいり』
芙蓉と同じ名の花を植えて『大町』と名付けて大切に世話してたなんて西澤くんも健気ですね。
小学生の頃から一途に思い続けた初恋の人に再会し思いが成就してよかったです。

4

優しい物語

心があたたまる話でした。

0

読後感がとても良い。

初恋との再会を通して主人公が自分を肯定していくお話で、心温まるとても素敵なお話でした。

芙蓉(受け)は、母親から愛されず学校でもイジメられていた過去を持つ暗く自虐的な性格です。
潜在的に自虐的になるのは当然だと思うし悪いとは思いません。
ただ、西澤(攻め)は芙蓉のどこに惚れたのだろう?といまいちよく分かりませんでした。
読んでいくうちに、芙蓉は好きなことを見つけるのが得意だったり、おっとりした性格だったりと魅力的な人物だということがじわじわ分かりました。
目立たず地味な雑草が魅力的に語られている所なども比喩的に伝わってきます。
途中から、西澤は見る目のある子供だったのだなと認識を改めました。

個人的に芙蓉と西澤の気持ちが通じ合う前よりも、通じあった後のほうが面白かったです。
結ばれてめでたしではなく、芙蓉が自身の辛い過去までも昇華していったからです。
そして自分を肯定してからは素直な芙蓉がよく見えるようになりました。
「ありがとう」の応酬や、素直に人を褒めたり西澤への想いをストレートに言ったりする様がとにかく可愛かった。
素直って天然タラシに近いんだなと思いましたw
あと、なにかと「自分が(西澤に対して)物欲しそうにしているのがいけないんだ」と真剣に思い込んでいる所とかもめちゃくちゃ可愛かった。

雑草の知識もとても面白くて、当たり前すぎて考えもしなかったことに改めて気づかされました。
こういう時に読書って良いものだなと思いますね。
いい青年2人がオオバコ相撲などをする図はちょっとムズムズしましたがw

読んでいくうちにじわじわとのめり込んでいったお話でした。
あとがきで、作者さんがスーパーボール風呂にハマっている話も面白かったです。
草間さんの挿絵も素敵でした。
家庭菜園がご趣味のようなので(ツイッター情報)この作品ともマッチしていると思いました。

2

俺は大町の蜜しか吸わない

芙蓉は不要
こんな悲しさを抱え続ける受けと、初恋の王子様との再会ストーリー。
と一括りにできる話なんだけど、読んでみると繊細で、庭に知らないうちに生えていて名も知られずに引き抜かれてしまう雑草たちのいじましさに似た芙蓉と、育ちの良さからか、一度告白した後はとてもストレートに想いを表現できる男、西澤、この二人の恋はとてもとても…甘くって気恥ずかしくって。
芙蓉が口にする数々の雑草の名前や特徴。出会いの頃の西澤から借りっぱなしの雑草図鑑を読んで読んで読み尽くして、大切な思い出と共に芙蓉の一部みたいになってる。表紙絵みたいに色とりどりに芙蓉を取り巻いて、「大町は緑の精みたいだね」なんて言われるくらいに。
可哀想な生い立ちの芙蓉を愛してくれる素敵な王子様。ずっとずっと愛して幸せにしてくれる初恋の男。前半のじれじれやすれ違いがあるからこそ、芙蓉良かったね、という気分で満たされます。

5

丁寧で温かく、細やかに綴られる心理描写に萌え☆

つい最近、月村奎先生のお名前を知りました。
「いつか王子様が」(コミックですが原作が月村先生)を何気なく手に取ったのがきっかけで「眠り王子にキスを」を読んで、心をがっちり持っていかれました!!
萌え心と切ない想いに揺れる恋愛でのドキドキやときめきをあますところなく刺激していただき、『眠り王子に~』につづき、こちらの「すみれびより」も大好きです!!
心理描写の書き方、雑草に例えた主人公の言動が本当にぴったりで心を揺さぶります。
普通の人物設定が大好きな私にとって、この作家さんの設定センス(というのかな?)も大好きです。
とびぬけて不幸とか心因症を患ってるとかDVとか浮気性とか、病みそうな要素てんこ盛りの不幸設定やドラマ性をとことん追求したような設定というのが苦手な私にはこの、普通の人が恋愛するときに感じる当たり前の感情が、ここまで丁寧に温かく書かれていていることで、読みながらハラハラドキドキ、ときめきながらも安心できます。
キャラも愛すべき性格で、恋愛の行方に心から集中して読み進めていくことができます。
まだ2冊しか読んでいませんが、嫌な人間が出てこないというところも、この作家さんの愛ある視点なのではと思ったりします。
私は作中に性格が曲がった人物が出てくると、もうBLのL(恋愛)に集中できなくなってしまいます。それに、いやなキャラがいることでこじれたり揉めたりするという安易なドラマには興味がないです。
それこそぶっとんだファンタジーに近いトンデモ設定でのごたごたや3P4P、ヤンデレなどならば逆に萌えられるんですが、シリアスものでリアルを追求するために描写される人間の歪みや不幸には萎えるという……あくまで個人的な好みの問題なのですが。
相手を大事にしたいと思う気持ちが根底にあり、恋愛を通して向き合うようになった内的葛藤やすれ違いを克服していくお話が好きです。
この作品もですが、月村先生のお話はとても読みやすい文章で感情移入しやすく、それでいて小道具の使い方が非常に巧みで、さりげなく気の利いたギミックがちりばめられ、本当に大好きな作家さんに出会えた気分です。
他の作品も読んでみようとワクワクしています。この作家さんに出会えてすごく嬉しいです。

6

再会もの

月村先生は好きでほとんどの本は読んでいます。
この作品にはハマれませんでした、残念です。
自分なりに原因をさぐってみると、小学校の同級生が大学生で再会という内容なのですが、再会ものの設定が期待した感じではなかったのかもしれません。単に好みの問題なのかもしれませんが、ふたりのキャラがあまり変わってなかったりで、”こんな大人になったんだ”というような驚きやときめきが感じられなかったのかも。
西澤があまりにいい人すぎるのも今回はマイナス要因の一つになってしまいました。

2

月村先生ならではの優しくて温かいお話・・・

月村先生の作品の大ファンで、いつも新作を心待ちにしています。
月村先生の作品は発売されたら絶対に直ぐに読み始めるぐらい大好きなんです。(正直、あとから読もう~という積読本も多い中で・・・絶対に積読しない本の一つです)

この作品も感想は今になってしまいましたが、もちろん発売と同時すぐに読みました。

月村先生ならではの優しくて、温かくて・・・・そして、攻め様が憧れの王子様的キャラで、受け様に物凄く執着していて、一途で・・・そして、Hに積極的(←これ大事です!!)
受け様は、控えめで、自分に自信がなくて、親に恵まれなくて、どこか俗世間離れしていて・・・

2人が小学生の時の同級生(攻め様が転校生だったので、期間は短かったけれども)で・・・という設定も凄く好きなので嬉しかったです。

この作品を読んでから、芙蓉を見るたびに、この本の事を思い出しては、温かい気持ちになり、そして攻め様を思い出しては萌える気持ちを感じるようになりました。

1

安心して読める。初心者さんにオススメ。

小学生の頃、ほんの少しの間だけ一緒に過ごした同級生を初恋の思い出として、子どもの頃のネグレクトのトラウマから、自分から何かを望むことをあきらめてひっそり生きてきた主人公が、初恋の相手と再会して少しずつ前を向いて行くお話。
スーパー優等生だった初恋の相手くんは、実はとんでもない独占欲の固まりのストーカーくんだったのだが、その位のパワーがないと、この主人公の心をこじ開けることはできなかったわけで、割れ鍋に綴じ蓋で、めでたしめでたし。
ざっくりまとめると、そんなお話。
この本のいいところは、もっとえぐくして芙蓉が母親の男に性的な暴行を受けてた設定にしたり、もっとハートウォーミングにしておばあちゃんがすごく優しい設定にしたりしていないところ。
この、素っ気ないくらいに坦々とした展開が、逆に涙腺に来る。
大きな事件も、ハードなエロもいらない。
ちょっとせつない、心洗われる胸キュンの世界でほんの一休み。
そんな気分。
タイトルの「すみれ」をはじめ、雑草の小さな花々みたいなお話でした。

3

等身大の男の子

 同級生の再会物。
ネグレクトの受け様の芙蓉ちゃんのお母さん以外は、優しい人しか出てきません。
もうみーんないい人。
口下手でネガティブ思想だけど、健気でかわいい芙蓉ちゃん。
対してなんでも平均以上こなせちゃう委員長気質の攻め様の西澤君。
でも、芙蓉ちゃんに関する事にだけは、スマートにできない。
読んでいて、芙蓉ちゃんの態度に一喜一憂してる、そんな等身大の男の子ぶりがとってもよかった。
「大町にされたら瞬殺だったから…」のセリフのとこが笑いと萌がミックスされてものすごく好き。
 ラストの初エッチのシーンの会話も、かわいくてなんか微笑ましくって大好きです。
2人にちょいちょいからんでくる田上さんもいい人だー。
芙蓉のおばぁちゃんも、口下手で面と向かってはなかなか愛情表現をできない人だけど、芙蓉のこと、とても大事にしてるし。

 とても優しいふいんきに包まれたお話で、さわやかな読後感。
いいもの読ませてもらった、と思える一冊です。



2

終始きゅんきゅん。

買ったのは大分前だったのですが、
移動の空き時間の暇つぶしに読もうと手に取りました。
……これが、読んだらすっごく面白くて、
ドはまりしてしまいました!!
芙蓉ちゃんがとっても可愛いです。西澤イケメンです。
『幼いころから母親によって虐待を受けていた芙蓉は、
祖母によって引き取られ、祖母が営んでいる旅館で働きます。
そこへ、小学生の時に思いを寄せていた西澤が、
前よりもっとカッコよくなって下宿をしに来ました。
…芙蓉に会うために。』 (みーにゃん風要約)
芙蓉がうじうじタイプの子なので、
想いが通じ合ったあとも、うじうじうじうじしてます。
私はそういう子大好物なので美味しく頂きましたが、←
うじうじする子を見ていて、いらいらしてしまう方には
オススメできません。
月村先生の、情景が目に浮かぶような丁寧な描写と、
さかえ先生の綺麗な絵が、すごくマッチしていて素敵な作品です。
心に余裕が欲しい!!幸せな気分になりたい!!ほっこりしたい!!
そういう方にはすごくオススメします。
月村先生の作品は初めて読んだので、
他の作品も購入して月村Worldに入り浸りたいと思います。
ごちそうさまでした~♡

7

野草がたくさん

月村奎先生の小説はこれが2冊目です。
草間さかえ先生のイラストにつられ、発売すぐに買いました。
そして、少し前に読みました。
スルッと読める優しい引力のある一冊です。

先生のコミック原作はいくつか読んだし、BLCDもいくつか聞きました。
そして、先生の言う「いつもの」と言うのがよくわかりました。
不幸体質で健気な受けと、優秀で包容力のある攻めが多いという事。
お話の中に出てくる人達が、皆さん優しい事。
ほんと、ピュアッピュアなお話でした!

今回も先生の書く不幸体質な健気受け、健在でした。
主人公の芙蓉と家族との関係に、色々と訳ありで。
人間不振気味に育った芙蓉。
はじまりでは、恋愛に対して他人事のような考えが書かれています。
しかし実際には、初恋をずっと引きずっていました。

お話の中で一番好きだったのは、ばあちゃんの話。
芙蓉は、ばあちゃんと性格がよく似ているのですが。
ばあちゃんが何を思っているのかわかった時、グッときました!
逆に、お母さんの話はわかりにくいかな?
子を愛せない母親は結構いると思うので、その事はわかるのですが。
芙蓉の性格のせいもあると思うのですが。
描写があっさりしていて、引き離されるほどの理由がわかりにくかったです。
そこはちょっと残念。

それから、芙蓉と浩一郎の二人が話す野草や花の話のあたり、かなり面白かったです♪
すみれって、そんな花なのか~とか。
とにかく野草と花の知識がスゴくて。
思わず「うぉ~っ…」と感動しながら読んでいました。
大変勉強になりました!

野草と言えば子供の頃、オオイヌフグリやナズナ(ペンペングサ)などで花束作ったりして。
そんな可愛いことしていた頃もありましたっけ☆
オナモミ(ひっつきむし)やヘクソカズラは人にくっつけて遊んだりして。
ちなみにオナモミ、今や絶滅危惧種だそうですよ。

それから、以前住んでいた家には芙蓉がありまして。
夏になると大量に咲きました。
葵やハイビスカスの仲間で、透けるように薄い花びらがとても綺麗です♪
しかし、毎日花ごとポトポト落ちるので、掃除が大変という印象☆
次々花を咲かせる、見た目儚げなのに生命力が強いイメージのお花です。
芙蓉にぴったりな気がしますね♪

芙蓉と浩一郎のラブに関しては。
正直、少し物足りなさを感じたかな?
私には、二人の思いの熱が見えにくかったです。
なので萌どまりですが。
お話はすご~く面白かったです。

3

山も谷もなくてもいいんだけど

山も谷もないストーリーでも素晴らしい作品はありますが、
それに代わる「なにか」は必要なわけで……。
私は、この作品の中にドラマチックな展開に代わる要素を見つけられませんでした。残念。

気になった点を3つあげます。

1.「小学校時代の思い出」がそうでもなかった
芙蓉の生い立ちと小学生のときの西澤との短い交流はこの作品の重要なキーです。しかしレビューを拝見して想像していたほど印象的な描写はなく……。
なんというか、「この物語はこれこれこういう前提がありますからよろしく」と前置きを提示されたような感じでした。
この序盤ですでに結構期待値が下がりました。

2.芙蓉と母親の関係
小さい頃から自分の境遇にたいして妙に達観した子供だった芙蓉。成長してからは同じマイノリティだということで自分を愛さなかった母親に理解まで示している。
生まなきゃよかったと繰り返し言われ、児相が急いで引き離すレベルのネグレクトを受けていたのに。
ちょっと母親に対する芙蓉のスタンスが不自然すぎて彼に感情移入がしづらかったです。

3.あまりにドキドキのない恋愛
BLであるからして、メイン二人の男性が最終くっつくのはどの作品でも読む前からわかりきっています。
だからふたりの心が通い合う経緯や友情が恋に変わる瞬間、性別という壁を乗り越える契機となる出来事等にこっちは一喜一憂するわけでして。 
しかしこの作品は

芙蓉:西澤がずっと好き
西澤:早い段階で芙蓉がずっと好きだったことが判明 

というイージーモード。なおかつ、ふたりの対人関係スキルの差から生じた誤解は芙蓉がけなげに待っていれば西澤が解きに来てくれるし、当て馬っぽい先輩は別に芙蓉狙いでも何でもない。この恋のどこに萌えればよかったのか。

他にも、西澤が何を学ぶ学生なのかすら明示されないフンワリ世界観とか、作者的に「不要」や酔芙蓉に引っ掻けたかったとはいえ、望まない子を産んだ不良娘のボキャブラリーから息子に芙蓉という名前をつけることって有りうるかなとか色々無粋なツッコミをしてしまう。

4

思わず芙蓉の花を検索しました(笑)

小さい頃から母親の育児放棄により、妙に自分の置かれている状況や、同級生からの軽いイジメ等にも妙に客観的な視点を持ち自分なりに理解している芙蓉(受)
小学校の国語の授業で、同じ言葉でも意味の違う言葉があるという学習から、自分の名前、芙蓉イコール不要と気付き、なるほどと冷静に感心したりするような子供。
さすがに、小学校二年生からこんな風にネガティヴ思考はあり得ないでしょと思いつつ、自分の置かれた環境を冷静に理解している芙蓉は、
途中、六年生で転校してくる西澤(攻)と仲良くなり、唯一気にかけてくれる西澤の事がどんどん好きになっていきます。

で、私はここいらで芙蓉の花を知らなかったので、思わず検索して
美しさの代名詞にも使われている芙蓉の花を確認してしまいました。

最後まで読んで、これはしない方が良かったなと後悔…
終わった後なら良かったのですが、
[ふようびより] で、西澤が芙蓉の事を思いつつ、自分の家に植えて大切に育てて…
と読み進めて行くうちに、せっかくなら、全部読んでから調べれば良かった〜(苦笑)ってなってしまいました。
今から読む方は、芙蓉の花が気になっても、最後まで読んでから調べて下さい(笑)
その方が西澤の想いとかが、より伝わってくると思いました。

あとがきで、地味なお話 って書いてありましたが、全然そんな風に思いませんでした。
内容は、ネグレクトやイジメとかが出てきたりしますが、全体を通して
芙蓉のある意味 前向きな(斜めにぶっ飛んだりもしてますが)思考が
何気無い日常を、穏やかに流れていきます。

草間さかえさんのイラストもお話の世界観と合っていて凄く良かったです。

1

いたたまれなさが半端ないです

物語すべてが受け視点で進んでいきます。
物語がきれいなのでおセックスも少な目です。いや、むしろ最後につながるくらいです。
日々、汁まみれなものを探している自分には若干きれいすぎるお話でしたがそれでもめちゃめちゃ共感といいますか物語に入りこめてとっても良かったです。
金子みすゞ氏の詩が文頭に入れられていて固い話なのかと思っていましたが、最後まで読み進めると納得!!!
あぁ、なんか全てすっきりした。。。ってな感じです。
純愛で、すごくすごく良作なのでいろんな方にお勧めしたいです。
特に激し目苦手な方やら初心者の方に胸を張ってお勧めできる一作です。

4

純愛。

月村さんが書かれる健気な受けって大好きなんですが、この作品の芙蓉もいい感じの健気さんでした。

自分が子を持つ親だからでしょうか。ネグレクトや虐待を受けている子どもを見ると胸が締め付けられます。芙蓉もネグレクトされ、「芙蓉は不要」と思い詰めるシーンには思わず胸が詰まりました。そんな中、まだ小学生でありながら芙蓉を助ける西澤くんはまさに漢でした。芙蓉を取り巻く環境は劣悪で、西澤くんのお母さんの判断も親目線で見れば正しい判断で、でも唯一の存在であった西澤くんを失った芙蓉が彼が貸してくれた植物図鑑だけを心の頼りにした芙蓉があまりに可哀想でした。

母親から引き離され母方の祖母のもとに身を置くことになった芙蓉。祖母が経営する学生寮に西澤くんがやってきて…。

ともするとネガティブすぎかと思うキャラですが、幼い頃から母親から虐待され「産まなきゃよかった」と言われ続けた芙蓉は心の大きな傷を負っていることからそのネガティブさに無理がない。植物図鑑を西澤くんの代わりであるかのように大切にしてきた芙蓉は植物が好きで、自分と重なるのか、名のある植物よりも道端に生えている雑草の方に心惹かれる、というのも非常に良かった。

芙蓉だけでなく、長い間気持ちを温め続けてきた西澤くんもかっこよかったです。小学生の時に芙蓉を助けたのはそういう理由だったのか…、という彼の執着ぶりも良かった。一見大人に見える彼が、芙蓉の事になると途端に余裕を失くしてしまうのも年齢相応で良かったです。まだ18歳なんだもんねえ…。

周りを固めるキャラも良かった。
無口ながら、陰で芙蓉に愛情を注ぐ祖母。
芙蓉を見守り、また大きな心で息子のすべてを理解してくれている西澤くんのお母さん。
芙蓉を可愛がってくれる田上さん。
心を閉ざしていた芙蓉は初めは気づけずにいたけれど、実はたくさんの愛情に包まれていた作品で、そこも涙涙でした。

草間さんの挿絵ということでふんわりした作風に合っていてよかったのですが、ただ、表紙の西澤くんがちょっと大人っぽすぎというか、オッサンのような、というか…。いや失礼。

タイトル通り、優しい、ふわりとした愛情に満ちた神作品でした。



11

瑞々しい初恋が花開く

草間さかえさんのイラストに魅かれ手に取った本作は、
心優しい大学生西澤くんと生い立ちに傷を抱えた下宿手伝い芙蓉くんの
小学生の頃に芽吹いた初恋が、花開くまでの物語。

レトロな下宿屋で、季節の花野草と共に大切に育まれる恋、
舞台設定がとっても良いですよね。
登場人物も魅力的で、メインのふたりは勿論
下宿屋を切り盛りする芙蓉くんのおばあさん、
芙蓉くんたちの恋を見守る下宿大学生の田上さんも素敵でした。

口下手ながら、孫の芙蓉くんのことを誰よりも気にかけてきたおばあさん、
ネガティブな芙蓉くんを励まし、時に西澤くんに喝を入れる田上さん。
このふたりがいなければ、作品の素晴らしさも半減していたと思います。
特に田上さんの芙蓉ちゃん贔屓には、ニヤニヤしました。
西澤くんの嫉妬心を煽る天才ですね。
田上さんの『どんだけ魔性設定なの、芙蓉ちゃん』という台詞が好き。

私的萌えポイントは、関係がぎくしゃくしている中、
芙蓉くんからあじさいの花を手渡されガーンとなる西澤くんです。
あじさいの花言葉は『浮気』という話をしたばかりなのに!
これにはちょっと可哀想な西澤くんでしたが、何だか可愛くって。

ラストシーン、瑞々しい初恋が花開くように
芙蓉の花が咲き誇る西澤くんの実家で迎えた朝を想像して
夏草といっしょに、ふたりを祝福したくなりました。

7

マジ、スンマセンっす。

初読み作家さんです。
ランキングに惹かれ、購入を決めました。

「なんとなくこんなイメージ」という、雰囲気だけは
聞いていたので、
静かな物語なんだろうなーと思いつつ、ページをペラリ。

-------------------

物語は主人公の幼少期から始まります。
母親からネグレクトされた主人公・芙蓉(受け)。
学校でも貧乏草と呼ばれ、虐げられる日々。
そんな時、唯一救ってくれたのが、学校一番の優等生・西澤(攻め)。
母親から離れるために芙蓉(受け)は、転校していきますが
そのとき初めて、西澤(攻め)に恋をしていたのだと気づきます。

ここのシーンは物悲しかったです。
読者も含め、私も、皆が「初恋」を体験する。
そしてそれは、大抵が思い出になる。
それは当たり前のことです。
でもその当たり前のことが、やっぱり悲しくもあり、
そして年月とともに大切になっていきますよね……?
「初恋」の大切さに関して、共感した場面でした。



そして6年の月日が経ち、芙蓉(受け)は、
祖母の営む下宿「大町館」で働くようになっていました。
そこに入居することになる西澤(攻め)と再会。
再会モノかー、今まであまり見たことなかったかも。

ああ、でもこの芙蓉のネガティブなこと!
いやー、考えようによっちゃあ、「控えめ」と
捉えられるのかもしれませんが、なんでもかんでも
卑屈に考え過ぎ!

うーん、でもなんでだろう、それが嫌に感じません!!
えー、なんでー??
私、ネガティブ属性なんてあったんでしょうか?

芙蓉は幼少期に西澤から借りたままになっていた
植物図鑑のお陰で(?)雑草博士になっていました(笑)
雑草の花を語る時だけ、いきいきとしだし、
それを西澤に語りかける芙蓉。
うーん、こんなに何気ない日常なのに、なんでこんなに
心がほんわかするんだろうー?

私は、印象深い出来事が「ドカーン!」と起きてくれた
物語のほうが好きな人間なのになー?
なんかおかしいぞ……? 
私、調子狂ってる……? うーむ。


そして雨の中の歩道橋のシーン。
突然、西澤にキスされる芙蓉。
でもそれが、何故芙蓉が「物欲しそうだったから」的な
解釈をするんだ芙蓉!
それにそれを嫌だと感じていない、私はもっとどうした!(笑)
「超控えめ」属性?
「ネガティブ」属性?
「卑屈」属性?
えー、なんて言ったらいいんだろう!?><
私、そんな属性あったのか! 超新発見!
ひゃー、でもなんか自慢にならない!

ここで、芙蓉は西澤とのキスを
「一生に一度の初恋相手とのキス」
「最初で最後の西澤とのキス」
と、表現しています。
ああ、もうここは胸がギューッとなりました。
違う! 違うぞ、芙蓉! 
もっと西澤の態度を隅々まで見てみろ!
それ、勘違いだから!

そして帯にもある台詞。
「…ホントは、会いたかった。死ぬほど会いたかった」
ああ、芙蓉は気持ちが西澤に届いたんだね。
良かった。
本当に良かった…。



そして、次の章の「あじさいびより」のラストの
エッチシーン。

あああ、もう見ているこっちが恥ずかしい!
初々しすぎてカワイイよー!
本番まではないけど、
芙蓉のあまりの敏感な反応にみているこっちも照れてしまう。

そして、「触られると瞬殺されるから」という理由で
トイレで抜いてくる西澤。
爆笑!
完璧な西澤をこんなに骨抜きにするなんて、
芙蓉は罪な受けだよ……。
ああ、でもカワイイ。



最後の章「ふようびより」。
短い章でしたね。
まるで、エッチ本番のためにあるような章…って言ったら
なんか怒られそうな、罰当たりなような気がしますが…。

初めて芙蓉の花を頭に飾ってもらうシーンが良かったですね。
やっと、自分の名前の花と出会えたのだなぁと思うと、
感慨深いと同時に、
「芙蓉ってのは、こんなに綺麗な花なんだよ!
 だから、この花と同じで君も綺麗なのっ!」
と、芙蓉に言いたくなりました。


そしてエッチシーン。
お風呂でフェラ。
間髪おかず、西澤の部屋に体も拭かずに
二人でベッドに雪崩れ込み……
(というか、西澤が強引に連れて行って、押し倒した)
なんか、西澤ってこういうところから判断して、
絶倫な気がする!!(爆)
ムラムラするっと台詞がなんというか、
こんなにエロいなんて!
ああ、でもひとつになれて良かったね……

芙蓉を「緑の精」なんて呼ぶのは西澤だけかもしれない。
でも、それはすごくぴったりだなぁと思ったラストでした。

-------------------

今回の本でびっくりしたこと!

私、受けが「超控えめ」とか「ネガティブ思考」とかって、
好きだったんだね><
知らなかったー!
うぎゃー、なんかこっ恥ずかしい……!!////
こんなところで属性が判明するとは!

なんか、どーでもいい私の話ばっかりしてますね。
スンマセン。

いやー、自分の属性の開花(?)に驚くばかりでして…

つーか、全然レビューになってないじゃんか、コレ!
あああ、こんなところまで突っ走って
書いちゃったよ!
どーすんの、コレ……マジで。

もう、スンマセンしかないッス。

萌え属性を分からせてくれて、
あざーした。(ありがとうございました)

そして、読んでくれた方、ゴメンナサイ。

6

電車で読むのは危険(ネタバレしてるから絶対あとで読んでください)

 号泣するわけではないのですが、じんわりとくるので外で読むのは危険です。

 月村奎さんの作品はどれも好きですが、これは今まで読んだ中で一番好きかもしれません。

 今までだと、主人公を大人な攻が慈しんで愛して、自信のない主人公が自分でいいんだって思えるようになっていく、二人を中心とした世界だったと思うんですが、その愛情の範囲が祖母であったり住人であったり元クラスメイトであったりと、二人の外からも主人公の芙蓉に向かっていて、なんだか今までの作品よりも大きなものに包まれているような優しい気持ちになりました。

 もちろん読みつつも、普通はもっとドロドロした感情はあるはずだとか、こんなイケメンで優しい攻が何年も同じ人に恋心を持ち続けるわけはないとか、よごれちまった自分は思うわけですが、その反面主人公がこうして今生きているのはまぎれもなくまわりの人の愛情のおかげなんだろうなと、思うわけです。
 BLっていうか愛情の物語だなーと、BLって懐深いなーって、BLが好きでよかったなーとしみじみ思いました。
 
 あと、酔芙蓉の色の変化見てみたい!


 ただ……残念だったのは、近くの本屋さんで全然見つけられなかったこと。表紙がすごく素敵だったから、ネットで買いたくなくて店頭で見たかったのですが、大型書店まで行かないとありませんでした。都内なのに。もうちょっと刷って欲しい!

12

野に咲く花のような優しいお話

母子家庭でネグレクトされている大町芙蓉、
小6の時に児相に通報され、生まれ育った土地を離れ
東京で古めかしい賄いつきの下宿屋を営む祖母の元で暮らすことになって、
ようやく人並みの暮らしが訪れる。

いい記憶のあまりない故郷での日々の記憶の中
唯一彼が宝物にしている思い出。
小5の終わりに東京から転校してきた優等生の西澤は、
汚いとクラスから弾かれていた芙蓉と手を繋ぎ
あっという間に仲良くなる。

芙蓉は不要、誰からも必要とされていないと思っていた彼に
それは救いの光で、そしてその淡い恋心を抱きながら別れ、
返せなかった植物図鑑を眺めながら過ごした6年半後の春、
祖母の営む下宿屋に大学の新入生として西澤がやってくる……。


月村先生らしい、10代の片思いの切なさ。
恋だけじゃなく、家族に対する思いや日々揺れ動く心
それらが、風情のある昔風の下宿屋を舞台に
細やかに描き出されていく。

登場人物の造形もいい。
野に咲く花のように、地味に健気にでも強い芙蓉。
例によってネガティブ思考なんだけれど、
いじましかったり恨みがましくなく、清々しいネガ。

非の打ち所のない優等生・西澤の執着心、
働き者で愛想のないおばあさんの愛情も
西澤の母の優しさも、どれも心にしみる。
下宿生の田上さんや、かつての同級生の女の子
そのそれぞれが暖かく物語を膨らませる。


そして、雑草雑学!
芙蓉の宝物の植物図鑑(雑草限定w)が重要なアイテムになっており
様々な雑草野草が登場し、純粋にほお!と感心したり
芙蓉の気持ちとの重なりに切なくなったりする。

以前は「朝チュンの月村」と言われていた作者だが、
(なくてもいい話だけれど)Hもちゃんとあります。
草間さんの挿絵は、レトロな下宿屋の雰囲気とマッチ、
ただ、西澤がもうちょっと大人の印象すぎるかな……


春に始まり、夏まで。
優しい季節の空気の感じられる、素敵な一冊でした。

8

あやちゅけ

snowblackさま

買おうかどうしようか、迷っている本なのですー><
優しくてほんわかした雰囲気が
私の趣味に合うかどうかが怖くて、
まだ手を出せていません。

優しいお話なのですねー。うーん悩みます!

すみれの賢さと佇まい

まず本を開く前に表紙のイラストがとても素敵で心惹かれます。
草間さかえさんのイラスト。月村奎先生の小説とよく合っています。
小説を読む際に個人的にはあまりイラストにはこだわらないのですが、あまりにもマッチングしていてこう言う効果もあるのかと理解しました。
それと冒頭に金子みすゞさんの詩が載っていて、それも作品に色を添えています。

設定としたらそれほど新鮮ではないかもしれないと感じましたが、とても透明感があって引き込まれます。とても静かで純粋な恋愛物語。
再会までの語りが絶妙です。

生い立ちゆえに自分の気持ちを前に出せず何に対しても遠慮ばかりの芙蓉、それにやさしく根気強く寄り添う西澤。
終盤までずっとそんな感じなんだけれど、それが自然というか二人の生活の中に読み手も入ってしまうような感覚。

芙蓉は母親に愛されなかった子供でしたが、西澤への想いが強くなればなるほど同性に恋心を抱く自分がマイノリティとして母と同じだったのかもと思うところが切なすぎて泣きました。

西澤の影響で少しずつ変っていけそうな芙蓉。
祖母の想い、西澤の想い、同級生の当時の気持ち、周りにいた人たちは芙蓉が気付かないだけでみんな芙蓉のことを想っていてくれていたのです。
自分の周りにいる人たちを理解するってことがどんなに大切かわからせてくれる物語でもあります。

元々涙腺が弱いのはわかっていたけど、人の想いに感動して泣きながら読んでました。

ラストのえっちシーンがなくてもいいと思えた小説は初めてかも。いえ、あった方が満ち足りた気分にはなりますが^^;…

はぁなんだこの感動は。
ちょっと泣きすぎて疲れましたぁ(T_T)でも心地良い疲れです。

17

ふゆき

りんさん
初めまして、こんにちは。コメントありがとうございます。
同じ感想だったとのこと嬉しいです!
芙蓉のおばあちゃんとの会話や西澤のお母さんとの会話にとてもほっとさせられて、二人はずっと一緒に幸せでいられるのだろうと満足感があったので、なくてもいいと思ったのかもしれません。
とにかく深い感動を受けました~。

りん

ふゆきさん、こんにちは。レビューに思わず大きく頷いてしまい、勢いあまって初のコメントしてしまいました。そうなんですよね、私もBL小説読んでいて初めてエッチなくてもいいかも!と思ったんです!私も泣きました~!

心温まる雑草の初恋物語

心穏やかに読める、優しく素敵な初恋物語でした。

「あんたなんか産まなきゃよかった」
母親から何度もそう言われて育ち、
小学校では「貧乏草」というあだ名で呼ばれていた、芙蓉(受け)。

そんな状況に打ちひしがれるとこなく、妙に客観的に自分を捉え、
「芙蓉は不要」と心の中で時々茶化して生活していた受けが、
小学校6年生で初めて恋を覚える。

その初恋の相手は、東京から来た転校生の西澤。
ルックス、成績、運動神経、どれも抜群で児童会長にもなった優等生。
そんな西澤が、
学校で孤立していた受けを何かと気にかけて、
授業や行事のペアを率先して引き受けてとても親切にしてくれて、
受けは自分が「不要」と呟かずにすむようになる。
恋に落ちるのもの当然すぎるくらい当然。

そんな相手との6年半ぶりの再会。
受けの祖母が営む学生下宿、
受け自身も就職せずに手伝っているその場所に、
大学生になったその初恋の西澤(攻め)が入居してきたから…


雑草は一般的には、庭を邪魔する不要な草花。
でもよく見ると、とても可憐できれいな花を咲かせていたりします。
そんな雑草の気付きにくい本来の姿と、
受けの幼い時からの魅力が重ねられて描かれているのが、
この物語の素敵なところだと思います。
言葉少なめな受けが時々饒舌になっての語る雑草の知識も、
へ~!と興味深く思うことが多くて楽しかったです。

攻めのキャラもとても好感が持てました。
最初は完璧すぎるくらいな優等生かと思いきや、
話が進んでいくと、攻めなりにぐるぐるしていたり嫉妬していたりで、
意外と人間味があったし、受けの目線になって優しく包み込む感じが、
読んでいてとても心地よかったです。
攻めの実家にふたりで行って、
攻めがどんなに一途にずっと受けを想っていたかが分かるエピソードは、
本当に本当に素敵でした。
(母親目線からそのことを知れる、
アニメイトで貰えるSSペーパーもすごくよかったです!)

「芙蓉は不要」
子供の頃に受けがそう連想していた名前は、
これからは優しく甘く響くのでしょう…
あの庭に咲くきれいな花と、
自分が深く想われ愛されている現実が思い出されて…。

10

悲しいほど一途

まるで運命かのような再会。
何年も想い続けていた初恋の人が目の前にいる幸せ。
それまで不幸を絵に描いたような生活を強いられてきた芙蓉は
ほんの些細なことにも一喜一憂しドキドキと乙女のように心躍らせ
また冷静になるたびに切ない気持ちを隠すのに必死。

あまりにも真っ直ぐで透明で、時分より他の幸せを優先する芙蓉と
これまた真面目で明るく、自分に正直でありたいと思う西澤。
悲しいほどに一途な芙蓉が西澤のことを忘れるはずもなく・・・
読み始めはこの西澤、どこかで本性を現すパターンかな・・・
と思わなくもなかったのですが、読み進めるうちに
本当にいい人なんだ・・・疑ってごめんなさい・・と言う気持ちに・・
転校してきた西澤が、当時いじめの対象であった芙蓉を
大切な友達として仲良くしてくれたことが芙蓉の大切な宝物。
そして西澤にとっても芙蓉との出会いが運命を変えたことを知るのは
かなり後になってからのこと。
芙蓉を引き取った祖母が営む下宿屋で偶然のように再会する二人ですが
それが偶然ではなく、西澤の意思であり芙蓉を想うがあまりとった
かなり大胆な行動に、西澤の情熱を感じます。
大学に通う西澤の交友関係を知ることは、知りたくないことまでも
知ってしまうということを頭では理解していても心が揺れてしまい
自分の気持ちをうまくコントロールできなくなる芙蓉。
その気持ち、なんだかすごくわかります。
人にはいろんな付き合いがあり、いろんな交友関係があることは
充分頭で理解していても、悲しくなってしまう。
自分の知らない顔の西澤、自分の知らないところで
知らない友達と楽しそうに話をする西澤。
すべてに嫉妬の気持ちが芽生え、いけないとわかっていても意地を張り
素直になれない自分がいて・・・
そんな自分が嫌でたまらなくて・・・
真面目だからこそ、ちょっとのことで悩んでしまうんですね。

辛い過去を背負っている芙蓉が幸せになれるように
読みながらハッピーエンドであってほしいと願わずにはいられませんでした。
「初恋は実らない」ではなく
「初恋も実ることもある」に書き換えることができ
西澤との恋が実り、人並みの幸せを実感できたことにすごく安堵しました。
大切に使い続けてきた「雑草の図鑑」が、その図鑑から得た知識が
結果的に二人の共通の話題になり幸せを運んできました。
芙蓉のような子どもは、必ず幸せになる権利があると思います。
切なさと幸せが絶妙に混ざり合ったストーリーでした。

13

初恋が大恋愛

大恋愛とは、この二人のことなんだと思えました。

物語の主人公、芙蓉は育児放棄され、汚れた衣服で登校することで小学校のクラスで浮いた存在になりますが、転校生の西澤は、そんな芙蓉に手をさしのべ、親切に接します。母親から愛されず、クラスメイトからはイジメられ、初めて自分に優しくしてくれる西澤に、芙蓉がどれほど救われたのか計りしれません。ろくに風呂にも入れない環境の中、西澤が芙蓉の手を握るフォークダンスのエピソードは、私も喉の奥が痛むほどで、12歳と思えないほど堂々として大人びた西澤は、芙蓉でなくとも好きになってしまいます。
後に芙蓉は祖母に引き取られ転校するのですが、大学進学を機に芙蓉の住む下宿屋にやってきた西澤と再会します。
再会を喜ぶ西澤と対照的に、芙蓉は西澤への恋する気持ちを隠すことに精一杯で、上手く会話も出来ず、不器用な様子がとても切なかったです。西澤は本当に気の良い友人といった様子で芙蓉と親好を深めようとしますが、ある日の雨宿りで、二人の関係は一変してしまうのです。狭い歩道橋の下で、急な通り雨をしのいでいる時、西澤に肩を抱かれて、芙蓉は真っ赤になって震えてしまいます。物慣れない子羊のような芙蓉に、さすがの優等生の西澤も理性が飛んでしまったのでしょう。触れるだけのキスをしてしまうのですが、芙蓉はパニックになり逃げ出してしまうのです。それから1週間、芙蓉に避けられた西澤は、キスのことを無かったことにして欲しいと言うのですが、芙蓉は無かったことになんか出来ないと涙を流します。芙蓉の18年の人生の中で、西澤は一番眩しく愛しい存在であったはずですから、さもありなん、というものです。芙蓉に嫌われることを恐れ、今まで通り友達でいたいと言った西澤も、さすがに観念して、芙蓉への気持ちを告白します。初めて会った時から芙蓉は特別な存在であった事、芙蓉に何かしたやりたいと思っていた事、転校してショックだった事、そして幸せに暮らしていれば良いと祈っていたこと。二人の再会は偶然では無かったのです。芙蓉の居場所を知ってからここに来ることを考えていた西澤。そんな情熱があったのかと驚かされました。芙蓉が転校するきっかけとなった、児童相談所への通告は、西澤の母親がしたものだった明かされます。通告をすれば芙蓉が遠くに行ってしまう事を恐れた西澤は、最初は反対したけれど、芙蓉の命にかかわることだと諭され、自分は何もできないと悔やんだことを告白する西澤からは、子供なりに一生懸命に芙蓉を心配し大切に想っていたことが伝わります。
芙蓉は生い立ちから、永遠に続く愛というものを信じられず、西澤とのこともいつか終わるものとしてとらえます。しかし、小学生時代のことをとても後悔しているクラスメイトや、芙蓉のことをとても心配していた西澤の母親、何年たっても、芙蓉との再会を心から喜んでくれる人達がいることを、もっと沢山知ってほしいと思いました。そして、普段はクールに見える口数の少ない祖母も、孫を心配する普通のおばあちゃんで、何年かたって初めて知る祖母の気持ちに、有り難うと言えた事は本当に良かったと思えます。芙蓉を弟のように可愛がる田上に、西澤との付き合いの中で、相談し甘えられることが出来るようになったのも、芙蓉にとっては大きな進歩でした。西澤に対しても、少しずつ、素直な気持ちを言葉に出来るようなりました。
一方の西澤は芙蓉にメロメロで、緑の精だのスミレのようだ等、バカップルみたいな甘々なセリフを吐き、始終チュッチュッするほど骨抜きなわけですが(笑)、芙蓉相手にはそれぐらいがちょうど良いのかもしれません。下宿屋の若旦那である芙蓉のため、ゆくゆくは週末婚に持ち込み、永遠の愛というものを教えてあげてほしいなと思いました。

22

この作品が収納されている本棚

レビューランキング

小説



人気シリーズ

  • 買う