ボナペティ!

Bon Appetit

ボナペティ!
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神129
  • 萌×275
  • 萌30
  • 中立4
  • しゅみじゃない5

--

レビュー数
24
得点
1039
評価数
243
平均
4.3 / 5
神率
53.1%
著者
月村奎 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
木下けい子 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
価格
¥620(税抜)  
ISBN
9784403524837

あらすじ

葉が最後の晩餐に選んだのは、近所のお洒落な小さいビストロ。
そこにはいつも幸せそうに微笑む店主がいて……?
甘くて切ないロマンス♡

表題作ボナペティ!

花井瑠可,ビストロオーナー
有村葉,19歳,天涯孤独のフリーター

その他の収録作品

  • いつまでも、いつまでも
  • あとがき

レビュー投稿数24

今日の、頑張った自分を誉めてあげよう

生きる事に精一杯で、心を無くしかけていた主人公ー。
そんな彼が人の優しさやあたたかさに触れ、心を取り戻して行くと言う、とても素敵な作品でした。

月村先生と言うと、マイナス思考で傷付きやすい主人公を、繊細に優しく綴るのがとてもお上手だと思うんですけど。
今回も、まさにそのタイプの受け。
もう、読みながら完全に感情移入しちゃいまして。
スレ違い時には泣けちゃいましたよ。
くっ、健気過ぎるなー!と。
私は元々、受け大好き人間でして、彼等は存在するだけで尊いと思ってるんですよ。
でも、この子は別格。
尊い受けが居たよ~。
めっちゃ尊い受けがここに居たよ!!

ついでに、包容力があっていい意味で大人のしたたかさを持ってる攻めと言うんでしょうか。
上手い事、受けを言いくるめて自分のテリトリーに引き入れちゃうみたいな。
このタイプの攻めにも死ぬほど滾る為、瑠可にもめちゃくちゃ萌えさせていただきました。


内容ですが、ビストロオーナー・瑠可×天涯孤独の不憫な青年・葉による、心と心の繋がりを優しく綴った主人公再生ものです。

両親を早くに亡くし、中卒で働きづめだった葉。
怪我をして行き詰まり、疲れ切った彼が人生を終わらせよう決意した所からお話はスタート。
最後の晩餐にと以前から憧れだったビストロに訪れた彼は、貧血を起こして倒れてしまうんですね。
そんな葉に、無銭飲食の償いとして住み込みで働くよう、強引に決めたビストロオーナーの瑠可。
そんな二人が同居生活を送りつつ互いに心を通わせ、ちょっとした誤解なんかを乗り越えて結ばれるまでとなります。


こちら上手いのがですね、まず最初に葉がこれでもかと悲惨な状況に置かれてる所だと思うんですよ。
生きるだけで精一杯の状況で、心をすり減らし、疲弊しきっている主人公。
こう、投げやり状態なんですよね。
えーと、彼の居た環境というのは周囲も荒んでいて、誰しも余裕が無い。
だから、困っている人間が居ても、誰も手を差し出そうとはしないー、みたいな。

で、なんとも読者を高揚させてくれるのが、ここからの主人公救済ターン。
無銭飲食や立て替えてもらった病院代の支払いの為に、瑠可のビストロで働きだす葉。

瑠可ですが、すごく包容力がありいい男なんですよね。
迷惑をかけたくないと去ろうとする葉にですね、「無銭飲食の代金を労働で払ってもらう」「逃げたら困るから身柄を拘束する」とか言って、働く場所と住む所を提供するー。
で、健康になってしっかり働いて貰わないととか言いつつ、バランスの取れた美味しい食事を食べさせ、優しく見守る。

こう、無気力で疲れきっていた葉がそんな毎日を過ごし、周囲の優しさやあたたかさに触れるうちに、どんどん変化してゆく。
よく負の連鎖とか言いますけど、周囲がギスギスしていればどんどん本人も荒んでゆく。
でも、逆に周囲があたたかく思いやりに満ちていれば、自分も優しく出来る。
そんな葉の変化が丁寧に綴られ、なんとも幸せな気持ちにさせてくれると言うか。

と、そんな毎日を過ごすうち、いつしか瑠可に惹かれてゆく葉。
しかし、意識しすぎて態度が不自然になってしまうんですね。
そんな中、瑠可からプレゼントとして新しい新居ー自分のアパートの鍵を差し出され・・・と続きます。

こちら、図々しく居座り続ける自分にウンザリした瑠可が、出ていって貰いたいんだと葉は解釈します。
で、切ないんですよ。
瑠可の負担にならないよう、「自立出来る」と嬉しい振りをする葉。

一人で新居に向かう葉がですね、瑠可との三ヶ月を静かに振り返るんですね。

とても幸せだった。
生まれて初めて人を好きになれた。
自分の事にいっぱいいっぱいで、瑠可の気持ちまで思いやる事が出来なかったー、みたいな。
もう、一緒に泣けちゃって。
いや、そんな一生分の幸せを使い果たしたみたいに思わないでよ!
これから、もっもっと幸せにならなきゃダメなんだよ!!と。

と、結構切ない展開なんですけど、ここから超胸アツの展開が待機しております。
今度は「うひゃひゃひゃ」と萌え転がっちゃったりして。

それにしても、瑠可もまた気の毒な攻めではあるんですよ。
やる事なす事、裏目に出ちゃって。
彼はですね、格好つけて紳士ぶってたのが一番の原因だと思うんですど。
そう、意外といい格好しいなんですよね。
まぁ、好きな子の前では格好をつけたがる攻めと言うのも、個人的には好きですけど。
萌えちゃいますけど。


と、めちゃくちゃ萌えまくる素敵な作品でした。
ついでに、エッチ時には紳士の仮面をかなぐり捨てる攻めと言うのも好みでして。
これまた、激しく翻弄されて泣きじゃくってる葉が可愛すぎて悶絶でした(* ´ ▽ ` *)

38

正統派少女小説

あとがきによれば『小説ディアプラス』で、月村さんのデビュー20周年特集を組んだ際に書いたお話だそうですが、まさに「これこそ月村さんのエッセンスが充満されているお話!」でした。
健気で不憫だけれども、ひっそりと咲いている野の花の様な受けさんが(名前も『葉』だしね)世の中の酸いも甘いも噛み分けた(単なるスパダリではないというところがミソだと思うのです)王子様と出会って幸せを知る(これもね『幸せになる』のではなく『幸せを知る』というところが良いと思うのです)お話。

こんな風に一言で書いてしまうと身も蓋もないのですけれども、でもまたしてもあとがきから引用させていただければ「20年もやっていて、こんなになんの進歩もないなんて(後略)」と書かれておりますが、私はそれが『月村ワールド』だと思うのです。
これがファンにとっては「たまらない!」のですよね。
あらすじは既に詳しく紹介されておりますので、そのことについて思う処を書きたいと思います。

今作の始まり、葉くんはとてもつらい状況に置かれています。
両親を亡くしたため中卒で、非常に条件の悪い職場で働き、食べるものといったら常に食パンのみ。
一番問題なのは、彼を愛してくれる人も、彼が愛情を注ぐ人も、1人もいないことなんです。
唯一の楽しみは、近所のフレンチレストランを覗くこと。
そこには、食べたこともない美味しいものがあって、その美味しいものを楽しそうに食べている人達がいる。葉くんにとってそこは、自分には決して手にすることの出来ない『幸せ』の象徴なんです。
でも彼はそこを覗き見ることすら罪悪感を感じてしまうのです。「自分には幸せに触れる価値もない」と思っているからなんですね。

これ、私がイメージしたのは『マッチ売りの少女』なんです。
だからこのお話は私にとって『死んじゃう前に助けられたマッチ売りの少女が、自分は幸せになっても良いと理解するまで』のお話です。
だから『都合の良い展開』がいくら出て来ても白けないんですよ。
理不尽に貶められた健気な子が尊厳を取り戻すまでの寓話だと思うので。

このお話を読んで確信したのは、月村さんが『脈々と続いている少女小説の後継者』であるということ。それも極めて正統派の。
『赤毛のアン』や『若草物語』などに胸をときめかせた記憶のある姐さま方は絶対読んだ方が良い!
心の片隅にいる『少女』を激しく揺り動かす『20周年記念作』だと思います。

蛇足
私の入手した紙の本は『おまけペーパー』がssではなく月村さんへのインタビューでした。
これも大層面白かったんですよ。
これ、初回だけですよね?
月村さんファンは書店に急いだ方が良いんじゃないかな?

28

健気薄幸受けがお好きな方に。

雑誌で読んでいていて、文庫化されると聞いて発売を楽しみに待っていました。

月村さんの、スパダリ・受け溺愛攻め×薄幸健気受けがお好きな方にはぜひ手に取っていただきたい。月村さんらしい、切なくも温かい、心が温かくなるハートフルストーリーです。

月村さんの発揮う健気受けさんは、ネガティブさんが多い。
今作品の受けくん・葉も超絶なネガティブくん。ネガティブすぎるとややもすれば反感を買いがちですが、月村作品のネガティブ受けさんは庇護欲を誘う。

ネガティブになってしまった理由が、きちんと描かれているから。

葉くんもしかり。
若干19歳ながら、彼は人生を諦めきっている。彼がその結論に至る理由が壮絶で哀しいです。

が、そんな葉くんがビストロオーナーの瑠可さんと出会い、恋をし、そして再生していく。

ありきたりといってしまえばあまりにありきたりなストーリーではあるのですが、過酷な環境で生きてきた葉くんが瑠可さんと出会い、少しずつ幸せを手に入れていく過程が繊細な描写で描かれていて、この作品が持つ世界観にグッと引き込まれてしまうのです。

序盤薄幸で健気な葉くんが可哀想で落涙し、そして終盤は幸せを手に入れた葉くんの姿に安堵の涙が。
ハンカチとティッシュが必須です。

そして瑠可さんの男らしさも。
彼自身ビジュアルのせいでつらい経験をしてきている。
さらりと描かれたその描写に、瑠可さんの根底を見た気がしました。
自分の辛さや悲しみを人への愛情に変えられる瑠可という男性の強さが、この作品に深みと想いを与えている気がしてなりません。

そして特筆すべきは木下さんの描かれた挿絵。
個人的に月村さん×木下さんのコンビって最高だと思っているのですが、今作品の木下さんの挿絵も最高でした。

優しく、温かい今作品のイメージにぴったり。
読後、表紙を見返すと気持ちが温かくなります。

やっとしあわっせを手に入れた葉くん。
ずっとずっと、二人で幸せでいてほしい。そんな読者の願いを具現化した素晴らしいイラストでした。

16

ぐるぐるきゅんきゅん

まさに月村ワールド炸裂。
誰にでも好みはあるので、好き嫌いは読み手が感じるものだけど、私は大好きです。
月村先生の作品の醍醐味のひとつ、ぐるぐるきゅんきゅんですね。
へんな勘違いや勝手な思い込みで、好きなのに離れてみたり、ここぞというところですれ違ったり。
ちょっとハラハラしたり、イライラしたり物語と分かっていても、ドキドキして引き込まれてしまいます。

毎回先生の作品を読んで思うのは、詠み手に分かりやすい優しい表現。
当たり前ですが、小説は少々の挿し絵はあっても文章ですから、絵なら一目見てわかるものも色々な言葉を並べて伝えますね。どの作家さんも素晴らしい表現をされますが、私は個人的に月村先生の言葉の使い方が好きです。
今回で言えば、瑠可の瞳を「カンロ飴みたいな薄茶の瞳」と表現されています。
私はこの文章がとても好きです。
また、ビストロ.Lucasの建物を「年季の入ったタイル張りの外装、ピカピカに磨かれた真鍮の取っ手がついた木製のドア、モスグリーンの日よけなどすべてが絵のようにかわいらしく、外壁沿いには花やハーブなどの鉢が並んでいる」と書かれています。
そこには文字だけしかないのに、まさにその情景が目の前に広がって来ます。

今回はビストロが舞台なので、様々なお料理か出てきますが、今目の前にないものを本当に食べたいと思わせてしまうほど、美味しそうに表現されて、これは空腹時には読まない方がいいと思ったほど。

そして主人公の2人、今時珍しいほど純粋で生真面目、小動物のような可愛さでその上可哀想な身の上な受けと、コックコートが似合う王子様のような攻め。
こんな出来すぎたことってあるか?と思いつつどんどん物語に引き込まれてしまうんですね。

BLにも色々なタイプがあると思いますが
月村先生のような、暖かみのある優しいお話はドキドキしながらも、最後に安心して読み終えることができ、幸せな気持ちになります。
そして毎回、2人のその後をいつか書いて欲しいなあと、欲張ったことを考えてしまいます。

次回作も楽しみにしています。




13

白馬の王子様に助けられ幸せになっていく主人公に萌えます

個人的に大好きなタイプの月村作品です。

描写や表現が映像的で場面や背景がくっきりと浮かんできます。
また、舞台がビストロなのでいろいろな料理が出てきてどれもおいしそうで、うっかり夜中に読んでしまうと我慢できなってしまうなと思いながら読んでいました。

建物もそこで働く人もとても素敵で、こんなお店があったらボロボロになった主人公の葉みたいに癒されたり安らげるような気がします。
きっと常連になります。

あらすじにあった『最後の晩餐』ってなんで?と思って読み始めたら、もうそれがすごく哀しい理由でおいしい料理を楽しそうに囲む幸せなど自分には関係ない世界の話と思っているけど一度だけ自分もそのまねごとをしてみたい、なんていう思いが健気すぎて胸が締め付けられました。

不憫な状況にあった葉が救ってくれた恩人に一気にのぼせ上がるんじゃなくて徐々に感情が変化していく過程があって気が付いたら好きになっているという展開が好みでした。

また、瑠可王子がちょっと強引なスパダリというんじゃなくて、優しく包容力があり葉の性格をよくわかったうえでそっとふんわりと包み込んでいくような愛し方がよかったです。

ブラックな職場でだれにも守ってくらえずどんどん状況が悪化してどうにもならないというのが現実にもあるという昨今、葉がいい人たちに出会えてよかったです。

11

溺愛が空まわり

評価が高かったので楽しみにしていてようやく読みました。
葉が不憫過ぎて泣きましたね。
生活にいっぱいいっぱいで生きるだけで精一杯だなんて、唯一の楽しみが瑠可の店を覗く事だなんて!かわいそう過ぎます。

命を絶つ前に勇気を出してお店に入って良かった。瑠可が店内を覗く葉が気になっていたなんて…最初から言ってあげてよ。

あまりにも控え目な葉と、紳士であろうとする瑠可の間ですれ違いはありますが、上手くいって良かったです。

今まであまりにも我慢し過ぎた葉だから瑠可には何でも言って甘えて欲しいと思いました。

書き下ろしも良かったですが、出来ればコミコミスタジオさんの小冊子も入れて欲しかったです。

5

おとぎ話のような恋

作品の中で主人公葉くんの恋を友人が「おとぎ話のような」と例えているけど、確かにそうだなと思いました。
スタートはなんでこの子がこんなに不幸なの?
不幸は不幸を読んでしまうものなのかなと思うくらい。栄養失調状態で、この子が本当に素敵な受け様になれるのか心配したくらいです。
無事に攻め様と出会ったあとは少しずつ健康になり幸せになっていくところや、全ての人に感謝したりする所がすごく純粋でおとぎ話のようだなって思います。
幸せが続いて不安が付きまとう気持ち、よく分かります。今まで不幸だった分、余計に不安だったんじゃないかな。
おとぎ話のように読後感が凄くいい。幸せな気持ちになれます。
月村先生のお話には木下先生のイラストが良くお似合いです。さらに温かい気持ちにしてくれました。
葉くんには、もっと幸せになってもらいたいですね。

3

試し読みで既に涙...

人生の終わりに食べ物の施しに救われる話というのはいくらでも泣けるのです。
このお話自体も登場人物たちの言動もシンプルながらおいしい料理のように優しく、幸せな気分になりました。

もとから主人公の葉くんは感性が良く素直で、不幸に生きてきた疲弊や自虐的な思考が、食べ物で変わる体型と同時に、出会った人々によって考え方や哲学のようなものが豊かになるのがポジティブで良いです。
それでも惹かれた瑠可にはいじらしく好きと言えずグルグルする展開はとっても美味しい…

窓を覗く男の子(葉)が可愛いと思っていた瑠可、いつも自分の作った料理を涙をこらえて食べる葉はとても愛おしく、痛々しくも可愛かっただろうなと思います。
瑠可のプレゼント内容は理由を打ち明けられてもオイオイと突っ込むしかないですが…笑
行為シーンは恥ずかしがりで大好きな瑠可に感じ過ぎていきすぎる葉が可愛すぎて滾りました。
挿絵、もっと体型や顔つきの差を出して欲しかったです。

ごめんなさいと連呼する葉。私は葉ほどの不幸はないけれど、この自己肯定感の低い考え方はかなり似ているものを持っています。
実際に似たようなことを言った経験もあったので、それが痛いほど共感できて泣きながら読みました。
葉が優しく受け入れられ、また新しい考え方(自分で選択するということ)を与えられていくことは大切な人が出来ることと同じくらい、生きていく上で重要です。
心底優しいお話に、読んでいるこちらも心を解された気分になりました。

2

Bon appétit!

Bon appétit!、
「appetit(食欲)」なので、「良い食欲」=「たらふく食らえ」という意味。
食欲に溢れている人に対して使う「召し上がれ」で、フランスの上流階級では下品だと嫌って使わないそう。

花井瑠可:ビストロ・ルカの美貌のオーナー、実はゲイ。 
花井瑠偉:心臓病で亡くなった瑠可の弟。葉に似ていた。

有村 葉:19歳,父が病死。中卒で就職して以来ずっと不幸続き。

田畑 由麻:瑠可の幼馴染、産休に入る。
高橋健太郎:アルバイトの大学生。
大和:瑠可の元彼、ビストロの常連客。

・・作品の紹介文が、凄く哀れっぽい。
葉は自殺を決意。「最後の晩餐」の為に瑠可の店に入る、
 でも食べる前に栄養失調で失神、料理の支払いは所持金不足で出来ない。
 家賃延滞で大家に強制退去をされていた。

訳ありの葉を、瑠可は強引に住み込みのバイトとして雇い入れる。
最初は戸惑っていた葉は、瑠可の亡くなった弟の事を知り、
 受けた親切を無駄にしたくないと、瑠可の為に生きる=死ぬことを止めることにする。

瑠可は、店をのぞき込む痩せた葉が、ずっと気になっていた。
美味しい食べ物で太らせて、食べごろになった葉の心を手に入れる。

本当に死にたい人は、最後の晩餐を思いつかない。
葉は、心では諦めても、本能で「生きたい」と思っていたんだと思う。

ハピエン。



1

ボナペティ、葉くん・:*+.

ものすごく、ものすごーーく良かった。。

月村先生の作品を読むのは『ロマンス不全の僕たちは』『恋愛小説家は恋が不得意』に続き3作目なのですが、こちらの『ボナペティ!』が一番私好みでした。

とにかく不憫な葉が救われてくれ〜…!と願いながら読み、瑠可に保護され(←ちょっと表現おかしいですけど;)、体も心も文字通り救われていく様に、胸がじーんと震えました。

設定、キャラクター、月村先生の文体、木下けい子先生(←大好きです。。)のイラスト、文庫本のちょっと白っぽい?紙の色まで…全てが完全に調和していて、大切に大切に何度も読み返していきたい一作になりました。

なんといっても、受けの葉くん(の境遇)が本当に不憫で不憫で…
私自身は「その日の食費もない…」というほどの経験はしたことはないのですが。

「なんとかして稼がなきゃ!」と必死になっていた頃が自分にもあり、それを思い出して勝手に葉くんと重ねてしまい、ページ最初の方からうぐぐ…と涙を堪えながら読みました。

「ありがとう」よりも先に、いつも「ごめんなさい」が出てしまう葉くん。
幸せは勝手に転がり込んできたり、急になくなったり、自分ではどうしようもないもの、コントロールできないものだという思いから、幸せだと感じても、常にどこか不安に思ってしまう心。

そんな葉くんの考え方・心に、終盤で瑠可の言葉が新たな風を吹き込んでくれるシーン。

そうだよー!幸せは自分で選びとっていいんだよー!と、うるうるしながら一人ガクガク頷いていました。

そして年上ビストロシェフ瑠可の、さりげない気の配り方(行動も言葉選びも)の素晴らしさといったら…
大人で小粋でスマートで、読んでいて本当にうっとりしました。
これぞスパダリ様・:*+.

作品のタイトルどおり、瑠可の作る美味しい料理と、幸せな毎日を、これからもずっとずーっと”召し上がれ!”と葉くんに言いたい。

はぁ…甘く幸せなこの気分を噛み締めて、今夜は心地よく眠れそうです。

1

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