老いもせず、死にもしない。 そんな死神の恋―― 切なさが美しく心に響く、連作落語シリーズ。

年々彩々(表題作 デラシネの花~落語「寿限夢」より~)

nennen saisai

年年彩彩

年々彩々(表題作 デラシネの花~落語「寿限夢」より~)
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神106
  • 萌×234
  • 萌38
  • 中立8
  • しゅみじゃない14

--

レビュー数
27
得点
788
評価数
200
平均
4.1 / 5
神率
53%
著者
秀良子 

作家さんの新作発表
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媒体
漫画(コミック)
出版社
祥伝社
レーベル
on BLUE comics
発売日
価格
¥619(税抜)  
ISBN
9784396783389

あらすじ

【金魚すくい】
怠け者の与平と彼に取り憑く貧乏神。
二人はいつの間にか夫婦のような間柄になるが……
~落語「貧乏神」より~

【デラシネの花】
長寿を願い名付けられた寿限無(中略)長助さんは
幕末をむかえ、文明開化の音を聞き、二つの大戦を生き抜いて現代を生きていた。
そんな孤独に生きる彼の心の拠り所は、昔みた“死神”だった。
~落語「寿限無」より~

落語シリーズ二作ほか、短編一編&描き下ろし収録!

表題作年々彩々(表題作 デラシネの花~落語「寿限夢」より~)

ホスト 寿限無(中略)長助 200歳くらい
貧乏神から転職した死神

同時収録作品金魚すくい~落語「貧乏神」より~

怠け者の与平
貧乏神

同時収録作品小向家の事情

その他の収録作品

  • 描き下ろし(デラシネの花)
  • カバー下表紙1【表】:キャラクターも登場のあとがきマンガ
  • カバー下表紙4【裏】:裏話[文字のみ]

レビュー投稿数27

こんな神様なら、友達になりたいわっ!

最初に、秀良子先生〜大ファンです。
じんわり〜心に染みる、ストーリーが何度も読み返す理由ですね。
今回も、お気に入りの1つを再読しました。

本当に、こんな神様いるなら友達になりたいくらいだわ。

「金魚すくい」
気は良くてやんわり穏やかな、まったく生活能力ゼロの与平。
世に言う、ヒモ体質なダメ男。
そんな所に、やってきた貧乏神。
ヒモ体質な与平に、貧乏神様〜つかまったね。
夫婦の様な生活を送るが〜残念な与平さん、今回も、貧乏神にすら逃げられます。
学ぶことの無い与平さん。
けど、相手の喜ぶ事はしたいんだね。
金魚を貧乏神にプレゼント。

健気な貧乏神が美しくも〜儚げなでした。
最後に、与平さん〜死神となった貧乏神に、看取って貰えて良かったね。

貧乏神から、転職して死神になった所は、面白かったYO!!!

「デラシスの花」
永遠の生命を持つもの同士〜これからも、永遠に愛のある日々を!

この作品はネタバレ無しで、オススメしたい。

時は経っても、死神は〜洗濯してる所が笑える(笑)

この作品で、死神さんのファンになりました!

0

萌える落語の世界

同じ楽譜でもタクトを振る人によって、演奏にそれぞれの指揮者の色が出るのと同じように、落語も語る落語家の色が出ますね。
落語を元ネタにしたこちらの作品集。
秀先生の色が存分に味わえます。

【金魚すくい】 萌2
怠け者で女房に逃げられてばかりいる与平と、与平の家に住み着いている貧乏神。
ベースは落語の『貧乏神』に準えて、ディテールで秀先生節を効かせてきます。
本家では出て行く貧乏神に「辰っつぁんとこへ行け」というオチですが、この作品では貧乏神の深い愛情を感じられる展開になってました。
最後の一言に、ビンちゃんの健気さが沁みる作品です。

【デラシネの花】(前中後編) 萌2
「デラシネ」はフランス語で「根なし草」。
大層な名前のせいで病気もせず、年も取らず、生きながらえてきた寿限無と死神。
元々は長い名前のせいで、親父に殴られて医者に連れて行っても、医者と親が名前を言い合っているうちにこぶが治ってしまうほど時間がかかったとか、一気名前呼ぼうとした老人が息付きできずに…とか、「呼ぶのに時間がかかりすぎるほど長すぎる名前」というのがオチですが、前出の死神にジョブチェンジしたビンちゃんも登場して、不老不死の話になってました。
死ぬことも老いることもないせいで、誰かと添い遂げることも、ひとつところに居ることも出来ずに200年生きてきた寿限無が、ビンちゃんと出会って、誰かとずっと一緒にいられるしあわせを知る話。
末長くしあわせに過ごしてほしいものです。

【小向井家の事情】 萌2
夫夫の家の子の話。
市役所に勤めるお父さんと専業主夫の蓮司の関係が子供目線で綴られています。
学校の性教育、こっそり覗き見た父親と蓮司の夜のこと。
小さい頃からの刷り込みのせいか、「蛙の子は蛙」なのか、ラストが楽しい。

描き下ろしでは、死神と一緒に暮らすようになって、「生きていても意味がない」と思っていた寿限無が変わった様子が見られました。

秀さんの特徴として「発想力の妙」があると思うのですが、この作品集でも存分に発揮されていました。
切なくて、やがて萌えるBL哉。

1

長く生きる自分に寄り添ってくれる人

◆金魚すくい
 短かったけれど、とても心地良い余韻の残った作品でした。怠け者の与平は本当に働かなくてどうしようもないけれど、突然現れた貧乏神のことも邪険にせず、なんだかんだずっと一緒にいてくれて。人に借金してまで無駄遣いする彼にはなかなか同情しにくいかもしれませんが、貧乏神に金魚を買ってきてくれたその優しさに、心の温かさは本物なんだなと感じました。

◆小向家の事情
 貧乏神〜死神の話とは打って変わって、現代的な家庭の物語。『STAYGOLD』に近い雰囲気がありました。ゲイの父親を持つ少年の、父親の恋人への複雑な気持ち。なんで母親がいないの?という疑問はずっと昔に通り越しているけれど、父親が抱かれているのを見て、何とも言えない気持ちになるのは当然ですね。最後に自分も男の恋人を連れてきた彼ですが、それは父親達の罪なのではなく、彼の立派な自我の確立だと思っています。

0

金魚へのお礼が心に残った

金魚を買ってきてくれたから、買ってきたのが金魚だったから、家を出ることを思いきれたのだと思うのです
寂しがりやを置いていくのに生き物だったのが都合良かったと思います
そして、思い切って転職したから、このダメな男の最期を見取れたのですね
ダメな男って本当にダメです
こうして置いて行って最期迎えに来るのが憎まずに愛するたった一つの方法だった気すらします
お礼の言葉について何度も思い出して考えてしまいました

寿限無の長助さんは真っ当に生きて妻や子、孫らを愛して暮らしたのに死ねないというただ一点だけで1人根無し草となって不幸に生き続けていた
そんなところに死神に出会えて縋ったお話
長助の前から姿を消した期間に死を免れる方法を調べてきたのでしょうか
長助さん時代を超えてモテるイケメンだったのはラッキーだったんじゃないでしょうか
普通の人がただ命の蝋燭だけ長く持っても迷惑な話って(そうかも…)って心から頷けました

0

落語に明るくなくとも

作者さん買いしている秀良子さんの作品。
BLはもう全部読んでしまいました。
こちらが最後に手を出した作品。落語、和服、時代設定…あまり落語を知らない自分にとって、とっつきにくいテーマではありました。
寿限無くらいはなんとなく知ってる程度の知識。

しかーし!無問題でした。
じんわり切なく、暖かく、余韻を残すお話です。
BLなんだけど、たかが漫画なんだけど、人生においての何か教訓めいたものを感じられるお話が私は好きです。
単にエロいものも好きだけど、やっぱりお話のその後に想いを馳せられるものが神作品じゃないかと思っています。

0

デラシネ/根無し草

秀良子先生の作品が好き過ぎて偏っている自覚のあるレビューです。

落語が元ネタの「金魚すくい」(1話)、「デラシネの花」(3話)に繋がりがあって、ファンタジーではない別の作品「小向家の事情」(1話)も収録されています。

レビューで何度か書いてますが、やはり秀良子先生の作品は寂しさを抱えてるんですよね。露骨なお涙頂戴ではなく誰でも持ってそうな寂しさ。
寂しさを抱えながらもハッピーエンド、というのが私の見方なのですが、この単行本だけはどうも読後感が辛くて辛くてあまり読み返せません。
面白く無くて読み返さないのとは訳が違うので神評価です。

2

落語がらみコミックの秀作です。

秀さんの作品で一番好きなのがこの「年々彩々」。

上方落語好きの私はもともと枝雀師匠の「貧乏神」もとっても好きなのですが、女房のようになってしまうビンちゃんとの間に「恋愛」を足してこんなに切なく仕上げるなんて! ほんとに天才だなぁと思いました。色っぽいし。

そして長生きの「寿限無」に死ねない悲しみを抱えるバンパイヤものの味付けを加えるという発想もまた天才的。現代では夜の世界に生きてる…なんて設定も絶妙だし、死神とビンちゃんを絡めるあたりも脱帽。

キュンとしたり、切なくなったり、ジーンとしたりしながら「秀さん天才!」と唸りつつ何度も読み返しています。
私が、BL読みじゃない人にも折を見てはおすすめしている本たちの中の代表的な一冊です。

3

落語はよく知らないけれど、ガシガシと涙腺をやられます

秀良子さんは私の中でとても神率の高い作家様なので好きな作品はたくさんあるのですが、本作はその中でも特にお気に入りの作品。
強く長く心に残り続けるような神中の神作品です。
貧乏神ビンちゃんのダメンズウォーカーっぷりに乾いた笑いをこぼしつつ、デラシネ(根無し草)の孤独感と心の拠り所(救い)を描いたストーリーにガシガシと涙腺をやられます。



落語をベースにした「金魚すくい」と「デラシネの花」は、2人の根無し草のお話。
「根無し草に花は咲かない」と、かの経営の神様(松下幸之助氏)は仰っているわけだが、さてさて「デラシネの花」とはなんぞ?と。
この洒落のきいたタイトルに惹きつけられて読み始めてみれば、これがあとでグッと効いてくるキーワードだったことに気付かされる。
秀良子さんの描くお話にはいつも素敵なアンサーがあるのだ。

怠け者で貧乏神にすら見放されて独りぼっちになった「金魚すくい」の与平が最期にポツリと漏らす「さみしいなぁ…」
何百年も死ねずに独りで生きてきた「デラシネの花」の長助が死神に懇願する「傍にいてくれよ なぁ… 頼むよ…」
孤独の限界点を超えた2人の主人公が口にする言葉の先にある結末の差こそが、秀良子さんの提示するアンサーなのだと思う。
同じ根無し草でも、長助のように掴むべきものをしっかりと掴み自力で根を生やすことが出来ればいつか「花」は咲くのだろう。
だけど、「さみしいなぁ」と呟くことしかできなかった与平は根無しのまま死んでいく。

「デラシネの花」の対比として描かれている「金魚すくい」には教訓が詰まっている。
与平はビンちゃんに喜んでもらいたくて買ってきた2匹の金魚をビンちゃんが愛想を尽かして出て行った後も大切に育てているんだけど、そのうち1匹いなくなり、やがて残りの1匹もいなくなって…
一つの桶の中で飼っていた2匹の金魚は与平の理想の無意識の現れだったのだろうと思う。
だけど怠け者の与平は理想を眺めているしか出来なかった。
理想と現実のギャップを埋められないまま、公園でボンヤリとよその母娘を眺めている与平の視線が哀しい。
結局怠け者の与平が掴めた救いは、死ぬ瞬間のあの一瞬だけ。
与平の最期に再び現れて、金魚のお礼を言うビンちゃんの心を思うとやるせなさがこみ上げる。

この落語シリーズは、一つ一つは与平と長助の話なのだけど、二つが合わさるとお話の主人公がビンちゃんになるところもまた面白い。
「神様」という存在だったビンちゃんが一気に人間臭くなる。
与平を心にずっと住み着かせたままでいるビンちゃんが切ない。
長助と一緒に生きていくことにしたみたいだけど、ダメンズウォーカービンちゃんは果たして無事幸せになれるのか?!
「金魚すくい」の頃のビンちゃんが端々にデジャブる描き下ろしの長助との生活に一抹の不安が拭えません><
頑張れビンちゃん!!



タイトルの「年々彩々」というのは、禅語の「年年歳歳花相似 歳歳年年人不同(年々歳々花相似たり 歳々年々人同じからず)」をもじってあるのだと思いますが、「諸行無常の世界に彩りを添えられるかはその人の心次第」というふうに解釈しています。

最後にひとつ入っている現代モノの短編は、とても秀良子さんらしいクスリと笑えるオチ付きでほっこりしました。

【電子】レンタ版:修正◯、カバー下×、裏表紙×

6

魅力的な貧乏神

切なさが胸に響く、落語BLシリーズです。
落語は詳しくないけど、面白くて世界観に引き込まれて、一気に読んでしまいます。貧乏神や死神(同一人物)が、可愛くて魅力的で萌えます。

『金魚すくい』
貧乏神に働けと言われるほど、ぐうたらな与平。貧乏神に内職させる最低な男だけど、貧乏神が喜ぶかと思って金魚をプレゼントする優しい一面もあります。そして、とうとう貧乏神にも見放されて…。
月日が経ち、自分の死期を知って、一人は寂しいと呟く与平。そんな与平の前に現れたのは、死神の資格を取った貧乏神でした。
待ち望んだ再会が、最後の逢瀬になってしまった事実に切なくなります。

『デラシネの花』
死なない男と死神(前作と同じ、貧乏神から死神になったびんちゃんです)の話になります。
死なないことで200年孤独に生きてきた男が、ずっと探していた死神。やっと死神を見つけて、死にたいと懇願するのです。
死ぬことは叶わなかったけど、そこから始まる、おかしな付き合い。おまけに、会うたびに感じる、死神への愛しい想いと執着に戸惑います。
そして、とうとう死ぬ時がやってくるのですが…。
2人の最後の望みと、ハッピーエンドが良かったです。

人間味あふれる性格と黒髪長髪の美人な容姿で、死神のびんちゃんの魅力がキラリと光る、そんな1冊です。

4

食う寝るところに住むところ

一冊通してとてもコンセプチュアルで、秀先生は落語というテーマをこんな風に料理できるのか…!と、一話目を読み終わってすぐ次のお話が楽しみになる、読んでいてワクワクする本でした。
だめんずうぉーかーなビンちゃん、本当にかわいかったです。
「金魚すくい」では、だめんずな攻めってひとりにすると実は淡々と生きのびていくんだよな…という真理にも気付きつつ(でも受けの攻めへの献身を楽しみたいところもあるので、BL的には必要悪ですね)、ラストはやっぱりビンちゃんの健気さに切なくなりました。

また、「じゅげむ」のBLアレンジの発想が本当に面白くて…!
ちょっぴりコミカルにも描かれつつ、何度も投げやりになりながら時代を見つめてきた寿くんが切なかったです。
一番ドキリとしたのはやはり今際の際にビンちゃんがかの有名な名前を読み上げるシーンだったのですが、その中で不意にスッと切り取られる、「食う寝るところに住むところ」という一節となんでもない街の風景の挿絵になぜかすごくすごくぐっときて涙腺が緩んでしまいました。こういう演出は、やはり流石だと思いました…。

ラストは暖かい幸せもいっぱいで、時々不意に読み返したくなる素敵な一冊です。ありがとうございました。

3

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