ハッピーエンドアパートメント

happy end apartment

ハッピーエンドアパートメント
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神8
  • 萌×28
  • 萌6
  • 中立1
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
13
得点
91
評価数
23
平均
4 / 5
神率
34.8%
著者
えすとえむ 

作家さんの新作発表
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媒体
漫画(コミック)
出版社
リブレ
レーベル
シトロンコミックス
発売日
価格
¥638(税抜)  
ISBN
9784862639783

あらすじ

同棲相手に追い出されたルカは部屋探しへ。入居募集の張り紙を見つけ行ってみると部屋は空いておらず大家が「俺と一緒に住まないか?」と誘ってきた。超不審だが背に腹は変えられず住むことを決める。さらにそのアパートは奇妙な住人ばかりで・・・。
(出版社より)

表題作ハッピーエンドアパートメント

それぞれのアパートの住人
それぞれのアパートの住人

その他の収録作品

  • PROLOGUE
  • chapter1 ディノとサルバドール
  • EXTRA ハビとルカ
  • chapter2 ノエと双子
  • chapter3 マティアスとペペ
  • chapter4 ホセとエヴァ
  • chapter5 ハビとルカそしてルカ
  • Anoter Prologue

レビュー投稿数13

何度でもいうけど

絵が素晴らしい。

えすとえむさんの作品って、とにかく絵が素晴らしい。
画面構成が素晴らしい。
そして今回は、ハッピーエンドという名のアパートを舞台にした、アパートの住人達をモデルにしたお話。

小説家志望のルカは、編集者にハッピーエンドの話を書いてこいといわれますが、恋人に家を追い出され、住むところもなくハッピーエンドどころではありません。
そんなとき、偶然目についた入居者募集の張り紙煮、電話をして部屋を見に行くと、、

1話づつは、ルカの創作なのでしょうか。
雑誌掲載時には、単独でも楽しめる洒落た読み切り短編でした。
コミックスでは最後に、ルカとハビとルカのお話。
ここまで1冊にまとまって、全体を通して読むことで作品としてのグレードがグッと高まります。

それにしても、ホントに絵がいいなぁ。
西欧人はちゃんと胸板が厚かったり、毛深かったり、眼窩がくぼんでいたりして、多分日本人の双子は胸も体毛も薄くて、体臭すら薄そうな感じで。
絵が、いいなぁ。

4

エロスとはなにか

舞台は、幸せ通りのつきあたりに建つアパートメント。
そこに住む人たちの恋の話ですが、住人の数だけ人生があり、恋があり。
みんなゲイでいいじゃない!(笑)
実際のできごとなのか、作家の想像なのかわからないところもまた、じんわり余韻が残るところです。
どれもヨーロッパの短編映画のような味わいで、素朴で気負ってないのにおしゃれだよ。
見事に醸し出すヨーロッパ感。嘘くささがまったくなくて、えすとえむワールドには毎回感動するってもんです。
かつての恋人との出会いをラストにもってきているところも、なんとも憎い演出で、この二人にどんな恋が続いていたのかどんな風に終わったのか知りたい!と思わせる巧妙さ。さすがでございます。
漫画や小説は、あくまでもその人の人生を切り取ったごく一部のお話…いや、実在しないんだけどさ、よくそういう風に思うんですよね。
この作品は特にそれを強く感じてしまって、いつまでも余情にひたってしまいました。
そして濡れ場がたくさんある漫画よりもよっぽどエロさがある。
今やえすとえむさんはそんな境地にいらっしゃいますね。

3

良質なハッピーエンドが浴びるほど読める作品

ハッピーエンドが書けない小説家が主人公で、
スペイン語でハッピーエンドという名前のゲイマンションを舞台にしたオムニバス5編。

「ハッピーエンドだって?見た事ないんだ 書けっこない」
小説家志望のルカはそう言って苦しむけれど、
これだけ緩急取り混ぜたいろんなハッピーエンドをまとめ上げるえすとえむさんは
ハッピーエンドの達人ですよね。
ラストはうっかり号泣してしまいました。
部屋が空いてない事情ってそういうことだったんですね。

いつもクライマックスでの流麗な連続見せゴマがテクニカルで感心してしまいます。






2

虚構と現実の区別はもはや無意味

家を見たくて散歩をしている節があります。
単純に建築物が好きというのもあるけれど、妄想空想の糧としての家見物がたまりません。
えすとえむさんもあとがきで書かれていますが、「見る」のが好きであって「覗きたい」わけではないのですが、無数の窓の中に自分と同じように生活をしている人たちがいて、いろいろなことに悩み、泣き、怒ったり笑ったりしていると思うとわくわくを通り越してぞくぞくします。
選んだ電気の色がウォーム系か、クール系か。カーテンの模様、注文住宅なら細かい造作まで、家や窓は中にいる人たちの人となりや理想の暮らしに彩られていて、合法的に中に入れる渡辺篤史が羨ましい。

前置きが長くなりましたが、えすとえむさんの「ハッピーエンドアパートメント」です。読むのは今回3回目。異国の独特の空気もいい感じで大好きです。

ストーリーテラーのルカが恋人にフラれて家も追い出されたところから始まります。
ルカは小説家志望ながら出版社が望む「ハッピーエンド」が書けません。作品としてなら知っているハッピーエンドを、自分の人生で感じたことがない。そんなルカの新しい住まい、通称ファナル・フェリス(ハッピーエンド)アパートメントで描く住人たちの話…。

ch.1はディノとサルバドール
ファッションデザイナーのディノとアーティストのサルバドール。3年前から全裸で暮らすようになったせいで外にも出ないサルバドールに不満を抱きつつも、「いつか」元に戻るのを待つディーノ。
この話、すごく好きです。全裸で暮らすようになった理由も、ディーノが3年前にプレゼントしたジャケットのポケットに忍ばせた物の正体も、相手を想う気持ちが強いからこそ。
自分がディーノの立場ならここまで辛抱できるだろうかと考えただけで、ディーノの愛の深さが分かります。

ch.2はノエと双子
何でも欲しいものはすぐに選べるのに、双子を愛したときに「どちらか」を選べなかったノエ。
同じ人を好きになってしまう双子にとってもノエの存在は有り難いものだったけれど…。
双子と言っても性格は違うだろうし、完全に同じではないのに選べない。その感覚がよく分からなかったので理解しきれなかった短編。「どちらかを選ぶ」のではなく「両方を選ぶ」。ずるいのか深いのか、どっちだろう。

ch.3はマティアスとぺぺ
変声期になって合唱団を抜けなければならないことが嫌で仕方ないマティアス少年と人形作家の老人ぺぺ。成長という避けて通れない道に抗おうとする気持ちと今は亡き母親への思いが複雑に入り混じった少年と老人の交流が、老人の過去の記憶を呼び覚まします。
大人になるのはふつうのこと。親にとっては嬉しいものだと感じられたマティアス少年はもうぺぺのところに行くことはないかもしれません。ラストシーンはまさにおとぎ話でした。

ch.4はホセとエヴァ
耳の不自由なホセの部屋の下には、エヴァとエヴァのお情けでどんどん増えた同居人たちが毎日大騒ぎしながら暮らしています。聞こえない人間にとっては騒音も静寂も同じだけれど、聞こえる人間が感じる静寂は孤独。聞こえなくても見える、見せてあげたい。押しかけられるばかりのエヴァが押しかけていくというのも感慨深い作品でした。

最後にch.5としてハビとルカ そしてルカ
大家のハビとルカの話。ハビとの暮らしの居心地の良さにハビを好きになりそうなルカ。だけど何かが警鐘を鳴らします。2組ずつある食器。枕元に積まれた読みかけのハッピーエンドの小説の山。一枚も残っていない前の恋人の写真。
その理由を知ったルカは、ハビにどんなハッピーエンドを用意することができるのか…。

それぞれの話はルカの創作であって、現実に存在する彼らとは異なるのだと思います。誰もがハッピーエンドを迎えるわけでもないし、ドラマティックな日々を送っているわけでもない。
ノエはもしかしたら親戚の双子を引き取っているだけかもしれないし、ぺぺにも遠い昔の年下の恋人なんていなかったかもしれない。
だけどこれは全部ルカが住人たちを観察して紡ぎ出したストーリー。その中ではどんなハッピーエンドも許されるのです。
でもハビは?目の前にいるハビに惹かれる自分とのハッピーエンドを考えるのは、これだけハッピーエンドを描くことができるようになった今のルカには容易い。でも現実にはまだ今はいない恋人のルカに恋をしたままのハビをどうやってハッピーエンドに導けるのか。
難しい。
もしかしたら亡くなった恋人の存在もルカが考えたフィクションなのかもしれません。
どこからが本当で、どこからが創作なのか。
考えれば考えるほど難しいけれど、きっとただ楽しめばいいのです。ルカの創作だとしても現実だとしても、そこにたくさんのハッピーエンドがあると思うだけでしあわせな気持ちになれる。
知らない家の窓の中の生活を自由に想像するのと同じ。裏付けなんて取れないのです。

描き下ろしのanother prologueの存在が気になってしまいますが。
亡くなったルカとハビの出会いの話。ルカは本当に存在したのか。それともこれも作家志望の方のルカの創作なのか。

謎は謎のまま。
だけどきっとしあわせはそこにあるのです。

1

幸せ通り

えすとえむ先生の中でもかなり好きな作品。
アパートメントで暮らす住人たちを描くオムニバスです。
物語がテーマになっています。どこまでが作品の中のノンフィクションで、どこからがフィクションかは分かりませんが、どこまでも皆が幸せであるといいのにと願う作品です。読後感も大変いい。ただ完全なる幸せに包まれるというよりも、少しの寂しさが残ります。

映画っぽい、作品のことを思えば小説っぽいというのが正しい。けどカット割りとかはしっかり漫画っぽい。漫画がお上手だなぁと思う。ストーリーと絵のマッチングが絶妙です。

0

それぞれのドアの向こうに、それぞれのドラマがある。

CALLE FELIZ(カジェ・フェリス/西語)=Happy Streetの突き当たりにあるアパートメント。
売れない小説家のルカは一緒に住んでいた恋人に部屋を追い出されて、
このアパートを見に来る。
部屋はもう満室になっていたのに、何故か大家のハビ(DJ)に強く請われて、
彼と同居することに…

ルカは、編集者に「ハッピーエンドの物語」を書くように言われるが、
でも自分がハッピーじゃないのにそんなもの書けないと言う。
するとハビは「アパートの住人達を観察して、ハッピーエンドをでっち上げるんだ」という。

ルカが、アパートのそれぞれの住人部屋を覗き見たのか?あるいは彼の創作なのか?
オムニバス形式で、住人達の恋が描かれていきます。

・引きこもって3年、全裸で暮す男の話。
・双子のどちらかを選ぶなんて出来ない、と3人で暮す男。
・人形師(勿論男)の恋。
・耳の聞こえない青年とオカマの恋。
そして、「ハビとルカ」、更には「ハビとルカ、そしてルカ」…

どれも、洒落た映画を見ているような独特の味わいがある。
勿論、ハッピーエンド。
読んでいて深く心に幸せが沁みて来るような住人達の恋。
Hシーンがなくても、十分に色っぽくて満足を与えてもらえる一冊です。

カバーを外すと、アパートの見取り図が描いてある。
洗濯物が干してある様子が、これまた可愛い♡

4

ハッピーエンドは人生の終わりじゃない

◆あらすじ◆

ハッピーエンドの作品が書けず、スランプに陥っている小説家(の卵)のルカ。
恋人に部屋を追い出され、新しい部屋を探すうちに、或るアパートメントの家主でDJのハビに誘われ、彼の部屋に同居することになります。
ハビの勧めで、ルカは、アパートメントの住人たちをモデルにハッピーエンドのストーリーを書き始め――
ルカが綴った各部屋の住人たち(全員ホモ!)の恋模様を、オムニバス形式で描いた作品です。

◆レビュー◆

物語の舞台はスペイン?手掛かりはこのアパートメントがある場所「カジェ・フェリス(幸せ通り)」というスペイン語だけなんですが、この架空の固有名詞ひとつで、もうそこがスペインにしか見えなくなるところが、えすとえむさんの絵のスペイン力、いや説得力。
何なんでしょうね、この、誌面から漂ってくる南欧の乾いた空気。
毎度のことですが、まずはこのエキゾチックで個性的な絵に魅了されます。

さて、この作品には、5つのハッピーエンドの物語が描かれています。
何故か全裸で暮らしている彫刻家、彼が服を着ることをやめた理由とは?
成長して少年の頃の美しさを失うことを恐れ、去って行った恋人の人形(少年の姿の彼)と暮らす人形作家、
双子を愛してしまい、どちらかを選ぶことができずに、両方と暮らす男、
耳が聴こえることの煩わしさと幸せを知った女装ゲイの恋…
誰もが一度は直面するような、悩み、苦しみ、そしてそれらを克服する人の姿が、ダイナミックにデフォルメされた形で描かれた物語は、どれもユニークで惹きつけられます。
人の数だけ幸せのカタチ。基本ほのぼのですが、ちょっぴりビターな後味も感じさせるお話です。

そして、最後にルカとハビのハッピーエンド。
実はハビがルカを強引に同居に誘ったのは、彼の死んだ恋人・ルカにそっくりな、ルカの声に惹かれたから。ハビがいまだに死んだルカを忘れられないでいることが分かり、傷心のルカは部屋を出ていきます。
しかし、まだハビのハッピーエンドを書いていなかったことを思い出し、ハビの部屋に戻るルカ。そして、ルカはハビに告白するのですが――
これは、この物語の中での現実なんでしょうか?それとも、部屋へ戻ったのはルカの小説の中の出来事?
あるいは二人が同居を始めたことすら、ルカの創作なのか?
描き下ろしの「Another Prologue」には、ハビと第三のルカ(この作品の中で「ルカ」は、ハビが惹かれる男を意味する記号)との出会いが描かれています。
タイトルから察するに、小説を書いていた第二のルカとは、どうやら別れたのかもしれません。(あるいは、現実にはハビと第二のルカとの恋は始まりさえしなかったのかも…)

この描き下ろしを描いてしまうところが、いかにもえすとえむさんらしい。
そう言えば、5章で第二のルカがこう言ってましたっけ?
「(ハッピーエンド)は人生の終わりじゃない。第一章の終わりだ」
ハッピーエンドにも続きと終わりがあって、そしてまた新たな第二章が始まる。
「Another Prologue」には、まさにそんな、えすとえむ流の「ハッピーエンド」観が描かれている気がします。
「第二章も第三章もずっと」ハビと一緒にいたいと言っていた第二のルカ。彼の願いは叶わなかったことになりますが、時とともにうつろう人の心まで、ハッピーエンドで縛ることはできません。
ハッピーエンドを描きつつ、ハッピーエンドものに対するささやかなレジスタンスも感じさせる…この少し尖った感じが、とても好きな作品です。
「ハリウッド映画みたいな陳腐な」ハッピーエンドが苦手だと言う作家・ルカは、もしかするとえすとえむさんの分身なのかも――

4

素敵なハッピーエンド。

難解そう…わたしに分かるかな?
えすとえむさんの本は気になっていながら、そんな理由で手を出さずにいました。
でもこちらの本、タイトルには “ハッピーエンド” の文字があるし、
表紙は、素敵な日常を切り取ったような絵。
これなら大丈夫かなぁと読んでみました。

この本しか読んでいないので、
これから読んで正解だったのかは分からないですが、
手にしてよかったなぁと素直に思える一冊でした。

細やかに説明してはいないので、
多少自分で思い巡らして話を補完した方が楽しめるタイプの読み物ではありますが、
そこに努力はいらないかと。
すばらしい絵に自然と引き込まれ、自然と想像してしまいます。


一軒のアパートメント。
無機質なドアを開けると、そこには住人たちのストーリーがある。


登場人物が多く、ひとりひとりに割かれたページやカットは少ないですが、
それぞれに強い印象と余韻が残ります。

その部屋で過ごしてきた長い時間があり、
抱えた想いがあり、
だからこそのハッピーエンドがある。

外国映画のようで、絵本のようでもある、この本。
でもこの形が一番よかったんじゃないかと、
ペン画きの、色のない美しい絵の数々を見て思いました。


終わり、じゃないエンドが素敵です。

3

“ハッピーエンド至上主義”に対するアンチテーゼ

なんて絶妙な皮肉を効かせた作品なんだろうか。
「いくつもの素敵なハッピーエンドが詰まった短編集」としても読めるところがなんとも巧妙で、読み終えて思わず唸ってしまった1冊。

「お前が書くような辛気臭い話は受けないからハッピーエンドを書け」と編集から言われた作家〔ルカ〕が、同棲していた恋人にフラれ部屋を追い出されてやってきたのは、フェリス通り(スペイン語で“幸せ通り”の意)の突き当たりに位置することから「フィナル フェリス」(=ハッピーエンド)と呼ばれているアパート。
ルカはそこで出会った大家の〔ハビ〕から、このアパートの住人達の日常を小説にしてハッピーエンドをでっち上げてみたらどうかと提案されます。

そして、ルカから見た住人達の日常が本編として順番に描かれていきます。

・chapter1
3年間一度も部屋から出ず全裸で生活する男と、服を作るのが仕事のファッションデザイナーの話。

・chapter2
どちらかを選べなかった男と、どちらかを選ばれたくなかった双子の話。

・chapter3
「少年」の人形が得意な人形作家と、成長を恐れる少年の話。

・chapter4
耳が聞こえず無音の中で独り暮らす男と、同居人との騒々しい生活にうんざりしている男の話。

計算されすぎのカップリングと、映画やおとぎ話のようにドラマティックなストーリー展開。
ラストはもちろんすべてこの上ないハッピーエンド。
ここまで読み終わった頃には、読者の感想はきっと二分されているんではないかな。
いいお話だわと疑いなく読める人と、ん?と戸惑う人。
後者の私は色んな引っ掛かりを感じて首を傾げながら読んでおりました。

・chapter5
ハビとルカとハビの過去の話。
この章でルカがあるキーワードをモノローグ内で発してくれたおかげで、それまでの4編で私が感じていた引っ掛かりの正体と、えすとえむさんが何を描こうとされているのかがはっきりと掴めました。
一番最後のルカのセリフなんて、ほとんど答えのようなもんですね。

私はこの作品は、「いくつもの素敵なハッピーエンドが詰まった短編集」なんかではなく、“ハッピーエンド至上主義”に対するえすとえむ流のアンチテーゼだと思っています。
だから最後に『Another Prologue』と題されたエピローグがあるのだと。

3

どこまでがルカの創作か、想像するのも楽しい

 最初に登場する主人公・ルカがこの作品を書き上げたという設定がまず素敵だなと。同じアパートに住む住人達それぞれのハッピーエンド。無理矢理ハピエンに持ってかれたような感覚もなく、どれも良質な余韻の残る話でした。

◆ノエと双子
 双子のキャラクターに惹かれがちな自覚はあります。同じ人を好きになってしまう双子のもどかしい性。でも、そんな彼らを2人まとめて受け入れてくれる人が現れた。どちらか一方に愛情が偏ることなく、2人とも平等に好きだというノエ。双子は彼を試すけれど、彼はけっして一方を放っておく選択はしない。2人を同時にまったく平等に愛すことができるなんて信じがたいけれど、ノエのことは信じてみたいなと思いました。

◆マティアスとぺぺ
 変声期に悩む合唱団の少年・マティアスと、人形作家の老人・ぺぺの交流から始まります。子供と老人ですからBLには発展しない箸休め的な作品かと思いましたが、ぺぺはマティアスの姿からかつての恋人を思い出すんです。同じように変声に悩んでいた恋人。ぺぺが大事に持つ人形に込められた秘密。上質な絵本を読んでいるような、温かい気持ちになれました。マティアスとぺぺ、両方に希望の持てる展開があり、ほっとしました。

◆ハビとルカ そしてルカ
 家なしだったルカを快く自分の部屋に住まわせてくれたハビの過去。声が恋人にそっくりだったから、という理由でルカを受け入れた彼。見た目じゃなくて声というところが、恋人を連想させるものならどんなものにも縋りたいという気持ちを感じさせて、なんとも切ないですよね。それでもいい、忘れられなくてもいいから、自分のことも考えてくれない?というルカの健気な告白が、とても印象的でした。ハビが過去ばかり振り返るのではなく、ルカとの未来を考えられるようになればいいなと思います。

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