2119 9 29

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  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神4
  • 萌×21
  • 萌0
  • 中立0
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
2
得点
24
評価数
5
平均
4.8 / 5
神率
80%
著者
凪良ゆう 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
丸山ハシシ 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
価格
ISBN
9784199011863

あらすじ

愛する人(ドール)を守り、心を捧げ、共に人生を歩みたい──‼
14歳で運命的な一目惚れをして以来、38歳になる今も、
初恋のドールに誓った恋心を手放せずにいたレストランシェフの阿部。
そんなある日、店の常連客に頼まれて、とある青年を一か月預かることに‼
一見チンピラのような風貌に隠れた、宝石のような紫の瞳に銀髪──
その青年・高嶺は、とうに製造も所有も禁じられた希少な“裏ドール”だった!?
ずっと粗雑に扱われ続け、人間に一切期待しなくなっていた高嶺。
つねに高嶺を尊重する阿部のことも最初は理解できずにいたけれど…!?
人間もドールも、心の中にある想いに変わりはない──
人間とアンドロイドが紡ぐ近未来の御伽噺、待望のスピンオフ‼

表題作2119 9 29

38歳→43歳、実家のレストランを手伝う二代目
常連客から預かった裏ドール

その他の収録作品

  • Taste of love

レビュー投稿数2

タイトル回収と本編ラストに、涙でページが滲む

ああ…!涙が溢れてきて感動止まらず、何からレビューを書けばいいのか…

レビュータイトルのとおり、ラストエピソードのタイトル回収に
涙が溢れて嗚咽が止まらなくなり、読み終えた今も呆然としています。

まっすぐ、一途な愛と献身を貫いた二人の物語。
特に主人公である「阿部ちん」の魅力がこれでもか!と
いろんな場面にぎゅぎゅっと詰まっていて、愛おしくてたまらなかった…

旧版は未読、こちらの新装版で初めて拝読しました。
『ショートケーキの苺にはさわらないで』のスピンオフ作であるこちら、
「ショートケーキ〜」で強烈な印象を残した脇キャラ・阿部ちんが
主人公となっています。

「ショートケーキ〜」の南里×シンの話が随所に出てきますし、
「ショートケーキ〜」を読んでいるか否かで本作の解像度にかなり違いが
出てくるかと思いますので、個人的には順番通り読むことをおすすめします。

まず!

阿部ちん!「ショートケーキ〜」でイメージしていたのと、
ずいぶんお顔のイメージが違うよ!?
と、表紙を見てびっくりしたのですが、ページを開いて読んで納得。

「このままだと死ぬ」と診断されて、阿部ちん、
本気でダイエット頑張ったんですね…!
料理屋の息子にとって、なかなか厳しい道のりだったと思う。えらい。

そして本編中では「眼鏡をとったら美少女に…」とはならなかったー的な
喩えが書かれていましたが、私から見た阿部ちんは誰よりも輝いていて格好良くて、男前でした。
阿部ちんは、というよりも、阿部ちんの「愛し方」なのかな…

最初から最後まで一貫して変わりなく、揺るぎなく、
優しさに溢れた愛をくれた人。

ダイエットのエピソード一つにも、何事にも真面目に取り組み、
決めたことは貫き通す”阿部ちんの阿部ちんらしさ”が
滲み出ているような気がします。


幼少期から始まり、美優という”運命のドール”との14歳での出会い、
そして38歳になる今、既に「一生童貞」の覚悟を決めているー

「〜である」という独特な口調が読んでいてなんだか癖になる、
愛すべきキャラ・阿部ちん。

序盤はそんな彼のキャラクターが十二分に伝わるエピソード満載、
どこかコミカルな雰囲気で進んでゆきます。
時折ふふっと小さな声を漏らしながら楽しんで読み…

店の常連客でありヤクザの組員でもある芝が、
突然高嶺を連れてきて彼を「預かって欲しい」と頼んできたことから、
阿部ちんとツンツン裏ドールとの奇妙な?同居生活が始まります。

これ!読み終えて全てを知った状態で振り返ると、
この時芝が言っていた「外せない用」とはどんなことだったのか、
どんな気持ち・考えで高嶺を阿部ちんに託そうとしたのかー

そんなことが頭をよぎってピンときたり、
人知れず苦労を重ねてきただろう芝のこれまでに思いを馳せて
胸がツキンと傷んだり。。
構成のうまさに舌を巻いてしまいます。

”いまいち信用ならない感”を匂わせておいての、
後半、ここぞ!という時の登場と大きな手助け。
興奮して思わず「芝さん…!」と小さく声が漏れました。

今までの何人もの”マスター”からの酷い扱いと戦場でのトラウマ、
また高嶺に素晴らしい思い出をくれた、彼にとっての唯一の「マスター」を
恋しく思う気持ち。

高嶺のこれまでの生き様が徐々に明らかになってゆくにつれ、
重苦しい痛みと人間の所業へのやるせなさが募り、辛い気持ちに。。

特に、阿部ちんと高嶺が二人で藤森(高嶺にとっての最上のマスター)に
会いに行く場面に、心が痛みました。

彼が家庭を持っていたーということよりもむしろ
ずっと辛かったのは、高嶺がきっと「愛」だと感じ信じていた
藤森の行動が全て、藤森にとっては大した意味を持たないものだった、
ということ。

藤森のもとを去る際、阿部ちんが問いかけた
「自分の娘に同じこと(肌にタトゥーを彫ること)ができるか」
という問いに対する彼の答えが、ナイフのように心に刺さり
心抉られました。

そんな藤森のところにいた時が、今までのマスターとの最上の時間で
最大の幸せだったなんて...( ; ; )

スピン元の「ショートケーキ〜」を読んだ際にも感じた
人間の身勝手さに対する怒りをここでも強く感じることとなり、
変えられない「搾取する側・される側」の関係性にやるせなさを覚えます。

そんな人間とドールの残酷で一方的な関係性が描かれる中、
阿部ちんと高嶺の間で育まれる愛は、キラキラ輝いていました。

ドールである高嶺の”心”をゆっくりと甘く溶かしてゆく、
阿部ちんの言葉と行動。

やがて心通わせ、このままいつまでも二人でー
と思った矢先に訪れたピンチには震えましたが、
まさかの「あの人」が…!という展開への驚きと感動、
ガツンときたよー。。

美優の言葉、行動にも泣けて泣けて仕方なかったし、
高嶺を守ろうと顔も体もぼこぼこに殴られ蹴られる阿部ちんに
自分も高嶺の気持ちになって「なんとかしなきゃ!」と焦燥感に駆られた、
忘れられない場面でした。

そして...

このボコボコ事件がなんとか収拾ついた後、
ラストに静かな悲しみと感動が待っていたなんて。

繰り返される「………うん、俺もだ」
この台詞、今もレビューを書いていて思い出すたび涙が出てきてしまう...

「ただ、そばにいたい」という願いを叶えるために、
信じられないほどの困難を乗り越え、不自由・不便さに耐え、
優しい愛を与えあって過ごした二人の物語。

涙で目元がぐしゃぐしゃになり、辛い気持ち、受け止めきれない気持ちも
正直まだあるけれど。。

ラストの「Taste of love」、鈍ちん阿部ちん(笑)と高嶺の嫉妬、
健気100%成分の魚介ラーメンのお話に救われました。
涙涙、だけでなく、笑って読み終えることができた幸せ。噛み締めたい...

読後の感情のままに書き散らしたレビューになりましたが;

スピン元作品と共に、何度も何度も大切に読み返したい…と思える一冊。
何一つ文句なし!の「神」作品でした。

0

阿部ちんさん、キミは男の中の男だよ

はーー……もう泣いちゃう。
好きな人のために身体を張って守り抜く一途なスピリッツ。人間とアンドロイドの種族を超えた温かい純愛にもう泣いちゃうしかなかったです。゚(゚´Д`゚)゚。

タイトルの意味なんかも最後に知ってしまうと、余計にウルッとなりました。
タイトルの数字の羅列は作中のとある言い伝えに係っているのですが、この伏線回収は見事な感動劇を演出しており、涙腺崩壊へと強制GOでした。

"感動"の言葉だけじゃ言い足りません。
揺さぶられるし、昂るし、切なくもあるし、幸福でもあるし、言い表したい感動表現がいっぱいあってまとまりきれません。
阿部と高嶺が最後に迎えるエンドに至るまでには色んな試練があって、彼らの出会いからこれまで生きてきた道すじ、裏ドールの置かれている無情な環境……そんな背景を抱えた2人が紡いでいく恋のストーリーにどっぷりでした。
とはいっても、元々阿部の恋愛対象はドールの"美優"で、14歳の頃からずっと恋焦がれてきた女体ドールでした。高嶺は男体の裏ドールなので阿部の恋愛対象とは違いますが、2人で同じ時間を過ごすうちに互いに好意を抱いていく自然体の惹かれ合いが最高に素敵です♪

「ショートケーキの苺にはさわらないで」の主人公2人も、かなり困難な環境下で結ばれた素敵カップルだけど、今作スピンオフの2人も負けていません^ ^
何といっても高嶺に恋する阿部の男っぷりが最高レベル!
阿部はイケメンでもなければスパダリでもありません。ドールをこよなく愛するドールオタクです。
ドールをモノ扱いする一部の心無い扱い方を嘆き、ドールに敬意をもって接する優しさが紳士。人間界では非モテカテゴリーなのが信じられないくらいです。
真の「男前」とは阿部のような男のことだと読めば絶っっっっ対分かるハズ!!
見た目は平凡だし、オタクだし、一人称は「俺氏」だし、ピュアチェリーだし(笑)……ちょっと冴えない男かも知れませんが、愛する高嶺を守り抜く行動は抜群にカッコ良いです。敵にボコボコにやられますが、それでも本当にカッコいい!!


ドールとの共生の世界観とは言っても、人間とドールとでは同じ立場や権利を与えられてるわけでもなく、むしろドールは人間に使役される"モノ"としての扱いです。そう考えると、両者の恋愛はある意味身分差の恋なのかも知れません。
ドールの人格や心に踏み込まないのがこの世界の観念。ドールに対する酷い扱いをする一部の心無い者たちの態度は嫌悪感しかないですが、阿部はずっとドールに対等で、それはドールにとっては普通じゃないことなんだけど、阿部のそうした寄り添いが高嶺の心を解していきます。

自分がアンドロイドであることに対して、どこか諦めというか…人間とは違うという線引きをしていた高嶺が阿部と同じ景色を見ようとし、そしてこれからも阿部と共に生きていきたいと思うようになる心境変化にグッときました。
2人の仲を引き裂くトラブルもありましたが、それすら純愛の証明にもなっており、幸福とはこういうものだと知るに繋がるラストが最高すぎて、涙ジョバジョバでした。


タイトルの意味、ラストの感動、全て味わって下さい。
人間とアンドロイドが奏でる高純度の純愛が沁みる素晴らしい物語でした。

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