さよなら、先生。

未完成

mikansei

未完成
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神225
  • 萌×264
  • 萌13
  • 中立14
  • しゅみじゃない21

--

レビュー数
44
得点
1434
評価数
337
平均
4.4 / 5
神率
66.8%
著者
凪良ゆう 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
草間さかえ 
媒体
小説
出版社
プランタン出版
レーベル
プラチナ文庫
発売日
価格
¥590(税抜)  
ISBN
9784829625675

あらすじ

教師の阿南が男とキスをするのを見た高校生の瀬名は、学校とは違う艶めいた表情を見せる彼に興味を持つ。
素っ気なくあしらわれても阿南の傍は居心地良く、瀬名は彼の部屋に通うようになる。
そして自覚した恋心。
がむしゃらに迫り阿南を抱くことはできたが、その心を手に入れたとは思えなかった。
「俺のこと好き?」懇願するような瀬名の問いに、いつも阿南の答えはなくて……。

文庫未収録の『Young Swallow』と書き下ろし『さなぎ』を加えた待望の新装版!!

表題作未完成

瀬名櫂人,17歳,親の離婚騒動で心が不安定な高校生
阿南珪,27歳,瀬名に興味を持たれる英語教師

同時収録作品young swallow

瀬名櫂人
阿南珪

同時収録作品さなぎ

瀬名櫂人
阿南珪

その他の収録作品

  • young swallow
  • さなぎ

レビュー投稿数44

生徒×先生の決定版かもしれない!!

数多くの生徒×先生ものがあると思いますが
これはもう…なんというか、
若さと愚かさと健気さがなんともうまく絡み合っていて、
素晴らしかったです!!!

付き合う女はとっかえひっかえで
誰も本気で好きになった事がない瀬名は
好きだから一緒にいたいとか
今すぐ会いたい衝動とかすべてわからず
仲間とも本音で話せないような学生生活でした。
両親の不仲って、いくら高校生でもしんどいというのに
サラッと付き合った女の子がそれをペラペラしゃべるとか…
本当に神経を疑いますわ。

自分勝手で思いやりを感じられない嫌な男が先生の性癖を偶然知り、
からかおうとしたら逆にやりこめられてしまう。
不愉快なのに先生の綺麗さと色気を意識して、
初めは意地でちょっかいを出していたのにいつしか本気に…。

先生の部屋へ出入りするようになって
近づけたかと思っても、生徒と先生の関係は崩せなくてもどかしい気持ち、
先生と関係のある男・大河内に嫉妬して敵わない悔しさ、
“男同士だから”“生徒と先生だから”
誰にも知られてはいけない事、
先生に彼氏だと認めてもらえない事、
全てが思い通りにいかなくて
先生だけいてくれたらそれでいいと思うのが若さです。


先生はただ同情で流されるままに体を繋げたわけじゃないし
しっかり自分を持っていて、
易々と体も心も受け渡したりしない。
そこに瀬名がのめり込む気持ちがとてもよくわかりました。
瀬名に、今だけの気持ちで突っ走ってはいけない、
お前には将来があるんだと説く姿は
さすが先生だな、というか…。
きっと先生だって本音じゃ瀬名が好きでたまらなくなってしまったというのに
大人だから、先生だからしなくてはいけない決断に
胸が痛みまくりでした!!!


「先生の髪を誰にも触られたくない」と思って
転校し、大学へ行かず美容師になることを目ざして
地道に頑張る姿…偉いよ……。
先生に差出人を書かずに働いている美容室のハガキを送るとか
なんか、健気!!!
先生本人が来てくれたわけではなかったけど、
それがきっかけで……再会できるようになるなんて!!!
もう勢いづいて読んでしまいました。
終わって欲しくない気持ちと
でも早く幸せな二人が読みたい気持ちがせめぎ合いましたw
後半の先生のちょいデレの破壊力ときたら!!!
瀬名も私も撃沈……w

先生に言われた、当時の数々の言葉が働いた事で胸に染みて、
「自分の傍らに阿南はいない。でも生活の全てに阿南がいる」
先生に会えなくても先生のことばかり考えるとか切なかった…。

会えても簡単に「今も好きだ!」「俺もだよ!」じゃなくて
それぞれの離れた5年という時間、自分だけの気持ちじゃいけない抑制と
それでも後悔はしたくないという展開に地団駄踏みたくなりました。
お互いまだ好きなのに───!!とw


ベタ甘々なその後を期待していたのですが
瀬名の大人になった姿がたまらなかったです!!!
予定が狂って楽しみにしていた旅行が
先生の生徒のトラブルでキャンセルになっても
「先生はそうだろうなって思ってたから」とか、
「一緒にいられるだけでいいんだ」とか
いい男になったもんだよ(泣)

でも先生はあまりにも違うその言動に戸惑って
そして時々高校の時のように拗ねたりする姿をみて
ちょっと安心してつい笑ってしまうなんて、カワイイ…。
瀬名にはまだ違う道だってあるのに、って思うのは当然だし
それでも瀬名が二人で生きていく方法をきちんと考えていたのが
愛ってすごいな…と思わされました。

草間さんのイラストの相乗効果でとても面白かったです!!!!
瀬名はかっこかわいいし、先生はセクスィー可愛いし(??)
改めて出版して下さって本当に感謝してます!!!
徐々にワンコっぽくなっていく瀬名も良かったですが
やはり高校時代の不甲斐ない自分に嫌気がさして
悩みまくるのが良かったです!
先生も大人の顔をちゃんと取り繕っているくせに
本当はしっかり好きだったっていうのが…ぎゅーん!!

ええい、神です!!!!!

19

さよなら、先生。

◆あらすじ◆

主人公は、17歳の高校生・瀬名櫂人(せな かいと)。
両親の不和で家庭崩壊、家に居場所をなくした瀬名は、大勢いるはずの友人たちにも悩みを打ち明けられず、自分を受け止めてくれる英語教師・阿南珪(あなん けい 27歳)のマンションを頻繁に訪ねるようになります。
やがて、ゲイである阿南に惹かれ始め、半ば強引に阿南と関係を持ちますが、恋人という関係を求める瀬名に、阿南は答えないまま。
近づきすぎては傷つけあう二人の関係の行方は――
自分の未熟さに気付きつつも大人になれない瀬名と、教師としての理性と一人の人間としての感情の間で揺れる阿南の、切ないラブストーリーです。

◆レビュー◆

読みはじめて驚いたのですが、表紙のイメージよりもかなり濃厚な読み味なんですね。
当初は白泉社から花丸文庫blackレーベルで出版されていた作品の新装版と知り、とても納得です。
ただ、エロ濃厚な一方で濡れ場以外の心理描写も細やかで、変な表現かもしれませんが、濡れ場を抜いてもセンシティブ作品として成立しそう。
新装版の表紙は、この作品のそういう一面を前に出した雰囲気。素敵です。

教師と生徒の禁断愛もの。
ただ、番外編を除き全て攻めの瀬名視点で書かれているため、「禁断愛」の部分を煽る感じではなく、未熟であるが故に愛すれば愛するほど自分も相手も傷つけてしまう瀬名のやるせない思いが切々と伝わってくる内容になっています。
教師である阿南の側も、教師と生徒という関係でいる時には瀬名を受け止める余裕を持っていたものが、その関係を逸脱してしまうと、次第に自分の感情をコントロールできなくなり、苦しみます。しかし、瀬名は未熟でそれを受け止められず、阿南を大切にしたいのに、どうしていいのかわからない・・・切ない。切ないです。

瀬名の眼を通して見る阿南がまた、とても魅力的で。
学校では生徒たちに慕われ、信頼されている阿南ですが、プライベートでは、大学時代からの恋人・大河内との関係を、大河内が結婚した今も引きずっていて…彼もまた心に苦しみを抱えていそうです。
でも作中ではそこに立ち入らず、ふんわりと匂わせる程度。それが余計に阿南をミステリアスで艶めかしい存在に見せている気がします。

瀬名に「口でして」とせがまれて、
「おまえ、俺にフ○ラさせようっていうのか」
と拒絶するかに見えた阿南が、おもむろにひざまずいてご奉仕!!な場面がイイ。
飲みほして舌を出し、「とびきり上等な娼婦みたいな笑み」で笑ってみせる阿南。
男性に使う形容ではないかもしれませんが、なんてコケティッシュ!その上、危なげで、男なのに儚げで。
高校生の瀬名も未熟で不安定なのですが、教師である阿南もまた、いつも教師の顔ではいられない男。
実は瀬名以上に苦しんでいる阿南の姿が、とても人間臭く、魅惑的に描写されていて、気が付くと瀬名に目線を重ねて阿南に思い入れている自分がいました。
阿南のイメージには草間さんの絵がピッタリな気がします。でも、挿絵の阿南よりも個人的には「イロメ」の白川先生のイメージかな。

帯のコピーは、「さよなら、先生。」。
教師と生徒という関係が二人に別れをもたらし、そして、教師と生徒でなくなった時、また新たな関係が始まる――というこの作品を一言に凝縮したこの言葉が、心に響きました。
番外編「さなぎ」で、すっかりオトナの男に成長した瀬名に、阿南が寄りかかる姿がほほえましい。
ラストは、新たな意味での「先生との決別」で終わっています。

14

こぐーまん

突然コメント失礼します。すごい共感できるレビューです〜。
阿南先生の過去を匂わす程度にとどめているからこその魅力、ほんとにそう思います!瀬名のせいなのか阿南が好きすぎてツラいので、yoshiaki様のレビューを読んでまた萌えました!^ ^
こういうミステリアス受けを攻め視点で読める小説にまた出会いたいです。

ガラスの破片

旧い版(未読です)にドラマCD収録の「young swallow」と書き下ろしの「さなぎ」、二本のSSが新たに加えられたこの作品。
もの凄くハラハラしながら初読を終えました。

滅茶苦茶な家庭環境に疲弊して、上っ面だけの交友関係に虚しさばかり募らせていた高校生・瀬名は教師である阿南が差し伸べてくれた手に救われます。
冷たく鋭く、綺麗なナイフみたいなのに生徒を放っておけない優しい阿南。欝屈した世界に差した唯一の光に、瀬名はどんどんのめり込み一途な想いを募らせて暴走していくのですが――。

この瀬名が、見ていてとんでもなく危なっかしい。反面それがこの作品の一番の魅力です。
高校生という半端な年頃特有の脆さと鋭さ、繊細で傲慢で、自分の力ではどうしようもない閉塞に苦しみながら一途に阿南を想う。この「高校生」というものの描写がとても巧くて、始めから引き込まれました。
複雑な家庭環境もあるのか、若さゆえに暴走しようと基本的に瀬名は聡い子供です。生徒と教師という関係、十歳も年下の自分がまともに相手にされないのはちゃんと弁えていて、それでもたがが外れて空回りし、自分を抑えきれずに八つ当たってしまう。そこですぐに反省して落ち込むから、読んでいてますます痛々しく思うのです。
何というか――阿南にしてみれば、尖ったガラスが自分に向かって凄いスピードで飛んでくるようなものではないでしょうか。当たれば自分も血が出て痛いし、ガラスは簡単に割れ砕けてしまう。私なら背中向けて必死こいて逃げますね(笑……痛いのは嫌だしガラスが粉々に砕けるのなんて絶対に見たくない。
それに向き合って、ボロボロになりながらも受けとめようとした阿南は本当にすごいなぁ…と。

ただ、瀬名の危うさから目が離せず振り回されっぱなしだったので、阿南の心情がいまいち追いきれなかったのが残念です。強い人が最後の最後追い詰められて弱さを露呈する、なんて大好物なんですが――とりあえずこのレビュー書き終わったら落ち着いて再読するつもりです。
…しかし阿南先生、瀬名の危なっかしさにハラハラドキドキしすぎて吊り橋効果で好きになっちゃったんでは……と思わなくもなかったり(笑


さてこの作品もそうですが、凪良さんのお話は再会ものが多い気がします。
真っ直ぐで盲目的な熱情だけではやっぱり上手くは行かなくて、一度決別して距離をとってから再び関係を築いてゆく。それは離れている間にお互いが、或いは片方が一回り成長したからこそ可能なのだし、その成長にも相手が強く影響を及ぼしている。
瀬名も阿南と離れ社会人としてのより広い視野を得て、もう無力な子供ではなくなったからこそ再び阿南に出会えたのではないかな、と。そして理想的な年下攻めとしてカムバック!← 進化した瀬名は後日談、阿南視点のSSで堪能させていただきました。
「決別、再会」というプロセスを経ることで、はじめの盲目的で閉鎖的な勢いは無くなります。それでも強い想いはちゃんと残って、地に足のついた関係を再構築することができる――視野狭窄に陥りがちなBLにあって、その誠実さが良いなぁ…と思うのです。

12

大人になるということ

きっといつか新装版がと気長にまっておりましたら出ました!
ありがとうございます。

生徒と先生の関係から始まるこの話は、子供と大人の歳の差を的確に表現した話であり、主人公の立場や考え方や態度がグザリと胸をついてきます。
題名の「未完成」とは、まだ成熟していない年下の男子の事かとおもいきや、もちろん彼はそうであるのだが、本編のラストから後日談である番外や書きおろしのエピソードを見るにつけ、人が、恋愛というもの自体が、そうではないのか?と思わせる実にナイスな題名なのだとしみじみ思うのでした。


両親が離婚寸前の不仲の家庭にある高校生の主人公瀬名が、むしゃくしゃした気分で訪れたクラブで偶然目にしたのは英語教師の阿南。
たまたまその夜はゲイナイトであり、瀬名はその気持ちの矛先を阿南にちょっかいをかけることで晴らそうとするのだが、大人な態度でやり過ごされてしまう。
後日、学校で見た阿南は瀬名を見ても平然とした態度でおり、瀬名はその阿南が気にかかり絡むのだが、家庭のいたたまれなさに彼の家へ訪れるようになる。


瀬名は彼女にこと欠かず、とっかえひっかえ。
いつもつるむ友人たちがいるのだが、彼等では瀬名の抱える寂しさは埋められなかった。
彼は話を聞いてくれる人が欲しかったのだとは思うが、友人たちでは彼の欲しい答えは与えてくれない。
では、どうして阿南なのか?
瀬名は自分を子供扱いしてくれる大人が欲しかったのだと思う。
両親は自分の事だけしか考えてないと言っている。
阿南は邪魔だ帰れと言いながらも、教師であるから完全に無碍にはしないし、しても瀬名がくらいついてくるから放っておけない。
興味と感心から自分に居心地のよい場所を与えてくれる存在となり、それはいつか独占欲に発展し。。。
阿南は完全にほだされた人となるのだろう。
いけないと思いながら瀬名を受け入れ、ほだされていく気持ちを大人の態度で隠して。
のめり込む瀬名に諭す阿南のその差が実に子供と大人なのです。

結局、彼等には別れがあるのですがその後というのがとても重要でした。

距離を置いて、年月を経て、少年が大人へと変化していく時、改めて感じる阿南の言っていた言葉の正しさ。
想いはずっとずっと変わらずいつまでも愛しい存在であり続けるのは、阿南と過ごした時間に彼が言った言葉が現実となって実感できるからこそ、彼の成長という変化を垣間見ることができるのです。

ですので、CDのブックレットにあったという短編と、書きおろしの【さなぎ】はそれを裏付ける確実なモノとして、とても重要なエピソードなのだと思います。

最初は瀬名が子供でした。
セックスの最中も大人と子供の差を感じさせながらもいつしかそれが同等を見せるようになり、しかしシラフの時はやはり大人と子供で。
そして再会後、その二人の子供と大人のラインは曲線を描きながらゆったりと波をうって交わる箇所がふえるのです。
それが瀬名の成長であり、阿南もまた年齢は大人でも恋している以上老成した大人ではないという部分を見せるのです。

瀬名と阿南の別れのシーン、再会のシーン、更には書き下ろしに至るまで、何だか後半は涙があふれてとまりませんでした。
執着ワンコとツンデレ教師。
阿南はツンデレですが、口調はじめ精一杯男前な部分を見せていたような気もします。
彼は一本筋の通った男なのか?

本当は阿南が既婚で子供もある友人とセフレの関係もあるとか、彼についての謎がとても多いので、ちょっぴり彼について何かあってくれてもいいのかな?と思わなくもないのですが、
自分にとって、願うべき大人と子供の恋愛の形が描かれたまさに望む話であったことから、この評価なのです。

11

too young to love

何故これを今まで読まずにいたのか?と自分に問いたいような
今さらながらに出会った名作だった。

        *     *     *

高校2年、瀬名は多くの鬱屈を抱えた17歳の夏を過ごしていた。
両親の不仲問題、居場所のない家、揺れる足許と見えない未来。
そんな全てから逃げるように、刹那的に仲間とつるみ、
来る物拒まずで女の子と付き合う。
でも、本当は自分が何が好きなのか、何を求めているのも分からず
本音を晒す事もなく、日々の埋め草のように笑い遊ぶ日々。

通う高校のまだ27歳の英語教師・阿南。
ゲイナイトであることを知らずに入ったバーでの、偶然の出会いは最悪。
しかし、瀬名は阿南に素っ気無くあしらわれることによって
彼に興味を抱き、やがて今まで出会った誰とも違う彼に、
強く惹かれ求めるようになっていく。

ティーンエイジャー特有の、傲慢で脆くて純粋で一途な青さが
余す事なく描き出される。
大人の男を相手に、背伸びしたり甘えたりする子どもっぽさや、
底が浅くてみっともなくて、行き先のないエネルギーを持て余した様。
でも何も持たないだけに、その恋は愚かしい程に真っすぐに暴走して行く。

そして……
大人として教師として冷静にに振る舞いながらも阿南は……

そのままでは自らを破壊するしかないような恋の結末、
結ばれる訳にはいかない結ばれなかった二人が
その後どうなったのか……
『雨降りvega』でもそうだったが、最後の最後に切ったと思った糸が
実は深いところで繋がっていた……という展開があり
出来過ぎと穿つ思いを越えて、深く感動させられるのは
断腸の想いでの別れとその後の時間があるからこそだろう。

短編2編は、どちらもその後の二人が阿南視点で描かれている。
しみじみと瀬名の成長ぶりが感じられて、ジンワリとする。

これら幸せになってからの穏やかな阿南視点の影に見える
それまでの阿南の孤独。
当初、瀬名からみたらどうやったって敵わない大人に見えた彼も
まだ30にも満たない若者だ。
友達もいるし、真っ当な職もある、
その上、真面目そうな表の裏に匂い立つ色気もある、魅力的な男。
でも、彼はマイノリティであることでどれだけ傷つき
そして見切って生きてきたんだろうか。
それを思うと、彼の掴んだこの幸せが
これからも続いていくことを心から願わずにはいられない。

11

生徒×先生モノの記念碑的名作

教師と教え子という障害、若さ故の勢いと情熱、喪失への恐怖と焦燥感

散々擦られてきたテーマだからこそ読む側としても自然とハードルは上がる為、比較的冷静に読み進めていったつもりでした。
展開もどんでん返しがあるわけでもなく、大方予想通りに話が進んでいく。

なのにそれなのに…
瀬名(生徒)が阿南(先生)に焦がれて、熱く奪って、体だけじゃなく心も欲しいと求めて、体ごとぶつかっていく若い彼の姿に、
いつの間にか嵐のようにこちらの心も持っていかれて、胸を掻きむしられるような思いにさせられるのです。



本編は瀬名視点です。
阿南の心のうちはわかりません。
若くてモテて女に困ったことのない瀬名は、精神的に深い恋愛経験なんてありません。
なので相手の心の機微を読み取るなんてこともできません。
阿南の心をどうすれば手に入れられるのか、何をすれば正解なのかわからず右往左往します。
カッコ悪くなるばかりで、うまくいかない苛立ちを結局阿南にぶつけてしまう位に子供です。
どうしようもない位、若くて真っ直ぐで純粋なのです。


そんな瀬名を見ているうちに、瀬名の一人称のはずなのに、なぜか痛い位阿南の気持ちがこちらに伝わってくる。

どうしようもない奴…
でもかわいい
苦しい…
もうやめてくれ
怖い
失うのが怖い

ほとんど動揺を見せない大人な阿南の心の叫びが聞こえてくるようで、
瀬名視点のはずなのに、気付けばどっぷりと阿南に感情移入してしまっていました。


「未完成」
本当に秀一なタイトルです。
若くて自分の想いをぶつけるだけで、相手を追い詰めることしか出来なかった瀬名が、失うことの辛さを経験し、痛みを知り、少しずつ大人になっていく。
それと同時に、大人と子供の間で揺れる高校生の美しい煌めきを懐かしく感じる。

最後の二編は阿南視点で、素直に真っ直ぐに頼もしく成長する瀬名を、阿南と一緒に私達も見守るという、
くすぐったくも暖かい気持ちになれるのがこの作品の素晴らしさ。


丸腰で勝負を挑んでくる年下攻の醍醐味を味わえる、凪良作品の中でもイチオシの名作です。
私と同じく手に取りながら今まで逡巡していた方、秋の夜長のお供に是非いかがでしょうか?

11

攻め視点の傑作

これは、好きすぎてレビューできなかった小説の筆頭です。

この作品の魅力はなんといっても受けの阿南先生でしょう。神経質そうな美人だけど中身は口の悪い少し大雑把な大人の男。そう、阿南は大人の男なんですよね。大人ならではの自制を知っている阿南はカッコいいことこの上ない受け様です。終始攻めの高校生・瀬名の視点で書かれているため、阿南のミステリアスな魅力が損なわれることなく堪能できます。

阿南の元彼・大河内の存在がより阿南を魅力的に感じさせてくれます。
瀬名の知りえない世界を共有した二人に嫉妬して、ますます阿南が欲しくなってしまうのです。自分の知らない世界を持っている相手に焦がれてやまない気持ちってありますよね。

恋すると、相手の世界全てが欲しくなってしまう、そんな恋を瀬名はしています。瀬名にとって阿南は夜空に冴え冴えと美しくある月であり、届きそうで届かない彼を狂おしく欲しがるのです。

瀬名も決して子供っぽい高校生ではないけれど、阿南といると本当に若いな、と苦笑してしまうほど。でも、瀬名の一途で一生懸命で、好きとしか言えなくて相手を壊すまで体当たりしていくしかできない未熟さも、阿南と同じく大人になってしまった自分には本当に眩しくいじらしく映りました。

瀬名のモノローグはリアルで、普段思い出すことのない自身の十代の頃の心が蘇ってくるようでした。
狂おしいくらい、好きになること。
今の愛が人生の全てだと思ってしまうこと。
これ以上のものなんて絶対にないと思えてしまうのが、自分がまだそう長く生きていないからだということに気付けないこと。
そんな自分の全てを捧げ相手の全てを奪いたくなるような恋は、多分色々悟ってしまったあとではできないと思うのです。
だからこそ瀬名の恋は激しく美しいと感じます。

そんな瀬名の恋情を思いっきりぶつけられても飄々として見えた阿南でしたが、実は心の中では嵐のように翻弄されていたという……。
相手に想いをぶつけるだけの瀬名と、本当の意味で相手を思いやれる大人な阿南。瀬名の視点では阿南は自分の知らない世界をたくさん見てきた大人で、ミステリアスで余裕があってカッコいいのですが、実際の阿南はそれよりはるかに男前でカッコいい。

そんな阿南の本当の気持ちを、安易に両視点にせず瀬名の視点だけで魅せてくれたのは凪良先生の神業だなと思います。瀬名の視点でこの大人の阿南が脆く崩れる様は、胸が震えます……!

その後の瀬名の将来を思って固い意志で瀬名を遠ざけて、相手のためにボロボロになっても何もなかったように毎日仕事して生きていく阿南が人間としてカッコよく、大人の切なさを感じます。
阿南先生は壊れてしまいそうだけど、壊れたりしません。
だって、大人だもん。大人はツラいんだよ。
辛いことがあっても、一人忍んで仕事して、生きていくしかない。
もうこの辺で、過去の自分は瀬名に投影され、今の自分は阿南に投影されて、他人事ではないように読み進めてしまいました。

その後の二人は、是非本編でお確かめください。後日譚に、阿南視点の短編が入っています。こちらも、阿南のイメージを崩さない、男前なものでしたよ。

全てを読み終えたあとは、未熟だった瀬名の成長も、強い阿南の脆さも、全てひっくるめて愛おしく、まるでこの世に二人が息づいているように感じました。いつまでも心に残る名作です。

9

yoshiaki

こぐーまんさま

コメントありがとうございました(^O^)
この作品のレビューを書いた頃は、恥ずかしながら阿南先生に惚れまくっていましたね。。。今でも、これは私のベストBL小説かなと思います。

阿南先生の、教師然としているんだけど、実は恋愛体質で脆いところがたまりません。
瀬名の強引さから垣間見える未熟さも切な~い!
思い出すだけでキュンキュンしてきます。

阿南先生の過去も・・・本当にミステリアスですね。
コメントいただいて、先生の過去を描いたスピンアウトが読みたくなってしまいました。

生徒×先生もののナンバーワン作品になりました。

これぞ私の求めていた理想の生徒×先生ものだった!!と軽い興奮状態に陥ってしまいました。
ハラハラしたり、泣いたり、切なさに打ち震えたりの連続で読後は心地良い疲労感にしばらく浸ってしまいました。

生徒×先生ものをある程度読んできて自分なりのナンバーワンがあったのですが、この作品はそれらを超えて私の中のナンバーワンに君臨することになりました。

「未完成」というタイトルも秀逸です。これほどぴったりなタイトルはないと思う。
成長の真っ只中にいる攻めがこの先美しく花開くか、歪んだ形で完成してしまうのか、それとも形にすらならずに終わってしまうか……
自分の存在が彼の将来に及ぼす影響を知っているからこそ、自制せざるえない先生。
それに対して、想像がつかないあやふやな未来なんかよりも目の前にいる先生が欲しい、将来なんかどうでもいい、先生さえいてくれたら他は何にもいらないとすら言い切り、ひたすらに自分の気持ちだけで突っ走る攻め。

あぁ…なんて恐ろしいとは思いつつも、そんな性急さがある意味眩しくもありました。

親の都合に振り回されても従うしかない10代のままならなさ、歯がゆさや焦り。
荒削りで身勝手で、欲しいと思ったら他のことが一切目に入らなくなる若さ特有の傲慢さや甘えや危なっかしさ。
そういうものもぐりんぐりんに詰まっています。

ギリギリまでに追い詰められた先生が感情を爆発させて泣く様子を見て、ようやく自分の未熟さに気づき、怖いものしらずだった彼が初めて「怖さ」を知るシーンが素晴らしいです。

そして自分の気持ちだけで動いていた攻めが別れを経て、痛みを抱えつつも手に職をつけて頑張る日々の中、ふと先生のことを思い出すシーンが泣けました。

「自分の傍に阿南はいない
でも生活の全てに阿南がいる
どんなときでも、静かに、優しい光で瀬名を包んでいる」

これが高村光太郎の詩集・智恵子抄の「亡き人に」の一節
「あなたはまだゐる其処にゐる
 あなたは万物となつて私に満ちる
 私はあなたの愛に値しないと思ふけれど
 あなたの愛は一切を無視して私をつつむ」

これを思い出してしまい、もう堪えきれずぶわーっと泣いてしまいました。

そして「今なら違う愛し方ができるのに。」と思う攻め……。
身勝手で独りよがりに追い求めた愛だったけれど、あの時はそういう愛し方しか知らなかった、コントロールが効かなくなる危うさをはらんだ若さゆえの愛し方しかできなかった。

後半はまだまだ完成形ではないけれど確実に成長していて、いい男になったなぁ…って感慨深くなります。
だけど、相変わらず年下男の可愛さも残っていてたまらないです。

攻めが時々リードしたがるくせに、無防備な年下男の可愛さを撒き散らしているので読んでて時々ノックアウトされそうになりました。

ぎゃー!!と萌え転がったところを一つ。
まだ生徒と先生の関係だった時。
「俺のこと好き?」と聞いたのに「かわいい」としか言ってもらえなかった攻めが「じゃあ、あとどれくらいかわいくなったら好きになってくれる?」と言うんだけど、何これ。かわいい。かわいすぎるよーー。
もう降参。
「バカだな、もうとっくに好きだよ。」って答えてあげたかっただろうに、阿南先生は本当に本当によく耐えたと思う。
本当は手放したくなんかなかったよね。

新旧含めて評価が高いのが納得できる一冊でした。
この本は神の中の神で、これから繰り返し読むことになりそうです。

7

フランク

シーモアで購入

わたしの萌えポイントを。

みなさまが既に熱くレビューされているので、語れる所は少ないのですが、私の萌えたポイントを!!熱く!!語ります!!笑

まず初めて手に取った凪良ゆうさん作品。きっかけは草間さかえさんです。ファンなので。草間さかえ先生の絵の色気にノックアウト!!です。男らしい体つき、先生の色気のある表情。本を読む上でありありと姿を思い浮かべることができました。


作中で萌えたところは、大きくは高校生の瀬名の若いが故の立ち振る舞いです。情熱に真っ直ぐでそれ以外は目に入らず猪突猛進で考えが足りないところ。それを上回る熱い想い。先生の気持ちになるとグラグラ揺れるのが本当にわかります。あれだけ熱く想われて傾かない人なんていないと思います。だから別れ際の「さよなら」を言われたくなかった、というセリフが涙を誘そわれました。


そして!個人的にすごーーく萌えたのが!
先生が瀬名のことを誰かに話している、ということ!!!
飲み屋で年下の彼氏がこうなんだよー、とか言ってるのを想像すると………萌えますっ!!!
シラーっと表面装っているのに裏ではノロケてたの?!みたいな。本人に見せないデレが非常に萌えました!!!

もちろん本人に見せるデレも可愛いんですけど、それ以外のところで見せてるデレって更に本気っぽくっていいですよね!!

先生も恋してるんだなぁー♡と可愛く思えました♡♡


6

いや~♪びっくり!!

花丸ブラック【未完成】が、絶版高額状態なんて知りませんでした。今作の【Young Swallow】【さなぎ】を読みたいが為に再購入!そしてなおさら納得…そして幸せ度、増!市販の凪良ゆう先生の作品で、読んで無い(所持してない)のは【花嫁は マリッジブルー】だけだと思います。
人の心持ちを現すのに こんな表現があったのか…そんなことを思って、買い続け、読みつづけた作者様です!!花丸の【未完成】2009年、今作が2014年、ただ、ただ…時の流れを…そしてそれぞれの大好きな作者様の伸びゆくさまを感じて嬉しく思ってます♪
そして作中の人々も時を経て、いい感じに成長し続けていて感無量でした!!

6

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