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soredemo shutter no oto ha naru
◆表題作
個人的にはBL未満だと感じましたが、写真という芸術表現を介して繋がる3人の関係性が面白かったです。才能への嫉妬、そんな自分を客観視した時の虚無感。芸術分野に限らずどんな人間でも持っている感情。真面目な人間には到達できない領域。飛野の気持ちに共感する点は多々ありました。でも、真面目にやってきたからこそ得られるものも必ずあるはず。飛野の真摯な作品は光雄の心を動かしました。それに、才能に恵まれているように見える人も、内心は不安や焦りも当然あるでしょう。飄々と評価を得ていく一方で、最後は光雄の成長に焦る一面も見せてくれた大森。皆それぞれに葛藤しながら、人生をかけて自分のスタイルを確立させていくのでしょう。
◆ペンと機械と夢
アンドロイドを扱う作品としては割と王道なストーリーでしたが、短いながらもアンドロイドのキュウに愛着が湧き楽しめました。主人のためにプログラミングされていないことにも挑戦し、主人のためだけの作品を創り上げるアンドロイド。夢がありますね。
絵もストーリーもシンプルで読みやすかったです。太めの線、黒と白のコントラスト、奥行きのある構図が好みです。
□表題作
才能ある雅春への嫉妬/劣等感から閉じこもったような頑な態度で仕事をする飛野。
そこへ現れた光雄が明るく引き下がらず飛野のアシスタントとしてやっていく。
光雄もまた叔父である雅春の才能への嫉妬心に苛まれ、飛野にとっては共感するものがある。
2人が次第に理解し合いお互いを認め合う。
個人的な見どころとしては、飛野がフィルムをやめデジタルでビジネスライクに働いているように見えたのですが、光雄がアシスタントを続けてくれることになりチームに打ち解け撮影が楽しいと思ったところです。
光雄という理解者を得て、飛野の性格が少し丸くなり写真を好きで続けていることがわかったのがよかった。
北海道の湖の景色がぴったりで美しいし。
光雄もまたフィルムでの撮影が好きで続けていて、飛野がそれを知りアシスタントをやめ独り立ちするよう薦める。光雄の才能を認め、光雄が何を見て何を撮りどうなっていくのか見てみたい。ずっと見ている。というメッセージは何よりの好意と敬意で熱いものを感じました。
3年後に光雄が個展をするほどの写真家になっていて、飛野が使っていた暗室を光雄に貸しているのは飛野があきらめたフィルムへの憧れ、才能を光雄に引き継いでもらいたいとの思いからですよね。
雅春はエゴイストで自由そうに振る舞い天才肌とされていますが、光雄の個展や個性をしっかり分析していて、無垢な本物の天才型アーティストではない一面が描かれていたのがおもしろかったです。自身の個展のコンセプトもきっちり考えられたものだったし。
□ペンと機械と夢
アンドロイドがいる世界でも原稿は紙なんですねとまず思いました。
キュウが清掃時に手が何本も出して千手観音さまか最終兵器彼女みたいなデザインでおもしろい。それが後に2本の手で掃除をしていたのは汚染度が下がったからですかね。
「アンドロイドは本を読みません」と言っていたのにキュウが棚の全ての本を読んだのは賢一の娯楽に小説を書くために必要だと判断したから? 「馬鹿みたいだ」と笑ってほしかったからでしょうか。
ロボットが人間の仕事を奪うと酔っ払いのおっさんがキュウを壊す場面はリアル社会にもあり得そうだと少し怖く感じました。
その後、賢一が書いた小説が受賞してキュウを修理に出すのがいいですね。
それでもバグが直っていない?と思わせるラストもよかったです。
2本とも才能への嫉妬やコンプレックスに悩む人がどう生きるかが描かれたお話で興味深かったです。
BLとしては物足りないかもしれませんが、キャラたちが出会い、お互いを理解したり認めてもらったことにより成長するさまが、それぞれの愛情を感じられました。
こういう作風が好きなのでさすがCannaさん、朝田ねむい先生(初め他多数)のような作品を世に出してくれるレーベルだわ〜とうれしくなりました。
表題作+1作品収録。
どちらも独特の世界観があるお話で、めちゃくちゃ引き込まれました。
細かな心理描写があるわけではないんですが、
表情や仕草などからその場の空気感までもが伝わってきて、そのおかげでそれぞれの人物像をかなりはっきりと知ることができたんですよね。
これまであまり触れたことのない作風に心掴まれて、ただただ夢中で読んでしまいました。
表題作のふたりは性格や仕事に対する姿勢など何もかも違うところばかりで、どうやったって交わるわけがないと思っていたのに、ひとつの共通点からじわじわと色々なことが繋がっていくのがすごく面白かったです。
好きなことを仕事として続けていくのは簡単ではないけれど、考え方ひとつで道は開けていくことをふたりの生き方から学んだ気がしました。
そして、飛野の中でわだかまりのようになっていた雅春ともまた向き合えるようになって
本当に良かったなと感動したのでした。
2作品とも恋愛に繋がるような部分はなく、登場人物たちのことを考えてもこの先恋愛に辿り着かない可能性もありそうで。
でもがっつりなBLではないのに色々な部分から含みも感じ、見方によって捉え方が変わるような展開が本当に素晴らしかったです。
初読みの作家さんでしたが、コマ割りも絵柄もスッキリしていてすごく読みやすくて
過去作もぜひ読んでみたいなと思いました。
初めましての作家さんだったのですが、カバーイラストの色使いを見た時点で「あっ、好きかもしれない」と、ビビッとくるものがありました。
こちらのレーベルらしいといいますか、自由で個性的な絵柄と作風がなんとも味わい深くて素敵なのです。
BLというよりブロマンスの雰囲気がある、小さな劇場で上映されている知る人ぞ知るショートムービーを観たかのよう。
そんな感覚になりながら、見事に好みど真ん中をトンと突かれ今に至ります。
コマ割りもトーンワークもごくシンプルだというのに、なぜこんなにも夜や影の表現がすばらしいのでしょう。
完璧主義の気難しいカメラマンと、ひょんなことから彼のアシスタントとなった青年の交流を描いた表題作「それでもシャッターの音は鳴る」
そして、泣かず飛ばすな小説家とアンドロイドの同居生活を描いた短編「ペンと機械と夢」の2作からなる1冊です。
静かに淡々と進むお話をじっくりと追って読みたい方におすすめしたい、どちらも噛むほどに味が出る作品だと思います。
「それでもシャッターの音は鳴る」
光を調整し、照準を合わせてシャッターを切る。
シャッターを切る人の数だけ、多種多様な魅力的な作品が生まれるのだから、カメラというものは実に奥深いアイテムです。
作中に、気難しいカメラマン・飛野の人生に大きな影響を与えた2人の男性が2人登場するのですが…
憧れ・才能・嫉妬・やるせなさの描き方が本当に巧みで、なんだかじわじわ魅せられるというか、人間ドラマがすばらしくて。
中でも、飛野と光雄の関係性がとっても良かった。好きです。
隣の芝生は青く見えるなんて言葉をふと思い浮かべながら、カメラを通じて3人の男性の遅く来た青春を見た気がしました。
「ペンと機械と夢」
アンドロイドといえばやはり、人ならざる者・完璧な存在なんてイメージがありますよね。
ところが、こちらの作品に登場するのは1体の出来の悪いアンドロイド。
読み終えた頃には、この「出来の悪い」の5文字にどうしようもなく惹かれてしまうこと間違いなしのドラマティックな作品です。
起承転結がしっかりとしていて読みやすく、読後感も素敵な良作でした。
読み終えてみると、人間の綺麗ではない部分の感情をリアルに描くのが上手い作家さんだなあと。
次回作も紙の本で手に取って読みたいです。
同時収録のほうが圧倒的に素晴らしい!
出会えてよかったと思えるほどの神作!何度でも読み返したくなる!
恋愛要素は一切なし。(エロももちろんない。)
でも男たちの深い関係性だからこそのBL?
初めていちの先生の作品を手に取った。
独特の絵柄がシンプルでありながら可愛らしい。
表題作『それでもシャッターの音は鳴る』ep.1〜10+描き下ろし
(萌〜萌々)
手の届かない才能への憧れ、
抑えきれないほどの強烈な嫉妬、
どうしようもない劣等感、
生々しくも切実に描かれている。
不機嫌で堅物なカメラマン・飛野(メガネ)が、
自らアシスタントを申し出た
天真爛漫で恐れを知らない無遠慮な光雄(20)に、
少しずつ柔らかくされながら、
自分と向き合い、光雄の救いもなっていく。
お互いに影響し合って、変わっていくお話。
ただのほのぼのにとどまらず、読み進めるごとに、
飛野の過去と光雄の秘密に引き込まれてしまう構成がとても良い。
カメラに関わる描写もかなり深刻。
(カメラに興味のない素人の私から見ると)
人間ドラマとして見応えのある作品だと思う。
同時収録の『ペンと機械と夢』前後編
(神!)
人間とアンドロイドが共存する世界。SFとはいえ、
リアルで現在の日本を舞台にしているのが絶妙。
アンドロイドが人間を助けるどころか、
人間の仕事を奪ってしまう現実が痛いほどに実感される。
生活が逼迫している売れない小説家・賢一と、
彼が譲り受けた壊れかけのアンドロイド・キュウ。
賢一がキュウの破天荒で突拍子もないサポートに振り回される過程に笑って、
キュウが賢一の小説執筆を手助けしてくれる展開が恐ろしくて震えて・・・
キュウの行動と賢一の実行に涙せずにはいられない・・・
最後は心温まり、ユーモアもたっぷり!
たった2編でこんなにも多様な感情で満たされるなんて、
生涯忘れられない一作となりました。