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plumeria no koro
呼吸を整え、「読むぞ」という気合のようなものを入れてから読むことにしている
「1945シリーズ」。
直近で読んだ「蒼穹のローレライ」が一番深く深く胸に刺さっていたのですが、
またそちらとは違った意味で、この「プルメリアのころ。」も深く、忘れられない作品になりました。
こんな時間までまた読み耽ってしまった…
全く勇敢ではなく、とんでもなく怖がりで、臆病で、軍の中でバカにされまくる
お飾り少尉。
そんな千歳の”出撃が怖い””爆撃が怖い”という気持ち、なんだかものすごく人間らしくて不器用で、シリーズに登場したキャラの中で一番共感できた人物だったかもしれません。
絶叫系のアトラクションが怖くて乗れず、某ネズミーシーの直下型エレベーターで
本気で泣いて友人を引かせた自分。
そんなものと比べてはいけない・比べものにならないことは百も承知なんですが、
命を賭けて爆撃しに行くなんて正気の沙汰とは思えず、千歳の感じる恐怖に共感しかなかった。。
実は物語中盤ぐらいまで、なぜ千歳がカズイにそんなに惹かれるのか、
分かるようでいまいちピンときていなかったのですが…
後半、倉田中尉との交流、切ない恋慕と衝撃的な別れのエピソードを読み、
全てが腑に落ちたような気がしました。
愛に飢えていた千歳のもとにまっすぐに降ってきた、カズイの存在。
同情ではなく”ペア”になってくれたことが、どれだけ千歳にとって嬉しいものだったのか…
そんなことに思いを馳せ、たまらない気持ちになってしまった。
そして思いがけず、厚谷・琴平ペアとの絡みが何箇所も出てきて本当に嬉しく、
グッときました。
恒には千歳の技術の素晴らしさが理解できていたんだな、
カズイという愛を見つけた千歳は恒という唯一の友人も見つけることができたんだな、とじんわり胸に喜びが広がる感じ。。
「蒼穹のローレライ」でかなりの衝撃と心へのダメージを負っていた自分ですが(でもシリーズで一番好きと言える)、カズイ×千歳のその後のお話には、本当に光を見つけ救われたような気分に…
巻末の牧先生のイラストも素晴らしかった…!
笑顔の表紙の二人なんて、ぎゅっとまとめて抱きしめたくなってしまいました。
牧先生の言葉どおり、惜しみなく愛を注ぎあって欲しい。
そんなふうに思える、唯一無二のペアのお話でした。
面白い切り口のお話でした。
艦上爆撃機の操縦員なのに超怖がりで、出撃中は泣き叫び、無事帰還すると嘔吐しまくる最弱メンタルの持ち主が主人公。そして、そんなオエオエ男とペアを組み何かと世話を焼く偵察員とのペアBLです。
ダメダメ操縦員と思いきや操縦に関して言えば天才的。素質はないけど才能がある。出撃中はワーワーギャーギャーするけど、操縦テクのすごさは一流です。
最初はこんな奴の後ろに乗れっか!と嫌悪感を抱いていた偵察員・カズイが、千歳の操縦技術に惹かれ、そして人として惹かれていく恋の移ろいにドキリとしました。
嘘のつけないカズイだから、仕事も恋愛もハッキリしているところが清々しい。
これまで一人ぼっちで孤独だった千歳の良き理解者となり、良き相棒となり、最愛のパートナーとなって、精神的な拠り所になっていく2人の深まる関係性から目が離せませんでした。
カズイにとっても千歳にとっても唯一無二のペア。
カズイにとって、千歳の偵察員は自分しか有り得ないし、千歳としてもカズイが一緒に乗るから頑張れる。命を預け、命を預かるといった"一連托生"の密な関係は、ペアや恋人関係を超えた特別で神聖なものに見えました。
出撃したらそこは死と隣り合わせの世界です。
死を意識せざるを得ない状況で愛を深め合っていく2人の絆が、美しく、そして尊い……。
カズイが大ケガを負い、やむなくラバウルを離れなければいけなくなったときは胸が引き裂かれそうな思いで見守りました。
とにかく千歳が幸せになって欲しい。それだけを願っていました。
親から邪魔者扱いされて育ってきた不憫な生い立ちは、彼を生まれたその瞬間から一人ぼっちにしてきたからです。
ずっと孤独で生きてきた千歳に、生きる目的も意味も場所も与えてくれたカズイの存在は、千歳にとってどれだけの救いになったでしょうか。この物語は千歳の救済の意味もありました。
千歳の生家であるやんごとなき名家ってやつは、血の繋がりを重視しながら一方では蔑む。。。なんて自分勝手な人たちだろうかと辟易しました。
こんなヤツらに邪魔にされながら生きてきて、あーームカつくっっ!
ギャフンと言わせたいなぁなんて思っていたら、おおお…(*゚∀゚*) ギャフンはないけど、それに近い形でのザマァ展開には、作者さまありがとう!の気持ちでいっぱいです。
命をかけて国を守る男たちの背景には、お互いを尊敬し想い合う絆の深い愛の物語がありました。戦争ものだし、爆撃機乗りのお話だしで、悲しみや切なさと隣り合わせのストーリーだけど、最後はキッチリと笑顔にしてくれるところは嬉しいです。
帰る家が出来た千歳と、千歳を大事に慈しむカズイの2人のささやかな幸せに胸が温かくなった読後感は最高でした。
前作の「碧のかたみ」の六郎・恒ペアも登場するので、推しの方はぜひ^ ^
1945シリーズ新装版、第一期完結おめでとう御座います。
それぞれの魅力あるシリーズ作品の中でも極まって個性的な千歳にまた会えて嬉しいです。
幾度となく読んでいるのに、彼の生い立ち、育った環境故に負った心の傷とその痛みが今回もなんら変わりなく胸に突き刺さり涙が出てきて止まりません。
カズイへ寄せる千歳の想いが切なく、哀れでもあり、そしてその一途さに胸がいっぱいになって彼に対する愛おしさが増します。
また、大幅改稿の翔鶴での戦闘場面も緊迫感が増し千歳の有能さに溜め息が出ると共に、作品に対する先生の思いに触れたような気がしました。
磨かれた千歳の操縦技術が際立つごとに、彼の心の中にある強い想いが見えるようでした。
そして書き下ろしの「明日をあなたに」ですが、月光ペアの恒と千歳の交流が嬉しくもあり、それでも「明日」に想いを強くする千歳に改めて胸熱くなりました。
旧版でも恒と千歳との仲良しぶりはありましたが、今回の書き下ろしによって彼ら二人の操縦士の尊敬の念と絆が更に深く知ることが出来嬉しくなります。
どのペアもそれぞれの魅力があり、彼らを愛おしく想う気持ちに変わりないですが、それでもこの艦爆ペアがこうして戦後の日々を送っていることは感無量で千歳の幸いをただ祈るのみです。
同人誌『海鷲に告げよ』より「千歳威厳計画デラックス」が収録されたことも1945シリーズのファンとして嬉しく思います。
これからも多くの方々に読み継がれていくことを願い、第二期を楽しみに待っています。
高いところが苦手で怖がりな千歳とペアになってしまったカズイ。
居場所がなくて愛されたいのに、欲しない。そんな千歳に精一杯向き合うカズイ。
神様から欲しかったものは全てカズイがくれた。ずっとカズイの無事を祈り続け、絶対堕ちないと強い決意を持つ千歳は弱虫なんかじゃないんですよね。
月光ペアとの絡みも微笑ましいです。
ただの「千歳」として過ごす日々が幸せでありますように。
キャラ文庫で復刊されている1945シリーズ4冊目。
本ごとにCPが異なります。本作のCPは、3冊目「碧のかたみ」と同様に複座の航空機のペア。操縦士と偵察員ですが、「碧のかたみ」とはだいぶ様相が異なります。
偵察員のカズイは最前線のラバウル基地に配属になり、操縦士である千歳と組むように命令される。だが高所恐怖症で怖がりで脆弱な千歳は、飛行のたびに恐怖に叫び喚き嘔吐を繰り返し、身体が弱すぎて訓練も満足にできない。あまりの軟弱ぶりに失望したカズイはペアを解消しようとする、というお話。
尾上先生の語り口は的確で時に叙情的で、ぐいぐい読ませる筆力はさすがの一言です。
4冊目ともなるとこの世界観にもどっぷりで、もう3組も見たのに、まだ違う角度からのお話を読めるのか、と驚くばかりです。まるで飽きませんし、毎回唸るばかりです。
表題作「プルメリアのころ。」:カズイ視点、本の6分の4
「白い花の帰還」:千歳視点 本の6分の1
残りの6分の1に以下の3作
「千歳威厳計画デラックス」:六郎視点
「ちーちゃんせんせい」:千歳視点
「明日をあなたに」:千歳視点、書き下ろし
ということで、5本収録している本になります。
上記のとおり表題作の「プルメリアのころ。」が分量が多いので先頭になっていますが、ただ、今回はちょっと構成的には「白い花の帰還」が先の方がよかったかもしれないと思いました。
というのは、カズイは当時の一般的な(という言い方が適切かどうか)思考を持ち、性格も生い立ちもまっすぐであり、読んでいても普通に寄り添いやすいのですが、対する千歳の方は、生い立ちも性格も過去エピソードも、そもそも基地での立ち位置、飛行中・飛行後の言動も、とにかく規格外です。
もちろんすべてに理由があるのですが、それは読者の当て推量だけでは補えないほどの内容でした。
私も表題作を読みながら、志願兵の中でも選ばれた人であるはずの(当初)飛行機乗りなのに、飛行が怖い、叫ぶ、吐く、ということがここまでの反応であるからには、相当な何か(ペアだった片方が戦死したとか)があったのだろうと想像したものの、カズイ視点である以上、そこが明らかになるには相当ページをめくる必要がありましたし、当然肝心なところ(=初恋だったとか)までは描かれません。それは千歳視点ではないと分からない話だからです。
「白い花の帰還」は新情報が多すぎて、種明かしや裏打ち以上の内容と感じました。
この内容を先に知ったうえで「プルメリアのころ。」を読めていたら、千歳の振る舞いをもっと違う風に受け止めただろうと思いました。また、二人のことについてももっと焦れる思いを感じたかもしれない、とも感じました。
「碧のかたみ」の琴平・厚谷ペアが登場したのが嬉しかったです。
琴平恒は、皆が嘲笑したり無視したりする千歳に対してとても優しかったし、航空技術を認めているのも良かった。
考えてみたら恒はおとなしい弟の希を殊の外可愛がっていたのでした。この手のタイプは、希を思わせるのかもしれない。
千歳と二人並んで話している図は、挿絵もありましたけれどとても和みました。
カズイの真価が発揮されるのは、むしろ戦後のお話の方かなと思いました。
コミュ力をいかしてどんどん仕事につなげていくのは大変頼もしく、戦後復興の力強さをも思わせます。
千歳を虐めていた華族の兄たちの末路とは対照的です。
「ちーちゃんせんせい」で千歳は黙っていましたが、おそらくカズイは知っていた(直接連絡があったり?)のかなとも思いました。
この本で第1期の復刊は一段落。冬に同シリーズの他の本の復刊がスタートするようで、とても楽しみです。
新装版として連続刊行されていた1945シリーズ。
戦時下という激動の時代を背景に、時に激しく、時に苦しく、時に切なく、時に愛おしい青年たちの生き様を夢中になって追いかけた数ヶ月でした。
こちらのプリメリアのころ。でひとまず一区切りとのことですが、どのお話も非常に印象深い作品ばかりだったように思います。
同じ時代背景・同じ題材なのだけれど、人生や生き様にかぶりがないというのかな。
人の一生において1番濃厚に凝縮された部分を切り取って魅力的に描くのが本当に上手い作家さまですよね。
第1期最終巻となるこちらの作品。
結論から申しますと、既刊3作よりも強く惹かれるものはなかったのです。
というのも、既刊とは毛色が少々異なるものなんですね。
千歳のバックボーンが切ないものではあるのですが、あまり戦争を背景に描いた作品には普段感じないやさしさや希望。
そしてまろやかさをなぜか強く感じた作品でした。
この雰囲気は決して嫌いではないですし、中盤から後半にかけての気持ちの高まりや千歳視点のお話も好き。
ただ、神評価にはならなかったです。
先述の通り、中盤〜の流れと千歳のバックボーンがわかる短編は、自分よりもお互いを強く想う気持ちの流れはすごく良かった。
でも、こと恋愛面に関してはやや疑問に思うところもあり…
うーん…こちらのシリーズにおいて私が1番魅力的に感じるキーワードがペア制度なのです。
このペアになるための行為がどうにも刺さらなかった。
あっという間に始まってしまい性急すぎたというか、突然そんな関係になってしまったがゆえに入り込めませんでした。
これは恋愛感情なのか?はたまた違うのか?と、分類ができないくらいの特大級のどでかい感情があふれてからだったのなら、爆発的な萌えが降ってきていたのになあと惜しいです。
未来や希望を感じる話運びは穏やかでやさしく、戦争ものでこういう味付けもあるのだなと、2人の青年のラバウルでの日々を追いかけながら、既刊3作にはない味付けをじっくり味わえました。
しかしながら、ペアの熱量でいうのなら、過酷な環境化で育まれる激しく熱い感情をこれでもかと描いた「蒼穹のローレライ」「碧のかたみ」の雰囲気の方が好みだったのかもしれません。
1945シリーズ4冊目。空中戦を見たような心地になるお話で、予想の斜め上に受けが可愛かったのですが、キャラとして極萌~というほどではなかったので萌にしました。本編220P弱+受け視点の本編を補足する小編60Pほど+別カプとの小編10P超+小編2編。戦時中の異色の艦爆乗りが気になる方でしたら。
出世を!と意気込んでいたものの、ようやく宛がわれたペアは飛行直後は出すものが何もないのにげえげえ吐いていて、「ちょっと、飛行が怖くてね、敵機が苦手なだけなんだ」と上官に言われる鷹居で・・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
受け父(伯爵)、碧のかたみのペア、その他名もなき上官やら戦友少々ぐらい。
++攻め受けについて
攻めは大家族で育った逞しい男子。最初は腑抜けな千歳を見て「こりゃダメだ」と思っていたのですが、千歳の神がかった爆撃をみて絆されて・・・という感じです。正直、千歳と体をつなげるところ、気持ちの動きがちょっと分からなくて???でした。BLじゃなくって普通のペアのお話でもええやんか・・・と思う気持ちの方が、今でも強いかな。まあ千歳のことを大切にしてるからいいけど。戦時中、追い込まれた閉鎖空間のなせる業なのか。
受けはお貴族様。伯爵の父と侯爵の母(要は浮気)の間の子で、しょうがなく伯爵家で引き取っては見たものの、伯爵家には既に男子二人いて、千歳は行き場のない感じで育ちます。愛情に飢えてるんですよね。だからペアと認めてくれた攻めのことをとても大切に考え、カズイが生きて内地に戻れるようにと、後半は超超超超ど健気。捨てるものが、執着するものが無い人間ってほんと強いです。
そんな攻め受けが頑張るラバウル戦記です。飛行機乗りがお好きな方にはたまらんとは思うのですが、その「たた たん」と撃っているもの一粒で死ぬんだよ?と、改めて戦争の恐ろしさを思い起こした一冊でした。平和が一番っす。