天球儀の海

tenkyuugi no umi

天球儀の海
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神2
  • 萌×20
  • 萌0
  • 中立0
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
2
得点
10
評価数
2
平均
5 / 5
神率
100%
著者
尾上与一 

作家さんの新作発表
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イラスト
 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
シリーズ
天球儀の海
発売日
ISBN
9784199011306

あらすじ

「助けてくれた坊ちゃんのためなら、喜んで自分の命を差し出します」。故郷の航空隊に配属になると同時に、地元の名家・成重家の養子となった希(ゆき)。その目的は、ただ一人の跡継ぎ息子・資紀(もとのり)の身代わりとなり、特攻隊として出撃すること──!! 13年前、命を救われたお礼が言いたくて、ずっと資紀に憧れていた希。ところが再会した資紀に冷たく拒絶され!? 戦時BLの傑作≪1945シリーズ≫復刊第2弾!!
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レビュー投稿数2

愛を貫く者たち

1945シリーズの復刊 第2弾。
本当にありがとうございます。

こちらの作品は旧版で拝読しておりましたが、新しく書き下ろしで『青いカップの王様』というラブいお話が入っておりましたので、旧版既読の方もぜひ。

(というか、表紙が素晴らしすぎる件について)


〜以下、唐突な(旧版読了時の)ネタバレ感想〜



幼い頃に命を助けてくれた資紀の身代わりとして、特攻に行くことを決めた希。
胸に抱えた想いが切なかったです...
希が抱えた想いと裏腹に、13年ぶりに再会した資紀の態度は最初から冷たくて、それがまた余計に切なくて。
特に中盤以降の態度は酷く、明らかに"何か"あるわけだけどもその真意はわからず。
そしてついに事件が起きて...

何故そんなことを...?希の右手を切断して自分が特攻に行くためというのは希の想像にも難くなかったけれど、資紀がそうしたい理由を希は勘違いしてしまって。
これも資紀がわざと仕向けたんですね...
「大切に想っている希をどうしても特攻に行かせたくないから」なんて後腐れの残るようなことは言わない。
わざと恨みを買ってそのまま出征する。
事件の日の資紀の態度は、いよいよ決定的に恨まれるための凶行を前にして、最後の最後だけは自分の気持ちに正直にいたかった気持ちのあらわれでしょうか。
それっきり一度も会わないまま迎えた出征の日、勘違いしたままの希にまともに目も合わせてもらえず、資紀はどんな気持ちだったのだろう。
自分で仕向けたことだから本望だったろうとは思いつつ、最期の別れとしてはあまりにも辛すぎる。
もし資紀がそのまま帰らなかったら、と思うと...

そして終戦から何年も経って、とある日。
希が営む店の客から、小倉で出会った人がオリオンの干からびた右手を大切に持っているという話を聞
いて...

何たる偶然か必然か、再会を果たす二人。
このシーンの挿絵を見てから暫く涙が止まりませんでした。
こんなに嬉しい再会、他にありません。

で、ここからの幸せっぷりと言ったらもう...
『サイダーと金平糖』では、資紀が希をどれほど気に掛けていたかが分かって思わず笑ってしまいました。

ハッピーエンドで本当によかった。
本当によかったです。

それにしても、そこまでしないと愛を守れない時代。
もう二度と来ないことを願わずにはいられません...


さて、新装版書き下ろしの『青いカップの王様』
事業が上手くいっているようで嬉しくなりました。
坊ちゃんと希の相思相愛っぷりよ...
店主さんも、お堅い人かと思いきや最後の種明かしが鮮やかで。
尾上先生、やっぱり天才でいらっしゃる...

第3弾以降も、楽しみにお待ちしております。

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すごい世界をみた

すごい世界だよ、これ。

なんという重い愛。
なんという深い愛。
一途とも執着とも言える狂気じみた愛。

分かりにくくて分かりやすい…そんな男に激しく愛された愛の物語は、エグさもあるけどピュアさもあって。時代が時代なんで適切な表現じゃないかも知れませんが、ものすごい純愛でした。
凶暴すぎるほどの想いの強さに驚き、戦慄き、そして相手をめちゃくちゃに傷付ける行動の意味が紐解かれていく頃には、なんて美しい恋なんだと思ってしまいました。

資紀が希に対する言動や残虐な仕打ちを前にして、"美しい"と形容してしまうことに違和感がないわけでもないのですが、でも物語全体をみると、やっぱり"美しい"が一番しっくりくる。戦争という死を引き換えとした美化フィルターがかかってるせいとかじゃなく、あの時代、ああでもしないと免れない兵役事情でしたから、自分の身代わりであった希の"身代わり"となることで、希を守ったことはやはり美しいと思うのです。

好きな人に生きていて欲しい。死んで欲しくない。この身を捧げても…と思う気持ちに、どんなに胸が締め付けられたことか。愛国心を盾に逆らえない事情が2人の気持ちをすれ違わせていることにとても苦しい思いです。
守り抜く手段は過激ですが、今の時代の尺度で考えずに見守る必要がありますね。時代的なもの、お国事情的なもの、彼らを取り巻く背景への理解なくしてこの物語の本質に触れることは難しいでしょう。

希の"片割れ"を大事に持ち続けていることにしてもそうだけど、資紀の行動は常識の範囲を超えていて、普通の状況なら異常です。でもこの作品の中なら許せてしまうそんな雰囲気があるんですよね。
相手の身体の一部を持っていると聞くと、私なんかは阿部定事件をパッと思い浮かべてしまって、相手への執着が強ければそういう行動もあるのかなと納得できてしまうのです。

現代を生きる私には分かりかねる感覚でも、それを理解させるだけの見応えと文字のパワーを感じました。
痛いことや辛いこと、切ないことがたくさんあるストーリーだけど、どうか誤解しないで欲しい。それは表面的なもので、その裏に隠されたものは、とてつもない愛のカタチがあるんだということを知ってもらいたいです。
中盤までは想いが噛み合わないシーンが多いけど、後半にかけての回収劇はどえらい見事です。それまでのモヤモヤや哀しい気持ちが一気に吹き飛んでいくので注目下さいね。


希の右手のホクロの星から全てが始まった恋でした。側にいなくても、その特別な星がいつでもあるべき場所やあるべき想いを導いてくれる、そんな特別な繋がりを拠り所に深まっていく愛に感動です。
縛りのなくなった彼らが遅すぎる春を迎えた姿を見て、ホッとし安堵感を抱いたのは当然として、時代に翻弄された2人がようやく望む場所に落ち着いたことが一番の幸せでした。

戦争もの、苦手だなんて思ってすみせん。
ただただ圧倒されました。すごかったです。

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