聖邪の蜜月

seija no mitsugetu

聖邪の蜜月
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神127
  • 萌×223
  • 萌10
  • 中立3
  • しゅみじゃない10

--

レビュー数
26
得点
760
評価数
173
平均
4.5 / 5
神率
73.4%
著者
安西リカ 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
電子発売日
価格
¥690(税抜)  
ISBN
9784778130831

あらすじ

奴隷市で売られ「神の愛し子」として聖職者に犯された過去をもつアシュは、偽聖職者として人を欺いて暮らしていた。ある日、絶滅したはずの聖獣の卵を拾い、生まれた仔にサージと名付け、育てることを選択する。純粋なサージを育てる生活のなかで彼の存在は唯一無二となる。人型にもなれるサージは美丈夫に成長した。性を知らなかったはずの思春期の彼がアシュに乗りかかり「アシュが欲しい」と迫ってきて …。

表題作聖邪の蜜月

聖獣・ドライトン
元奴隷で偽聖職者

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数26

号泣でした

いや、、この感動と心の震えを、なんと表現していいのか、ちょっと言葉にできない…
というぐらい、読んでいて涙が溢れてきて止まらなくて、嗚咽を漏らして真夜中まで夢中になって読みました。

重厚な長編映画のような、深く深く沁み渡る愛の物語。

詳しい内容はきっと他の方々が書いてくださっているので、一番泣いて一番心に残った部分のみを。

都で大火傷を負い、長く美しかった髪は全て焼け落ち全身の皮膚も焼け爛れ、片目が見えなくなり、唇が黒くなってしまっても。

「番」であるアシュを愛し、アシュの死後は自分も後を負うことを、静かに受け入れ変わらぬ明るさで過ごしていたサージ。

そんなサージが最後に涙を流す姿に胸を突かれ、涙腺崩壊でした。ああ、、!!自分の貧弱な語彙力が悲しすぎる。。

そして、その涙と伝説との回収も本当にお見事、としか言いようがなくて。

全くもって文句なし、付けられるなら星を10個でも20個でも付けたいぐらいの、「神」作品です。
涙を堪えて、ぜひ読んでみていただきたい( ; ; )

3

もっと都合悪くてもいい

表紙が素敵過ぎてずっと気になっていた作品。
汚い大人に虐げられてきた美人受けの中では、アシュは弱気なところがほぼなく、自ら行動して生き抜いていく力があって良かった。
そして同じ様に辛く苦しむ者を探し、助けようとしても助けられない悲惨な様子がショッキング。しかしここぞという時にタイミングよくサージが助けにくるというのは、ドラマティックだけれど都合がよいなぁと思ってしまった。
それでも大火傷を負って姿形が変わり、死に間際まで描かれるのも驚きました。
前半やクライマックスの悲惨な描写が印象的だったので、都合の良い(情景が浮かんできて素敵ではあるのだけど)場面があると、こんなに都合よくなくてもいいのになと欲張りにも思ってしまいます。

脱出までの苦しみや、サージを拾ってから成長して交わるまで、また番で成長速度が…まで、もっとじっくり読みたいなと感じました。想像力がないので、ドライトンが竜の様な生物として、どうして犬風??かよく分からない。

2

スゴイ作品ヲ読ンデシマッタ

心揺さぶられました。
涙がポロポロこぼれました。
なんですか、この作品は。
痛くて、苦しくて、それを凌駕するキレイな世界がありました。

残念ながら私には、どんな言葉を弄しても、この世界観の美しさを表現することができません。
下で皆さんがとても素晴らしいレビューをされているので、こんなおポンチな感想文よりそちらを参考にしてくださいませ。
(他力本願ごめんなさい)



思えば、安西リカ先生の「バースデー」を読んでから、でした。
長らく離れていたBL小説を、また読もうという気持ちにさせられたのは。
その時の「頭をガツンとやられた感じ」を思い出しました。

未読の方は是非読んで!
この衝撃を体験してほしい!

1

怖がっていた自分が恥ずかしい

ずっと気になっていた作品でした。

レビューを読んで怯み、なかなか購入できずにいました。性陵辱、痛さ、切なさ、瀕死……読むのが怖いけど高評価だし読んでみたい…でも…の応酬。ほんわか子育て小説を中和剤として一緒に購入し、読後気分が落ち込んだら2冊目ゴー!しようと思い、準備万端で臨みました。


あーーー…!!何だよぉ、いい話だったよぉ。
準備要らなかったー!

確かに上記描写はあったけど、安西先生の言葉選びのなせる技でしょうか。そこまで悲壮感を感じずサクサク読めました。でも悲しく痛いシーンは確かにあるので、読み流せない方はしんどいかもです。


ダークファンタジー。
そういうカテゴリーみたいですが、結末はウルトラハッピーエンド。魔法スパイスもあってアシュが元の姿に回復するというお土産付き。ファンタジー、バンザイ!
中身こそ性奴隷シーンもあり胸が痛みますが、あまり引きずらずに読めたのは、主人公アシュが強くて前向きな性格だったからだと思います。

文章も堅くなくてすごく読みやすいし、ストーリーがとても良いです。結末まで淀みなく進んで一気読みしました。登場人物のキャラクター、特にサージに惚れた読者も多かったはず。
大人の身体で幼い話し方(逆コナン状態)…これで性交、性交と連発するするもんだから、可愛いくて萌えます。
サージの思考が幼いからこそ、アシュが死の淵にいたとき、この状況が分かっているのか分かっていないのか…。普通に話している様子が、このシーンの悲しみを盛り上げていました。感情が揺さぶられたシーンです。鼻の奥がツーンと痛い……


とても幸せな気持ちになりました。痛々しいアシュの過去のことなど忘れるほどです。夜空をアシュとサージで飛び回る幻想的なシーンはまるでおとぎ話そのもの。

アシュとサージの恋人同士のようなやりとりが好きです。
サージが指輪を買ってきてアシュにあげたシーン。
アシュの長い髪が好きだと言って撫でてあげたシーン。
……アシュがほのかに頬をピンク色にして、はにかんでいる笑顔が目に浮かびます。どれも胸キュンです。

しばらくこの余韻を楽しんでいきたいです。

3

浄化されるようでした

美しい物語です。

yoco先生のクリムトを思わせるような表紙が素敵ですよね。ファンタジー苦手科目なのですが、安西先生印なので購入、長らく積んでたのですが、読みはじめると引き込まれて一気…感情がボッコボコに抉られました。
ハンカチ必携です。

聖職者たちの慰みものとして不遇な少年時代を過ごしたアシュが、その知恵と胆力で脱走し流浪の生活を送っていたところ、聖獣の雛を拾い育てるところから始まる…愛についてのお話。子供が大人に搾取されるという描写はかなりしんどいものがありましたが、だからこそ、神の名を騙った権力者たちの醜悪さと、権力から離れた世界の美しさの対比が際立ちます。さらに、そこから這い上がって人生を切り開いたアシュの強さに圧倒されるのでした。

アシュが聖獣の雛に対して、”こんなにいたいけな生き物をなぜ殺さなければならないのか”と考える場面は、自分が大人たちにされた仕打ちと、幼いうちに殺される聖獣の宿命をかさねているようにみえます。今まで虐げられて社会の裏を見てきたから、一般常識じゃなく直感を信じて、聖獣を育てるという一種の賭けに出る行動がよくわかる気がしました。結果、アシュがこの賭けに勝つのも気持ちがいいです。

後半は成長した聖獣・サージの、一途で美しい愛情にやられっぱなしでした。番が死んだら迷わすに自分も死ぬという聖獣は、純粋で無垢な魂そのもの。恐ろしくて危険というのは人間の利己心から出たイメージだったのだなと思わされるのでした。

サージを育て愛を知ったアシュが、サージから愛を与えられるという流れがすごく効いてくるな~と思ったのは、えちえちではなく、瀕死のアシュをサージが献身的に看護する穏やかな日々の描写でした。二人の交流が美しすぎて涙が止まらず…。そして、”ええええ…この流れだと、もしかして…”と不安にかられたのですが、、この後の展開はいい意味で裏切られました。やっぱりファンタジーには救済がほしいですから。

語彙が豊富でないサージの台詞は、どれもシンプルに本質的なこと伝えてきて印象深いものがありました。
なぜか「俺は成体になったよ」がやたら好きだったんですけど、アシュへの謝意が含まれるような気がしたからです。あと「今、アシュと一緒に駆け抜けただろ」、えちえちの後の一言。日課の空中散歩をしなくていいのかと尋ねるアシュへの返しがかっこよすぎ、そして、どの言葉にも相手へのあたたかい気持ちが感じられて素敵だなと思ったのでした。

というわけで、神です。

5

重苦しい

 序盤は軽く痛めな描写がある。小汚いおっさん共の慰み物にされているアシュ。中盤あたりに出てくる、アシュの次に同じ目にあってる少年たちの最期が悲惨。
 初エッチシーンが、おねショタ感があってたまらん。(外見は大人の男だが、精神はショタみがある)
 終盤、メリバエンドかなと思っていたけど全然そんなこと無かった。

 終わりに出てくるサラとその子供タマラが要らなすぎる。電子限定SSでも出てくるけど、君らアシュとサージの居るとこに来すぎです。子供の制御もできないサラもダメな母親。

4

感想を言葉にできない

サージの愛が大きくて温かくて、最後の方は涙でぐちゃぐちゃになりながら読みました。
「これが最後だ」と二人が夜空を駆けるところは、何度読み返しても泣いてしまいます。今も読み返してまた泣いてしまっています。


アッシュの人生は壮絶でとても辛い。
生きること・自由であることだけを目的に生きてきたアッシュが、サージと出会い育み生活するうちに少しずつ変わっていく。変わっていくというよりも、元来のアッシュに戻っていくというか。
サージと出会わなければ、アッシュは嘗ての自分を同じ境遇の子供を救いにはいかなかっただろう。

サージは最初からずっとアッシュを真っ直ぐに慕い続ける。
人じゃなく聖獣だからなのか、サージのアッシュへの愛は本当に深くて大きい。揺るがない。
でもアッシュのためなら人を傷つけることを厭わない。純粋だからこそ残虐な一面も持っていると思う。

アッシュもサージも清らかなだけの存在ではない。
二人とも善悪一面的ではない。その辺も題名の所以なのでしょうか。
そういう意味では、カーリンも過去の行いは悪だけれど、今の彼は(復讐心が全く無いとは言えないかもしれないけれど)良心の下で行動していて、とても味わいのある人物として書かれていると思う。


考察するにしても作品の魅力がどんどん溢れてきてつらつら書いてしまいます。
が、何よりこの物語の一番のクライマックスは、最後の二人が空を駆ける部分だと思います。
アッシュの視点で描かれる景色、アッシュの心情、もう心ごと全て持っていかれます。

感想でこんなこと言うのもどうかと思うのですが、本当に言葉にできません。
この感動をあなたにも感じてもらいたいので、どうか読んください。
そして涙で目を腫らしたまま互いに頷きあいたいです。
この物語めっちゃ最高じゃん、と。

6

泣いたー!

序盤から一気に物語に引き込まれて、終盤でごっそり心を持ってかれました。

以下ネタバレありなのでご注意を

物語の後半、王都祭礼の時に大火傷を負ったアシュが徐々に死へと向かっていくシーンでは、好ましい状況ではないにもかかわらず、アシュとサージの間に流れる優しく穏やかな時間に、2人は幸せなんだなぁと嬉しくもあり、悲しくもあり。アシュに迫る死を自然に受け入れ、自身も当然のように後を追うつもりでいるサージと、お互いの繋がりの深さ、サージの幸せとは何かを再認識するアシュに、あぁこんなに幸せそうなら2人の死も受け入れよう(必要なかった)、攻めも受けも死ぬお話読むの初めてだなぁ(初めてにならなかった)、なんて思いながら読んでました。たいていBL小説で攻めか受けが死にそうな展開になっても、はいはいどうせ死なないんでしょ、と斜に構えてしまう(だってほんとに滅多に死なない)私ですが、今回ばかりは2人の死を受け入れました。

子供がえりしたようにサージに甘えるアシュと、美しい容姿を失ったアシュに変わらず愛を捧げ、献身的に尽くすサージ。
胸がいっぱいになってしまい、数行読んではスマホ(電子版なので)から顔をあげ深呼吸…をひたすらループし、しまいには切なさに耐えきれず感極まって涙と鼻水が出てきました。
最期になるであろう夜、アシュが声を出して笑ったことに、初めて涙を流すサージ。初めてじゃない涙を流す私。マスクの中がぐちゃぐちゃ。
これを通勤のバスの中でやってたもんで、平日の早朝からスマホをちょっと見てはため息を繰り返し、しまいには泣き出す情緒不安定な女が出来上がりました。隣の乗客が気持ち距離を取ったのは気のせいではないはず。
大丈夫。心配ご無用ですよ。元気に生きています。

好きなシーンは物語終盤のサージがアシュを乗せて空を駆けるところ。神秘的な描写に感動し、一文一文大事に読みました。童話を読んでいるようで、子供の頃読んだ『エルマーとりゅう』や映画『ハウルの動く城』の子供のハウルがカルシファーと契約するシーン(伝われー)の情景が浮かびました。

6

珠玉の人外×不遇受け!

完全に私の性癖に刺さった作品でした。不遇の受け好き。頑なに誰にも心を許さず甘える事さえしたことが無かった主人公アシュが、伝説の聖獣と出逢って、愛と生命力溢れる人間になってゆくお話しです。

風景描写、人物の行動や感情表現が細やかで、切なくなるシーンがたくさんありました。植物に隠れてしまう古い空き家に暮らすアシュとサージが目に浮かびました。
貧しい暮らしの中でも、唯一無二の愛しい養い子の未来の幸福だけを望む健気なアシュ。

アシュの一挙一動に目が離せなくなり、不眠不休で(とはいっても珈琲飲みながら)、一気読みしました。

伝説の聖獣の生態や習性が謎に包まれているのですが、そこが心和む不思議な魅力になっています。読後は余韻に浸れて満足でした。

5

一気読み

夜中に読み始めなくても良かった。

安西先生の描く人物描写に、やっぱり好きだなぁ。と、思いました。
とてもフラットにその人物の思考、心情が伝わってくる描き方だなぁと思うんです。
登場人物次第で物語が進む感じがするという感じなんです。
なんかちゃんと表現できてるかどうかわからないんですけど。
最終的にどうなるか考えたりせずに、ドキドキやハラハラやワクワクでページをめくる指が踊ってました。
とにかく、すごく良かった。

再読間違いなしです。
やっぱり愛が溢れてる話は最高です。



5

2人の絆の奇跡。

ラストに向かって、涙があふれたファンタジー( TДT)
えっ!?これってまさか‥と胸が痛かったです。


受け様は、銀髪に碧い瞳を持つ美しい容貌のアシュ。
『神の愛し子』と称して聖殿に軟禁され聖職者の慰み者だったのを、逃げ出した過去を持つ。

自由を手に入れたアシュが流浪していた時、聖獣ドライトンの卵を孵し、サージと名付けて親代わりに育てることに。

成長に合わせて姿を変え、いつしか人好きのする溌剌とした青年へと成長したサージ。
こちらが今作の攻め様。

生きる目的のなかったアシュは、サージを慈しみ育てる事に喜びを見いだし、生き甲斐になっていく。
2人手を取り合って生きてきて、相手が自分にとっての唯一無二のかけがえのない存在に。


必死に生きてきたアシュが、ようやく手に入れた穏やかな日々の中、成体となったサージからの求愛。
アシュを求めるサージの、率直な言葉や態度がよかった。


『神の愛し子』が今でも聖殿で苦しんでいる、と知ったアシュ。
あの時の、助けを求めていた自分を助けたい、と動いたアシュは、本当に強く美しかった。

火事でひどい火傷を負い、徐々に衰弱していくアシュの様子を読んでいくにつれ、まさかまさか‥と苦しかった( TДT)
全てを受け入れていたサージの潔さにも。
サージを宿した卵を拾った場所での、夏の終わりの夕暮れのシーンとか、その静謐とした強さ美しさ。
2人の絆の強さに感涙です・゜・(つД`)・゜・
何度も繰り返し読みました。


イラストはyoco先生。
作品の世界観にピッタリの美しさでした。

11

涙なくして読めない感動作品

安西リカ先生の作品としてはずいぶん変わり種のファンタジーだと思って読み始めました。
安西先生ですよねと表紙を確認したくらい内容も設定も異色です。

底辺で刹那的に生きながらもなんとかしたいともがく少年が、偶然手にした愛しいもののために精一杯生きようとするところに感動しました。

貧民窟で生まれた美しい少年 アシュ。
奴隷市で聖職者に買われ、聖殿の司祭に「神の愛し子」と称され邪悪を追い出す儀式として組み敷かれる毎日の中で従順に従うように思わせながらいつか逃げ出す日を画策するのでした。

逆境に負けずに頑張る子は好きです。
手を差し伸べてくれるスパダリや特別な力を授けてくれる「何か」もいません。
頑張る人を応援する人と信じる人、そしてひたすら愛するものの存在が奇跡を呼んだのだと思います。

聖殿で出会った薬師のカーリンの人物像が魅力的です。
美しいものが大好きな元裕福な商家の子息です。
期せずしてアシュの逃亡のきっかけを作り助けることになるのですが、アシュによって彼自身が助けられ道を誤らずに人のために生きようと思える分岐点になったのだと思いました。
特典ペーパー(『神の芸術』)のカーリン視点の短編は彼の生き方と嗜好が見えて面白いです。
入手可能でしたらお勧めしたいです。

終盤、騒動のあと大けがを負ったアシュとサージの儚くも穏やかな日々の描写に一層涙を誘われました。
サージの語り掛ける言葉が優しくて泣かされました。

8

尊い

安西リカ先生のこちらの作品、バースデーと並ぶくらい好きです!感動しました。
主人公のアシュは辛い境遇にいますが、彼は自由になることを諦めない、賢くて強かなところがすごくいい。運命なんてくそくらえの精神を持つ受け、大好きならないわけがない!
攻め(と言う表現をこの作品ではあまりしたくないけど便宜上)のサージもアシュだけをひたむきに愛している姿が胸に迫ってくるんです。それに脇キャラもいい。
後半はずっと泣きっぱなしでした。特にP216〜の安西先生特有の柔らい筆致とP217のyoko先生の挿絵は必見です。こんなに美しい調和は滅多にないです。尊いってこういう作品を指すものだな、と改めて感じました。これはたくさんの人に読んで欲しい〜!

7

心に響く作品

神の愛し子として聖職者の慰み者にされていたアシュが自由の為に逃げ、逃げた先で拾ったのが聖獣ドライトンのサージ。
アシュ目線でお話は進みますが、アシュの心情が丁寧に書かれていて胸打たれました。あとがきで安西先生がダークファンタジーと書いてらっしゃって、確かにしんどい場面も多いけどアシュとサージに、周りの人達の想いや優しさに救われました。
胸に希望が灯るような作品でした。素晴らしかった

7

神の真意とは

今回は絶滅したとされる聖獣と聖職者を偽称する青年のお話です。

踏みつけられる人生を逃れた受様が攻様を出会い、
歪んでしまった国の理に一石を投じるまで。

この国は神リエラを祀る王族を頂きますが
王都の聖殿が国の権威の象徴であることから
聖職者たちは神託により人々を支配しています。

受様は親を知らず貧民屈で生きてきますが
奴隷商人にさらわれ奴隷市の商品となります。

受様の額には4枚の花弁に似た傷があったことから
聖殿の司祭に「神の愛し子」として買われます。

「神の愛し子」とは生涯独身を守る聖職者が
「邪悪を追い出す」儀式で組み敷くための子で
貧民窟でも犯され続けた受様は無駄な抵抗もせず
彼らに従います。

しかし受様は不用品として「天に召される」事を
良しとせず、聖殿に通っていた薬師から知恵を学び
祝祭の夜に聖殿から逃げ出します。

受様はいずれ捕らわれて処刑される覚悟を秘め
聖殿での振舞や知識を生かして巡礼の聖者と偽り
聖堂の戸を叩いて司祭を誘惑した後は
司祭の代理を騙って有力者からの寄付を集い、
聖堂の金品や装飾品も奪い、次の地へと移り続けます。

そして4年、立ち寄った食堂で
世話をしてくれた娘から聖獣の里の存在を知ります。

その聖獣ドライトンは涙が万能薬となり、
鱗は宝石の美しさを持ちましたが、
凶暴性故に幼獣のうちから駆逐されるようになり
今では絶滅したとされているそう。

受様は町から離れる際にあやしい荷馬車に乗り
山中で夜盗に襲われてしまいます。

逃げるうちに崖を転げ落ち、
淡い光を漏らす不思議な洞穴に辿り着くのですが
光の溢れていた場所を掘り起こすと光を発する
大きな石と欠片と球状なものを発見します。

夜が更ける中、
いつの間にか眠っていた受様でしたが
膝と腹の間で何かが蠢く感覚で目覚めます。

球状のものが発光して表面が割れ始め
くうくうと悲しげに鳴いて出てきた黒い塊こそ
今回の攻様になります♪

攻様は動揺する受様の指ににじんだ血を舐め
受様は塊を手の中で包み、温め続けます。

果たして不思議な卵から生まれた攻様の正体とは!?
そして攻様に関わってしまった受様の未来とは!?

絶滅したと言われる聖獣の攻様と
過酷な生を独力で切り開いた受様との
種族を超えた恋物語となります♪

貧民窟で育ち、奴隷商人に売られてからは
聖職者の慰め者とされた理不尽な現実を直視し

自由を得るために知恵をつけ
隙のできる一瞬に賭けて聖殿を逃げ出し
ただ自由に生きる事を望んだ受様の物語は
物語の序盤からかなり悲惨です。

己の罪を自覚しながらも
自由に生きる道を選んだ受様でしたが
攻様との出会いがその生き方を変えていきます。

攻様を育てるために聖獣の里の
外れの小屋で薬師もどきを始める受様に
聖獣ドライトンである攻様は良く懐きますが
伝説の中でも人に害をなす狂暴な害獣とされていて
受様は攻様を失うかもしれないと恐怖します。

しかし攻様は受様に似た容姿の幼い子供へと変化し
受様は攻様を養い子として再び旅に出るのです。

そして旅の間に人ではありえない成長を見せた
攻様のために聖獣に関する知識を求めた事から
2人の未来は大きく変化していくのです。

丁寧に張られた伏線に隠された聖獣の謎と秘密、
受様に読み書きや薬の知識を与えた薬師との再会、
成獣への兆しを見せ始めた攻様の変化、
神の愛し子だっただろう少年の死、

そしてかつて受様を貪った聖職者達の変らない姿を
目にした受様は怒りを抑えられません。

受様がどうなるのか、攻様がどうするのか、
誰が味方なのか、敵なのか。

不穏さを増していく状況にハラハラし、
一途に受様を慕う攻様の恋の行方にドキドキしながら
たいへん楽しく読ませて頂きました。

誰かにも大切にさせずに孤独に生きてきた受様にとって
一途に受様を慕う攻様の想いは嬉しくあっても
同じ種でない受様には受け入れられません。

攻様と別れても正しい未来をと望み続ける
受様に胸が締め付けられました。
そして何よりも受様だけを慕い
守り続ける攻様にもすごく萌えました。

繊細で静謐な中に潜む暗い情感までもを
感じさせるyoco先生のイラストも物語の雰囲気に
とてもマッチしていて素敵でした (^-^)v

11

綺麗なだけではないファンタジー

いつものほんわかとした安西リカ先生の雰囲気とは異なるお話、アシュの過去の壮絶さと彼の拠り所になっているサージとの関係にほっこりします。

攻めのサージが本当に可愛い……厳しい世界観が牙を剥くこともある本作の中で、サージの存在は和む要素でした。
サージのキャラクター付け、好きです。
アシュがこんなにもしたたかに頼もしく感じるのは、彼の言動に一貫性があるからでしょうか。
生きていく上で必要なものを持っている、そういう強い受けが大好きなのでアシュに対する好感度がかなーり高めのまま読むことができて良かった…!

終盤のとあるシーンがロマンチックで、情景と二人の心情の結び付け方が安西リカ先生特有の穏やかさで好きでした!
愛の深く豊かなサージが攻めなのが先生節ですよね!
ストーリーや描写が本当に素敵でした。こういうファンタジーがもっと読みたいです…!
余韻のあるラストが素敵。

攻めのサージの「発育」がこの小説の旨味成分なのでは…と思ってしまうほどサージのカッコよさと内面の幼さのギャップ…育ての親と仔、本当に好きな攻め。
個人的に安西リカ先生の攻めは絶対の信頼を寄せているので、今回もワクワクしていたんですが…良かったです…最高に好きなやつでした…////

12

好き

聖職者にいいように扱われてきたアシュが、サージを見つけて唯一と言える者が出来た。暗い空に一本の光が差すような、神秘的なものを感じた。ドライトンが狼や竜のような姿に変形できる進化が面白かった。勝手な想像だけど、番でなければ孵化させる事が出来なかったのかも。そして、ドライトンの最期を誰も知らないのは、番と二人きりでそれを迎えるから、見た人がいないのだと思った。アッシュが自分と同じ境涯の子を助けた時には、他が介入できない強い力を感じた。誰かを思う心は勇気で優しさだと思った。安西先生のファンタジー、好きだな♪♪yoko先生のイラストも素晴らしくて、物語の世界に惹き込まれた♡

12

美しく強い人

作中に登場する"レモンの形の月"という言葉が好き。
なんだかとても印象的で、ロマンティックで素敵な表現でした。

なかなかの辛い境遇の中にいた主人公・アシュの視点で語られていくファンタジー作品。
物語の序盤から綴られている、過去にアシュがされていたことや育った環境のことを考えると、もっと重苦しくて悲壮感たっぷりのものになったり、痛ましさを強く感じてしまいそう。
しかし、ものすごく重たい雰囲気にはならず、かといって儚さ一辺倒にもならず、お話に惹き込まれてするすると読めてしまう。
不思議な感覚に包まれたまま読み進めると…これは彼が強く美しい人だからこそなのかなと。
「こういう強い主人公のお話が読みたかった」がありました。

ただひたすらに、がむしゃらに自由を求めて必死に生きていたアシュが、サージと出逢ってから安らぎや愛おしさを知っていくのがとても良いのです。
導入部分にある、このお話を象徴するかのような文章と、yoco先生の美麗なイラストもあって、お伽噺のような雰囲気も感じる。
お話もすごく面白いんです。本当に。
惹きつけられるものがあります。

それだけに、BL的なあれそれの部分では、子育てものの定番な流れになってしまった部分がやや惜しいなと。
アシュの過去を見ると、やはり性的なものや欲望を向けられることを、生きるために利用はしても、あまり良いイメージは持っていない気がするんですね。
なので、愛する者との愛のある行為は、アシュの中にいまだに残っている性に対してのイメージを上書きする…ではないですけれど、愛も救いもある素敵なシーンのひとつだとは思うのです。
サージの成長が分かるシーンでもあり、萌えどころなのだとも思う。
でも、なんだか私は何度かあるこの性行為の部分に少し疑問を持ってしまって。
そんなになくてもよかったかなというか、直接的な描写は少なめでも2人の繋がりは伝わったのではないかなと。

ちょっと上手く言葉が出て来ないのですが、行為以外でもアシュへと真っ直ぐに深い愛情を捧ぐサージの姿が初々しかったり、微笑ましいものが十分にあったからなのかもしれないですし、性行為をきっかけに2人の関係がトントンと進んでしまったように感じたからなのかもしれません。
2人の関係性だとか、立場が逆転するかのように頼もしくなっていくサージは良かったんですけど。
安西先生の従来の作品の雰囲気とは少し異なるお話で本当に面白かったので、シリアスとダークさと、お伽噺のようなほんのりロマンティックさが香る作中の空気とあまり合わないかなと感じたのが大きいです。これは完全に好みの問題ですね。

評価に悩みながら、高評価の中大変恐縮なのですが、今回はこちらの評価で。
それから、おそらく少数派だろうなと思いつつ、個人的にはラストはあのままのものも読んでみたかったななんて思ったり。
このラストも余韻があってとても素敵なのですけれど。

10

絶対に読んで欲しい一冊!

もう何て言っていいかわかりません。強いて言うなら安西先生にしてやられたでしょうか?

いつもと違う安西先生作品最高でした。
こちらの作品は詳しい内容は知らずに読んで欲しいです。
ただ、感想でも内容に触れてしまいますので心して読んで下さい。



まず読み始めてアシュの過去の壮絶さと、彼の強かと言えるほどの柔軟さに驚きました。そして聖獣(ドライトン)の卵を拾ってからの、彼の生き甲斐とも言えるサージの存在に和まされるのです。

魅力的に育つサージがアシュに独占欲を見せる度に、いつこの2人が恋人同士になるのだろう。
どうやって害獣と恐れられるドライトンを隠し続けるのかばかり気にして読んでいました。

そしたらですよ!終盤になってあの事件が起こるではありませんか!アシュがあれを決意する気持ちは分かりましたし、聖職者達を追い詰める姿に小気味良ささえ感じていました。

そしてサージが現れてアシュのしたかったことも成し遂げられて聖堂を去ろうとした時に、アシュの身に起きた出来事があまりにも壮絶すぎました。
2人が過去に暮らしていた山小屋で、アシュを静かに見守って世話をするサージに涙が溢れてとまりませんでした。

ARUKU先生の「猿喰山疑獄事件」を思い出して胸が潰れそうになりました。

ただ作中のサラのセリフも頭に残っているので、希望は捨てていませんでした。
それでもアシュの混沌とする意識の描写が秀逸すぎるんです。(安西先生上手すぎました。)
そしてサージがドライトンになって背中にアシュを乗せて最後になるであろう飛行をした場面。とてもロマンティックで悲しくてずっと泣いてしまいました。
そして最後を迎えるべく地上に降りた2人。

その後の怒涛の展開は素晴らしかったです。BLはファンタジーであると常々思っていますが、まさにこの作品がそうでした。

多くの方に読んで欲しい作品でした。

14

怒り

先生買い。腐った聖職者へぶつける清冽な怒り、その後の浄化再生のあたりがとても好きだったので神にしました。シリアス寄り、どファンタジーが大丈夫な方でしたら是非。いつもの安西先生テイストとは異なるお話、本編250p弱+あとがき。

奴隷市で聖職者に買われ、彼らの欲望を身に受けていたアシュ。磨き上げられ飾り立てられた美貌の底に、彼らに対する怒りを秘め、諦めず、ある日とうとう無事逃げ出すことに成功します。それから4年、各地で同じようなことをする聖職者などからスキを見て金品を奪い取り転々と移動する毎日。ある日逃げ込んだ山の中で光を放つ卵のようなものを見つけ・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
カーリン(薬師、アシュに知を授けた人)、サラ(ある町で救おうとした少女)、悪党ども。

++良かったところ

サージが最初可愛くって。得体のしれないちっこい動物だったのが、ある日人型を取れるようになって、「ああしゅ」なんて呼びかけてくれたら、どうでしょう?
たった一人きり、いつ何がどうなるかもわからない、目的もない人生だったのに、ずっとそばにいる、守るべきものが出来、アシュの変わっていく様子がたまりませんでした。サージが無事だったと知って流す涙はきっととても美しかったはず・・

そしてアシュ。強いです。何がどうしてこんなに強いのでしょうか?カーリンの授けた知性が彼を支えたのかな。虐げられてもあきらめず、自由を勝ち取り、サージを守り、最後は自らが出来ることをやり遂げようとする。本当に強いです。この強さに感動を覚えました。怒りという感情はあまり好きなものではありませんが、アシュの抱いた怒りの感情は、清らかな、物事を正す炎のように感じられました。

やはり神がなんらかの意図をもって、アシュを遣わしたのでは?彼の人生を企んだのではと思うのです。神の想いをかなえたのだと思うのです。このまま二人安らかに穏やかに幸せな日々をおくれることを願った、読後の余韻が続く一冊でした。

9

こういうBL小説もっと増えて欲しい

いつもの安西先生と違う!とyoco先生の描いた美しい表紙からでも伝わってきて、読む前からワクワクドキドキしました。

アシュは過酷な幼少期を過ごしているのに、そこで拗らせず、自由を手に入れるために前へ前へと進んでいく受けです。
めちゃくちゃ好みの受けで、強さと儚さをもってる美人は最高、となりました。

サージは年下の純粋ワンコなのですが、アシュへの愛が太平洋なみで、こちらもとても最高の攻めでした。

読み進めていくなかで、予想だにしない怒涛の展開が訪れてこちらの情緒も揺さぶられましたが、最後は完全なるハッピーエンドなので、読了後の情緒はすっきり爽快感謝感激ありがとう安西先生とyoco先生、出版社、となりました。

話が面白かった。恋愛だけじゃないファンタジーってこんなに面白いんだ、と思いました。

他の方がネタバレは書いているのでそこは書かないでおきますが、
あるシーンのyoco先生の挿絵がめっっっっちゃくちゃ良かったです。泣きました。
読者に想像させる余白があるイラストってこんなにも心に響くのか、と。
勿論どの挿絵も素敵だったのですが、あるシーンの挿絵が一番好きです。

安西リカ先生×yoco先生、神の組み合わせ。
もっとこういうBL小説を読みたいと強く思ったそんな一冊でした。

13

悔し泣きは少数派?

安西先生とyoco先生って、素敵な組み合わせ!と飛びつきました。

安西先生の読みやすい文章で淡々と仄暗いストーリーが語られ、すぐに引き込まれたのですが…!!
途中、度々やってくる物語の無情に、何度嘆いたか〜(¬_¬)神も仏もない。
終盤にいたってはあまりの無情に悔しくて泣きました。
自分ではない誰かのために頑張ったのにこれかー。と。

いきなり終盤まで語ってしまいましたが、ラストの話をする前に、萌えの話をしたいです。
過去に酷い境遇に置かれていたアシュが、絶滅したはずの聖獣の卵を拾い、生まれた仔を育てていき…というお話なんですが、聖獣だからか成長の早いこと( ´ ▽ ` )仔は、サージと名付けられたのですが、あっという間にハツラツとした美丈夫に。
サージの見た目は大人であっても、内面はまだ外見に追いついておらず、アシュが誰かに優しくすると嫌な気持ちになるって言っちゃったりして、かわいい〜んです♡
サージの、アシュにして貰った精通からの性行への流れ!良きです!(精通といってもサージの見た目が大人なので、背徳感は薄れて/もしくはほぼ無いかと)
ここから先、サージも外見に見合った内面になり、どんどん格好良くなっていきます!アシュにもバンバン愛を囁きます!

恋愛面で良い萌えを楽しみながら、ストーリーは終盤へ。ここでの感想は冒頭で語った通りです。私、悔し泣きです。
でもですねー、悔し涙の後からは、もうサージの愛の深さに涙、涙だったのです。あまくて幸せで。゚(゚´ω`゚)゚。
そっか、二人は幸せなんだと思って、どんなラストでも受け入れる。という心づもりでいたのですが。
いらぬ心づもりだったようです。

とびきりのハッピーエンドになりましたよー♬

9

深い深い愛情に、萌えと涙が止まらない

安西先生って、ほのぼのっていうか甘々っていうか。そういうお話を書かれる作家さまのイメージが強い作家さまでしたが、数年前からですかね。どっしりとしたハードなお話も描かれるようになった気がしています。

で、今作品はがっつりドシリアス。ダークなバックボーンを孕んだ作品でした。安西先生らしい甘々なお話を求めて手に取られると、若干方向性が違うかと思われます。

でもねえ…、めっちゃ良かった…。
深い深い愛を描いた作品で、心に突き刺さった感じ。子どもが大人の汚い欲望のはけ口になる描写があります。苦手な方は注意が必要かもです。


主人公はアシュ。
親に捨てられ、その日暮らしをしていた彼は幼少期に人さらいにつかまり売り飛ばされることに。可愛らしいビジュアルをしていたアシュは、「神の愛し子」という名のもと、聖職者(や、他の大人たち)の慰み者になっていた。

ここで終わりたくないと思ったアシュは、必死の思いで逃げ出すが、逃げた先で彼は見つけてしまう。絶滅したと思われている、聖獣と呼ばれる「ドライトン」の卵を。

卵から孵ったその雛にサージと名付け、ともに暮らし始めるが―。

序盤からアシュの過酷な環境に胸が痛くなり、けれど正直に言ってしまうとありきたりなお話だなと思ったことも否めない。「聖職者」と呼ばれる、人の皮をかぶったケダモノと、見目麗しいがゆえに彼らの慰み者になる少年、のお話なんだと。

けれど、ドライトンという聖獣と出会い、そこから紡がれていくストーリーに圧倒されました。けして、ほのぼのなファンタジーものではないんですよ。心も身体も傷つき、必死で逃げたアシュが出会った、サージという存在。一心にアシュを求め、懐き。そんなサージに、どれほどアシュが救われたのか。

だからこそ、アシュはサージの幸せだけを望む。
いつか自分の手元から離れていくであろう、愛しい子に注ぐアシュの見返りを求めない深い愛情に、うっかり落涙しました。

で。

いやもう、サージがイケメンに育ち、スパダリ風になっていくのは想定内。
そんなサージが、アシュだけを愛するようになるのも。

この二人の愛情というベクトルにおいて、そこは揺らぎなく進むのであろうことは。

今作品の素晴らしいところは、アシュとサージ、二人の恋の成就を描いただけではないところにあると思われる。

アシュという青年は、自身が体験した辛い思いから、他人に対してすごく優しいんですね。弱い立場の人を、踏みつけにされる人たちを見捨てることができない。サージへの想いとは別に、彼が世界のすべての人に向ける目のなんと優しいことか。そんなアシュに幸せになってほしいと、ただそれだけを願って読み進めていきますが。

んー。
んんー。
もうね、終盤の流れには涙が止まらなかった。自分の欲だけで動くゲスな大人たちと、アシュのこの清廉な魂の比較が、安西さんの圧倒的な文才をもって紡がれていく。素晴らしいです。

そして、そんなアシュを助けてくれるのもまた、アシュが手を伸ばした人たちだったのも。

アシュは不遇な存在であり続けましたが、それを憂いているだけではなく、自身の足で立ち上がり、つかみ取った。そして彼の優しさが、彼のこともまた、救ってくれたのだと。

人間であるアシュと、ドライトンであるサージの生きる時間軸は異なっていて、彼らの未来はいかほどなのかとハラハラしつつ読み進めましたが、うん。彼らの「行き着く先」についてもきちんと胸に落ちてくる展開だったのもさすがでした。

ずっと、ずっと、彼らはともに有る。
先述しましたが、胸が痛くなる描写は多々あります。けれど、それを上回る、深い愛を描いたストーリーでした。

yocoさんの挿絵も素晴らしく、この作品の持つ世界観にぴったりでした。

どこをどう切り取っても素晴らしく、神×10くらいつけたい素晴らしい神作品でした。

18

光差す

『聖邪』というタイトルが目を惹きました。
漢字としては真逆の意味を持つ組み合わせですよね…?
清らかなのか、禍々しいのか、どういう意図で『聖邪』としたんだろう、と。

そのアンサーも含めて心打たれる作品でした!
すっっっっっっごい良かった(;/////;)
(良い作品に出会った時に感情表現する語彙が私の中にはコレしかなくてもどかしい)

ちなみに私はファンタジーだと理解するのに何度も文章をなぞるタイプなんですが、この本はすごく読みやすくてスルスルと楽しめました。興味はあるけどファンタジーで二の足踏んでる方がもしいらっしゃいましたら是非!

表紙や口絵カラーが壁に描かれた宗教画みたいなだなぁ…と感じたんですが、あながち間違ってなかったですね…!(﹡´◡`﹡ )くすんだ色味ながらも神々しさがあって素敵です。

作者さん曰く「ダークファンタジー」とのことですが、個人的には光属性も足されているなと感じました。ダークで聖邪なのか…と最初はかなり構えて読んでたんですが、スカッとした気分にもなれますし、かなり切なくて苦しい展開に泣きつつも温かさもあって。読後感は決して悪くありません。良い作品読んだーーー!という心の満足感が大きかったです…!


さてさて。

受け:アシュは「神の愛し子」と勝手な名目で汚い大人達たちの慰み者になっているのですが、目も当てられないぐらい辛い状況でもぜってぇ負けねぇ精神で虎視眈々と隙を狙う強さがある子です。

そして計画を実行し上手く逃げる。

その後は散々嬲られてきた肉体と聖職者の証を武器にして、上手く金品をくすねながら町から町へと歩き渡るのですね。(この強かさがすごくいい!)そんなこんなで「とにかく逃げる・自由を得る」がアシュの生きる理由になっていました。

そして1つの命と出会う(;///;)

これがめっちゃ良くて…!命育てる尊さとか、守りたいものを得た時の強さとか、グッときます。それまで根無し草で人に言えるような生活が出来ていないアシュが命の為に生活を整えて、大切に育てて。そりゃーもうアシュが今までになくイキイキ生きてるので命って偉大…!心温まりながら読みました。

で。
攻め:サージはアシュに育てられた命・聖獣です。生まれたては拳大の毛玉、成長すると狼のようなカタチになり、次第に人型にもなれます。(サージは生まれた瞬間からの成長が細かく描写されるので、成長モノ性癖の方は是非読んで…!!!)

狼タイプで寄り添う姿も良きですが、個人的に初めて人型になった時が最推し。4~5歳ぐらいの幼子で舌ったらずで「あぁしゅ」と呼ぶのが可愛くて可愛くて泣けた(;///;)ほんとね、かわいいの。(成長モノ性癖の方は是非読んで…!!!(大事なことなので2度))

育ての親・アシュ
育てられた仔・サージ

最初は親子そのものでした。アシュがサージに傾ける愛は守りたい一心の無償の愛。それを全身で受け取るサージはとても素直で優しくて良い子に育っていったな~と思います。また、サージは次第に"ナイト"のようにもなっていくのですね。アシュを守りたい、と。

相思相愛なんですが、アシュにとっては親子愛に近く、どちらかというと独り立ちさせる責任感が強い。しかしサージの愛は"アシュは番なんだ"というもの。愛と一口に言えど含まれる感情は多岐にわたるんですよね…。無垢なサージが素直に喜んでる横で戸惑ってるアシュの温度差が切なかった。サージがちょっと可哀想で…(;ω;)

2人の関係が変換期を迎えるきっかけは 性交 です。
(ちなみに精通前のサージは性欲を知らないんですよね。身体に湧き上がる熱に「?」がいっぱい。「アシュたすけて」とお願いし、快感を与えられると「こわい」と零す。なにこれ、アカン…これ性癖の塊きた…シンド…最高…(∩´///`∩)ハァハァハァハァ このシチュ好きな方、絶対いるよね?是非読んで。)

セックスを前にすると気持ちの差が顕著になっていくのですが、アシュが必死に今の立場で留まろうとしているのがなんとも言えないです。最初はただただ戸惑っているようでした。けれど次第に気持ちを押し殺して沈めてるだけに見えてくる。心からサージにとって一番の最幸福だけを願って生きている健気さにグッときました。

ここから一波乱あるのですが、泣かずには居られませんでした。
(クソ汚い聖職者共に関してはスッキリ…!物語の世界だけでも勧善懲悪がみたい。)

アシュにとって辛くも幸せな人生の一端。
人と人の繋がり、縁、というものの喜ばしさや大切さも垣間見えます。アシュの優しさで誰かが救われて(一部の愚か者にとってはアレだけど)、巡り巡って返ってくるような、そんな煌めきも感じました。

またアシュとサージは異種族なんですよね。
そうなると愛し合うときにどうしてもつきまとうのが寿命の長さ。コレに関しても遠い未来が想像出来てなんだか安心しました。サージの死生観というか、死に対してごくナチュラルに捉えているところがあって、きっとアシュだけが老いていっても今と何一つ変わらず隣でニコニコしているんだろうなぁ…と。きっとアシュも安心してニコニコしているんじゃないかな。……なんて思ったり。

アシュは子供の時は自分の身を守って、サージを守るのに必死で、同じ境遇の子を助けようとして、ずっとずっと甘えることなく生きてきたけれど、サージと苦難を乗り越えて甘えられるようになったのが心打たれました。アシュが笑うとサージも嬉しい。私も嬉しい。

途中、先を読むのが怖い展開もありました。悲しい幸福感がやるせない気持ちにさせて目の前に迫る現実を見たくなくて、ここで読み終えてしまいたいと思いながらも、ページをめくる手が止まらなくて。けれど最後まで読むと心にただただ穏やかさと充足感に満たされて、とても素敵な作品でした。

6

一途な聖獣に涙…

めちゃめちゃ泣いてしまいました。
ダークファンタジーで重めの仕上がりになっています。

絶滅寸前の聖獣×聖職者の慰み者になっていた青年。
ただの恋物語に終始していないところが素晴らしかったです。

聖職者達に弄ばれて幼少期を過ごしたアシュ。
現実に甘んじず、虎視眈々と脱出の機会を狙っていたアシュが、逃亡中に拾った卵から生まれた聖獣・サージと共に新たな運命に身を投じていくストーリー。

あっという間に大人になったサージが性に目覚めていくところは煽情的。
蔑まれて生きてきたアシュが、サージの愛に心動かされていく過程が丁寧に描かれていて胸に沁みました。
前半の辛い描写があったからこそ、余計に甘さが引き立っていたと思います。

何もないかと思ったら、突然の急展開にドキドキが止まりませんでした。
未だ聖職者達の餌食になっている少年の死を目にし、自分が出来る限りの行動力を示すアシュが素敵なんだけど、同時に刹那的で苦しくなりました。
腐った聖職者達を叫弾し、自身の命すら顧みないアシュの勇気に涙が止まりませんでした。

そして、酷い火傷を負ったアシュに死が迫る中、変わらぬ愛を捧げるサージにまた涙。
サージは、美しいアシュの見た目に惹かれたわけじゃないという事がハッキリ分かります。

一夫一婦で生涯を閉じる聖獣。
アシュが死んだらサージも死ぬ……その運命を静かに受け止めるサージの献身的な愛に胸打たれました。
痛みを堪えながら空を舞う2人の描写が細やかで素晴らしく、壮大さを感じさせる描写に感動。

ハラハラする展開、過酷な運命がラストに向けて収束していく様子に、最後まで目が離せません。
2人の最期が気になって気になって、本を捲る手が止まりませんでした。
憎しみ、悲しみ、愛情、様々な思いが交差する作品で胸が痛む部分もありつつ、読後感は良かったです。
ご都合主義を感じたラストも、まぁ神のご加護って事で。

yoko先生のイラストに涙を誘われるところもあり、余白を残した美しい絵が素晴らしかったです。

6

世界はこんなにも美しい

こちら、受けが育てた子供に執着されて食われると言う、子育てものになります。

これ、普段の甘くて可愛い安西作品を想像してると、あまりに痛くて切ないので悶絶する羽目になると思うんですよね。
世界観もかなりダークなので、読者を選ぶとも思います。
ただ、めちゃくちゃ心を揺さぶられる深い愛の物語なんですよ。
特に終盤、もう涙が止まらなくて。
すごい作品だと思う。

人間の醜い部分がこれでもかと晒されますし、主人公が経験する出来事は痛いなんてものじゃない。
それでも、世界は美しいと言葉にならないほどの感動を与えて貰える。
ぜひ、たくさんの方に読んでいただきたいです。

で、内容ですが、ダークファンタジーを下地とした子育てものであり主人公救済ものでしょうか。

奴隷市で買われ、「神の愛し子」の名目で聖職者達に弄ばれ続けた少年・アシュ。
強い意思のもと逃亡に成功した彼は、現在は偽聖職者として人々を欺きながら暮らしているんですね。
そんな中、絶滅したとされる聖獣の卵を拾いますがー・・・と言うものです。

で、生まれた仔にサージと名付け、育てる事にしたアシュ。
サージとの生活は、何も持たなかった彼に初めて愛しさや安らぎを与えるんですね。
ところがサージが成長すると、自分を番として求めて来て・・と言う流れ。

まずこちら、読んでみての一番の印象ですが。
とにかく受けが痛々しいんですよね。

えーと、安西先生と言うと甘くて可愛い正統派ってイメージだと思うんですけど。
今回、かなり振りきってまして、痛かったり残酷だったりと言う描写がバンバンあります。
序盤のアシュが聖職者達に弄ばれてるエピソードしかり、終盤での痛々しいエピソードしかり。
なんかもう、読んでてめちゃくちゃ痛いんですよね。
文章力のある作家さんなので、その描写自体もとてもリアルですし。
このへんで、読者を選ぶんじゃないかなぁとは思うんですけど。
私も泣きましたし。

ただこちら、そんな状況だからこそ強い意思を持って、逞しく生きる主人公に深く感情移入しちゃいまして。
こう、理不尽な状況に強い怒りを持ち、決して諦めずに逞しく、したたかに生きるんですよね。
その美しさで聖職者達を惑わし、色仕掛けで操って脱走に成功するって感じで。
もう、このへんで強い受けが好きな私はシビれる。
生きる為には何でも利用してやるぜ!的な強さに惹き付けられると言うか。

で、そんな彼が偶然拾って育てるのが、聖獣であるサージ。
人々から狂暴だと恐れられるドライトン(狼みたいな生き物)です。

これね、二人の生活と言うのが、とても優しいしあたたかいのです。
これまで殺伐とした毎日を送ってきたアシュ。
自分を心から信頼し、警戒心一つなく甘えてくるサージとの生活に、アシュが幸せを感じているのがよく分かって。
また、サージが成長して人の姿を取れるようになると、今度は独占欲むき出し。
アシュに近付く人を威嚇しまくりって感じで。
あ~、ちびサージ、めちゃくちゃ可愛いよ!
執着と独占欲を見せ始めるのには、めちゃくちゃ萌えまくりだよ!!と。

で、この作品のすごい所ですが、ここで二人が結ばれて優しい終わりでは無い所。
ここからアシュが他の愛し子を救い出そうとした事で、悲惨な未来に進んで行くんですよね。

とりあえず、その未来はネタバレなしで。
あとは感想だけ書かせてもらいます。

何だろう。
サージの深い愛にとにかく感動なんですよね。
その美しさ故に、波乱の半生を歩んできたアシュ。
彼は見る影も無くなりますが、それでも深い愛で包み込み続けるサージに涙が止まらなくて。
こう、ものすごく痛々しいし哀しいのに、同時にめちゃくちゃ優しいとも感じるのです。
特に、アシュが「世界は美しい」と感じるシーンなんか、もう圧巻。
号泣しましたよ。
レビューを書いてると、また涙が出てきちゃいますよ。
聖獣であるサージの愛って、とてつもなく苛烈であり、そして深いんですよね。
彼にとっては、この哀しい未来が幸せなんだろうと。

ちなみに、ちゃんとハッピーエンドなのでご安心下さい。
これまた号泣しちゃいましたよ。
二人が幸せになって良かった!と、これほど安堵する作品ってなかなか無いですよ。
マジでもうダメかと震えてたよ!

と、そんな感じでとにかくすさまじい作品でした。
感動で心が震えましたよ。

あと一つ、なんとも複雑な心地になった作家さんの現状ですが、彼等(彼女等)が様々な制約の中で作品を書いてると言う事。
リミッターを解除すると、ここまで凄まじい作品が書けるのねと。
作者さんも書かれてましたが、懐の深いショコラ文庫さんに感謝ですね。
や、「作家さんの本当に書きたいものを書いて欲しい」とか言いつつ、同じ口で「最後はやっぱりハッピーエンドじゃなきゃ!」だの「死ネタは絶対ダメ!」だの「あまりに残酷な描写もヤメて」だの好き勝手言ってる自身への自戒も込めて。

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