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表題作の威力が相当にある作品集。
「いつか雨が降るように」
わけありそうな孤独な二人が出会い、暮らし始めるシーンから
物語は始まり、少しづつ二人の秘密が読み手に明かされ、
最後にある選択をするところで幕を閉じるお話です。
孤独を知っている人がぬくもりを知ったらもう孤独だったころには戻れないんだなー・・・と涙、涙。
このお話はネタバレしたくない・・・ぜひぜひ手にとって読んでいただきたい!
「不定周期」「確立変動」
形は違えどこの二人「運命の人」なのでは?
両思いだとか好きという感情を超えて互いを埋めあえる存在として
何度も何度も出会いと別れを繰り返す。
国枝さんのタッチだから甘さを排除した関係として描かれていて読みやすかったです。
「水鏡」
わんこ攻め弱いんです・・・そして一番BLちっくでにまっとできました。
性格悪い子も大好きなんです。ああもっとわんこを振り回してくれ!(笑)
「秘密と嘘」
恋がかなってからが辛いというのは、悲しい。「嘘も方便」なんて言うけれどこの嘘は誰かも幸せにできないと思う。ひと時の幸せと引き換えにするにはこの嘘はあまりにも大きすぎる。
「ひとつのふとん」
兄弟の成長物語。お兄ちゃんは大人なんです。キミが思ってるより。
短編集です。
某ブログでオススメされてた作品で、なにげなく購入したんですが、強烈なパンチをくらってしまいましたyo
全編、私好みでした。
シリアスです、暗いです。でもラストに余韻が残りまくる作品だらけです。
絵も好きでした。硬質なんですが、奥ゆきのある表情ばかりで、裸とキスシーンがめちゃくちゃ色っぽかった。
とくに表題作は、スゴイ構成でした。
予定調和から、180度外れたラスト。ぽかーんとしたの、久しぶりかも。上質の叙述ミステリーを読み終えたときの読後感に似てました。途中思わず冒頭のシーンを見返してしまった。
国枝さんのほかの作品も読んでみたくなりました。
ゾクゾクくる表紙の男。
アウトローな色気が駄々漏れ、挑むような鋭い男の視線・・・
大好きですね。この表紙。
国枝作品は凄い。
どの短編も、話の創りが上手い。
恋愛の工程を軸に丁寧に描いてあるのはもちろんだが、それよりも強調して、訴えかけてくるような人間のずるくて卑しい感情を余すことなく描いてあるのだ。
底辺で生きてきた男が腹をくくった瞬間、凄まじい爆発力を感じた。
男が守るべき健気な愛を押し通した事にとても共感した。
雨よ、すべてを流してくれ
読み返しましたが、良い作品です。
このあいだから、国枝先生の作品を読み返しているんですが、やっぱりいいですね。
代表作『いつか雨が降るように』は、かなりシリアスめなお話。
真木が拾ったのは、記憶をすべて失った少年。成り行きで、少年と暮らし始めるが~からはじまり、徐々に本当のことがわかっていくというお話。
その間にも、二人の間には明らかになる過去とは違った感情が芽生え始めます。
基本的に、本人達が幸せだと思えばそれが幸せだと想いますが、心境はちょっと複雑。
無邪気な笑顔を向けるシロがどうともいえない気持ちにさせてくれます。
他短編たちも、いろいろなものを抱え、しかしたくましく生きているカップル達のお話。
深いんですよね~私の感想じゃ語りつくせないくらいorz
ちなみに巻末に収録されている『呪』は、コミックス『夏時間』の主題作の続編。
昨日そちらを読んだからタイムリーなんですが、あるいみ読まなきゃ良かったと落ち込んだりもしています。続編は読みたいけど・・これじゃ煮え切らない。
是が非でもハッピーエンドな続きが読みたいです。
センセイお願い!
表題作がとにかく好きです。
記憶喪失もの。こういうのって、記憶を失ってた間の記憶は、記憶を取り戻したときには消えちゃうんでしょうか。前に読んだ木原さんの作品では消えちゃってましたが、これはラストのモノローグからして残りそうですよね。憎い匡と愛しい匡の間で悩み苦しむシロを…。匡一のシロに与えられる最後の優しさがそれなんて悲しすぎる。
同時収録の秘密と嘘もあんぐりなお話でした。これは駄目だろ…って。後悔しても反省しても許されないことってありますよね。許したくても許せないことも。私が片桐の立場だったら、どんなに好きでも受け入れられない。過去が全てではないけど、紛れもなくその人の一部ですからね。
続きが気になるお話ばかりだったけど、これでおしまいだからこそHAPPY ENDと言える気もします。どっちの作品も、何も知らない被害者は幸せそうに笑って終わったし。その笑顔が辛すぎるけど。
どの話も一時だけ傍にいて離別もしくは長く続かない不安定。物悲しくて、ドロドロした、不思議な縁で出会った恋人たちの話。
「いつか雨が降るように」
匡一xシロ(白井)
記憶喪失の少年に「シロ」と名前を付けて、面倒を見ている主人公の匡一。少年が階段から転落して記憶を失った理由は、主人公の過去にある。
少年が記憶を取り戻すまで続く、今の平穏。だけど、匡一は罪滅ぼしではなく、本当に少年を慈しみ愛して護っている。
感想:因果は巡る。いつ終るか分からない爆弾を抱えているような関係。
「不定周期」
津田x仁美
幼稚園からの幼馴染の津田に、結婚を報告に来た仁美。仁美はいつも別れの前に訪れる。「あの時の続きをする為に来た」という仁美は津田が好きだった。
仁美は1晩泊り、その足で結婚式に向かう。
「確率変動」
津田x仁美
香港の富豪の娘の家に入り婿した仁美と、津田はパチンコ屋で遭遇する。津田は、一度結婚して離婚していた。仁美はプチホームレスだと言う。相変わらずマイペースの仁美に津田は翻弄される。
でも去年の夏、墜落事故の被害者リストに仁美の名前が有った。幽霊?
「水鏡」
双子の深水x早瀬
早瀬は、深水昇に片思い。
深水昇の弟・流は、兄の大事なものを常に奪い取っていた。弟の流が事故で死亡する。その日から、昇の中に宿る流の意識。
早瀬が昇と抱き合った夜、昇を早瀬に託すと語り、流の意識が昇の中から消えていく。昇は、何故かやっと弟の死を受け入れることが出来るようになっていた。
感想:昇はショックで多重人格になっていたんだと思う。早瀬の愛のカウンセリングで回復。
「秘密と嘘」
片桐x佐々木
姉の元恋人と偶然再会した佐々木。佐々木は姉へしてしまった事を悔いている。
感想:この話が一番因縁ドロドロンだった。
「ひとつのふとん」
一緒に寝て育った兄弟。兄は、独り暮らしを始めて、弟より愛せる人もできた。
兄が大好きだった弟が、兄離れする巣立ちの話。
「呪」
「夏時間」のその後
母の恋人が言った言葉の嘘。あの夏の出来事をすぐに忘れるなんてできない少年。
感想:あの少年は、やっぱりそうなってしまったかー。
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いつか雨が降るように
不定周期
確率変動
水鏡
秘密と嘘
ひとつのふとん
呪
表題作は、やさしさと弱さゆえに人生の悪循環から逃れられない男・匡一と、記憶喪失の少年「シロ」の切ない恋の物語。
なんと描き出しのシーンそのものが伏線になっている、サスペンスタッチの作品です。
表紙絵の傘をさした男が、攻めの匡一。
見るからにカタギではなさげですが、かといってバリバリのヤクザなわけでもない、中途半端なアウトロー。失うものは何一つない…そんな風情の男です。
匡一は、或る雨の日、歩道橋の下に倒れていた記憶喪失の少年を拾います。ぶっきらぼうな匡一に優しさを感じとり、匡一の家に居ついてしまう少年。匡一は彼に「シロ」と名前をつけ、シロは次第に匡一にとって唯一失いたくない大切な存在になっていくのですが…
46ページの短編ながら人物描写が細やか。BLの世界には見た目だけで瞬時に惹かれあうカプも多いですが、この作品には二人の人となりや人恋しさがしっかり描き込まれていて、何故二人がお互いに離れられない存在になっていくのか?という辺りに、とても説得力があります。だからこそ、衝撃的なラストにも共感できる。
後半はシリアスな内容になってきますが、重たさを感じさせない画風と、核心の部分は描かず、余韻で感じ取れる仕掛けになっていることで、内容の割にさらっと読めます。
年上の匡一がシロの健気さに惹かれ、彼のペースに呑まれていく辺りの描写も、テンポが良くて楽しい。
ただ、匡一を信じ切ってるシロの笑顔が、逆に切なくて胸に刺さります。
伏線の仕込み方と、後半の伏線回収の手並みも鮮やかですね。
匡一が少年に付けた「シロ」というふざけた名前にも、実は哀しい過去が隠されていて…
笑って読んだシーンが後々事実関係が分かって来ると一転して暗い意味を持つようになったり。至るところでハッとさせられ、気が抜けません。
よくあるストーリーと言えばそうなんですが、冒頭のシーンの切り取り方といい、過不足を感じさせない情報の盛り込み方といい、匡一が醸し出す独特の空気感といい、テクニカルで完成度の高い作品だと思います。
表題作同様、同時収録作品にも(「水鏡」以外)全て、ダメな男が登場します。このダメな男たちが、読み進むうちに何故か愛おしくなる…人間の弱さと、弱さゆえに漂う哀愁と男の魅力を、じわっと感じさせてくれる一冊です。
(「水鏡」は斎藤工主演で映画化されています。)
国枝先生の作品は皮肉と不条理に満ちている。
たとえばロアルド・ダールや、アルベルト・モラヴィアを彷彿ともさせるんだが、
ダールよりももっと暗いし、モラヴィアよりも現実的だ。
とくに、表題作と「秘密と嘘」が秀逸。
ラストの数コマで頭の中が真っ白になる。
爆弾を抱えながら愛を求める人たちが痛い。
こういうの好きな人はね、
ぜひ、ベルナルド・ベルトルッチ監督の映画「暗殺の森」を見ていただきたいです。
ラストの虚しさと恐ろしさが似てるんですよ、国枝先生のトーンに。
あ、原作は前述のモラヴィアね。
絵柄は山田ユギ先生にも似たさらっとしたどっかレトロな和風
それにヨーロッパのミステリー小説みたいなストーリー流し込んでるのがね
最初はちょっと違和感あったんだけれども。
でも、さらっとした描線がリリカルな怖さあるなぁと。
水上シン先生と似通ったところもあるんだが、
水上先生のようにガチガチに描いていない分、
淡々とした心理的な恐怖感がドカーンときます。
読み終わって、「今の気持ちを一言でどうぞ」と聞かれたら、こう答えます。
「つらい」
生きていくのは楽しいだけじゃない。
楽しい以外の感情をぎゅっと詰め込んだような1冊でした。
【いつか雨が降るように】 萌2
893をやめてカタギになった匡一が、雨の日に拾った少年。
名前も何もかも記憶のない少年に「シロ」と名付け、2人の生活が始まって…。
あらすじを読んで身構えていたにも関わらず、鳥肌不可避でした。
「思いがけない結末…衝撃の表題作」って、あらすじに書いちゃうの、すごくないですか、出版社の自信が。
身構えていても思いがけなかったし、十分準備していても衝撃でした。
他の方の衝撃を奪いたくないので、多くは語らないでおきます。
【不定周期】【確率変動】 萌2
幼稚園、中学、大学が一緒だっただけで、特に親しくはなかった津田と仁科。
仁科が結婚式の当日にいきなりやって来て…、という前半と、たまたま入ったパチンコ店で偶然隣り合わせたのが…、という後半。
気持ちがあるわけでもなく、壊れるほどの友情もない。
こちらも衝撃のラストながら、1度のキスと2度のセックスでこころは永遠に囚われたまま…みたいな主人公と一緒にきっと「次」があることを期待してしまうんだなあ。
【水鏡】 萌
早瀬の好きな人は、友人の深水昇。
偶然、深水に双子の弟がいることを知った早瀬は…。
ファンタジー要素というか、双子ならではのトリックが仕掛けられています。
さらに双子ならではの過去があって、同じ遺伝子に同じ顔を持っていても人格は別という双子だからこそ抱く劣等感や嫌悪感が、読んでいてつらかった…。
【秘密と嘘】 萌
怖いなあ…。
少しずつ読者に渡される情報から予想した展開が、大きく外れました。
おそらく正解を予想できた方の方が少ないんじゃないかと思います。
偶然を装って誘いをかけた相手が何者で、主人公に部屋に飾ってある姉と自分の写真。
この情報から、正解を予想できるかどうか、未読の方はぜひトライしてみてください。
【ひとつのふとん】 切ない2
1つ違いの兄が男と寝ているのを見てしまった弟。
いつも失敗ばかりで頼りなくて、自分がいないとだめだと思っていた兄の知らない一面と想いを知った弟の気持ちを思うと胸が苦しい。
「萌」というのではなく、自分のものだと思っていた何かが、実はとっくに自分の手から離れていたことを知った瞬間の喪失感と切なさと寂しさが見事に描かれていました。
【呪】(ジュ) 評価不能
『夏時間』というコミックスのその後を3ページで描いたショートストーリー。
未読なのと、短すぎるので評価はできませんが、これ、絶対本編は心が抉られる作品なんだろうな…。
買おうかな…。怖いな…。でも読みたいな。
作品に気分を引きずられてしまう方は要注意です。
現にわたし、読み終わってから1時間くらい経っていますが、まだ悲しい。
まだ頭の中でこの短編集に出てきた人たちのことを考えてます。
それだけインパクトのある短編ばかりなので、読み応えのある作品を読みたいときにおすすめです。
ただなかなかリセットできない方は明るい作品を用意しておくこともおすすめします。
◆いつか雨が降るように(表題作)
最初は行き倒れの男を拾って一緒に暮らし始めるという王道の話かなと思いましたが、読み進める内に拾われたシロは実は匡一と知り合いだった?という疑問が生まれ、最後にはあっと驚く展開が用意されていました。匡一のとった行動は果たして偽善やエゴでしかないのか、贖罪と言えるのか。人によって受け取り方も異なると思います。たとえシロが記憶を取り戻して自分を恨むようになろうと、自分はその運命を受け入れようという静かな彼の独白と覚悟に、短編ながら胸を打たれました。
◆水鏡
こちらも同じ人を好きになるとか、好きになった相手に区別してもらえないなどの、よくある双子ならではの葛藤を描いた作品かと思ったのですが。双子の弟がいるという昇が心に抱える爆弾は、そんな可愛いものではなくて。ちょっと怖くて、切なくて、いじらしい。クールな昇の痛々しく生きる姿に、同情を誘われる物語でした。早瀬は彼の双子だったという要素も含めて愛すことができそうですね。
◆ひとつのふとん
兄弟愛を描いた作品。これは終わり方が秀逸でしたね。自分がいなければ何もできないと思っていた兄。けれど、初めて兄が自分の元を離れて暮らし始め、本当に執着していたのは自分の方だったと知る弟。そして、兄も自分に好意を寄せていたことを知った時には、既に兄はその気持ちにけりをつけていて。ここで安易なハピエンにしないことで、より読者の心に引っ掛かりと余韻を残す作品になっていたと思います。