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作家さんの新作発表
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作家買い。
『さよなら恋人 またきて友だち』→『さよなら恋人 またきて友だち〜ロスト・チャイルド〜』→『さよなら恋人 またきて友だち-宮内ユキについて-』に続くシリーズ4作目。
『さよなら恋人 またきて友だち』の受け・カナエの兄のユキのターンの2作目にあたります。シリーズものなので前作未読だと理解できません。未読の方は1作目から読まれることをお勧めします。
シリーズ4作目ですが、今作品は、「ユキ」という人物を掘り下げた作品でした。
なぜユキは、オメガのふりをしてウリをしているのか―。
yohaさんはドシリアスで痛い作品を描く作家さま、のイメージで、今作品もそのイメージを損なうことの無いダークな作品です。読んでいて気持ちが温かくなることはないし、とにかく切ない。痛い。
が、読み込んでみると、登場人物たちがとにかく一生懸命に生きてるんですよね。時に失敗をし、右往左往し、お互いに傷つけあい。でも、そこから一生懸命自分の力で這い上がろうとしている。愛する人のために、奮闘する。
今作品は、「ユキ」という人物の過去に焦点が当たっています。
彼の母親が命懸けで弟のカナエを出産したこと。
温かく、優しい両親のもと、幸せに育ってきたこと。
弁護士である父の後輩である鳴海と交流を始めたこと。
そして母亡き後、カナエのヒートの中てられカナエをレイプしてしまったことー。
終盤にオウギ×カナエのほのぼのエピソードが収録されていますが(ちなみに、オウギ×カナエのお話は本誌と打って変わってめっちゃほのぼの。幸せをつかんだ彼らの「その後」が描かれています)、ほぼ丸々1冊を使ってユキの過去が描かれています。そしてそこから、彼の「中身」が描かれている。じっくり描かれているためにユキという青年の中身がまるっと読み取れる展開でした。それ故に、ストーリーとしては進展していません。前作で登場した鳴海の弟に関しても全く描写はなし。
が、ユキの葛藤や孤独、贖罪の気持ちがドーンとあふれてきて、ストーリーに引き込まれます。彼らの心情描写が素晴らしすぎて、読むのがしんどいくらいです。
今シリーズはオウギ×カナエが主人公だと思っていました。
が、シリーズを読み進めていくうちに、今シリーズの本当の主人公はユキなんじゃないかな、と思えて仕方ありません。カナエはユキにレイプされたことで人生が大きく変わりましたが、その事件はユキにとっても彼の人生を大きく変えてしまった。
過去。
現在。
そして未来。
ユキが幸せになってほしいと願ってやみません。
鳴海の弟に関しても幸せな展開は望めず(前作参考)、これからもほのぼのなストーリーにはなりえないと思う。痛いお話が苦手な方には、正直お勧めしづらい作品ではあるのです。けれど、読む手も止められない。
自分を犠牲にして相手を守りたい。
そんな深い愛情に満ちた作品だから、だと思うのです。
ユキの周囲の人物に関する過去のおはなしでした。
作者さんもあとがきに書いていましたが、
「まさか過去回想で一冊使うハメになるとは思わなかったよね...」
いやそれだけ重厚な物語なんだよなーということで私は満足です。
そして今回過去がたくさん描かれた分、
次は現在に戻ってストーリーが進むんだろうなと思うと、
不穏な空気もあるんだろうなと感じつつ、ワクワクします。
前巻で鳴海の弟が駆け落ちをした所まで判明していたので、一気に解決まで行くのかなと思っていました。前巻に比べて薄いのが気になっていたら、ユキと鳴海の過去編でした。
ユキがカナエのヒートに当てられて襲ってしまった事を、父親に言い出せないままにカナエの妊娠が判明しました。
カナエが中絶を決めた事にユキはショックを受けます。それはユキの母親がカナエを産んだ時の話をしてくれた事が、ずっとユキの頭の中にあったからです。
ユキは鳴海の元に預けられます。そしてカナエと自分の子を助けてくれと、鳴海に頼み込むのでした。その当時は鳴海の母親が癌で長くなく、別れた異父弟の父親が財産を狙って母親に近づいていました。酔った鳴海はユキに父親と寝て写真を撮って来てくれと言ってしまうのです。母親の財産があれば子どもを助けられると…。
ユキはその時に初めて身体を売り、写真を持ち帰りました。
帰宅したユキに鳴海は後悔して謝りましたが、結果的に鳴海の母親は再婚せずに亡くなりました。そしてユキは鳴海にカナエが産んだ子どもと引き合わされるのです。ユキはルカと名付けて大切に育てます。
暫く落ち着いた生活を送っていたユキですが、自らの身体を使って鳴海の弟を捜していました。それに気が付いた鳴海は止めさせようとしましたが、ユキは一向に聞き入れません。
ユキを遠ざけようとして最後には弟が亡くなっていたと嘘をついて、鳴海はホテルに逃げ込みます。そこへユキを助けてとルカが現れるのです。倒れていたユキの携帯の中には、自らを痛めつけるかのように男達に身を任せるユキの姿がありました。
ユキは鳴海の弟を捜しながら、カナエを傷付けた自らを罰していたのです。
その事に安堵する鳴海がとても怖かったです。そして鳴海はユキに弟捜しを手伝って欲しいと伝えます。ここまでが前巻の前日譚でした。
書き下ろしはカナエがオウギの両親に挨拶に行く様子です。父親に浮気をしないようにと言われてオウギは反発していました。オウギは大学で新しく世界が広がって誘惑も多いようです。
カナエの知らないユキとルカの秘密を知った事で、オウギの中でカナエが揺るぎないものになっていたのでした。
ルカとベータの正も良いコンビでした。飄々としながら真理をつくような正の言葉が、いつも深いと思って読んでいます。
前作に引き続きのレビューです。
1作目と比べるとページ数が少なく、あれ?なんだか少し本が薄いような?と思ったのです。
しかし、内容はとても濃いものでした。
3分の2がユキと鳴海の回想、残りがオウギとカナエの番外編という構成です。
今までの全てがユキの物語に繋がる前日譚のように感じました。
なぜユキはカナエとの間に出来た子供をあんなに求め望んでいたのか。
今まで本当に謎だったのです。
カナエを愛していたから?自分の子だから?贖罪?と、色々と考えましたが、よく分からなかった。
その理由が今は亡き母親・夏央とのエピソードで明かされます。
そして鳴海との出会い。
ユキと鳴海の現状を知っているだけに、まだ年若い2人の距離が近付けば近付くほど、薄い氷の上を歩いているような危うさを感じてハラハラとする。
カナエとユキのあの出来事から、ユキと鳴海の関係も徐々に歪んでいき、やがて氷は呆気なく割れてしまった。
どちらも心が疲弊し、感覚が麻痺していく。
こんな関係は正しくないと理解をしつつも、互いに互いを利用して己の心の安寧を求めてしまう。
共依存だと言ってしまえばそれで終わりかもしれない。
けれど、昏い安らぎに包まれながら眠る彼らの姿を見て誰がそれを指摘出来るのだろうか。
冒頭のユキと母親のあたたかで優しいやり取りの中で、これが自分の幸せなのだと穏やかに笑っていた母の姿。
人が願う"幸せ"は他の誰のものでもない、自分だけのもの。
ユキが、鳴海が、ルカが、各々の幸せを掴み笑顔になれる日が訪れる事を願ってやみません。
その"幸せ"が読者の私達が想像したものではなかったとしても、それはそれで幸せなんだと思います。
トーンは非常に重たいですが、本当に読ませる作品です。
きっとまだ辛い出来事や展開が続くのだろうなと覚悟しながら、彼らの行く末をこれからも見守りたいと思います。
ああ、私は勘違いしていたのだ。前作を「ルカによる福音書」だと勝手にひとりごち、本作がユキの贖罪の物語だと思い込んでいた。
物語はそんな単純なものでは無い。思えば、絶対的な善という価値観がこの物語には無い。事の発端の物語にしても。オウギは愛するカナエの為に友達にクスリを使ったり、強姦をしたり。結構な罪を犯している。
オウギは男前で優秀な男だけれども、恋の為にはなんだってやってのけるという恐ろしい側面もあるのだ。
それは幼いカナエを陵辱したユキも同じく。バース性の本能に抗えなかったとしても。ユキはオウギとカナエの物語の中では完全な悪なのだ。否、悪だと思っていた。そして、ユキは家族から放逐され、父の部下である鳴海さんに預けられる。鳴海さんはユキとカナエの子であるルカを育てながら、ただ温かく見守っている。そう、彼こそがユキの安寧の場所、完全なる善だと思っていたのに。
鳴海さんもまた自分の苦しみの為に結果的にユキを利用した事になってしまう。苦しくて、とても辛い展開です。
冒頭は突然幼いユキの母親・夏央がカナエを身籠る頃に遡る。妊娠と出産は夏央の身体に負担なのだからと反対する父。しかし夏央はガンとして産むと言う。腹の中に居る子供はもう産まれているのだと。カナエを産んだ夏央は数年後亡くなってしまう。
カナエがユキによる陵辱の末、子供を身籠った際、幼いカナエの為に中絶を勧められるが、ユキは「もう産まれている」から子供を殺させたくは無いと言って泣くのだ。子供を殺させない為には何だってすると。
鳴海さんの苦しみは弟と生き別れになった事だけでは無い。自分たち兄弟を虐待し、苦しめた義父が母親の元に戻ろうとしているのだ。おそらく財産目当てで。鳴海さんはそれが許せない。腹立ち紛れにユキにせがむ。義父を誘惑して証拠を母に突き付けてやりたいと。ユキは鳴海さんの願いを聞いて、画策する。これは酷い。鳴海さんは母が義父を見限ってくれたと高笑いをするのだ。これは酷い。鳴海さんもまた、ユキを利用して傷付けたのだ。こんな酷い事をする人だなんて思わなかった。
人間に勧善懲悪なんて、無い。我々は非力で弱い利己的な動物なのだと、また思い知らされる。
プリズムの様に。角度を変えれば見えてくるものがある。それは美しい光だけでは無い。暗くて歪なカタチをしているのだ。
鳴海さんはユキがしてくれた代償として。カナエが中絶しようとしていた子供、赤ん坊を攫ってくる。ユキはこの子こそ、光ある希望とするのだ。
この重くて辛い物語の一筋の光となってくれる事を切に願う。
描き下ろしは、カナエと結婚をするオウギが両親に挨拶へと向かう。
「禍福は糾える嘘の如し」
オウギの父母もまた変わった人たちである。カナエはタジタジ。
「幸せな結婚式にしたいな。」と、幸せそうに言うカナエが、この物語の中では空々しくて。これを癒しと読んでホッとしたらいいのか。私には分からない。