トラウマを持つ大学生×大切な人を亡くした研究員の、ハートフル・ラブストーリー

木々は春

kigi wa haru

木々は春
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神28
  • 萌×212
  • 萌9
  • 中立1
  • しゅみじゃない2

--

レビュー数
11
得点
216
評価数
52
平均
4.2 / 5
神率
53.8%
著者
中陸なか 

作家さんの新作発表
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媒体
漫画(コミック)
出版社
ホーム社
レーベル
アイズコミックス.Bloom
シリーズ
たゆたう種子
発売日
価格
¥750(税抜)  
ISBN
9784834264593

あらすじ

イケメン大学生・由木のバイト先に一人でよく訪れる常連客・木庭。
ある日、「僕、男の人がすきなんですよ」という木庭の言葉を聞いた由木は、自分も同じゲイだから、と彼を食事に誘う。
しかし由木が"本当のこと"を言っていないと木庭に見抜かれてしまい…?
トラウマを持つ大学生と、大切な人を亡くした研究員が丁寧に恋を紡いでいく。
雪が溶けて木々が芽吹くような、ハートフル・ラブストーリー。

表題作木々は春

イケメン大学生
樹木研究員

その他の収録作品

  • 描き下ろし

レビュー投稿数11

少しずつ歩みよる描きにグッとくる

色んな恋愛模様のBL作品を読んできたけど、こんなにじっくりと描いた作品は見たことがなありません。前進と後退、そしてまた前進……と、恋愛に全力で悩みもがき、苦しみ、それでも前に向かい、その先にある希望に期待する主人公たちの等身大の姿に胸を打たれました。

焦ったくもどかしい気持ちもあるけれど、それぞれが抱える過去のトラウマを乗り越えて、未来ある選択を手探りで辿り着く恋の軌跡には、BLの枠にはまらない人間ドラマがありました。
自らの枷にする者、記憶に蓋をする者……抱える想いはそれぞれです。木庭に惹かれ、彼に執着する大学生の柚木に対し、どこか距離をとる木庭の不思議な関係や掛け合いが、独特な恋愛の世界を作り出しています。
2人の間にあるものが恋愛なのか、それともまやかしなのか、そんな曖昧な空気感をはらんだ2人の親密度は不安定で、期待と怖さが入り混じります。

多くの葛藤を抱えながら歩み出す2人のお付き合いは、うまくいかずにすれ違ってしまうときもあるけど、それでも自分の過去に向き合い未来に繋げていくポジティブな感情を応援せずにはいられませんでした。
静かに流れてゆく時間とアンニュイな雰囲気が非常によく合っていて、まるで一本の映画を観ているような気持ちになりました。

木庭のかつての恋人のことを忘れてなくていいと言った柚木となら、きっと素敵な恋愛ができるでしょう。どこか諦めたような木庭には、若さと勢いでグイグイ攻める柚木のような男がお似合いだと思いますので、幸せになって欲しいと願っています。

0

ミモザの生命力

K大の研究員をしている木庭と居酒屋でバイトをしている由木のお話です。
 木庭はゲイで高校生のころの同級生、小林のことをずっと忘れられないでいますが、小林は死んでしまったので、あの頃小林が何を考えていたのか、思っていたのかは分かりません。 
 由木は自分のセクシャリティーがよく分からない大学生で、彼は他人を意図せずセクシャリティーのことで傷つけてしまいます。由木が自分のセクシャリティーが分からないのは、幼い頃、母の不貞を見てしまったからでもありますが、セクシャリティーが分からないもどかしさは読んでいて辛かったです。
 木庭も由木も何らかの割り切れない気持ちを抱えながら生きていますが、木庭の部屋から見えるのは大きなミモザです。ミモザは黄色い花がとても目立つ植物です。ふたりともミモザのように強く生きていってほしいとのメッセージだったのかなとも思いました。

0

心がじんわりとあたたかくなる可愛らしいお話でした、表紙のお花もきれいでとってもだいすきです。

攻め様のおかあさまが良い役どころでした、過去に不倫をされて投げやりになってらっしゃったんですね。
とてもおつらいとおもいました、ヒドイです。

でもそんなせめ様を優しくつつみこむ受け様の包容力にかんどうしてしまいました、すごいですね。

おはながだいすきなので、どのぺーじをみてもすごく嬉しかったです。
かわいい!

これからもかわいくて面白いはなしをたくさん書いてほしい

0

簡単に劣情を催さないところはリアル

 中陸先生の繊細なストーリー展開、心情描写は今作でも遺憾なく発揮されていました。ただ、萌えたかというと、前作と比較するとあまり萌える要素がなかったなと感じました。生徒2人の目線も通して見ていたのと違い、今回は木庭という人物が他人の憧れや好奇心といったフィルタを通さず、ありのまま浮かんで見え、そうして見た時に私にとってはあまり魅力を感じるキャラではなかったのが原因かな、と。由木は辛い過去を抱えたままの木庭でもいいと言ったけれど、私には木庭が変わらず他人と自分の間に常に線を引いているように見えて。それが悪いわけではなく、そういうキャラに萌える余裕が自分にはなかったというだけの話なんですが。由木の性行為に対する気持ちには非常に共感しました。

0

「ミモザは生命力つよいから」

「たゆたう種子」のスピンオフと知り立て続けにこちらも。中陸先生の登場人物の作り方とっても好きだなと気づく。木庭先生が由木に披露した水切りやミモザに関する知識が、小林との会話に由来しているという描写が堪らなく好き。小林のことは忘れなくていいし、小林が木庭の一部を形成していて、それが由木にも伝わって…こんなふうに人と人が繋がっていくんだなぁ、みたいなじんわり感。

木庭が「君のことが怖くて犯罪にでも〜」って早々に由木に言うとか、性的接触も付き合いに必要なことをしっかり言うとか、彼の人格に一本筋が通っている。電子限定おまけ漫画の"悪い笑顔"なんてのもそう。

ラスト木庭が思い浮かべた小林の表情にこっちまで泣けてしまったよ。死んだ人にはもうどうやったって勝てないんだけど、別に争わなくたっていいんだよな。

0

この作品だけでも楽しめます!

読み終わって、素敵な作品だった〜と思いながらカバー下の後書きを読んで、初めてスピンオフ作品だと知りました。
たまたま本屋で手に取って衝動買いをしたので前知識は全くありませんでしたが、スピンオフ元を知らなくても充分に楽しめます。(私は読み終わっても気づかなかったので…)

登場人物それぞれにいろいろな悩みがあります。
一面的な悩みではなくて、多面的な悩みです。
人間は何か一つの問題や悩みを抱えていたとしても、それが一つの原因からによるものだとは限りませんよね。いろいろなものが積み重なってその人を作り上げていると思います。
そんな悩みや問題がひとつひとつ丁寧に描かれており、乗り越えたり躓いたり、二人の距離が縮まったり遠のいたり…
一冊だけど、とても読み応えがありました。

「ハラハラドキドキ!」とか「キュンキュン可愛い萌え!」という感じにはなりませんが、じわじわと、心が温かくなるような、何度でも反芻したくなるような作品です。

1

巡るのは季節だけではない

たゆたう種子スピンオフ作品。
由木は過去のひっかかりから恋愛が出来ない。というか、人付き合いも得意ではない様子。前に進みたいのか諦めているのか…ほんのりもの悲しい雰囲気を纏う姿は木庭と似通うものがある気がしました。
トラウマになってしまっていた出来事にぶつかっていって、そしてまた木庭ともきちんと向き合った由木は少し晴れやかに見えて良かったなと思います。

そして木庭のあまり表に出さない感情が揺れるたび、胸がぎゅっと切なくなりました。
人間の記憶は複雑で曖昧で、でも囚われてしまうと進めなくなるんだなあ、と。
でも由木との出会いで木庭はきっと少しずつ前に進んでいけるんでしょうね。
小林のことは忘れることはなくても、ミモザを見るたび抱いていた感情は少し違うものになっていけばいいなと思いました。

0

忘れて前に進むだけがハピエンじゃない

【たゆたう種子】スピンオフ

前作でガッツリ絡んでた先生・・・というか先生が話を回していたといっても過言ではない重要人物が満を持して主人公!
しかし、前作でスピンオフを熱望した人は多いと思いますがそれと同じくらい、先生の中の「小林」の存在のデカさに心囚われた方も多かったはず。
そんな小林を忘れて次の恋に進むのはちょっと寂しい・・・なんて思ってしまって、買ったはいいがなかなか読めず約一か月積んでいました。。。

いざ読んでみれば・・・♡
先生の中の小林の存在感は否定もせず消しもせず、しかし先生の中の罪悪感は少しだけ軽くして未来への扉をそっと開けた素敵な作品でした。
はっきり大学生の由木とくっついて綺麗なハッピーエンドという感じではなく、小林を忘れられない先生を丸っと受け入れて愛し続ける由木。という終わり方にホッコリ癒されました。
しかし、描き下ろしや特典描き下ろしでは幸せそうな未来もちゃんと描かれてて嬉しかったです。

2

丁寧で上質な作品です。

「たゆたう種子」のスピンオフ作品です。
この作品を契機に本編も読んだ感じなんですが、なんで早く読まなかったんだろうと後悔。
画がすごく好みで、脇も含めてキャラに愛着が湧く丁寧な描写、どちらも厚みのある作品でした。

本編主人公のピュアな天然受け葉純が可愛くて、
この作品では変わらない天然ぶりと成長したスーツ姿の葉純に激萌えですが、
根井は話題だけなんて…顔見たかったよ~。

本作は研究員になった木庭先生のその後、セクシャルに悩むイケメン大学生由木とのお話です。
元カレの死を引きずる受けとトラウマ持ちの攻めという、
けっこうデリケートな題材で、もっと深刻になってもおかしくない感じなんですが、
何故かほのぼのテンションで細かい笑いが散りばめられていて、
気づけば優しい気持ちになって癒されているという、不思議な作品でした。

男が好きなのか女が好きなのか解らない由木。
DK時代に親友に告られて、恋愛感情でないまま抱かれようとして出来ずに関係が拗れ、
その後は彼女とエッチしようとしても出来ず、
国宝級のイケメンと周囲に揶揄されながら、深刻な悩みを抱えていた状態。
タチならイケるかもしれないと、木庭がネコだと知りゲイだと言って近づいた由木に、
ウソだと知っても悩みを聞いて優しく対応してくれた木庭を、本当に好きになっていく。

そんな由木の想いに淡々と応えていく木庭に、読んでいると違和感が…。
やっぱり元カレを忘れられないと立ち止まると、どこかホッとしている自分がいる。
傷を引きずったまま進んでもイイことはないからね。
だからこそ、元カレの死は自分に原因があるとずっと責め続けている木庭が、
過去と向き合っていく由木と共に、気持ちを整理して一緒に一歩踏み出そうとする場面にジンとくる。

どうやったら思い出になるのかは人それぞれですが、
否が応でも時間と共に周囲はどんどん変わっていくという現実、
一人取り残される悲しさはありながらも、どこか救われている気持ちの方が強いのかも…
せつなさはもちろん、温かさを感じさせる繊細な描写が素晴らしいラストでした。

ミモザ使いが印象的で、それぞれに意味合いを持たせているんですが、
木庭のミモザの思い出話が一番好きです。
ミモザの中に元カレとの青春の思い出が詰まったままでいて欲しい。

この作品だけでも充分楽しめますが、是非「たゆたう種子」も見て貰いたい。
本当にキャラ作りがステキな作家さんです。

※シーモア:修正は白抜きです。

3

伐られてもまた花を咲かせる草花の強靭さのように

女性とも男性とも距離を測りかねている大学生・由木。
そんな由木のバイト先の常連客として「たゆたう種子」の木庭先生が登場。
ある日木庭が同席者に「僕男の人が好きなんですよ」と言ったのを聞き、由木は衝動のままに木庭を食事に誘ってしまう。
「俺もゲイなんです」
そんな言葉で、驚く木庭に食い下がる。だけど…

そうは言ったけれど由木はゲイではないんですよね。だけど女性とは実際ダメで、かといって男性ならいいわけではない。そしてその事で自分で傷ついて萎縮してしまっている。
男と、男役でやってみたい、でも近い関係の人間とはしたくない…
そんな由木に対して木庭は静かに話を聞いてくれる。だから由木も心を開いていく。
そんな話なわけですが、非常に繊細というかセンシティブというか、由木が性に対してうまくいかない理由や、母親との確執、一方木庭の方の抱えている過去、それらはかなり重くて苦しくて。
若い由木は明確に木庭と出会ってから世界/性との関わりが変化していきます。同時に偶然ながら母親の抱えていた大きな苦しみも知って、囚われから抜け出す一歩を踏み出す。
一方、木庭は由木に慕われて逆に過去から抜け出せない自分を思い知ってしまう…
しかし、木庭もそんな過去から赦されるんですよね。
長い冬が和らいで2人に春がくる、とは陳腐な言い回しかも知れないけど、お互いの心に巣くっていた苦しさはそれとして、木々・草花の強靭さのように2人が過ごしていくのでしょうね。

木庭は自分をおじさんと卑下するけれど、全然おじさんに見えない…「たゆたう〜」から何年後?逆に若くなってるような気すら。

4

この作品が収納されている本棚

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