「救済したい」その想いが向かう先。

さよなら恋人、またきて友だち ~宮内ユキについて~

sayonara koibito matakite tomodachi

さよなら恋人、またきて友だち ~宮内ユキについて~
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神14
  • 萌×215
  • 萌13
  • 中立4
  • しゅみじゃない5

--

レビュー数
7
得点
173
評価数
51
平均
3.6 / 5
神率
27.5%
著者
yoha 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

媒体
漫画(コミック)
出版社
ふゅーじょんぷろだくと
レーベル
POEBACKS THE OMEGAVERSE PROJECT COMICS
シリーズ
さよなら恋人、またきて友だち
発売日
価格
¥675(税抜)  
ISBN
9784865895551

あらすじ

弁護士・鳴海(なるみ)のもとに身を寄せるユキと息子のルカ。
平穏に見える3人の暮らしには、悲しみが影を落としていた。
誘拐されたまま行方が知れない鳴海の弟・春人(はると)。
消息を求めて奔走する鳴海をなんとか支えたいと願うユキ。
ユキは手掛かりを掴む為に自らの身体で男達を誘惑する。
彼の献身的に尽くす姿に鳴海は罪悪感を募らせていく。

誰が救いたくて、誰が救われたいのか。
ロスト・チャイルドから続く、シリーズ最新刊。

表題作さよなら恋人、またきて友だち ~宮内ユキについて~

Ωを装うα

同時収録作品さよなら恋人 またきて友だち -宮内ユキについて-

Ω、ユキと同じように体を売る少年
Ωを装うα

同時収録作品さよなら恋人 またきて友だち -宮内ユキについて-

α、36歳,弁護士
Ωを装うα

その他の収録作品

  • 第6話(描き下ろし)
  • あとがき

レビュー投稿数7

痛い描写も多いが、深い愛情に萌える

『さよなら恋人 またきて友だち』→『さよなら恋人 またきて友だち〜ロスト・チャイルド〜』に続くシリーズ3作目。シリーズものなので前作未読だと理解できません。前作未読の方はそちらから読まれることをお勧めします。

今作品はオメガバースものですが、中でもドシリアスに分類される作品です。

1作目の『さよなら恋人 またきて友だち』は、兄からレイプされたことで妊娠。堕胎し逃げたものの、逃げた先でも同級生たちのセックスの対象となるカナエ、を描いた作品。

『さよなら恋人 またきて友だち』で、番となったオウギ×カナエを襲う疑似フェロモン剤事件を描いた、シリーズ2作目の『さよなら恋人 またきて友だち〜ロスト・チャイルド〜』。

そして、3作目にあたる今作品は、カナエのフェロモンからオメガの疑似フェロモンを作り出したカナエの兄・ユキのお話です。

前作までで分かっていたことはユキがカナエのフェロモンを使って偽物のオメガのフェロモンを作っていたこと。そして、それを悪用されたことによってカナエの過去がオウギにばれたこと、まででした。

なぜ、ユキはオメガのフェロモンを作り出していたのか―。

そこを軸にストーリーは展開していきますが、これがめっちゃ切なかった…。

以下壮大なネタバレを含んでいます。ご注意ください。








前2作までで、ユキという青年に対して極悪非道な人物をイメージしていました。

が、ユキもまた、カナエのヒートの被害者でもあった。
カナエのヒートに抗えずレイプしてしまったユキですが、彼はそのことを心底反省してるんですね。そして、息子・ルカのこともすごく大切にしている。

じゃあなぜ、ユキはオメガのフェロモンを作り出しているのか。

それは、ユキが愛する弁護士の鳴海を救済するため。
カナエへの贖罪の気持ちを、鳴海を絶望と苦しみから救い出すことで晴らそうとしている。

「鳴海」という人物は前作でも登場していましたが、彼の過去の話が盛り込まれ、少しずつストーリーの真相に近づいていきます。

鳴海の弟が、10歳の時に誘拐され、そしてショタ趣味を持つ男たちによって売買の対象となっていた―。

その鳴海の弟・春人を救い出すために、春人の人身売買に関わった男を見つけ出し、その男から情報を得るためにオメガを装って抱かれてるんです。

春人が、子どもなのに大人たちによってレイプされるシーンが描かれていること。
ユキが、鳴海のために自分の意にそわない行為をして情報を得ていること。
春人の代わりの「ハル」という少年が大人たちに抱かれている描写があること。
ユキが攻めも受けもしていること。

などなど、痛い描写も多く、もしかしたら地雷の方もいらっしゃるんじゃなかろうか。

が、ユキがカナエへの贖罪の気持ちを持ち続けていることや、鳴海への恋愛愛情、そしてルカに向ける愛情もきっちり描かれている。前2作と登場人物が変わっているのに、少しずつ、でもきちんとリンクしていて、その構成力の高さに圧倒されました。

また、春人の元飼い主のもとにいる「ハル」という少年を、ユキと鳴海の2人で救出しようとするシーンがあります。その時のハルの対応には非常に考えさせられるものがありました。

ユキが鳴海に向ける深い愛情もまた、ユキの押し付けなのか。


春人は今どこにいるのか。
幸せにしているのか。

春人の現在も気になりますし、鳴海のために自分の身をエサにして犠牲にして動いているユキの想いは鳴海に届くのか、といったところも気になりますし、とにかく続きが早く読みたいです。

カバー下もぜひ読んでほしいです。
「春人の日記」の一部が書かれています。
春人とマサルの2人には幸せでいてほしいな。

甘くて優しいお話を好まれる方には、正直お勧めしづらい作品です。

が、オメガバースというバックボーンをこれほどまでに活かし、そして人の心の闇を、そして無償に捧げる愛情を描き切った作品はないな、とも思うのです。

10

どうしても読み続けなくてはいけないと思ってしまう作品

初めて「さよなら恋人 またきて友だち」を読んだ時の衝撃は
凄まじいものがありました。
確かにBLなのですが、まるで推理小説のような、ホラー小説のような、
神がかった伏線、回収。
決して読んでいて幸せな気持ちになれる作品ではないのに
「オメガバース」設定をこんなに巧妙に使いこなすBLを
見たことがあっただろうか…と、驚きを通り越して
感動すら覚えた記憶があります。

あの1冊で終わると思っていたのに、今回で3作目。
ずっと目を離せず読み続けているのは
まだ明かされていない物語の行方が気になって仕方がないから。

今回はカナエの兄、宮内ユキについての物語。
派手で分かりやすい嫌な描写や辛さはないんです。
1作目のような怖さや盛り上がりとはまた違った
読んでいてずっとしんどい感じが続きます。
まるで、ユキの疲れがこちらまで伝わってくるような…。

ユキをただずっと嫌な人だと思っていました。
でもこの本を読むと印象がガラっと変わる。
ずっとずっと自分の罪を償うために、
そして、大切なパートナーである鳴海さんの
弟の手掛かりをつかむために
自分の体を犠牲にして生きているユキ。
何よりも大切なルカと、大切な人鳴海さんと
幸せに暮らしているかのように見える裏側に
こんな複雑な物語が隠されていたなんて…。
やはり今回もこのシリーズの凄さに圧倒されました。

萌えやトキメキとは対極の立場にある作品だと思います。
でもこんなに上手く作りこまれたオメガバース作品は
他にあまりないのではないでしょうか。

決して誰にでもおススメ出来る作品ではないと思います。
それでも、この作品のストーリー、構成力、読ませ方は群を抜いており、
是非一度試しに読んでみたいという方が少しでも増えれば…と思うほど
凝った作品だと思います。

みんなが幸せに…などとはこの作品の性質上合わないと思うので、
みんながそれぞれ納得する結果に向かうことを願って
次回作を待ち続けたいと思います。

6

ルカによる福音書。ユキの贖罪の物語となって行くのか。それとも。

これは、傍観者である「ルカによる福音書」なのだと思う。

前作までの、胸に迫る毒気は影を潜め。意外な程に、優しい物語になって行く。
表現としては、ユキが「目的」の為に 不特定多数の男に抱かれ、陵辱されるという、むごたらしいシーンが多いし、ダメな人はダメだと思います。
ユキの「目的」それは…。愛する鳴海さんの生き別れになった弟さんを探すこと。
鳴海さんは、その事でずっと。眠れない夜を重ねている。
ユキは、鳴海さんを救いたい。それは、自分の弟、カナエを陵辱したことへの贖罪なのかもしれない。
鳴海さんを救う事で、少しでも許されたいのかもしれない。
それ程までに。自己犠牲を伴うまでに。ユキは真摯に鳴海さんを愛している。

鳴海さんの弟さん、春人は、幼ない頃に組織に攫われ、「愛玩用のΩ」として売買されたらしいと判っていた。ユキは、自分の身体を使って、情報屋や人身売買に関わっているだろう怪しげな男たちに抱かれ、陵辱され、淫乱だと罵られながら、情報を集めていた。もう少しで、春人さんの消息が判ると信じて。危険なことをしていると気付いた鳴海さんは、ユキを気遣い、止める様に言うが。
想い合っている筈なのに、不幸せそうに見える鳴海さんとユキを気遣うルカ。幼ないルカには愛し合う二人が何故、不幸せなのかが分からない。

ある夜の怪しげなパーティで、子供の頃の春人さんにソックリな「ハル」と呼ばれる少年と出会ったユキは、春人さんらしき人の消息を遂に掴む。残念ながら春人さんの居所はまだ分からないままだけど、春人さんが確かに生きているという事が判って。鳴海さんは初めて眠ることが出来た。
春人さんは見つかるのか? ユキは、晴れて鳴海さんと愛し合う事が出来るのか?
続きが待たれます。

あとがきにも書かれていましたが、Ωを装って、陵辱されるユキは、常に疲れている様子。
休む間も無く、乱暴に変態親父に抱かれ続けているユキは 確かに、壊れてしまいそうなのだ。
ユキは、αの本能のままにカナエを陵辱した事を深く悔いている。ルカを身ごもらせてしまった事も。
どうか。自分を責め続けているユキを救済する物語であって欲しいと願う。

中盤に、鳴海さんとユキが、高坂という親父に囲われている「ハル」という少年を救出しようとして、失敗してしまうエピソードがあって。「ハル」は自ら親父の元へ戻る選択をする。その男の元へ買われる前はもっと酷い生活をしていたという「ハル」は、今が幸せなのだと言い、その倒錯した歪な愛情の元へと帰るのだ。高坂という親父も、多分、彼なりに「ハル」を愛している。
幸せは他人に決められる事では無くて。それぞれのカタチがあるのだと、鳴海さんとユキは気付かされる。これは、フラグなのか。どうか、彼等の選んだ幸せが、不幸なものではありませんように。
心温かく見守れますように。

5

不幸の連鎖が止まらない

本編(オウギとカナエ)の時の仄暗さは無いものの、
やはり「不幸」は切っても切れないシリーズ作品ですね。
この世界観が恐ろしくも目が離せない。

鳴海・ユキ・ルカが一緒には暮らしているお話。
今回は子供の頃に誘拐され人身売買にて行方が分からなくなった鳴海の弟を探す為、αであるユキがΩと騙せるように体を手術し体を使い情報を得ようとする。
昔、ルカを救うために力を貸してくれた鳴海の為にユキは力になりたいと思うが鳴海本人も自分の体を義衛にしてる雪に耐えかねてもう止めるように言うがユキが効く耳を持たないのがもぉ何とも・・・重くせうなかったです。

ユキが鳴海の弟”春人”の情報に近付くも、目の前に現れたのは子供の頃の春人にそっくりな”ハル”だった。
このハルを救出しようとする6話(描き下ろし)が、また・・・別の意味で重、、、いや、深くて切なかった。
この世界観での「幸せ」が色々すぎて。

ユキ・ルカ・鳴海の幸せが早く見たいですね!!

0

ハルは見つかるのか

「ロストチャイルド」で何故ユキが乱行パーティーを仕切っていたのかという謎が解けました。

鳴海の攫われたオメガの弟のハルを捜す為に、人身売買を仕切っていた男の元にオメガと偽って潜入してたんです。カナエには堕胎したと偽ってルカを育てる為に協力したのが鳴海でした。その代わりにユキが鳴海を助けると誓っていたからです。鳴海はルカの為にユキにもう弟の件には関わらないで欲しいと言うのですが、ユキは鳴海の為に止めようとしません。

鳴海を思うユキの気持ちも分かりますが、常に危険を伴うユキを心配する鳴海の気持ちも痛いくらい分かりました。お互い好きなのにやるせないんです。

ユキと鳴海の仲を心配するルカもいじらしいです。鳴海がたまに不安定になるので、ユキが頑張り過ぎているのが見てて辛いです。

鳴海の弟が発見されて、鳴海が前を向いて生きて行けれる事を望みます。そうでなければ身体を改造してまでオメガの振りをしているユキが可哀想です。


0

ユキというひと

私は単純にユキの見た目がすごく好きで、そして私は見た目が好みなキャラクターには攻めて欲しいタイプです。
そうした萌えの観点からすると、1作目の時点ですでに、「Ωのふりをして体を売っている」という事実から、彼が望むと望まざるに拘わらず、純然たる「攻め」ではないことが判明しました。

2作目では、そんなユキのΩとしての行為や、ルカの存在、それを知ったオウギによる復讐めいた行為など非常に痛ましい光景が描かれていました。
最後にカナエとの子供を望むオウギの言葉で、そういえば性別を問わず全ての人が妊娠できる世界ということで、ユキも妊娠するか、或いはすでにそんな過去があるのでは…?とか思いを巡らせ、やはり今回も怖いもの見たさで読ませていただきました。

さて、ユキはΩのふりをするにあたって、見た目でαとわかる外性器を手術によって整形し、その際胎内もいじって、妊娠することもさせることもできない体になっているそうです。
今回もユキは気持ち悪いおじさまたちに体を売っていて、エッチなシーンのほとんどはそればかりなので、いわゆるBL的萌えなエッチはほぼありません。

ただ印象に残ったのが、ユキが慰み者になっている間、「挿れて、蓋して、出したい」と考えていること。
ハルと名乗る幼い少年の筆下ろしを頼まれた際も、湧き上がる「挿れたい」という欲望を抑えています。筆下ろしの後は、ハルこと健太に請われてユキが健太を抱く描写もあります。
すっかりメス堕ちしているかと思いきや、「抱きたい」という感覚を持っていることに驚きました。それが特に本作で強調されている性別による抗いがたい本能なのでしょうね。

とは言え、鳴海とはやっぱり鳴海×ユキなんだろうなぁ。
まだ鳴海との性描写はないですが、終盤にユキが「鳴海さんとしたい」と思わず誘う場面では受けっぽいです。乗っかっていってます。
まぁ女性っぽい外見ですから、基本は受けに見えるわけですが。でもこれで実はユキ×鳴海だったらとても嬉しい。

物語はまだまだ気の抜けない展開。でも、あとがきを読むとそろそろ幸せが見えてきているような気もします。
ずっと体を犠牲にして走り続けているユキが、ほっと一息つける結末を見届けたいです。

2

美しく、悲しい人

前作に引き続いてのレビューです。
てっきりユキは弟のカナエに対する贖罪として不特定多数の人間に抱かれていたと思っていたのです。
もちろんそれも理由のひとつではあるようなのですが、それだけでは終わらないのが"さよなら恋人"シリーズ。
なぜユキがパーティーを行なっていたのか?鳴海との関係とは?
謎だったユキの背景が、彼の息子・ルカとユキの視点から紐解かれていきます。

カナエとオウギのお話から、まさかここまでの広がりを見せるとは思いませんでした。
巻を増すごとに不幸の箱がどんどんと開いていく。
この物語に救いはあるのでしょうか…
自身の償いと、ルカを救ってくれた鳴海の願いを叶えたいと、鳴海の弟の春人を見つけ出すため懸命なユキ。
役に立ちたい。側に居たい。
ユキが鳴海に抱く感情は愛なのか、それとも。
鳴海もユキも、ハルという春人にそっくりの少年との一件によって、自分達がやっている事は正しいのか?本当に春人は助けを求めているのか?と、考えが揺らいでしまう。
過去に暗いものがある人々が、誰かを救う事で自分も救われたいと願うお話なのかな、と感じました。
帯の煽り文の「どうか救って欲しい」がとてもしみる。

カナエに対して償いの気持ちでいっぱいだというのに、カナエの香りを纏ってΩであると装っているユキ。
誰かに抱かれている間にも、自身から香るカナエのフェロモンに反応し「挿れたい」「蓋をして出したい」と思っているのが、どんなにα以外のものに擬態をしても結局はαで、本能には逆らえないというやるせなさ。
きっと彼は、カナエとの一件が無ければ純粋にただ愛に満ちた優しい人間なんだろうと思うのです。
全てを狂わせてしまうバース性というものの恐ろしさ。
オメガバースの闇の部分をとても上手く描いていますよね。

今作ではルカと正のやり取りが唯一の救いでしょうか。
BL的な萌えはあまり感じられませんでしたが、物語としては非常に読ませる作品です。
果たしてルカが願う幸せは訪れるのか?
続けて次巻も読み進めたいと思います。

2

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