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萌×2作品

女性Sakura0904さん

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深潭回廊 5 コミック

永井三郎 

束の間でも2人の素の笑顔が見れたことが幸せ

 まさか渚が、売春していること以外にもこんなに大きな秘密を抱えていたとは……。幼い頃から今まで誰にも言わずによく生き抜いてこれたなと。五体満足とはいえど心の方はもうぼろぼろでしょうけれど。それでも柳田の言葉でまた希望を取り戻して、無邪気できらきらした瞳を見せる余地がまだある。そんな渚の強さ、というわけではないんだろうな、きっと。かろうじて壊れずに残っていたほんのわずかな子供らしい部分というべきか。私たち大人はその風前の灯火を何が何でも守ってあげなければならないと思います。

 自分を振り返ってこちらもズタボロの柳田には辛い作業でしょうが、なんとかせめてもの償いとしてやりきって欲しいと願います。我が子が体を売っていたと聞いて、まずなぜなのか考えたり、乱暴されて傷付いていないか聞いたりする前に、「お前が誘ったのか」と聞く大人にはもう手の施しようがありませんね。この世にはけっして分かり合えない人間がいる、というのもどうしようもなく現実だなと思いました。

深潭回廊 4 コミック

永井三郎 

どんな方法で償ったって、奪われる前の人間に戻れることはないのだ

 BLを読んでいると好いた相手以外の男に無体を働かれるシーンというのは多々目にすることになるわけですが、大概はその後本命の彼に救われたり、慰められたり、ハピエンへの布石になることが決まっているから私たちはさほどしんどい思いをせずに済むし、なんならメイン2人の絆の強さを感じたいがため、そういうシーンがあって欲しいと望んでしまうことすらありますね。

 しかし、そういうハピエンが用意されていない行為というのも実際には多々ある。ただ蹂躙されるだけの彼らに向き合うことは、普段前述のようなシーンを望んでしまう我々読者にもしんどいものがあります。それとこれとは別、でしょうか。本当に? 分からなくなってきました。自分は何かを奪われたのだ、と思いたくないから自分の方から仕掛ける、お金をせびることを覚えたという渚の言葉に、誰かの性を消費する行為の本質を改めて突き付けられた気分です。だからそういうシーンを描いてはいけない、求めてはいけないということではなく、創作の中で非現実として楽しむ私も、一方でこういう現実世界が常に存在していることをけっして忘れてはならない、と思いました。

愛する人を理解するということ

 素晴らしい結末でした。瀬乃の幼少期がどんなものだったかが明かされ、彼がなぜこうまで執事として生きることに頑ななのか、伊勢崎も読者も納得させられることになります。やはり一番の要因は父親。親の与えるものが世界のすべて、というくらいの小さい頃からあれだけ徹底的に厳格に仕込まれていたら、心が凝り固まってしまうのも仕方ないとしか言いようがありません。今まで常に他人の欲求を叶えるために動いてきた人間には、自分の欲求を口にするのも、他人の幸せに自分を組み込むことを考えるのも相当困難なことでしょう。

 そんな瀬乃の過去を聞いて、伊勢崎はアプローチ方法を変えました。長年刷り込まれてきた執事としての生き方、考え方はもはや瀬乃とは切っても切れないものだし、そのために彼は不幸なのかというと、そのお陰で伊勢崎とも出会い、仕えるという形で一番近くで共に歩んできたわけで、伊勢崎にとっても瀬乃にとっても、その積み重ねてきた時間はかけがえのないもの。伊勢崎は瀬乃を執事のまま、恋人として迎えます。瀬乃の大切にしているものをこれ以上捨てさせないという伊勢崎の新しく芽生えた気持ちに、ああ、この人はこんなに深く瀬乃を愛しているのだなぁと。瀬乃の伊勢崎に対して畏れ多いという気持ちはそう簡単にはなくなりません。けれど、これからずっと傍にいるのだから、また長い時間をかけて愛を伝えていくという伊勢崎の根気強さに胸を打たれました。

情熱的に好かれていると分かっているのに

 2巻は伊勢崎の可愛らしさがちょくちょく顔を覗かせるのが魅力かなと思います。1巻ではΩの遊び相手と夜な夜な戯れ、怪しげなクラブにも出入りし、真面目さとは程遠い顔を見せていた伊勢崎。でも、彼の瀬乃に対する感情は実はとても素朴な愛。濡れ場では玩具も使うし、瀬乃を好き勝手に開発してきたわけですが、本人に特別SM趣味があるわけでもなく、性癖は一般的なもの。彼はたとえセックスしなくても、瀬乃とお祭りに行ったり家で映画を一緒に観たりするだけで十分満足なんです。ただ、瀬乃が心から自分の恋人になることを望んでいるだけなんですね。

 そして、それが2人の関係においては最も難しいこと。幼い頃から執事としてのあり方を徹底的に教え込まれた瀬乃にとって、主人である伊勢崎の言動はもちろん大きな力を持っているけれど、それ以上に執事の師である父親の発言力は大きくて。伊勢崎が良しとするなら許されてしまいたい、けれど、父親に執事の役目を持ち出されると、やはり甘えるわけにはいかない気がしてしまう。Ωと違って子が産めないこともその考えに拍車をかける。伊勢崎の自分に対する感情が遊びや気まぐれではないことはもう十分理解した上で、再び執事に戻る選択をした瀬乃の苦悩は描かれていませんでしたが、その後の彼らしからぬ不安定さから見て取れますね。難儀な出会い方をしてしまった2人が、平凡な恋人として隣にいられる日々を3巻で見れることを期待しています。

一旦は受けを外で遊ばせていた攻めに滾る

 煌びやかな上流階級の世界と広大な屋敷が舞台でかなり非日常的な雰囲気が漂いますが、メイン2人の関係性にとてもそそられ、オメガバースの中でも個人的にかなり上位に食い込んできた作品でした。α×βということで、もちろんΩ化もせずβはあくまでβらしく、Ωを羨みながら普段はまったく綻びのないお堅い執事を貫く瀬乃が、β受けとして素晴らしかったです。

 そしてそんな彼の、最近性的興奮に陥りやすく後ろが疼いてしまうという体の変化に、ちゃんと理由があったのが何より萌えるポイントでした。受けが快楽に弱いのはもはやデフォルトで装備された体質だ、生まれつきだ、攻めに触れられたら勝手に蕩けるもんだという作品が数多ある中、いやいや蕩けやすい体をつくるには手間暇かかるんだぞ、と示してくれるこの作品はすごく貴重ではないでしょうか。その理由である、伊勢崎が密かにうず高く積み上げてきた特大の執着心がまた最高の萌えを提供してくれました。好き嫌い分かれる所だと思いますが、2人とも不特定多数と性的関係があったのもファンタジーな世界とバランスをとる現実味となっていますし、本命との関係へのスパイスとなるので私は好きです。続きがとっても楽しみです。

きっと遠恋でも2人なら大丈夫だったよ

 2巻を読んで、改めていろいろな面で貴重な作品だなと思いました。まずは菊池。体格も瀬戸と変わらず、口調も仕草もザ・男の子。性格も大らかで中性的な所がまったくない彼が受けというのが、イマドキのBLではかなり珍しいと思うんです。そんな彼を、こちらも菊池と比べればクールに映りますが、素朴な雰囲気もある瀬戸が時折愛おしそうな目で見つめるのがたまらない。そして、高校生ものにしては勢いやキラキラ感、好意の暴走みたいな描写も少ないですよね。2人のやりとりはあくまで男子高校生らしく、BLファンタジーで飾らずともちゃんと萌えさせてくれるみーち先生の観察力がすごいなと思いました。

 高3ということで、進路に悩む2人。大学進学からは一気に考えなければならないことが増えますよね。実家からの距離、私立か公立か、親の収入、奨学金、学部、就きたい職業、学力、下宿先、そして、恋人がいる場合、環境の変化に対して相手とどう向き合うのか。お互い受けたい学部で近い大学があったのはラッキーでしたね。でも、運だけじゃなく菊池が本気で頑張ったからこそ、掴み取れた未来です。錦川は自分の満たされなさからつい子供にちょっかいをかけたくなる、根が悪いわけではない大人なんでしょうね。最終的には2人の幸せに貢献してくれましたから、彼にもいい人ができるよう応援しています。

是非茶屋に馴染んでいくこれからの2人を

 こふで先生の美麗な絵で、また新しい江戸の物語を読めてとても嬉しいです。一度儚い蜜月を過ごした後、7年も離れていて再会した2人。忘れられない、と探し続けた寅次の根気強さをまずは称えたいですね。八重辰の方からはどうしたって距離が縮まらなかったでしょうから。

 いざ再会してみれば八重辰の素性は、高級料理茶屋の若旦那で、娘もいてと1人でいろいろ背負っている人。今までの人生、大事なものと向き合うのが怖くなると、逃げ続けてきた自覚がある。でもこんな人間ごまんといますよね。自覚していて何か1つでも改善を、と自分を変えようとしただけ偉いと思う。今の茶屋の皆に幸せを願われているのは、彼が凄まじい努力を重ねてきた証でしょう。手先も生き方も不器用な彼を、心根も言葉も江戸の男らしく真っ直ぐな寅次が今度こそ捕まえるのは必然。茶屋の皆に背中を押されてではあったけれど、八重辰がきちんと本心を言葉にできたことが嬉しいです。重荷としてではなく、生きる喜びとなる大事なものが、八重辰のなかでこれから増えていくことを祈ります。

登場人物皆可愛げがある

 ターナーのもとに無事帰ってきたベニーですが、新しく現役天使であるミカエルと、悪魔であるルシファーが現れ、2人きりで落ち着いた日常を過ごすというわけにはいかなくなります。2人の甘い生活を読みたかった方には少し物足りないかもしれませんが、このミカエルとルシファーがまたいい男なのでなかなか眼福でした。特に悪魔のトップとは思えない佇まいのルシファーが気になります。彼のベニーに対する感情、そして、ミカエルとの関係性は? 天界事情が想像以上に複雑で、面白そうですね。中盤までは話が込み入っていましたが、後半はターナーとベニーの絡みも増え濡れ場もあり、2人がお互いを大好きで慈しみ合っているのがよく分かるやりとりに萌えました。

ポケットからあわあわ出てくるの可愛すぎる

 小鉄子先生作品なのでもっとじれじれなのかと予想していましたが、2巻では結構進んだんじゃないかと思います。距離感はあまり変わらないけれど、東が火事に遭ったことで西園寺家に居候したり、逆に西園寺が東の部屋に家出させてもらったり(実家公認の家出って可愛いですね笑)、最後はとうとう西園寺が想いを伝えたりと2人を取り巻く環境が大きく変化した印象でした。

 2人とも常識人なので相手の家では気を遣いっぱなしで疲れるんじゃないかとちょっと心配でしたが、好意があればこそ楽しい、心地良いと思える瞬間も多々あり、ああお互いに恋してるんだなぁと微笑ましく読めました。焦っている西園寺は人間の時も人形の時も可愛いですね。最後の東の台詞はきっと遠慮ですよね。特殊な家の事情がある西園寺だけど、東の器ならきっと受け止められると思うので、今後積極的になってくれたら嬉しいです。

ぬいをこんなに可愛いと思えるとは

 山本小鉄子先生ワールドを堪能させていただきました。今まで推しキャラのぬいを欲しいと思ったことは特にないけれど、西園寺のぬいは可愛くて本当に萌えました(笑)。焦っていても困っていてもずっと同じ笑顔のままなのが愛おしく思えてきます。嫌味のない性格だし、ネガティヴになる度人形になるといってもそこまでうじうじしているとは感じず、謙虚ですぐ申し訳なさを感じるよくある日本人気質という印象。ネガティブ思考に陥る時のモノローグも自然な流れで、人形シーンを描くため唐突に後ろ向きに考えさせている印象も受けませんでした。

 そして、西園寺に何度手間をかけさせられても嫌な顔ひとつしない東。もちろん彼自身出来た人だからでもあるし、普段の西園寺に人徳があるからこそでもあるのでしょう。髪を下ろして言葉遣いも砕けた素の東にもときめきました。2人とも恋を応援したくなるキャラでした。