nanao77
BLというよりは、イエスノーシリーズのファミリーサーガといった趣き。
計と潮の家族の背景を描くいくつもの断章から構成されています。
描かれているのは
・国江田さんちのとーちゃんとかーちゃんの馴れ初め
・潮の両親の馴れ初めと両親が変わらざるを得なかった出来事
・子供の頃の潮の、両親の生き方への違和感
・計の就職前夜の父親の想い
・計に出会う前の潮の孤独と決意
・計がオワリだった頃(イエスノー1作目と同時期)の潮の想い。
・オワリ=国江田さんがバレた時の計の気持ち(これも1作目と同時期)
・計と潮がくっついた後の潮の誕生日
・イエスノー第3作目、計が潮を奪還しに行く直前、母親の手術の見舞いのために計が帰省した時の、父とのひととき
・潮奪還後の二人のある一夜
です。
BLというジャンル小説的には親の話はいらないかも知れないけど、イエスノーという一つの物語としては大事なエピソードだなあと感じました。これらを読むことでより立体的に物語が立ち上がるというか。
本編だと潮はあまり負の感情を見せないのですが、この作品のように、自分を曲げないよう、歯を食いしばって孤独に生きてきたのだろう姿を読むと、計と出会えて良かったね〜としみじみします。
A面の潮は鷹揚さと度量の大きさが計という王子様の理想のナイトという感じで実に魅力的なのですが、計よりある意味では表裏ある潮のB面をかいま見ることによって、潮が計の理想なだけではなく、計が潮にとっての理想の王子様であることを確認できるというか。
明るく軽やかなA面だけでない、暗いB面の潮が読める機会は貴重なのでとても良かったです。
潮の両親の馴れ初めが少女マンガのような、夢のような展開で印象的でしたが、だからこそイエスノー第3作で描かれる潮と父親との相入れなさに家族の複雑さを感じたりもして。
ままならないことを簡単に解決せず、ままならないに描かれているからこそしみじみします。
余談ですが、潮父の馴れ初めを読むとなんだかんだで潮パパと潮は親子だなと思いました。
だって突然現れたお姫様(王子様)の姿に目を奪われ、ついで内面について「面白えやつ」で惚れるって、パターンが完全に一致してるやん。
リボンで紡ぎながら潮と計の両親の出会いが書かれています。とにかく今まで読んだ両親たちの話の端々から気になっていた若い5人(西条氏を含みます)の様子に、納得したりほんわかしたりします。この親にしてこの息子あり!です。後はあいかわらずの潮と計の話が読めます。やっぱり好きですこの二人!とその家族!もちろん誉も西条氏も。