たゆたう種子

tayutau tane

たゆたう種子
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神87
  • 萌×249
  • 萌21
  • 中立3
  • しゅみじゃない6

--

レビュー数
25
得点
697
評価数
166
平均
4.3 / 5
神率
52.4%
著者
中陸なか 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

媒体
漫画(コミック)
出版社
ホーム社
レーベル
EYE'S COMICS BLink
シリーズ
たゆたう種子
発売日
価格
ISBN
9784834262735

あらすじ

冴えない生物教師、木庭のファンである葉純は、わざと赤点を取り、二人きりの補習時間を有意義に過ごしていた。しかしある日、見知らぬ生徒、根井も補習を受けることに。
補習中眠り続けていた根井に「勉強を教えてくれ」とせがまれ、渋々教える葉純。

「なんでそんな分かってんのに、補習なんか受けてんの?」

という根井の一言に、葉純は動揺を隠せず――。
新進気鋭の作家【中陸なか】が送る、ドラマチック・ボーイズラブストーリー!

表題作たゆたう種子

高2
高2

同時収録作品たゆたう種子

高校生
高校生

その他の収録作品

  • 処暑幕間(描き下ろし 本編その後)

レビュー投稿数25

雰囲気系…かな。

アンニュイな空気感が心に響く素敵なストーリーでした。
高校教師を慕う想い、同級生と過ごす特別な時間、自覚してゆく恋心……しっとりとしたストーリーと儚げな絵柄が、高校生活の淡い青春を語り尽くすのにピッタリ。派手なストーリーじゃないけど、ジワジワと胸を熱くさせます。

心理描写が清らかでとても美しい。
流れる時間の経過軸すら、芸術品のように美しいです。
生物教師の木庭に惹かれる2人が、補修や課外活動を通じて気持ちを通わせていく過程が非常に自然体。木庭に恋をしていると思っていた気持ちが、実は勘違いで、好意は別のところにあると気付くところに注目です。最初は嫌い寄りだった相手を好きになっていく描きがとても丁寧で、繊細な心理描写に引き込まれました。
高校生らしい青春味もあり、影のある雰囲気だけどどこか爽やか。男子高校生らしいピュア感も相まって、ドキドキの演出にキュンときます。

この恋物語の主人公は根井と葉純なはずなのに、木庭の存在感が強く、それが不思議な世界観を生み出しているように感じました。全てを見透かしているような木庭の視点は、彼らの恋の見届け人のよう。根井と葉純のストーリーでありながら、木庭の物語でもあるんですよね。
木庭の切なくも悲しい過去には涙してしまいました…。彼にも今後素敵な出会いがありますようにと願わずにはいられませんでした。


雰囲気系BLっていうのかな。説明するのは難しいけど、作品全体から漂うオーラはミステリアスな感じです。雰囲気も楽しみつつ、高校生2人の恋に酔いしれました^ ^

0

無題

面白い作品でした、生物の教師で地味目だけどどこか色気のある先生。関係を持たないとはいえ教師が生徒に色目使うのってどうかと思いますがフィクションならOKです。ただこれが現実だと考えるとかなりグロテスクかもしれませんね、あくまでも妄想の産物だと思いました。

メインカップルは高校生の二人になるのでしょうか、ゆっくりと惹かれあう様子が初々しくて良かったです。正直先生と生徒の組み合わせよりこっちのはハマってるなと思ったのですがやはりこっちでくっつきましたね。

0

園芸で始まり広がっていく

 雰囲気もタッチもストーリーも好みで、濡れ場こそありませんが、まったく物足りなさを感じない作品でした。憧れ、好奇心、尊敬。これらは必ずしも恋愛感情とまったく異なるものだと言い切れもしないし、かといってイコール恋愛感情とも言えない、難しい感情ですよね。感情って自分が一番知っているはずなのに、それが恋なのかどうかは他人の方がよく知っていることもある。

 生物教師である木庭を取り巻く、2人の生徒・根井と葉純。根井が木庭に向ける感情と葉純が木庭に向ける感情もまた微妙に違っているように思えるし、限りなく恋に近いように見えた木庭から葉純への感情も、実は恋ではなくて。気持ちの自覚のきっかけも、3人3様で面白い。やはり、相手を綺麗な人、可愛らしい人と自分と隔ててある意味聖人のように見ている内は恋愛にはならなくて、自分と同じ立ち位置に降りてきた人とこそ恋愛が成り立つのかもしれません。話の流れも自然で、それぞれが魅力的で、是非続編を読みたいと思いました。

2

じゃがリス

大変勝手なのは百も承知で、読んでて「この2人は性愛の関係になってほしくない」と思うことがままあります。ボーイとボーイでも、ガールとガールでも、ボーイとガールでも、その間にある特別な愛は別に性愛とは限らないではないかと。
根井と葉純の間にあるのはただの友情とは少し違う、より愛情に近い友情でもよかった。そう思ってはしまったけれど、それはそれとして素敵な作品です。
そう思うのはこの作品がBLテンプレの如きストーリー展開やキャラクター作りに則っていないからっていうのもある。根井が葉純の母親に「静かな子」と評されるような、彼の人となりの表現の仕方が好きです。話し運びには必要のないコマとセリフで、それでもこのコマとセリフは必要なのだなと感じる。中陸先生のセンスを感じる。

「あれぐらいの子って ちょっと会わないと びっくりするぐらい 大きくなっちゃうな」って先生のセリフがありますが、あなたも随分と雰囲気変わりましたよ、先生。笑顔が素敵です先生。

萌2〜神

2

じわじわと変化する気持ち

絵も綺麗で、心理描写が丁寧。
ゆっくりと変化する気持ちと、徐々に明らかになっていく先生の過去。

ほのぼのしてるけれど切なくて、何度も噛みしめたくなる作品。

0

恋と憧れの境界線

生物の先生と生徒二人による複雑に絡み合った三人の関係や心情が最後までしっかりと描かれていて読み応えがありました。
途中まで誰と結ばれるのか、それぞれの気持ちがどこに向いてるのか分からなくてドキドキモダモダしました。
でもそれぞれの視線や表情で繊細に表現されていて、何気ないコマからそれを読み取って考察するのが面白かったです。

思春期ならではの恋と憧れの境界線を繊細に表現された作品だと思います。
萌え1つにしたのはキャラ萌えしなかったからですがそれは好みの問題なので…すみません。
どちらかというと過去の回想の先生と小林君のビジュアルと関係性の方が萌えてしまいました。悲しい結末だったのが本当に悔やまれる。。

明るくなって前を向いて進み始めた先生の幸せを祈らずにはいられません。

0

レビューはほどほどに

書いておいてなんなんですが、あらすじやレビューはあまり読まない方が楽しめる作品じゃないかなと思います。
私もほぼ予習無しで読んだのですが、前半はカップリングの予想がつかなくてドキドキしていました。
という事で、あまりネタバレしない程度のレビューを。
結構難しいですね、読者感想文はあらすじで字数稼いでたタイプなので…。

先生と生徒二人の三角関係なような、そうじゃないような。
高校生たちの淡い恋心や憧れみたいなものが、ちょっとずつ変化していく様がふんわりとした雰囲気で綴られた物語。
先生の過去にホロっと涙が出そうになりました。

おすすめしたい作品です!

0

凄くしっかりとした人間ドラマ

BLソムリエの機能で出てきて、表紙の雰囲気が好みだったので読んでみたら大当たりでした。

これの前にも何度かやって、気になるのは読んだことあるやつかハズレでこれがお勧めされて読んだ5冊目だったのですが、正直これもハズレだったらAI使うの辞めようと思っていたのですが
この本が余りに素晴らしかったのでまた掘り出し物の発見を期待して使ってみます^^;

なんだかAIの感想になってしまいましたが、全く説明口調でないのにそれぞれの登場人物達の心の動き、言動にちゃんとした説得力があって最後はほんわかしつつ感動しつつ満足感に満たされて読後感も凄く良かったです。

とにかくエロが読みたい!という方には物足りないかもしれませんが、生々しい描写は少ない割にBLの萌え度はとても高くて歴戦の御姉様から初心者の方まで楽しめる作品だと思うので是非方に手に取って頂きたいです。

同時収録作品のトーンの所に「痛い」とあり、たしかに辛い展開はありますがそこから立ち直るのがこのお話のサイドストーリーだったのかなと思うので、最後は明るく終わるのでそんなに警戒する必要は無いと思います。

1

新しい物語

読み始めてまず思ったのは温かく感じる絵の中にどこか切なさがあり、儚く綺麗な絵だなと思いました。

最初はよくある三角関係でどちらかの生徒が先生とくっつくのだろうなと思っていましたが、まさかの展開で読んでいく毎に一人一人のストーリーが明らかになっていき、苦しく切ない気持ちになりました。しかし、最終的に小林と木庭が付き合い、先生も前を向いて進んでいる姿を見て、安心したと同時にとても嬉しくなりました。

これが中陸なか先生のデビュー作と知り驚きました。まだ読まれていない方は是非^ ^

1

丁寧な展開で好きです

これ、タイトルがいいなぁって思います。
浮遊してどこに着地して芽を出して花開くかわからない状態。まさにこの作品の登場人物の気持ちそのもの。

生物の先生と二人っきりになりたくてテストでわざと悪い点を取って補習を受けている葉純。ところが根井も補習を受けることが決まり、おまけに根井も先生が好きだと言い出して…
先生を巡る三角関係ものとして始まるけど、ドロドロとは無縁です。補習の一環で花壇に植えたチューリップの成長を一緒に見守るようになった葉純と根井は、急速に距離を縮めていきます。

この作品は視線、見ていたものというものがうまく使われているなぁと。
ファミレスでぼんやりと窓の外を眺めていた先生の表情を見てこんな顔をする人だったなんてとそこから先生に興味を抱き始めた根井。
根井が持ち前の観察眼で、先生が葉純の顔を意味深な視線で見つめていたことに見抜いていたこと。
先生は葉純の顔をずっと見ていたけど、本当に見ていたのは葉純自身ではなく喪った元恋人の面影であったこと。
そして葉純もずっと先生を見ていたけど、それはあくまでアイドルを追うようなものだったこと。
根井の自分に対する探るような眼差しと、葉純を目で追い続けていることに気づいていた先生。

そういう眼差しが交差する丁寧なストーリー展開になっているので、読んでいてどの登場人物にも共感できるようになっています。

葉純と根井がキスするシーンが見ていてこっちが照れ臭くなるくらい初々しくてかわいい。影からそっと見守らせていただく…という気持ちになったシーンでした。
そしてチューリップの開花が過去、そして現在と共に絡めて描いてあって、とても良かったです。

3

優しくて繊細

とても優しくて繊細で美しい作品でした。
各話の完成度もさる事ながら隔月刊連載とは思えない一冊を通しての破綻が無く、画力、設定、構成のしっかりした完成度が高いです。
装丁が素敵でジャケ買いだったので、予想外に素晴らしい作品に出会えて嬉しくなりました。
CP同士の絡みはほぼないのですがしっかりボーイズラブが描写されていて、登場人物それぞれの想いに胸がしめつけられます。
この方の描く男の子可愛い!
目が…目がさ…うっるうるよ。ニコラス・ケイジに負けず劣らずの濡れた目ぇよ。
これがデビューコミックスというのが凄いですね。

1

たくさんの想いをのせて

一冊すべて表題作。厚みがあって、読み応え十分でした。

「恋」と一口に言っても、それにはいろいろな形がある。
それをとても繊細に、丁寧に、ゆっくりと描いています。
中陸先生のもう一冊の本(今はかわいいバンビーノ)も読んだ上で、この方は短編以上に長編が物凄く上手いなと感じました。

ひとりひとりのキャラクターがしっかりと生きていて、何故、どうして行動を起こすのかまで、はっきりと理解出来る。
だからこそ、誰かに特別感情移入するというわけではなく、
キャラクター全員の人生を追いかけたくなるような(作中では半年ぐらいしか時間は経過していないのですが)、そんな読み方が出来る作品です。

出て来る人たちがとにかく優しいので、読んでいて全員のことを好きになってしまう。
だからこそ、みんなが幸せになれたであろうラストは、爽やかな涙が溢れました。

出来るだけゆっくりと時間をかけて、あるいは何度も読み返して、
たくさんの発見に胸を躍らせながら読むという側面も持ち合わせています。
2P程度しか出てこないキャラクター、1コマしか出てこないキャラクター、全員が「植物」に関係する名前だったり、
時間経過と共に、ちょっとずつ変わる髪型とか、意外な私服姿とか、
何よりも主人公である葉純の成長ぶりであるとか……。

人間とは愛おしい生き物なんだ、ということを思い出させてくれる、素晴らしい作品でした。

最後に、とても個人的な意見ではありますが、
この作品が「BL」という枠で発表されたことが、何よりも嬉しく思います。
だからBLはやめられない。心からそう思いました。

3

切なくて心が温かくなる良作

高校生独特の世界感が上手に描かれていて、恋と憧れの狭間だったり、色々なものが少しづつ育まれていく様子が丁寧に描かれていました。
表紙のイメージそのままにタイトルや植物の存在が作品の中に良く活きていました。
特に生物教師が変に俗っぽさに走らずに、教師として理性的でいたところが、切ないけれど良かったです。
高校生の2人はとてもキラキラしていて、恋の始まりってこんな感じだよねと等身大の姿にとても好感が持てて応援したくなります。
2人のこれからも見守りたくなります。

2

彼らは物語のなかで生きている

高校の生物教師と、二人の生徒が織りなす恋愛模様。

と、一言で片付けるには奥深すぎる……。
既にたくさんの方がレビューで触れている部分だけれど、
本当に「三角関係」とは言い難い、絶妙な距離感の三人、それぞれが主役になっている。

最初は生物教師の木庭が好きだと思っていた葉純が、自分も木庭を好きかもしれないと言う根井と出会い、その秘密を「共有」する。
けれど、そんなオイシイ展開にもかかわらず、「二人で好きな人の好きなところを言い合う」ということが一切ない。
共有はしても、共感し合うことはないのだ。
はじめはそれにかなり驚いたけど、でもそれって、ものすごく男子高生のリアルなんだと思う。
別に互いに話を合わせるでもなく、各々好きに想って、考えて、時折口にしてみて、共感されなくても全然良い。
それと同時に「自分が知っていることを、あえて相手には伝えない」ということもする。
大人にだってなかなか出来ない。
ましてやこの二人は高校二年生である。進学クラスに通う秀才くんと、普通クラスに通う、感性の鋭いおバカ。

最も顕著なのが、木庭の過去を知った根井が、葉純にはそれを最後まで言わずにいたこと。
それは根井なりの木庭への敬意であって、わざと隠しているわけじゃない。
木庭も、葉純には何も言わず、ここで木庭と根井の秘密が「共有」される。
しかし、木庭と葉純二人のシーンでも根井の話題はあがっていて、
そこで木庭は「葉純が根井を好きになりかけている」ことに気づくし、それを根井に言ったりはしないのだ。
安易に、助け舟を出すことも無ければ、背中を押すこともない。あくまで「教師」として、見守っている。
なんかもう単純にすごい。自分の作品を客観視できすぎてる……。

もちろん、高校生にしては頭が良すぎちゃって、という意見もすごい分かる笑!
けど、根本でとても優しい子達だからこそ、自然とそういう取捨選択が出来るんだろうなと思っている。

読者は神目線なので、なんでも知っている。
それは当然として、キャラクターたちは、まさか自分が誰かと喋っている裏側で何かが起こっている、なんてことは知らない。
結構それって忘れられがちというか、私自身が忘れがちな観点なのだけど、
そこを徹底してくれていたことが、何よりも気持ち良かった。

作者の人は頭が良いんだろうなあと思う。
デビュー作ということで、これからもこうやって、綿密に組み立てられた物語を作っていってほしい。
期待しかない作家さんです。

色々書いたけど単純にすごい好きだ!百点!!!

5

芽が出てふくらんで…

先生が気になってる生徒。2人だけの補習授業にもう1人の生徒が…。しかも先生に好意を持っていることを見抜いてる!
はじめは「生徒①x先生+当て馬生徒②」、と思ってたけど、読み進めていくとこの物語は正に王道的な高校生の曇りのない友情からの特別感の芽生え。
高校生同士のたどたどしくも微笑ましい交流。それを端から眺めるしかない過去に囚われた先生。
でも、彼らを見ているうちに、自分の哀しい過去、断ち切られた恋心、将来への投げやりさなど、凍りついた時間が少しづつ動き始める。
若い2人の眩しさが、自分の中断した恋を成就させてくれる…そんな希望。笑いあう2人を見て、自分も優しく笑えることに気づいた時、前に進み始めたことを自覚できた先生。
いなくなるなんて思ってもみなかった。あいつがいたから頑張ってきたのに。そして止まってしまった時計だったけれど、それでも人は何度でも立ち上がれる…!

全編に渡って丁寧に書き込まれた背景や、表紙の植物たち、少年たちの瞳に浮かぶ涙、とっても美しい。

7

技量が凄い

感想まで。
細かい設定に忠実で、矛盾点なくしっかりと描かれ、読んでいてその日常に入り込んだ感覚になります。
目の動きの描写が凄く良くて、それだけで感情がしっかりと伝わってくるので、
言葉なくても絵を追うだけで楽しかったです。

そんな描写が絶品ですが、更に一冊の中に
好奇心、空想上の恋、現実の恋
これがはっきりと区別されている所が本当に凄いと思いました。
想像と違っているから詮索したくなった好奇心。
恋愛感情ではないから、その人の世界に入り込もうと思わないし、入ってきて欲しいとも思わない 空想上の恋。
一緒にいるのが楽しくて、怖いけど相手の世界に入っていきたい 現実の恋。
それまでの描写と台詞がストンとはまる感じです。

ただ、これを高校生が考えたっていう所が。
こんなに冷静に恋心について自己分析できるかな。
高校生ってもっと勢いだけの所とかあるんじゃないかな~。好きは好き!みたいな。私の考えが古いのかな?!
高校生の二人が大人になった時の回想シーンでのモノローグだったら尚良かったな~とか、欲張りなこと考えちゃいました。

自分が恋人と出来なかった事を教え子がやってくれる姿を見て、想いを昇華させようとしている先生。
恋人が亡くなってから、墓参りにも行けなかったくらい受け止められなかったのに。
それでも、恋人との約束の道『教師になって戻ってくる』の呪縛から解けて
大学へ戻るという、自分の道を進み始めた先生に、沢山の幸が注がれますように。

4

きらきら補習物語

頭の良い天然の葉純くんと、てきとー(に見える)根井と、二人を見守る先生のお話です。

葉純くん
木庭先生に憧れるあまり生物(先生の担当教科)だけ赤点をとって補習に来るという天然。
先生の前のきらきら〜と根井の前でのむっとした感じのギャップが最初はすごいんですが、可愛かったです。どこが、っていうと大分詰めが甘いんですね葉純くん。補習に来てるのにプリントさらさら解いたり、感情が表情に出過ぎたり。隙?というか頭は良いのに表情が可愛くて葉純くんがぐるぐるするほど微笑ましい気持ちになりました。
根井とのやりとりで人付き合いの難しさを少しずつクリアして歩み寄っていく姿が素敵です。「大丈夫だよ」のところでなんだかここまで来たかーと感慨深くなってしまった…

根井
ちゃ、ちゃら男だ〜!と思ったのですが、とっても良い子です!
最初はタイプの違う葉純くんと馬が合わず図星をぐさっとついてくるのですが、おすすめされたアニメを徹夜で見たり、花の世話ちゃんとやったり、生物苦手設定を忘れた葉純にツッコミを入れたり、人の感情を汲むのが上手だったり、素直さのなせる魅力がいっぱい詰まった子です。
先生の話を聞いた後から見せる悩んでる時の目線が明るい普段との対比でグッときました。
お菓子の新作をゲテモノと知ってもついつい買っちゃう高校生っぽいところも可愛いです。甘えがちな猫みたいでした。

木庭先生
生物の先生です。もっさりした感じ。
この先生、恋愛として話に絡んでこないところがすごくいいな、と思いました。助言はしますが、あくまで「先生」で「大人」なんです。葉純がわざと赤点をとっていることも、根井の気持ちも察していました。葉純と顔が似ている元恋人を思い出してもずっと一途です。(でも、恋人の好きだったラーメン屋を葉純くんに教えたのはどんな気持ちだったんでしょうか…)
書き下ろしで数年後が描かれていますが、先生にとっては葉純も根井もずっと教え子で子どもなんだなーと思いました。
先生が単なるスパイスではなく、主要人物だ、という感じがとても好きです。

全体的に画面が細かく美しく、場の空気感(友達と過ごす夜や先生の車に乗るちょっとした非日常感とか)が伝わってくるようでした。
主人公達にとっては人生でそこそこ印象的な出来事なんだろうけど、それが全てじゃなくて、色々あった中の1つ、みたいな感じもツボでした。
目の描写も印象的で、お話も静かなのに染み渡るような構成でこれからも応援したい作者さんです。

…先生と小林はどっちがどっち…もにょもにょ…

11

久々の名作。

別所のレビューにて『中村明日美子先生の「同級生」を読んだ時のような気持ちになった』という一文を見て、それならば……と正直なところ半信半疑で読んでみた作品。

結論から言うと、疑ってすみませんでした。という感じで。
同級生とはまた違った読後感。
でも、読み終わった後の胸に広がる充足感は確かに似てる。
あー、これ。本当に久々です……。

帯に「教師と、生徒と、生徒。」とあるように、
ちょっと得体の知れない感じの先生と、真面目で初心な生徒と、正反対にちょっと不真面目で根明(のようで実は繊細)な生徒の三人が繰り広げるお話し。
でも、これって本当は三人というより、もう一人、先生の相手の人が居て。
だから二組のカップルのお話しでもあるんですよね。
とは言っても、そこを前に出さなかったの、正解だなーと思いました。
二つのカップリングがあるって感じだったら、なんだー総ホモか~って手を出さなかった可能性あるし。
でも総ホモかと言われれば実際のところ、全然そんなことはないし。メインは間違いなく三人の交友なので。

最近のBLでよくある「一目惚れ」とか「気付いたら好きだった」とか、好きなんですけど、でも、やっぱりどこか興ざめすることもあって。
なので、この作品のように、「好き」とは何か?
この想いはどこからやってきて、どこへ帰結していくのか?
そもそもこれは本当に「愛」なのか。それとも「憧れ」なのか?
という根本的なことが、5話かけてじっくりじっくり描かれているのは、本当に珍しいことだなと。
男子高校生が同い年の子のことを好きになっちゃうのって、本当にこういう過程を経てるのかも……とか本気で考えだしたりして(笑)。
例えば、主人公の葉純くんはアニメが好きなんですが、もう一人の生徒である根井くんに「あ、アニメ~…」って感じでちょっと引かれてしまうことがあって。
で、葉純くんは拗ねちゃうんですけど。根井くんは焦って「見るよ!」とか言って、葉純くんは「絶対見ないよ…」みたいなやり取りをする(笑)。
その時点で「あるあるだ~分かる~~」って共感してたのに、なんと根井くん、本当に睡眠時間削ってアニメを見てくれる。めっちゃ眠そうに、でも凄く面白かったって言ってくれる。
そんなの、葉純くんじゃなくても、ちょっと好きになるわ!!
本当に、そういうことの積み重ねって、バカにならないよなーって。思いました。

勿論、この二人だけじゃなくて、木庭先生も物凄くいいキャラをしてる。
教師含んだ三角関係もので、しかも教師と生徒がくっついちゃうとなると結構苦手かも……な感じだったんですが、前述したとおり木庭先生には小林という「コバ」仲間であった元恋人が居てですね。
その人と葉純くんが凄く似ていて、どうしても、嫌というほど気になってしまう。という……。
あんまり書きすぎてもアレなので伏せますが、本当にこのあたりは泣けました。
どうにもならないことを、どうにかすることすら出来ない。
人間って無力で、だから愛しい生き物なんだよな…とそんなことまで考える始末でした。
変に教師生徒モノじゃなくて、先生はあくまで見守るポジションだったの、ほんっっとうに良かった~~~。大好きですそういうの。

ちょっと感動しすぎて本気で書きすぎなのでこの辺で。
神評価をつけると、作品の規模感的にはちょっと大げさに感じちゃうんですが(神とかより萌って言葉の方が似合う感じ)、でも萌2じゃ足りなかったので神で。
久々に、ちゃんと文字にして感想を残したい!!と思える強い作品でした。
もっともっと評価されて、色んな人に読まれるといいなーと、昨日知ったぐらいの超にわかファンが思うのでした。

16

思春期の少年らしいあやふやさが良い

ストーリーが似てるとかではないんですが、京山あつきさんの「すのーふれーくす」を読んだ時の気持ちを思い出しました。
思春期特有のまだ恋愛におぼこい感じがとっても良かったです。
デビューコミックなんですね!
最近の新人作家様は、言われなきゃデビュー作ってほんと気付けないですよね。
今後追いかけたくなるような1冊目です。

手に取ったきっかけは、変形的なトライアングルラブが好きだから気になってだったんですが、いざ読んでみると、トライアングルというよりかはふた組のカップルのお話が交錯するようなストーリーで、読み応えのある1冊になっています。
読後の満足度がとても高いです。

お話の主役は、1人の教師を好きになった対照的な男子高校生2人。
主人公の〔葉純〕は好きになってもただ見てるだけでいいと思っちゃうような奥手な生徒で、もう1人の〔根井〕はグイグイと他人に踏み込んでいけちゃうネアカの生徒。
そんな2人が生物教師の〔木庭〕を通して、本当の恋愛感情を知っていくお話。
青春BLの醍醐味は、“好き”って気持ちのあやふやなさまだと思うんです。
それが前面に出ている本作。
「たゆたう種子」とは、なるほどなと。
たゆたいながらすごーくゆっくりと芽生えていく恋心が可愛くて、青春最高!DK最高!ってなります( ´ ▽ ` )

後半は切なかった…
コバセンはどんな気持ちで2人のことを見てたのかな。
行き処のない想いはこれから少しずつでも昇華していくかな。

読み終わって思わずググったチューリップの花言葉。
ピンクのチューリップは「愛の芽生え」
赤いチューリップは「愛の告白」
だそうですよ。

10

素敵な作品です

この作家さんは初読みです。と言うか、初コミックなのに、神評価がすごいですね。他の分野で描かれていた作家さんなんでしょうね。

評価通り、デビューとは思えないような素敵な作品でした。男子高校生と生物教師の三角関係と言うか、淡い恋心が丁寧に描かれていて、このタイトルもうまいことつけたなぁと感心します。

エッチなシーンとかはないけれど、それぞれの視線や言動などで徐々にこの人がこの人を好きになってきてるなと言うのが分かって、映画化とかされそうだなと思いました。

男子校だからそういう思考回路になってしまうのか、それは単なる友情では?と突っ込みたくなる気持ちもありましたが、じゃあ、友情と恋人になりたいと願う愛情との違いってなんなんだろう?と根本的な違いにぐるぐる。エッチがない分、色々なことを考えさせられた作品でしたし、こう言う心が重視の作品ってやっぱり好きだなぁと思いました。

7

カップリングのネタバレあり注意

生物の教師に片思いしている葉純は、本当は高い点を取れるはずの生物のテストでわざと悪い点を取り、2人きりの補習を受けるのを楽しんでいた。そんな穏やかな時間に、根井という同級生が1人加わる。人の顔を伺うことが得意だという根井に、教師への想いを見抜かれて焦る葉純だったが…。


生物の先生が最後まで絡んできますが、最終的には葉純くんと根井くんがカップルになります。
エロがなかったのでどちらが受けか攻めか作中ではわかりません。ただこちらの情報ページには明記されているし、作者さんのインタビューを覗いたらカップリング表記もありました。

というわけで、核心的なネタバレではないと判断し、ちょっとオタクな葉純くんが受け、傍若無人ながら人の気持ちに聡い根井くんが攻めというカップリングです。
受けが好きな生物教師のことを攻めも好きで、補習に割り込んできます。攻めは昔親戚の家で過ごした経験から、人の顔色を伺って気持ちを察するのが得意だと言い、受けの教師に対する想いも早々に見抜かれます。
期せずして秘めた想いを見抜かれ焦る受けですが、自分の気持ちを知る相手というのはすごく気が楽らしく、正反対の性格なのにどんどん打ち解けていきます。

打ち解けていく過程の描写がすごく丁寧で、よかったです。ややオタクな受けは、攻めに好きなアニメの話をするのですが、「今度見てみるよ」という攻めの言葉をまるっきり信じていませんでした。それが、攻めは本当にアニメを見てきて、面白かったと言う。これはオタクとしてはたまらないよね、と思ったりしました。アニメ見て睡眠不足の攻めが、受けの膝枕で眠っちゃったり。受けはまだ自分が教師を好きだと思っているのですが、読み手には気持ちが変化していくのが読み取れる、というのが上手いなぁと思いました。

受けの、ただの片想いの相手だと思われた教師の気持ちや、過去の出来事なんかも加わって、とても深い作品だったと思います。
一年後の話が収録されていて、それもとてもよかった。攻めが振り回されている感じが微笑ましくてモエモエしました。

8

芽はまだか、花はまだか、

中陸なかさんのデビューコミックス。
読後、レビューが書きたい!と久しぶりに心が躍った作品です。

主な登場人物は男子高生・葉純と根井。
そして彼らに補習をする生物教師・木庭。

葉純と根井のキャラ設定と動かし方がすごく良い。
ほとんど正反対の性格のふたりが、気になる人物木庭を通して互いのことを知っていく。
好きなアニメ、いつも買うコンビニの新作お菓子。
共有して共感していくということ。
そんな二人に、花壇の整理を頼む木庭。
土をおこし、種を蒔き、水を遣り、芽はまだか、花はまだかと大切に育てていくのだけど、その過程は、まさにふたりが育む恋心を象徴しているようで、その丁寧さに好感を覚えました。

けれど、何より心を打たれたのは、木庭という存在でした。
個人的に三角関係モノは得意ではないのですが、こちらの作品は、教師・木庭が先生という枠から大きく外れることなく、終始学生二人を見守る側だったので、三角関係の要素はごく薄め。
でも、単に生徒を見守るだけではなく、木庭自身の哀しくも美しい物語が重ねられることで、作品の深みは増し、確かな読み応えへと導いていきます。

木庭の過去の物語を知らされた根井と、知らされることのない葉純が心を通わせるクライマックスは必見。
ふたりのやりとりに胸が熱くなり、萌えで満たされること請け合いです!

新人作家さんならではの、瑞々しさ、丁寧さ、そして作品に対する熱意と愛情の深さが、心地よくたゆたうそよ風のように伝わってくる素晴らしい作品。
是非、多くの方々に手に取って読んで頂きたいです。

10

ゆっくりしていて、とても読みやすかった。

初めて商業BLを読むきっかけになった作品です。
なので、ちるちるさんも見始めたのが凄く最近で、レビューというものの書いたことが全然なくて、読みづらいところが沢山あると思います。すみません。

以前から作家さんのことが大好きで、初めてのオリジナルでBLということで、WEB連載の時からずっと追いかけていました。
更新されるたびに、これからどうなっちゃうんだろうってドキドキしながら読んでいて、
とても小さくて、普通に読んだら気づかないようなちょっとした表情が
(私もコミックスを3回ぐらい読み返して気づいたところが沢山あります)
実はとても深い意味を持っていたり……。
読んでいて、ずっと、胸の中でじわーっと広がる、あったかいものがありました。
私は最初葉純くんが大好きで、木庭先生とくっついてほしいな、
と最初は思っていて、というか普通にそうなんだろうな~と思ってたんですが、
でも根井くんとの時間を過ごしていくことで、あ、根井くんも大好きだな~と思ったりして、
読み進めればすすめるほど、作品に出てくる色んな人のことが好きになっていく作品でした。
根井くんと葉純くんがくっついてくれて、今ではよかったなあ…と思っています。
全然激しくないし、無理もないし、多分普通に考えたらちょっと地味?なんですが、
でもそれでまるまる一本描ききってしまって、しかも、ずっと夢中になって読めて、
そういうところが本当に凄いなと思いました。
カバーもとてもきれいだし、描き下ろしも、特典も(私はホーリンラブブックスさんで買ったのですが)とてもよかったです。他の特典も読みたいんですが(中四国のやつとか、行けないので)、いつかどこかでまとまったりするものなんでしょうか…。

この本がきっかけで、商業BLという世界をちゃんと知ることが出来たので、私にとってはそれも特別なことです。
本当に、読めてよかった。と思う作品でした。
読みづらいレビューでごめんなさい。本当に好きでした!!

9

​ 恋と憧れと、思春期のゆれる心

​ お洒落な植物図鑑のようなこの表紙がとっても気になり、公開されていた1話を読んで購入しました。
 【「たゆたう」物事がゆらゆら動いて定まらない。ただよう。】まさに「たゆたう」時間を過ごすようなお話でした。
 木庭先生が好きで少しでも一緒の時間が過ごせたらと、わざと赤点を取って補習を受ける葉純と、木庭先生の学校では見せない顔を町で見かけてから先生が気になっていると言う、補習に加わることになった根井。感情が顔に出やすい葉純の木庭先生に対する行為は根井にすぐばれて、勘のいい根井は木庭先生の葉純への視線にも気が付きます。
 男子校が舞台なので、思春期の同性に対する自分の気持ちが、はっきりとは分からないたゆたう時間とたゆたう気持ち。先生への気持ちは恋なのか憧れなのか…。
 根井が補習に加わったことで、教室での学習は花壇での実習に変化してゆき、3人の関係も次第に変わって行く。それが本当にささやかに描かれています。大きな出来事も激しい感情の動きもなくゆらゆらとたゆたう時間です。
 根井はハキハキとモノを言うタイプで、葉純をハラハラさせたりして、二人のやり取りはいかにもDKというノリだったりするのですが、肝心な話をするときにはいつも葉純が真面目に聞いてくれていることにもちゃんと気づく繊細な男の子です。
 葉純は木庭先生にも屈託なく話しかける根井に、嫉妬のような羨ましさを感じて、先生との仲に割り込まれたように思っていたのに、花壇の世話をきっかけに一緒の時間を過ごすうちに、沢山のことに気が付くようになります。同じことを考えていたこと、好きなアニメを面白いと言ってくれたこと、二人で過ごす休み時間があっという間だと言うこと…。
 そしてもう一人の主人公の木庭先生が根井に語る過去のお話。先生が彼らの年の頃、この学校で出会った、自分と同じあだ名の、葉純によく似た好きだった同級生。根井と葉純と同じように花壇の手入れをして、根井と葉純とそっくりな思春期のたゆたう時間を過ごしていた二人の結末。
 根井が加わったことをきっかけにあの日の花壇の手入れをして、根井に踏み込まれたことで、誰にも話せなかった同級生のことを初めて人に話して、木庭先生の止まっていた時間が動き出したのだと思う。「花の写真を送ります」と微笑む葉純に重ねた木庭先生の悲しみも、少しずつ癒されていくといいな。
 エロシーンはありませんが、二つのキスシーンがどちらも素敵でした。

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たゆたう想いに花が咲くように

高校二年生の葉純夏芽(はずみなつめ)は、生物教師の木庭(こば)先生に密かな好意を寄せている。
生物の試験で毎回わざと赤点をとっては先生と二人だけの補習の時間を楽しみにしていた。
ただ先生を見ていられたらそれで満足だったのに。
ある時自主的に補習を受けにやってきた生徒、根井(ねい)が加わることで葉純の穏やかな時間は一変する。
顔を見れば相手が今何を思っているかわかると言う根井は葉純が先生へ抱く好意をあっさりと見抜いてしまう。そして自分も木庭が気になるとも。
屈託のない彼の明るさと奔放さに振りまわされつつも、根井とともに補習を受けるなかで、葉純は自分が知ることのなかった先生のこと、何が好きで、どんな風に笑って、どういう人なのか。
木庭先生という人間に初めて触れていく。

中陸なかさんのデビューコミック。
真面目でちょっと不器用な葉純と、とにかく明るくマイペースな根井。そんな二人が気にする木庭先生。
人との交わりとはなんだろうか。
揺めきたゆたう三人の想いを温かに細やかに描いています。

最後の補習授業で校内の片隅にある花壇にチューリップの球根を植えた葉純と根井はクラスも科も違うけれどその後も一緒に花の世話を続けている。
自分の秘密(先生への好意)を知っている根井は葉純にとって気負うことのない存在で、根井もまた寄りかかるような気安さで葉純に接していた。一緒に帰ったり、ラーメンを食べたり。お互いの好きなものを分かり合うとしたり。
葉純自身も気付かぬうちに根井の存在は自然と近くにあって、それは根井も同じはずなのに二人は自分の気持ちを自覚できずにいます。

一体先生とどうなりたいのか。
根井に問われた葉純は先生への好意が恋愛感情とは違うということ。それは自分のなかの想像上の先生を好きでいたというひどく曖昧なもので、木庭先生自身の人となりを見ていなかったことに気付きます。

一方根井は以前、学校の外で自分の知らない木庭の一面を見かけたことで木庭を気にしていました。その気になるを知るためにわざわざ補習を受けていたのですが、木庭が葉純を見る時の顔が好きな人を見る時のそれだとわかってしまう。
それは木庭の昔の話に繋がり、かつて自分が好きでいた人への想いに決着をつけられず、漂うように日々を過ごしていた木庭の姿がそこにはありました。

最後の方で葉純と根井は自分の本当の気持ちを知るようになるので、二人の関係が進むのはとてもゆっくりです。作者さまは人物を表情豊かに描かれるので、そこも楽しんでいました。

人は生きていくうえで数多の感情を抱えていくものです。けれど全てを自覚しコントロールできるわけではないと思います。ふんわりと綿毛のようにたゆたい、それが一体何なのかわからないまま、向き合えないままの感情や想い。時にはその存在にすら気付かず見失ってしまうことも。
しかし人と人が出会うことでたゆたう種は根を張り、芽を出し、その存在に気付くこともある。
別たれたあとで、花が散ったと思い知らされることもある。
人との交わりは良くも悪くも己に実りをもたらすものだと私は思っています。
こんな風に考えさせてくれる作者さまの瑞々しさに溢れた感性はとても素敵だと思います。

葉純、根井、木庭もそれぞれの種が根をおろす地面を見つけ、芽吹きはじめたようです。春の季節に終わるラストは読み終えたあと、穏やかな風が吹き抜けていくようでした。

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