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minna iikodayo
同じ大学に通う遠山君と杉村君と里君の話。ぱっと見、三角関係?って感じだけど、それぞれに好きな人がいて、それぞれ何か悩みを持っている。
当て馬に見えた遠山君は友達を忘れる為、杉村君に興味を持つが、杉村君は里君が好き、その里君(別に本命あり)が遠山君と杉村君の仲を取り持とうとするけど、余計こじれて‥
3人の心の葛藤が手に取るように分かる気がする。派手なHは無いけど、個人的には、物足りないとは感じない(何でだろ?)読み手によっては、物足りないかも‥
同時収録も書き下ろしも面白かった。
でも1番は話の間の白紙に描かれているクマちゃんかな(笑)
読み終えて、感想をものすごく書きたいのに書く気にはなれず。でもこの表紙ができるだけ多くの人の目に留まってほしいと思います。収録されているのは、2013~2014年にかけて[OPERA](茜新社)で連載されていた作品が二つ。本のタイトルは両作品のイメージで付けられたものだそうです(あとがきより)。連載時に下記作品を読まれていない方はぜひ、詳細ネタバレ無しで読んでほしいです。
■『こんな事になるのなら』(表題作・1~4話)
■『醜くひかる』(前後編)
+表題作の描き下ろし
いつかいつかと、隠していたんです。
だれが一番幸せとか、誰が一番苦しいかなんて・・・。
きっと大事なのは、その先の話。
作者の描くお話は、忘れられないものばかりですね。
大学生3人のままならない恋が、それぞれの視点から語られます。
始め三角関係かと思いきや、もっと深く複雑に絡まり合った物語でした。
表題作「こんなことになるのなら」はそれぞれが「こんなことになるのなら〇〇すればよかった(あるいは〇〇しなければよかった)」という後悔を抱えながら紡がれる物語です。
1話目 杉村目線
高校時代から想いを寄せている同級生・里(男性)に遠山という彼氏が出来たらしい。
こんなことになるのなら、俺もとっとと告白すればよかったという後悔から始まるお話。
里以外の人間を寄せ付けないタイプの杉村は、高校時代偶然見てしまった里のキスした後の艶めいた表情に心奪われ、あれを独占出来る恋人が羨ましいと思うように。
里と同じ大学を受験することになり、ゴーカククマというクマのキーホルダーを貰い、大学生になった今も大事に持ち歩いている杉村。
遠山は杉村の気持ちを見透かしていて、自分を恨んでいることも知っている様子。
里の肩を抱き、わざわざ首筋のキスマークを見せつけてきたり、友人に「恋人でもできたの?」と聞かれれば「いない、いない、ドフリーだよ」と答え、杉村の心をざらつかせていきます。
そんな中、高校時代の仲間の飲み会に誘われた杉村。
ようやく遠山抜きで里に会えると安心したのも束の間。飲み会にはみんなとなじんで飲んでいる遠山の姿が。
席を外した杉村は、里と久々に話すことが出来喜びますが、「もし遠山くんが潰れたら家に送ってあげてくれないかな」と話す内容は遠山の事ばかり。とうとうキレた杉村は「遠山すげえ嫌なやつじゃない?俺は好きじゃない。こんなトコまでついてくるなんてオカシーだろ」と悪口をぶちまけてしまいますが、里は「そんなこと言わないであげて」と悲しそうな顔。
『恋人としての濃密な数日と』『友人としての水に薄めたみたいな3年』どっちのほうがなんて考えることがそもそも間違いなんだろうと落ち込む杉村。
『それは種類の違うもの』
『こっけいだ』『俺の恋はこっけいでみじめだ』
そう考えながら、飲めない酒を飲み倒れてしまう杉村。
酒くささで目を覚ました杉村。何故か遠山の家のベッドの上でキスされています。
ベッドに落ちた、里に貰ったキーホルダーをからかわれ、「別に里を奪おうとか思ってないし、好きでいるぐらいいいだろ」と言う杉村に「それは困る」と食い下がる遠山。
思わず下半身が反応してしまった遠山に「里というものがありながらお前はどこまで軽薄なんだ」と怒る杉村。
実は、里は遠山に協力していただけで、遠山とは付き合っていなかった。遠山がやたら杉村につっかかってきたのは、焼きもちというか、好きの裏返しだった模様。
「里はお前を好きにならない」という遠山の言葉に「それでも俺は里が好きだよ」と応える杉村。切ない片思い同士がどうしようもないままラストを迎えます。
2話目 遠山目線
1話の裏側、同じ時間軸の中遠山がどう考え、行動していたかが描かれています。
『彼女がいても好きだとか』『そんな虚勢を張り続けて結局最後は一人になった』
『こんなことになるのならとっとと諦めりゃよかったんだ』
遠山には高校時代、大崎という親友がいました。彼からの「彼女が出来た」という報告。
「安心しろよ、彼女ができても一番はお前だからさ」という大崎の言葉が冗談であることも、大崎が男を好きにならないこともわかっていた。頭ではわかっていたけど、心は全然わかってなかった。そう振り返る遠山が非常に切ない。
その後自暴自棄になり、ハッテン場でヤられかけていた所を里に目撃され、仲良くなります。里を好きな杉村に気づき、自分と重ねていく遠山。
大崎から子供が生まれる話をされ、友人代表を頼まれる遠山の回想がしんどかった。
始め遠山が嫌いだったのですが、この話を読んでから、遠山が好きになりました。
3話目 里目線
『僕は彼らにひどいことをした。こんな事になるのなら、ぼくがどうにかしようなんてバカなこと考えるんじゃなかった。』
20歳以上年上の女性しか好きになれない里。昔自分の性癖を知られ笑われた経験があり、偶然路地裏でヤられそうになっている遠山を見かけ、思わず放っておけず声をかけてしまいます。自暴自棄な遠山が杉村に興味を持った事を無邪気に応援しようとしますが、結果杉村を泣かせてしまう事に。
このコも別に悪いコではないのに、知らずに杉村を傷つけてしまう。本当にみんないいこなのになかなか上手くはいきません。
4話目 杉村目線
飲み会翌日からのお話。遠山と杉村いい喧嘩友達みたいになってます。でも杉村はまだ里に想いを寄せていて、里を失うのが恐いと思っていた矢先、年上の彼女を紹介されてしまいます。公園のベンチで一人泣いている杉村。横を見ると見知らぬ男性と今にも事を始めそうな遠山が。
里を失くした杉村は里を忘れられるならと遠山と寝ることを決意。
ちょうど最中に遠山にメールが入るのですが、その内容がまたしんどかった。
『何度も後悔した先に どんな事があるのだろうか』
と読者に最後を委ねる形でお話は終わります。
丁寧な心理描写、凝った構成、どんどん明らかになっていくそれぞれの抱える苦しさ。
かなり切ない作品ですが、描き下ろし「その先の話」でこのお話は全て意味があったんだ、そう思える素晴らしい作品でした。
どこか歪んだ、深い作品を描かれる先生なので、また他の作品も読んでみたいです。
2本のお話。
どちらもひとひねりあっておもしろかったです。怖くなかったし。
□こんな事になるのなら
杉村視点で始まるので彼主体に読んでいきました。
が、遠山のターンで杉村視点は勘違いだとわかりおもしろくなっていきました。
里に片思いし続けている杉村に遠山は自分を重ねたんだろうけど、その気持ちは本物だったようで萌えでした。
杉村と関係を持ってからも遊んではいたけど。
それを解消させた杉村とはいい感じにケンカップルになりそうでそこがいちばん見たいなと思いました。
□醜くひかる
帯田の恋を後押しする涼治の企みが未遂に終わってよかったです。
この話も、お互いが父親への愛情が欲しくてそこを重ねた面もあったんだなと。
◆こんな事になるのなら
里(彼女持ち)←杉村←遠山という一方通行の三角関係。誰か1人の視点に絞られているわけではなく、3人全員の心情が読めるところが良かったです。年上の女性しか好きになれず、杉村や遠山の気持ちに寄り添えないことに疎外感や罪悪感を覚える里。臆病さを克服できず、いつまでも里に告白できない杉村。どんなにアタックしても、杉村の中で里には敵わないことを思い知らされる遠山。誰も悪くないし、どれも等身大な気持ちばかりで共感でき、だからこそ苦しい。長年想い続けてきた相手をすんなり諦められはしない。でも、最後に少しだけ杉村と遠山の新たな関係に希望が持てる。そんな締め方が、現実味のある余韻を残してくれて印象的でした。
◆醜くひかる
父親という存在にコンプレックスがある者同士の物語。早くに亡くした父親の愛を渇望した帯田と、離婚後新たな家庭で幸せを築いた父親を憎んだ藤島。2人が繋がりを持つきっかけこそ歪だったけれど、結果的には互いにとってかけがえのない出会いになったわけですね。父親がいない寂しさを知っているからこそ、分かり合えることもある。寂しい子供時代を過ごした彼らが、ゆっくり温かい青春を楽しめるようになれるといいなぁと思います。