はるのうららの

haru no urara no

丑陋的光芒

はるのうららの
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神52
  • 萌×211
  • 萌4
  • 中立1
  • しゅみじゃない1

--

レビュー数
13
得点
317
評価数
69
平均
4.6 / 5
神率
75.4%
著者
三崎汐 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

媒体
漫画(コミック)
出版社
茜新社
レーベル
EDGE COMIX
発売日
価格
¥680(税抜)  
ISBN
9784863493797

あらすじ

「春希の普通と俺の普通は、
たまにちょっと違ってるよな」

「これからもっと違っていくんだろうな」



家庭の事情で転校した大沢春介(おおさわしゅんすけ)は、
クラスでひとり浮いている矢河春希(やがわはるき)と
行動を共にするようになる。
友達以上に互いが特別な存在となっていたが、
幼いふたりは周囲の環境に振りまわされていって……
濃密なネームと心の奥底に触れるような描写で話題をさらった、
三崎汐の連載作がついに単行本化! !

表題作はるのうららの

大沢春介,中学生・家庭環境に難あり
矢河春希,中学生・いじめられっ子

その他の収録作品

  • あのとき
  • あれから
  • あとがき

レビュー投稿数13

「普通」が、儚い自己の世界だと知る。

「普通」っていうのは、
すごく危ういものだよな、と。
読みながらジクジクとずっと考えてました。
初めて同性への恋心を自覚し、
そんな自分を認めるまでが
ゆっくりと暗さと切なさを纏って描かれてる。
男の子の性的欲求やスキンシップ、
キスシーンも描かれるけれど、
私にとっては「萌えよりツボ」な作品だった。
読んでよかった。
心を突かれました。泣いた。


「普通」というキーワードがずっと、
主人公春希の心の中にある。
この思い込み・刷り込みの様な
春希の「普通」には、少しイラッとして
なかなか好きになれなかったけれど、
その心がゆっくり動いていく様子には、
ひどく息苦しい切なさを感じました。
自分の内面というのは、
どうしても外的環境に左右されて形成されてく。
私もきっと、そうなんだろうなと思う。
『スメルズライクグリーンスピリット』を
読んだ時も、こんな風に「普通」について
考えたなというのを思い出しました。
設定や全体の印象が似てるとか
そういうことは無いのだけれど、
個人的に似た感想を抱いた部分があるな、と。

そして春希と春介の心情だけではなく、
脇キャラもよかった。
何より、同級生美山の想いが端々から感じられて
春希・春介のふたりとはまた違う切なさが痛くて
個人的にとても印象深かった。
BL的当て馬萌えではなく、
もっと瑞々しくて青くて痛みのある感じ…。


全編通して切なさが
根底に漂っているような物語です。
心の中の葛藤というか思い込みが
けっこう読者を苦しく・苛々もさせるので、
日常で恋心に気付くお話が好きでも
苦手だと思う方がいるかもしれない。
仄暗さや息苦しさがツボな方は
好きな作品だと思います。
モノローグや登場人物の言葉にも、
はっとする部分が多い。
ただ、こんな風にシリアスな分、
ハッピーで甘いBLが好きな方は
好みではないと思うのでオススメしません。
また、子どものイジメや
大人の心無いからかいの描写が含まれるので、
無自覚な攻撃に嫌悪感を覚える方は
少しご注意ください。

ノスタルジックで独特な絵柄は
ちょっと好き嫌いが分かれるかなと思います。
ただ、私は表紙カラーを見て、
「あんまり好きな絵じゃないかも…」
と思ってましたが、実際に本編を読む際は
全く気になりませんでした。
だから、あらすじ気になってるけど
絵で躊躇してる…って方がいらしたら、
読んでみてほしいな。
小学生から話は始まるし、
ほのぼの絵なんだけれども
切なさの度合いはかなりのものです。


作者の三崎汐さん、
次作も確実にチェックします。

11

恋を知るまで

小学校の6年生の春、春希のクラスに東京から転校してきた春介。
二人の出会いの小学生から、中学生、中学卒業後まで、一番心も身体も変化する中学生時代を中心に、
自分を受け入れること、
他者の違いを認めること、
そして、恋を知ることを、丁寧に綴った作品。

この作品に登場するキャラクター達は、一見、不安定でひょろよろした絵だけど、
それが、この年頃の子どもの、心や身体の未熟さや不安定さとすごく合っていて、
このストーリーには、この絵しかないって思えます。

9

追いつめるのは誰か

手書き文字の帯が、とにかく鮮烈でした。
だから手に取るのを一瞬躊躇して、読むまで
少し時間がかかったのです。

そして一読した内容は、煌めいていながらも
重い内容でした。
口の悪い登場人物にも恐らく積極的な悪意の
持ち合わせはないのです。
ただ、自分が理解出来ないものに対して放置も
許容も出来ない。それ故に拒絶に走るしかない。
しかしその拒絶が他者を傷つけると言う事には
意識が至らない、と言う閉鎖空間故の悪循環が
物語の大きな要素になっていると言うのも
皮肉なものです。
だから繊細過ぎる人にはこの物語は真っ直ぐに
届かないかも知れない、と老婆心ながら一寸
恐れています。
そのハードルさえ乗り越えればきっと見えるかも
知れないのです。
この物語はゴールに着けば終わりと言うのではなく、
関門を幾つも二人で抜け乍ら確かめて行こうと言う
出発点を描いたものなのでしょうから。

8

言葉を失う傑作

大好きな1冊です。
読み返すたび何度でも涙腺をやられてしまう三崎汐さんの傑作。
ポカポカ陽気に誘われて朝から読み返して感動しておりました。
デビューコミックに対してこういう風に言うのは作家様からしたらあんまり喜ばしい言われ方ではないのかもしれないけれど、読み返せば読み返すほどやっぱりすごい傑作だと思うし、こういう作家様に1人出逢う毎に、BLって尊いジャンルだなって噛み締めてしまいます。

子供から少しずつ子供じゃなくなっていく10代前半を、息苦しく思いながらも挫けず生きている少年達のお話です。
パッと見はブルーが綺麗で青春BLっぽさを感じる表紙のイラストですが、よくよく眺めると少し不思議。
2人が立っている場所がどこかと言うと「冷たい水の底」なんです。
だけど天上からはしっかりと光が射し込んでいるから暗くはない。
あの頃(10代前半)を例えるなら、確かにこんなイメージかもしれないなと思いました。
そしてページをめくって読めるのは、まさにそんな、暗いけれど煌めきが常に共にあるようなお話です。

主人公の〔春希〕は周りより少し成長の遅い子なのだけれど、小学6年生の春、〔春介〕との出会いでそれまでの自分の世界にほんの僅かにヒビが入ります。
そこから少しずつ始まる春希の心の成長が高校入学までの約5年間のスパンでじっくりと丁寧に描かれていくのですが、女装して家を出ていってしまった兄の存在もあり、なかなか遠回りな大人への道のりです。
枷は「まっとうに育ってほしい」と願う親心を裏切りたくない子供心。
世の中の「まっとう」から外れる事柄は色々あるけれど、それでもやっぱりセクシャリティの問題は10代特有のあの閉鎖的な環境で受け止めるには一番キツいものだと思うし、自分を守るために別の誰かを傷付けてしまうような発言をついしてしまうのも、それがあとから重くのしかかってくる感じもリアルでチクチク痛い。
「僕の『普通』はいつも僕の大事な人を傷つける」というモノローグのズシリとくる感じ。
10代のめまぐるしい季節の中に自分だけが置いていかれてしまうような春希の焦燥感は、読んでいるこちらまで胃がキリキリとしました。

「冷たい水の底」から浮上したあとも良かったなぁ。
最後のモノローグがすごく好きです。
思わず一緒に目を閉じて、同じように息苦しかった自分のあの頃を思い返しました。
青春の尊さというのは、自分の頭上には光があることを暗い場所からでも信じ抜ける強さなのでしょうね。

本編のラストページはもちろんのこと、描き下ろしの最後の1ページがまた良いんですよね。
子供じゃなくなっていくけど、でもやっぱりまだまだ子供だよね10代は。
頑張れ!って思います。

三崎汐さんは最初は絵から受ける印象と中身のトーンにギャップを感じるかもしれませんが、この繊細で刺さる感じ、ちょっとチクチクする感じが大好きです。

【電子】ひかりTVブック版:修正-、カバー下なし、裏表紙なし

7

よくできた青春映画のような

思春期のキリキリした切なさが、すごく伝わってくる作品です。絵に癖のある作家さんだと思いますが、私はこの絵と、エピソードを淡々と連ねていく感じがたまらなく好きす。エロはかなり薄めですが、最終的に幸せな感じがあればエロが薄くても満足です。欲をいえば、もう少し、いちゃついてるところが見たい…かな…。

3

迷いながら揺れながら

久々に良い冒頭に出会いました。
出だしのことばがするりと頭の中に入ってきました。
何の大げさな表現もコマもありませんが後の展開の伏線となる文章でもあり、
いい冒頭だなと思いました。
個人的には気持ちよく本の中に入っていけました。

小学校6年生、春希の学校にしゅんちゃん(春介)が家庭の都合で転校してきます。
春希は美山というクラスメートに「おかま菌」と呼ばれていじめられていました。
いじめられる前までは春希は美山と仲が良かったのですが、突然いじめられるようになります。
それには理由があったのですが、そのことについては描き下ろしにて描いてあります。

そんな春希でしたが、しゅんちゃんとは気を貼らずに友達になることができたので、
それ以来彼と仲良くなります。
春希は中学校も私立受験をせず、しゅんちゃんと同じ公立の中学校に行くことにします。
理由はしゅんちゃんが公立中に行くから。
その頃からしゅんちゃんは春希のことを意識していたようなのですが、
この時点ではまだ春希もしゅんちゃんもただのお友達です。

けれど時々しゅんちゃんが見せる友達以上の行動に春希は戸惑います。
徐々に縮まっていく二人の距離。

春希は自分の気持ちを否定することで何とかやり過ごそうとします。
オカマになったお兄ちゃんのことがあったから「普通ではない」ということが怖いのです。
親に対しても自分はお兄ちゃんと違って普通でなくてはいけない、と思っています。

自分の気持ちにふたをして、先にしゅんちゃんを突き放したのは春希。
それなのに今度はしゅんちゃんに突き放されると悲しくて苦しい。
この感情はなんだろう。

二人が迷いながら揺れながら、見つけた答えとは。
春希の中にあった本当の想いとは。

二人の出会いからその後、その先までを描ききった実に丁寧な内容でした。
そして美山のいじめの理由にも触れられていたり、適度に読者の疑問をカバーする部分が入っているのもいいです。
他にも美山と春希の間にあったいじめる者といじめられる者の壁がなくなっていく時も丁寧に描いているのが良かったです。
そして最後の最後にしゅんちゃんのツナギ萌がw思わぬ萌を頂きました!

どの場面にも作者さんの言いたいことが十分に表されているような書き込み具合を感じました。
読んだあとに満たされた気持ちになりました。
暖かな気持ちで彼らを見守りたいなと思いました。
感動して泣くほどではなかったので萌萌評価ですが、限りなく神に近い萌萌です。

11

少年の昇るべき階段

作者さんの初単行本。
小学校6年の春の出会いから始まり、中学時代を中心に子供の心を描いた作品です。
家庭の事情で少し先に大人っぽくならざるを得なかった少年と、兄の事もあり優等生でなければならなかったまだまだ子供の少年との、
子供であるがゆえの出来事や、それに対応する心情が満載で思わずうんうんと彼等の、そして周囲の子供たちの心に共感すること間違いありません。
最近「男の子を好きになるということ」とういか固い言い方をすると、「思春期にセクマイに直面した時の~」というそういう作品がよく目に付くようになりましたが、この作品もそういった欠片を持っていると思います。
表紙カバーの絵が、色遣いが印象的です。
子供がとても特徴が出て描かれていて、主人公がとてもかわいいです。
ほのぼのとしていながらも、ちょっとチクっと胸が痛い、そんな思春期を彼等と一緒に体験したような気持ちになります。

小学6年の春、東京から転校生・春介がやってきた。
先生から宜しくね、と言われ友達になれるかな?と期待していた春希。
彼は兄が女装して家を勘当された事から「オカマ菌」と呼ばれクラスで仲間外れにされがちになっている子でした。
春介も家庭に事情があり心に孤独を抱えており、全く家庭環境や理由は違えど”ぼっち同士”という共通項を何となく見つけ二人は友達になります。
そして中学校へ進学しクラスは離れてしまっても、いつも一緒に帰る二人。
だけど、春希を「好き」と自覚した春介と、そんなのありえないと受け入れられない春希は距離が開いてしまいます。

春希はよい子で優等生で子供です。
兄の事は晴天の霹靂で、あんなのは普通じゃない!と思っていて、そして普通でまっとうな大人にならなければならないとも思っているのです。
春介は感情をあらわにしないけど、何気に春希の手をさわったり、キスをしそうになったり抱きついたり、明らかに友情以上の好意を見せるのですが、それを春希が何か感じた時に意識して、手を振りはらったり否定するような言葉を言ったりする。
なのに、春介が引こうとするとその手を引っ張る。
春介はそれが苦しく思って避け始めるのです。

春介は少しかわいそうでした。
男に騙される母親、育児放棄のような環境で親として愛情を、いわゆる普通にはうけてないない。
初めての精通も、母親の友達のいたずらで無理矢理に・・・母親のバイトだけでは高校へも行けなくて、春希にとっては当たり前の高校進学も彼はあきらめなくてはならないのです。
そして性癖までもですから、彼は春希の言う所の普通じゃないのです。
自分の「普通」が人には普通じゃない。まだ春希にはその判別ができなくてそれで苦しむのです。
まだまだ子供だから二人共、相手の事を考えてあげられないのです。

春希がいじめられるきっかけになった話が【あのとき】にあります。
友達だった美山が、ただ女装した兄に会っただけだったらあそこまで苛めなかったと思いますが、兄が言った言葉がゆえに。
しかし、作中で彼も学年を昇るにつれて成長して春希を思いやる心が見えてきます。
彼も成長をしているんですね。

【あれから】で、親類の家で働く春介と付き合っている高校生の春希の姿が描かれます。
背も高く大人っぽい春介に、追いつきたいと思っている春希なのですが、
その家では子供扱いされている様子を見て、自分と同じだ、と安心している春希で締められています。

すれ違いが切ないとか苦しいではなくて、
まだまだ彼等にはそうだよね!と納得のすれ違いです。
主人公達ももちろんですが、友達達やクラスメイト、失恋しちゃう女子達、みんなみんな
思春期の階段を上ることで心の成長をしていくんだ、と少年達の成長物語のお話だったのです。

8

手をつなぐ。

すごい好きな感じでした。
子どもであることの不自由さみたいなのはあるけど、救いがたいほど痛いとかじゃなく、割とほわほわとした感じで、切なさとかわいさのバランスが良かった。
というか開始4ページで春希のかわいさにやられた。しゅんちゃんがハマるのもわかるわ~
育ちがよくてすれてなくて、そんな子がなついてヘラヘラ笑ってくれたら、一番しんどいときに手をぎゅってしてくれたら、そりゃかわいいさ。
BLは平気で10年すれ違いとかあるので、春希が素直な子でほんとに良かった。二人が早くから大事な人を見つけられる子で良かった。ずっとさびしかったしゅんちゃんがかわいくてしょうがない春希を手に入れられてほんとに良かった。
たぶんこの二人はどちらもイケメンなのに相手しか見えてないカップルになるんだろうなぁ。

8

思春期の繊細な心が滲み出てます

水の中から響いてくるような、最後の時に走馬灯のように甦る出来事、
そんな雰囲気から始まったストーリーは思春期の少年の等身大の悩みや戸惑い
自分でも気がつかない、認めたくない自分の中に育っている友人への気持ち。

揺れ動く少年たちの心の動きが真っ直ぐに伝わってくる内容で、とても惹きこまれます。
二人の初めての出会いから、二人の成長していく過程、それぞれの家族の問題。
必死で自分を守ろうとする弱い心が理不尽に他人を傷つける。
そんな苦く、自己嫌悪したくなるような感情も何故か共感出来たりしますね。
エロ要素は皆無だけれど、初めて他人に対して欲情を覚える感覚が心と身体の
バランスがまだまだ未熟な時代を感じさせる展開でした。
主人公の兄のことも、その友人も気になる所ではありますが、
そのことも、主人公たちの心の成長にかかわっていたりする内容で良かったです。
ほのぼのしているけれど、切実な心の叫びがしみだしているような作品で素敵です。

7

彼らはまだ、中学生で

女の子が恋に目覚めるのは早いですよね。作中でしゅんちゃんと春希が出会う小学生のころ、彼女たちは愛とか恋とかに興味を持ち始める。けれども男の子といえば往々にしてゲームに興じたりドッジボールにはげんだり虫を捕ったり魚を釣ったり、そういうことのほうによっぽど関心が向いています。
彼らは自分たちの心にあるわずかな違和感がなにであるかも分からないし、オトコとオンナの区別をやたらとしたがるし、とにかくまだまだ子供で男は男でしかなく異性のことなんて考えていられない時。好きとか言われたから、付き合うことをするらしい、なんとなく好きなのかもしれない、嫌いじゃないし。それくらいの頃。
そう思うと、やたらと子供じみて見えた小学生時分の春希は、それで正解なのだと思えました。もっといえば、しゅんちゃんの冷めた感じは、彼の生活環境がゆえだったのだと。

しゅんちゃんにとっての 普通。
春希にとっての 普通。
普通って、なにが普通かなんてわからないですよね。ただしゅんちゃんが環境の割にスレていなかったのだなぁと思うのは、春希の家に遊びに行ったとき、自分との生活の差に対し変にスネたりなどしなかったところです。その夏、春希の誘いを断ったあのときにしゅんちゃんが見せた こわさ は、仕方が無いことです。普通はそこで逃げてしまってもおかしくないのに、それを真っ向から受け止めた春希のまっすぐさは健気で、純粋だと思います。

全体的に可愛らしい絵柄、主人公のふたりも(特に春希は言動も含め)可愛らしく、表紙のカラーイラストも綺麗な色遣いでほのぼのとした世界を見せて…くれるようで重い(内容としてはそこまで重くないはずなのに、なぜか重くなりました)内容でした。もし、このお話を絵の濃い作家さんが描かれていたとしたら、暗の部分に果てしなく暗い印象を受けたでしょう。三崎先生の絵柄であるからこそ、まだ童話っぽさが残っているというか、少年たちの話だと認識できます。

個人的に、主人公春希のことが物語後半まで好きになれませんでした。受け入れられるようになったのは、春希自身の欲が出てきた辺りです。
恵まれた環境ながらも、女装癖(ただの趣味としてなのか、秋治が本質的に女性になりたかったのかは…分からないですが)があるがゆえに突き放された兄とは異なる道を生きるように、明言はされずともそれとなく仕向けられること。春希は自分が普通でなければいけないと思い、普通であることを誰よりも求めていました。
彼はわりに早い段階でしゅんちゃんに対する想いを自覚するのに、蓋もしました。それなのに執着することは変わらないのです。
この、良く言えば小悪魔的な春希に対してもやもやしました。
でもこのもやもやは「春希が普通を貫こうとするのは仕方ないんだ」と「でも普通ってじゃあ何、もっと素直になってもいいのに」と「この頃は自分の両親は絶対だし、もう両親が悩んでいるのも見たくないんだろうな」と「じゃあ思わせぶりなことしちゃいけないよ…」などの様々な考えがまざりあった末のものです。
春希の感情や態度を分かりたいと思う反面、報われないしゅんちゃんのことを考えてそれに対し勝手に残念がったりする春希に 仕方ないよ! とも思うのですが、でも彼は普通を重要視していたわけで…と悶々となりました。見た目や言葉遣いに子供っぽさが残る春希なのに、頭のなかでは色々と考えを巡らせていて、特にしゅんちゃんが耐えきれず告白した後、筧に見せた寒々しい笑顔には悲しさともどかしさでぞっとしました。

繊細な心理描写が胸をざくざくと抉る作品でした。
時に甘いのに、暗いところはとことん暗く、しゅんちゃんのモノローグ『俗悪な欲心は日ごと夜ごと育っていった』の一文は特に印象的です。それまで春希視点の話であったのが、6話はまるまるしゅんちゃん視点だというのもありますが、彼が目で追いかけた春希に対して沸く欲求が膨らむ感覚が詰まっていると思うのです。5,6話それぞれの終わりも繋がっているようで好きです。
仲を違え、回り道をしたふたりでしたが、ちゃんと想いが通い合ってほんとうに良かったです。しゅんちゃんの涙が、春希がしゅんちゃんの背にすがったシーンが、それまでの暗く重い世界を吹き飛ばしました。もらい泣きしてしまったんです。

あのとき やっぱり美山は春希になにかしら思いを抱いていたんですね。他人から指摘されてはじめて気が付いた得体のしれない感情が怖ろしかったんでしょうか。自分を認めたくない、理解したくない、現実を避けたい。
それでもなんだかんだ美山は春希を大切にしたいんだと思います。恋とか、愛とかがなくなったとしても。

あれから またいつか「それから」としてでも見たいですこのふたり。そのときは、家族とも揉めるのかな。でも春希はそれまでに心がたくましくなっていると思います。
まだまだ子供だけれど、背格好から少しずつふたりは大人になりますね。

カバー下に広がる、淡く薄い桜色を読後に見るとなんとも言えない気持ちになりました。心のなかが重くなりながらも、それでもまたもう一度読みたいとページをめくってしまいます。暗いだけでなく、救いがあるから。
けれど個人的にこの重さと、コマのひとつひとつ、見せ方もすごく好きです。ど真ん中、ストライク…!!

6

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