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kuraki nagare
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
アドリアン…4巻でジェイクがカミングアウトして離婚することはアドリアンにとって意味があることだって認めたじゃない…。
ヨリを戻してラブラブで始まると思っていたら、元カレ達のアドリアン争奪戦でした。
まぁ、そうですね。あれだけ傷付けられたなら臆病にもなっちゃいますよね。
「パソコンでお楽しみ中なんだ。ママには言わないで」が笑えました。このセリフが出るアドリアンのユーモアセンスがホント好き。
エマ…そんな、バービーで…見られても気にしない鋼の精神に脱帽しちゃいます。14歳にしては子供っぽい気もするけど、そこがエマの魅力なのでしょう。アドリアン孫の勢いで溺愛してるw
ジェイク船の上のあの事件の時、アドリアンが意識ある間はあんなに理性的だったのに、アドリアンの心臓が止まった時に泣き叫んでいたなんて…全てを捧げてもいいほど乞うたと言う言葉通り、ジェイクは全てを諦め、アドリアンと一緒になることでさえ諦めることに納得していたことに胸が締め付けられました。
何度もアドリアンをどん底に突き落としてきたけれど、それでも離れ難い魅力的な男なのがズルい。
メルはやっぱり雑魚キャラ。
アンガスは元々金髪だったのかな?
素晴らしかった。この一言に尽きる。5冊は長かったけど本当に出会えて良かったです。5つの殺人事件とジェイクとアドリアンの出会いから帰結、そこに生身の二人の愛と苦悩が静かに深く描かれて感動しました。二人の物語は読み進めるのが辛くて辛くて、事件は難しくて、だったけど、深く深く自分の中に刻まれました。「BL」とは一線も二線も画した愛の物語でした。インテリ的ウィットに富んだ言い回しは理解できないところもあったけど、そういう言い回しをするアドリアンが全ての飾りを取り払った気持ちを語るところは胸が裂けそうだった。そして彼を「2度とは無理」なまで深く傷つけたジェイクと、この過程を経て二人がたどり着いた答えにも涙。本当に素晴らしかったです。
比較的平和
事件は起こります(死者も出ます)が、シリーズの中ではかなり平和な印象。
改装工事中に発見された白骨死体から、50年前の事件の謎を解く。ミステリ部分のストーリー展開はかなり好きです。
ただ、珍しく事件は主張弱め。話の軸はアドリアンの人生の選択でした。
アドリアンが病気や恋愛のことでひたすらグルグル悩みます。
病気のことで情緒不安定になり、恋愛でもどっち付かずの我儘な言動が目立ちます。
私はウジウジ系のキャラがあまり好きでは無いので、アドリアンの言動にはかなりイライラしました。
が、これまでの出来事を知っているので、ここまで読んだ愛着の方が勝ちました。
振り回されるジェイクが愉快だったのと、まあお前が振り回される分には自業自得だからな、という思いもあった(笑)
今回元彼(メル,ガイ,ジェイク)が総出演するのですが、メルはジェイクの比較対象として用意された感じがしてちょっと悲しかったです(最初から病気のことで別れたことは言及されていたが)。
そしてやっぱり一番の被害者はケイトだった……。
ケイトにも幸あれ~~~~~!!!
最終巻としては無難な内容なのかな……? と思いました。
これまでの間にキャラへの愛着が湧いていたので楽しめましたが、本作だけで見たら中立くらいだったかもしれません。
とにかく二人がどうにか纏まって良かったです。
ちゃんと付き合い始めてからの事件捜査も読みたかった。
遂に最終巻。開腹手術経験者としては、アドリアンの術後の体調に共感しまくりでした。すぐ疲れるし、本当に回復出来るか不安だもんね・・・
ジェイクとアドリアンの、なんとも微妙な駆け引き?に、読んでる方は焦ったさも限界に。やっとこ通じ合った二人に、もう万感の思いでした。
このシリーズの二人のキスやベッドシーン、すんごく萌えました!やっぱりお互いを切実に求め合うラブシーンは最高ですね。
ミステリとしては、少し分かりづらかったです。犯人がゲイであることが、当時ゲイであったことがいかに悲劇だったか、ひいてはジェイクが自分を偽って生きてきたことがどれほど辛かったかを思ってアドリアンに涙させるためには必要だったとは思いますが、動機としてはあまり理解できなかったです。
とはいえ、こんな素晴らしい作品と、素敵なキャラクターに出会えて本当に良かったです。また1巻に戻って読んできます!
シリーズ五冊目。最終巻。
今作も主人公アドリアンは死体と対面し、事件に首を突っ込んでいく。だがどちらかというと一冊ずっと恋に悩むお話だった。アドリアンの心理描写がじっくり丁寧に書かれている。
前作で大きな決断をしたジェイクに迫られるも、アドリアンは過去の経験からくる恐怖で拒否し続ける。
アドリアン視点の一人称で語られるジェイクの描写は、気持ちを読み取れないといった表現が今までにないほど多くなっていた。これにアドリアン自身の迷いが影響しているとすれば、今までの四冊分の印象も変わってくる。アドリアンの感情フィルターを通して見たジェイクだったのかな。
元彼たちとの関係をはっきりさせながら、自分の気持ちを自覚していくアドリアン。振り回されるジェイクが、たまに不憫で可哀想で萌えて良かった。尊大な男はちょっとしょぼくれるだけで可愛い。
一緒に捜査する中で、ジェイクの抑制し続けた四十年がどれほどのものだったかを知ることになる。今までのアドリアンとのやりとりが思い出され、重くのしかかる。同時に、カミングアウト後の変化や、晴れやかな笑顔を見せるジェイクも思い出して泣きそうになった。
過去エピソードから、実は強くアドリアンを想っていたと分かったのも良かった。
告白は、ジェイクの元妻とご対面からの流れで。必要な登場だが、今まで名前のみだから平気だった妻が実体を伴ってしまうと辛い。
元彼たちも、彼らじゃダメだったと否定して、アドリアンはジェイクの隣に納まる。そうした多くの犠牲の上に成り立つカップルを見ると、感慨深く切なくてじわっとくる。長編のこういうところがとても好き。
ラストは二人らしく事件の解決で締め。またすぐに、今度はジェイクの気持ちを推し量りつつ、一巻から読み直したくなった。
ジョシュ・ラニヨンさんの他のシリーズもぜひ読んでみたい。
シリーズ本編最終巻。
終わってしまった。
全ての巻においてページをめくる楽しみはあったけれど、4・5巻は特に手が止まらなかったです。
最終巻にしてやっと聞きたかった声が聞けた。
待ってたよ、ジェイク。
シリーズの翻訳家、冬斗先生もおっしゃっていましたが、この作品にはもう一人の主人公がいてそれがジェイク。
私は彼の「乞い」の声を聞くためにこのやろうめ!とも思いながらここまでページをめくって来たんだなと感じました。
危険なくらい情熱的なジェイク。
アドリアンにとって自分はすべてではないと思っていても、自分の心の全てはアドリアンに捧げていたのね。
彼のベイビーはアイラブユーだった。
ようやくいい夢が見られそう。
残すは番外編のみ。
2巻ぶりの甘々を期待して。
瞑想のメイです。訓読みで"くらい"
タイトルの意図はなんだったんだっけと読み返してて、成る程そこか。しっかりマーカーも引いてました。
さて、最高の完結感でした。これ以上ないってぐらい。
ミステリ要素も巻を重ねるごとに好きになり、こちらの謎解きが一番好きでした。特に最後の展開ね。アドリアンが気付くのはこの後であってはいけなかったという、涙する瞬間がたまらなかった。「スカウト」と名付けた瞬間なんかもザワザワっと気持ちが高まって、5巻分彼らの人生を読んできたんだな、という気がしました。
今回はアドリアンが及び腰になりますが、仕方のない話しです。ジェイクの40年以上の葛藤にしろ、アドリアンの葛藤にしろ、ホイホイと決断する展開の早い作品とは違う(そのノリもまた愛すべきものではある)、"重み"が胸を締め付ける。
ジェイクが自分に対して何故か寛容とか甘いとか言ってるアドリアンにはいい加減にしなさいよと思ったりもしだけれど。愛以外の何者でもなかろうて。サーモンとバーガーの皿をそっと取り替えるジェイクの可愛さたるや。
そこにリサが先に気付いていたのも幸せな気持ちになる。
「人生で何かを乞うた」ときが予想通りだったので、何もいうことはない。この作品を読めたことに感謝。
アドリアンシリーズの一応最終巻に、なるのかな。後日談としてクリスマスと大晦日の番外編が出ていますが。
マッチョなクローゼットゲイの警察官・ジェイク×お坊ちゃん育ちで心臓が悪い、作家兼書店店主アドリアンの物語です。
大体アドリアンがコ●ンくんよろしく事件に巻き込まれ、ジェイクと捜査することになります。その事件の捜査に並行して2人の関係が変化して行くのが物語の骨子。
第1作はジェイクとアドリアンの出会編。
出会ったもののゲイである事を認められないジェイクが最後の最後でアドリアンに気がある事を認めます。ちなみにアドリアンが別の男と交渉を待つシーンはありますが、二人の関係は清いままです。
第二作は2人が身体の関係を持つまで。
付き合うようになったものの、ゲイであるくせにゲイであることに嫌悪感をもち、まともにアドリアンに触れることすら出来ないジェイクが、ようやく己の欲望に素直になって肉体的に結ばれます。
第3作は破局。
ゲイである事を隠しているジェイクはアドリアンと並行して同僚と付き合っていて、その同僚が妊娠した事でふたりの関係は破綻します。
ジェイクはゲイの2人の関係とは違う、「本物」の関係を女と築き、子供を持ちたいというのです。
二人の関係はジェイクの職場にはひた隠しにされているので、アドリアンは怪我して入院したジェイクのお見舞いすら出来ません。陰でこっそりジェイクが女や職場の人間に囲まれている様子を見るだけです。
ずるいジェイクはそんな状況でもアドリアンとの関係の継続を求めますがアドリアンは拒絶します。
傷心のアドリアンですが新たに近づく男が出現します。
第四作は再会。
アドリアンが第3作で現れた大学教授の男と付き合うようになって2年。
男からパートナーシップを結ぶ事を提案され、アドリアンの心臓病を心配するブルジョワの家族も、マッチョな現場職のジェイクよりインテリ教授との付き合いに賛成していますが、アドリアンはなかなか踏み切れません。
そんな中、アドリアンはジェイクのSMプレイの相手役だった俳優絡みで事件に巻き込まれ、その捜査担当のジェイクとまた交流を持つようになります。
ジェイクは復縁したくて未練たらたらですが、アドリアンはジェイクが女との既婚者であることや、表向き誠実なストレートとして振る舞っているくせに、自分より前から、そして自分と付き合っている時も自分との関係が破綻した後も、男とSMプレイを楽しんでいたという事実に苦しみます。
事件の犯人はジェイクがクローゼットゲイである事を知っているのを利用して、自分の罪を隠蔽する共犯に仕立て上げようとし、ジェイクも無意識のうちに、自分の保身のために、相手を信じて言われる通りにしようとしかけます。
が、犯人がアドリアンの命を狙うに至ってようやく目覚め、犯人を捕まえ、自身がゲイである事をカミングアウトし、警察を辞職します。
第五作が本作。復縁までです。
警察を辞職し、カミングアウトして家族とも気まずくなり、妻とは離婚する事になったジェイク。
でも二股(三股?)かけていた上に結婚までしたジェイクと復縁することにアドリアンは不安を覚えて一歩を踏み出せません。
ジェイクはジェイクで離婚&辞職で経済的に厳しい状況でブルジョワなアドリアンの援助を受けるのをよしとしませんし、過去の行状から無理に復縁を迫る事も出来ず、アドリアンの気持ちを待とうとします。
そんな中でアドリアンの過去の彼氏が代わる代わる訪ねてきて粉をかけてきたりします。
が、アドリアンの書店で起きた事件を2人で調べるうちに2人で暮らそうと決意します。
本作単体での推理小説としての評価は中立くらいなのですが、前の流れを受けての本作としての評価は上記の通りです。
アドリアンよかったね〜っていう。
ちなみに番外編のクリスマスネタは、ジェイクがアドリアンの家族に受け入れられるまで(そこまで露骨じゃないけど)、大晦日ネタは、アドリアンとゲイとしてのジェイクが、ジェイクの家族に受け入れられるための第一歩、的な感じでした。
こうやって見ると本シリーズのメインテーマはジェイクがゲイである自分を認められるようになり、それをカミングアウトできるようになるまでのヒューマンドラマって感じですね。
ハッピーでラブラブ甘々な物語も良いですが、山あり谷ありのドラマティックな展開の本シリーズも読み応えあって楽しかったです。
M/Mではマッチョな警察官は割と人気っぽいですね。
他方主人公はひょろっとして身体の弱い可愛い系ハンサムです。
作家のジョシュさんは年上の庇護欲が強いマッチョ×年下で負けん気は強いけど危なっかしいハンサム君の組み合わせがお好みなのかな。
シリーズ完結巻。
時間軸は4巻での被弾及び心臓の手術から5週間〜その後、といったところ。
ジェイクはカミングアウトし、警察官も辞め、離婚することに。そして全て吹っ切ったのか、アドリアンに対して甘い。
アドリアンとの関係に対して遂に何の障害も無くなった…なのに今度はアドリアンが一歩も二歩も引いてしまっている…
死に瀕した経験、ジェイクに感じた絶望、そこからくる気鬱。
だから読者としては「どうしてアドリアン⁉︎」
そんなモダモダした関係性が続いて、とてもヤキモキしてしまう。
そしてもちろん今回も事件が起こります。
アドリアンの書店が拡張する、それは隣接の建物を買い取って改装するわけだけど、そこから白骨死体が出てくるわけです。
その白骨の謎を解いていく、というのが本作のミステリ部分。
そしてそのミステリはナチス絡みの財宝の秘密へとつながり…と、スケールの大きな話になっていくわけですが。
まあ、私の中ではこのシリーズでのミステリ部分はすらっと流し読み的な。
やはり注目はロマンス部分かな、と思って読みました。
ジェイクとギクシャクするアドリアン、なのにガイや何とメルまでが近寄ってくる!正にモテ期ですよ。
でもこういうのはいらなかったかな…
もちろん結局はジェイクとアドリアンが遂に向き合うわけで、しかもまたもや「犯人」との対峙があって、またもや命の危険があって、より2人の結びつきが劇的になりましたね…
ジェイクは腹をくくってからはアドリアンに対してとってもナイト(騎士)。率直で思いやりがあって。アドリアンの方もジェイクには全てさらけ出せる、どんな自分でもいいのだと実感する相手。
思いがけない出会い、反発、恋心、快感、裏切り、別離、怒り、再会、そして再びの…
2人の年月、そこには無駄にしてしまった時間も捨ててしまった時間もあった…でも今、これからの長い時間を約束できる、そういうラストを読めてここまで読んだ甲斐があった。ほんとに。
怒濤の勢いで、1~5巻まで読み終えてしまいました。
4巻までが、ジェイクの頑なな鎧と檻と静かに、時に激しく対峙するアドリアンの物語でしたが、5巻はアドリアンの折れてしまった足と道標をまた築き上げるようなものが足りでした。アドリアンの書店の増築工事の最中に現れた、50年前の白骨死体。過去のミステリーの謎解きはこれまでと違って静かにどこか夢を見るような現実感の淡さで進んでいくのですが、だからこそ主人公二人の微妙な距離感や50年前の人物たちの慟哭が響くような読後感でした
前回のラストで、ジェイクが、彼が40年間築き上げてきた「普通の生活」のために自分を見殺しにするかもしれないと思った一瞬で、ぽっきりと折れてしまったアドリアンの心。今までのアドリアンの飄々とした姿からは一変、彼の足元の覚束なさや不安定さが、どこかとりとめのない文章にも現れているようです。
もしかしたらそれまでのアドリアンだったらすぐに立ち直ってジェイクとの関係に決着をつけられたかもしれませんが、気力体力ともに落ちてしまったアドリアンは、なかなか決断をすることができません。
そんなアドリアンから、拒否されたり、期待を持たせるような言葉を投げかけられたり、振り回されながらもジェイクは穏やかに彼の隣に立っています。時に不機嫌になりながら、それでも少しでもアドリアンの傍にいる時間を引き延ばしたいと、彼の態度からひしひしと伝わってきます。
50年前の事件を追うので、舞台の2000年代のロサンゼルスと状況は違うけど、事件を追う中で、いろんな人の人生の分岐点や末路をアドリアンが自身やジェイクに重ねるのも切ないです。特に事件の真相は、前作のジェイクが「選んだかもしれない選択」だとアドリアンが恐怖する内容と酷似していて、アドリアンと同様に私も心も乱されました。
このシリーズは終始アドリアン視点で進んでいたので、ジェイクサイドは推し量るばかりだけど、今作では鎧と檻から解放されたジェイクはびっくりするほど穏やかで丸裸。彼が見せる新鮮なふるまいや、彼が今まで歩んできた戦いの跡地が静かに描写され、それをアドリアンの視点を通してみることができます。
アドリアンすら踏み入れられなかったジェイクの戦い。40年という長い時間にわたる彼の戦争がひとつ終わったんだな…っていう、決して幸せとは言えない、虚無感にも似た余韻があります。特にジェイクが元妻と暮らしていた、今となってはがらんどうになってしまった部屋でのやりとりは、ふたりのロマンス以上に胸にせまります。
ジェイクは決して饒舌ではないし、この巻を迎えても彼の不誠実がすべてつまびらかにされたわけではないです。そして今まで不誠実だった男が、これからもずっと誠実でいてくれるのか、信じられない気持ち……
人間関係における信頼という意味で、ふたりはギリギリのところにいます。客観的な事実を並べるなら、決して二人は一緒になるべきではない。
でも、誰よりもジェイクの素の姿を見てきたアドリアンが、ジェイクの手を取る選択は、ある意味希望のようにも見えました。
誰にだってあやまちはある。アドリアンはジェイクのこれまでの行いに傷ついて、まだ許せない部分もあって、でもそれを差し引いてもジェイクを受容する。彼の愚かさや不器用さも含めて、まるっと愛してくれるようなそんな希望です。
二人の壮絶なロマンスに、特に4巻からは私も怒ったり泣いたり傷ついたりとても感情を揺さぶられながら最後まで読みました。この作品を日本に送り届けてくださった翻訳者さん、原作者さん、本当にありがとうございます。
何度目かの再読もついに最終巻です。
2018年8月16日に読み終わりましたが、この時点で『So This is Christmas』も出ていますけれどね。でも、あちらはあくまでも『番外編』。アドリアンとジェイクの物語に一定の結末がつくのはこの巻です。
『海賊王の死』の単行本の最後に、この本の出版予告が載っていたのを見た時には「これ以上、何を書くことがある?」と疑問に思ったものです。「所謂『おまけのペーパー的』な甘々を延々と読まされるのは、このお話にはそぐわないんだけどなぁ」と、読み終わった今振り返ると、かなり見当違いのことを思ったりもしていました。
『本来なら一つの建物(ホテル)であった隣を自分の書店として改装している最中に、50年位前に殺された白骨死体が出てきて、その事件の真相を探る』というミステリを面白く読みながらも、あれだけのことがあった後なのに、再び捨てられて傷つくのではないかと恐れてジェイクを近づけ様としないアドリアンに「これ、もう何度も読んだシチュエーションだよぉ」とイライラしながら読み進めていた私は、途中で自分の愚鈍さにハタと気づくわけです。
「あ、この巻の主人公はジェイクだわ」
シリーズ全てアドリアン目線で書かれているので最初は気づかなかったんです。
でも、アドリアンは常に、恋愛対象に対等であることを要求してきた人です。
ならば、彼が前の巻でジェイクに、誰にも言うことのなかった「死にたくない」という本音を漏らしてしまった以上、ジェイクだって約4年もの長きに渡ってずっと隠してきた本音をアドリアンに告げなければなりません。
それは2巻目から、アドリアンがジェイクに望んでいた言葉です。
望んでいたにもかかわらず、決して得ることはできないと思っていた言葉。
それをジェイクはこのシリーズの終わりに、口に出します(その後、もう一度言っているのを今回確認。ジェイク、調子に乗りやがって 笑)。
それは単なる『愛を囁く言葉』ではなく、ジェイクを縛ってきた鎖を断ち切る言葉だったのだと思うのです。
私も大きな歓喜に打ち震えました。
「自由になるって、なんてすばらしいことなんだ!」って。
巻末に訳者である冬斗亜紀さんの解説が掲載されています。
シリーズ全体の背景やラニヨンさんに関する紹介のみならず、冬斗さんが物語に寄せる想いがひしひしと伝わってくるような、愛に溢れた解説です。この方がいなければ『アドリアン・イングリッシュシリーズ』はこれほど面白い物語にはならなかったのではないかと思います。
また、作中何度もアドリアンは「モンゴメリー・クリフトに似ている」(このセリフを言う登場人物が、名前を思い出せなくて色々な言い方をするのが常に可笑しかったんですけれどもね)と言われますが、私の脳内では常に草間さかえさんの描く、モンゴメリーよりも顎の線が細いアドリアンが動き回っていましたし、ジェイクも『若い頃のスティーブ・マックィーン』よりもしっかりした顎を持った『草間さんのジェイク』がしっくりきます。
このお二人の力があってこそ、極東の地でもアドリアンとジェイクの活躍が、葛藤が、魂の触れ合いが見られたのだと、心からの感謝を言いたいです。
ああ、たぶんまた、来年も読むんだろうな……
全巻通しての感想なので長いうえにかなりのネタバレです!
物語は、アドリアンがホームズ、ジェイクがワトソンのように紆余曲折ありながら事件を解決していきます。その中で、ホモファビアと取れる発言をしていたジェイクに倒錯的な趣向がある事が判明します。(倒錯的という表現は適当ではないかもしれませんが…)
それは彼がゲイ(バイ)であり、嗜虐嗜好があるということ。
ですが、ジェイクは刑事です。いくらゲイに寛容である国と言っても、偏見はあります。特に警察という特殊なコミュニティの中ではゲイである事は御法度。更に彼の父親、兄弟も警察関係者であり、絵に描いたようなエリート家系。きっと男らしく(敢えて表現させて頂きます)普通の男 であるように厳しく躾けられてきたんだと思います。エリートでありつつも、彼は誰に対してもフェアであり、自分に対してもとても厳しかったです。
彼は出世意欲も強いです。家庭環境や宗教の関係で、彼は普通の恋愛をし、幸せの家庭を築くことを夢見ていました。ですが、女よりも男が好きな事は抗うことが出来ない。それを抑える為に彼はSMクラブに通いつめ、昼間の自分と夜の自分のギャップに苦しみながら約40年間生きてきました。ですが、彼の40年間を真っ向から否定するように現れたのが アドリアン・イングリッシュ。アドリアンが既にカミングアウトしており、母親(父親は既に死別)に受け入れられています。ジェイクとアドリアンは真逆のような存在でしたが、価値観に大きな違いを感じていても、笑いのツボやお互いの空気感は誰よりもしっくりと馴染んでいて、たまに熟年夫婦(夫ベタ惚れ)か!とツッコミたくなるシーンがたくさんありました(笑)
アドリアンは心臓に大きな爆弾を抱えており、きっと長くは生きられないだろうと、常に死を覚悟して生きていました。父親の死が母にもたらした悲しみを見ていた事もあり(更に自分の病気で母を悲しませた事もあり)、彼は人と深く関わる事を良しとしてきませんでした。過去の恋人から根っからの独身主義と言うような表現をされていましたが、確かに パートナー になるだけは拒んでいましたが、彼は過去の恋人を本当に愛していました。5年付き合っていた恋人に心臓の病が原因で捨てられ、更に殻に閉じこもることに拍車をかけていたアドリアンの扉をこじ開けたのが、ジェイクです。
ですが、ジェイクは 普通であることを望み、同じ刑事である女性と結婚してしまいます。ジェイクの最低さはプレイボーイという意味ではなく、残酷と思うほどアドリアンに対して嘘をつかないという事です。普通の結婚をしたい。他のゲイを痛めつけたい。アドリアンと愛し合いたい。三つの欲求に忠実であり、それをアドリアンにだけには隠しません。アドリアンと愛し合っていた時でさえ、SMクラブ通いを止めなかったくらいですからね!まあ、アドリアンもそのへんは理解を示していたので、これは日本の恋愛と価値観の違いかな?と思う部分もあります。(浮気を快く思わないのは世界共通でしょうけど、それをどれほど許す許さないのラインの違いはあると思っています)
日本のように「今日からお付き合いしましょう」という遣り取りをしないので、お互い恋人同士かどうかなんて互いの認識によって異なり、二人の認識にも大きく食い違っています。アドリアンは二人が深く愛し合い求めあっていると心の底ではわかっていながら、身体の関係だけだと思い込もうとしている節があり、ジェイクは心も体もアドリアンと繋がっていると感じ、結婚してもこの関係が続いていくものだと思っていました。ですが、ジェイクが思っている以上にアドリアンは深く傷つき、そして二人は別れてしまいます。
マイノリティが生きにくいのは事実。彼の育ってきた環境を考えれば、普通の結婚をして出世街道を走りたいと願うことは、決して罪ではないと思います。これが同性愛じゃなくても、自分の出世や家庭環境を考えて、どんなに愛している相手でも、仕事を取って恋人と結婚しないカップルは同性異性国籍関係無くある事だと思います。そしてその愛した相手を手放したくないというズルい気持ちを持ってしまうのも、理解出来なくてもわからないわけではありません。男らしくスパっとアドリアンと切れるなら、彼はここまで最低野郎にはならなかったと思います。
この作品の主人公はアドリアンですが、1~5巻を通して、一番変わったのはジェイクだと思います。いい意味でも悪い意味でも。アドリアンは超絶頑固者なので、彼の性格を変えるのはたぶん無理でしょう(笑)それも、またアドリアンの魅力なんですけどね。頑固者で捻くれ者無自覚女王様気質の愛され者に、ジェイクが太刀打ちできるわけないんですよ。アドリアンも決して変わっていないわけではありませんけど…、ジェイクほどの変化は無かったと思いますが、5巻でアドリアンの心境の変化は、アドリアンを知る人からしたら、きっと劇的な変化だったのかもしれませんが。
私はクズ野郎は最後までクズ野郎で居て欲しい派なので、最後まで弁解することのなかった正直者の最低野郎のジェイクの事を、とても愛してやみません。そしてその最低野郎を嫌いにさせなかったのが、アドリアンの捻くれっぷりにもあると思います。ただ清廉潔癖の主人公ならば、ジェイクはそれはもう極悪人に映ったことでしょうが、アドリアンの毒舌っぷりが良い感じに塩梅に整えていたように思います。(あと、無自覚魔性っぷりにも)3巻でジェイクが「今度は誰だ?!」みたいな、(ジェイクからしたら)息をするごとに現れるライバル(笑)にヤキモキしていたのもとっても可愛かったです(笑)。ヤキモチ妬く数が多いのは今までもこれからもアドリアンより、きっとジェイクでしょうね!アドリアンだけそれに気付いていないんでしょうけど。
ミステリーのネタバレはしないようレビューします。
まあ終わりよければすべて良しなんですが。
今作は、ひたすらアドリアンの乙女なうだうだに終始します。日本BLのテンプレをみるようです。やはりラブで何かストーリーを考えるって大変なんですね。今作で完結ですが、二人の関係として、特に3作目からは何かすっきりしない展開が続きました。
そして、強くて、自分に厳しく、寡黙で、大切な人には死ぬほど優しいこちらもテンプレな攻め、ジェイク。こういうキャラが自分の気持ちを表現したときにラブストーリーは完結、というのもお約束ですね。
ミステリーの方は、アドリアンが買い増しした旧ホテルの床下から出た白骨死体から始まるだけに、50年前の事件を掘り起こすもので、正直迫力に欠けました。
しかし、冒頭からハッピーエンドへの伏線がいくつか張られているので、気持ち的には安心して読み進められます。アドリアンの広くて庭付きの実家の件とか、引き取り手を探している子犬の件とか。
ラブストーリーの方は、4作目のラストであれだけ感動を誘っておきながら、アドリアンは何を迷っているわけ?と不可解な状況から始まります。最も気になるのは、カムアウトして仕事もやめ、離婚し、家族とも疎遠になっている、人生で最もつらい時期を過ごしているだろうジェイクの支えに、アドリアンがなってあげられないこと。
もちろん、4作目のポールといい、これまで非常につらい思いをしてきたアドリアンですから、にわかに許すということも出来ないかもしれませんが、それにしてももうちょっと意味のある苦悩として描いて欲しかったですね。
ただ、もうつらい思いはしたくないという理由だけでなく。
ラストには、ようやく気持ちを正直に語るジェイクが書かれますので、カタルシスはあるるのですが。
とはいっても、二人がかけがえのない人として出会ったことは確かで、ようやくたどりついたハッピーエンドはきっと永らく続くだろうと信じることができます。
とにかく、末永くお幸せに、というしかありません。
思えば、このシリーズと対峙する折々、
評者は結構気分的に重たいものを抱えて
いたりしたので出来るだけ冷静に読む様に
心掛けてきたものです。
では、この最終巻もそうだったのか?
そこだけは嬉しい誤算がありました。
少なくとも息継ぎ程度の休憩しか要さずに
読み通せたと言うのは、一読者として
幸せな事です。
一読者として残念に思う点は、評者自身に
ハードボイルドとジャズへの素養が
ある程度あったなら更に行間を読みこめたで
あろうと言う僅かな後悔。
こればかりは分野との相性があるから
仕方ないと言えば仕方ない事ですが。
好事家ならばここから遡上して原典を
訪ね歩くと言う贅沢を味わうのも良いかも
知れませんね。
アドリアン・イングリッシュシリーズ最終巻。
最終巻ということもあるのか、ものすごい厚みです(苦笑
変わらず受け一人称で、毎回何かしらの事件に巻き込まれる辺りは変わりません。
アドリアンが前巻で撃たれ、その後心臓の手術を三週間前に終えたところからスタート。
**********************
受けは書店を営みながら自分も文章を書くゲイのアドリアン、35歳。
リウマチ熱の後遺症から心臓が悪く、その手術を受けたばかり。
攻めのジェイクはアドリアンの元彼で、ゲイである己を偽り女性と結婚した過去のある元刑事、43歳。
アドリアンをとるためにゲイであることを周囲へカミングアウトしたことで、身辺が一変しています。
**********************
今回はアドリアンが営む書店の隣の物件を彼がやっと購入し、その改装工事中に白骨死体が発見されるというもの。
その白骨死体発見前にアドリアンの書店へ何者かが押し入ろうとしていたこと、その遺体が行方不明とされていた50年前のミュージシャンであり窃盗犯として当時目をつけられていた人間であったことなどが複雑に絡んできます。
そしてそこにジェイク、ガイ、メルのアドリアンの元彼三重奏が(苦笑
まあ三重奏と言ってもガイ(アドリアンがジェイクと別れていた間に付き合った大学教授)はこの巻では八割がた諦めているので、憎まれ口を叩く程度。
個人的には毎度書いている気もしますが、ガイと付き合った方が幸せになれそうではあるんです。
穏やかに暮らすことを求めるならば。
けれどやはり止められないのが恋だし、心臓が悪く、いつ時を刻めなくなるかわからなかったアドリアンには、生きていると実感させられたジェイクとの恋の方が現実なのだろうなあ。
そして第三の男メルはほぼオマケ?でした(苦笑
アドリアンが大学時代から五年間共に過ごした相手でしたが、そのフワフワした過去の中に生きるだけで現実とは向き合えない男性でしたね。
ただリアルといえばリアル。
ジェイクのような強い男なんてそうそう居ないでしょう。開き直ってからのジェイクですが。
前巻ですでに二人のことに関してはかなり盛り上げてありましたので、今巻は後はどう落着させるかというところでした。
シリーズはここで終了なのですが、わたしてっきりゲイフォビアのアロンゾ刑事がもっと二人を追い詰めるようなことをやってくるのかと思ってました。
まあ、そんなことがなくて幸いですが(苦笑
それにジェイクの妻のこともちょっと肩透かしなくらいで、アドリアン・イングリッシュシリーズは確かに毎回事件を絡めてるのが売りなのかもしれませんが、今回はそれなしで人間関係だけをじっくり腰を据えて書いて下さっても良かったのになと思います。
四巻までの厚ーーいページ数、ジェイクの逃げで繰り広げられていたこのシリーズ。
しかし最終巻は、アドリアンの方が怯え逃げていました。
ジェイクの手を取りもしも再びその手が離されることになったらと、今まで心臓の病によっていつ死ぬかわからないことにも諦め淡々としていたアドリアンが!です。
彼は、リハビリを続けていけば普通に暮らすことが出来るという健康を手に入れた代わりに、別のものを失うことの恐ろしさを知ってしまったようで…
アドリアンは役割的には受けなのですが、なんというか、自立(ここが大きい!)した年相応の男性として書かれてました。
それは一巻からですし、これはアドリアンだけでなく他の翻訳M/Mにも大抵言えることです。
この点が日本のBLとの一番大きな違いかと思うので、可愛い受けが好き(わたしも本当はそっちが好き)でリアルはいらないという方には合わないとは思うのですが、そういう設定とは違う物が読んでみたいと思われたり、海外のサスペンスドラマや映画がお好きな方には激しくお勧めしたいです。
ただシリーズに手を出すのは勇気がいるという方は、電子化されているジョシュ・ラニヨンさんの短編を読まれてみて様子を伺っても良いと思います。
個人的には『雪の天使 Icecapade』が、アドリアンとジェイクを彷彿とさせ雰囲気が掴めると感じます。
シリーズ5冊目で最終巻。1巻目では本当にこの2人は恋人という関係になるのか?というくらい相性が悪そうで、恋人になっても言い争いばっかりで、でもたまに見せる小さな気遣いが何とか2人を繋いでいて、けど結局は別れ方としてはこれ以上ないんじゃないかというくらいドロドロの終焉を向かえます。
けど、それでも行き着いたこの結末。
本当に読んでよかったと思っています。出版してくれたことにも、翻訳してくれたことにも感謝しています。
前回が色々な波を乗り越えてやっと幸せを掴んだような終わり方だったので、今回はやっと幸せな二人が読めると思ったのに、またふりだし(もしくはもっと悪い)のような関係になっていてかなり複雑でした。
もう話し合いも充分したと思っていたから、あとは一体何が足りないのかと。
友達にも恋人にも戻れないで、ジェイクはロスを離れるというし、何よりアドリアンの方が二人の関係を終わらせたがっています。終わらせたいというか、疲れた…という感じですね。臆病ですごく及び腰になっています。
2巻のあたりが恋人らしくて好きでしたが、あのころはまだジェイクは女性とも、他の男性とも関係を持っていたと告白され、結婚していたときも他の男性と会っていて、今はそのことをわかった上で他の人との関係はもうないと信じている分2人の関係はかなり変わったと思います。
おそらく、もう秘密は何もないし嘘もないという関係です。
それでもこの関係を続けていけないとアドリアンは考えています。愛しているけど、というアドリアンの思考は年月と本気さがわかるからその分の苦しみも理解できます。
出会ったばかりの激しさとか、不安はあるけど行くところまで行こうとしていた時期はとっくに過ぎています。
この先ジェイクは絶対自分から心変わりしないといえるのか?とか、それでも頑張れる気力や体力が自分にあるのか?とか…
ジェイクが前回出してくれた結論は色んなことを流して余りある真摯さだと私は思えましたが、今までの不誠実さが不誠実なだけに、アドリアンとしてはすんなりはいきませんよね。
今回も事件は容赦なく起こり、恋愛ものとしてでなく、ミステリーとしても全く手を抜かない本格差にはホントに舌を巻きます。2人がドロドロの言い争いをしていたって、甘々な雰囲気に飲まれていたって、事件の真相を追うストーリーは同時進行で、しかもホントに最後の最後までどんでん返しがあったりするスタンスも最初から、この最終回まで健在です。2人がいつも命の危険に晒されるのでこっちはヒヤヒヤなのですが…。
けれど、この事件の参考人に話を聞くことが、アドリアンに一歩を踏み出す決意をさせているところもとてもよく出来ている。ページ数がかなりあるのに、本当に無駄なところがないと思う。
この巻ではアドリアンの今までの恋人が全員登場し、おまけにアドリアンがまだ彼らを憎からず想っているので複雑なんですが、その分アドリアンのこの無鉄砲な性格にきっちり振り回されてくれるのはジェイクしかいないというのも再確認できて面白かったです。
周りから相性が最悪だと言われても、幸せな未来なんて見えない相手だと思っていても、ジェイクがやはり一緒にいて楽しく刺激的だと思えていることが伝わってきます。
今までが、ジェイクの葛藤を描いた構成になっているなら、この巻はアドリアンが自分と向き合うお話だという風に翻訳者様もかかれています。ジェイクは自分勝手でかなり酷いと思うこともたくさんあってアドリアンもかなり傷ついて、でもここまで読んだらどんなにいい男なのかよくわかる。
そのことに、というわけではないんだけど、アドリアンと出会って変わったジェイクの人生を本当に理解したときに、アドリアンが流す涙に釣られました。そしてアドリアンがジェイクを思って流す涙に釣られるジェイクの涙にも。
全然違うゲイスタイルを貫いてきた二人が出会って、恋をして、でもそのスタイルの違いから何年も大きくすれ違って争って憎んで別れて傷ついて、おそらくここまで互いの心の中までさらけだして、そして愛してると伝えあったらもう恐れるものはないと思います。
こんなにも長い葛藤をぶつけ合うカップルは読んだことがなくて、ずっと2人にくぎづけでした。
どう感想を書いてもうまく伝えきれない気がします。手を出すと長丁場になりますが、多くの人に読んでほしいと思う作品です。
人前で挨拶のキスをするジェイクに感動するアドリアンと、犬っころをプレゼントし、愛を告白する?ジェイクが本当によかった。
本当にジェイクがどれほどアドリアンを思っているかが苦しいほどに伝わってくる巻なのだ。個人的にはそれを隠してるクールだったジェイクの方がすきだけど(読んでるぶんには)
アドリアンは彼が何も言葉にしないことがずっと不安だっただろうから、本当に本当によかった。と思う。
ただ、ジェイクの仕事面はどうなっていくんだろう。40を越えてこんな経済的に不安定な状況を作られてしまう攻め(しかもジェイクのような誇り高い性格で)ってなかなかいない…
作者さまからのキツいお仕置きなのでしょうか。今後どうなるんだろう。そこだけ本当に気になったわ。
日本だと探偵って、なんかあやしげだけど、向こうだともっと違うのかな?
あとアロンゾ刑事はなんであんなにムキになっていたのかが、やっぱりよく分からなかった。
あらすじ:
前巻で撃たれた左肩と心臓の手術を終え、古書店に戻ってきたアドリアン。
元恋人のジェイクは前巻で妻と離婚。カミングアウトしLA市警もやめたが、アドリアンはまだ彼と向き合うことを恐れていた。
そんな折、古書店の入っている建物から白骨死体が発見される。
死体は50年前に失踪した男性ジャズミュージシャンのもので…
シリーズ最終巻では、ゲイである自分自身を受け入れ別人のように穏やかになったジェイクと、そんなジェイクを信じ再び彼を受け入れようとするアドリアンの関係の修復が丁寧に描かれます。
アドリアンは、かつてジェイクに捨てられたトラウマと、心臓病の手術により胸に残った傷とで、以前にも増して内に篭もりがちに。
ブラックなユーモアセンスは健在ですが、体力が落ちたこともあり、自身を醜く惨めな存在と捉えています。
そんなアドリアンの手術痕を見ても、お前の身体に醜い部分などないと言い切るジェイクがとても男前でした。
別の元彼(メル)の反応とは対照的で、彼が誰よりアドリアンを愛し理解していることが伝わってきます。
市警を辞め探偵となったジェイクは、以前の激しい気性は鳴りを潜め、別人のように温厚に。
長い葛藤の末、カミングアウトと離婚という道を選んだ彼の覚悟が伝わってきます。
アドリアンに呼ばれれば夜中でも駆けつけ、アドリアンに友達でいようと言われればそれも受け入れ……
離婚やカミングアウトにより失ったものも多いのに、それに対する後悔も見せない。
人性に一つの大きな決断を下した男の成長が感じられ、あのジェイクが…!と大変感慨深い気持ちになりました。
こんな二人が、事件を追う傍ら昔の思い出話をしたり、軽く口論したりして少しずつ距離を縮めていく展開。
もどかしいけど、言動の端々に溢れているお互いへの想いの強さが堪りません。
二人の追う事件にも、ヘテロ社会で同性と愛し合うことの困難さを感じさせる、哀しい物語があります。
一歩間違えば、ジェイクとアドリアンもこんな結末を迎えていたかもしれない。
そのことに気付き涙するアドリアンと、彼を支えるジェイクの姿に余韻が残る、大変感動的なラストシーンでした。
復縁した二人の甘い甘いラブシーンもあり、大満足の最終巻でした。
初版特典ペーパーには、作者ブログ掲載のSSも二篇収録されているので、気になる方はお早めに入手されることをオススメします☆