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女性renachiさん

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心が「犬」になっていく描写が最高

とても小説っぽい文章で読みやすかった。背景を細部まで綺麗に描写して、視点主の視界に流れるように移っていく。特に前半は倖生のセリフがなくなるシーンが多く、読み心地の良さをより強く感じられた。描写が丁寧なとこも好き。

一貫して倖生視点で、心が「犬」になっていく様子が描かれる。基本が淡々とした語り口なので、人として大切なものを失くす出来事が、鮮やかに印象付けられる。急激に堕ちた倖生にはぞくぞくした。
客観的には狂気の沙汰でも、愛を知らずに育った倖生視点のモノローグで納得し、うっすら恐怖を覚えながらも引き込まれていく感じ。

一方轡田は、後半まで謎の男な雰囲気。人の姿をした犬のためにコルク床を用意したときの心境はどんなものだったんだろう。これはぜひ前日譚を読んでみたいと思った。

衝撃を受けたのは、捨てられそうになった倖生の殴り込み。人としての恥も外聞もない、犬としての衝動。
はっきり言ってイタすぎだし惨めで恥ずかしい。でもこのドン引きラインを突き抜けて超えてくれると圧倒されて、ここまで書いてくれるんだ、という感動に変わる。言語化が難しい個人的感覚だけど、この壁を越えられる人の作品は吸引力がすごいと思う。

山場は誘拐される倖生という定番の。ここからの展開はストレートだったかな。セオリー通り轡田が助け、元彼絡みのモヤモヤを解消し、いざハピエンへ。
幸せについて自問自答する倖生の心理描写の盛り上がりが良くて、ちょっと素直すぎるくらいに正直で、読み応えがあった。

後日談は読者サービスに全振りな内容で、本編とは違った空気感。モデルの件、読者受けに走らない本編の展開が好きだったんだけどな……と寂しさを感じつつ。
飼い主に忠実な犬として過ごす倖生の描写が最高な作品だった。

面白くなりそう……と期待したけど

タイトル通り、不遇な王子が聖獣に愛されるファンタジー。
途中、国の成り立ちが明かされたあたりでここから面白くなっていくかも?と期待したが、ただのありがちな溺愛BLで終わってしまった。

主人公のフィンリィは同情を誘う生い立ちだとは思う。第一王子でありながら嫌われ者、それでも性格は歪むことなく成長し、外では強く内では弱音を吐きつつ頑張っている。

聖獣のカイは溺愛の仕方が女性向け感満載で、ドキドキする乙女フィンリィの描写と合わせて小学生向けみたい。夢のような甘々とキラキラ。

ストーリーはフィンリィが主体的に動かしてくれるわけじゃない。世界の創造から今に至るまでの歴史を知っていく過程は面白かった。解決は聖獣たちが動いただけなのがなんとも……。

良い子にしてるだけで愛され幸せになる主人公は追い甲斐がない。ただ耐えていれば誰かが動いてくれて、全て都合よく世界の方が変わっていく。自力でなく他力。
頑張る主人公が報われる話は好きだけど、フィンリィの頑張り方は自己満足の範囲内で結果に見合っていない。邪魔者全員一掃はやりすぎ。

と、ただそこにいるだけの主人公を中心に見ると冷めるが、世界観の構築方法や書き込み度合は好き。内容的には平成の既存作で十分。普遍的な人気を保つパターンかもしれないが、少しは前向きに進化したものが読みたい。

フィジカルは強くメンタルは繊細なテーンが

殺人事件の真犯人を追う監察医と塾講師、テーマのわりに作り込みがふわっとした作品。ミステリとして読む構成ではないし、BLとしては一目惚れ要素が強く萌えにくい。ひたすら不憫なテーンのキャラクターはとても魅力的だった。

視点変更有りな一人称小説。バン視点から始まり、序盤は殺人事件を隠蔽したい犯人との攻防が繰り広げられる。監察医一人を脅すだけでどうにかなる、ド田舎での事件っぽい。絡まり合う人物相関図が複雑で面白かった。

中盤でテーン視点に移ると、いきなり真相が語られてしまう。そこから後は、権力を持つ真犯人とどう戦うかの話になっていく。
だが決着は策も何もない行き当たりばったりともいえる逮捕劇。バンの活躍もなく、何のために何度もバンは頭が切れると書いていたのかと思った。

終盤はその後の二人のお話で、事件の詳細やバンの元彼絡みの話など、細かな謎が一つ一つ片付いていく。事件解決の盛り上がり後にまだページ数が1/3も残っていて、長いおまけを読んでいる感覚。

BL的には、テーンが辛すぎる日々を送っていた間、放置していたバンが引っかかる。村八分状態で針の筵の中、たった一人の家族といえる母を看取るまでテーンを放っておいたのに、一瞬の反省でくっついてしまうとは……。

テーンは生い立ちが同情を誘う酷さで、バンに一目惚れして尽くす健気さもまた涙を誘う。フィジカルは強く、メンタルは繊細。
全てを懸けてバンを守るまでになるには、それに見合うエピソードが欲しいところだが、辛い境遇を思えば、共感に至らずとも全力で応援したくなる。崇めるようにバンを見つめるテーンの心理描写が刺さった。

バンの魅力は正直あまりよく分からない。でもテーンはバンに惚れまくっていて、テーンはバンがいれば幸せで。それなら仕方ない、というかテーンが幸せならそれが一番、という目で見ていたかも。

事件ものとして見ると、二部作の本編と後日談のよう。BLとしては二人の関係性を深めるエピソードがもっと欲しいと思った。
ただただテーンの魅力に引き込まれ、何よりもテーンの幸せを願いたくなる作品だった。

ゲイカップル+料理。映像化向きかな

お料理小説というかレシピ本というか。調理の工程や道具・雑学などが細かく書き込まれており、“物語”を読んでいる感覚にはなれない。できた料理を食べた際の感想も軽くあるだけで、飯テロ効果はない。映像化には向いていそうだと思った。

主な内容はゲイカップルが会話しながら料理を作る形で、間に日常編と出会い編が挟み込まれていた。構成的に、登場人物がどういうキャラなのかが見えないうちから料理の説明に入るため、実際に作ってみたい人への実用書寄り。

1つの食材に対し10個のレシピ紹介があり、20個分が書かれ、なんとなく二人の関係性が分かったところで短編「ある日の二人」。ケンカ未満のモヤモヤが描かれていたが、熟したカップルだからか、曖昧な妥協が見える後味の良くない終わり方。
また、料理説明がなく日常描写のみになると、小説としての文章の上手くなさが際立っていた。

その後さらに20個分のレシピを紹介し、最後の締めに二人の出会い編。特になんてことのない話。
生き生きと美味しそうに食べる和樹と、食事を振る舞い満ち足りた気持ちになる陽平。絵がなく文章だけなのだから、もう少し強調したいシーンを印象付けるような書き方をしてくれても良かったのでは?と思う。人を描くには表現が簡素すぎる。

正直な感想は、創作小説としては味気ない、レシピ本としては充実してて参考になる。ゲイカップル+料理のブームに乗った書籍化+コミカライズなのかな、と思わずにはいられない内容だった。

惚気られる気分を味わえる一冊

漫画少々と短編小説がたっぷり。全て初読み。
表紙の雰囲気どおり、今までに描かれてきたカップルそれぞれのその後が見れた。それにしても、まさかトイレの電気で揉めるディックとユウトを見ることになるとは……平和すぎて泣く。
特定の相手がいないネトは出番少なめ(残念!)、キースはヤキモチ妬かせ要員として大活躍だった。

本編後にすっかり変わったディックはユウトを溺愛していて、ユウトの言動全てを良い方に解釈するポジティブっぷりがすごい。逆にユウト以外には、被害妄想に近い危機感を抱いてみたりと、盲目を超えて病的(キース談)。

ユウトは惚れた欲目なのか、ディックの容姿を褒めちぎるモノローグがめちゃくちゃ多い!ここまで惚気られる気分を味わえる一冊もなかなかない。ディックの重い執着を笑って受け止めたり受け流したりできるのはすごい。

今回とても好きになったのがキース。何組ものカップルの中に一人で引っ張り込まれ、静かにディックに恨まれていくのは理不尽で可哀想。漫画でちょっとやり返してたけど、もっとやっちゃって良いと思う。

一番好きだったのは「ユウティの最高の一日」という、ペット視点のお遊び的なお話。ユウトとは違った視点でディックを理解するユウティが微笑ましく、犬視点で分かりやすいディックが可愛らしい。

シリーズとして重要と思われるのは「You'er just a boy」かな。ディックの過去が少しだけ見えてくる。性犯罪が絡む話を、正義感の塊であるユウトのようなキャラを聞き手に据えて語られるのはしんどいが、希望の示し方や終わり方がとても良かった。

ロブ推しとしては、人生を全力で楽しみ、ときにしょんぼりしたり寂しんぼになったり完璧な恋人であったりしながら、ヨシュアと幸せな日々を過ごす様子を見られて一安心。

どのカップルも別れそうな気配は微塵もなく、絆の深まりを感じられる一冊だった。

子供向けのおとぎ話のような展開

タイトル通りのお話。「推し」に貢ぐガチオタの気持ちは分からないけど、コミカルな雰囲気と子供向けおとぎ話のような展開が楽しく、一気に読めた。

ファンタジー世界に推し活を持ち込み、明るいBL進行と暗いキャラの過去がバランス良く描かれており、分かりやすく大きな伏線もありながら、全体がサクサク進む。

メイン二人の仲に亀裂が入りそうになっても、即回避しているので恋愛面はストレスフリー。
フィリックスの理不尽な境遇や明確な悪役も出てくるが、そこも読んでいて特にもどかしさやモヤモヤは感じなかった。

クライマックスシーンは、これでもかというほどの思い切り。本当に絵本のよう。ストーリーとしてここまでする必要もないけど、とても盛り上がるし、なんというか爽快感がある。こういうやりすぎは大歓迎。

エロシーンは蛇足に感じて飛ばした。感動の余韻に浸りたいタイミングでのエロ突入は残念。体格差というより縮尺が違って見える二人の挿絵はない方が良い。

気になったのは文章の中二病感が濃すぎる点。単語選択のセンスが、思春期+深夜に書かれた小説のようだと思った。
魔法使いオズと少女ドロシー、キャラ名もすごい。元ネタ(?)を活かしてもいないのに、なぜ軽率に有名すぎるこの名前にしたんだろう。

心理描写の畳み掛けと疾走感が神!

久々に泣いた小説。長くこの物語の空気に浸っていたかった。めちゃくちゃ良かった!

日常の中に発砲音が溶け込んでいるような、遠い異国が舞台のお話。古道具屋の店主と捨てられた元殺し屋の少年、かと思いきや店主も実はワケありで――?という、メイン二人はどこかが欠けた者同士だった。

ジャレスが心に負った傷はとても分かりやすいものだったが、そこにしっかりフタをして生きているために、ルカ視点で見ると内面がとても分かりにくい。元々そんなものを探りながら生きてこなかったルカに読み取れるはずもなく、とてももどかしい。

ルカの素直さ・無垢さは背景を考えて切なくなりながらも、とても可愛かった。必死にジャレスに応えようと頑張る姿が良い。危なっかしさにハラハラするのはジャレスも同じだったんじゃないかな。ジャレスの元を去る際に、最後に選んだのがナイフじゃないところも良かった。

ジャレスはルカとは対照的な成熟加減が厄介だと思った。心を動かすことへの抵抗力がすごそう。ギリギリまで抵抗して、危険からルカを遠ざけて、やっと受け入れるシーンは感動。ルカの拙いからこそ深く伝わるストレートな告白も泣けた。

クライマックスへの心理描写の畳み掛けと疾走感が素晴らしかった。砂原さんのこの書き方がめちゃくちゃ好き!心も体も全力で走って相手に向かっていく感じ。このシーンだけでも神。

後半はルカ視点で二人が心から恋人になっていくお話。流れとしてはよくあるBLかも。旅立つ二人を見送った感動の余韻の中で読む続きの物語は、どこかふわふわしていて、気持ちの良い読み心地だった。

乾いた空気を感じさせる情景描写も楽しく、トリップした気分で読めた。ファンタジーでなくても自分にとっては十分に非日常で、だがこの世界とは地続きで、もしかしたらこんな二人がどこかにいるかもしれないと想像できるのが良い。

特に前半のお話は何度でも読み返したいと思うくらい好き。面白かった!

ステータスありきの萌えかな

証人保護プログラムにより別人として生きる御曹司と地味カウンセラーのお話。
攻めの肩書きや社会的ステータスといった外側の華やかさに魅力を感じないと厳しい。古き良き女性向け作品のヒーロー。普遍的地位を確立してるのかな。

始まりからとにかくイライアスのすごさアピールが長い。かと思えばサクサク別人になり、急激に色ボケしてる。後から語られる翠に惚れたエピソードは描写が雑で萌えない。

一方、翠も即視点が切り替わってドキドキきゅんきゅんしており、わずか30ページで両想い確定。恋愛小説としての盛り上がりは、証人保護プログラムで本名を告げられないとかなんとかあったが全体的にあっさりめ。
冴えない庶民が御曹司に見初められるシンデレラストーリーを求めて読めばたらまない展開なのか。

恋愛以外で進んでいたのは、カルトに嵌る生徒の救済。この過程が突っ込みどころ満載で、これでお金取っていいんだ、と衝撃を受ける。

イライアスが翠の言動に一喜一憂する様子は、あの御曹司が!とか素晴らしいお金持ちが!とか、何か一つ乗せたうえで見れば可愛いのかもしれない。
全てにおいて御曹司のステータスありきの萌えだと思った。

タイトルや挿絵の雰囲気から想像できる範囲ではあったが、もう少し恋愛的ベタや様式美を見せてくれると期待していた。キャラの魅力が分からずストーリーがチープで合わない作品だった。

可愛い<心配、になってしまったので

好きな人に犬耳しっぽがくっつき、気持ちが読めるようになっちゃった!?ってとこまでは楽しく読めたが、ヒトがイヌ化していく展開はシュールというか何というか……。キャラが心配になるばかりで萌えるどころじゃなかった。

真柴は天然なのかあほのこなのか、思考がよく分からない。そこでポジティブになる?そこで卑屈になる?と自分の感覚とは真逆をいくキャラで、最後まで遠いとこから見ていた感じ。

重倉は犬耳での感情表現と表情とのギャップは可愛かった。が、視点主の真柴は笑顔に一目惚れから始まり、外見のことばかり言い、犬耳しっぽにきゅんきゅんしてるので、重倉本人の魅力は分からず。顔ファンから入って、もうなんでもよく見えてしまう状態なのかな、と思いながら読んだ。

最初に違和感を覚えたのは、重倉が犬のように匂いを嗅ぎまくるシーン。真柴は重倉が行動まで犬化してきたことに気付きながらも、ドキドキするばかり。自分が願ったことで、相手が人間としてはおかしなことをし始めたのに、不安にならないものなのか。

その後、獣化していくシーンはなんともシュール。重倉はまだしも、真柴は自分の意思で腹部を見せる服従のポーズを取る。人の姿で真剣に。これどんな気持ちで読んだらいいんだろう。まあとにかく重倉への心配が増すばかりだった。

なんだかんだあったが、結局二人とも最初から好きだったというオチで、作中に惹かれていくエピソードがなくても両想いだったわけで、納得できても萌えはない、という読後感。
ちまきはわりと好きだったが、振り回される真柴は常に財布の中身を気にしていて気の毒だった。

強面で表情が変わらない片思い相手の感情が犬耳しっぽで見えるようになる、なんて設定だけで萌える。だがキャラの起こす行動・セリフに萌えられる点がなく、獣化していく重倉へのヒヤヒヤが勝ち、残念ながらあまり楽しめなかった。

泣けるところもある良いお話だけど

食べ方の汚い主人公と、それが許せない男の口喧嘩から始まるお話。どちらのキャラも好きになれるか不安になる導入部から、さっと5年が過ぎて、偶然の再会から本編開始といった感じ。

最後まで読むと、泣けるところもある良い話で満足感もあるけれど、伊勢の魅力が伝わってくるまでが長い。もう少し節々でチラ見せしてくれていたら、もっと引き込まれていたんじゃないかと思う。

強引な伊勢と流される志真で、よく分からないまま始まる同居生活。志真視点のみで語られるのに、志真があまり深く考えないキャラのようで、とにかく伊勢が分かりにくい。

人格の歪みを匂わせるセリフで、伊勢には何か事情があるんだろうと思わせるが、その背景を知ってもいまいちすっきりしない。何より山場がまた偶然の再会で、どちらかが動いた結果でないのが微妙。

二度目の再会で素直になろうとする伊勢や縋ろうとする様子は切なくてとても好き。生い立ちを考えれば、幸せになって欲しいと温かい気持ちにもなれる。志真は最後まで流されていた印象が強いかも。

面白いんだけど……とモヤるのは、スパっと切れて偶然の再会という展開を繰り返し、キャラの自主性が低く見えてしまう構成になっているせいかな。
たまに古風な言い回しが出てくる文章は、特殊設定のない現代ものよりファンタジーの方が合いそうだと思った。

妙にツボったのが、エロを顎関節症気味だから無理だと断るところ。斬新な断り方で笑えて好き。