アドリアン・イングリッシュ(5) 瞑き流れ

kuraki nagare

アドリアン・イングリッシュ(5) 瞑き流れ
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神88
  • 萌×29
  • 萌2
  • 中立2
  • しゅみじゃない1

--

レビュー数
18
得点
484
評価数
102
平均
4.8 / 5
神率
86.3%
著者
ジョシュ・ラニヨン 

作家さんの新作発表
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イラスト
草間さかえ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
モノクローム・ロマンス文庫
シリーズ
アドリアン・イングリッシュ
発売日
価格
¥1,000(税抜)  
ISBN
9784403560231

あらすじ

撃たれた左肩と心臓の手術を終えて「クローク&ダガー」に戻ってきたアドリアンはジェイクとの関係をどうしたらいいか迷っていた。
次第に体調も回復してきたある日、改築していた店の同じ建物から古い死体が発見される。
それは50年前に失踪したジャズミュージシャンの変わり果てた姿だった。
アドリアンはジェイクと調査を開始。カミングアウトし、市警を辞職したジェイクは、探偵の仕事を始めていたのだ。
電話一本でジェイクが駆けつけてくれる事に、予期せぬ感情が揺さぶられるアドリアン。
かけがえのないお互いの存在を確信しながら、ふたりは半世紀前の謎に挑む——。

M/Mミステリの金字塔、ついに完結。

表題作アドリアン・イングリッシュ(5) 瞑き流れ

ジェイク・リオーダン,元LA市警の主任警部補,43歳
アドリアン・イングリッシュ,作家で書店経営者,35歳

その他の収録作品

  • 解説 冬斗亜紀

レビュー投稿数18

バービー…

アドリアン…4巻でジェイクがカミングアウトして離婚することはアドリアンにとって意味があることだって認めたじゃない…。
ヨリを戻してラブラブで始まると思っていたら、元カレ達のアドリアン争奪戦でした。
まぁ、そうですね。あれだけ傷付けられたなら臆病にもなっちゃいますよね。

「パソコンでお楽しみ中なんだ。ママには言わないで」が笑えました。このセリフが出るアドリアンのユーモアセンスがホント好き。

エマ…そんな、バービーで…見られても気にしない鋼の精神に脱帽しちゃいます。14歳にしては子供っぽい気もするけど、そこがエマの魅力なのでしょう。アドリアン孫の勢いで溺愛してるw

ジェイク船の上のあの事件の時、アドリアンが意識ある間はあんなに理性的だったのに、アドリアンの心臓が止まった時に泣き叫んでいたなんて…全てを捧げてもいいほど乞うたと言う言葉通り、ジェイクは全てを諦め、アドリアンと一緒になることでさえ諦めることに納得していたことに胸が締め付けられました。
何度もアドリアンをどん底に突き落としてきたけれど、それでも離れ難い魅力的な男なのがズルい。

メルはやっぱり雑魚キャラ。

アンガスは元々金髪だったのかな?

0

本当に読んで良かった

素晴らしかった。この一言に尽きる。5冊は長かったけど本当に出会えて良かったです。5つの殺人事件とジェイクとアドリアンの出会いから帰結、そこに生身の二人の愛と苦悩が静かに深く描かれて感動しました。二人の物語は読み進めるのが辛くて辛くて、事件は難しくて、だったけど、深く深く自分の中に刻まれました。「BL」とは一線も二線も画した愛の物語でした。インテリ的ウィットに富んだ言い回しは理解できないところもあったけど、そういう言い回しをするアドリアンが全ての飾りを取り払った気持ちを語るところは胸が裂けそうだった。そして彼を「2度とは無理」なまで深く傷つけたジェイクと、この過程を経て二人がたどり着いた答えにも涙。本当に素晴らしかったです。

3

ウジウジのモダモダ

比較的平和

事件は起こります(死者も出ます)が、シリーズの中ではかなり平和な印象。
改装工事中に発見された白骨死体から、50年前の事件の謎を解く。ミステリ部分のストーリー展開はかなり好きです。
ただ、珍しく事件は主張弱め。話の軸はアドリアンの人生の選択でした。

アドリアンが病気や恋愛のことでひたすらグルグル悩みます。
病気のことで情緒不安定になり、恋愛でもどっち付かずの我儘な言動が目立ちます。
私はウジウジ系のキャラがあまり好きでは無いので、アドリアンの言動にはかなりイライラしました。
が、これまでの出来事を知っているので、ここまで読んだ愛着の方が勝ちました。
振り回されるジェイクが愉快だったのと、まあお前が振り回される分には自業自得だからな、という思いもあった(笑)

今回元彼(メル,ガイ,ジェイク)が総出演するのですが、メルはジェイクの比較対象として用意された感じがしてちょっと悲しかったです(最初から病気のことで別れたことは言及されていたが)。

そしてやっぱり一番の被害者はケイトだった……。
ケイトにも幸あれ~~~~~!!!

最終巻としては無難な内容なのかな……? と思いました。
これまでの間にキャラへの愛着が湧いていたので楽しめましたが、本作だけで見たら中立くらいだったかもしれません。
とにかく二人がどうにか纏まって良かったです。
ちゃんと付き合い始めてからの事件捜査も読みたかった。

2

終わって欲しくない

遂に最終巻。開腹手術経験者としては、アドリアンの術後の体調に共感しまくりでした。すぐ疲れるし、本当に回復出来るか不安だもんね・・・
ジェイクとアドリアンの、なんとも微妙な駆け引き?に、読んでる方は焦ったさも限界に。やっとこ通じ合った二人に、もう万感の思いでした。
このシリーズの二人のキスやベッドシーン、すんごく萌えました!やっぱりお互いを切実に求め合うラブシーンは最高ですね。
ミステリとしては、少し分かりづらかったです。犯人がゲイであることが、当時ゲイであったことがいかに悲劇だったか、ひいてはジェイクが自分を偽って生きてきたことがどれほど辛かったかを思ってアドリアンに涙させるためには必要だったとは思いますが、動機としてはあまり理解できなかったです。

とはいえ、こんな素晴らしい作品と、素敵なキャラクターに出会えて本当に良かったです。また1巻に戻って読んできます!

1

すぐに一冊目から読み返したい

シリーズ五冊目。最終巻。
今作も主人公アドリアンは死体と対面し、事件に首を突っ込んでいく。だがどちらかというと一冊ずっと恋に悩むお話だった。アドリアンの心理描写がじっくり丁寧に書かれている。

前作で大きな決断をしたジェイクに迫られるも、アドリアンは過去の経験からくる恐怖で拒否し続ける。
アドリアン視点の一人称で語られるジェイクの描写は、気持ちを読み取れないといった表現が今までにないほど多くなっていた。これにアドリアン自身の迷いが影響しているとすれば、今までの四冊分の印象も変わってくる。アドリアンの感情フィルターを通して見たジェイクだったのかな。
元彼たちとの関係をはっきりさせながら、自分の気持ちを自覚していくアドリアン。振り回されるジェイクが、たまに不憫で可哀想で萌えて良かった。尊大な男はちょっとしょぼくれるだけで可愛い。

一緒に捜査する中で、ジェイクの抑制し続けた四十年がどれほどのものだったかを知ることになる。今までのアドリアンとのやりとりが思い出され、重くのしかかる。同時に、カミングアウト後の変化や、晴れやかな笑顔を見せるジェイクも思い出して泣きそうになった。
過去エピソードから、実は強くアドリアンを想っていたと分かったのも良かった。

告白は、ジェイクの元妻とご対面からの流れで。必要な登場だが、今まで名前のみだから平気だった妻が実体を伴ってしまうと辛い。
元彼たちも、彼らじゃダメだったと否定して、アドリアンはジェイクの隣に納まる。そうした多くの犠牲の上に成り立つカップルを見ると、感慨深く切なくてじわっとくる。長編のこういうところがとても好き。

ラストは二人らしく事件の解決で締め。またすぐに、今度はジェイクの気持ちを推し量りつつ、一巻から読み直したくなった。
ジョシュ・ラニヨンさんの他のシリーズもぜひ読んでみたい。

1

ベイビー

シリーズ本編最終巻。
終わってしまった。
全ての巻においてページをめくる楽しみはあったけれど、4・5巻は特に手が止まらなかったです。

最終巻にしてやっと聞きたかった声が聞けた。
待ってたよ、ジェイク。

シリーズの翻訳家、冬斗先生もおっしゃっていましたが、この作品にはもう一人の主人公がいてそれがジェイク。
私は彼の「乞い」の声を聞くためにこのやろうめ!とも思いながらここまでページをめくって来たんだなと感じました。

危険なくらい情熱的なジェイク。
アドリアンにとって自分はすべてではないと思っていても、自分の心の全てはアドリアンに捧げていたのね。
彼のベイビーはアイラブユーだった。

ようやくいい夢が見られそう。
残すは番外編のみ。
2巻ぶりの甘々を期待して。







1

くらきながれ

瞑想のメイです。訓読みで"くらい"
タイトルの意図はなんだったんだっけと読み返してて、成る程そこか。しっかりマーカーも引いてました。

さて、最高の完結感でした。これ以上ないってぐらい。
ミステリ要素も巻を重ねるごとに好きになり、こちらの謎解きが一番好きでした。特に最後の展開ね。アドリアンが気付くのはこの後であってはいけなかったという、涙する瞬間がたまらなかった。「スカウト」と名付けた瞬間なんかもザワザワっと気持ちが高まって、5巻分彼らの人生を読んできたんだな、という気がしました。

今回はアドリアンが及び腰になりますが、仕方のない話しです。ジェイクの40年以上の葛藤にしろ、アドリアンの葛藤にしろ、ホイホイと決断する展開の早い作品とは違う(そのノリもまた愛すべきものではある)、"重み"が胸を締め付ける。
ジェイクが自分に対して何故か寛容とか甘いとか言ってるアドリアンにはいい加減にしなさいよと思ったりもしだけれど。愛以外の何者でもなかろうて。サーモンとバーガーの皿をそっと取り替えるジェイクの可愛さたるや。
そこにリサが先に気付いていたのも幸せな気持ちになる。

「人生で何かを乞うた」ときが予想通りだったので、何もいうことはない。この作品を読めたことに感謝。

4

大団円

アドリアンシリーズの一応最終巻に、なるのかな。後日談としてクリスマスと大晦日の番外編が出ていますが。

マッチョなクローゼットゲイの警察官・ジェイク×お坊ちゃん育ちで心臓が悪い、作家兼書店店主アドリアンの物語です。
大体アドリアンがコ●ンくんよろしく事件に巻き込まれ、ジェイクと捜査することになります。その事件の捜査に並行して2人の関係が変化して行くのが物語の骨子。

第1作はジェイクとアドリアンの出会編。
出会ったもののゲイである事を認められないジェイクが最後の最後でアドリアンに気がある事を認めます。ちなみにアドリアンが別の男と交渉を待つシーンはありますが、二人の関係は清いままです。
第二作は2人が身体の関係を持つまで。
付き合うようになったものの、ゲイであるくせにゲイであることに嫌悪感をもち、まともにアドリアンに触れることすら出来ないジェイクが、ようやく己の欲望に素直になって肉体的に結ばれます。
第3作は破局。
ゲイである事を隠しているジェイクはアドリアンと並行して同僚と付き合っていて、その同僚が妊娠した事でふたりの関係は破綻します。
ジェイクはゲイの2人の関係とは違う、「本物」の関係を女と築き、子供を持ちたいというのです。
二人の関係はジェイクの職場にはひた隠しにされているので、アドリアンは怪我して入院したジェイクのお見舞いすら出来ません。陰でこっそりジェイクが女や職場の人間に囲まれている様子を見るだけです。
ずるいジェイクはそんな状況でもアドリアンとの関係の継続を求めますがアドリアンは拒絶します。
傷心のアドリアンですが新たに近づく男が出現します。
第四作は再会。
アドリアンが第3作で現れた大学教授の男と付き合うようになって2年。
男からパートナーシップを結ぶ事を提案され、アドリアンの心臓病を心配するブルジョワの家族も、マッチョな現場職のジェイクよりインテリ教授との付き合いに賛成していますが、アドリアンはなかなか踏み切れません。
そんな中、アドリアンはジェイクのSMプレイの相手役だった俳優絡みで事件に巻き込まれ、その捜査担当のジェイクとまた交流を持つようになります。
ジェイクは復縁したくて未練たらたらですが、アドリアンはジェイクが女との既婚者であることや、表向き誠実なストレートとして振る舞っているくせに、自分より前から、そして自分と付き合っている時も自分との関係が破綻した後も、男とSMプレイを楽しんでいたという事実に苦しみます。
事件の犯人はジェイクがクローゼットゲイである事を知っているのを利用して、自分の罪を隠蔽する共犯に仕立て上げようとし、ジェイクも無意識のうちに、自分の保身のために、相手を信じて言われる通りにしようとしかけます。
が、犯人がアドリアンの命を狙うに至ってようやく目覚め、犯人を捕まえ、自身がゲイである事をカミングアウトし、警察を辞職します。

第五作が本作。復縁までです。
警察を辞職し、カミングアウトして家族とも気まずくなり、妻とは離婚する事になったジェイク。
でも二股(三股?)かけていた上に結婚までしたジェイクと復縁することにアドリアンは不安を覚えて一歩を踏み出せません。
ジェイクはジェイクで離婚&辞職で経済的に厳しい状況でブルジョワなアドリアンの援助を受けるのをよしとしませんし、過去の行状から無理に復縁を迫る事も出来ず、アドリアンの気持ちを待とうとします。
そんな中でアドリアンの過去の彼氏が代わる代わる訪ねてきて粉をかけてきたりします。
が、アドリアンの書店で起きた事件を2人で調べるうちに2人で暮らそうと決意します。
本作単体での推理小説としての評価は中立くらいなのですが、前の流れを受けての本作としての評価は上記の通りです。
アドリアンよかったね〜っていう。


ちなみに番外編のクリスマスネタは、ジェイクがアドリアンの家族に受け入れられるまで(そこまで露骨じゃないけど)、大晦日ネタは、アドリアンとゲイとしてのジェイクが、ジェイクの家族に受け入れられるための第一歩、的な感じでした。

こうやって見ると本シリーズのメインテーマはジェイクがゲイである自分を認められるようになり、それをカミングアウトできるようになるまでのヒューマンドラマって感じですね。
ハッピーでラブラブ甘々な物語も良いですが、山あり谷ありのドラマティックな展開の本シリーズも読み応えあって楽しかったです。

M/Mではマッチョな警察官は割と人気っぽいですね。
他方主人公はひょろっとして身体の弱い可愛い系ハンサムです。
作家のジョシュさんは年上の庇護欲が強いマッチョ×年下で負けん気は強いけど危なっかしいハンサム君の組み合わせがお好みなのかな。

3

響き合う愛の心

シリーズ完結巻。
時間軸は4巻での被弾及び心臓の手術から5週間〜その後、といったところ。
ジェイクはカミングアウトし、警察官も辞め、離婚することに。そして全て吹っ切ったのか、アドリアンに対して甘い。
アドリアンとの関係に対して遂に何の障害も無くなった…なのに今度はアドリアンが一歩も二歩も引いてしまっている…
死に瀕した経験、ジェイクに感じた絶望、そこからくる気鬱。
だから読者としては「どうしてアドリアン⁉︎」
そんなモダモダした関係性が続いて、とてもヤキモキしてしまう。
そしてもちろん今回も事件が起こります。
アドリアンの書店が拡張する、それは隣接の建物を買い取って改装するわけだけど、そこから白骨死体が出てくるわけです。
その白骨の謎を解いていく、というのが本作のミステリ部分。
そしてそのミステリはナチス絡みの財宝の秘密へとつながり…と、スケールの大きな話になっていくわけですが。
まあ、私の中ではこのシリーズでのミステリ部分はすらっと流し読み的な。
やはり注目はロマンス部分かな、と思って読みました。
ジェイクとギクシャクするアドリアン、なのにガイや何とメルまでが近寄ってくる!正にモテ期ですよ。
でもこういうのはいらなかったかな…
もちろん結局はジェイクとアドリアンが遂に向き合うわけで、しかもまたもや「犯人」との対峙があって、またもや命の危険があって、より2人の結びつきが劇的になりましたね…
ジェイクは腹をくくってからはアドリアンに対してとってもナイト(騎士)。率直で思いやりがあって。アドリアンの方もジェイクには全てさらけ出せる、どんな自分でもいいのだと実感する相手。
思いがけない出会い、反発、恋心、快感、裏切り、別離、怒り、再会、そして再びの…
2人の年月、そこには無駄にしてしまった時間も捨ててしまった時間もあった…でも今、これからの長い時間を約束できる、そういうラストを読めてここまで読んだ甲斐があった。ほんとに。

2

二人の戦争の跡地

怒濤の勢いで、1~5巻まで読み終えてしまいました。
4巻までが、ジェイクの頑なな鎧と檻と静かに、時に激しく対峙するアドリアンの物語でしたが、5巻はアドリアンの折れてしまった足と道標をまた築き上げるようなものが足りでした。アドリアンの書店の増築工事の最中に現れた、50年前の白骨死体。過去のミステリーの謎解きはこれまでと違って静かにどこか夢を見るような現実感の淡さで進んでいくのですが、だからこそ主人公二人の微妙な距離感や50年前の人物たちの慟哭が響くような読後感でした

前回のラストで、ジェイクが、彼が40年間築き上げてきた「普通の生活」のために自分を見殺しにするかもしれないと思った一瞬で、ぽっきりと折れてしまったアドリアンの心。今までのアドリアンの飄々とした姿からは一変、彼の足元の覚束なさや不安定さが、どこかとりとめのない文章にも現れているようです。
もしかしたらそれまでのアドリアンだったらすぐに立ち直ってジェイクとの関係に決着をつけられたかもしれませんが、気力体力ともに落ちてしまったアドリアンは、なかなか決断をすることができません。
そんなアドリアンから、拒否されたり、期待を持たせるような言葉を投げかけられたり、振り回されながらもジェイクは穏やかに彼の隣に立っています。時に不機嫌になりながら、それでも少しでもアドリアンの傍にいる時間を引き延ばしたいと、彼の態度からひしひしと伝わってきます。

50年前の事件を追うので、舞台の2000年代のロサンゼルスと状況は違うけど、事件を追う中で、いろんな人の人生の分岐点や末路をアドリアンが自身やジェイクに重ねるのも切ないです。特に事件の真相は、前作のジェイクが「選んだかもしれない選択」だとアドリアンが恐怖する内容と酷似していて、アドリアンと同様に私も心も乱されました。

このシリーズは終始アドリアン視点で進んでいたので、ジェイクサイドは推し量るばかりだけど、今作では鎧と檻から解放されたジェイクはびっくりするほど穏やかで丸裸。彼が見せる新鮮なふるまいや、彼が今まで歩んできた戦いの跡地が静かに描写され、それをアドリアンの視点を通してみることができます。
アドリアンすら踏み入れられなかったジェイクの戦い。40年という長い時間にわたる彼の戦争がひとつ終わったんだな…っていう、決して幸せとは言えない、虚無感にも似た余韻があります。特にジェイクが元妻と暮らしていた、今となってはがらんどうになってしまった部屋でのやりとりは、ふたりのロマンス以上に胸にせまります。
ジェイクは決して饒舌ではないし、この巻を迎えても彼の不誠実がすべてつまびらかにされたわけではないです。そして今まで不誠実だった男が、これからもずっと誠実でいてくれるのか、信じられない気持ち……
人間関係における信頼という意味で、ふたりはギリギリのところにいます。客観的な事実を並べるなら、決して二人は一緒になるべきではない。
でも、誰よりもジェイクの素の姿を見てきたアドリアンが、ジェイクの手を取る選択は、ある意味希望のようにも見えました。

誰にだってあやまちはある。アドリアンはジェイクのこれまでの行いに傷ついて、まだ許せない部分もあって、でもそれを差し引いてもジェイクを受容する。彼の愚かさや不器用さも含めて、まるっと愛してくれるようなそんな希望です。

二人の壮絶なロマンスに、特に4巻からは私も怒ったり泣いたり傷ついたりとても感情を揺さぶられながら最後まで読みました。この作品を日本に送り届けてくださった翻訳者さん、原作者さん、本当にありがとうございます。

2

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