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kasaneru
ホラーテイストもので、気になって気になって、ページを捲る手が止まりませんでした。
こんなに辛くて苦しかったのに、ラストまで行く頃にはホッとする読後感。
あぁ、よかったねぇ。
凪良先生のお話をもっと読んでいきたいものですよ。
受け様は大学生の七緒。
攻め様は異母兄弟の弟、奏人。
奏人の母が亡くなり、七緒の家に引き取られるも、七緒の母からは露骨に嫌がられ。
どんな時でも、七緒は優しくて守ってくれて、奏人にとって七緒は唯一の救いであり癒しであり全てになった。
奏人と恋人となった頃から、七緒は夢とは思えない程生々しい夢を見るように。
「オワタリさま」と呼ばれ、凌辱され続けた挙げ句、最後には殺される。
どうやら奏人も同じような夢を見ているようで。
どんどん自分と累ねる、悲惨で悲愴な、追体験をさせられる夢。
こんな夢見続けてたら、自我がどうにかなりそう。
幽霊とかは出てこないけど、凄く怖い。
夢で見る過去の「オワタリさま」と四郎。
2人の魂が再び見えて、飛んで行けて本当によかった。
涙腺にきました。
そして、今を生きる七緒と奏人。
2人の何気ない穏やかな日常を見れて、それがとても嬉しいです。
皆さんのレビューを読んで、ホラー色強めだったらどうしようと思って悩んだのですが、いざ読んでみると平気でした。確かにゾクっとする描写はありましたが、それよりも謎が気になり、早く先を見たい一心で読み耽りました。
不憫受けが好きでこの小説を手に取ったのですが、想像以上に2人の前世が壮絶でした。
オワタリ様よりも四郎に感情移入してしまい涙が止まらなかったです。
四郎のオワタリ様を想う気持ちがただただ辛かった。どうにもならない境遇の2人、不幸を不幸と知らずに生きていけたら良かったのだろうか。例え、四郎が告げ口しなくとも、川藤が現れなくとも、どう転んでも前世の2人に幸せな未来はなかったのではないかと思うと、なんともやるせなさを感じます。
川藤の自分本位な偽善的な優しさも、間違っているのですが、ある意味人間らしい。村人たちもどうしようもないクズばかりなのですが、きっとこういう風習って昔はあったんだろうなと妙に現実味があって恐ろしくもなりました。
来世で巡り会えた2人の幸せを願わずにはいられない。
素晴らしい純愛ストーリーでした。
八墓村のBL版のような和風ホラー要素を盛り込んだ、
虐げられ自由が無い底辺で生きるマイノリティ二人と、生れ変り?の異母兄弟二人、
この四人が主役の凄く切ない因縁物語。
「累」と書いて「カサネル」と讀む。
夢で見た過去世と同じことを、無意識に累ねる=辿るように生きる七緒と奏の兄弟。
七緒は天気の予知ができる、優しい少年。
奏人は、烏の雛のようなカクシゴの異母弟。
二人が見る夢は同じ内容だった、
座敷牢のオワタリ様と世話役の四朗の生涯は哀しすぎて、悪夢に近い。
夢と似た伝承を持つ村の存在を知り、二人は廃村に訪れる。そこで全てを思い出す七緒。
赤とんぼが飛ぶ時期に死んだオワタリ様の最期の呟き
「四朗、今度会ったら ずっと一緒に居よな」
「好きなとこ 一緒に飛んでいこな」
・・この言葉を七緒が「罪の意識を抱えて熊に生きたまま喰われた四朗」の生まれ変わり;奏人に告げる。
(何故二人を「熊」の餌に??著者が熊に拘る訳が謎。)
オワタリ様の「四朗を罪から解放して、一緒に居たい」という呟きは強い祈りになり、
時空を超えてオワタリ様の祈りにシンクロするように、オワタリ様達の夢を見る。
そして、オワタリ様と四朗によく似た今世の二人は、今生で過去世を累ねるように恋をする。
そして夢で過去で果たせなかった、オワタリ様と四朗の想いを成就する。
時空を超えた「オワタリ様の祈り」。オワタリ様は、実は凄い異能力者でした。
過去世と同じ人を好きになる=前世と変わらない今世を送るという意味を含む物語なら哀しすぎる、今生で幸せを掴んで欲しい。
マイノリティに視点を向ける凪良先生が本当に書きたかったのは、
差別されて自由を制限されて生きた「戸籍が無い人達」が実際に居たのだ、という告発じゃないのかな?
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渡り巫女:オワタリ様
歩き巫女(あるきみこ)は、かつて日本に多く存在した巫女の一形態。
戦国時代に武田家に仕えていた忍者集団のひとつ「信玄の歩き巫女」は、アニメで有名。
凪良先生の作品はこれが初めてでしたが、面白くて一気読み。
怖くて悲しいのに、話に引っ張られ、ページをめくる手が止められなかった。
前世パートの痛々しさについてはたくさんの方が触れられているので、現世パートの感想を。
いいホラーものって、「後引き」がうまいんですよね。「リ○グ」のラストの主人公の行動なんて、めちゃめちゃ後味が悪くてゾクゾク…って来て終わる。このお話にも、似たような感情を覚えました。
ふたりが現世で想いを確かめ合って、感動のラスト。でもまだページがある。
で、明らかになる「秘密」。
もうね、予想していたとは言え、なんか、もう…。
正直このエピソード、なくていいんじゃないのかと、兄弟で愛し合っていくための代償としてはこれ、重すぎないか?って最初は思った。
前世での四郎の犯した罪との対比として必要な、兄側の罪のエピソードだというのはわかる。
けど、それにしたって、「もう終わった過去の話」としてではなく、現在のふたりが生きていく上でこれから一生背負っていくものなんだと思うと、救いの無さ、やりきれない気持ちをそこに感じてしまった。
虐待してたとは言え兄にとっては実の母。弟を引き取るまでは普通の優しかった母なのに。しかも虐待のそもそもの原因はクズ父なのに…と。
「愛するが故に犯してしまった罪」はBL的にはオイシイけど、前世があまりにも辛くて救いようのない悲恋でしかなかったがために、現世では一点の曇りもなくラブラブハッピーでよかったんじゃないかな?なんて思ってしまったのだ。
ラスト「Harmony」では一緒に暮らすふたりの、なにげない日常風景が綴られている。月日が流れ、父や再婚相手との折り合いは、どうにかついているらしいことがわかる。けれど、母のことにはまるで触れられていない。
奏人がひと言だけ「ああ、お盆だし」と、「どうでもよさそうに」言うのだ。そしてふたりは夕飯の相談をして、ベッドで愛し合う。まるで、なにごともなかったかのように…。
ここでゾクッときた。めっちゃ怖いよこれ。なにげない普通のシーンに見えるのに、いや、普通っぽいからこそ怖い。ここでこのお話が、ただの兄弟BLじゃなくて、禁忌を扱ったホラー小説だったんだって思わされた。
この据わりの悪いような、なんとも言えない後味の悪さがいつまでも尾を引く。
最後に気になっていたことがひとつ。
前世で赤の他人だったのに、転生後は異母兄弟っていうのはなんでなん?ってのは疑問が残る。どうせなら前世でも「実は生き別れの兄弟でした~」ってオチがよかった。なら兄弟BLとして二度美味しかったな…って思って読み返していたら、「あれ?もしかしてそうなのかな?」ってエピソードがあるんですよね。子守唄の。
あれは伏線ぽいけど、回収されてないところをみると、ただの偶然なのでしょうか? それとも…。
怖い偶然の一致…
というのも、昨日山岸凉子先生の「鬼」というコミックスを偶然読んでて、その、日本の土俗的な、伝承されている隠すべき禁忌のストーリーが余りにもシンクロしてて、心底震えあがった…!
そう、この作品は「和風ホラー」的要素が色濃いのです。
物語の序盤は、異母弟との共依存愛がこじれる話なのかな、と思いつつ読んでいたのですが、七緒が奇妙な夢に苦しみ始める展開になってから俄然面白くなった‼︎
私は怖い話が大好きですので。
しかし、日本の土俗を土台とするホラーってなんでこんなに怖いんだろう。
日本の、閉鎖的なムラの中で、巫女だ守り神だという建前の中で成人男性たちの性欲処理の対象だったオワタリさま。
そのオワタリさまの世話係をやらされることになる啞者の四郎。
聖と卑の表裏と、残酷な虐めの構図。
彼らの運命の過酷さ、過去(前世)からの絡みあう愛、禁忌、それらの描写の迫力がもう凄い。
その後七緒と奏人が見続ける夢の舞台となる現実の村にて起きる惨劇にも震えあがりました…
この話を読んでて、あれ?これ夜○花さんじゃなくて凪良ゆうさん〜?うそー、みたいな気持ちになりました。
凪良ゆう先生がこういう話を書くんだ…
私が凪良先生に抱いていたイメージを大きく覆す、どこか「魔」に取り憑かれて書いているのでは?と思わせるほどの、迫力。
この「累る」というタイトル。
人の怨念が他人に重ね合わされる…歌舞伎の「累物」からの言葉、だけど終局の「Harmony」にて2人の愛情が重なり合う姿にも掛かっているのでしょう。
物凄く怖いし残酷描写もありますが、オススメです。
ちるちるユーザーの方の耽美系のオススメ作品に挙がっていて、それをきっかけにして手に取りました。凪良ゆう先生は初読ですが、名高い評判に大いに納得出来る内容でした。
全く前知識無く読んだ為、余計に衝撃が大きかったです。これから読まれる人は、あまり内容を知らずに読まれるのが良いです。
血の繋がりのある兄弟同士で愛し合うという設定なのですが、背徳感をあまり感じさせないほど、あっさりしています。こちらには余り重きが置かれていない様に感じます。
七緒編から、不穏で嫌な雰囲気の予兆のようなものが感じられますが、奏人編こそが真髄です。投げかけられたテーマが予想外で、余りに重くて心のガードが上手く出来ませんでした。
生きていく上で叶わない事、どうしようもない事が痛切に伝わってきます。特に時代によるものが大きくて。現代人にとって当たり前に与えられる事が当たり前でなかった時代がある…。昭和生まれの人は、目上の人の話や書物等から見聞きしている事が多いかと思われます。似た題材を他に扱っているものもあるかもしれませんが、この作品は文学的で訴えるものがあります。
前世で添い遂げられなかった者達が後世で近しい間柄で生まれ変わる…という浪漫的な言い伝えを聞いた事がありますが、まさしくこの話がピッタリでした。ただ余りに過去の描写のインパクトが強すぎて、現代描写があっさり終わった所は気になりました。もう少し現代編の杓子が欲しかったかも。
あとがきを読んで奏人編のラストの描写などを出版社の意向で控えられた事を知り、残念に思いました。法律上の表現規制であれば仕方ないですが、女性向けだからという配慮であれば、そろそろ見直して欲しいです。社会の変化に合わせて、読者も成熟します。読者が求めるのは配慮でなくリアリティーです。女性向けだからとファンタジーものとしてぼやかされるのは悲しいです…。
笠原先生の表紙が購入するのをしばらく躊躇した原因でもあったのですが、手に取るととても美しいです。今ではとても気に入っています。タイトルがまたふつくしい…。ちるちるユーザーの方のオススメが無ければ、エロが主題だと勘違いをして購入していなかったと思いますので、感謝の気持ちでいっぱいです。
長年のブランクを得て復帰をしてBL小説を何冊か読んだ結果、BL小説に対する認識が大きく変わりました。この本もエンタメで終わらない一読の価値がある本のうちの一冊だと思います。
凪良ゆう先生の作品を読むのはこれで3作目になりますが、今のところこの『累る』が一番好きです。もともとホラーとかおどろおどろしい話が好きだったので、趣味にどんぴしゃりと嵌りました。
内容については他のレビュアーさんが書いていらっしゃるので、私は感想をば僭越ながら書かせて頂きます。
『累る』で好きなのは、全編に漂うホラーな雰囲気です。
不審な母の死、繰り返しみる不思議な夢、夢の中で男たちに犯される自分。日常が少しずつ蝕まれていく七緒。
中盤まではおおよそこんな感じなのですが、まさにホラーですね。怪しいです。悪い予感がジワジワときました。腹違いとは言え実の弟との禁断の関係が、いい感じに物語を盛り上げます。
やがて悪夢に導かれるようにして辿り着いたとある廃村で、七緒と奏人を巡る全ての真実が明らかになるのですが…。
このクライマックスあたりは横溝正史的世界。おどろおどろしくて残酷で、そして物悲しい。思わず涙ぐみました。
ミステリー的要素も散らばっているので、夢の断片をつなぎあわせて過去に何があったのかを考えながら読むのも楽しかったです。頑張って色々と予想しながら読んでいたのですが、私は見事にミスリードされてことごとく外れてました。なるほど、そういうことだったのか、と全てを知ったときは切なかったです。
最初から最後まで、飽きることなく読み進められました。とてもおもしろかったです。読んで良かったなと思える作品でした。
それから、笠井あゆみ先生のイラストが作品の雰囲気に合っていてすごく良かったです。とくに、妖しい色気とどこか儚さを感じさせる表紙が、より小説の雰囲気を際立たせているようで大好きです。飾っておきたい…。
終盤はわりと残酷な描写があるので、苦手な方は気をつけて下さい。複数のモブに陵辱される美少年、下衆なモブたち、そういったものが大丈夫でなおかつ暗くて悲しいお話を読みたい方にはおすすめです。読んだらナナホシテントウが愛おしくなりますよ。
美麗でエロティックな表紙に惹かれて購入しましたが、主役の受け攻めの濃密な描写は一度だけ。
途中からエロスよりも二人の前世が気になり、ページをめくる手が止まりませんでした。
読み終えて、タイトルに物語のすべてが込められていることに気づきました。絶妙なタイトルです。
辞書によると、「累る」は、つみかさなる、いくつもつながる、わずらわすという意味があるのだそうです。
つみかさなるのは、異母兄弟でありながらひかれあう七緒と奏人の恋情。
いくども体をつなげる二人。
二人をわずらわせる前世の記憶がいくつもつながり、やがて二人は全てを思い出す。
そして前世も自分の中にかさね、ともに生きていくと決める…。
実は前世で、七緒はオワタリサマという男の巫女、奏人はその世話をする口のきけない少年・四郎でした。
前世の話がなければ、兄弟ものが苦手な私は二人の関係に納得できなかったかもしれません。
この前世の話がとても読みごたえがあります。
村人がどす黒いほどの欲にまみれていて、対照的にオワタリサマと四郎の関係が清らかで切なく感じられるのです。
村の男たちに共有され、お堂に閉じ込められて女郎のように扱われていたオワタリサマ。四郎は一生懸命にお世話し、見守り続けます。淡い恋心が四郎の中につみかさなります。
ところが町の青年のお節介な振る舞いが二人の静かな生活に波風を立て、四郎は青年のことを村長に告げ口してしまいます。周りの村に自分たちの汚れた振る舞いを知られることを恐れ、村長たちはオワタリサマを殺害しようとします。逃げる二人。道中のケガがもとで弱るオワタリサマ。でも恨み言一つこぼしません。
オワタリサマが四郎に告げるセリフが切ない。
町の青年から、交接は好きな人とするもの、好きな人とならとても幸せな気分になる、と聞いたオワタリサマは、「そんなら四朗としたいて思ったんや。だって俺、四郎が大好きなんや。」と言うのです。
オワタリサマの中にも四郎への想いがつみかさなっていたのですね。
その後、二人は結ばれることなく悲惨な死を遂げてしまいます。
おとなしく耐えるだけだった四郎がオワタリサマにひどいことをした町の青年と村長の息子を容赦なく殺してしまうシーンがあるのですが、四郎の変貌ぶりが鮮烈で、とても悲しい。
「人扱いをされないのなら、苦しい思いをして人であり続ける必要がどこにあるだろう。」
四郎の中につみかさなってきた苦しみの熱量に圧倒されました。
七緒と奏人の前世を知ってから、口絵のイラストはエロスよりも切なさが増して見えます。このとき奏人だけが前世の二人の悲しい結末を知っていたのですから、切羽詰まるのも無理はないと思えます。
七緒と奏人は、喜びも悲しみもともに、これからも一緒に生きていくことを決意します。
二人の生き方はまさに「累る」。幸せがたくさんありますように、と願いながら本を閉じました。
面白かったです。もう、その一言に尽きる。
『累る』のタイトル通り、累積された想いを扱ったお話でした。
現在と過去が交錯していくストーリー。その中で、萌えと恐ろしさが深まる。
何が一番衝撃だったかというと、やはり二人の過去。
ストーリーが段々と佳境に入るに従って、「これ、相当すごい過去が秘められてないと『なんだ……』ってなっちゃうなあ」とハラハラしつつ(期待しつつ?)読んでいたのですが。
すごかった。
さすが凪良先生だと思いました。
二人の過去が衝撃的に感じられた理由は、設定その他ももちろんですが、やはり何といっても凪良先生の描写力ゆえだと思う。
受け視点と攻め視点でそれぞれ異なる恐怖があるのですが、それが交互に語られるので二倍怖い!
その後語られる現在の二人の繋がりや、てんとう虫の話に、正直ホッとしてしまいました。
現在の二人が、義兄弟だというタブー性など吹き飛んでしまうほど。
圧巻でした。
これは読むべきだと思います。
hontoさんで購入。
なかなかに激しい表紙で前から気にはなっていたものの、ダークそうで
手がのびず・・・。カラー口絵は更に凄かった。中の挿絵もありました。
お話は 秘密Ⅰ、累るⅠ、累るⅡ、秘密Ⅱ、Harmonyというタイトルが
ついていて、攻め受けが小学生時代に出会ったところから話が始まり
兄視点、弟視点、現代、過去と変わります。混乱はなかったです。
内容はハード&ダークな部分あり、少々キツカッタ・・・・・
それでちょっと評価は下振れです。
ちょっと厳しい内容に耐性ない方は、ちょっと耐性つくまで見送りも
ご検討いただいた方がよいかも。
登場人物は父親とか知人とか少々いますが、ほぼ攻め受け二人だけです。
兄弟で生きていくことを決意するまでのお話と
最後のharmonyが、ご褒美ちょっと甘めなお話。でもちょっと足りない~
もう少し多めに甘いお話が欲しい・・・
ただ兄弟ものはとっても苦手なんですが、当作はあり!と思えました。
最後は、魂に刻み込まれた記憶、愛情を消化し、
二人できっちり生きていけそうな強さ、明るさを見せていただけて
救われた感、満点です。
「ななほし」=この本 に強く紐付けられたやや強い印象の1冊でした。
切ないものが読みたくてチョイスした作品ですが、切ないよりも淡々とした静かな海のような作品でした。
実は悲恋のまま終わるのだと思っていたので購入後読むのがかなり遅れていたのですが、ラストはきちんとハッピーエンドとなっていますのでご安心を。
受けの七緒と攻めの奏人は異母兄弟。
幼い頃に奏人は父親の元へ引き取られ、そこで唯一自分を庇護し愛してくれる七緒と出会います。
そんな七緒と奏人の前世が、渡り巫女を母に持ち村の男衆の共有女郎とされるオワタリ様と、オワタリ様の世話係で村では差別され厄介者扱いされる四郎でした。
その四郎の悲惨な記憶が幼い頃から奏人を苦しめ、また現在では七緒をも苦しめ始めたことで、奏人は悲劇を繰り返さないために七緒から離れる決意をするのですが…
さりげなく書かれた七緒の天気を当てられる能力がまさかここと繋がっていたとは!と読み終えた時鳥肌が。
そしてすっかりわたしは忘れてしまっていた七緒の実母の死の原因も、ここで持ってくるか!と唸るばかり。
自分の不幸は認知しなければ存在しないも同然で、それを知るも知らぬも本人の自由で他人がとやかく言うことではないのだと感じた作品でした。
あまり先入観を持たないで、前世物、兄弟物くらいの予備知識で読まれる方が驚きや苦しさが味わえると思います。
凪良さんの書かれる作品では登場人物の後ろに筆者の姿が見え隠れすることはほぼなく、今回もオワタリ様や四郎の後ろには凪良さんではなく七緒と奏人が、七緒と奏人の後ろにはオワタリ様と四郎が…といった具合に、作中に登場人物たち以外が介在していると意識させられることはありませんでした。
そこが本当に素晴らしいなと。
たいていの作品(小説で顕著)ではチラチラと筆者の姿が感じられ、そのたびに現実へ引き戻される気がするのですが、凪良さんの作品でそういうことを感じたことはないかもしれません。
ダークミステリーというジャンルになるのでしょうか。
凪良先生の作品の中で、泣ける話や好きな登場人物達はもっと他にいるのですが、作家としての先生の筆力を一番如実に表しているといるのは、この作品だと思います。
前世の記憶に足元を掬われ、絡み取られるように、ずぶずぶと光のない深遠へと引きずり込まれていく気分です。痛くて、苦しくて。それでも、彼らの最期を見届けることが、この本を手に取った自分の責務だと信じて、最後まで読み進めました。
最後は、読者も救われます。
それは受け取った痛みには見合わない救いだと思うのですが、そんな傷跡を残しつつ、ちゃんと救われた気分にさせてくれるところが、名作の所以だと思います。
腹違いの兄弟の設定だったり、陵辱や暴力的な場面もあるので、そういうのが苦手な方にはお勧めしません。
ただ、BLというジャンルを超えて、人間の再生の物語だと私は思うので、何らかの救いを求めている方には是非ともお勧めしたいです。
陵辱系のエロが好きなので、かわいそうな受が読みたくて買ったのだけれど....
想像以上に泣かせにくるストーリーで、いい意味で裏切られました(´・ω・`)
前世の記憶が混在するストーリーで、最後の最後まで伏線がちゃんと仕込んであり、物語として本当に面白かったです。
泣きます。恐ろしいくらい泣きます。
BLっぽいイチャコラは最初だけで、途中からは映画なんじゃないかというくらい壮大な愛のストーリー。
ひたすら、愛です。
ここまで幸せを願ったカップルは無かったんじゃないかなってくらい、2人の幸せを願わずにはいられないほどでした。そのくらい、2人の人生が壮絶すぎて。
読んだ後は、すこし放心するような、あったかいような、しんどいような。
私にとっては、自分の心の中の「愛」の色相が増えたような、そんな気持ちになりました。
絵としては描かれていませんが、文章上の流血などの描写が結構あるので、そういうのが苦手な人は避けた方がいいですが、そういうしんどい場面を乗り越えても読む価値のある愛の物語でした。
今まで色んな作家さんのBL小説を読んできましたが、凪良ゆう先生はやはりさすがですね。
心理描写の神様です。買ってよかったです。感謝しかありません。
禁忌の香りをまとったミステリーホラー仕立ての作品。
表紙を見るとエロ重視ポルノ系BLかと思ってしまいそうですが、中身はさほどでもなく独特の質感のある少し前の時代を舞台にしたおはなしでした。
前世と現世、そして夢と現実が複雑にからみ、離れたり重なったりしながら、兄弟同士であるというタブーをはらみながら物語がどこかへ向かっていく感じがとてもたまりませんでした。ファンタジックで耽美でダークで。特に中盤あたりは展開が気になって、すごい速度で読みました。
読み応えと雰囲気があります。面白かったです。
話の内容だけであれば萌2をつけると思うのですが、笠井先生の絵が素晴らしいため、神評価に押し上げという感じです。兄弟、輪姦ものはあまり好きではないのですが、挿絵と話の展開の融合に完全に飲まれました。
凪良先生の作品は必ず購入しています。
読みながら、最後のほうは苦しくて悲しくて切なくて、
もう涙が止まらなくて、大変でした。
凪良作品で一番衝撃的だったかも。
この方は、もはやBLという枠組みだけでは語れない、
すごい世界を描く方ですよね。大好きです。
前世と現世、そして過去と今、
色々な出来事が組み合わさって、進んでいく・・
どういう結末が待っているのか読んでいてもわからなくて、
でもだんだん追いつめられていくような不安だけは感じていて、
ドキドキでした。
前世の二人に感情移入しちゃうんですよね。
怖いと書いている方も多くて、
確かに、苦手な方もいるかもしれないですね。
個人的には、もう、ぜひおすすめしたいです。
何度も読み返しています。
そのたびに泣いています(笑)
でも、凪良先生ですから、
救いのない終わりではないですから、安心して読んでほしいです。
今、読み終えて、なんてすごい作品なんだろうと奮えました。
多種多様な設定と読み手をどんどん惹き付ける美しい文章で、このBLの世界を一段も二段も高みにあげてくれる素晴らしい作家様です。
何度も読み直したくなるような台詞や場面、頭の中に次々と思い浮かべる事の出来る情景が時に甘く、苦く、このシリアスで複雑な物語をハッピーエンドへと誘ってくれます。
とにかく奥が深い。
夢だけのミステリーで終わらず、全ての伏線を回収する過去編。
その内容も、読み応えのある物語でついつい感情移入してしまいました。
ーーー何も知らない方が幸せだった。
自分が可哀想だと教えられる事で、不幸になる。
夢に見るオワタリ様は、理不尽に男達に陵辱されるんですが、オワタリ様視点で語られる過去編を読んで、何が幸せで何が不幸なのか、その真理に気づいた四郎の気持ちに胸が疼きました。
傍目から見ればとても可哀想に見えるオワタリ様ですが、紐で繋がれた世界しか知らない本人にはそれが不幸な事だとは気づきません。だからカラッと明るくて、服が粗末でもご飯がまずくても文句なし。
世話役の同年代の四郎と一緒に過ごせるのが楽しくて、繋がれる生活に不満どころか他に何かしたいという欲求もない。
それが不幸な事だとオワタリ様に気づかせてしまった地主筋の青年に悪意はないのです。助けてあげようという善意でしかない。けれど、それはうすっぺらな善意。
捨て猫を撫で回して、餌を与えて、あとで迎えに来るよって言ったきり戻って来ない。まさにそんな善意。
このオワタリ様の性格の良さが本当に救いでした。彼が笑ってくれてたから、七緒も奏人も救われた。
何が悪くて、何がいいのか。
優しさも、苦しみも、全てが入り組んだ迷路のように複雑で、過去の殺人ですらその是非を問う事が難しい。
追い詰められていく二人の心情が緻密に書かれ、物語は加速します。
実在した廃村を夢に見る物語。
オワタリ様が声に出せなかった最後の言葉、それを四郎に伝えるべく七緒は全てを理解します。
スリリング且つダークミステリー。
そこにきちんとBLを加味して最後まで仕上げて下さった作者様の力量に感服です!
いや~怖かった。本作はホラーではなくスリラー(+サスペンス)だと思いつつ、怖いのが苦手な自分は「…うひょッ」となる場面もありましたが、のめり込んで一気読みしてしまうほど面白かったです。
頼りにならない父親を当てにせず、お互いを思いやり支え合って生きてきた兄の七緒と弟の奏人。異母兄弟である二人はある時期から不思議な夢にうなされるようになります。何かを知っている奏人と、何も知らないがゆえに奏人を追い詰めてしまう七緒。二つの魂の「執着」が時空を超えて絡み合う、じっとり、ねっとり、重苦しい雰囲気のお話でした(褒めてます)。
凪良ゆうさんの作品は、適度にカラッとドラマティックでロマンティックで時々コメディータッチ…という印象だったので、本作は私はとても新鮮に感じました。
前世が絡んだ兄弟愛。黒くて重いけど最後はハッピーエンド。七尾の父は外に作った子供、奏人を引き取った。弟が出来て嬉しい七尾は母の仕打ちから奏人を護り、奏人は七尾を好きになっていく。いつしか2人は同じ様な夢を見る様になる。それは2人の前世が関係していた。前世の記憶が夢として蘇り、現世の兄弟を苦しめる。前世描写を読むのは辛い所がありますが、現世では結ばれて幸せそうな暮らしぶりが描かれていて胸を撫で下ろした。最後はどうなっちゃうのか気になって一気読み。良い意味で忘れられない一冊。
思わずぐいぐいと引き込まれていくお話しでした。
凪良さんの作品は大好きなんですが、良い意味で『ほんとに凪良さん?』
と何度も名前欄を見直してしまいました。
怖くて悲しい話でした。
浮気者の夫からよそで作った子供の世話をさせられ心を病んだ義母。
義母からの陰湿ないじめに耐える異母弟、それをかばう義兄。
義兄の優しさに救いを見出すが、夜毎の悪夢に苦しめられる義弟。
ここまでならそん複雑な家庭に育った異母兄弟がいつしか心を寄せ愛するようになり…という話かなと思うのですが、そこへ前世の悲しく不幸な人生を送った二人の辛い記憶が二人を苛みそれがどんどん恐ろしい状況になっていくのが怖かった。
前世編で、神だ巫女だと崇めているふりをして娼婦や男娼として閉じ込めひどい扱いをしている村人が酷すぎる。
けれど、そんな中そこでの暮らししか知らないオワタリサマはそれが不幸であり人としての尊厳を損なわれているということさえ知らずに、あっけらかんとしています。
知らないほうは幸せなのか、知るべきなのか考えさせられます。
意に染まぬ行為や監禁状態でいることがかわいそうで不幸なことがと知った時、本当の意味での不幸が始まったのだと思います。
それをおしえたのは学のある裕福な家の坊ちゃんです。
そして、解放してあげよう逃がそうという言葉に喜ぶオワタリサマ。
行ってしまうオワタリサマを止めたくて脱走計画を村人に言いつける世話役の四郎。
悪意はなくても、親に学費を止めると言われ逃げる坊ちゃんの身勝手さ。
偽善的な優しさを押し付ける弱い男です。
生まれかわったオワタリサマと四郎がてんとう虫になって自由に飛び回っている様子が切なく哀しい。
読みながら先は読めてしまっていましたが、前世の2人が可哀想で可哀想で。。
更に前世で過去に苦しむ攻めも本当に可哀想でした。。
ただの兄弟物ではないと思っていましたが、ライトなBLではなく、重苦しくて不条理もあって切なくて、ガツンと頭を殴られたようなインパクトでした。
萌えと表現していいのか分からなかったので神で。
謎が解けたときに、前のページを読み返すと、この時攻めはこんな気持ちだったのね。。と更に涙を誘います。
2人はとにかく幸せになってほしいです。。
本編とその後の「Harmony」が収録されています。
すごく気になっていて読みたかったのが、ようやく電子書籍になったので購入。
かなり好みだった。
凪良ゆう作品、相性が悪くて、実はあんまり好きではなかったのです。
物足りないというか、きれいすぎるというか……
今回は、「黒」凪良ゆう作品。
さすがです。
途中、心臓バクバクで、思わず本を投げ出しそうになるほどのエグさ。
それでいて、全体を流れる切なさ。
絶妙な塩梅です。
「黒」凪良ゆう作品をもっと読みたいです。
父親の愛人の子供である奏人が家に来て、七緒の母親から虐待を受けるという、冒頭から重い話だったので今回はどうだろうと思っていましたが、さすが凪良先生。
なんだか少し怖いんだけど、引き込まれてしまいページをめくる手を止められませんでした。
現実と前世が融合した、ちょっと不思議なお話です。
BL作品というよりかはミステリー作品の要素が強いお話だった気がします。
ただ、幼いながらに虐待を受けていた奏人を必死で守り続けた七緒と、七緒へ絶対の信頼を寄せる奏人の深いつながりが前世とリンクしてなんとも切なかったです。
今回の凪良先生の作品は、イラストが笠井先生ってどうなん?って思ってたら、こうきはりましたか。
異母兄弟の禁断の愛。
断ちたい思いを繋げるのは、それは前世の記憶のなせる業。
最初は、普通に現代物で、ある日父親が連れてきた愛人の子と本妻の子が成長するにつれ、お互いの気持ちが恋愛感情であると葛藤し、それを乗り越えるお話かと思わせておいて、そこから始まるオカルティックミステリーというか伝奇ホラー。
もう、この際だからといわんばかりに、現代物で子どもの虐待、異母兄弟の近親相姦、昭和初期の山村での隠された因習と血の惨劇ってな具合で、かなり痛かったりグロかったりが盛りだくさんです。
笠井挿絵がしっかりはまるてんこ盛りな展開です。
後半の視点が変わってからのダークで切なくて息もつかせない展開ときたら、凪良作品ではちょっと今まで見たことがないような驚きの連続です。
こんな引き出しも開けて見せて下さるなんて、これからもますます凪良先生から目が離せないです。
セルフツッコミ
オワタリ様って、昔TVで見た「横溝~の~村」的な映画に出てきたようなやつを思い出した。
大好きな凪良先生作品!いつものように作家買い致しました。
そしていつものように今作も私の中で当たりでした(*'ω'*)
しかしながら、評価の理由につきましては挿絵です。。。
笠井先生のイラストは艶っぽくて、異次元の美しさを感じるのでとても好きなのですが、今回の作品にはイマイチ合っていなかった気が…。(すみません)
ストーリー自体は、現代を生きる二人に交錯する前世の記憶。
その記憶に悩まされ、ただでさえ試練の多い恋も上手くいかないことばかり…ということで、前半はなかなか進まない物語にヤキモキしていたのですが、後半になり、伏線が回収されていくにつれ、ぐっと世界観に引き込まれてしまい、読了後はしばらく達成感のような何とも言えない気持ちに支配されてしまいました。さすが、凪良先生ワールドだな、と思います。
そして、結末も個人的にはそれぞれの区切り、というかケジメがついたような気がして納得致しました。
SSの『Harmony』も、今後もこの二人は過去の記憶を忘れられないけれど、その記憶は最悪な結末だけではなく、幸せな記憶もプラスされているので、素直に「よかったなぁ」と思えました。
少し過激な(暴力的・グロ系)描写もありますので、苦手な方は注意が必要かと思います。
しかし、そればかりではなく、1本の線が通った深いお話なので、ストーリー性重視の方は満足できる一冊なのではないかと。
前世での辛い記憶を今世まで引きずっている二人の話。
あらすじは読んだけれど、実際に読んでみてまさかこんな話だとは思いませんでした。
それに、表紙と口絵から受けた印象と話の内容がかなり違う気がしました。
こんなにカゲキなイラストにしなくても良かったんじゃないのかな…なんか話の内容と合ってない気がする。
文章はとても読みやすいので一気に読めてしまうのだけれど、別にBLじゃなくてもいいんじゃないかな?と思ってしまいました。
読み物としてはとてもいいのですが…
凪良さんの作品を読んだのはこちらを入れて3作品なのですが、どれも評価は物凄く高いのに、自分にはBLとして感じられない。
変わった感性の持ち主のようで残念です。
凪良作品はほとんど読んでいます。
男性同士の繊細な心理描写が大変上手な作家さんで、現代ものが得意という印象がありますが、伝承ネタのお話は珍しいのではないでしょうか?
そのせいか(どうなのか)今回は今ひとつ世界観にのめりこめませんでした。
個人的に苦手な“ガチ兄弟”モノだったというのもあって…。
しかしながら、いつもの雰囲気とは違う新しい表現にチャレンジしたのだろうな、ということはすごく理解できるので、今後に期待します。
笠井あゆみ先生の挿絵もエロくてとてもよかったです!
一気に読ませてくれました。
物語にグイグイと引っ張られ、走り抜けたような感じです。
表紙で七緒のスッポンポンに「ぎゃー!」となりますが、
口絵カラーのほうがもっと凄いです(笑)
勇気のある方は、本屋でちょっと覗いてみてから購入してもいいかも?
◆◆ ◆◆ ◆◆
《CP》
不思議な夢を見る腹違いの弟・奏人 × 同じく夢を見る大学生の兄・七緒
物語の殆どが七緒(受け)目線で語られます。
ただし、前世の夢のなかでは奏人(攻め)目線で語られます。
腹違いの兄弟として、幼い頃から一緒に育てられる
兄の七緒(受け)と弟の奏人(攻め)。
常に奏人の味方をしてくれ、守ってくれる兄・七緒は奏人にとって、
唯一無二の大事な存在となっていきます。
七緒もいつしか奏人を想い始め、相思相愛に。
笠井あゆみさんがイラスト担当ということで、
中身はエロエロかと思いきや、そうでもないです。
2人が最初に体を繋げたセックスシーンは濃厚に描かれていましたが、
他は朝チュンばかり。
エロを目的に購入してしまうと期待はずれかもしれません。
私はエロよりも、2人の加速する夢の内容。
それが前世のことを語っていると知った時の2人の複雑な心の内。
夢に出てきて、尚且つ現実に存在している不思議な場所。
オワタリ様と四郎との関係……。
それがミステリとして頭に流れ込んできて、私を夢中にさせました。
もともとミステリが大好きな私。
謎が次々と明かされていく前世の記憶は興味深く、
のめり込むように先へ…先へ…と読み進めました。
しかし前世で四郎である奏人が、
オワタリ様である七緒のために2人の人間を殺害したこと、
そして最後には愛しいオワタリ様さえ自分の手にかけ、
殺してしまったこと。
それが明らかになった時、現世の奏人は一体どう思ったのでしょう?
不思議な夢が、実は現に章は初期に存在した史実であり、
七緒であるオワタリ様さえ殺してしまった「四郎」が
自分自身だと知った時の苦しみは、計り知れなかったことと思います。
しかし、その遠い昔の悲しい出来事を現実として認識し、
受け入れた七緒(受け)と奏人(攻め)。
そして2人で力を合わせて生きていくと決め、
何年も一緒にいることが描かれているところでハッピーエンド。
輪廻転生の記憶を乗り越えた2人は、とても微笑ましく
見ることができました。
◆◆ ◆◆ ◆◆
和風ミステリとしては、とても良く出来ていたと思います。
ただ、バックボーンが弱いトコロが惜しかったです。
●夢のなかの場所は本当に存在するのか。
(「富士山」とか「甲府」とか。)
あるのかないのかで、随分とストーリーの重みが違ってきます。
●オワタリ様の風習は本当に日本に現存したものだったのか。
(○県△市に、昭和×年に存在……など)
これも上記と同じで、ストーリーの重みが俄然増します。
その他にも、巫女の風習は本当に根付いていたものなのか、
前世の時間は本当に昭和初期のことなのか……などなど、
あげだしたらキリがないです。
考えれば考えるほど、少し薄っぺらな感じがしてしまうのが
残念でした。
もっと本を厚くして構わないので、そのへんの背景をしっかり調べ、
物語の中に息づかせていれば、
もっと本格的なミステリBLになったのに……と思ってしまいます。
しかし、ここまで一気に読ませる力が有るのは、
さすが凪良ゆうさん!と称賛に値すると思います。
こんなミステリなら大歓迎です。
次巻にも期待!!
凪良先生の作品を読んだ後は、すっかり物語の世界に引き込まれてしまってなかなか戻ってこれない現象(笑)に、毎回陥ります。ぼーっと腑抜け状態。
今回は特にひどくて、いろんな意味でドキドキ、動悸までしています。
先生の作品はいつも作者買い。新刊の知らせを聞くと予約段階でネットでポチリ。内容も書影もノーチェックです。今回、忘れた頃に届いた包みを開けてびっくり!沙野風結子先生の本が送られてきたのかと…。(笑)
笠井先生の絵っていろんな意味で影響力が強いですね。作品は読み進むうちに凪良先生らしさが出てくるのですが、読む前にグロくてエロいイメージが頭の中を支配して…。
決して笠井先生の絵が嫌いな訳ではないんです。すごく繊細で儚くて見とれてしまうほど美しい。でも違う絵師の方だったら違った印象から入れたんだなーとなんとなく思ってしまいました。内容が黒い=笠井先生って図式は、凪良作品でもそうなのかって…。
作品は、先生の新境地と言っていいのかなって思います。先ほど凪良先生らしいと書きましたが、それは作品の根っこに流れているもので…、横溝正史の作品にでてきそうな村、老人、ホラーな感じは今までにないものです。あとがきで先生も触れられていましたが、熊のシーンなどは「先生、どこに行っちゃうの?!」って読んでて不安になるほど。(担当者さまが止めてくれてよかったと私も思います。)
今までの先生の作品にも「死」を題材にしたものや、主人公が自分の犯した罪に縛られているものは多くありました。というより、そういう人生の影の部分を表現しているのが先生の作品なんだと思います。でも精神の痛みだけでなく、肉体の痛みまでともなって、そこらじゅうが「痛い」感じは今回が初めてで、読後、ハッピーエンドでよかったと心から思いました。
また、最後に母親の事故の謎が解けるシーンになぜか私まで救われた気がしました。
あれこれ書きましたが、半端なくおもしろいのは間違いなく、輪廻転生が繊細に描かれている傑作です。凪良先生の作品を初めて読まれる方がいましたら、別の作品からをおすすめしますが(なんとなく…笑)。
ますます、先生の次作が楽しみです。
攻め視点、受け視点両方共あります。
攻め受け両者ともに苦悩しますが、攻めが大いに苦悩する貴重なお話です。深く重いです。
あまりの重さに、攻めに感情移入したくなくとも、してしまいました。
《以下ネタバレご注意》
愛する人に殺してくれと頼まれたら、殺せますか。それが愛する人のなによりの願いだとしたら。
その願いに応じる勇気があるとしたら……というこの場面が鮮烈でした。
この兄弟の父親は、前世の川藤と対比してるのかな。
凪良さんの本は買うことにしているので、購入。
しかし、この表紙。笠井さんは好きなイラストレーターさんですが、こういう表紙は買いづらいので通販しました。
凪良さんが、こういうエロエロな話を書いたのかとそこに驚きましたが、
ところがどっこい。
えー、何でこの表紙にしたの???
誤解なきよう申し上げておきますが、笠井さんはかなり昔からずっと好きです。
でも、この表紙はもったいないかも。全然中身と合っていないですね。
この系統の話を好きな方は、エロメインだと思って逆に手に取らないんじゃないかしら。
内容は異母兄弟と怪しい因習の夢で、エロよりももっと村の因習にまつわる残虐描写の方が印象的でした。
マヨの娘(他国ですが贄の娘を村の男全員で輪姦して、最後に贄として殺す祭儀です)的なネタがお好きな方には、オススメです!
凪良さんなので最後は幸せになるとわかっていても、オワタリ様と四郎はどう考えても幸せになれないのは確実なので、過去の話は読むのがつらかったです。
でも、生まれ変わって出会えてよかった。
こういう因習系の話は大好きなので、大好きな凪良さんで読めて嬉しいです。
作家買いです。凪良さんが「今回は久々に黒成分(シリアス度)多めですね」と書かれていて、しかも笠井さんの挿絵。読む前からもう期待度MAXでした。そしてその期待を裏切らない、まさに神作品でした。
普段はネタバレ上等でレビューを書くのですが、この作品はあまりネタバレしてしまうと面白さ半減だと思うのでなるべくネタバレなしで書こうと思います。
父親の愛人の産んだ子(異母弟)をとある事情から引き取ることになった七緒の家。夫の愛人の産んだ子を愛せるわけもなく、七緒の母親は異母弟・奏人に凄惨な虐待をします。この問題の中心人物である七緒と奏人の父親は母親の虐待を知りつつも、その行為に目をつむり助けることはしません。
親の事情を理解できるはずもない七緒は、そんな奏人が可哀想で何かにつけて守ってあげるのですが、そんな中遊びに出かけた海で母親が海難事故に遭い亡くなるという事故がおこります。
虐待をしていた母親が亡くなったことで一見平穏な暮らしが始まるのですが、初めは奏人が、そして次は七緒が悪夢に魘されるようになります。
助けてくれるべき親に恵まれることなく、お互いが唯一の存在であった二人は、男同士であり、かつ腹違いとはいえ血を分けた兄弟であるという禁忌を飛び越え恋慕の情をかわし始めるのですが、七緒が悪夢を見るようになったことを知った奏人は急に七緒に別れを告げ…。
というお話でした。
ストーリーの視点が七緒で始まり、途中奏人視点に変わったりするのですが、さすが凪良さんというべきかストーリーの組み立てが非常にお上手ですんなりストーリーに入り込めます。
七緒の見る夢が非常にホラーチックで怖い。怖いのだけれど、描写がきれいで何とも惹きつけられます。七緒と奏人の見る夢はいったい何なのか、夢に出てくる登場人物はいったい誰で、どんなつながりがあるのか。どんどん話に引き込まれ、ページを捲る手が止められませんでした。
七緒と奏人。
二人の夢に出てくる「オワタリさま」と四郎。
まだ子どもである彼らに対して、周りの大人たちがあまりにクズで、二人に対するあまりの凄惨な仕打ちに思わず怒りで震えました。
そんな中、お互いが唯一の慰めであり、信頼できる相手であり、深い愛情を相手にそそぐ彼らの純愛が非常に良かった。最後の七緒と奏人のもとにいつもやってくるてんとう虫には思わず号泣してしまった。オワタリさまと四郎の二人かな、と思って。やっと自由になれた二人がいつまでも幸せでいられるようにと願ってしまいました。
今回の話は甘い話でも、ほっこりする話でもありません。意に沿わない行為を強いられたり虐待されたり、痛い表現はたくさん出てきます。甘々で、優しいお話を好む方にはお勧めできないストーリーです。
それでも人の残酷さをはっきりと浮き彫りにし、人を愛し守るということはどういうことなのかを問う、壮大なお話でした。
凪良さんも笠井さんも、どちらも作家(絵師)買いするくらい好きなのですが、凪良作品に笠井さんの挿絵ってちょっとイメージが湧きづらかったんです。が!良かった。すごく良かった。笠井さんは「エロを描かせたら右に出るものなし」と個人的に思ってるのですが、切ない表情や、相手を想う表情なんかもすごく良かったです。
内容はもちろん、タイトルも、挿絵も、文句なく神評価です。
笠井あゆみ先生の肌色率高い表紙と、それをめくると目に飛び込んでくる圧巻の濡れ場の扉絵に、
凪良先生どんなエロエロ小説にしたの⁈と鼻息荒くして読み始めましたが、自分の腐った煩悩を裏切る一筋縄ではいかないお話でした。
すっごく面白かったです。
読む前は溺愛攻めの弟と、許されない関係に葛藤する兄の普通の禁断愛かな〜と思ってたんですが、
2人が見る同じ光景の夢、兄の母親の死、兄が夢のことを知ろうとするのを頑なに阻止しようとする弟など、次々と謎が出てきて、どんどん物語に引き込まれていきます。
お互いを誰よりも愛し合う異母兄弟の兄•七瀬と弟•奏人。
彼らが見る同じ夢、ぶっちゃけると前世の夢なんですが、それらを通して兄弟の葛藤や愛情がとても深く表現されています。
前世のふたりがそりゃあもう切ないを通り越して読んでて胸が痛くなる関係と展開で泣けてきます。
幸福とは無縁な者同士が見つけた、
ふたりだけの幸せ。
そしてそれを壊される地獄。
前世の関係は言葉に表すと『悲恋』になるのだろうか。でも前世のふたりには肉体関係はないのにそれを超越した絆があるのですよね。
そんな過去があるこの兄弟は恋愛とか兄弟愛とかのレベルを超えてお互いが唯一無二の存在だというのがこれでもかと伝わってきます。
そんなに分厚くもないのに、2冊分くらい読んだような読後感はすごい。よく一冊でまとめあげたなぁと感嘆の一言です。だからといってものすごく物足りなさが残るというわけでもなく、伏線の回収もバッチリ。
凪良先生の作風って、切なさの中にほっこりした部分がちょこちょこあって、最後はハッピーエンドというイメージがあるのですが、
今作は、切なさと痛さが濃いめ。特に前世編でエグいシーンもあるけど、ちゃんと最後の後日談でほっこりあったかい気持ちさせてくれますので後味もいいかんじ。
兄弟愛だけでなく、人間の恐ろしさ、醜さ、弱さ、優しさ、全てが書かれているとても内容の濃い一冊です。
欲を言えば、ラストの夢の真相を確かめるための旅に出てきたジジイのくだりからの母親の死に関する秘密までを、値段上げてもいいからページ増やしてもっとじ〜っくり書いてもらってもよかったようなそうでもないような…
兄弟愛好き、年下攻め好き、前世モノ好きな自分には大ヒットでした。エロは少ないけど、笠井先生の挿絵でエロさ2割増しくらいに感じたので問題ナシ。
痛いエグいのが大丈夫なら、前世編は特に必見かと!
二つ年下の異母弟・奏人(攻め)を、幼少より母の虐待から守ってきた七緒(受け)。
大学生となったある日、奏人は七緒の前から姿を消し……
七緒と奏人の視点が交互に出てくる四部構成+後日談という構成。
二人が子どもの頃から見ていた奇妙な夢が物語のキーであり、奏人が七緒の前から姿を消した理由でもあります。
この夢が非常に不気味で、和風ホラーの趣きたっぷりです。
夢の中で十五、六の美しい少年となり、お堂のような建物に閉じ込められている七緒。
彼の世話をする老人に「オワタリさま」と崇られている一方で、毎晩のように男たちに輪姦されており、最後には……
物語中盤に挿入される、この夢の真相ともいうべき過去編がインパクト大でした。
ネタバレになるので詳細は省きますが、性的搾取のむごさや、中途半端な正義の残酷さ、そして村社会特有の陰惨な空気など相まって、これだけで一冊の本に出来そうなほど、密度の高いエピソードとなっています。
寄る辺ない少年二人の結末は非常にやるせないものですが、儚い一生の中で互いの存在に希望を見出し、精一杯愛し抜く姿が切なくも美しいです。
過去編が強烈すぎて、それ以降の七緒と奏人の物語がやや霞んでしまった感はありますが、終盤明かされるもう一つの謎には驚かされました。
真相自体にというより、この伏線はあの夢との対比の意味合いがあったのか!という点に。
哀しい真相ですが、どんなときにも互いを守ろうとする二人の想いの強さには感動しました。
緻密なストーリー展開に非常に惹きつけられたので、神評価です。
笠井さんの挿絵もいつもながら素敵でした。
ただ、今回濡れ場が少なめ(攻めと受けのシーンは前半一回のみ)なので、他作品の挿絵ほどアクロバティックな構図はなく、比較的普通のシーンの絵中心となっていました。