ニアリーイコール

nearly equal

ニアリーイコール
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神165
  • 萌×270
  • 萌24
  • 中立7
  • しゅみじゃない10

--

レビュー数
45
得点
1184
評価数
276
平均
4.4 / 5
神率
59.8%
著者
凪良ゆう 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
二宮悦巳 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
価格
¥650(税抜)  
ISBN
9784403523854

あらすじ

幼い頃に両親を亡くし孤独の中で生きてきた仁居は、高校時代はじめての恋に溺れ、その一途さゆえに相手を追いつめ捨てられてしまう。以来十年、人を愛することに臆病になっていた仁居は、ある日、元同僚の国立と出会う。人懐っこく優しい国立は独りきりの仁居の生活にするりと入り込み、心をひどく波立たせた。自分の重すぎる愛情で大切な人を失う恐怖に、国立から距離を置こうとする仁居だが……。

表題作ニアリーイコール

仁居が以前勤めていた高校の数学教師,26歳
塾バイト掛け持つ英語非常勤講師,27歳

その他の収録作品

  • プロローグ 2005
  • 川べり暮らし
  • ノットイコール
  • エピローグ 2015
  • あとがき

レビュー投稿数45

呪縛が解けるまで

なんでもない日常を、ドラマチックに描写するのが、上手いと思った。

冒頭は、仁居が幼稚園から帰る途中にある「多幸川」での、母子の会話。
「幸せが沢山流れる川」と母子が会話する幸せそうな情景

それが、暗転する大雨の日。
経済苦から、両親が入水心中を決行。あの「多幸川」で。
道連れを止まり、母は「幸せになって」と言い残してドアを閉める。

引き取られた叔母宅を追い出されて、独り暮らしを始める仁居に恋人ができる。
でも、佐田との交際は投書が原因で、突然終わる。
佐田の別れの言葉、「お前の愛は重い」は、ずっと仁居を呪縛する。

似たもの同士の仁居恭明と国立遥が、交際を始める。
でも仁居は佐田の呪縛が解けないままだった。
捨て猫を育てながら、二人はゆっくり親密になっていく。

勤務先の高校で、国立は佐田と出会う。
川べりのアパートの窓辺で、恋人の訪問をじっと待つ仁居の姿を、佐田が国立に話す。
 投書があり、若く力無い佐田は、仁居のせいにして想いを絶っていた。

永遠の孤独が続くのかと思ったけど、やっと二人とも壁を越えることができた。

結末部が良い。・・・国立に、思い出話をして、仁居は気づく。
悲しい思い出ばかりじゃない。 両親に愛された楽しい記憶を忘れていた。

こういう話、心に沁みる。

★nearly equal (ニアリーイコール)「≒」
「おおよそ等しい」という意味。 「同じそうで同じじゃない」という事。
 国立と妹、そして仁居の事だと思う。

1

始まりと終わりよければ全てよし

【祝】攻め視点あり!!!

 恋は盲目タイプの一途受け。好きな人に会えるためならズル休みだってするし学校だって辞める。でも初恋の佐田はその仁居の愛情を重いと感じて、離れていった。
 母親は「たくさん愛して愛されて幸せになって」といい、初恋相手は「お前の愛は重い」と言う。混乱して出た結果が「愛してほしいなら、愛しすぎないようにしなければ」だった。

 攻めの国立も仁居もゲイだから、女関係の心配はなく読める。
 もともと同じ高校の非常勤講師と教師だった二人。ゲイの男性が集う店でお互い恋人を連れて鉢合わせして接点を持った。
 それから数年、電車で再会してからちょくちょく会うようになる二人。仁居に恋人がいない情報をゲットしたからか、距離を縮める。

 産まれたばかりの子猫を拾って二人で世話して疲労してるシーンが、新米パパママの子育て感が出てて微笑ましい。
 
 国立が告白しても、過去の失敗が怖くて付き合えない。失敗って何? って聞かれても言えない。攻めも少し似たような性格。
 凪良マジックなのか、悩みを打ち明けないのも踏み出さないのも、女々しいとかウジウジしてるように見えない。全然いらつかない。

 いやーでも国立の恋人たちが言う通りシスコンだ。妹も兄に甘えすぎ。溺愛とかそういう関係ではないけど、恋人よりも妹を優先とかありえない。
 家族に対して、しかも身内贔屓なしで、同じ年代の他の人よりも美しいとか思うのがやばい。

 まさかの、仁居の元カレ佐田と今カレ国立が、アーチェリー部の代理顧問と指導員として出会う。佐田の過去の恋人の話を聞いて、特徴で仁居のことだと気づく。
 佐田とあったおかげで、仁居と国立の関係がひとつ進んだ。過去の恋愛に嫉妬してる国立が良い。

 ダブルブッキングみたいな感じで国立妹と仁居も会う。
 妹が図々しすぎ。正月と盆は兄と一緒に居させてくれ、って。社会人同士の恋人からしたら大事な短い休みなのに。
 仁居がもちろんっていうと、本当に好きなのか? って聞いてきて。なら盆は兄と一緒にうちに来てくれないか、って。そこは違うだろ、と。徐々に慣れていくんじゃなく早く国立を自由にしてやれよ、と。
 国立が今まで振られた理由は、セックスができないとかじゃなくシスコンだからだ。
 いっそのこと仁居が、兄妹の邪魔したくないから別れるって言い出して、妹から引き離して欲しかった。

 と、ここまでだと★3〜★4の評価だったけど、妹は他の男とくっついて兄離れしたし、二人は同棲したし結果良ければ全て良し。二人の出会い方とかやり取りがめちゃくちゃ好きだったので★5評価。

0

一幅の絵のような、美しく切ないお話

連作短編集。すごくすごく良い本でした。
本当に繊細で美しくて淋しくて孤独で静かな穏やかな、素敵な作品でした。
読みながら何度も涙しました。
淋しくても淋しいと口にできない主人公が愛しくて心から幸せになってほしいと願って読んでいきました。
子猫のニーニ可愛かった。
感銘を受けすぎて、まともに感想が書けず、何か形容しようとすると自分の発出する単語がすべて陳腐に思えてくる、それくらい高潔で不可侵な作品世界でした。
BLだから仕方ないけど、妹のメインのお話も読んでみたいです。

1

がジンワリとした温かさがあって好きです

こちらの作品は恋愛観に対してトラウマに近い不安を抱えていた各々の2人が出会い、恋に落ち、ゆっくり一歩ずつ距離を縮めていくお話です。
最中の性描写はこの作品はほぼないですがジンワリとした温かさがあって好きです☺️

0

不器用で傷を持った人たち

孤独な高校生が初めての恋に溺れて、全力で愛して、そのひたむきさ故に相手が怖くなって、去るときに残した言葉。
それが呪縛となって、踏み込んだ恋愛ができなくなった仁居と、過去の出来事にトラウマを持つ国立の再会から本当の恋愛になるまでがゆっくりと綴られた物語でした。

ただの元同僚だった2人が子猫を拾い、育てる過程でお互いに好意を持つ描写はまさに恋の始まりのドキドキとキュンキュンを味わえました。
しかし好きなのに感情を出さない仁居がもどかしいやら、切ないやらで、胸を掻き乱され悶絶でした。

国立に愛されて、両親と過ごしたあたたかな日々を思い出す場面は涙涙。
国立を失うかも知れないと思った仁居の感情のほとばしりも良かったです。必死で隠そうとしてきた部分があらわになって、みっともない重い愛でもいいと仁居が吹っ切れたのは本当に爽快でした。

エピローグで佐田との再会は必要だったのかな…と思ったりもしましたが、当時は重大だった出来事も実際当事者に会ったりしたらそれほどでもなかったとか、若いときはそれが全てだったからという事もありますよね。
仁居がそう自覚できたのなら大いに意味のある再会だったのかなと思いました。

やっぱり凪良先生の書くBLに引き込まれます。
心理描写と萌えるシチュエーションがとても好き…。
他の作品ももっともっと読みたいです。

3

最後まで面倒を見る

立て続けに凪良先生の作品を読みました。先生の作品て雰囲気がどれも違いますね。文体みたいなものも今のところあまり感じず、もっと読んでみたら気づくかな?

◾︎国立(高校教師)×仁居(非常勤講師→塾講師)
不幸を煮詰めたみたいな出自&内にこもってる受け…という苦手な設定に序盤は読み進められるか不安になりましたが、そこは凪良先生の力、最後まできっちり楽しめました。

佐田さんも4歳しか違わない若者だったのにと後々仁居が回想しますが、それでもやっぱり佐田はひどいと思う。国立と仁居は拾った猫を放棄しないできちんと2人で育てて飼って、可愛い飼い猫ニーニにしました。佐田は仁居に一度優しくしてしまったなら、野良猫とはまた違うので死ぬまで優しくしろとは言わないまでも、きちんと面倒みないといけなかったと思うわけで。
それより酷いのは両親なんだけどさ…一人残して逝くことは愛でもなんでもない。仁居を愛していたなら一緒に生きること以外の選択肢はないはずだ。とここで憤っても仕方ないのですが。

風邪の仁居が尻で圧迫されるところが好きでした。尻て。

2

静かに熱いなあ。

 なんていうか、とてもとても大好きで、読んでいると胸中にいろんな切なくて熱い気持ちがあふれちゃいます。



 受け様は、寂しさを抱えていた高校生時代に、恋人だった彼から「お前の愛情は重い」と放り捨てられた心の痛みを抱えている仁居。

 攻め様は、過去に妹が受けた性的暴力を忘れられす、性的な事にナーバスな国立。

 高校教師の同僚として面識のあった2人が再開して、子猫を拾って一緒に面倒をみる内に距離を縮めいてく。

『お前の愛情は重い』
この言葉が呪縛のように仁居を縛り、自分の気持ちを差し出す事に臆病になっていて、今いる場所から一歩を踏み出せない。

さびしさを足元にうずくまる老犬のよう、と思う仁居の今までが切なかった。

 国立視点では、控えめすぎる仁居へもどかしさを感じる国立に、私も一緒になって必死な気持ちになりながら読み進めました。


 大きな事件もないけど、静かに少しずつ確実に浸透していく想い。恋愛ってこんなに苦しくて切ないものなんだっけ。

 2人が、穏やかに笑いあっている姿を見られて、私までとっても幸せな気持ちになったのでした。

2人が飼っている子猫のニーニがまたとてもかわいくて癒されました

 題名もなるほどなぁ、とうなるしかなかったです。
導き出したイコールにならない答えをイコールにしたくてしたくての熱い気持ち。
似て異なる気持ちを納得させてもらった繊細な感情の機微。


 一度読み返そうと手に取ったら、何度も何度も読み返してしまう、とてもとても好きなお話です。

4

急展開よりもじっくり読みたい方向け

心につっかかりのある2人が、中々踏み出せずに衝突したり理解しながら、ゆっくりと心を開いていくお話。

最初、佐田と仁居の出会いはドキドキキュンキュンするBLらしい展開。夢みたいでつま先で歩く感じの恋が綴られているのに、途中から雰囲気が変わります。ここらから、仁居の暗い感情が入り出し、国立と出会っても飛びつくわけもなく、客観視しながら徐々に近づく距離なんです。
高校生で受けた傷は長年仁居に侵食し、そんな簡単には吐き出せないものになっていたのでしょうね。ここで全てを言えたら上手くいくのにという場面が多く、もどかしさとせつなさが入り混じった感情に襲われます。
国立も妹を守れなかったという負い目やその現場が脳裏から離れず、恋人との付き合いに障害となり今まで長く付き合うことができなかった人。
でも、そんな人だからこそ仁居を焦らすことなく、少し時間をかけて近づいてくれたのかなぁ。その距離感がすごく良かったです。
妹も、仁居と波長が合うのか、仁居がゲイという事もあるのか、一緒にいる時の会話が自然でいいなぁと思いました。

ラストも良い終わり方で、この二人は一つひとつをゆっくり乗り越えて進めていく恋人なんだなぁと、ほっこりしました。

1

読みやすい。ただそれだけ。

そんな世間は狭くないんじゃないかなぁ?
過去関係があった人とその後一生会う事ないのが普通だと思うんだよ。
で、微妙な時期にそういう再会みたいなご都合主義なストーリー展開。くだらない展開だなあ。
過去は回収する必要ないんじゃない?

読みやすいとは思うんですけど、根底にある思想とか思惑みたいなものが透けて見える感じがする。
そこが合わないんだろうな。

いつもながら受けが不幸な過去設定ですが、進行する現在はそうでもないから読みやすい。私には何も残らなかっただけなのよね。



2

好きとしかいいようがない作品

「たくさん愛して、愛されて、幸せに生きてって」と言い遺して身を投げた母親。
「おまえの愛は重い」と言って去っていったかつての恋人。

多感な時期のそれらによって心に枷をはめられ「愛してほしいなら愛しすぎないように」と自制する仁居。

背景は重い。
重いけれど、感情に溺れることなく物語は淡々と、そして丁寧に紡がれていく。

ふつーだったら、こういう不憫受けには完璧なスパダリを当てがって、単なる不憫受けの救済ストーリーで終わらせてしまうところを、これまた心の傷を抱えている国立(でもその傷はパッと見わかりづらい)という攻めを用意したところがいい。

仁居も、国立も、国立の妹の千夏も他人からの暴力(精神的であったり肉体的であったり)によって傷つけられてしまった人たちだけど、一進一退しながらも少しずつ過去の闇から抜け出ていこうとする様子がとても良くて、人によって傷つけられてしまった傷を治せるのってやっぱり人の力なんだなぁって思います。

私は、仁居が国立の腕の中できちんと愛されていたかつての記憶を思い出していくところが何度読んでも泣いてしまう。
今回もやっぱり泣いた。

そして国立が仁居に言う「愛してるよ」
まさに「愛してる」という言葉以外見つからない、そういう気持ちが書かれているので読んでると心震えてくる。

久しぶりに読み返してみたけれど、やっぱり凪良先生の文章って好きだなぁとしか言えません。
自分じゃ思いつかないけれど、読んでみると、そう!こういう表現をしたかったの!!みたいな比喩表現があちこちにあって、好き。

5

グサグサ核心をついてくる

表紙の雰囲気が大好きなこの一冊。
章ごとに視点が変わり、国立も仁居もどちらの気持ちも違和感無くすんなり入ってくる感じでした。どちらか片方だけでなく、ふたりともが乗り越えたい何かを持っている組み合わせなのがすごく良かった。

仁居は過去の経験から一歩進んだと思えば半歩下がるような慎重さで、やっと少し心を開いたかと思えばすぐに自分を戒めています。当然国立との関係は深いところで全く前進しないのですが、そのじれじれ感というか、仁居の頑なさを物語終盤まできっちり書いてくれているところが好きでした。萌えとは違う納得があるというか。その臆病さがとてもリアル。
物語を暗くしすぎない国立の明るさは救われました。そして仁居との向き合い方がとてもちゃんとしている。細い糸の結び目をひとつひとつ解いていくような丁寧さ。お話は急展開だったりクライマックスに使えそうな展開がいくつもやってきて驚きますが、気持ちの動きはとてもゆっくり。全てが必然のような流れで、無駄なエピソードが一つもないように感じました。
ストーリーだけを追うと特筆すべきものはない一冊ですが、ふたりが心を通わせていく様子は神評価文句なしと納得させてくれます。
特にメインふたりや脇キャラのセリフ・モノローグで、さらっと人の心の核心をついてくるものが何箇所もあり、かなりグサグサ心にきました。引用するのはあれなので控えますが、本当に名言がたくさんあります。
他の作品も読んでみたいと思うタイプの作家さんでした。

4

愛の、才能、ないの。

抱えている気持ちは同じ、なのに出す答えがちがう。イコールにはならないものをイコールにしたくてたまらない、というお話…かなぁ。
「今日はここまで、続きはまた明日」と途中で本を閉じることが どうしても出来ず、最初から最後まで視界は ぼやけたままでした。

恋愛は二人で一緒に始めるのに、恋の終わりはどちらか片方が望むだけで訪れるんだな…と痛いくらい突きつけられる作品です。
誰かを好きになっても、その人と長くおだやかに過ごしている自分を想像できない。一方で、失ってしまう場面の方はリアルに思い描ける。そして そんな過去の恋愛のセンチメンタリズムに浸れるほどの強さは持ち合わせていない仁居。
彼が、前の職場の同僚・国立と再会し ゆっくり動きはじめるストーリー。

仁居の中で国立が、それほど親しくない人→頻繁に会う人→そばにいてもいなくても彼の気配はいつも自分の中にある…と特別な感情を抱く相手になるまで、そんなに時間はかかりません。
【自分は、国立を、好きになってしまっている】 この読点の位置を見た時、仁居の感情の揺らぎ 抑えきれず止められない気持ちが 私の中に雪崩れこんできました。

国立が本当に魅力的な人物でした。
でも彼もある事情から、恋をするときに生まれる高揚と怯えを人一倍感じ、
ーー今度こそ、どうか失敗しませんようにーー
と、祈りながら仁居との距離を はかりあぐねているのです。
今だ癒えず、越えることもできない自分を形作るさまざまなものに 絡めとられ足踏みをしている二人。

ひどく傷つけてしまうのも人だけど、怪我をした動物みたいになった時 優しく救いだしてくれるのも、また人。
複雑そうに見えて、実は自分は単純に作られている…それを思い出せる恋ができて本当によかった。
仁居と国立が共に歩んでいく この先のささやかな日常が、冒頭に出てくる川の名前のような日々でありますように…と願ったのは言うまでもないです。

3

とても好きです

凪良先生の作品の中で大好きトップ5に入ります。私はあんまり泣かずに済むので、読み返しができる!そして、すごく穏やかな幸せな気分で終われる、嬉しい本でした。
プロローグ2005、川べり暮らし、ノットイコール、ニアリーイコール、エビローグ2015と5編に別れていて、仁居さんと国立さんとニーニのお話です。

多幸川という川に両親は飛び込んでしまい、幼い仁居さんは叔父伯母に引き取られます。高校時代からは川べりのアパートで独り暮らしをすることになりますが、寂しさを感じ取ってくれた優しい人も離れていったため、次第に何かを持つこと、誰かと絆を持つことが出来なくなります。そんな仁居さんが国立さんに出会い、一緒に白い子猫を拾って・・・とお話は進みます。

好きな言葉、文章があちこちに散りばめられていて、じわーっと心に染み入ります。川がキーアイテムみたいになってるからかな。思いを水に関係ある言葉で表現している箇所が印象的でした。いつまでもひとところに留まっていられないのだから、変化を恐れず、川のように流れていっても大丈夫なんだよと励ましてもらっている気がします。現実にやり直しはなかなか難しいですが、この二人のお話を読むと救われる気持ちになる、そんなお話でした。

5

つい感情移入してしまう丁寧な人物描写でした

ちるちるでの高評価が気になって購入しました。凪良ゆう先生の作品は初めてでしたが、正直言って大当たりでした。

自分も過去に似たような経験をしたことがあったため、仁居にかなり感情移入してしまい、前半はほとんど泣きそうになりながら、あるいはしばしは泣きながら読んでいました。重いって言われるのはホントに堪えますもんね。読み終わったあとは仁居の真似をして窓辺で冷凍庫に入れておいたお酒を飲んだりしてました(笑)

あとがきにもあるように、物語の中では大きな事件が起こるわけでもなく、その代わりに視点転換などをしながら丁寧に二人の気持ちが描写されています。仁居から国立に視点が変わったときに名作を確信しました(笑)

登場人物たちのなかには一部を除いて悪い人はおらず、仁居のトラウマの原因である佐竹も悪人ではなかったことは、物語の世界やさしいものにしていると思います。ほっこりとする一方で少し物足りない気もしましたが(笑)

凪良ゆう先生の作品としては中間的なところに位置しているらしく、もっとダークな作品も読んでみたいと思わされました。とはいいつつもしばらくはこの作品を何度も繰り返し読むことは確実になりそうです。

8

キレイな心に触れられる

凪良ゆう先生の小説をひたすら読んでます。先生の描く心理描写がこちらの作品も素晴らしく、どんどん引き込まれました。

感情移入して、国立さんなら大丈夫、受け止めてくれるから!とか、2人なら同じ想いで乗り越えれるよ!とかどちらも応援したくなるベストカップル!!
2人の気持ちを、まどろっこしく思いつつ、そこに萌えます!

捨て猫を拾い大切に育てる2人、ホントに健気で愛情深くて心が綺麗です。そんな2人の心に触れて読み終わりも心地良いです。

4

イコールじゃないからこそ

「おまえの愛情は重い」
高校生の時、仁居は恋した相手にそう言われて失恋します。
それからは恋をする度、重荷にならないように、相手と一定の距離を置くようになるのですが、いつも上手くいきません。
いつしか仁居は、自分はちょうどいい距離感で人を愛せないと孤独を受け入れるようになりました。
27歳、英語の非常勤講師になった仁居は、以前勤めていた高校の数学教師・国立と偶然再会します。
同じ高校に勤めていた時には、ほとんど関わりが無かった二人。
捨てられていた子猫を二人で介抱し、人懐っこい国立と過ごすうち、仁居はどんどん国立に惹かれていきます。が、過去の失敗から仁居は恋愛に臆病になっていて・・・・・・というお話です。

正直なところ読み始めは、少々読み難そうな印象だったんです。何だか淡々とゆっくりで停滞感があって、これはちょっと忍耐力が要りそうだぞ、と・・・
でも、仁居が窓を開けて呼ぶところで、その停滞感が流れ、すっと消えていきました。作品の空気感が、登場人物とシンクロしているように思いました。
凄く透明感があって、綺麗な作品だと思います。
人懐っこい国立にもいろいろあります。悩みも、トラウマも、傷も。
きっと皆そう。それでも皆生きていて、日々を何とか乗り越えようとしている。そんな、ある意味当たり前のことを思い出させてくれました。
本当に、大きな事件なんて一つも起きません。ただ、仁居と国立の日々が丁寧に綴られていくだけ・・・なのに、物語がちゃんと成立しているのは、本当に凄いと思います。

人と人って、元々ノットイコールなんだと思います。
相手のことを分かって理解したつもりでいても、相手と自分が同じ気持ちだと思っても、それは絶対にイコールじゃない。
だけど、それを二アリーイコールに近づけていく努力。それは話し合うことだったり、自分をさらけ出すことだったり、触れ合うことだったり・・・楽しいことばかりじゃなくて、時に喧嘩をして、傷つけあうこともある。
そうやって二アリーイコールにしていくことの大切さ、みたいなものを静かに描いた作品です。
物語の最後で仁居が語る「感じる場所は心にもある」という言葉に、ぐっと来ました。
エロい話も勿論大好物です。でも、セックス描写の有無じゃなく、相手が心の感じる場所に触れる幸せな瞬間。その瞬間が描かれる作品が読みたくて、私はBL小説を読み続けているんだと思いました。

13

しみじみと、いいお話でした。

凪良先生の小説は10冊以上読んでますが、今のところ、これがトップ3には入るくらい好きです。

最初、高校時代の初めての恋で心に傷を負った受けを抱擁系の優しい攻めがゆっくり癒していってくれる、みたいな話かなと思って読んでいたのですが、最初のお話「川べり暮らし」のラスト、豪雨の中、携帯電話で攻めの国立くんが受けの仁居さんに、これまでの恋人との関係がうまくいかなかった原因を告白するところで、ちょっと予想外の展開に。
それまで、こんなにいい雰囲気なんだから、攻めはもう少しはっきり付き合ってほしいって言えばいいじゃんと思っていたのですが、それができずに、好きになるほど二の足踏むのがすごく納得できました。国立くんもすごくセンシティブな心の問題を抱えていたのね。まさにニアリーイコールなふたり。

その後付き合いだしてからの、ゆっくり歩み寄って仲を深めていく様子もすごく素敵でした。エピローグの「俺の一番感じる場所は~~」のくだり、特によかったです。仁居さん、派手さはないけど、情が深くていい受け。国立くん、いい人と付き合えてよかったね。

二宮先生の繊細なイラストもよく合っていて素敵でした。優しく癒されたいときお勧めです。

8

何度も胸が切なくなるお話

個人的に凪良ゆうさんの作品の中で五本の指に入るくらい好きな作品です。時間をあけて何度も繰り返し読んでは萌えています。

内容としては、控えめな受けが優しい攻めによって心を開き、自分の過去から解放されていくというようなお話です。過去の恋人に、お前の愛は重いと言われたことで愛することに臆病になった受けの仁居。そんな彼を歯がゆく思いつつ、真剣に向き合う攻めの国立。国立にも実はトラウマがあり、彼も恋愛について悩みを抱えていました。そんな2人が付き合い、本当に分かり合うまでを描いたゆっくりとしたストーリーがとても美しかったです。
作品の視点は、大まかなまとまりごとに仁居→国立→仁居→国立と変わります。私は、交互に視点が変わる方が好きなのでこの構成は嬉しかったです。
いろんな素敵なシーンのある中、凄く印象深い場面があります。それは、国立が仁居の本当の姿を垣間見るシーンです。デートの後、やっぱりもう少し一緒にいたいと思った国立が仁居の家に引き返した時、真っ暗な部屋の窓際できつい酒を飲み、縮こまってる彼を発見します。仁居の周りに広がる、どうしようもなく重い孤独を初めて見た国立が、本当の彼について疑問に思うシーンでした。仁居の孤独がこちらにもひしひしと伝わり、とても印象的でした。好きな本でも、時間をあけて読んだら大まかなストーリーさえ忘れてしまうことがあるのですが、この本に至ってはこのシーンだけいつでも鮮明に思い出せます。それくらい胸にグッときたシーンでした。

10

ニーニの存在がアクセントに

電子にて。あー好きだ。この話、すっごく好き!!
両親の死、孤独、過去の恋愛から傷を負って、心に幾重にも鎧をまとった仁居が、国立との出逢いによってゆっくり心の鎧が剥がれていくところが良い。
国立目線のストーリーも、心を掴まれる思いだった。
国立の、仁居に対する深い愛にジーン。何よりニーニが可愛すぎてもう!!
ニーニの存在がアクセントになってたと思う。
ニーニと、仁居と、国立と、3人で幸せに暮らして欲しいな。
★5つ !!

2

言葉の振り子

凪良ゆう先生の本が読みたくなり、手に取りました。
読み終わってみて。
凪良先生の書く言葉や比喩は、どれも美しいなぁ、という感想でした。
読んでいて、とても心地よかったです。
今回自分に合いそうな、癒されそうなものを選んでみました。

癒される…というものとは違いましたが。
優しい気持ちになりました。
長いトンネルからやっと脱け出たような、ちょっぴりホッとするような読後感。
トンネルと言っても、陰々鬱々とか泥々とかいう感じではなくて。
大事な何かを見失っているような状態から。
あっ、これだった、と見つける感じです。


高校で非常勤講師をしている仁居恭明(にいやすあき)は、塾と掛け持ちの仕事をしながら川べりのアパートで一人暮らし。
忘年会帰りの電車内で、以前少し勤めていた高校の教師、国立遥(くにたちはるか)と偶然再会します。
一緒に働いていた時は、ほとんど接点が無かった二人ですが。
勤めていた頃、繁華街で偶然お互いのプライベートな一面を目撃した事がありました。

実はお互いの家が近く、一緒に食事をしたりするようになります。
そんなある日、二人は猫を拾います。
猫の飼い主が見つかるまで、悪戦苦闘しながら国立の家で世話をするようになります。
猫の事などを通じて、気持ちが近づく二人。
でも二人には、それぞれが抱えるトラウマがあって…?


この本は、
「プロローグ2005」
「川べり暮らし」
「ノットイコール」
「ニアリーイコール」
「エピローグ2015」
にわかれています。

プロローグは、実際には2005よりもずっと前の幼少期から始まります。
幼い頃ある人の言葉と、高校時代のある人の言葉。
二つの言葉に縛られて、振り子のように右に左にと引っ張られて。
人と関わる度、恋をする度に、本当の自分を見失ってしまいます。
真実よりも、繕う事に囚われてしまいます。
言葉って怖いですね…。

仁居のトラウマは、恋に盲目な時には誰にでも起きそうな事からのやり取りで。
でも孤独な身の上に、まだ少年との境目の年で起きた事で。
だからこそ、言葉は刃になって、仁居の心に深い傷を残します。
もしかしたら、一生消えないかもしれない傷で。

この仁居の深い傷が、見えない膜が。
国立やその周辺の人達との様々な関わりで、自然にすぅ~っと消えていきます。
仁居が、言葉の呪縛から解放された時。
読んでいるこちら側も、心にスーッと爽やかな風が抜けるような感覚になりました。
これぞ、凪良先生マジックですね!

国立側のトラウマについては。
家族との関係の中、後悔からの傷でした。
決して国立自身が悪いことをした訳では無いのですが、彼の心に深い爪痕を残します。
国立の家族が受けた過去のショックな出来事については。
同じ女の身として、古傷が疼くような感じでいたたまれない気分にもなりました。
しかし、皆が完全では無いにせよ。
それぞれが一歩、また一歩前進している事が嬉しい限りです。

それにしても猫のニーニ、可愛すぎる!
川べりの窓辺に座る仁居の姿も、ニーニが一緒だと、なんとなくほのぼのした気持ちになります。
生き物の癒しパワー恐るべし。
そして、凪良先生の後書きにある生き物との暮らしエピソードに、更にジンときました。

二宮悦巳先生のイラストも、お話の繊細さに合っていて良かった~。
国立と仁居とニーニのスリーショットは特に、どれも好きです♪
凪良先生、二宮先生、素敵なお話とイラストをありがとうございました。

2

根暗受。シチュ萌。

やわらかくてもだもだした感じが、とても良いよいお話でした。
生い立ちのせいとは言えないんじゃないか?ってほど、受が根暗すぎるのが魅力減なのでした。
妹のエピソードも踏まえた上で、
もっとがんばれよお兄ちゃん!!!
と言いたい。
シチュ萌でこの点数。

1

時間の流れが心地よい

ゆったりと流れていく時間の流れに、自然に入り込んでいきたくなるような、最初はじんわりと涙が、最後はポカポカと心あたたかくなるお話です。

1

紅茶に角砂糖が溶けるようにゆっくり甘くなる恋

大泣きするだろうなぁと思いながら読み始めましたが、ゆっくり話が進むので、こっちもゆっくり読めて、泣きたい気分にはなったけど、それがじんわりほどけていくような、甘くて優しくてほろほろした、紅茶に溶ける角砂糖のような恋のお話。
傷を抱えた人たちはみんな苦くてつらいけれどど、お互いを思う気持ちは甘くて優しくて、それを投げ込まれると、最初は受け入れられずに形を保ったままのそれが、だんだんほどけて、崩れて、染み込んで、溶け込んでいく感じ。紅茶に角砂糖が溶けるみたいに、ゆっくり混ざって、ゆっくり甘くなる、そんなお話でした。
じんわり染み込んで、真綿で首を絞められるように切なくて、あったかくて、泣けるけれど、ぼろぼろ泣くというよりは、ほろっと来る感じの、優しいお話でした。呼吸がゆっくりできるような気持ちになります。
穏やかな恋というか、傷を抱えて、隠そうとして、近づくうちに、さらけ出して、隠し続けて、それを辛抱強く待って、時にはゆっくり暴こうとしてみて、お互い怖いけれど好きだから、手探りで幸せを見つけようとしている感じで、激しい感情はあるけど、それを見せないのがいじらしく、切ない。

8

一番感じる場所は身体じゃない

BLアワードノミネートということで、
お初の作家さんですが読んでみました。
泣きました><
今まで読んだ作品の中でも、
(‥お恥ずかしながら、電子書籍だけでも200冊以上)
確実にベスト10には入ると思います。

過去の恋愛で、あまりに深く傷ついたがために、
次の恋になかなか踏み出せない受様(仁居)。
その間なんと10年!!
10年のわだかまりを溶かすようにゆっくりゆっくり
お話が展開します。
恋の進展はゆっくりなんですが、中弛みなんてのはなく、
むしろ、それくらいゆっくりじゃなかったら、
仁居は尻込みしてしまって、
上手くいかなかったんじゃないかと思います。

途中「ノットイコール」では
国立目線での話もあって、攻様目線スキーな私としては
大満足でありました。

4

過去に囚われ人を愛することに臆病になっている二人の出会い

久しぶりに電子書籍を購入しました。
切ないお話をじっくり読みたいな、と思った時見つけたのは本作品です。
読みたい時にすぐ読めるというよさを実感しました。
書店に飛んでいかなくてもネットで購入して翌日くらいには手に入ることもありますが、今すぐっというのは自分の書棚にはじめからあったみたいな贅沢を味わいました。
挿絵なしのものもあるようですが挿絵は必需だと思うので購入したものが、挿絵入りでうれしかったです。

仁居は恋人だった人から重いと言われたことで、気持ちを抑え本心を見せられれなくなった。
国立は妹思いの心優しいお兄ちゃん。

仁居は呪いの言葉に縛られているようですごくかわいそうになりました。
亡くなった母親からは「たくさん愛して愛されて幸せになって」という言葉。
寂しい身の上から出会った恋人に素直な気持ちをぶつけてしまったらことから「重い」と否定された言葉。
自分の想いを正直に伝えてしまうと重すぎて嫌われると知った後は、愛しすぎないように想いを隠すようにしていたら本当に好いてくれているのかと疑われ離れていかれてしまった。だからもう恋などしない。失敗した喪失感で潰されたくないと思うのはもっともなことです。

二人の出会いから近づいていく関係が、段階的に短編から中編程度の章わけされた作品でした。
元同僚、友人、恋人未満、恋人と変化していく関係の中で二人のトラウマになった過去の出来事があきらかになって昇華されていく展開とともに恋愛関係も進んでいくという流れがよかったです。

大人になった仁居が言うように、過去の出来事が「若さゆえにやらかしたこと」と思えても17歳の仁居にとっての狭い世界で全てが否定されようでその後10年にもわたって彼を縛り付けてしまうことになるのですから元彼の言動は罪深いと思います。
元彼にしても20歳過ぎの未熟な青年だったとしても、未成年の寂しい男の子を誘惑しておいて最後はそれかと怒りさえ覚えたので、時が経って本心がわかったのはよかった。
そして、そこのところはもっと掘り下げてというか元カレ視点の物語がありそうなので、できれば彼のその時の想いや葛藤と新たな恋のお話でスピンオフができたら読みたいと思います。

2

傷ついた二人の優しいお話

『美しい彼』がとても良かったので、作家読み。
川がたゆたうように、穏やかに穏やかに進んでいくお話。
エロも少なめだし、ガッツリした話が好きな私には物足りないかな?と思いながら読んでいたのに、なぜか後半、仁居が子ども時代の幸せな記憶を思い出すあたりで、ポロポロ泣けてしまった。

今回めずらしく、電子書籍でなく紙の本で読んだのだけど、表紙といい、文字組みといい、もちろん内容といい、なんとなく上質で、ゆったりしていて、良かった。傷ついた二人の優しいお話に、すごく合ってました。

蔦の這うレトロなアパートの二階の窓辺から川を眺める、美しい仁居の姿が、何だか竹久夢二の絵みたいで、現代のどこにでもありそうな川の近くのお話なのに、話に浸っていると、絵の中の別世界に引き込まれそうでした。

肉体の快楽ももちろん大事だけど、「身体よりもずっと敏感なところ」で感じる気持ちよさを、読みながら感じさせてもらいました。良かったです。

1

一文に心をつかまれる

凪良ゆうさんの作品は、いつも尻込みしてしまってよほど自分に余裕がある時でないと読めない。それは決して悪い意味ではなくて、きっと抜け出せなくなるから・・・という意味で。
夏に発売されたこれを年末に読んだ私を褒めてやりたいと思うくらい、いいタイミングで読んだと思います。
今回は序盤こそ孤独な青年の日常とトラウマなどのツラい感情を描いているのですが、私は結局全体的には甘い日常を描いてくださっていたように感じ、読後感も明るい感情のままでした。なんだかカウンセリングを受けているみたいな、不思議な感覚。甘いのですがカラミは少な目でさっぱりしてます。
私はその全体像よりも、一文一文に時折グッと心を引き寄せられました。あとがきで先生が『人づきあいが絶望的に下手なわたしにとっては人の心の中こそが一番の事件』とおっしゃっていて、共感しすぎて倒れそうになりましたし、お話の中で季節は移り変わっていきますが、孤独の中に必ず温かさが灯る、そんな表現が冬に読むのにぴったりだった気がします。
『氷点下20度の宗谷より、休日のショッピングモールの方が寒い』とか『年末の街は人が多すぎてさびしくなるから好きじゃない』とか、ちょうどこの時期に自分を見失いそうなタイミングでこれを読んでふと街ですれ違ういろんな人に目を向けてみたりして。
重い=愛情が深い で判断する恋愛もそうでない恋愛もあるだろうし、友情にも当てはまるのかも。その「さじ加減」で悩むことは多かれ少なかれ誰にもあるのではないかな、と。
全く動物好きではないのですが、作中に出てくる猫ちゃんにも癒しをもらいました。ぜひ冬のうちにゆったりしたタイミングで読んでみてください。

2

トラウマ

攻じゃぁないが、
窓辺に座って自分がくるのを待ってるとか
かっ・・・・((ノェ`*)っ))タシタシ

今回もちょっと病み系ですね。
大丈夫。慣れてる
とはいえ、しょっぱなから豪快にトラウマごーごーなわけですが
挿絵の雰囲気も相まってすごく良い作品でした。
初めて好きになった相手に「重すぎる」と言われたのがトラウマとなり
母親の言葉も重なって恋に臆病になってしまっている受。
そんな彼の前に現れた一人の男。
嫌われないように、離れないように、重すぎないように。
そんな攻も過去にトラウマを抱えていて。

どんんどん明かされていく真実と
ひとつになりたいという葛藤と。
でもさ、なんだかんだいってもさ、攻がいうように
好きは洩れあふれてて、ちょっとくらい重いほうが
愛されてるって気がしてうれしい時もあるよねと
思ってしまうのでした。
トラウマだった初恋相手との再会~の話もあり。
結末がすっきり終われたのが良かったです。
でも次は明るいの読みたいかなー

3

愛しすぎないように

過去のトラウマを抱えた二人の教師のお話。
とにかく仁居の過去がせつなくて読んでいて胸が苦しくなります。
「愛されたいなら愛しすぎないように」
人を好きになるたびにその言葉を心で繰り返し、相手との間に薄い膜をはってしまう仁居。
一方で国立もトラウマを抱えていますが、仁居に対してはストレートにぶつかっていきます。

決して強引ではなく優しく踏み込んでいく国立、そして嬉しいけど愛しすぎないようにと一歩引いてしまう仁居。
二人の関係は縮まっていくのに、心の壁は埋まりきらない…
そんな二人の葛藤がせつなく、とても優しいお話でした(^^)

4

リアルだけどリアルじゃない不思議な読み口

読後、ディアプラスっぽい話だなーというのが最初に感じたことです。
黒凪良と白凪良の中間みたいな、どこかふわふわとしたセンシティブなお話。
特別何か事件が起こるわけではないけど、2人の間では結構事件になってるみたいな。
感情面にかなり重点を置いてきた感じがしますが、重すぎずに読める受攻両方トラウマ持ちのお話です。

両方とも結構ハードなトラウマにも関わらず、割と軽い読み口でいけたのは、偏に作中に登場する猫のニーニのおかげでしょうか。
ともすれば、ずしっと重量が増しそうなところに、絶妙なバランスでニーニが絡んでくるので、必要以上に悲壮感を纏わず、凄く自然と読み進めることが出来ます。

何てことはない日常描写が延々と続くので、ドラマチックな展開のお話が好きな方には物足りないのではないかと思いますが、たまにはこうした静かなのもいいかなと思います。
悪意のこもった嫌な人間が出しゃばってこないのも、楽に読めて良かったです。
トラウマを抱えたふたりが寄り添いながら、川べりの部屋でゆっくりと絆を育んでいく様子を、もう少しだけ見ていたいような、そっとしておいてあげたいような不思議な気分になりました。
必要以上に物が少ない殺風景な受の部屋でしたが、攻と一緒に住むことになり、少しずつ、少しずつ生活感のあるものが増え、そしてくだらないものなんかも溢れていくといいな、とそんな風に思いました。

そしてイラストが二宮悦巳さんなんですが、もの凄くこのお話にぴったりでした。
表紙の透明感はそのまま作品を映しだしていますし、清潔感はあるけど色気も含む絵柄が作品とシンクロし、相乗効果でよりお話を深く楽しめます。
どこにでもありそうなリアルな話ですが、抱える背景がリアルじゃないのも不思議な感じです。
マシュマロを含んだみたいに優しい味ですが、もう一度読むほどかと言えばそうでなかったり……自分の中で何とも言えない本当に不思議な位置づけのお話。

3

痛くて前へ進めない

23ページまで読んであまりに悲しくて一度読むのを止めました
家族や恋愛の事でトラウマがある方は辛くて読み進めるのが難しいかもしれません

仁居が経験した過去は余りに辛く、抱えて歩くには重く、でも投げ出すことも出来ずに、その場に過去と一緒にただうずくまっている事しか出来ませんでした

似た者同士、という言い方が合ってるのかどうか分かりませんが、痛みを知る国立との出会いは本当に救いだったと思います
ゆっくりゆっくり傷を癒していく流れに
自分の日常と同じ様に二人の日常も目の前にある様な臨場感がありました
BL小説なんだからもっと劇的にドラマティックな展開があっても!という気持ちには全くならないのが凪良先生の描く物語の魅力だと思います





3

引き込まれる描写に一気読み☆

この作者さんの文章はとても読みやすくて、いつも読み始めると途中でやめられなくて、読者を吸引する魅力があって大好きです。
心の柔らかい部分を丁寧に形が壊れないように繊細に綴り、それゆえに美しい心理描写がうかがえます。
攻め受けどちらも心に闇を抱えているのですが、両方の視点が読めてすごく良かったです。
どちらも相手を強く想っていて、読者はその温度に触れるので二人がうまくいくようにと、もどかしい気持ちで読み進めていきます。

以下ネタバレです。
あくまで個人の印象ですが、後半の高速での事故のニュースのくだりがこの物語には似つかわしくないくらい毛色の違う展開すぎて、前ふりから「?」という感じですぐにオチが想像ついてしまったので、あのような大事故ニュースではなく、もっとささやかなきっかけで新居の国立への気持ちが溢れたほうがむしろ意外性(というか読者の予想がつかずに)よかったかなと思いました。
あとスワンボートの比喩的な表現も読んでいてちょっと狙いすぎててクサいかなと思いました。有名な童話を彷彿とさせる、この物語のテーマでもある「幸せ、成長」に関する比喩なのはわかるのですが、その比喩のためだけのシーンに見え、そこだけ唐突な印象を受けました。「言い間違い(聞き違い)」ならともかく、「見間違い」というところもちょっと無理があるような気がします。
母親との多幸川の会話や川べりでの生活、というように川が物語に関係しているので、川や川の流れに関する比喩だったらより受け入れやすかったかな、と思いました。
新居が窓辺から川を眺めるシーンはとても素敵だったので、昔の男の一言が流せなかった、その言葉が淀みを作って幸せになれなかった新居の心境を川を使って比喩されていたら、もっと共感できた気がします。
読後感はとてもよかったです。

3

丁寧に丁寧に

少しの心の動きでさえ丁寧に描かれた作品だなって思いました。
ただ、仁居の過去が重くて……というか、過去が重い登場人物は他の人の作品にもいっぱい出てくると思うのですが、描かれ方が丁寧だからか仁居の気持ちに入り込んでしまって、胸が苦しくって読んでいる間中どんよりとした気持ちになりました。

BLに何を求めるか、その時の気分と求めているものが合っているか、重要だなぁと思いました。とてもいいお話だったけど、萌とは別の次元のお話でした。自分の求めているのはなんだろうかと、改めて考える作品でした。

1

我慢のひとの不器用さ

凪良先生の作品を読む度に、人間とはこれほどまでに相手のことを考えられるのか、自分の感情を殺すことができるのかと、自らの浅はかさを思い知らされます。
相手のことを思いやれる人の生き方が綴られていて、こんな風に物事を捉えられたらなと望んでしまいました。

受けの仁居と攻めの国立がそれぞれに抱える痛みを吐露し、和らげ、理解していく様はなんとも切なく、二人が寄り添いあっていく所以を感じとることができます。
「愛が欲しければ、愛しすぎない方がいい」と過去のトラウマで恋情をせき止めている仁居が、エピローグで国立に告げたある台詞が特に印象的でした。私の好きな恋愛ってこれだ~~~~~と万歳するほど。我慢だけで自分を律しようとしていた人が、不器用にも想いを口にする姿にきゅんとしました。

読後は涙にあふれ、読み返しても胸を熱くされる凪良作品は、なんだかこころの体操をしているようで好きです。普段使い慣れない琴線を揺さぶられ、それが心地いいのだと思います。

4

祈る様な気持ちで読みました。

ずっと漫画ばかりでしたが最近小説を読み始めたので、凪良さんの小説はこれで5冊目です。
表紙が美しいし、ちるちるさんの評価も高いので買ってみました。
前に読んだ4冊が当たりだったので、さほど不安はなかったのですがこれも当たりでした!素晴らしい!
トラウマを持つ二人が、静かに歩み寄っていく様が丁寧に描かれた作品でした。
さほど大きな事件もなく(事故はありましたが)エロも少ないので、淡々とした展開は読む人を選ぶかもしれません。
結構最初のうちから両思い駄々漏れなんですが、それなのに離れようと考えたり、手を取れなかったり、じれったい展開ですがそれがとても切なかったです。
付き合いだしてからもあまりに幸せ過ぎて、もしかしたら些細な事で別れてしまうかも?もしかしたらどちらかが亡くなってしまうかも?と不安になりながら、「お願い!幸せになって!」と祈る様な気持ちで読み終えました。そういう裏切り展開はなく、とても幸せなラストで癒されました。
恋愛の成就というよりも、「幸せになっていいんだよ」と自分自身に赦されるまでの物語な気がします。
二人と一匹、いつまでもお幸せに。

挿絵を敢えて隠して読んでいるのですが(通勤電車で読んでいるので)思い浮かべた情景が神田川並のボロアパートだったので、家に帰って挿絵を見て驚きました。お洒落アパート過ぎる!(笑)
あとすごく気になったのですが、仁居さんのお宅、2DKじゃない気がするのですが。説明だけだと、1DKか2Kですよね。
どうでもいいことですけれど。

神か萌×2か迷いましたが、この前に読んだのが「おやすみなさい、また明日」だったので、これと比べたら萌×2かなということで、この評価で。限りなく神に近いです!


2

ああ……凪良作品だな……。

『ここで待ってる』から間髪いれず発行された『ニアリーイコール』ここで待ってるの方が主人公の子供だったり相手の家族を物語に絡め基本は色々抱えて重たいのですが、まだ軽い気持ちで読み終えられましたが、この作品はガッツリ影があり、重いです。カップル二人ともに過去に一物を抱え、悩み、囚われ続けています。
家族のトラウマを抱え、過去の恋人に依存し愛が重すぎて捨てられた受けと、妹にまつわるトラウマを抱え、性的交渉ができなくなる攻め。
そんな二人が仲良くなり恋に落ち、平坦で行くわけがありません!
でもお互いが歩みより近づいていく葛藤や思いが、作者らしい書き方だなと思いました。
気持ちが重なっての性的交渉が完全じゃないって所もある意味リアルだなと。ラブラブになる→トラウマ克服→ガンガン性的交渉をする!だとこの作品が作品である意味がないですよね(笑)
うまく行く日もあれば駄目な日もある。人間だから仕方ないんだと思わずにはいられないです。

何か困難な試練が二人を待ち構えているとかは一切無い本当人間にスポットを置いた作品です。
エロシーンは当然少ないのでBLにエロシーンを求めている読者様には肌に合わない作品だと思います。

6

地味だが、じんわりと味わい深い作品

心に傷を持つ二人が、少しずつ近づいて寄り添って心を開き、
互いの傷を抱えて生きていけるようになるまで。
とりわけ大きな事件が起きるわけではないのだが、
モチーフになっている川のように、静かにあるいは時に激しく
ひと時も止まらずに流れ続けていく人の想いを
丁寧に描いている良作。

川べりの古びたアパートの窓から、孤独を抱えながら川を眺める仁居。
幾重にも重なった傷を抱えながら、他人に対して一線を引いて
静かに諦めるようにして生きている彼が出会った
以前の同僚で一つ年下の高校教師・国立。

明るく思いやりのある国立にも、実は越えられない傷がある。

物悲しく透明感のある雰囲気の中、
少しずつ近ずいていく二人の間には
真っ白い子猫がいて、それぞれの心に温もりを届ける。


後半、かつて仁居に深い傷を刻んだ佐田が登場するのは
いささかご都合主義な気はしたのだが、
そこで安易な和解やあるいは対決を持ってこなかったのが
リアリティを維持していた。

「人間は立っているだけで影ができる」
「俺の一番感じる場所は身体じゃないから。」
など、心に響く台詞も秀逸。


個人的には時々あざとさが鼻に付く時がある凪良作品、
味わい深く地味で丁寧なこのような作風の方が好み。
もう少しコミカルな印象だった二宮悦巳さんの、
静かな雰囲気の表紙や挿絵もなかなかいい。

11

トラウマを持った二人のゆっくり流れていく恋

はぁ~~。いいお話だった。
読み終わった後も余韻が残る幸せなラブストーリーです。
大きな事件が起こるでもない、淡々と時が流れて、二人がトラウマを乗り越え、自分達の愛の形を作っていく。

私はあまり孤独を感じた事が無く(一人でも全然寂しさを感じない図太い女です)主人公の仁居(受け)の気持ちを共感する事は出来なかったんですが、私の中での孤独って絶望と隣り合わせの感情だと解釈しております。それを乗り越える為の勇気ってすごいパワーが必要ですよね。

お話とは少しそれてしまいましたが、仁居の国立(攻め)へのくん呼びが
萌えました。これは年上受けの醍醐味ですよね!

猫のニィニも可愛かったですねぇ。うちにも猫がいますがカーテンは半年に1回は買い換えてます(苦笑)

国立の妹さんも幸せになって欲しいな。

7

ゆっくりと流れる幸せ

過去に苦しめられながら生きるもの同士が出会う話。二人の想いがゆっくりと丁寧に綴ってある素敵な物語でした。

愛しすぎると嫌われてしまう引きすぎると離れてしまう。愛されずに生きてきた仁居が国立と出会い過去とさよならするまでずっとドキドキしながら読ませて頂きました。最初、仁居がまた誰かを失うことが怖くて逃げているシーンばっかりで国立も同じような感じだし。真っ暗な寂しさで終わるのかと思ってましたが幸せになってホッとしました。

私は仁居の気持ちにすこし共感できました。帰ると誰もいない暗い家。自分で電気を付けないと明るくならない。食事も独り。人に『頼って』断られた時、人と関わることを避けようとします。それが自分と似てると思いました。

エロ度がかなり少なめで、というかほとんどなかったですけど。こういう切なくてほのぼのとしてて深く二人の想いを追いかけている話もいいなと思いました。

7

俺の一番感じる場所は、

昨年から、様々な色合いの作品を発表し続けていた凪良先生。
今回の初ディアプラス文庫は切なさ満載のひっそりとしたお話になりました。
過去に囚われて、恋愛することに臆病になっていた主人公・仁居が、これも、過去に囚われて恋愛関係が上手く続けられない国立と、子猫を拾った事をきっかけにして、少しずつ歩み寄っていく。
恋にのめり込んで、また傷つくのを怖れ、いつでも戻れると自分に言い聞かせながら、本当に少しずつ。

これ、読んでいて、最後バッドエンドになたらどうしようって、ドキドキした。
でも、ちゃんと、仁居は過去は過去として乗り越える事ができた。

エロはほとんどないし、主人公は傷つくのを怖れるばっかりでじっとり暗いし、お相手のトラウマは妹がらみ。
おまけに、語る視点は次々変わる。
この本、BL小説初心者さんにはオススメできないが、このジリジリ感は小説の醍醐味。
私的にはツボだった。

17

幸せを見つける物語

透明感のある美しく透き通るような表紙がぴったりのストーリー。
心情の変化が丁寧に優しく紡がれる物語でした。

主人公の仁居は両親を幼い頃に心中で亡くし、引き取られた叔母宅からも見放され、17歳という若さで一人暮らしを始めた。
さらに17歳の時、寂しさを埋めるように出会った男に、「重い」と無下に捨てられた記憶がこびりついている。

そうした辛い背景がありますが、物語を一言で表すと「優しい」という印象。読後には温かい気持ちになれます。

素直になれず相手に合わせてばかりだった仁居が、おおらかで爽やかな国立と共に過ごす中で寂しさを克服し幸せを感じていく。

冒頭、
幼い頃の仁居が今は亡き母親に問いかけます。
『しあわせって?』
母親が答えます。
『恭明とこうして手をつないでおうちに帰ること。おうちでおかあさんと一緒にプリンを食べること。おとうさんと三人で遊園地にいくこと』

昔確かに感じていた「幸せ」。今は見失ってしまった「幸せ」。
『ニアリーイコール』は、27歳になった仁居が「幸せって何?」という問いかけに対して、再び答えを見つける物語。
その答えの鍵になるのが、恋人の国立と子猫ニーニの存在です。

ちなみに凪良さんは視点の変換がとても巧いなぁと毎度感動するのですが、今回も受け視点→攻め視点→受け視点と視点が絶妙なタイミングで移り変わります。
その過程で、特別大きな起承転結の「転」が起こるわけではありません。自然に、自然に、しかし確実に心の中が激動していくのが感じられました。

これからも仁居と国立とニーニが明るい日差しの差し込む窓辺で幸せな日々を暮らせますように。

8

優しい、思いやりにあふれたストーリーでした

作家買いです。

もともとトラウマを持つネガティブな受けが、攻めに愛されトラウマの呪縛から解放される、という設定が好きなこともあってあらすじを拝見した時から非常に楽しみにしていました。
内容はすでに書いてくださっているので感想を。

受けの仁居が恋愛に対して臆病になったのは初めて好きになった彼に「お前の愛は重すぎる」と言われたことがきっかけではあります。
が、その前に彼の両親が自ら命を絶ってしまった、その時に「たくさん愛して、愛されて、幸せに生きていってほしい」と言った、母親の言葉にも縛られてるんですよね。

愛したいし、愛されたい。でも愛されずに生きてきた自分は「愛する」と言うことがどういうことなのか分からない。

両親亡き後、引き取ってくれた母方の叔母の家で、自分の両親のように甘えることはできず、そして従姉妹の子の言動がきっかけで若干17歳にして叔母の家を出て一人暮らしを始める。
これがどれだけ仁居の心を傷つけることになったのか、彼の気持ちを考えると涙がでました。

姉の子を引き取って育てることにした叔母の気持ち。
妻の甥だから引き取ったけれど、自分の子を傷つける言動(これは嘘なわけですが)をされたからと事実確認もせずにまだ子どもである仁居を家から追い出す叔父。
自分の気持ちに納まりが付かないからといった、ごく単純な幼い気持ちで仁居を傷つけ、数年後には「あの時はごめんね~」で済ませてしまう従姉妹のみちる。

どの登場人物の気持ちもダークな部分も含めて非常に理解できる。人間の心のブラックさを正面から表現しているなあ、と。

そして従姉妹のみちる本人はそれほど酷いことをしたつもりがなく、それでいて相手の心を殺してしまうほどの言動の書き方に、「人を傷つける」ということがどういうことなのか、が端的に描かれていて感心します。
凪良さんの作品に惹かれるのは、こういう他者を思いやる気持ちとか、反対に人を傷つけてしまう言動といった心の機微が細やかに描かれているからかもしれません。

一方、攻めの国立も過去のトラウマを抱えているため、恋愛がうまくいかない。攻めにもトラウマがあるってちょっと珍しいパターンだなと思って読みました。

お互い、自身のトラウマを抱え、それでも相手を大事にしたい、という優しい気持ちに溢れています。
が、その気持ち故に空回りしてしまいすれ違う部分もあってハラハラしながら読み進めました。

仁居にトラウマを与えることになってしまった、仁居の当時の恋人の気持ちもすごくよく分かるのです。
まだ17歳で、大きなトラウマを抱えたった一人で生きている少年。彼を丸ごと受け止めるにはまだ21歳だった彼にはしんどいことだったのでしょう。

この作品は仁居と国立の恋愛、と言うだけの話ではなくて、彼らを取り巻く周囲の人たちの気持ちの機微も丁寧に描かれていて、非常に感情移入しやすくまた読みやすい。
国立のトラウマの原因になったのは国立の妹に襲い掛かった犯罪が原因ですが、直接的な表現はないですが女性が襲われる、といった内容を含むため苦手な方は注意されたほうがいいかもしれません。終盤では彼女もゆっくりと前に進めるようになり同じ女性として安心しました。

子どもの頃母親と色々な話をした『川』。辛いことが多かったけれど、それでも自分は両親に愛されていたんだと気づくことが出来たのもの国立おかげで、本当に良かった。これから二人でずっと幸せでいてほしいと願ってやみません。

『川』の使い方も非常にお上手。穏やかに流れる時もあれば、濁流となって流れることもある『川』。まさに仁居の気持ちと上手くリンクさせた情景で、さすが凪良さんと感心するばかりの神作品でした。

17

「さびしさ」を手放すまで

BLの物語のはじまりはさまざま。
ちょっと昔の王道といえば「王子様が窓辺の姫をさらう」
(または石油王が庶民をさらう、でも応用可)ですが…

このお話はというと…
窓辺の姫は、質素なお部屋でひっそりと暮らすことを望み、
王子様なんて待っていない、むしろそっとしておいて欲しい様子。
窓の下から姫に声をかける王子も、
脛に傷を持っており、姫をさらうほどの強引さを持っていない。

そして、ふたりを邪魔する魔女はおらず、
じゃあ誰と戦うかというと、それは自分自身のうちなる嵐と戦うのです。
誰かの手をとるか、その手を信じるか?
日常はかわらず、淡々として、外からはわかりません。
自分のうち側にある嵐のなかを、一歩一歩ふみしめて進む。
恋の嵐にさらわれることもないのです。

では、恋に落ち、両思いになり、それで嵐はやリ過ごせたのか?というと、まだまだ。両思い=幸せに「耐える」ような仁居。
それ違うから!と、途中まだまだ続くわけです。両思いのさきがあるのが、凪良作品らしさかと思います。
スローペースゆえ、そのぐるぐるとした思考に我慢ができない読者もいるはず。
おそらく、仁居や国立にどれだけシンパシーを感じる事ができるか?で、
このお話が好みかどうか、変わってくると思います。

話は変わりますが、私も女ひとり人暮らしです。
ひとり暮らしは楽でいいです。平和です。
風邪のときは困ります、重たいものをしまうときも困ります。
だれかに頼って断られたら、より惨めな気持ちになると思うと、
なんとかひとりで乗り越えます(笑)
でも、その「楽」さは毒だし、ひとりで乗り越えられる「たくましさ」は武器ではないんですよね…
ええ、十分わかっていますとも。

そんなふうに、仁居に共感しつつ、地味さと、
BLファンタジーと萌えがバランス良く配置されたディアプラスらしい作品でした。

3人(+1匹)で囲む鉄板焼きや、夜中に恋人とイタズラのようにつくるサンドウィッチ。
凪良さんは“さびしさ”を書くのも上手ですが、そんなささやかな“幸せ”の描写がとてもいいですね。
ケーキのいちごといい、からあげといい、チョコレートと柿の種といい、つぎは何かな?と楽しみです。

14

あなたがやさしく触れる場所

凪良ゆうさんの作品は、
これまで何冊か手に取って読んだことがあるのですが、
今作は今までの中で一番心に寄り添ってくれるような
親近感を覚える、やさしくあたたかな物語でした。

幼い頃に両親が他界し、
引き取られた叔母家族とは埋まらない溝があり
17歳にして、ひとり孤独の中へと追いやられた仁居。
そして追い打ちをかけるかのように
当時高校生の仁居にとって、唯一の居場所だった恋人・佐田からの
『おまえの愛情は重い』という言葉で、決定的に打ちのめされてしまう。
それから10年、
一定の距離を置いて他人と接する・非常勤講師の仁居だったが
明るく人好きのする元同僚(常勤講師)・国立と再会して恋に落ちー

新居も国立も、それぞれ過去に背負った癒えない苦しみが
今でも心に重くのしかかっているのだけれど
ふたりの心の揺れ動きが、好意から恋、そして愛へ―と
時間をかけて見守るように描かれており、非常に好感が持てました。

中でも良いなと思ったのは
ふたりが拾った白い赤ちゃん猫のニーニ(全編通し大活躍☆)を
奮闘しながら力を合わせてお世話するシーン、
それから、国立が食べたいと言ったソーミンチャンプルを
二人羽織のように一緒に作り上げていくシーン。
それぞれ、何のことはない日常的な描写なのだけれど
どれだけ重い過去や感情が心を覆い尽くしたとしても
”ふたりで”だからこそ、乗り越えられるということが
隠喩的に描かれているように思えて、とても気に入っています。

あと、手法というか、描き方で素晴らしいと思ったのは
見せる部分と隠す部分の絶妙なバランスの良さ。
悲しい過去に捕らわれ過ぎていたあまり忘れていた
幼い頃の、愛されてい記憶を仁居が呼び覚ます場面。
涙を流す仁居を、その涙に気づかせることなく
後ろからやさしく抱きかかえる国立の描写がすごく良かった。
また、『エピローグ』で描かれた、仁居と佐田の再会シーンも秀逸で
対峙させるでも和解させるでもない、ただ目を合わせるだけ、
それにより佐田の心情を仁居に読み取らせたというのが
印象深く心に残りました。(佐田のスピンオフを熱望します!)

セックスシーンは、”甘々”というよりは”やさしさ”で満ちている感じで、
人によっては物足りなさを感じるかも知れませんが、
この作品には然るべき、適した匙加減で描かれていると思います。

最終的にふたりは、お互いの心の枷を
完全な形で振り切ったようには描かれていません。
これからもふとしたとき、
その枷はそれぞれふたりの心を重く覆い尽くすだろうけど
それでも、ふたりだから大丈夫と確信を持てるのは
一番感じる場所<心に>にやさしく触れる手が、愛があるからこそ!

”幸せ”というテーマに掛かった”川”というモチーフ、
ふたりの子供のような仔猫のニーニ、
仁居の因縁の相手・佐田、国立の妹・千夏(幸せになってほしい!)という
物語に欠かせない脇役キャラの存在...
すべてが川の流れのように物語と繋がっていて
読み手の心をやさしく魅了してくれます。

これから先、何度も手に取って大切に読みたい、
そんなお気に入りの一冊となりました。
評価は、神寄りの萌×2です!

11

繊細な心の動きを追った、静かな物語

激しく複雑な過去を持つ受けと、
同じく過去を持つ攻めの話。

視点は「受け」→「攻め」→「受け」と変化します。
なので主人公としては、総じてやはり受けなのかな、と。

ニアリーイコールという題名なのですが、
最初は、この題名は作品には合わないんじゃないかと
思いました。

「同じようでいて、同じじゃない」
これは、「恋」のことを言っているのだと思いました。
だから、今の「恋」は今までの恋と似ているわけではない。
そう思います。

   ◆◆   ◆◆   ◆◆

幼い頃、両親が心中自殺。17歳で一人暮らし。
初めての彼氏に「お前の愛は重すぎる」と言われ、振られるという
壮絶な過去を持つ主人公の仁居(受け)。

「お前の愛は重すぎる」

仁居が振られる時のこの言葉が、この話を大きく左右していきます。

対する攻めの国立は、過去の出来事から
セックスの途中で挿入までしていながら萎えてしまうという
癖(?)の持ち主。
それで、今までの恋人とは上手くいかず、別れてきました。


この二人が出会い、惹かれていき、付き合うことになりますが
仁居は「お前の愛は重すぎる」と言われた過去から、
程よい距離で、従順で、相手に従い、逆らいもしない恋愛を
してきました。

ここですよ、ココ。仁居は、言葉を気にしすぎだよ。
たしかに初めての恋愛でのめり込んだ相手からの
フラれた言葉というのは、キツイかもしれない。
でも、10年間もひきづるなんて、可愛そうだし、
仁居があまりにも惨めに見えて仕方ありませんでした。

ここで、重い話を明るくしてくれるのが、拾った子猫「ニーニ」。
もう、目尻がダラーンと緩くなってしまうぐらい、
白猫の「ニーニ」の仕草や鳴き声が、可愛くてたまりません!
これが唯一とも言える癒しなのかもしれません。

いつも窓の外を眺めながら国立を待っている仁居。
「お前の愛は重すぎる」
この言葉もここから派生した言葉でした。
国立にそれを指摘されると「重いよね」と謝る仁居。

謝って欲しくなんか、なかったなぁ。
普通、好きな人がじっと自分のことだけを待っててくれたなら
それはきっとすごく嬉しい事だと思うし。

付き合ってからも彼らはセックスしませんでした。
国立がいつもセックスして失敗して、恋を終わらせてきたというから、
仁居は、セックスなど必要ないと思っていました。
うーん、読者としてはそこを何とか乗り越えて欲しい!(><)

その後、仁居(受け)と国立(攻め)は結ばれます。
エロシーンは淡白でサラリとしているので、
エロエロを期待している方は、ちょっと避けたほうがいいかもですね。

たった一回、国立は例の癖(?)が出て、挿入時に
萎えてしまいます。
パニックになった国立を優しく受け止めたのは仁居でした。
「大丈夫だよ」と。


仁居は、過去の経緯から、我儘も言わず、全て相手の思うとおりにし、
従順で言いなり、相手の好きなことを最優先に考える
本当に出来た恋人。
でも、だからこそ、今度こそ、国立には
甘えて欲しいと思います。
自分の中ではどんなことを考えているのかをちゃんと国立に
伝えて欲しいと思いました。
喜怒哀楽は、本当に大事ですね。
そして、相手に伝えることも大事だとこの1冊で思いました。


最後は「一緒に住もう」との話が出て終わり。
是非ともこの二人には同棲して欲しい。
そして、仁居の我儘を是非とも国立が受け止める存在になって欲しいな。

   ◆◆   ◆◆   ◆◆

ひとつの小道具として、この物語には「川」が
大きく関与してきます。
仁居が住むのはいつも川べりの近く。
そして川をじっと見つめて、ひとり冷やしたウォッカを飲む…。

その川のように穏やかで、静かな物語でした。
人によっては、「出来事が少なすぎて、物足りない」と
感じるかもしれません。

心の繊細な動き、優しさ、暖かさ、そんなものが綯い交ぜになって
心のなかに染み入る……そんな話でした。


心穏やかになりたいときに、
是非とも手元に置いておきたいと思わせる作品でした。

13

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