アドリアン・イングリッシュ(4) 海賊王の死

kaizokuou no shi

アドリアン・イングリッシュ(4) 海賊王の死
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神79
  • 萌×27
  • 萌2
  • 中立1
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
16
得点
430
評価数
89
平均
4.8 / 5
神率
88.8%
著者
ジョシュ・ラニヨン 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
草間さかえ 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
モノクローム・ロマンス文庫
シリーズ
アドリアン・イングリッシュ
発売日
電子発売日
価格
¥900(税抜)  
ISBN
9784403560194

あらすじ

映画関係者が集まるパーティで出資者が謎の死を遂げた。
居合わせたアドリアンの前に現れたのはかつての恋人ジェイク……。

このBLがやばい®2015年度版小説部門第16位
アドリアン・イングリッシュシリーズ最新作!!

アドリアンの書いた小説に映画化の話が持ち上がり、 出席していたパーティ会場で映画のスポンサーが突然死する。
調査にやってきた刑事の顔を見てアドリアンは凍りついた。
そこには2年前に終わり、まだ癒えてはいない恋の相手・ジェイクの姿があった。
ジェイクの部下のアロンゾはアドリアンに疑いの目を向ける。
死因は毒殺でアドリアンの心臓の薬と同成分が検出されたのだ。
アドリアンはジェイクの協力を仰ぎながら独自に事件の調査を始める。
俳優のポール・ケインからジェイクとの過去を聞かされ、ざわついた気持ちを抱えたまま。
そしてジェイクは2年前に言えなかった言葉を語り出すーー。
胸に突き刺さる怒りと痛み。。相克と再生の第4弾。

冬斗亜紀(訳)

表題作アドリアン・イングリッシュ(4) 海賊王の死

ジェイク・リオーダン,既婚のLA市警警部補,42歳
アドリアン・イングリッシュ,古書店主で作家,35歳

同時収録作品海賊王の死 ~アドリアン・イングリッシュ 4~

ガイ・スノーデン,UCLAの教授
アドリアン・イングリッシュ,古書店主で作家,35歳

レビュー投稿数16

感情の乱高下が激しい

ずっっと感情が揺さぶられ情緒不安定になる巻でした。
ジェイクとの再会ですぐにジェイクが未だに男遊びをしていると勘付いたアドリアン…そりゃ不愉快で八つ当たりしまくっても仕方ない。どれほどの傷を負って別れたか…
ただガイが可哀想過ぎました。あんなにも献身的に尽くしてくれているのに塩対応。別にネコ側は勃ってなくてもいいのに、無理に進めようとしないのは愛じゃなかろうか。可哀想不憫と読み進めると潮目が変わってきた。ピーター登場に、更には体の浮気は当たり前だったという事実。おいおいおい…退院したばかりの情緒不安定の彼氏ほっといてセフレに走るのか。結局アドリアンの方が好きだと悟って「君を選ぶよ」ってもう遅い!
どれだけアドリアンの心臓に負担をかけるのでしょうか…。
アドリアンがジェイクと浮気した時ガイに同情したけれども、ガイはアドリアンを責めていい男ではなかったですね。

今回も何回頭の中のジェイクを張っ倒したか…あんなベイビーベイビー言ってた相手と友達になれるか!!なんとも今更ながらの言い訳。そうだ!アドリアン、ジェイクを傷付けてやれ!セックス後の断絶の言葉にも拍手。
だけどもやっぱりジェイクに惹かれて求めてしまうアドリアンに切なくなってしまいました。

ケインは初めから怪しいと思っていましたがアドリアンとジェイクを鉢合わせさせた時にコイツが犯人だと確信。
ジェイクは自業自得としか言いようがないですね。そんな中でも心臓発作を起こしたアドリアンの救命処置に毅然として対処したのには流石としか言いようがないです。
自分の理想と夢を全部失ったジェイク。都合が良すぎるけども、アドリアンがそれで幸せになるのなら。

毛嫌いしているように装っておきながら猫をすごく気にするアドリアン、好きです。

0

身から出た錆

いやいやいやいや
クズまみれやないかー!!!!笑

怒涛のクズ祭りでビックリしました。
そういえばメルはどうした……? とか思考を逸らしたくなるレベルでアドリアンの色恋沙汰に関わるヤツらがろくでもない(メルは出てこない)。

だってガイも大概なち〇こ野郎だったんですよ!?
びっくりした。セックスに対する考え方の相違。
ガイのような考え方、個人的には好きですが(キャラクターとして)、アドリアンが二年も関係を続けたのは愚かとしか思えない。
アドリアン、ダメンズ引っ掛けすぎだろう。類友なのか?
これだけ男の趣味が悪いとメルもそれなりにクズだったのかな……と思ってしまいました(風評被害)。

そして、色々と苦悩しながらも不貞行為に加担してしまうアドリアン。
前回は未婚だったからギリ言い訳出来たけど、既婚はやばいよー!!!!! 思い出作りすなー!! ダメ人間すぎるぞー!!!!

しかし何が一番許せないかと言えば、やはりジェイク。
不倫もモチロン最低ですが、捜査に私情を挟みまくりなんですよ。信じられん。
だがこのどうしようもない人間臭さがこの作品の魅力だよなと思いました。

で、ジェイクが私情を挟む(アドリアンが巻き込まれる)原因となったポール。こいつもヤバいやつでしたね……。
ここまで行くとキャラとして映える。狂ってて結構好きです。

そういえばナタリーが猫のことでアドリアンに怒ったことも信じられないポイントでした(彼女のことは嫌いでは無いが)。

ここまでの四作の中だと、連続殺人が起こらない分、サスペンス色が薄め。
事件自体はシンプルで、タイトルでネタバレしてるのでは……? と思いながら読み進めました(笑)

捜査に全く乗り気でないアドリアンが新鮮。
実際アドリアンが何もしなくても(ジェイクさえ居なければ)、事件は解決していたのでは無いだろうか。

ジェイクは色々と最悪な人間でしたが、ミステリと色恋の絡め方は上手いな〜と思いました。
ハラハラドキドキは何時もより少なめですが、面白かったです。

2

相変わらず面白い…

シリーズ4作目。前巻はオカルトでしたが、今巻はガラっと変わってセレブなハリウッド映画業界が舞台。ジェイクのステータスが変わっていて驚いた。
おまけに衝撃の事実も明かされるし…。主人公アンドリアンならずとも呆れます。
このシリーズ、読み進めるにつれジェイク株がどんどん暴落していくな…。

 それでも今巻に起こる事件がジェイクの生き方の真髄や刑事生命に関わるようなものだったのでハラハラさせられました。
まさかの展開でした。

今まで本当の自分を隠すジェイクに共感が持てなかったですが、その葛藤する姿に人間の心の脆さを感じ、心が打たれました。ジェイクは誰よりも人間くさいんだな。
最後まで夢中になって読みました。ジェイクと反対に最後までブレないアンドリアンの姿勢が良かった。

 残念なのは、犯人が何故犯罪を犯したのかがやはり独白されなかったこと。弁護士をつけるらしいし。。真実は暗い海の中?
結局タイトルの意味が分からず終いでした。

このシリーズは事件に日常、ML(メンズ・ラブ)を上手く絡めて展開されるので面白いです。夢中になって読み進められます。
最終巻も楽しみです。ジェイクのステータスがまた大きく変わりそう…。

2

シリーズで一番好きな作品

3作目から2年後の本作では、アドリアンはガイと付き合っており結婚まで望まれているという状況。こんなに愛されてても、ガイはジェイクの代わりにはならない。相変わらず孤独で皮肉屋のアドリアンに引き摺られ、読んでるこっちまで気分が落ち込みそうでした。しかも持病も悪化してるし。
パーティ会場でまたしても殺人事件に遭遇するアドリアン。華やかな映画制作関係者達の間で起こった事件を担当するのはなんと、ジェイク。これはもしかして、良い展開に?というこちらの甘い期待を見事に裏切るジョシュ・ラニヨンさん。ストーリーテラーですなぁ。
もう、ジェイクがポールと、っていう下りを読んだ時には、思わず声に出してハア?って言っちゃいましたよ。そこからの展開であのラストは、とても心が揺さぶられました。

出てくるキャラクター達が皆存在感があり、事件の謎を追って過去の確執を探っていくのがとても面白く、ミステリとしても読み応えありました。

2

急展開目白押しで目が離せない

シリーズ四冊目。
切ないを超えてしんどくてしんどくて。前半1/4くらいは、読みながら意味の分からない涙が出そうだった。

前作から二年後。今彼と微妙な距離を保った状態で、忘れられない相手との再会。そこに心臓病の不安も増して、アドリアンの心理描写もネガティブに。特にジェイクの纏う匂いが変わってしまった、という描写にグサっとくる。
過去の思い出をいくつも見直し、塗り替えていく様子が辛かった。ジェイクとの幸せだった時間を全て勘違いだと自分に思い込ませなきゃいけない心境が辛い。

ジェイクは出てくるたびに物言いたげな仕草を見せる。毎回最後までは言わないが、その思わせぶりのせいで深い何かがもっとあるんじゃないかと、彼を信じたくなってしまう。もはやアドリアンに同調しているのか、私がそう思いたがっているのか、分からなくなっている。(これは不倫にハマる駄目思考だ……)

逢瀬も毎度しんどい。ジェイクのセリフに芯まで流されないアドリアンの心が、どれだけすり減っているかと思うともう……。
銃で撃たれたクライマックス、死にかけたアドリアンのモノローグに泣けた。命の危機に瀕し、そこでやっと「強くいようとしなくてもいい」と思える、それくらい必死に立っていたのかと。これがジェイクの腕の中というのもまた良くて、すごく心に刺さった。

ラストはジェイクの決断で締める。再会から恋愛方面の物語が動きすぎて大変だった。小さな光が見えたところで次巻へ。すぐ読めることを幸せに思った。

気になったのは、ジェイクの妻の流産。BL作品の妊娠妻は流産率が高いと感じていたが、翻訳M/Mでも見せられるとは……。ガイもジェイクより長い二年もアドリアンと付き合ったのに、そこは描かれず存在感が薄い。
この二人はM/M作品の登場人物になってしまったばっかりに……と可哀想になった。

恋愛方面の印象が強い本作、そういえばミステリだった。相変わらず伏線回収が甘いのと、ジェイクの頑なな思い込みが根拠不明なのはご愛嬌ってやつ?ジェイクとポールの関係はもっと詳しく知りたかったな。

ここまで読んできて良かった。次も楽しみ。

1

ツナ 缶

外で読んでいたので泣くわけにいかず、ラストシーンは堪えながら読みました。
以下、ネタバレにご注意ください。

ミステリ部分に関して、今までのレビューであまり好みではないような書き方をしてきましたが、4冊読むと愛着が湧いてきました。今回、共犯同盟の皆さんがなりを潜めてしまった一方、リサ一家が随分と存在感を増しています。

3,4巻を連続で読めたので、2年の別れの飢餓感が薄らぐ。そう、2年。結婚生活としては短く、愛する人と離れるには
長い期間です。

ジェイク批判派が多いのでしょうか?自分はジェイクが大変人間地味ていて、芯が通っていて、ある意味誠実で大変好きでした。2年の、あるいは40数年の葛藤に相応しいものだと思います。かくあるべし、との戦いは。ジェイクとアドリアンは重なる部分と、全く重ならない部分が明確で、それが共に生きる上で心地よいのでしょう。

ラストのガイとの会話もたまらなくいいです。彼が不幸になるわけでもなく、どちらかが決定的な悲しみをたたえるでもなく、彼とアドリアンの関係が終わったことに安心しました。

タイトルがネタバレの本です。
実際にそうなるか、事実上そうなるかを考えながら読みました。ただ前者は既刊でやってるのでね。

2

袋小路のあとで

シリーズ4作目。
なんと、あれから(3作目の終わり)から2年後設定。
ジェイクとアドリアンはお別れしていて、アドリアンは3作目で知りあったガイと付き合ってる。
そして、再び事件に巻き込まれる…

もちろん本作もミステリな訳ですが、今回はミステリ部分よりアドリアンの心境やジェイクとの関係性に関する部分の方が重要だったので、私的には今までのシリーズ作の中で初めて面白かった。
大まかなストーリーは、要は「忘れられない元カレ」とどうなんの?という話な訳なんだけど、これがロマンスと言ってしまうにはビター過ぎる…
表面だけ見れば。
アドリアンは小説が映画化される運びでハリウッドのパーティなんぞに出席して。
ジェイクとの別れから全く間をおかず次の恋人もいて。
書店を拡張する計画もあり。
リサの新しい家族ともとりあえずうまくいっていて。
ただし心臓の具合は悪化し始めている…
そんな日常にまた殺人と出くわして、担当者としてのジェイクに再会してしまう。
すると2年前の傷、苦しみ、悲しみ、怒りが何一つ癒えてなかった事がわかってしまう。
ところがこのジェイクが思ってたような男じゃなかった。
これはアドリアンにも読者の私達にも衝撃的。
ジェイクにはジェイクの規範があって、それがアドリアンや私とは違う、ただそれだけといえば確かにそうなんだとは思う。でも、ジェイクは「正常な結婚」も、男と愛し合いたい渇望も、SMのマスターとしての支配欲も、みんな欲しい。自分は何一つ差し出さずに欲しい。そしてそれぞれの欲をケイトとアドリアンとケインの3人に割り当ててた、そんな男だった。
でもそんな男でも、また触れ合えば抗い難く、心も体も全て持って行かれてしまう…そんなアドリアンのどうしようもなさ。恋の怖さ。
アドリアンが、ガイとうまくいかず、でもまだガイとの恋人関係がありながらジェイクと寝てしまうシーンの、その激情。その欲望。その快楽。
しかしそのジェイクのずるさゆえに、ラストである選択をしたジェイクを許してしまいますね…
ジェイクにとってそれがどれほどの選択だったのか、その重みは十分わかるから。
…と、概ね満足ですが、一般人のアドリアンとの恋愛関係ですらあれほど隠すジェイクが、一体どうやってハリウッドスターとのSM関係を始めてしかも5年も続けてたのか。また、ケインがアドリアンを巻き込んでいく動機の弱さなどツッコミ所も多々あります。やっぱりミステリ方面はイマイチです。

3

運命の再会編

3巻のラストから二年後、またも殺人事件に巻き込まれるアドリアン。冒頭、担当刑事として現場に現れたジェイクといきなりの再会に、一気に作品世界にぶわーっと持っていかれてしまう。
ジェイクは妻が流産し、子どもを持つ夢を失ってしまったが、まだ既婚者だし、アドリアンにもガイという新しい恋人がいる。しかも事件の捜査中に、ジェイクには五年間も付き合っていたカールというパートナーがいたということが判明してしまう…。

もう、はぁ?ってなっちゃたよ。アドリアンも作中で悶々とし続けてるけど、こっちもイライラMAX。
何が嫌って、2巻のあのラブラブ時期、3巻のラブラブからの切ない別れの時期と、かぶってるのが。5年って! 長すぎる!
1巻の段階から、ジェイクがSMクラブに出入りしているということは一応書かれていた。なので、カールとはそっち系の付き合いということはわかるんだけども、これから最初から読み返すたびに、ジェイクとアドリアンのウフフなシーンで、「こいつ、こんなことしながら裏では他の男と…」って思っちゃうのが嫌すぎる。

ただ、クロゼットゲイのジェイクには、長年抱え続けた鬱屈や心の闇があったのだろうということは推察されるので、こんなクズでもどこか憎みきれないというのもまた事実…。そこは、読者もアドリアンも同じで、捜査をする過程でどうにもこうにもこのクズ攻めに惹かれてしまうのを止められない。
しかもガイもガイで、あー、それはやっちゃ駄目だろってことをするんだよな~。なんなのも~、バカ!と頭を抱えたくなる。個人的に、3巻のラストでジェイクはもうやめてガイにしなよ、と本気で思ったし、期待してたのになあ。

そんな感じで終始やきもきしていたのだが、やはりあのクライマックスを読んでしまえば「神!」とするより他にない。
これまでのゴタゴタがあったからこそ、あの場でのジェイクの決断と、きっと本能レベルで判断してとったのだろう行動に、もう号泣。あれで私は全部チャラ。許した。
最終巻を読んでから、このあたりのシーンを読み返すとまた泣く。
次巻への引きの巧さも毎回すごくて、止められなくなる…。

2

圧巻のクライマックス

電子書籍での再読。
「今、あたしはアドリアン・イングリッシュ祭りの最中」と友人に言ったら「何度目⁉」と大げさに驚かれたので数えてみたら、年に一回は再読していたことを発見しました。
何度読んでも面白いです。
これは、単に私が『読むのは早いけれどあまりよく覚えていない読み手』だからだけじゃないと思うんですね。読む度に新しい発見がある。読み飛ばしているからだけじゃなく、その時代や、私の年齢に合わせた気づきをもたらしてくれるんです。このお話は。

さて、ついにクライマックスの巻となりました。
何度も読んでいると、この辺りになると「もうすぐお話が終わってしまう」勿体なさも感じるんですが、でも読み始めたが最後、止まらないのがこのシリーズ(特に、この巻はそうなのよ)。これからお読みになる方は、片手間で読み始めない方がよろしいかと。

結婚したジェイクと別れて3年。アドリアンはUCLAの教授、ガイと恋人関係にあります。アドリアンの処女作の映画化権が買い取られ、スタッフ達との顔合わせパーティーで出資者が毒殺されちゃう所から物語は始まります。毒物が入っていたカクテルを彼に手渡したのがアドリアン。で、ジェイクが捜査に来るんですね。それとは別に、映画化権を買い取った俳優のポール・ケインから、アドリアンは関係者に事情を聴くことを頼まれます。このケインという俳優は、ジェイクがSMクラブに通っていた頃の馴染み。ケインは、ジェイクが結婚してからも関係は続いていて、アドリアンとジェイクの経緯も知っていることを仄めかします。アドリアンはインフルエンザを拗らせて肺炎をおこした直後。ガイからは同居を勧められていますが、それにもはっきりとした返事が出来ずに、ジェイクとの関わらざるを得ない中で、心身ともズタボロの状況に追い込まれていきます。

どうしてアドリアンにこんなに共感してしまうかと言えば、やはり「知りたい」という欲求が非常に強いからなんじゃないかと、今回読んで思ったんです。
『好奇心が旺盛』であることはその通りなんですけれど、それだけじゃなく、自分で自分なりのピリオドを付けないと、次に進めない人なんじゃないかな、と思うんですよ。
ある意味、生真面目であり、要領が悪い。
でも、こういうことないですか?
自分でも「馬鹿だな」と思いながらも、やらないと気がすまなくて、で、やってしまって貧乏くじを引いちゃうようなこと。
……私、よくあるんですよ。

でも、アドリアンにとっては、そのことこそが自分が生きているという実感を抱けることでもあるように思いました。16歳から心臓に欠陥を抱えた所為で、母には過保護とも言えるほど『大事に』され、5年も一緒に暮らしていたパートナーには去られ、それほど長生きできないだろうと常に意識しながら暮らす人生の中で『自分で決めてそれをやり遂げる』ということが、彼にとってどれだけ大切であったことか!だからこそ母と同じ様に、アドリアンを保護しようとするガイとは一緒に暮らせなかったんではないか、と。

同時に(『だからこそ』なのかもしれませんが)アドリアンは『パートナーと対等であること』を渇望する主人公です。年がら年中、皮肉交じりのジョークを飛ばしているので、印象は強烈ではありませんが、その姿勢はとても頑なで、時折、彼に示される思いやりすら拒んでしまうほどです。

だから私は、この巻の中でアドリアンが「死ぬのが怖い」とジェイクに言った場面で、必ず落涙してしまいます。
良かったね、と。
心から甘えられる相手と巡り合えて、良かったね、と。

事件の解決に向かうドラマの中で、お互いが解りあうのではなく、自分が解っていく。そして、自分にとって相手がどういうものであるか理解することが、お互いの関係を作り出していくというこの物語の構造に大きな拍手を送りつつ、ほろ苦くも余韻の残るラストに、またしても胸が締め付けられました。

6

ジェイクのキャラが理解できない

ミステリーのネタバレはしないようにレビューします。

シリーズ4作目。3作目が別離だったので、4作目はどういう展開でくるのかと期待しつつ読み始めました。
しかし、最初でやられました。あれほどにつらい気持ちで別れたのに、アドリアンとつきあう前から、あの甘いシリーズ2作目の間も、そしてジェイクが結婚した後も、5年にわたってポールという2枚目俳優と関係を持ち続けていたジェイクに失望です。

当初からこの失望感がつきまとい、終始いやな気持ちのままでした。
ただ、ミステリーとしては今作はなかなかよく出来ています。クライマックスへの盛り上げ方も、読み物として非常におもしろかった。

後半、アドリアンの方が1枚上手で、ポールの意図を見通し、ジェイクにカムアウトを促すあたりから、ようやく溜飲が下がる思いでした。

ジェイクは、自分の信念を貫くためにはカムアウトせざるを得ない状況に追い込まれます。ここは作者の都合でしょう。SMプレイに興じていたというジェイクのキャラ付けは1作目からですが、5年間の不義と偽装結婚のための別れは、事件と、最初からハッピーエンドでは話にならないというストーリー作りの都合によりジェイクに課せられた設定だとしか思えず、何か腹立たしい思いで読みました。
もうちょっとうまくやってほしい。いったん下げておいてあげることによりカタルシスを与えるのでなく。読者にそう思わせないようにして欲しいのですが。

しかし、アメリカでは、特に警察官でゲイというのは社会的に非常に厳しい立場にあるのかもしれません。日本は非常に寛容ですのであまり実感がありませんが。
アメリカのホモフォビアの露出を見るにつけ、人は自分の中にあるものを怖れるのだという印象を強くします。カソリックの影響は大きいですね。

しかしとにかく、3作目からこれだけ下げてきた挙げ句のラストには、ものすごいカタルシスがやってくることは確かで、涙無しには読めませんでした。



8

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