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sayonara focus
全体的にかわいい短編集。描写はソフトです。
エピソードとエピソードの間に、登場人物たちの持ち物(バッグやその中身など)が描かれていることに象徴されるように、ちょっとした小物などの要素にキャラクターづけを担わせて、描き方自体はふんわりしていても人となりが窺えるようなつくり、嫌いじゃないです。
銀塩カメラに打ち込む大学生と同級生のほんのりラブを描いた「ルミノグラフ」のかわいさ。これは、現代(いま)に銀塩カメラ…ってあたりから性格がうかがえますね。
「アンダー ザ フロア」は、ガラッと雰囲気が変わるのですが、「うん、あるある…」といった感じのエピソード。ある程度以上の大人だったら、一度や二度はこういった体験もあるよね…という感じで妙に感情移入できる小品でした。
他には、宅配ドライバーが登場するコメディ作品と、レトロな作家と書生さんのおはなしが収録されています。
バラエティに富んだ作品が楽しめる良い一冊です。
最近の作品から入った春田さん好きの方には、ちょっと路線が違うので物足りないかもですが、表題作はちょっとしたミニムービーを見ているような、しっとりと落ち着いたストーリー展開で、青春と大人になる間な感じが好きでした。
全体的に、やはりBL要素は薄くて、萌は少なめ(『昼下がり憂鬱デリバリー』は(主人公が)萌、てんこ盛りでしたが!)ですが、ちょっと心の隅にいつまでも残る感じの作品集でした。
『アンダー ザ フロア』は、心情的にちょっと痛いので、苦手な方はご注意を。でも、宅配屋さんが救ってくれます!
『月が綺麗ですね』
この意味を知っていると、さらに口元がにんまりと緩みますv
4作品(+表題作のその後)入ってるのですが、それぞれが印象も色合いも違う短編ですね。
表題作「ルミノグラフ」はカメラが二人を結ぶスタイリッシュな作品だし、「アンダー ザ フロア」はゆきずりの出口のない切ない関係を描いた硬質な作品。
「昼下がり憂鬱デリバリー」は宅配男子たちのコミカルな作品だし、「咲き待ちの梅と読みかけの本」は一昔前の小説家と書生の甘酸っぱい作品。
表題作だけは結局BL的なカップルになってるけど、他は微妙で、恋愛未満です。
それ以外のその後の展開にもBL的発展はあまり期待できそうもなく、いかにもBLらしいものを求めてる人にはたぶん物足りないですね。
それが著者の持ち味だと思ってたのだけど、最近の作品は違ってきてます。
(そして評価も高い)
私としてはまた、今作に近いテイストの作品を期待するのですが…
■感想
本作は「ルミノグラフ前・後編」「アンダー ザ フロア」「昼下がり憂鬱デリバリー」「咲き待ちの梅と読みかけの本」「フォーカスシフト」が収録されています。
春田さんの描く世界観はどれも個性があって大変面白く読ませて頂いています。
各作品ごとに異なる場面展開・キャラクター設定を楽しむことができる本は珍しいと思います。
また、専門的な知識を作品の中に絶妙に浸透させる手法にも目を見張ります。
物体・背景・アングルの描写が絶妙で、物語の臨場感を全面に押し出している所も注目ポイントです。評価は「萌x2」とさせて頂きます。
タイトル。表紙。そそられました。収録は四作品+一話目後日談。心理描写で仄めかすタイプですが、間を持たせた表現でなかなか色っぽい描写をされる方でした。
「ルミノグラフ」 大学生同士の微妙な距離感を描いた作品。就活中の岡本と写真に熱中している米津。二人が出会って徐々に知り合っていく過程で生まれる、友達という枠には収まらない、特別な「何か」。言葉では説明できない心の動きを、カメラという小道具を通して語られています。(最後に「フォーカスシフト」収録。)
「アンダー ザ フロア」 親友に彼女を寝取られた伏見が、気を紛らわせるための憂さ晴らしにクラブへ行く。そこで隣に居合わせた男と刹那的な関係を持つお話。(チョイですがイタすシーン有。)地味にオシャレ感満載でした。
「昼下がり憂鬱のデリバリー」 競合宅配業者同士のライバル関係かと思わせといてのどんでん返し。ちょっとコミカルテイストで、こんなのも描くんだね、といった感じ。
「咲き待ちの梅と読みかけの本」 時代物。小説家の葛西先生とその書生、山川のお話。山川が密かに敬愛している葛西のもとにアドバイスを求めに来る作家志望の学生が。山川も実は小説を書いていて、その学生に嫉妬しちゃうんだけど…。
どれも、奇をてらわず、ラブストーリーの基本をきちんと押さえている感じがしました。ガッツリエロシーンがあったら作品の雰囲気の良さを潰しちゃうだろうなと思うくらい。出てくる男の子達も一見、繊細で女性的かと思いきや、性根が男らしい。なんだろ、乙女を突き詰めると漢に、漢を突き詰めると乙女になるんじゃないかと思ってたところがあるのですが、春田さんの描く男の子達はそのニュアンスをうまく体現してくれているような気がしました。
こういう、一歩引いた、控えめでキッチリ作られた作品は、短いけれど好感を持ちました。つくづくほんのり系の地味好きだなと思いました。
シティーボーイマガジン"popeye"は
好みの特集があると、時々購入する雑誌なのですが
春田さんが描く男の子たちを見たとき、そのスタイルから
popeye男子だ!と思わず声を上げました。
春田さんの初コミックスは、4つの物語と描き下ろしから成る
スタイリッシュな短編集です。
○ルミノグラフ
どんなことも好き嫌いなくある程度こなせそうな大学生岡本くんと
好きなものは好きと、カメラ中心の生活を送る米津くんの
異なる者同士が惹かれ合い、光を当て重なることでできる
ルミノグラフのような恋の話。
好きなもの・やりたい事が見つからないまま就活をする岡本くん、
カメラが好きだけど、夢見る風ではなく現実的に捉えている米津くん。
二人とも所謂イマドキの男の子たちなんだけど
心理的リアリティーを持って描かれているところが
読み応えに繋がり、とても良かったです。
○アンダー ザ フロア
主人公伏見くんが最悪な週末を乗り越えるために
クラブで出会った行きずりの相手に慰めを求める、
”終わったらさよなら”のひと時が描かれた作品。
後々後悔しても、今を乗り切るために必要な夜、
自分にはないなんて言えない。読後に余韻が残りました。
○昼下がり憂鬱デリバリー
ヤマハト運輸と佐山急便のサービスドライバーの
好意以上、恋未満の話。
一番コミカルな展開で、BL色もかなり薄いですが
こういうテンション嫌いじゃないです。
○咲待ちの梅と読みかけの本
作家さんとお手伝い書生くんの恋模様がほんのり描かれた
懐かしい香りのする物語。
このCP、お似合いで可愛いです!
ラストの作家さんらしい告白と書生くんの表情が微笑ましい。
スタイリッシュな中にリアリティーや心理的余韻が香る、
新しい形のBLという感じがして、とても好印象の作風でした。
春田さん、来月は新刊発売予定で、すごく楽しみです。
それにしても、これからpopeyeを買うたびに
男の子たちをそういう目で見てしまいそうで困る...!
表紙に惹かれて購入。
この作家さんの初めてのコミックスのようです。
絵は表紙よりも女性的で、お話は一つ以外はほぼキスとまりの可愛い感じなので、BLを読んだ!という感じではないのが正直な所。
普通のBL短編集なら物足りないという感想で終わりそうですが、この本がそれ以上に何か残るものがあるのは、たぶん自分と同じ雑貨好きなのではなかろうかという匂いがするからでしょう。
表紙から分かりますが、本文も雑貨が丁寧に描かれています。
登場人物の鞄の中とか、こういうのたまりません!
雑貨好きな方ならば、読めば分かっていただける筈。
お話としては、自分も写真が好きなので「ルミノグラフ」と「咲き待ちの梅と読みかけの本」が好きです。
月が綺麗ですね。いいなあ。
次回作も期待です。
作家さんの初コミックス。
中の絵は表紙より幼げで淡いタッチです。
表題作は、就活にやる気を出せない大学生が
カメラマン志望の同級生と仲良くなることで
少しだけ毎日が楽しくなるという話。
キスや告白のシーンにうまく写真が使われていて
恋のドキドキ感が効果的に表現されています。
描き下ろしでも清い付き合いの二人だけど
ホテルでちょっといい服着て撮影&キスするシーンは大人っぽくて素敵でした。
この感じでもっと濃い絡みも見たかったかな。
【アンダー ザ フロア】
彼女と親友がデキていたと知り
傷心のままクラブへ出向いた主人公。
そこで声をかけてきた男とトイレの個室で…。
ゆきずりの相手との一夜を淡々と描く短編。
収録作の中唯一、(挿入はないけど)絡みがありますが
恋愛に発展する兆しはないので萌は薄いです。
【昼下がり憂鬱デリバリー】
配達のお兄さん同士のコメディ。
運送業者の配達員が、競合会社のイケメン配達員と
エレベーターに閉じ込められる。
そこでイケメン配達員が実は制服フェチと知り…。
残念なイケメンが、主人公の制服姿に食いつき
脱がせにかかるところが面白かったです。
コメディとしては綺麗にオチもついていて
なかなか良かったんではないかと☆
【咲き待ちの梅と読みかけの本】
昭和初期の日本。
売れっ子小説家のお世話をする弟子は
こっそり小説を書いていて…。
ラストの先生の「月が綺麗ですね」に痺れました。
この台詞はもう他の色んなBL作品で
散々使い回されているけれど
何度聞いてもグッとくるものがありますね。
全体的に設定や展開は決して悪くないのですが
ラブ面での寸止め感が半端ないため
高評価をつけ辛いのが惜しいところ。
恋愛未満な関係のまま終わってしまうパターンが多くやや消化不良な読後感です。
あと一、二歩先の展開まで描いた上で
オチに持っていって下されば
更に満足できる短編集になったかと思います。