己で刻んだ印を背負い、愛を求め続ける男たちの物語

刺青の男

shisei no otoko

刺青の男
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神83
  • 萌×227
  • 萌16
  • 中立11
  • しゅみじゃない7

--

レビュー数
48
得点
582
評価数
144
平均
4.2 / 5
神率
57.6%
著者
阿仁谷ユイジ 

作家さんの新作発表
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媒体
漫画(コミック)
出版社
茜新社
レーベル
EDGE COMIX
発売日
価格
¥619(税抜)  
ISBN
9784863490277

あらすじ

刺青を持つ三人の男たち(牡丹の潟木、ラナンキュラスの武藤、狂い鮫の埜上)。それらに絡む謎の男、久保田。社会の裏側を生きる男たちに救いはあるか…? 刺青シリーズ完結編『みんなの唄』描き下ろし42ページを加え、すべての物語が収束される。ほか、片思いの相手が毎夜生き霊になって現れて…『はるのこい』『ゆめのあんない』を加えた異色作品集。
収録作品「僕のカタギ君」「ラナンキュラスの犬」「狂い鮫とシンデレラ」「みんなの唄(描きおろし)」「はるのこい」「ゆめのあんない」
出版社より

表題作刺青の男

同時収録作品僕のカタギ君

久保田みつる,刑事
潟木清次,ヤクザ

同時収録作品ラナンキュラスの犬

武藤大輔,ヤクザ
金城有馬,ヤクザの息子

同時収録作品狂い鮫とシンデレラ

埜上猛志,街を牛耳るチンピラ
久保田みつる,刑事

同時収録作品はるのこい / ゆめのあんない

春野,遊び人の大学生.最近具合悪そう
安奈光久,大学生,春野に片思い中

その他の収録作品

  • みんなの唄

レビュー投稿数48

バッドエンドというより…現実感

阿仁谷先生は「どうしても〜」だけ既読です。
ねっちょりした絵と手描き文字がそこまで好みではなかったのですが、本作ではそれが合っていたと思います。

ツイッタで、ぬるくない作品を読みたいと呟いたらフォロワさんが本作をおススメして下さり…確かにぬるくなかった。読み応えありました。

バッドエンド、救いがない、読後感悪い…という意見が多いみたいですが私はそう思わなかった。

これが現実よね、という印象です。

そして、そこに愛があった(超重要)。

だから、死んだり、意識不明になったり、HIVになったり、事実としては救いがないけど

『皆が幸せな夢を見られますように』
『せめて夢だけでも』
…償いながら生きようね

という言葉がすんなり入ってくる。
シビアな現実を受け入れた上で、希望を持って生きるという。

HIVのくだりは、カタギは自分が感染しているのをわかっていて、久保田と行為をして復讐した。
久保田もそれをわかっていて受け入れた。
ということなんでしょうね。

だから、お互い「謝らない」と言っている。
他の意味もあるけれど。

武藤と有馬の甘いひとときが唯一の癒し…と思ったら夢?だったとわかった時はさすがにずどんときました。

私はいわゆる夜明けの腐みたいで、闇モノやバッドエンドは苦手なんですが、ヤクザモノの場合、暴力や死はある程度覚悟しているので、まだ大丈夫でした。

だってそこには愛があったから(超重要←2回目)。精神的には希望もあったし。

余談ですが、それより説得力なく愛を感じられない上辺だけの闇(病み)モノがめちゃくちゃ苦手です。ただ狂気や背徳感のエロを描いたようなやつ。

暴力も苦手ですが、本作ではまだ大丈夫だったのはヤクザモノということと、痛さ、悲惨さを淡々と描写していたからだと思います。

例えば、カタギが輪姦されたり、タバコの火で火傷させられたりしても、本人的にはケロッとしているのが私にとってはありがたかった(カタギにとっては、武藤と有馬のことの方が辛かった)。

久保田も痛めつけられるけど、ドMのような反応で辛いというよりむしろ進んで受け入れている?と感じられたし。

痛さや悲惨さを過剰に演出されるのがどうも苦手で。それは事実だけで十分伝わるので、最低限の描写が好みです。

そして、読後感が悪くなかった要因は久保田のキャラも大きいと思います。

キャピっとした普段?と、刑事として行き過ぎと思われるほどの行動とのギャップ。

愛する人を逮捕したり、命をはってまで「僕の仕事」をする。
そこまでするのはなぜなのか。どんな信念があるのか。どんな過去や背景があるのか。
嫌でも気になります。

久保田の深掘りを中心に、カタギとの続編があれば理解や物語がもっと深まっておもしろそうですが。
でもHIVがあるから厳しいか(悲)

同時収録作は、安奈の精神状態と生き霊との絡みがリンクしていておもしろかったです。

「どんとこいフロイト野郎」がツボでしたw
浅い知識ですが、フロイトの夢分析ってたいていエロスにつながっていたような。
なので、お話とピッタリだと思いました。

1

幸せの雛形なんてどこの誰が作ったの?

これまでのレビューの評判やらを読んでいで、かなり凄い作品なんだろー!と、思い〜
ずっと、読みたかった作品。
念願叶って〜ゆっくりじっくり堪能しました。

いやぁ〜、衝撃と満足感が半端ないです。

それぞれの立ち位置があり、事情があり、まぁ〜なんとも言えない気分です。


だけど、どんな形でもしっかり愛はありましたね。
最後に、久保田が背景で、
“幸せの雛形なんてどこの誰が作ったの? ”

これで、締めくくられてるのが納得しました。雛形なんていらないね。
これは、この世の中へのメッセージでも良いかも。

間違いなく、神作品!
こんな、素晴らしい作品に出会えて良かった。


0

せめて夢だけでも

「救いがない」とか「痛い」だとかいうレビューがズラリで、かなり読むのを躊躇っていた作品です。

1話目を読み終わった時点ではややバドエン寄りのメリバコメディ?っていう印象だったのですが、2話、3話、そして4話目の「みんなの唄」でオムニバス全てが繋がり、事実が明らかになる展開でした。
辛い、たしかに辛い。
個人的には武藤と有馬には夢の中みたいにささやかな幸せがあって欲しかった。

ヤクザものでも甘々お花畑〜な作品がありますが、その対極にあるような作品です。
"誰かを傷つければ必ず報いを受ける"
そのセリフのまんまの結末が彼らに訪れています。
そして久保田もまた、その報いを自ら受けようとしている…というお話でした。

同録の好きな人の生き霊を呼び寄せてしまうお話は、少しグロい描写もありますが、甘めなのでバランスは取れてるかもですが『刺青の男』シリーズだけで纏めても良かったような気がします。
余韻がすごいお話なので、最後まで表題作シリーズに浸りたかったかも。

評価は萌えはあまりなかったのですが、単純に神から少しマイナスで萌2としました。

0

何年経っても色褪せぬ傑作

何度読み返してもウーンこれはとんでもない作品だなと唸らせられます。
BLを読み始めてからかれこれ10年以上経ちますが、未だにこの作品を超えるBLは読んだことありません。
古い作品であることは承知していますがどうしてもこれをレビューしなければと思いこれを書いています。

まず、キャラクターの設定や作りこみが秀逸です。メイン登場人物は久保田、カタギ、坊、武藤と4人いますが、ページ数が限られているのにも関わらず1人1人キャラがたっているというか、どういう人物かがハッキリつかめます。2次元的ではなくちゃんと奥行きのあるキャラクターです。特に久保田というキャラクターは実に魅力的ですね・・

ストーリーは最後の「みんなのうた」を読むまで全体像がわかりません。その構成力にも脱帽です。少し群像劇のように進み、最後怒涛の展開ですべてがまとまる。突き落とされた感がすごいです。バッドエンドでもないと個人的に思いますが、重いストーリーが嫌いな方にとってはこの作品はNGかもしれません。

攻めの受け化があるのでリバ的要素が地雷な方は要注意。また、この作品が出たのは2008年であることを意識して読まないと、最後に出てくるとある出来事に対して「?」となるかもしれません。個人的にはツッコミどころは数か所ありましたが、いずれも冷めてしまうようなものではないです。

阿仁谷ユイジ先生の作品は一通りすべて読んだことありますが、本作が圧倒的ベスト作だと思います。未読の方には是非読んでいただきたいです。

2

生きることはきれいごとじゃない

「都合が良くて甘いだけのBLに飽きた方におすすめ」・・とあったので、読みました。

たしかにこの作品にあるような不条理が、現実なのかもしれない。
どんなことからも、目をそらさず、逃げないで、見届けてあげるのが愛なんでしょうね。
讀み終えるまで胆力を必要とする物語でした、あー 重い 重い。
裏切り、復讐、ゲイ、やくざ、HIV、流血・・あらゆる闇の鬱展開とバッドエンド。
転落人生を止められない入れ墨を入れた人、寄り添う連れ合いはどこか狂ってる。狂うことで、自分を保っているのかもしれない。

ボクシングで学生チャンピオンになった者が身近に二人居て、一人は事故死、もう一人はこの作品のように、何をやってもダメ人生で、最後は病気で吐血して死んだ者が居たことを、この作品を読んで思い出してしまった。
頭に障害を残す体に良くないスポーツは廃止にしたらいいのに。

この作品には、脳漿が飛び散るシーンがありました。苦手な人は、ご注意ください。

0

幸せの雛形なんて

バッドエンド、衝撃の、という枕詞で必ず名の上がる作品、それが「刺青の男」。
私が初めて読んだのは、2014年頃。
今再読して、その衝撃度は全く色褪せない。
ただ…
その「衝撃」は、正直暴力描写に因っているかなと感じている。

さて、再読としての「刺青の男」。
連作的にストーリーは展開していく。

「僕のカタギ君」
まずチンピラの潟木が、幼馴染の恋人(♂)との時間に溺れている。
ここでまず第一のどんでん返し。
その恋人・久保田は実は警察だったわけ。

「ラナンキュラスの犬」
ヤクザの坊はデイトレーダー。父親の組長から軟禁されて巨額のカネを動かしている。
だけど彼が欲しいのはただ一人。組の右腕・武藤。

「狂い鮫とシンデレラ」
武藤に変わり新しくシマを束ねている埜上(のがみ)はアタリがキツい狂気の男。
その埜上がシマの新入りの「嬢」に興味。だがそのコは本当は男。
…埜上を検挙しに潜入した久保田。

「みんなの唄」
まるで新婚夫婦のように連れ立って夕食の買い物をする武藤と坊。
夜、寄り添って眠る2人だが、坊はひどい耳鳴りに襲われる。武藤の声も何も聞こえないほどひどい耳鳴り…
そして出所する潟木を出迎える久保田。(埜上の逮捕時に片目を失明している)
再会した恋人たちは抱き合うが、ムショの中で輪姦三昧されていた潟木はある思惑があった。
久保田は潟木を「武藤たち」に会わせると言って病院に連れて行く…

ここがこの作品の最大の衝撃。
武藤と坊の生活は?夢?幻?
誰にも、何の救いもない。このどこにも行き場のない感情。
もう一つだけ知りたいのは。
久保田はなぜここまで自分を投げ出す?差し出す?
この「刺青の男」のどうしようもない結末は「物語」の持つ力を強く伝えてくる。
読む者の心を深く濃く揺さぶってくる。


「はるのこい」
「ゆめのあんない」
「刺青の男」の世界観から打って変わって、ちょっとコミカル?からのもう助けて…と神に懇願するような「生き霊」との恋物語。
だがなぜそんな女好きが生き霊になって来てくれるのかが最後までわからない。

1

どんとこいフロイト野郎

潟木くん、カタギじゃないのに潟木くん

救いようのない連作です。
上げて落として落として落とす…みたいな。阿仁谷先生の作品はこの毒が好きだったのですが、これ以降ここまで毒の強い作品も出なくなってしまったな。
BL初心者だった頃に評価してたら神を付けていたと思う。再読の今、当時強い衝撃を受けたこの作品が結構普通に思えてきたのは、ショッキングな内容を扱うBL作品を多く読んでしまったからだと思うとちょっと寂しい。

久保田が失明やHIVを受け入れて生きる理由はなんなのか。他の人間は道外れた罪が想像されるけれど、咎無く罰ばかり背負っている気がして。久々に再会した潟木への愛と、彼への偽りだけならあまりにも重すぎないか?久保田にはもっと深い何かがある気がしてならない。

◾︎はるのこい/ゆめのあんない
生き霊をこんなにエロく描けますか?!ある種"人外"モノ
当時は"刺青"シリーズが好きだったはずなのに、読み返してこっちの方が好きになってました。もともとどちらも好きだったけど。また数年後に読んだら、逆転してるかもね。
公然の秘密というか駆け引きというか、腹の探り合いをしつつそこから漏れ出ちゃう感情と、溢れ出た後の爆発。こういう展開好きです。

1

私にとって理想のヤクザの世界

◆僕のカタギ君〜みんなの唄(表題作)
 私は個人的に、痛々しいとかグロいとか救いがないといった作品にまったく抵抗感がないので、少数派かもしれませんが、この作品はそこまでショックや重苦しさを感じずに読み進めることができました。ヤクザものを読む時はどんな展開が来てもいいように、自然と受け入れる器を広くしているのかもしれませんが。目次で短編集かと思わせて、実は4つの短編が時系列を入れ替えて、すべて繋がっている作品です。繋ぎ方も緻密に練られていて、それぞれの短編を初めて読む時と、すべて読んでからもう一度読み直す時では感じ方がぐっと変わるようになっています。

 ヤクザの世界で言う「落とし前」。たとえ正義や愛のためであっても誰かを踏み躙った上に成り立っているのなら、この世界に少しでも関わった者である以上は必ず皆それをつけさせられるんだ、ということを改めて知らしめてくれる作品でした。綺麗事やラッキーで済む話なんて万に一つもありえない、それでこそヤクザの世界。最後までとことん救いがないように描かれていたのは素晴らしかったです。ただ、ずっと第三者目線で見ているような感じで、どのカプの魅力にも入り浸る暇はなく萌えは少なかったです。それぞれ短編ですし、ある程度関係性を築いたところから始まるので仕方がないとは思いますが。ストーリー展開は高評価です。

◆はるのこい / ゆめのあんない
 一連のヤクザ短編集とはまたがらりと雰囲気を変えてきて良かったです。生き霊というなんともファンタジーな設定を、色気と劣情と主人公の自分の気持ちへのやりきれなさを上手く絡めながら、とてもリアルな雰囲気に描き上げられていたと思います。攻めも受けも学生相応で可愛らしかったです。ヤクザものを読んで心が疲れてしまったという方も、こちらで十分癒されるのではないかと思います。

0

余韻を引きずる話たち

短編集かと思ったら繋がってますね。
ああ!10時に行けなかったから!

みんな辛いお話です。久保田もきっと。潟木と一緒にいつまでいられるか。潟木も久保田の為に模範囚として早く出て来たけどきっと輪姦された時に感染してて久保田にも。

最初はラブラブゲイカップルのお話かな?と思ったらどんどんお話が切り替わり、あれ?捕まったはずの潟木がいると思ったら、その前の話に繋がって。

有馬と武藤は逃げられなかったの?
二人で幸せそうに買い物して部屋で抱き合ってたあれは夢?
組長が外道で有馬の母や武藤や有馬が不憫で。
夢の耳鳴りは病院で眠る有馬の聞いてる音?あの日に武藤は…。

埜上も久保田が体を張って捕まえました。失明し犯され。そうか、だから潟木が早く武藤の居場所を言っていればに繋がるのか。
悲しいです。

はるのこい

片思いの相手春野の生き霊が現れて安奈にエッチなことをしていく。でも本体は女好きでチャラくて、どれだけ好きでも絶対に伝えることはできない。でも現れてはどんどん行為がエスカレートしていき、二人ともやつれていく。
本体は夢を見ていると言いますが…。体に痕が!

とうとう本体に気持ちを告げ体を繋げます。
不思議なお話でした。前から安奈の気持ちはバレていたのに春野は気がつかないふりして、でも生き霊で現れてはあんなことを。

余韻が残る本でした。

0

ヤクザオムニバス

OPERAやるな~。いい作品多いな。
ヤクザがらみのオムニバス形式で短編がいくつか入っています。

カタギぐん(ヤクザのぱしり)と久保田(警察)のカプ。
ハニートラップでお縄にするという芸風の久保田。しかしカタギにはマジ惚れしてしまい、自分で手錠をかけながらも出所を待って迎えに行く。
あれ、迎えに行くのは違う単行本収録だったかな。

他に、組のボンとそれに惚れ込んだ若頭(かな?)の武藤の逃避行。二人の幸せなひとときはあるんだけど、結末は悲しい。。

どうしようもないヤクザの埜上を捕まえるために体を張った久保田だが、片目をつぶされてしまう。後で、出所したカタギに成敗されるっぽい。

メインカプの二人は幸せになったんだと想うが、武藤×ボン(有馬)はなんとも切ない話だった。

しかし達者な作家さんだなーと想う。

0

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