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無自覚な半妖×遊郭で働く妖怪
ayakashi chaya de machi awase
中華風な世界が舞台のファンタジー作品。
あくまでも中華風なので、服装・小物のデザインだとか、そういうものを求めの方のほうがピンと来る作品かな?と思います。
派手な展開はなくあっさり目な味付けだけれど、嫌な人は1人も出て来ず、平和な雰囲気が優しく、切なさもありつつ、ほのぼのとしたあたたかいお話でした。
菓子店の店主兼菓子職人の州樹は、ある日叔父に連れられ、男娼ばかりが在籍する高級遊郭・月馬茶屋を訪れることになる。
好みの相手を選ぶように言われた州樹が選んだのは、中庭で出逢った、ふと目があった瞬間に魅入られてしまうほど印象的な赤い瞳を持った波瑠という男娼。
ところが、彼にはとある秘密があって。
タイトルに「あやかし茶屋」とある通り、長い時を生きる妖怪の波瑠と、菓子店の店主であり半妖の州樹が繰り広げる、作中に登場する上品な練り切りのようなほのかな甘さが広がる恋の物語。
舞台が遊郭なこともあって、2人の関係は体からのスタートなんです。
というのも、人の精を食べることによって生きている、人ならざるものの波瑠。
たまたま客として訪れた州樹の中に、とびきり美味しい精を持つ半妖の血が混ざっていると知り、誘いをかけるわけなのですが…
波瑠が精を求めるシーンが、スラリとした儚げな印象を受けた絵柄とは異なる予想外な色っぽさでした。これはなかなかに色っぽい。
そして、閨でのひとときでも、合間合間のシーンでも2人の言葉のやりとりが心地良くてですね。
お互いに少しずつ少しずつ焦がれていく様子がとても良かった。
人ではない生き物から、童、大人etc…姿形を自在に変えられる波瑠。
波瑠がいつどの姿をしていても、その赤い瞳を見ては瞬時に気付く州樹。対受け限定で無意識にストレートで甘い口説き文句を吐く攻めってすごく良い。
そんな州樹に、受けの波瑠もどんどん気持ちがいっぱいになっていく。
2人とも思いやりのある優しい人と妖で素敵でした。読んでいてなんだか微笑ましくてホカホカします。
と、お話全体の雰囲気は好みだったのですが、いかんせんさらりと進んでいってしまうので、なぜ男性のみの高級遊郭でなければならないのかについてはちょっと分からなかったのと、謎多き妖・波瑠が結局何なのかが語られていなかった気がしてやや惜しい。
それから、個人的にはやはり寿命問題が気になってしまう。
けれど、それ以上に2人の未来が明るく柔らかなものであることを願いたくなるような、あたたかさに満ちた作品でした。
※紙本修正は細めの白短冊