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2015年に刊行された「CANIS-Dear Hatter-#1」の新装版。
内容は旧版と変わらず。最後に10Pの描き下ろしが収録されていますが、この10Pのために買いなおすか悩んだんですよね。旧版、持ってるので。
でもね、見てください、この表紙を!
カッコ良い…!
色遣い、ZAKKさんの描かれたイラスト、どこをどう切り取ってもカッコいい。
で、上下2巻同時発売になりましたが、この2冊の表紙と口絵を、並べてみてほしい。
カッコいいのに可愛いとか、最高かよ。
表紙だけで悶絶し、購買意欲がグーッときちゃってですね、お買い上げしました。
内容は旧版と変わりませんが、一応ざっくりと。ネタバレ含んでいますので、苦手な方はご注意ください。
万年人手不足だった帽子店「DANTE」。
そこに、店長・沓名が拾ったリョウが加わったことで一気に活気づく。
そんな「DANTE」に、一人の男がやってくる。沓名の友人であり良きライバルの後藤。
後藤がDANTEにやってきた理由、それはNYで帽子をメインにしたショーが開催されるが、そこに沓名の作品を出品する、というものだった―。
NYで、沓名の新作を披露する。
そのことによって、沓名のデザイナーとしての今後、そして沓名とリョウの関係が変化していく。
かつて大きなショーでその名を世界にとどろかせた沓名。
しかし、その名声が、沓名のデザイナーとしての葛藤を生むことに。
これでいいのか。
自分の作りたいものは何か。
人が自分に望んでいるものは、ショーを取った「あの」帽子ではないのか―。
けれど、沓名はその迷路を自分で抜け出す。答えを、導き出していく。
そこに、リョウの存在があったから。
もがき、苦しみ、けれどそこから這い上がる男の強さに悶絶しました。そして、そのサポートをするのがリョウというのも良い。めっちゃ良い。
「Dear Hatter」の#1は、沓名のデザイナーとしての在り方と、そこに生まれたリョウとの関係を描いた内容です。
沓名、そしてリョウ。
この二人の男たちが壮絶にかっこいいです。
悶絶します。
このまま、二人の関係もうまくいく。
そう思った矢先に、沓名を襲う出来事とは―。
リョウが「何か」を抱えているのだろうということは「CANIS-Dear Mr.Rain-」の時から何となく分かっていましたが、NYに来たことで、リョウは以前の自分と対峙することになった。「CANIS-Dear Mr.Rain-」から匂わされてきた「なにか」と決着をつけるためにリョウが出した答えとは。
と、#1はそこまで。
次巻に続きます。
最後に描き下ろしが収録されています。
タイトルは『The Holiday's Night』。
時はクリスマス。街は華やぎ、けれど沓名はリョウをNYに連れていくことを躊躇っていて―。
リョウは自身の過去を何も話さないし、沓名も問うことはない。
けれど、リョウの抱える「何か」が彼の祖国にあることはうっすらと沓名も気づいていて。
二人の、どこまで相手に踏み込んでいいのかわからない、その危うい空気感が端的に描かれています。恋人ではない、仕事仲間でもない、友人でもない。
けれど、そのどれでもなくって、そのすべてでもある気もする。
んー。
めっちゃ良い…。
ZAKKさんの絵柄って決して色っぽい感じではないんですよね。線も太いし、どちらかというと少年誌、あるいは青年誌のような。そんな絵柄。
なのにそこはかとなく漂う色香というかエロスって、どこからやってくるんでしょうね。この空気感が、ZAKKさんの大きな魅力の一つだなー、と。
#1、#2の2冊が同時発売されました。
まとめて購入されることを、お勧めします。
買ってしまった…。
古い方で全部持っているのにも関わらず、描き下ろしが読みた過ぎて買ってしまった…。
『CANISーDear Mr. Rain』から続く本作。
雨男の帽子職人・沓名聡(サトル・29)が雨の夜に拾ったリョウ(当時19)。
出会って、別れて、また出会う2人の過去の部分に焦点が当てられていた前作から、いよいよ2人の「今」が動き出します。
ニューヨークのファッションウィークへの参加を強制的に決められたサトル。
一緒に暮らし、店で働くリョウは少しでもサトルの役に立ちたくて、漢字の練習を始めます。
新作作りをする中でサトルがぶち当たる大きな壁。
それは過去の自分自身で…。
(1)はサトルの苦悩がメイン。
4年前に世界的なコンテストの総合部門で1位を獲ったこと。
その帽子を被って歩くモデルを見て、自分が作った帽子に思えなかったこと。
誰もが「あの帽子のような帽子」を欲しがる中、「あの帽子」以上のものを作り出せない苦悩と葛藤。
どうして帽子を作りたかったのかも忘れてしまった。
感覚を失ったはずの右手が、以前より痛む。
そんな苦しみの中にいるサトルに、周囲がかける言葉が…、無責任で無神経。
「運がいい」「恵まれている」そして期待。
過程を知らずに結果だけを見る人々の悪気のない言葉がつらい。
純粋に応援している家族の言葉さえ、サトルを追い詰めるのが悲しい。
「心療内科へ行って!」と言いたくなる展開が続きます。
追い詰められていく様子がぐいぐい伝わってくる表現は必見。
そんなサトルの突破口となるのが、リョウ。
汚いことばかりしてきた自分は、サトルの仕事を手伝う資格がないと感じていたリョウが、一歩踏み出す瞬間がいいんです。
そしてトラブルの結果とは言え、そのリョウがサトルの一番のピンチを救って、リョウのために作られた帽子を世間にお披露目するシーンは…、感動します。
この2人の関係がいいなあと思えるだけに、(1)は読み終えた瞬間、相当つらいです。
淡々としているんだけど、それが余計に悲しい。
出会ったら、いつか別れが来る。
命が尽きるときか、一緒にいては叶わない道に進むことを決めたときか。
一緒にいた時間が楽しければ楽しいほど、相手が自分に与えてくれたものが大きければ大きいほど、別れはつらい。
でもそのつらさを選ばないといけないときがある、んだなあ…。
『ーDear Mr. Rain』の巻末の予告にもありましたが、リョウが漢字練習に使った辞書で見つけた「了」の文字。
「リョウ」という読みに、「さとる」という意味。
でも一番最初に出てくる意味は「おわる」で。
本編の流れを予感させるようなこういう表現がすごく巧くて、心に沁みるんだな。
悲しい。ただひたすら悲しい。
悲しい気持ちで終わらせないためにも(2)を購入してから読むことを強くお勧めします。
さて、描き下ろしですが、『ーDear Mr. Rain』同様、作画のタッチが違います。
あちらは4ページでしたが、こちらは10ページ。
ニューヨークに行く前に、クリスマスの街をゆく2人の会話が描かれています。
サトルの白目が小さ過ぎてややホラーに見えるところもありつつ、お互いが感じる漠然とした不安を誤魔化しつつ、という話。
古い方を持っている方で、「大好きなのでコンプリートしたい!!」という方はもちろん購入されると思いますが、「本編の印象が変わるような内容の描き下ろしなら買いたい、かも?」という方には、BL資金に余裕があれば…とだけお伝えしておきます。
新装版はとてもカラフルな表紙。
旧版は鮮やかに笑う沓名の顔のアップだった。内容も沓名中心。
ライバルに煽られて(?)NYでのショーが決定。
かつての鮮烈なデビューと、本人がそれを「過去の栄光」みたいに感じちゃってること。
周囲がその苦しみを理解してないこと。
でも今隣にリョウがいて、忘れかけていた何かをまた掴む沓名です。
つまり…「…のための帽子」。
ショーのイメージをリョウに置いて、ラストの帽子はリョウの帽子。
ここからまた何かが動き出す?
だが、リョウに過去の裂け目が。
で、リョウはNYに残り。
沓名は止めず。
何もかも次巻へ…という終わり方の本作です。
リョウは沓名が好きだし、沓名もそれを知っていて自分も憎からず、でも受け入れる準備はできてない、だから止めない…
そんな感じ。
沓名は自分が大人なつもりなんだろうけど、多分臆病、なんだろうね。
リョウも何かとてつもなく重いものを抱えているのを薄々感じて、聞きたい気もするけど踏み込めず、自分では共有もできないと思って。
さて、旧版を読んでた当時の私は2人の恋の行方だけに注目してて、リョウ側の面倒くさい組織のアレコレはイラネ、とか思ってたんだよね…