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hana furu ouji no konrei
読み終えて心地良い余韻に浸っています。
過酷な運命に翻弄される、呪われた王と癒しの魔力を持つ王子…
その運命を自分たちの力で乗り越えていく、強い強い愛の物語です。
ーーネタバレ注意ーー
強大な魔法王国の第一王子・リディル。
身体の弱い姉の代わりに王女と偽り、魔力を供給するために隣国のグシオン王に嫁ぐことになります。
しかし、既にグシオンにリディルが男だとバレていてーー…!?
実は、リディルは魔力を殆ど持っていません。
王女を嫁がせる約束も果たせず、グシオンに魔力を供給することもできないリディルは、元より死を覚悟しての嫁入りなのです。
国と民を守るため、死を覚悟して謝罪に赴くリディルが健気な王子である事は直ぐに分かります。
気丈に振る舞いながらも、誰もいない馬車の中で声を殺して泣くリディルが切ない(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
何のために生きてきたのか、未来で自分が得るはずだったものは何だったのか……そんな事を思うリディルに、生への未練を感じました。
とても優しくて、皆に慕われる心の強いリディルがとっても魅力的なんです。
そのリディルが嫁いだグシオンがまた素敵で!
武術に長けた利発な青年であり、リディルを男と知りながらも受け入れます。
しかし、グシオンにもまた大きな秘密があり、それは前王が受けた呪いによるものでした。
空に浮かぶ二つの月……その二つが満月を迎える時、グシオンは理性を失った獣になってしまうという呪い。
恵まれた王に見えたグシオンは、実はとても寂しい男でした。
そのグシオンがイディルという伴侶を得た事で幸せを知り、ずっと一緒に生きていきたいと願う場面はグッときます。
そして、二人が心を通わせていく中、グシオンとリディルの秘密を知った隣国が攻めてきてーーと、物語は急展開!
獣姿に驚いてしまったリディルとグシオンがすれ違っていくところは切ないですし、自分を恥じるグシオンが悲しい。
それでも、リディルがグシオンの為に出来ることを探して奔走していく姿。
その命をかけた姿にとても感動してしまって、あまりの健気さと直向きさに目頭が熱くなりました。
王妃でもなく、役立たず……だけど、男だから共に戦える!
「一生ともに生きていこう」というグシオンの言葉を生きる力にして頑張るリディルに心打たれました。
グシオンの呪いは解けるのか?
リディルの魔法円が発動しない理由とは?
側近のイドとカルカの存在も大きく、その活躍は必見です!
さらに、リディル姉妹の秘密にはビックリ!?
最後の最後までワクワクさせてくれる展開に、ページをめくる手を止められませんでした。
yoco先生のイラストも素敵でため息もの。
感情の機微によってリディルの指先からあふれ出るカラフルな花はロマンチック♡
最後にリディルが出した花の色を是非確かめてみて下さい!
ラブシーンこそ少ないですが、むつみ合う二人が愛おしい素敵な物語でした。
とても読み応えある素晴らしいファンタジー作品だったと思います。
作家買い。
尾上さんは「1945シリーズ」のイメージが強く、痛い作品を描かれるイメージが個人的に強い作家さまなのですが、今作品はめっちゃ可愛い…。バックボーンはややシリアスさを孕んでいますが、でも、登場人物がみんなすごく優しい人ばかりで、そのためかすごく優しく心が温かくなるような、そんなお話でした。
軍力を持たない弱い国は、軍力が果てしなく強い国に吸収されてしまう世界、が舞台。が、軍力が弱くとも、国を維持できる国もある。それは魔力を使える魔法使い=マギがいる国。
主人公はマギがいる国であるエウェストルム王国の王子・リディル。
マギがいることで他の国から攻め入られることはないが、その代わりに魔力を持つ王女を嫁がせることで平和を保っている。
エウェストルム王国の現国王も、第一王女をイル・ジャーナ国の王子に嫁がせる約束をしていた。
が、第一王女は他の強国に攻め込まれたときにその国に嫁がせてしまった。第二王女は身体が弱く嫁がせることができない。そこで白羽の矢が立ったのが、第一王子であるリディルだった。
王女ではなく、男であるリディルでは子を成すことも、王妃になることもできない。それでも、自国に攻め込まれることがないよう、自分の命を持って償いイル・ジャーナ王国のグシオン王に頼み込む。騙された形になるグシオン王に、殺される覚悟で輿入れするが―。
一言で言ってしまうと、よくある成り代わりもの。男でありながら、女と偽り輿入れするお話。
なのですが、これがめっちゃ面白かった!
グシオン王はリディルが王子だということをはじめから知ってるんですね。知っていてなお、そのまま王妃として受け入れる。それはなぜか。
グシオン王にも、秘密がある。この秘密が、このストーリーのキモになっています。グシオン王が抱える秘密が一体何なのか、ぜひとも手に取って読んでいただきたい。
リディルは自国のために命を賭してグシオン王に嫁ぎます。
王子としての矜持があるため。けれど、「それだけ」でもないんです。リディルにもまた、秘密がある。
少しずつ欠けている、グシオンとリディル。
けれど、彼らには他者に対する愛情と深い思いやりがある。
欠けた部分を補うように、そしてお互いを思い合って助け合おうとする彼らの人としての優しさだとか、愛情だとか、温かさが、この作品の大きな魅力の一つ。はじめは恋愛感情ではなかった。そこから相手を知り、歩み寄り、そして愛情を育てていく二人の夫婦としての歩みがなんとも優しいのです。
そしてこの二人の脇を固めるサブキャラも非常に魅力的でした。
グシオンにはカルカ、リディルにはイド。
腹心の部下で、忠誠心に溢れている優しい人たち。忠誠心が過ぎるがゆえに突っ張りる傾向にあるものの、それもこれも自分の主を守るため。壮絶に強く、そして逞しい。この二人がくっついたらいいのになー、なんて妄想しながら読み進めました。
途中、どうなることかとハラハラしつつ読み進めるシーンも多くありますが、最後はきちんと大団円。なので安心して読まれてください。
夫婦としての愛情と信頼。
主に尽くす忠誠心。
そして親から子へそそぐ愛情。
この作品のベースになっているものは、形こそ違えど深い愛情です。それゆえか、読後はほっこり温かい気持ちになれました。
世界観が非常に独特ですごく面白かった。
作中あまり登場しませんでしたがリディルの兄弟とか、カルカ、そしてイドと、スピンオフがたくさん作れるんじゃないかなーと思うので、ぜひともスピンオフを書いてほしいと絶賛切望中です。
気高く哀しい王子と、忌まわしい呪いを受けた寂しい王。
偽りの婚礼から始まった、真実の愛と言った物語になります。
こちら、煽りでは「ロマンチック婚礼ファンタジー」となってて、確かにロマンチックなのです。
ロマンチックなのですが、同時に凄まじく切ないし哀しいし痛々しいお話でもあるんですよね。
運命って皮肉すぎるよ!と、涙が止まりませんでしたよ。
でも、その運命を乗り越えて愛し合う二人に、ただただ感動で。
ああ、すごい話を読んだと言う感想しか出てこないですね。
370P弱と大ボリュームなんですけど、ページを捲る手を止める事が出来なくて、一気に読んじゃいましたよ。
内容ですが、武強国イル・ジャーナルの王でグシオン×魔法王国・エウェストルムの王子リディルによる、身代わり花嫁ものになります。
身体の弱い姉王女の代わりに、隣国のグシオン王の元に嫁ぐ事となったリディル。
魔力も持たず男である彼は、自分の命を代償に、国や民を救うべく悲壮な覚悟で初夜に臨むんですね。
ところが、王はリディルが王子だと分かっても、何故か驚かずー・・・と言うものになります。
まずこちら、一番に訴えたい事なんですけど、その圧巻のストーリー性になります。
序盤なんですけど、偽りの花嫁として無骨な隣国に嫁ぐ主人公と、痛々しい状況から始まるんですよね。
えーと、リディルなんですけど、気高く責任感が強く思いやり深い、とても健気な王子になるんですよ。
そもそも、この世界なんですけど、魔法の力を持って国を治める魔法大国と、武力を持って治める武強国が存在するんですね。
魔法大国では魔力を持った王族が生まれ、その魔力を武力に変えて戦うのが武強国。
その為、武強国では、魔法国の王女を先を競って娶ろうとする。
武力を持たない魔法国は、そうやって他国に魔力を「供給」する事で、国を守りと言った形で。
で、そんな事情があっての、今回の婚礼。
リディルなんですけど、物心ついた時からこの事情を理解していて、自分が死ぬ為に生きてきた事を知っている。
そう、とても落ち着いていて朗らかですが、ふとした拍子にどこか諦めも感じさせてと、すごく痛々しいのです。
生まれ育った美しい王宮の景色を見て、最期の瞬間はこの匂いや景色を思い出すんだろう・・・みたいな。
いやこれ、めちゃくちゃ悲しい。
まだ序盤も序盤なのに、もうこの時点で涙腺がヤバくなってる。
で、そんな彼を娶るのが、隣国で武強国の王・グシオン。
彼はですね、朗らかで人懐こくて優しい、男としての魅力に溢れた王でしょうか。
輿入れ道中のリディル達を迎えに現れ、警戒心と緊張でガチガチのリディルに、あたたかく接する。
いやね、この輿入れ道中で、リディルの気持ちと言うのが大きく変化するんですよ。
グシオンをただただ恐れていたのが、彼の人となりを知るに連れ、騙してる事に罪悪感を覚え始めと言った具合に。
ついでに、読者の胸の高まりも、このあたりで高騰中。
だって、グシオンですが、リディルに対して、それこそめちゃくちゃ愛を感じさせるんですよー!
嫁いできてくれた事に嬉しさを隠せずと言った感じで、溺愛攻め好きには滾っちゃうんですよーーー!!
あれ、攻め、めちゃくちゃいい男じゃないのよ!と。
まぁそんなワケで、ここから初夜での(素顔での)初対面。
読者の期待通り、既にグシオンは、リディルが男だと分かっていて・・・と続きます。
で、繰り返しになりますが、この作品の凄い所は、そのストーリー性の深さ。
私は単純に、身代わり花嫁ものとしか認識してませんでしたが、ここから更に驚きの事実が分かります。
とある事情を隠していてと、グシオンはグシオンで重い秘密を抱えていたんですね。
これね、リディルには何の罪も無いのです。
でも結果的には、グシオンにとって裏切りに裏切りを重ねる酷い行為となってしまった。
この、婚礼自体が。
事実が分かった時に、あまりの皮肉さに眩暈がしましたよ。
ただ、ここで見せるグシオンの言動に、めちゃくちゃ心を打たれて。
これも呪いで、運命だと解釈するんですよね。
その上で、それを受け入れる。
これが運命なら、共に歩いてくれるのはそなたがいい。
捨てにきた命ならば、余の妃となってくれ。と。
なんかもう、ああああー!と、萌え転がっちゃうんですけど。
リディルが、この孤独な人に寄り添おう、心だけでも癒そうと決意するのにも、グッときちゃうんですけど。
ちなみに、ここで半分くらいですが、この時点で二人は身も心も結ばれるんですよね。
で、あとは甘々かと言えば、ここから更に二人を襲う、試練の山。
グシオンの秘密には更に隠していた事実があり、またリディルが嫁いでからと言うもの情報が漏れと、彼は厳しい立場にも置かれる。
これ、リディルですが、とにかくめちゃくちゃ健気なんですよ。
だからこそ、自分の無力さに苦しむのが、とにかく切ない。
自分の身を投げ出して、グシオンを守ろうとするのが、泣ける。
またグシオンはグシオンで、そんなリディルに心を痛める。
こんなに人を好きになった事は無いと。
もう、マジでこの二人、幸せにしてやってーーー!!
とりあえずですね、そんな感じでかなり切なくはあるものの、ちゃんとハッピーエンドなのでご安心下さい。
リディルは単に守られてるだけのか弱い主人公なのでは無く、愛する人の為にしっかり戦うって所も、とても素敵でした。
様々な伏線が張り巡らせてあってと、物語として本当に面白いんですけど、最後の最後に明かされる驚愕の事実にも、脱帽。
いや、なるほどねぇしか出てこない。
ちなみに、どこかお伽話を思わせるお話でもあります。
リディルが感情の高ぶりによって、花を出すんですよね。
自分の手から。
これもまた、うっとりしちゃいました。
知らずにいる、というのはある意味幸せなことなのかもしれません。
相手を知らずにいれば、それ以上好きになることも、こんなにも狂おしく想うこともなかったのに。
でも、それと同じくらい辛いけれど知って良かったこともある。
物語全体に漂う、そんな切なさが不思議と心地良く、とても美しい作品でした。
ああ、本当に良い作品を読んだなと感じます。
偽りの婚礼という切迫した状況から始まる物語。
序盤から国同士の特色や政治が分かりやすく組み込まれていて、世界観に入り込みやすいです。
なぜ王子であるリディルが死を覚悟しながら婚礼に臨まねばならないのか、なぜリディルなのか。
リディルというまだ年若い少年が、国を、民を心から思う気高く美しい心の持ち主なのだという事が冒頭の数ページから読み取れる。
リディルとの別れに、周囲の人々が涙するほどに慕われている様子にも説得力があり、この時点で主人公のリディルに心を持っていかれてしまうのです。
気丈に振る舞いながら、寂しさと侘しさと虚しさを抱え、性別を偽り、斬り殺される覚悟を持ってイル・ジャーナへと向かうリディルが悲しくも痛ましい。
リディルが嫁ぐ先は、先王の時代には残虐とも言える行いをした事があると噂され、恐れの対象ですらあったイル・ジャーナ国。
そんな噂のある国から、輿入れ道中のリディルを迎えに来た若き国王・グシオン。
グシオンと接する内に、残虐な印象を持っていた国とは真逆の、優しくリディルを気遣い、民や国を心から思う、非常に好ましく誠実な人物だという事を知ってしまう。
道中での2人の交流がすごく良くて。
この、無事に役目を果たせるのだろうかと不安を抱えながらの道中で、リディルの心境が変化していく様が痛いほどに分かってしまうんです。
彼の手のあたたかさを知ってしまったと語るシーンと、序盤の祖国へ別れを告げるシーンの対比が見事だなあと。
どうしようもないやるせなさと切なさ、罪悪感、儚さを感じるというか。
ここだけでも物語の世界観に浸れてしまいます。
しかしながら、ここからがこのお話に更に魅了されてしまうところで。
リディルが王子だと知りながら、予定通りに婚礼の儀を行い、王妃として娶ったグシオン。
それはなぜなのか?
彼にも内に抱えた呪いがあったのですね。
実は、お互いに秘密を抱えての婚姻だったと。
もうですね、辛さの度合いで言うのであれば、グシオンにかけられた呪いの方が圧倒的に辛いものなのです。
こんな呪いをかけられてしまったら、自暴自棄になってしまったとしても無理は無いと思うんですよ。
父王と同じ非道で残虐な道を辿る事だって出来たと思う。
けれど、国王として自分の命が尽きるその日まで、国と民を護ろうと、王であろうとするグシオンが素晴らしい人で。
だからこそ周囲の人々もついて来るのでしょう。
そんな、強く賢く誠実な王である彼が「ただ側にいて隣を歩いてほしい」と、心の奥底にあった孤独や不安をリディルだけにぽろりと見せた姿に、なんだかこう…グッときてしまったんです。
きっと、不安なんて周囲には話した事がなかったのではないでしょうか。
魔力を持たない自分だったからこそグシオンの元へ嫁ぐ事になったというのに、魔力を持たない自分だからこそ救えないという残酷な事実。
彼が、救いたいと思えないほどの非情で残虐な人物ならどれだけ良かったか。
雰囲気は甘いのだけれど、切なくてたまらないのはどうして。
同じような孤独を持つ者同士、寄り添い合うかのように過ごす2人の空気があまりにも優しい。
呪いと共に、徐々に明かされる謎や伏線が回収されていく展開がこれまた見事。
中弛みする事もなく、切なさ一辺倒なわけでもなく、ハラハラとドキドキまである。
本当によく練られ、非常に丁寧に作られたお話だなと感じます。
なんというのですかね…やはり、リディルがグシオンを命がけになってまで呪いを解き救おうとする懸命さや健気さに胸をうたれるわけなのですが…
彼がただの健気な人なのではなく、しっかりとした芯のある人物で、なぜそうまでしてグシオンを愛しく想い救おうとしているのか?
これまでに描かれていた丁寧かつ繊細な心理描写が効いていて、突き動かされるかのような彼の行動理由と気持ちが分かってしまうんですよね。
花嫁ものだからこその「男であり、なおかつ期待外れ」が逆転する展開や、リディルの謎に関しても読み応えがありました。
しっとりとした雰囲気の中にも穏やかな甘さがあり、良い空気感を残したままラストを迎える。
嘘から始まった婚姻が、こんなに素敵な運命と出逢える事になるなんて誰が想像したでしょうか。
グシオンとリディルが互いを愛情深く想い合う姿が幸せに満ちていて、読み終えてもしばらく2人の事が愛おしく思えて仕方がなくなる。
この2人、大好きだなあ。
作中のあちこちでリディルの掌からこぼれる幸せの花が彩りを添えています。
感情と共にほろほろと溢れる花が大変可愛らしかったです。
尾上与一先生の作品を読むのは今作が初めてだったのですが、とても美しくも繊細なお話を書かれる方なのですね。
時間も忘れて没頭してしまうほど魅了されてしまいました。
yoco先生の挿画も美麗で、これほど物語の世界観と相性の良い組み合わせはあまり数多くはないのではないでしょうか。
物語、物語を読ませる筆力、物語により深みを持たせる挿画。
この3つが見事に組み合わさる事によって、本当に魅力的な作品になっていると思います。
2020年上半期発売小説作品の中で、5本の指に入るほど素晴らしい作品でした。
明日読む予定で、ちょびっとだけ・・・と読み始めたはずが、読み止められませんでした。面白い。引き込まれてなかなか現世に戻れず、読み終わって2時間ちかく経ちましたがまだ余韻半端ないです。ファンタジーお好きな方には迷いなく「まあ読んで」とお勧めしたい、個人的には上半期ベスト3は間違いないと思う一冊でした。本編370Pほど、なんと、あとがき無し(ちょっと寂しい)。
玉座の前で父王と嫁ぐことについて話をしたリディル。魔法で成り立っている平和なエウェストルム王国の第三王子ですが、イル・ジャーナ国へ輿入れすることに。父王含め周囲の人間はみな泣き崩れるばかり。というのも、もともと王女を差し出すことになっていたのに、やむを得ず王子のリディルが行く為、命をもって贖わなければと考えているからで・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
イド(受けの忠実な乳兄弟)、アニカ(イドの妹、忠義な女官)、オライ大臣(忠義者)、カルカ(攻めの側近、いけず)、ヴィハーン(攻めの国の将軍)、キュリ(受けに懐く梟)、リズワンガレス(大魔法使い)等々こまごま多数。あとほとんど伝聞形式ですが、受けの姉二人ロシェレディア(大魔法使い)、ステラディアース。この姉二人も興味深い・・
++好きだったところ
攻め受けのキャラも好きですが、何よりお話が面白い。世界観に引き込まれて、帰ってこれないこと請け合いです。なのでお時間ある時に是非一気読みで。
竜や耳シッポは出てきませんが、可愛い梟のキュリちゃんが出てきます。そして魔法ばりばり。受けの一族は背中に魔法陣もって生まれるという家系で、各国から魔力を請われて嫁ぐ代わりに不可侵を約束させるというか守ってもらうという関係。受けの父王は魔力持っているけど、ややメンタル弱い方で、泣けば国の気候が乱れてしまうらしい。ステラディアースは命と魔力をきちんと自分の中にとどめることができず、卵の殻のようなものの中でしか生きていけないらしい(!)。そんな魔法一家。面白過ぎてわくわくなんです。
リディルも魔法陣を持っていますがやや難あり。いろんな事情があるのに、こんなにまっすぐ愛らしく健気に育ったのはどういう奇跡なんでしょうか。素晴らしいです。嬉しくなったら、ちょびっと使える魔法で手から気持ちに合った花をぽろぽろあふれさせるという!攻めにちゅ♡されて、オレンジ色のお花をこんもり寝台の上にあふれさせたりしてます!可愛い!!!
そして可愛いだけじゃなくて、待ってらんねーとばかりに王を追いかけて戦場まで行っちゃうわ、イドを従えて単身突っ込んでいくわ、もう大活躍。大好き。
攻めさんも王様らしい王様で、訳あり寂しい環境でお過ごしですが、受けに惚れていて、本当に可愛らしい・・・最後の最後に本当にめでたしめでたしになるし、養子迎えるかという話になった時には、まだ迎えてもいない養子に嫉妬するわ、受け程印象強くはないですが、タイプとしては超好き。
攻め受け好きだわ、お話はごっつ面白いわで神にしました。興奮気味レビューですいませんでした。最高です。
ファンタジーもの、そんなに好きじゃないんです。
基本ものぐさなんで、設定とか背景とか独特の用語とか理解しながら読むのが億劫というか。
だけど表紙に惹かれて読んでみたら、これがまぁめちゃくちゃ面白い!!
一気に読んでしまいました。
繊細に、細部まで丹念に紡がれた一枚のタペストリーみたいな作品だなと思いました。
魔法とか、禍々しい呪いとか登場するのに、荒々しい筆致の油絵みたいな感じじゃないんですよね。
どこか静謐さを感じるのが不思議なんだけど、yocoさんの絵とこれまた合っていて素晴らしい相乗効果が!
攻めも受けもどちらも素敵なキャラで、この二人には是非とも幸せになってもらわないと困る!!と思いながら読みました。
特に攻めのグシオン。
惚れる……!
嫁入り道中のリディアをあれこれ気にかける描写、滲み出てくるような愛情の深さ、誠実さ、勇敢さ、これは惚れるしかないって感じ。
私も嫁ぎたいっ!!!とアホなことを思ってしまいました。
そして受けのリディルの健気さがこれまた至高で。
「身代わり花嫁」ものって結構読んだ気がするんだけど、なかにはぶっちゃけ陳腐な作品もあると思うんですね。
そういう陳腐さが一切ない。
たしかに「花嫁」なんだけど、女みたいだなと感じたところが一つもないところが凄いというか。
受け身の愛されなんとかではなく、自分の非力さに打ちのめされながらも、共に戦おうと戦場へ駆けつけたり、身を挺してグシオンを守ろうとするんですよ。
「愛」なんですよ。
ただひたすらに愛。
もう文句なしに神です。
尾上与一先生が流行りの身代わり花嫁を?
と正直おそるおそる読みましたが、尾上先生は尾上先生でした!
同じように迷っている方、心配ご無用です!
ボリュームも読み応えもガッツリの、一味も二味も違う「花嫁もの」
むしろお題を与えられたら作者の力量が歴然と現れるのだな、としみじみ
鮮やかな色彩溢れる、花々のかぐわしい香りまで感じられそうな確固たる世界
剣と魔法と運命の恋
勇猛で誠実で孤独なグシオンと、美しく健気なリディルが惹かれ合い、互いを捧げるように想い合う過程に涙が零れました
次から次へと謎が解き明かされてゆくラストまで、息も吐かせぬ面白さ!
溢れる花や美しい衣装、戦いの迫力、ダイナミックな魔法、そして二人が交わす秘めやかで甘い褥まで、先生の絢爛たる文章に酔いしれます
そして!
yoco先生の表紙が!口絵が!挿画が!
一幅の絵画のような眼福です
絢爛豪華な目眩く物語絵巻、ありがとうございました!
尾上先生作品はキャラ文庫アンソロジーで短編しか読んだ事がなく、初めて読みました。
あらすじに惹かれて購入したのですが、人気のある作家さんはやはり実力があってとても読み易かったです。
神評価にはしましたが冒頭からリディルを取り巻く人々がメソメソしてて、悲愴感満載なのには読んでて辟易しました。ちょっと煽り過ぎですね。だから途中で妙に冷めてしまってグシオンに実際に会って、酷い人物だったら悲嘆にくれろよって何度も思ってしまいました。
でもグシオンが登場してイル・ジャーナ国に入ってからはとても面白くて、ページをめくる手が止まりませんでした。
グシオンの優しさにドキドキして、彼にかけられた残酷な呪いにハラハラしたりとファンタジー作品の良い所が全部入ってました。
そしてリディルの諦めない強さはとても好感が持てました。
花嫁ものは、もはや形式美。テンプレ導入部からの展開を読ませる、大喜利の域です笑
作者の落ち着いた文体やyoco先生のイラストから、しっとりとした上品な物語なのだろうなと期待したとおりの、欧風ファンタジーでした。
最初から最後まで息もつかせぬ展開でありながら、きっちりと構築された世界観の中で全く破綻なくハッピーエンド。素晴らしいです…!
死を覚悟したエウェストルム国王子、リディルの気丈さと優しい気性がまず魅力的ですし、彼を迎え入れる相手国、イル・ジャーナの若きグシオン王も、凛々しくて思いやりもあって、しかも歴代きっての魔術王なんて…謎めいていてドキドキ…。
それぞれの側近も対照的で面白い。リディル側のイドは絶対服従系、グシオン側のカルカは主君独占系。どちらも主君を思えばこそ、涙を流したり、意地悪したりと生身の感情を見せてくれます。カルカ実はいいやつ説笑
キャラたちもストーリーも完璧でしたし、二人の初夜や睦み合いの、慎ましいようで大胆なエロシーンもすごく好ましかったです。グシオンが地下室で過ごすところを初めて目にしたリディルが衝撃を受けるシーンには思わず涙が…。
美しい風景を想起させる、とてもきれいな文章で読ませてくださるのですが、同じことを何回か繰り返す描写があって、あ、これさっきも読んだな、あ、また出てきたと思うとちょっと醒めてしまったところもあります。特に世継ぎの件については、リディルは男なんだから仕方ないことだとわかっているから…って。
裏で大活躍してくれたキュリには覗き蜥蜴を食べさせてあげたかったな。
ともあれ、お話の世界にどっぷり浸れること間違いなし!
作品を読む前にレビューは読まないのですが、電子書籍でお世話になっている別サイトで、作者が苦手だったけど本作で克服した風なレビュータイトルがチラッと目に入ってしまって。デビュー作で心が折れて同じ思いでいたので、読んでみてよかったです。
これから積み本読むのが楽しみになりました。
私、小説を読む上で登場人物の一人称が何かで好みが加速するタイプなんですが、この作品でまた新たな扉を開いちゃったので是非ご紹介させてください。
主人公のリディル王子の一人称は予想だと『私』もしくは『僕』『俺』あたりですよね。身代わりとして嫁ぐなら『私』が有力候補かと。
正体がバレた時点で一人称がかわる可能性もなくもないなと思っていたんですが側近イドとの会話で『私』とあったので日頃から『私』なのだとわかります。冒頭の父王との会話でも『わたくし』なので大きくかわることはなさそうだなと。
この時点で私の萌えポイント点灯しました!
リディルの聡明さや謙虚さが伝わり、甘々なタイプではなさそうだと感じたからです。やったね!私の好きな受けタイプだ!と。
さらに神ポインをつけるには攻めであるグシオン王の一人称がどうなるかにかかっていました。
この一人称で王の性格もある程度わかるはずなのです。わがままや横暴なタイプなら『俺』や『私』とか。でもリディルが『私』なので、できれば『私』ではない方が読みやすい。リディルより年上なので『僕』もちょっとタイプじゃないなぁと思っていたんですが、尾上先生が何をチョイスされたと思います?
なんと『余』ですよ!
でも、まだ私は驚かなかった。公の場で王が『余』と言うことはこれまで読んだ小説にもありましたから。
閨での場面や受けと想いが通じ合ったら素の一人称がでるやつでしょって思ってたんですよ。それがあらあらまぁまぁ最後まで一貫してこの王は『余」だったんですよ!!
この一人称チョイスが素晴らしいと思ったのは実に王の『らしさ』をあらわしているにもかかわらず、素が見えるようで見えない絶妙な一人称だったからです。
ストーリー展開をよませず、さらに王とリディルが絶妙な距離に感じるのはこの一人称のチョイスがあったからではないでしょうか。
ちなみにリディルもクライマックスシーンで『私』ではなく『余』を使います。これがまた効果的で凛々しい!
リディルと王の想いが通じ合ってからの王が『余』と話すたびに甘い言葉の中にさらに王としての威厳が伝わるような、、、とカッコよさに惚れ惚れしていたらラストのセリフですよ。やられましたね。
私達をどうしたいの(笑)
もう、この王じゃなきゃ物足りない!
私、イル・ジャーナの国民になります!!
是非、皆さんもリディルと一緒にグシオン王に骨抜きにされてください!