つらい別れを経て再会した明渡と苑のその後は……? 「キス」続篇!!

ラブ~キス2~

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ラブ~キス2~
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神106
  • 萌×237
  • 萌16
  • 中立6
  • しゅみじゃない4

--

レビュー数
14
得点
732
評価数
169
平均
4.4 / 5
神率
62.7%
著者
一穂ミチ 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
シリーズ
キス
発売日
価格
¥620(税抜)  
ISBN
9784403524790

あらすじ

再会してもうすぐ一年、
明渡(あきと)と曖昧な関係を続けていた苑(その)。

頻繁に食事を共にし、時折キスをする、けれどそれだけ。
明渡の真意がわからず、問い詰めることもできず、
心も身体もどこにも進めずにいた。

そんなときマンションでトラブルが起こり、
苑は明渡のもとに身を寄せることになる。

渋々だったがふたりの生活は単純に楽しかった。
けれど近所には
かつての自分を思い出させる少年が住んでいて……?

表題作ラブ~キス2~

雑賀明渡、起業家
蛇抜苑、マッサージ師

その他の収録作品

  • スプリング(あとがき代えて)

レビュー投稿数14

胸震える続編

「キス」の続編です。「キス」を読み終わっていてもたってもいられず、すぐこちらを読み始めー

もう、最後のプラネタリウムでの明渡の願い事に、涙が溢れて止まらなくなってしまい、しばらくページがめくれなかった。。

ハッピーエンドながらも、どこか常に切なさを感じさせられ、涙してしまう物語でした。

前作での辛すぎる別れと再会。続編のこちらは、上階の水漏れという偶然の出来事から明渡の部屋で一緒に暮らすことになったものの、キスだけはするという微妙な距離感のままの二人と、そこに昔の苑を彷彿とさせるような子供が現れー

と続くお話です。

この、”昔の自分を彷彿とさせられる”存在である実留(みのる)に対する苑の感情が、とてもリアルで痛々しくそして生々しく感じられ、胸が痛みました。
その「愛されたい」と願う心の内が、そして愛されたいからと甘えるその子供ながらの態度の全てがリアルに分かってしまう苑。
不快だと感じ、見たくない、手を貸したくないとそっぽを向こうとするも、実留が公園で捻挫をした時には放っておけず手当をしてあげる苑。

「自分がしたような経験は他の誰にもしてほしくないから」と言って手助けしようとするのが映画やドラマや物語のヒーローなのかもしれないけれど、苑は決してそうではないんですね。

そこがとても人間らしいと思ったし、今まで無感情になんでも受け入れているように見えて、実は「愛されること」を乞い願ってきた自分、というものに初めて気付き、見つめることができた。それは苑の再生にとって必要な過程だったんだ、ということが明渡の言葉を通して痛いほど伝わってきて、読んでいて胸の痛みが最大限になった箇所でした。

高校時代の、苑がまだ明渡に恋をしていなかった頃のランタンの思い出が呼び起こされる秀逸なラストには、感動の涙が止まらなくなりました。

0

正直、無くてもよかったです。

前作「キス」がとてもよくて、続編である本書を楽しみに読み始めました。
前作の終わり方に物足りなさを感じた方向けなのかな、という感想を持ちました。
前作「キス」の最後まで頑なだった苑が、本書では本当の意味で自分自身と向き合い、トラウマである親との過去や不遇だった少年時代を受け入れて、明渡への恋愛感情をも認め、前に向かって歩き出すまでが描かれています。
それだけに書かれている内容はひたすら自分との対話が中心のために重いですし、やはりあれほどの重石を背負ったところから一歩脱却するにはここまでの事がないとリアリティがないのかというほどに、エピソードが盛り盛りになっています。

正直なところ、私は前作がとても気に入っており「神」評価だったのですが、本書は言ってしまえば蛇足というか、「キス」のままでよかったと思いました。
苑は本書により、やっと歩き出せたとは思います。明渡のこともきちんと好きだと素直に認めて本人にも告げて、わかりやすいラストシーンだとも思います。でも、苑には、無理にこうなってほしくなかった。
苑は自分と自分以外の間に壁を作って、ある意味拒絶して生きている。それは生い立ちや性格や、後天的な影響から成り立っています。前作「キス」においてはそのことが顕著で、だからこそ明渡や城戸や果菜子といった、苑に好意的な人に対して好意を無かったことにする、好意は存在しないと解釈する態度、対応は、仕方ない、ネガティブ思考の延長だと思えます。
それが本作「ラブ」になると、社会人になって自活していて人を愛する経験も知った苑は、前作の状態とは大きく異なる位置に居るわけです。前作のラストシーンには明らかに変化をしているので、「ラブ」のスタート地点と「キス」における苑ははじめから違う。
だから、前作と本作と同じ言葉を喋っても、同じ態度をとっても、もう前作のときのように苑を見ることができません。前作よりも少し前を歩いている苑だから、好意をあらわしている人に対して(具体的には明渡)こんな態度をとるのは、たちの悪い傲慢としか映らないし、媚びているようにも見えました。苑に対してがっかりしながら本作を読む苦痛。こういう苑なら見たくなかった。

当時の苑を思わせる五年生の実留とのエピソードについても、私にとっては今ひとつな掘り下げでした。虐待されている実留を登場させて苑と対峙させることに、拒否反応すらおぼえました。しかも解決が雑というか、本当のお父さんが現れて引き取られて、二人を見送る苑と明渡、という構図に、なんだったんだろうと思わざるを得なかったです。

0

2冊続けて読める幸せ

明渡と苑の間に起こった出来事は、全てが必要だったし何一つ無駄では無かったのだと「ラブ~キス2~」を読むことで思いました。

そして2冊続けて読めたことに感謝しています。2冊一気読みするべきですし、番外編も収録して一冊にして欲しいと思いました。


再会して明渡が東京に戻って来たものの、2人の仲はなかなか進展しません。

それでも明渡視点のお話や城戸の会話から、あの事故以前から明渡にとって苑は特別だし、誰も苑の代わりにはなれないということを知りました。

ようやくストンと納得出来ました。

実留を放っておけない明渡の理由も、目を背けたくなる苑の気持ちも理解出来たし、その後に実留に訪れた転機に良かったと涙が溢れました。
苑が自分に向き合って起こした小さな行動が報われて本当に良かったです。

そしてようやく苑が気持ちに正直になろうとした時の出来事に、まさかまさかとハラハラさせられて。苑の不安にこちらまで苦しくなりました。

でもそれがあったからこそ更に一歩踏み出せたし、自分を気にかけてくれる人達の小さな好意にも気が付けたんですよね。

まさに「ラブ」というタイトル通りのお話でした。

最後のプラネタリウムのランタンのシーン大好きです。

4

恋って簡単なものではない。

キスからの続編。
はっきり言って、前作は読んでいて浮き沈みが多く、結構辛かったので、今作を読むのに時間がかかりました。

苑への恋心を無くした明渡だが、幼き頃の事故の前から苑を気遣っていたし、それは相手が苑だから。また苑を好きになっていく明渡は、時間をかけて苑との距離を縮めている感じ。
そして、苑は手術後の明渡のことがあるため、受け入れて無くすことを怖がって進めずにいる。
二人の性格がしっかりと画一されているからか、周りがどう言おうと二人で解決しなきゃならないのがもどかしいのですが、それだけ時間をかけて得た関係を最後に見られて良かった。
明渡が苑に投げかけた問いかけを読んだとき、涙がでました。

1

No Title

出来の悪い小説ではなく一冊なら良くまとまってる作品だと思います。
でも前作の余韻を残したラストにこの作品は蛇足だと感じてしまいました。

かつての自分を彷彿させる少年を家に居させたくないと思う苑と、人助け当たり前じゃね?という感覚の雑賀はやっぱり根本から違うんだなと。

でも忘れたい過去を想い出させる人間を近くに置きたくないというのは当然の事なのでは?
ドラマ要素が薄いので雑賀の無神経さが余計気になりました。

4

「愛」という形のないものだからこそ

あまり積本てしない方なのですが、この作品は買ってすぐに読むことができませんでした。

前作『キス』は好みが分かれそうな作品。なぜなら、二人の恋がハピエンで終わっていないから。でも、だからこそ、個人的に余韻があってすごく心に残った作品でした。

今作品はその『キス』の続編で、タイトルが『ラブ』。

甘々の、ふんわりしたストーリーだったらどうしようかな、と思ったら何となく読めなくなった。

が。

さすが一穂さん。
素晴らしかった…。

キャラの心情の動きが、繊細で緻密な文章で描かれている。
「人を愛する」って、優しいだけではない。
痛みも、苦しみも、哀しみも同時に連れてくる。
そこを乗り越えて、初めて心の奥深くにまで染み渡ってくるものなんだと。

前作で頭部の手術後に苑への愛情をなくしてしまった明渡。
そもそも、苑への愛情は、血腫から引き起こされた「勘違い」だった。

という、残酷なストーリーでした。

明渡のことを本当に愛しているから、自分への愛情を無くした明渡を手放してあげたい。

そんな苑の一途な想いに心打たれ、そして彼が悪いわけではないものの、自分勝手ともとれる明渡に憤りを感じた腐姐さま方も多かったのではないでしょうか。

今作品でも、明渡の自分勝手ともとれる行動は健在。
恋愛感情はないけれど、でも苑を放っておけない。だから、そばにいる。

お前、いい加減にせえよ!

と、明渡に対して思いつつ、けれど明渡は苑を愛していないわけではない。

「愛」というものの形の難しさを、一穂さんは見事に描き切っています。

親子。
恋人。
夫婦。
友人。

愛と一言で言っても様々ありますが、今作品は明渡視点での描写を入れることによって無理なくその部分を著しています。

子どものころからの親からの虐待により自己肯定感が極度に低い苑にとって、「自分を欲してくれる人」の存在は理解しがたい。自分が愛される存在だということを信じていない。

その彼のネガティブさを取り除く因子として登場するのが、実留という少年。
実留も親からの虐待を受けている少年ですが、彼の存在が今作品のキーポイントだったと思います。

実留が彼の親から虐待を受けていることは、自身の経験からすぐに見抜いた苑。
けれど、実留に救いの手を伸ばすのは、苑ではなく明渡なんです。

かつて、明渡によって精神的にも肉体的にも救われた苑。
自分にとって太陽のような存在だった明渡。

けれど、明渡が優しいのは、自分にだけではない。誰に対しても等しく優しい。
放置子に手を差し伸べることの難しさと、自身の自身の無さ、明渡への想いと嫉妬心。

それを、実留という少年を登場させることで難なく表現して見せる一穂さんの手腕に圧倒されました。

実留を救ったことで、苑は自分自身にかけた呪縛が解き放たれたのだと。
実留が救われたことにも、そしてそのことによって苑も救われたことにも、心の底からほっとしました。

苑は、ずっと独りぼっちだと思っていたけれど、実はそうではなかった。
いつも、彼に手を差し伸べてくれる心優しき人たちはいた。
そのことに気づけたのも、実留、そして明渡の深い愛情あってのことで、涙が止まらなかった。

前作が素晴らしかっただけに、続編である今作品を読むのがちょっと怖かったのですが、めっちゃ良かった…。『キス』、そして『ラブ~キス2~』の2作を読んで、初めて完結する作品で、もっと早く読めばよかったと後悔しきり。

苑の上司であり、よき理解者でもある城戸さんの存在も非常に良し。
彼メインのスピンオフが読んでみたいな。

そして、特筆すべきはyocoさんの挿絵。

何となく切なく、哀しく、でも明るい未来も感じさせるyocoさんのイラストが、この作品に合っていて非常に良かったです。

形のない「愛情」を求めるからこそ、すれ違いながら遠回りしながらも、それでも相手を愛し、必要とし、もがき苦しんだ彼らに、これからずっと幸せでいてほしと願ってやみません。

10

誰にも必要とされずに育った子供が人や自分を大事に思えるようになるまで

『キス』の続編

前作で、明渡は幼馴染の苑に対して突然生まれた多幸感溢れるキラキラとした恋愛感情が頭の手術をした後、急にその想いが消え去り執着心がなくなってしまったことから想いに違和感を持ってしまったということから二人の関係が終わったのでした。

それを聞かされた苑にしてみたら、まるで今までの想いは嘘だった、勘違いだったと言われたようなもの、ショックでした。
というのが前作のお話でした。

それからの再会で感情が元に戻ったわけではないけれどもう一度今の二人から始めてみようというところで終わったけれど、面倒くさい苑が「なんでそんなに好きだと思ってたのかわからない」と言われたことをなかったことにはできないし、その一瞬で苑の想いも冷めてしまったのだからやり直しも再出発も簡単にはできないと思っていたのですが、きっと押しの強い明渡の性格で何とかするんだろうなと想像してました。その『なんとか』の過程が今作なのだと思います。

苑と似たような境遇の虐待されている少年との出会いと触れ合いが苑の中で大きな転換だったと思います。
愛されたがったり構ってほしがる惨めさがわかるからこそ、それを見せつけられる辛さや嫌悪する醜さに押しつぶされそうになる苑でした。

誰も自分と同じ不幸な目に合わせたくないとか、好きな人のためなら自分は身を引いて遠くにいても幸せを祈り自分もしっかり生きる、という綺麗事のようなことは考えられないという苑の気持ちがとてもよくわかりました。
そして、明渡に対していつでも逃げられるように構えていたり、真正面から向き合わないまま流されるように暮らす苑がいつか来る終わりばかりを見つめているようで苦しくなる展開でした。

明渡が虐待される子供を厭う苑の状態について、やっと子供の頃の思いが吐き出せるようになれたと気付いてあげた場面にホッとしました。

ただ明渡には、身内のためとはいえ危ない目にあったり連絡が取れない状態で苑を不安にさせるようなことは慎んでほしいとは思います。
苑がこれからもぐるぐる迷子になったり後ろ向きになることは少なくなさそうなので、見放さず見守ってほしいものです。

3

苦くて複雑な味

萌の上位としての神評価ではないです。萌えとは違うのだけれども、間違いなく心に響いてしまうので、現行の表示では神としか表現できないんです。

大好きな作家さんの大好きなBL小説なのに自分の思い通りの展開には行かないところに引き込まれます。いい意味で作品に振り回される感じ。はっきり言って苦いです。タイトルの甘々さがまた内容とコントラストがあって印象に残ってしまいます。甘くてハッピーなものを求めている方にはお勧めしませんが、この複雑な味わいは他の作品では代用できません。読者のテンションとか環境とか色々なものに左右されて読後にその人の中で完成する作品ではないかと思います。

内容自体は魔法も大金も出てこないし普通っていえば普通なんですけどね。その裏には常に普通ってなんだろう、っていう道徳観が着きまといます。展開よりも思考を味わいたい方におすすめです。

作品内のテンションの上がり下がりが微細ですので、作品の温度が変わるところを見逃さないよう一気に読むのがおすすめです。

とりあえず、私は読後クレープを作って食べました。

15

暗い…

ちゃんとハッピーエンドにはなりますが、一穂さんの作品の中では暗くて可哀想なお話です。読みながらおぼろげに思い出してきたけどシリーズ前編の方がもっと残酷でしたね。両思いになった途端に打ち砕かれる、みたいな。

BL作家ってドSじゃないと書けないと思います。序盤で受けをいかに肉体的または精神的に痛めつけるかっていうのが結構重要で、苦労した部分が多くないと最後の幸せを強調し、感動させられないですから。

ただ今回の場合、受けの育った環境が酷く、幼少期から辛い思いをしてきて大人になってからも、不幸のデパートみたいに受けの周りには不幸や不幸な人が寄ってくる、みたいな展開が鬱になりました。自分の過去と同じ境遇の子に出会って、同族嫌悪になり、乗り越えたはずの過去がフラッシュバックする所が辛かったです。

最近のイエスかノーか…の番外編でもいじめ問題を扱ったり、今回の話では児童虐待が扱われていたり、ニュースで見ない日はないくらい重い社会的問題ではありますが、BLでまでそれを目にする度合いが多くなるとちょっと萎えるというか、心を動かされる箇所がBL部分以外っていうのが複雑です。

3

変わったもの、変わらないもの

一穂先生の作品の中でも印象的な2人のお話です。
やっと幸せになろうと前を向いてくれてよかったー!!の一言に尽きます。

ただわたし自身が(苑のような境遇では到底ありませんが)あまり真っ直ぐに育って来なかったので、どうしても苑と実瑠の間の感情に移入しすぎて読むのが辛かったです。あと苑も怒っていましたが雑賀家の明渡への対応もモヤっとして…
(もちろんこれは個人で感じ方は違うと思います。)

なにかが変わってしまっても、結局のところ苑は明渡のことが好きで好きで、明渡も苑を死んでも離せないんですよね。
自分には愛される価値がない、愛を欲することが恥だと思う苑が、明渡と周囲の人の想いに触れて決意する姿にはじーんときました…

めでたしめでたし。という終わり方ではなく、(これからどうなるか分からないけど)これから大切な人を信じて生きていく、という2人の始まりを感じさせる終わり方だったのがまた良かったです。
いつかの2人があげたランタンが、今作のラストでも生きてくるのがもう…!涙
どうか、どうか、2人がこの先支え合って幸せに歩んでいってくれますように。

5

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