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女性桜の夜さん

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1話読み切りが良かったかな。

1話目は、二人とも可愛くて良かったです。
2話目以降は、自分の好みとはベクトルが違う感じでした。

10年も同居している親友。ココロの上でははもう、熟年夫婦並みの信頼関係がある。
それがある日、恋人になったら……いちばんの懸念事項はカラダの問題だよね。まあ、それはもちろん大事。
でもそれ以外にもいろいろあるよね。
ライブデートのところなんかは好きでした。今までに何度も一緒に遊びに行っただろうけど、それがデートになるっていう、嬉し恥ずかし感。こういうのをメインで見たかったんだけど、あっさり流されてしまって。すぐに話がベッドになだれ込んでしまう……。
事前にちゃんと話し合うとか、ゆっくり馴らしていくとか、二人の間で時間をかける分にはいいけど、そんなにページを割いて生々しく見せられると、私にはちょっとお腹いっぱい。

あと、秋貴の顔が私には逆効果で。
顔立ちというより、仁だけが知っている秋貴の素顔が、睫毛くりくりの美人……というのが苦手でした。

お互いに歩み寄ることって、大事。

「純愛」というタイトルだけど、8割ぐらい「家族愛」という感じ。でも2割はしっかり「夫夫愛」! いろんな形の愛に溢れた1冊でした。

愛情の象徴、という感じで美味しそうな食べものがたくさん出てきたけど、単に「手作りこそスバラシイ!」だけじゃないのがいい。
料理が苦手な礼央母や尊母にもちゃんと愛があるし。売店で買った普通のチョコ一粒だって、愛が伝わる。
かといって、華麗なお料理を披露するマダムたちを悪し様に描くのでもなく。彼女たちも基礎的な料理を本当に美味しく作れる(そしてそこに尊がちゃんと気づく!)のが、これまた素敵でした。

大活躍してくれた芳子ちゃん。登場前の1・2巻では礼央に冷たい感じで印象悪かったけど、この巻では好感度爆上がりでした(考えたら、いきなり夫の隠し子が出てきたら最初はまともな対応なんてできないのが当たり前だしね……)。
すっかり礼央に肩入れしちゃって愛情深いところを見ると、誠志郎も子どもの頃はなんだかんだ芳子ママに守られて来たんだろうなって気がする。指輪を28回返したって言うのも、大部分それじゃないかな。

今回の誠志郎と尊の夫夫喧嘩も、まさに父親vs母親!って感じでした。
ただ私は誠志郎党員なもので、最初は尊の言い方が酷すぎて……
真面目で優しい誠志郎が板挟みで辛いことぐらい気づけよ!
誠志郎が礼央を大事にしてることも、重すぎる責任や使命感をその肩に負ってることも、側で見てたらわかるだろ!
不器用な受けの心に寄り添えないとは、攻めの風上にも置けんヤツ!
……と思っちゃったけど。
でもこれ、そういう話じゃなかった。お互いに足りないところがあって、すれ違って、ぶつかり合って、それでも相手を想いあって、歩み寄りあって、また連れ添って行く……そういう話なんだった。ふうふって、そういうのが大事。

朝倉さん、尊に気づきのヒントをくれたり、今回は芳子ちゃんと並ぶ大活躍だったけど……結局この人は何がしたいんだろう? 政治家としてのややこしい損得勘定(京極大臣の内情を把握するとか恩を売るとか…)もあるんだろうけど。
いちばん根っ子の部分では、やっぱり誠志郎をほんとに心配してくれてるのかな。オレの可愛い誠志郎が、また父上に無理難題やらされてるのか?! 胡散臭い男にたぶらかされてるのか?! ……なんて。
個人的希望としては、恋愛感情じゃなくてブラコンであってほしい。尊とおとな気なくマウント取り合うのが好き。朝倉さんに「嬉しいです…!」みたいな顔しちゃう誠志郎も好き。

礼央母はどうしようもなく愚かで浅はかだったけど、最後はきっぱり礼央を選んだのはまだ救いがありました。尊と誠志郎が言ってたように、礼央を見ていたらちゃんと親に愛されて育った子だとわかるっていうのもあるし。健気に頑張ってきた礼央がママの元に戻れる目処が立って良かった。
でもこれで、3人の親子生活はカウントダウンが始まってしまったのか……寂しい。

可愛さとカッコよさの振り幅!

Dom /Subを読むのは初めてです。というか、「第二の性」がある系は個人的に好みじゃなく避けてきたんだけど……試し読みしたら、なでなでされてるマサがあまりに可愛くて。定期的に我に返っちゃう二人が楽しくて。
全編通して、期待を裏切らない可愛さと楽しさ、そしてマサのカッコよさ!で大当たりでした。普段は割と受けらしい受けが好きなほうなんだけど、たまに男前受けにドハマリしちゃうんですよね……(ゆくえ先生の『白刃と黒牡丹』も大好き!)

全くの素人の私でもわかりやすくDom/Subのおもしろいところは味わえて、だけどいちばんの肝はダイナミクスを超越したところにあるのが凄く良かった。

マサがとにかくカッコいい。オトのコマンドで可愛くなっちゃうくせに、いざとなるとコマンドに逆らったり、コマンドを「言え」って迫ったり、強すぎる力をどーんと受け止めてくれたり。
「俺も強いDomなんで!」って、いい意味でプライドがあるからこそ、かえってオトを受け入れることに全く躊躇がないの、ほんと器が大きくて惚れました。
でも、十代のころのマサが今と全然違って無表情なのにもびっくり。最初からこんなに余裕ある男だったわけじゃなくて、何にもないところから1段1段ステップを上がって叩き上げて来たんだ……カッコよすぎでしょ。
そんな中で、マサの原動力になったできごと。小さいけど眩しい光だったんだろうな。

オトの方がまた、素直で真面目で可愛いのに力は規格外に強い。コマンド言うときの瞳が、いかにも常人離れしてるって感じでゾクッときます。なのに、限界オタクなところがあったり、メソメソしたり、やっぱり可愛い。
もともと憧れてたマサと思いがけず特別な関係になれちゃってから、気持ちがどんどん加速していくの、わっかりやすいなあ。目が、表情が、全身のオーラが、キラキラキラキラしちゃって、好きが溢れまくってるの。

コマンドを出す側と受ける側がダイナミクスを越えた部分では逆転するのが、ただ奇をてらった設定じゃなくて、めちゃめちゃ萌え滾る関係性でした。
第1話でマサが試して全拒否された「コマンド」を、第5話でそっくり繰り返すのが鳥肌もの。

可愛い×10+α

新装版が出ましたが、所持しているのはこちらなので、こちらにレビューします。
冥界の王子たちが10人ずらっと登場して、最初は覚えられるかなと思ったけど、主役も脇役もみんな個性的で可愛い子たちで、するっと覚えられました。生まれたときからみんな一緒、性格はバラバラだけど根は素直で仲間思いで、どこか育ちの良さを感じるほのぼの感。幼馴染み好きには堪らんです。3組のオムニバスだけど、1組読むたびに、「あーやっぱりこのカップルがいちばん好き……」と思ってしまうぐらい、全員大好きです。

【宋帝×閻魔】
閻魔大王といえば、冥界の十王の中でいちばんメジャーというか、この王様しか知らなかったけど……赤い顔で怖いイメージ。それが、二代目王子だと、生真面目で負けず嫌いの赤面症になっちゃうんですね~。生真面目キャラらしくウブ&鈍感なのも、安定の可愛さ。
宋帝は「邪淫」を裁く王の二代目ということで、いかにもチャラそうなんだけど、これが意外と一途で一生懸命。
最中に「大丈夫?気持ちいい?」って聞くのがね……閻魔を気遣ってるのはもちろんエライけど。実は宋帝だってこれが初めてだったわけですよ。ちゃんと好きな子を良くしてあげられてるのか、自信なんてないんだな……可愛いヤツ。
片方が一枚も二枚も上手なようで、案外たいした違いがなくて、これから一緒に育っていく感じ……同い年の良さだなぁ。

【泰山×平等】
泰山がホントどこまでもマイペースで朴訥なんだけど、じわじわといい男ぶりを発揮してくるのがツボでした。
特に、「髪、切ったらダメだから」が刺さりました。平等の綺麗な髪が好きってだけじゃなく、その綺麗な髪を保つための努力を知っているからこそ大事にしたいんだろうな、っていうところ。
幼少期エピソードがまたドツボで……平等からしてみたら、ずーっと弟のように思ってた泰山がいつの間にか大きくなってて、頼りがいある男になってたけど。泰山からしてみたら、どんなに二人の関係が変わっても、根本にあるのは強くて優しくてカッコいい平等。こういう幼馴染み関係も尊い~。
そういえば閻魔編でも何気にナイスアシストしてた泰山。寝てばっかり不合格ばっかりでぼんやりしてそうに見えて、案外ズバッと本質を突いてくるところがあって、大器晩成タイプ!って感じ。(五道もカッコよくて好きだけど)

【秦広×黒笠】
わちゃわちゃ可愛い2組の話から、いきなりダークな雰囲気の黒笠登場で、最初はえ~好みじゃないかもと思ったけど。妖艶で謎めいた年上のひとに、真面目で純情なお坊っちゃんが夢中になっちゃうの……か、可愛いな?!!!なんか、新しい扉が開いてしまった。
事に至る前の、「無理でしたら…」からの「ああ、できそうですね」っていう……こういう表現のしかた、すっごいヘキです。で、事後の、お人好し全開な秦広がまた可愛くて。
黒笠が、妖しげな外見や秦広を翻弄する行動の一方で、どこか品格と知性があってビッチ感がないのが良かった。そして身の上が明らかになってみれば、ストイックでカッコいい人だった。
最後の1コマも好き。こんなに身長差あったんだ、この二人。成長した秦広の頼もしさと、重荷を下ろして本来の姿に戻ったセイの、新しい関係を感じるような。

王子たちみんな、とにかく可愛くていい子でいい男で、将来が楽しみな子ばかり。この子たちになら、死んだあと裁かれたい。

全部じゃなくていい。

※前作『イキガミとドナー』のネタバレを含みます

(上巻のレビューからの続き)

失踪を繰り返すわりに、なんか中途半端に滝を受け入れる柴田。本人は無自覚だけど、滝に甘えきってるんだろうな。滝ならきっと追いかけてくるって、知っているから逃げる。
考えたら、二人にはすでに7年もの歴史があるわけで。滝に想われ続けて、絆される下地はとっくにできていたんですね。
この10年、柴田は復讐に取り憑かれていたようで、やっぱりちゃんと人間らしく生きていたんだなって思います。鬼道のことも、復讐に利用する思惑もありつつ、孤独な彼を守りたい気持ちもあったんじゃないかな(もちろん無自覚で)。あの鬼道が感じ取れるぐらいには、そして滝が嫉妬するぐらいには、鬼道を気遣ってきた。
悲願を遂げたらもう空っぽなわけじゃなくて、この10年で新しく築いたものもある。それが滝や、鬼道や、吉野との関係。
鬼道といえば、前作では「オレ バナナ スキ」レベルだったのに、「今はこんくらい溜まってる」なんてね……成長したよね。グッときたよ、鬼道。

柴田にお店のものを「全部」あげたいと言う滝に、おばちゃんがくれた「うちで一番」のりんご。全てを捧げるんじゃなくて、自分の一番のもの、ただひとつでいい。柴田は滝からそれをちゃんと受け取ったし、自分から伝えることもできたんですね。春人には渡すことができなかった、「好き」という気持ち。

エピローグは、斜め上の展開に面食らったけど、やっぱり泣きました。
春人と遠慮なしにギャンギャン言い合ったかと思えば、目の前で抱き合われても同情の眼差しで見守っちゃうし、仲良く3人で海に行っちゃう滝が好き。今、柴田の隣にいるのが滝で良かった。
読む人によって解釈が分かれるところだと思うけど、私は、来年はもう春人は来ないんだろう、という気がします。
柴田がまだ春人に想いを残しているのをその目で見て、しかも今回のことを柴田は覚えてはいないのに、それでも「来年もおいでよ」と呟くような滝だから。最後の春人の微笑みは、そういう意味なんだと私は受けとりました。

シリーズ通して辛い話ではあったけど、辛くて可哀想だから泣くだけじゃなくて、人を想う心の深さに泣かされる作品でした。

伝えられなかった言葉。

※前作『イキガミとドナー』のネタバレを含みます

前作を読んでいる読者は二人のことを知っているわけで……しかも想像以上に春人がいい子で純粋で可愛くて、読み始めからもうホロっときてしまいます。
けど、さらに想像の上を行っていたのが柴田の可愛さ。冷淡な野心家だと、周囲の人も柴田自身も思っていそうだけど、実はただ、真面目すぎて不器用すぎる人でした。まあプライド高いのは見た通り。そして頭はいいくせに天然で鈍感で無自覚という……。
どストレートに告白されてやっと「ああ…そういう…」って、これまで気づいてなかったんか! じゃあ高校生の頭をナデナデしたのは策略じゃなくて天然だったのか!
柴田が無自覚に春人を煽ったり、無自覚に春人に堕ちていったり……が可愛くて可愛くて。前作の鬼道もそうだったけど、情緒未発達の男が恋をして、人間らしい心が育っていくのってめちゃくちゃ好きです。

でも、お互いを想う気持ちが強くなるほど、追い詰められてしまうのがイキガミとドナーの関係。
イキガミにとって、危険や恐怖に身を晒すことももちろんだけど、それで自分が傷を負ったら、ドナーを傷つけることに直結してしまうのが二重に辛い。ましてそれが愛する人だったら。でもドナーからすれば「全部あげる」ことが愛であり。
同じ場所に包帯を巻いて向かい合う……何という残酷さ。

冒頭のモノローグが作中で繰り返されるんだけど、そのたびに言葉の意味合いが違って見えてくる。柴田の不器用さが哀しい。

春人編はとにかく泣きっぱなしでした。イキガミとドナーの置かれている立場の過酷さや、喪失の悲しさもあるけど……それ以上に、春人と柴田がお互いをただ一心に想い合う、その愛の深さに泣きました。

上巻の後半から滝編がスタート。
滝は、国民から人気があるところとか、柴田に惹かれる過程とか、春人と共通点が多いんだけど、まるっきり春人にそっくりでもない。健気!って感じだった春人より、滝の方が明るい図太さがあって、なんだかホッとしました。

(下巻のレビューに続く)

愛する人と、ただ「明日」を迎えられたら。

(上巻のレビューからの続き)

下巻冒頭から吉野に懐きまくって可愛い鬼道だけど……自分のその感情の正体さえも知らない。自分が誰かを好きだとか、誰かが自分を好きだとか、想像もつかない。生まれて初めて、まっさらな心で恋をした少年そのものな顔がほんとに可愛いです。
可愛くて、可哀想で、可愛い鬼道。目つきが悪くて下睫毛が長いデフォルメ顔も好きです。鬼道の言葉を「オレ バナナ スキ」に変換しちゃう吉野も的確すぎて笑いました。
吉野は鬼道をよく理解してるし、職業柄こどもの扱いにも慣れてるから、鬼道が未来を描けないことも当然想定内だったと思う。それでも敢えて、能天気すぎるぐらいの幸福な未来を自分は描いてみせる。鬼道の前でどこまでも「普通」の人間で居続ける吉野。「普通」もここまできたら偉大です。

吉野の愛に包まれて、イキガミを辞められる?という希望も見えてきて……でもそこでハッピーエンドにさせてはくれないんですね。さらに抉ってきます。容赦ない。
極限状況で二択を迫られて、鬼道といたい、他のものはどうだっていい、と願った吉野。ドナーとしても、教師としても、いつも人に尽くしてきた吉野が、ここに来て自分のエゴをとった。
孤独に傲慢に生きてきた鬼道は、吉野に出逢って人間らしくなってきて、愛を知った。そしてここに来て、他人の心もわかるようになってしまった。仲間たちにも愛し愛される人がいて、お互いを失いたくないのだと。
何というジレンマ。でも鬼道はそれを「灯がともった」というのね……。尊さにただ泣くしかないです。

どちらが正しいか、なんて答えはないし。
世の中の不条理も簡単には解決しないし。
ただ、柴田の投じた一石が変化をもたらして、鬼道と吉野は一緒に「明日」を迎えられるという小さな幸せを得るラスト。1年後、数年後はわからなくても、ただ1日1日を積み重ねていく。
もう、BLもファンタジーも超越した、壮大にして根源的な愛の話でした。何度読んでも全編泣きます。

でも、BLとしてもちゃんと好きな作品です。
可愛い可愛い鬼道が、恋をして成長して幸せになっていくのを見守れて、ほんとうに良かった。

鬼道が可愛くて愛おしくて泣けてしまう。

近未来SFっぽい雰囲気だけど、Science Fiction というにはあまりに非科学的なので、魔法ファンタジーと思った方がしっくりきます。無双の魔法戦士イキガミと、彼を世界でただひとり治癒できるドナー。お互いにいい匂いがするから抗えない。
私はオメガバを読まないので、この「抗えない」システムが最初わからず、あまりにも傲慢にレイプまがいのことをする鬼道が苦手で……そして怒るわりにあっさり受け入れちゃう吉野も意味不明で、初めて読んだときはそこでつまづいてしまいました。でもその後、これはいわゆる運命の番と同じかと納得したら、いきなりどハマりでした。

「国を守る」という大義名分のもと、公然と人権を奪われているイキガミとドナー(ここも、SFよりファンタジーと感じる要因。現代じゃなくて中世みたいな倫理観の世界)。
お互いを大事に思うほど追い詰められていく彼らのジレンマが、あまりにも苦しくて辛い。そして、通常よりも幼くしてイキガミになったという鬼道が、(この言葉は好きじゃないんだけど)不憫でしかたないです。
10歳のまま心が成長せず、「守りたいものなんてない」と言いながら、黙々と鍛錬を重ね、粛々と過酷な任務に赴く。孤独な鬼道が吉野に出逢って、少しずつ人間らしい心に目覚めていくのが、可愛くて愛おしくて泣きました。
仏頂面でちゃっかり吉野を抱っこしてたり(ハグというより抱っこ…)。吉野を傷つけてしまって、怖くて近づけなくなったり。でも遠くから見守ってみたり。エラそーに「ハサミ貸せ」って、何その可愛い使い道……。傲慢だけど、ほんとうは素直で、優しくて、責任感が強くて、寂しがり。

吉野がまた、「普通」なところが逆に凄い。
人々が畏怖して特別視するイキガミ、その中でも特に扱いづらい要素満載の鬼道を、生徒と同じ感覚で普通に説教したり、普通に心配したり。
鬼道のドナーが吉野で、ほんとうに良かった。
あと、医療スタッフの小池くんみたいに、吉野以外にも鬼道に遠慮なく接する人がわずかだけどいるのも好きです。
ものすごく辛いストーリーなんだけど、ただ辛くて可哀想だから泣けるわけじゃなくて、逆境の中にちゃんと人間らしい心が確かにあるというところに、涙が出る作品です。

(下巻のレビューに続く)

罪な人たらし攻め×可愛い健気受け

面白かったです!
BLにはじめて触れる男の視点からBLの世界を描いてるのが新鮮でした。腐男子・腐女子キャラ視点でBLについてアツく語るみたいなのは何か妙に気恥ずかしいんだけど(共感性羞恥?)、一歩引いた感じがよかった。作者様があとがきで「バカにしたような」と書かれてたけど、ちゃんと愛を感じました。
BL編集者のタケ子さんや、バイト仲間の腐女子・小春ちゃんもいいキャラだったし(狂犬!)。代替バナナにしっかり刻み海苔がついてるの面白すぎる……!

声を出して笑っちゃうような場面が多かったけど、ラブコメとしてもしっかり読ませてくれて、バランス良かったです。
ミノルが健気で可愛い。私にもだいぶ「ギュン」が刺さりました。
ススムは天然人たらしで、罪な男。ちょっと無神経なところもあるけど、そこがまた魅力でもあり。
無自覚ギュンからはじまって、ドキドキ・ムラムラもちゃんとあり、誤解やすれ違いあり、切ない過去もあり……の王道展開。
激しく心を揺さぶられる感じではないけど、萌えと笑いを供給できて、幸福感の高い作品でした。

私は特に方言好きなわけではないんだけど、ミノルの関西弁はハマりました。酔っぱらってアカンアカン言ってるの、可愛い~。ススムの話し方も柔らかくて好き。「~~なのだった!」みたいなナレーションが入るのも絶妙でした。

理想的な自然体男・国島!

攻めの国島が、「理想的な自然体」を絵に描いたような人で、すごく好みでした!
飄々として、言いたいことはズバッと言っちゃうんだけど、呼吸するように気遣いもできる。理系で優秀だけど、常識人でコミュ力高い。黒髪眼鏡、長身に猫背で身なりに無頓着。庭の野菜で手作り餃子。いつの間にか居ついてる猫。
「ごみ捨て場に男が落ちている」というBLあるある場面に遭遇して、「ほっといた方がいい」と常識的なこと言っちゃうところが好き(でも、結局連れて帰って親切にしちゃうのも)。

国島の人との距離感がすごく心地いいから、二人がす~っと親しくなって、一緒に飲みにいったり、恋愛について突っ込んだ話をしたり、はては海に向かって叫ぶような仲になっていくのも無理がなくて自然に見えました。
この海のシーンがすごく好きです。抑え込んでいた木村の切なさと、するりと寄り添ってくれる国島の包容力。
気の利いた言葉でも、カッコいい行動でもなく、ただ「ごめんなさい」の一言がぐっときました。こういうの、出来そうで出来ないと思う。
台風の日のキスも良かった。やたらとすぐに触りあっちゃうより、こういう息が詰まるようなドキドキ感がいいな。

欲をいえば、国島が木村を可愛いと思うようになっていくところを、もっとちゃんと見たかった。夏になって半袖にドキっ……ベタだけどいいじゃん。冷やし中華にキラキラしちゃう木村に、私も一緒に萌えたかったよ。1コマずつでさらっと流しちゃうのはもったいない。
そしてこれはホントに個人的な趣味だけど、面倒くさい性格の受けが大好物の自分としては、木村がもっと手こずらせてくれてもよかったな。友達を作らずにきたことや、元彼との別れのいきさつからして、いい具合に拗らせてくれる受けだと期待してしまったけど、思いのほかアッサリでした。