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ある日家に帰ると、そこには見知らぬ男がいた――
kokonishika inai futari
二人の閉塞感や、意図的な登場人物の少なさや白い背景がなんとなく「冬」を思わせました。それと、見つめあったり表情で語る場面が、印象的な作品でした。
中程度の長さの2作品が収録されています。
登場人物や背景に共通点があるわけではないのですが、閉塞的な雰囲気が似ています。書き下ろし番外編をぎゅうぎゅうまで頑張ってくださったのか、作者のコメントもないので、作品の世界観に浸れる1冊となっています。
表題作の「ここにしかいない二人」は、槙緒(受)が主人公。突然家を共有することになった顕成(攻)の弱さやらに惹かれます。裏表紙になっている顕成のちょっとタレ目が個人的に好みです。それで泣き虫とか可愛い。
同時収録の「籠」は、記憶喪失の男(受)が主人公。看守のヒゲオヤジが攻なんですが、肩の丸っこさとかに年を感じました。そういや名前が出てきません。わけも分からないまま織に入っているという状況下だからか、二人とも滅多に笑いません。その分、番外編の照れ顔に和みました。
互いの思惑から生じたものでない、奇妙な世界の始まり。そしていずれ訪れる終わりに怯える。有限の世界の中で、精一杯生きる二人の話です。
あと、この作品で興味を持って、他の本も読みましたが、だいぶ趣が変わっていると感じました。私はこちらの方が好きだと思いました。
二人しかいない世界がお好きな方にオススメです。
2作品収録です。
「ここにしかいない二人」
ある日家に帰ると、同じ苗字、同じ住所に住む見知らぬ男がいたーーー
…という奇妙な、底知れない物語。
加東セツコ先生の世界観に驚きを持って読みました。
視点は「津久井槙緒」氏。
帰宅したら男性が出てきて、何かおかしいから一緒に確認したいと言う。2人で見てみると家のものはほぼ半分づつが自分のもので、訳がわからないながらも同居?しながらの出勤を続け、特に弊害もないようなのでこの状況を受け入れようか、という流れになっていく。
ある日一緒に散歩してみようという話になるが、一歩家を出た途端相手の姿が見えなくなる…
どうやら2人の世界は家の中だけでつながっているらしい。
こんなSF的な設定ながら、2人はあまり慌てず騒がず、非常に静かに過ごします。
そして突然始まったこの生活が突然終わってしまう事を恐れるようになっていく。
2人の距離感の変容が非常に面白い。
「津久井槙緒」の方は七三分けのメガネでいかにも真面目リーマン。もう1人の「津久井顕成」の方は一見学生っぽく髪はナチュラルにおろしているんだけど、2人が家の中でだけの時間と空間を共有し始めるとともに外見もどこか似通ってくるのです。
2人暮らしを失いたくなくなってくる「顕成」が「槙緒」に肉体的接触を求め、眠る時は1つのベッドで。起きた時に「槙緒」がいなくならないように…
形を変えた奇妙な監禁もののようにも読める、ちょっとゾッとする話。
「籠」前編・中編・後編
この話も怖い系です。
1人の若い男が刑務所のようなところに収監されていて、記憶喪失で何も覚えていない。
定期的に看守が来て「思い出せ」と言う。
そして少しずつ思い出すその真相と、自分たちのいる世界の秘密は…!
事件の方はともかく、この設定は驚きです。世界観はダーク。緊迫感。
加東セツコ先生の綺麗で動きが少ないような絵柄の特徴がこれらの物語にとてもよく合っている。
だんだん似てくる顔や、心を見透かすような目つき。
いつも通りエロは少なめです。
このカバーイラストからすると、地味目なサラリーマン物といった風情なのだが、この眼鏡リーマンが登場する表題作も、同時収録作品も、これ、けっこうがっつりハードなSF系だよね。
読んでいても、この、硬質な絵に騙されてるような気がするけど、するっと、しれっとSFしてる。
最低限の登場人物だけで描かれていて、ちょっと奇妙な物語風のSFショートショートだ。
なんか、こういうの懐かしい。
また、この絵の雰囲気が、実にお話の気分を盛り上げていて、唐突な終わり方といい、BLにエロしか求めんタイプの方には全くお勧めしないが、BLはボーダーレスジャンル!な方には、けっこうおもしろいと思う。