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futtara doshaburi
2013年にフルール文庫さんから刊行された『ふったらどしゃぶり When it rains, it pours』の新装版。新装版は新書館さんから刊行されました。
旧版も持っていますが一穂ファンとしたら購入するしかないでしょ、という事でお買い上げ。
新装版のタイトルに「完全版」とついていますが、旧版に加筆が加えられています。一穂さんの書かれたあとがき+Twitterによると、旧版はweb掲載からの文庫化という流れの中でページ数的にカットせざるを得なかった部分があったようですが、そのカットされてしまった部分を収録し、さらに書き足した文章も収録されているようです。
という事で、旧版も分厚かったですが、新装版もぶ厚い!読み応えたっぷりな1冊になっています。
内容は旧版のレビューにも書かれていますがざっくりと。ネタバレ含んでいますので苦手な方はご注意ください。
恋人と同棲中。でも、その恋人からはセックスを拒否られセックスレス状態の一顕。
幼馴染と同居し、そして彼から大切にしてもらってはいるが、本当にほしい愛情はもらえない整。
心の底から満たされることのないモヤモヤを抱える、同じ会社に勤めるリーマンたちの恋のお話。
一顕から整に届いた一通の間違いメールから、少しずつ距離を近づけていく二人だがー。
愛情の形は人それぞれで、正解はない。
一顕を愛しているのに、セックスだけはしたくないかおり。
整を大切に想うからこそ、恋人にはなれないと思っていた和章。
4人が抱える想いや葛藤に正解も不正解もなく、だからこそもつれてしまう彼らの恋心がなんとも切なかった。
そしてやっぱり、和章が可哀そうでした。
和章救済のスピンオフ作品『ナイトガーデン』も、ぜひ読んでほしいです。
「セックスレス」というセンシティブなテーマが題材にはなっていますが、この作品で描かれているのは紛れもない「愛情」で、悩み、葛藤しながら自身が求めるモノを探し求める彼らの純愛に激萌えしました。
「完全版」には、『ふったらどしゃぶり』、『ふったらびしょぬれ』(ここまでが旧版に収録されている部分)に、書き下ろしとして『all rain in this nigth(どしゃぶりとびしょぬれのあいだ)』+『雨恋い(あとがきにかえて)』が収録されています。
『all rain in this nigth(どしゃぶりとびしょぬれのあいだ)』は、タイトル通り、時系列的に『ふったらどしゃぶり』と『ふったらびしょぬれ』の間のお話。
それぞれの、かつての想い人と別れ、そして想いを通じ合わせ前に向かって歩いていこうとしたとき。ページ数としては10pほどの短いお話ですが、これがまたすごく良い。
挿絵は旧版と同じく竹美家ららさん。
表紙も、中の挿絵も旧版と変わりませんが(表紙は旧版のイラストがズームになった構図にはなっています)、カラーの口絵が1枚追加されています。このイラストがね、また良いんですよ。
雨、傘、そして、未来。
この作品の世界観を、見事に描き切っています。
旧版を持ってるしな、とためらっている腐姐さまには全力でお勧めしたい新装版でした。
旧版既読です。レビューは初めてです。
愛と性について、本当に深く考えさせられました。BLの枠に収まらない、恋愛の歓び、哀しみ、葛藤といった、普遍的なものを強く感じ、心を揺さぶられました。
副題のWhen it rains, it pours. が、とても好きです。pourは、この文章では、「雨が激しく降る」という意味で使われていますが、「注ぐ」、「あふれる」、感情を「吐露する」ときにも使われます。一顕(攻)と整(受)が互いに悩みを吐露し、分かち合うことで心に注がれていく想いがあり、やがてそれがあふれていくのが、この言葉に象徴されている気がします。
恋愛においてセックスを求める分量は一人一人違うし、時と共に変わりもする。歩み寄ろうと試行錯誤する過程が苦しみになることがある。一顕とかおり、和章と整、二組の関係から、そんなことを感じました。
本作品では旧作には無かった「セックスに対するスタンスが合う」という言葉を一顕に語らせています。顔やスタイル、性格の好みと同列に並べたらいけないのか?と。この言葉、すごくしっくりきました。そして、そのことから目を背ける危うさを、よりはっきりと描いているように思いました。
相手から向き合ってもらえず苦しんでいた一顕と整が惹かれ合っていく描写に、胸が高鳴るのを止められませんでした。雨宿りの美術館、雨音のサイト、雨粒を受けて光る整の長いまつげ、そして土砂降りの夜の逢瀬。
整の「この身体がいらないなんて、ぜいたくなやつがいるんだなあ、ってさ」、一顕の「…涙出るかと思った」、「ほんとに?ほんとにそう思ってくれる?」。二人のこのやり取りに、私も涙があふれそうになりました。優しさ、苦しみ、哀しみ、温もり、快感。様々な感情を分け合う二人のセックスが、本当に胸に沁みました。
かおりと和章にも、それぞれセックスをしたくない理由があり、それが一顕と整がセックスしたことで明らかになるのが、とても切なかったです。かおりと和章は、自分を守るために、相手に向ける愛情の分量を決めてしまっていたのですね。それはまるで、裸の爪をみせないかおりのネイル、和章が作ったストームグラスのよう。一見美しいけれど、本心をさらすことはなく、気持ちの増える余地がないことが悲しいと思いました。
「ふったらびしょぬれ」では、雨の季節の終わりとともに一人になった一顕と整が、すぐには一緒にならず、おずおずと近づいていくのが、とても良かったです。そして、その仲立ちになってくれたのが、一顕が一生懸命に探した整の大学時代の友人・平岩くんということも。一顕の優しさが二人をつないだような気がします。
書き下ろしの「all rain in this night~どしゃぶりとびしょぬれのあいだ」では、「ふったらどしゃぶり」の最後で、整が一顕に傘を差し掛けた理由が描かれています。何気ないふりで、心にはあふれそうな想いがあった整が、可愛いです。もう一度「ふったらびしょぬれ」に戻って読むと、整の「もうよくなっちゃったのかなって思ってた」に、不安とか心細さが感じられて、もっとキュンとしました。
ああ、もっと若い頃にこの作品を読むことができていたなら、自分の恋愛もずいぶん違っていただろうな、と思います。旧版が出た頃、既に若くはなかったので、はなから無理な話なのですが(笑)。性について、かおりみたいな考えだったので、今更ですが、もったいなかったなあ、と少し残念です。
しばらく、雨が降るたびに、一顕と整の物語を思い出しそうな気がします。
実を言いますと、旧版が発売されてすぐ読んだあと
めちゃくちゃ打ちのめされました。
こんなずどーんとくるお話もあまり無いな、と。
どこまでもリアルで恐怖さえ感じるほどでした。
一顕の彼女・かおりの先輩が特に。
当時読んだ時の衝撃ときたらホント相当なものだったんです。
いえ、私がかおりの先輩のような経験をしたわけではありませんが
誰もが羨む幸せそうな夫婦にもそんな事実があるなんて。
女って怖いですね…。
先輩の気持ちもわからないわけではないことにも戸惑いを感じ
本編を読み返すことはほとんど出来ませんでした。
お話自体も決して明るい気分で読めるトーンではありませんし。
ただ、だからこそ読み始めたら止められない非常に素晴らしい作品です。
性欲だなんてと言ってしまうのは簡単ですが
好きな人を抱きたい、好きな人に抱かれたいというのは
決して出して終わりじゃなく心でも満たされたい切実な願いだと
心底思い知らされます。
一顕と整の性格は似ていなくても人柄がいちいち好ましくて
ちょっとした会話にもときめいてしまいますが
この場面好きっていうより本当に二人が二人で良かったと思ってしまうのです。
他の誰かじゃありえなかった恋、
色んな人のそれぞれの感情が絡まり合った中で溢れだした想いに
とても重みを感じました。
物事の表と裏、どちらか一方で受け止めていては見えないもの
気づけないこともあるんですね。
しばらく余韻に浸ってしまい、言葉にならない「うおぉ…」とか「ぐぁあああ!」をつい繰り返してしまいます。
とにかく凄すぎてますます語彙を無くすのも悪くありません。
細かすぎる心理描写が、共感深まりすぎて息苦しくなる。
トラウマ持ちの整と和章。
二人は、正直な気持ちを告げていたら本当は相愛の仲だったのに、すれ違ってしまう。
会話を阻む原因は、双方の真面目過ぎる性格の自責。
カオリは、母もセックスレスで離婚していた。
キャラで唯一健全なのは、一顕。健全男子にセックスレスは酷すぎる。
キャラの環境設定が惨たらしい。生殺しのような中で藻掻く夫々が気の毒でたまらなくなる。
どうしたらより良い結果になったのかと考えても、たらればばかり。一旦行動したら、もう元に戻れない。
★メモ・・このシリーズは、3冊一気読みが、読後メンタルがよいと思います。
① ふったらどしゃぶり~When it rains, it pours~完全版
萩原一顕 同棲中の恋人とのセックスレスに悩む一顕。
半井整 一顕の会社の同期、同居中の和章に片思いの整。(実は双愛)
★著者の説明。
https://bit.ly/2V4Og5t https://bit.ly/3dMMiNG
「旧版の版元さんのご事情もあり、発行から五年を機に出し直し・・・。web連載を文庫化するにあたり、ページ数の都合でカットした部分を含め、新たにちょこちょこと手を入れ、掌編を書き・・・とはいえ、大きく物語が変わるわけではありません」
② ナイトガーデン 完全版
「ふったらどしゃぶり」スピンオフ、版元の刊行停止にともない、ディアプラス文庫版として出し直し・・・フルール版に加筆修正と、書き下ろしの掌編が一本
藤澤和章 休業中のプロダクトデザイナー、28歳
石蕗柊 植物園のアルバイト、21歳
③ メロウレイン ふったらどしゃぶり
https://bit.ly/3wmiD4y
「「ふったらどしゃぶり」の同人誌・特典系SS・ブログのこばなしなどをぎゅぎゅっと・・・恋人同士になった一顕と整のその後」
萩原一顕 27歳,会社員(営業)
半井整 27歳,会社員(総務)
シリーズ3冊。
ナイトガーデンは、主人公が異なるので、不要かも??と思ったけど、一番捻じれていないまともな恋愛小説だった。
メロウレインまで読んで、やっとキャラの状態への不安が消えて、読後感が爽快になった。
男性も、女性も、お互いの生き物としての性の違いと意味を理解する必要があるのだと、学びました。
体液交行を伴う行為は、繁殖の為だけではない一面がありますよね。(融合遺伝子(キメラ遺伝子)とエンパシー)
二人のそれぞれの生活が切なくって、涙出てきました(笑)
不倫とかちょっとドロドロしてるけど
お2人がかわいいんで和みます
何なんでしょうね
TL,NLとか男女ものってなんかどろどろしてるけど
BLになるとすごくさらさらするというか、、、
とにかくきれいなお話です!
メールのやり取りのお話しは大好物です。
特に相手がわからない場合は特に。
ユーガッターメールやハルなど映画でも萌えたくちです。
見せ場は見知らぬメール相手が知り合いだと気づくシーンですねー。
営業一顕と総務の整。
一顕が整相手に同期で、少し生まれが早いだけなのに敬語で話のが気になりました。
浮気の話は苦手なのに両方の主人公の相手がなんだかなと、思う人たちでした。
主人公目線だと浮気されてもしょうがないんじゃない?と思えるようになっていたので、ストレスなく続きが気になって一気読みです。
お話しも面白いし、キャラも良いし、本当良かった。
メールのやり取りを確認したくて、もう一回読み直し決定です。
この本は何回も読むんだろうな〜
心理描写、風景描写、セリフなんかも文芸作品色濃いめな雰囲気で好きでした。
お互い名前も知らないままのメールのやり取りから始まり、気持ちは少しずつ近づいていく、日常の変化も小さくでも確実に積み重なっていく。じりじり感に少々じれったく思いはじめた頃合いで、ある事件を境に急速に近づき物語が激しく展開していくという、、この急にくるスピード感がとってもドラマティックですっごくドキドキしました。
苦しくなるくらい切ないエピソードもあり、感情揺さぶられっぱなしで、しばらく頭から離れなそうです。絶対また読み返すと思います。
同棲で良かったなと、とりあえず本当そう思った
かおりのビンタする図々しさと、頭撫でたりセクハラを躱すみたいに扱って一顕をなめてるところ絶妙だった
かおりは本当同棲なんかしてバカだなって感じ
セックスをしないで暮らせたら一番いいのにって思っちゃうのは理解できるんだ
デートでするのは良いんだけど、生活には要らないんだよね、解る
一顕が好きで結婚して子供を持ちたかったのなら同棲はダメ
結婚して子を設けて、自分の親と同じ道たどって被害者ぶるしかなかっただろうに
一顕からしたら同棲で良かった
てか、優しい人すぎる
結婚してないのに1年も拒否されながら怒りをためたり憎んだりせず将来も考えるって、こんな良い人いない
半井はこっちの一顕とやっていくことになったの最高だ
でも、パートナーと夜は恋人でいたいのであれば食事の用意みたいな家事を一手にさせてるのはおかしいとも思う
お母さんの部分を担わせて恋人でもいて欲しいってのは一人の人にかける期待として大きいんじゃないかな
かおりは勝手にそうしてたのだろうけれど、飲んだビールの缶の片付けまで自ら引き受けてた
お世話する対象として一顕を見てたら性的には見られなくなるの当たり前な気がする
半井の方のは気の毒なことでどうなればよかった誰が悪いとかとは考えられないけれど、単純に和章の性格がちょっとモラっけがある?つぅか、クリエイター気質ってことなのか、気難しいよね
ずっと一緒にいたいけど性的な欲求には応えないんなら外でしてくるのは一つの正解にしか見えないのにあんなふうになったりして
かおりはメールを辿って美術館のとこで「え〜!?」てなっただろうか
そこはなったんだろうな
でもメールのやり取りで、自分にはその気がないのに性的に狙われていたらキツいみたいなことを一顕が書いているのとかあったし、1度「やらせるやらせない」みたいな言葉使ったことはあったけれど、全般通して敬意のない蔑みみたいなのはなかったのが一時的には良くて、将来的には苦しくなるような気がする
かおりを嫌悪している先輩が意地悪することで読んでる側の苛立ちを消化してくれるのね
自分は悩むことにすら罪悪感持ったりしてたのにかおりはあんなふうに他人に話してる
犬みたいに与えられるのを待つものだと思われている
暗雲が厚く厚くなっていく
降り出してからの勢いたるやすごい!降り始めまでこんなに長かったのに止められず読んだ読んだ
とてもとても面白かった
長雨を思わせる文章に、ちょうど滴る雫のような感覚で、フっと作品の世界へ誘われました。
雨が年月を経て石を穿つように、小さな小さな積み重ねが不可逆的な変化をもたらし続け、やがて俯瞰した時にはもうどうすることもできなくなっている。
愛と性に翻弄されるふたり。
一つの共通点から始まった関係の先で何を失い、また、何を得るのか。
見届けた後のこの気持ちが表現できないのがもどかしいです。
一穂先生の表現力には毎回驚かされます。
今作は特に女性キャラの描写が物凄かったです。
恐ろしさすら感じました。
旧版の作品の方がすっきりしているなという印象です。
こちらの作品は加筆が多い分だけ、無駄な描写が多く、テンポも悪くなっていて、いろいろ重いなと感じました。
BL的な恋愛描写よりも、登場人物(特に女性)の描き方が凄く気持ち悪いので、そこで好みが分かれるかなと思いました。また、彼女とセックスできないから男の体に~までの流れが不自然で、やはり、何度読み直しても体の関係に行く理由が分かりませんでした。電話の後、「じゃあしよう」というのが物凄く浮いている気がします。
小物の使い方やこまごまとしたエピソードは素晴らしいので、そこが惜しいなと思いました。
セックスレスに悩むノンケの男性が、同じ同性の体に辿り着くまでの描写と気持ちの変化がもっとあれば神作品だと思います。
また、行間を読む意味でも旧版の方が読みやすく優れていると思いました。出版社の事情はあると思いますが、あのままでよかったのではと悔やまれる新装版でした。