おまえが忠誠を誓えば、俺が一生犬として飼ってやる

飼い犬に手を咬まれるな

kaiinu ni te wo kamareruna

飼い犬に手を咬まれるな
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神84
  • 萌×223
  • 萌11
  • 中立3
  • しゅみじゃない6

--

レビュー数
17
得点
548
評価数
127
平均
4.4 / 5
神率
66.1%
著者
夏乃穂足 

作家さんの新作発表
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イラスト
笠井あゆみ 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
価格
¥661(税抜)  
ISBN
9784199009495

あらすじ

「おまえが忠誠を誓えば、俺が一生犬として飼ってやる」――新しく雇われた庭師の息子に、そう告げた13歳の御曹司・一稀(いつき)。従順に懐く猛(たける)が可愛くて、一稀は勉強や精通、自慰まで教え込んでいく。けれど高校に進学し、一稀に手を出した不良を猛が暴力でねじ伏せた時――歪んだ執着に怯え、猛を拒絶してしまう……。そんな別れから10年、若き総帥となった一稀は、パーティーで猛と再会して!?

表題作飼い犬に手を咬まれるな

荒原猛,一稀の犬でコンサルティング会社社長
四ノ宮一稀,四ノ宮グループ創業一族の御曹司

その他の収録作品

  • 愛玩飼育
  • 調教不全
  • あとがき

レビュー投稿数17

震えが走る凄まじい愛憎劇で、「愛」を書ききった大作です。

今作ですが、「飼い犬に手を噛まれるな」くらいの、可愛いお話では無いですね。
親子二代に渡る「愛」の物語であり、凄まじい愛憎劇であり、魂の救済作でもある。

350ページ越えと分厚いのですが、次の行に目が追い付かないとばかりに、凄い勢いで一気に読んでしまいました。
そして、ラストでは感涙。
二人の愛は、今やっと明るい光の下で、実を結んだのだなぁと。

ちなみに、あとがきにも深く感動してしまって。
作者さんがこれほどの想いを込めて書かれた作品だからこそ、ここまで心を打つんでしょうね。
あとがきで目頭が熱くなったのは初めてですよ。


内容ですが、使用人の息子・猛×愛情に飢えた御曹司・一稀による、親子二代に渡る壮大な愛のドラマであり、凄まじい愛憎劇になります。

主人公である大会社の御曹司・一稀が、使用人の息子である猛に出会った所から、お話はスタート。
虐待されて育ち、誰からも必要とされなかった少年・猛。
そして、何不自由無い生活ながら、すでに人生に冷めきっていた少年の一稀。

一稀は「自分だけの犬(存在)」が欲しかったんですね。
そして、「必要とされたい」と魂で望んでいた猛・・・。

自分だけに従順になつく猛が可愛くて、「お前は僕の犬だ」と勉強から身の回り事、自慰まで教え込んで行く一稀。
そして、そんな一稀に心酔する猛ー。

しかし、高校生になった時、とある事件により猛の自分への凄まじい執着に恐れをなした一稀は、彼を突き放してしまう。

そして十年後ー。
若き会社社長として忙しい日々を送る一稀の前に、見違えるほど立派になった猛が現れ・・・と言った流れになります。

えーと、まずこちらですね、もう猛の執着ぶりだったり、二人の愛憎劇と言うのが凄まじいんですよ。
私はよく執着攻めが好きとか言ってるんですけど、これまで読んで来た執着攻めが可愛く思えるほど、彼の執着と言うのは凄まじいんですね。
何だろう・・・。
全てを奪いつくし、相手を壊してしまうほどの執着と言いますか。

猛と再会後の一稀ですが、次々と不測の事態が起こり、どんどん追い詰められて行くんですね。
で、これ、作者さんのストーリー運びが秀逸で、一稀と一緒に読者も翻弄されるんですよ。

一稀の会社を狙ったテロの犯人は?
弟の、男性との行為中の写真を送りつけて来た犯人の目的とは?

で、ここから更に背筋が寒くなる展開。
一稀ですが、もう容赦無く転落して行くんですよ。
会社を奪われ、婚約は破棄され、更に脅されて身体まで奪われ・・・てな具合に。

何だろう・・・。
読んでいて、もう震えが走っちゃうんですよ。
全てを奪いつくさずにはいられない、猛の心の有り様や執着ぶり。
そして、転がり落ちるように転落し、殺意を抱くほどの憎しみを猛に持つ一稀。

いや、人間って、ここまで苛烈に愛し、そして憎めるものなのかと。

と、この二人、救いが無いように思えますが、これがお見事な着地点でホロリと来ちゃうラストなのです。
まぁこのへんは、ぜひ読んで感動していただきたい!
ガチで泣けちゃうから!!

あと、二人のバックボーンもしっかり書き込まれていて、キャラクターに人間としての厚みがある所も、また魅力でした。
ついでに、父親の代からの愛憎劇にも、ホロリとしちゃいました。
いや、もうよく、これだけのお話を書ききりましたね。

とりあえず、読み終わった後は呆然としちゃいました。

29

読み応えたっぷり

シリアスなお話のイメージが強い一方、擬人化した動物を描かせたらピカイチ!な先生の新刊が読めるなんて…嬉しすぎて…ずっとずっとお待ちしておりましたです(ぼうだのなみだ。)しかもイラストが笠井あゆみ先生…

本作の本丸テーマは、主従/下克上でしょうか。
タイトルも「愛」が入っていた仮タイトルから、あからさまな「犬」に変わりました。ということで、今回はシリアスな比喩的「犬」のお話です。


不動産開発会社社長令息で十三歳の四之宮一稀には、ずっと抱いていた夢があった。それは、一稀だけに忠実な犬を飼わせてもらうこと。全部一人で面倒を見るから、自分だけに懐いてくれて独占できる犬が欲しい。

長男としての重圧を感じながら父親の期待に応えて頑張ったご褒美に、シェルティーの仔犬を買ってもらったものの、幼い弟が世話をさせろと黙っていない。母の諌めもあって夢は潰えたと悄然としていた一稀だったが…

その仔犬が家に来た日と同じくして、父親の旧友が一稀と同い年の息子、猛を連れて家にやって来た。荒原父子に住み込みで屋敷や庭を管理する仕事を周旋するために、父が呼び寄せたのだった。

家庭内に居場所のない一稀は、仔犬を独り占めできない欲求不満を発散するかのように、ガリガリに痩せてみすぼらしい猛に思いをぶつけていく。義父に虐待されて元の父親に引き取られた猛は、一稀に世話をしてもらう代わりに、彼の犬になることを約束する。猛にとって一稀は初めて心を掛けてくれる人間だったので、なんの疑問も持たずに喜んで一稀の言いつけに従うのだった。(この一連の流れも二人の幼さを感じさせるところが妙にエロス。)

ところが同じ高校に進学する時期がくると、一稀と猛は対外的に対等な立場と認識され、いつも一緒にいるためか妖しい関係にあるのではと噂を立てられるようになって、一稀は猛を疎ましく思うようになる。

一稀と猛が二人の間にしかわからない、一稀上位の親密な関係を築いていることは誰も知らない。なのに成長するにつれ、一稀よりも猛の方が異性にセックスアピールが強くなり、一稀が好ましく思っていた女子生徒を奪われる。

一稀は猛に嫉妬します。それは猛自身の能力へなのか、自分にはない男としての性的な魅力なのか、それとも猛と関係してきた男女へなのか…

高校時代に他校へ転校していった猛と別れて十年後、病に倒れた父の後継者として四之宮開発の代表取締役となった一稀。しかし社の経営が危機を迎えた際、かつて犬にされた猛が現れ、一稀自身を引き換え条件に、四之宮開発の窮状を救おうと手を差し伸べます。そこですでに、読み手としては猛の一稀への執着を見て取れるのに…、当の一稀は二人の過去に苛まれながら、猛に追い詰められて次第に壊れていきます。

起業家となった猛がオーナーをしているいかがわしい会員制サロンで、ベネチアンマスクを付けたまま衆人環視の中猛に犯される一稀が、ショックでセックス依存に陥ってしまう様は、哀れで胸を掻きむしられるような思いがします。この、受けへの仕打ちが結構容赦ないんですよね笑

その後の猛の激しい悔恨とフォローに一稀も読者も救われるわけですが、本作は「好き」とか「愛している」とかの次元を超越して相手の存在そのものが生きる原動力となっている、ある意味病的なほどの関係性が好きな人にはたまらないお話だと思います。

かつて心が通じ合っていたように思っていた相手との訣別。そこから、攻めによる妄執一つで復活劇に仕立てていくプロセスに、夏乃先生の技量を感じてください。メイン二人の関係以外にも色々てんこ盛りなエピソードや設定がありますので、読んでいて翻弄されそうになりますが、それだけ作家様の復帰第一弾への熱い思いが込められていると思います。

初期の頃は特に、男同士の同性愛をBLというファンタジーの枠内に収めつつ、かなり突き詰めてそのエッセンスを描いている作家様だと感じていました。BLに求められる甘さに特化しないところが非常に尊い作風だと思っておりますので、今後もずっと書き続けて欲しいと切に願う作家様です。思い入れが強すぎて思わず長文になってしまいました。
最後に、キャラ文庫さんにめちゃめちゃ感謝したいです。ありがとうございます!!

24

愛のカタチは一つではなく

今回は
受様に執着するコンサルティング会社社長と
日本有数の企業の創業一族の御曹司のお話です。

2人の出会いからに攻様の失踪による別れ、
2人の再会から真の絆を結ぶまで。

受様は日本有数の四ノ宮グループの
創業一族の御曹司であり後継者です。

父は受様に常に高い要求をし続け
母は4歳下の弟の我儘を制しきれず
受様は良き兄として我慢を強いられました。

そんな生活の中で受様は
自分だけに忠実な犬が欲しいと父に願い
期末試験の褒美として飼うことを許されます。

仔犬が届く予定の日、
受様は父に古い友人である男とその息子を
新たに雇うことにしたと紹介されます。

この息子が今回の攻様になります♪

攻様の父は病的な異様さを醸し
同じ年だという攻様はやせぎすで
淀んだ眼差しの少年でした。

攻様は友人にもしたくないタイプですが
父にともに仔犬を見に行くように促され
受様はしかたなく攻様を伴います。

しかし届いた仔犬は
既に弟の好奇心に晒されていて
受様だけのモノではなく家族の犬となり
受様は失意の底に落とされてしまいます。

受様は誰もいない温室で
やっと怒りをぶちまけるのですが
入口に佇む攻様に気づき驚きます。

攻様は受様の傍にいろと言われたらしく
独りになりたい受様の心を判ってはくれず

受様は嗜虐心から自分だけの犬飼う夢を
攻様を飼う事で満たそうと思いつきます。

誰からも必要とされなかった攻様は
受様の言葉に素直に従い
受様の望んだように受様だけを慕う
受様の犬として成長していきます。

攻様は受様の保護と教育の元、
受様の隣でも遜色のない存在となりますが
やがて恋愛対象として受様を見るようになり
受様は攻様の執着に恐れを抱くのです。

受様が自身の父親と攻様の父親の間にも
只ならぬ関係がある事を感じた夜
攻様を傷つける決定的な言葉を放ち

攻様親子は受様宅を出て行き
攻様は受様の前から消えてしまいます。

それから10年余りが過ぎ
受様は財閥系の企業家の娘との結婚を控えた
グループの中心会社の社長として
忙しい毎日を送っていました。

社長として磐石な基盤を作る布石となる
再開発プロジェクトの発表会の席で
コンサルティング会社社長となった
攻様と再会する事となります。

受様は攻様との再会を喜びますが
受様の会社の所有する商業施設が
立て続けに爆破される事件が起こり

投資信託の株を買い付けている
あやしい動きが見えてきます。

爆弾魔の狙いはどこにあるのか!?
そしてこの時を狙ったように現れた
攻様の真意とは!?

御曹司という恵まれた境遇ながら
孤独を払拭できなかった受様と
生れた時から生きる必然性を見出せず
手を伸べた受様だけに執着した攻様の
愛と憎しみが錯綜する物語となります。

夏乃先生の先生の久しぶりの新作で
先生のツイッターで告知を見た時から
楽しみにしていたのですが

お気にの作家さんは買うと決めたら
内容の事前チェックをしない為
カバーイラストを見た段階でもしかして
監禁系なの!?とビビり

店頭でまさかの厚さ、
あらすじを見たら痛い系ぽい題材に
かなりビクビクで読み始めました。

2人の関係は受様が自分だけの存在を
欲しがったことから始まります。

自分だけの”犬”を欲していた受様が
攻様を”犬”として躾けていくのですが

一身に受様を慕う攻様の存在は
攻様に生きる意味を見出させるとともに
受様にとっても攻様は心を偽らなくていい
大切な存在となっていくのです。

ただ、大企業の後継者として
やがては人の上に立つ受様にとって
同性が恋愛対象になる事は考えられず
攻様の恋は玉砕するのです。

しかし、受様だけが大切で
生きる意味と化していた攻様は
受様を手に入れる事だけに執心していき

自らと受様との再会ですら
受様を効果的に手に入れる手段とし
受様の弟も婚約者も駒として利用し
受様を追い詰めていくのです。

そんな攻様の計画に並走するように
受様の関わるプロジェクトを
頓挫させるような爆破事件が起こり
受様の社会的な進退も極まっていきます。

攻様は受様を手中にできるのか!?
受様に対抗する術は有るのか!?

そして犯罪グループの黒幕の狙いが
明らかになった時
受様は更なる窮地に追い込まれるのです。

次々と起こる事件、
暗躍する攻様と抵抗する受様、
陥落した受様と失墜する攻様、

その怒涛の展開に頁を繰る手が止まらず
終盤、またも受様の手を離そうとする攻様を
受様がどうやってつなぎ留めるのか。

厚さも気にならないくらい
頁を繰る手が止まりませんでした。

そして見えてくる厳しかった父の真意、
頼りなく見えた弟の抱えていて苦悩、
攻様が求め続けた受様の心、
受様の攻様への思い。

かなり重い題材ですが
登場人物それぞれの思いと背景が
しっかりと描かれ

愛憎絡まった受様と攻様の関係にも
見事な着地点が示されていて
とっても面白かったです♪

ラストシーンで
好物だったケーキを前にして
幸せ過ぎて食べられないと泣く攻様に
凄く胸を打たれました。

これからは光の中で
2人の幸せをかみしめて欲しいです。

今回は夏乃先生の既刊から
『鬼の涙が花だとしたら』を
おススメと致します。
すごく切ない一途な恋物語です。

14

自分自身で最後まで読んで評価していただきたい一作

はっきり言って本作のようなトーンの話は好みではありません。本来なら。
シリアスでドロドロしていて…読んでいて何人もの登場人物を憎みました。弟だったり攻めの猛のことだったり。一稀が可哀想で仕方ありませんでした。
感情がぐちゃぐちゃで正直萌えるという感情からは程遠かった。でも、こんなにも感情を揺さぶられることなんていつぶりだろう、と思いました。重厚で圧倒的な文章力で描かれる物語にいつのまにか引き込まれていた。
あとがきまで読んで作者様がまさに魂を削って完成させたのが本作だと知り、分かりました。本作には魂が詰まってる。作者様の熱量を確かに感じました。途中までは「趣味じゃない」評価を付けようとして思っていましたが、2人が掴み取った幸せの形、作者様の思い、全て総括して「神」評価です。

12

愛と執着 獰猛犬です!

今年読んだ本の中でも 一二を争う傑作です。
一気読み まだ余韻でクラクラしてます。

お久しぶりの夏乃先生ですが 熱量が凄い。
長年に渡る因縁 執着 依存で
普通の関係 恋愛には辿り着けず
互いの感情が愛なのか憎しみなのか
壊れるまで追い込みあう壮絶な2人。


後継者として 父からは厳しく育てられ
母は甘え上手な弟にかかりきり
学校でもヒエラルキーに縛られ気を抜けず 抑圧されている一稀が手に入れた自分だけの「犬」猛。

不幸な生い立ちの猛にとって 一稀が与えてくれるものが全て。盲目的に一稀に傾倒していきます。

一方 一稀も猛を 思春期独特の気まぐれで
弄んだり 甘やかしてみたりと 素の自分をさらけ出せる相手として 自分だけに従順な犬として育てていきます。
何も知らない猛に自慰を教えたり
ハーネスをつけて散歩に連れ出したり
仕込んでますw

成長するにつれ 猛の一稀に対する依存は
度を越した執着となり
可愛い従順な犬は発情期を迎え獰猛な雄犬へ。
飼い主である一稀への欲情を抑えられなくなります。

その後 離ればなれになった2人が10年後に再会。

人生全てをかけて一稀を手に入れる為に生きてきた
猛の執着は凄まじく 憎しみとも思える方法で
一稀を囲い込んでいきます。

手段を選ばない執着犬が とても好きです!
もう愛しているのか憎しみなのか
共依存で壊れていく様が ゾクゾクして
読むのが止まらないです。

一稀が暴走する猛を止めきれず こんなふうに育てたのは自分の責任でもあると。
どんな犬でも捨てる事は出来ないし、許す理由を探している 「次はないぞ」って。

最後の2人は幸せそうです。

久しぶりに読後の余韻が震えるような本に会えた!
感動です。

12

飼い主と調狂犬の半生

2019年刊。
夏乃さんの小説は初読みながらも、渾身の作と言っても過言じゃない力を感じた一冊だった。

大手不動産会社の跡継ぎである一稀にとって謎めいた男・荒原に連れられてきた見窄らしい少年・猛の出逢いは13歳の頃だった。
自分だけの特別な”犬”として手塩を掛けて猛を育てあげた3年間。
そんな猛は高校生になって執着の塊となって常に一稀に付き従おうとするが、彼の秘められた狂気を恐れて距離を置いた途端に姿を消してしまう。
10年後、父親の跡を継いだ一稀は社会的地位を確立した猛と再会を果たすも、猛は外堀を埋めるかのような追い詰めかたで確実に一稀を我が物にしていく。

…そんな二人の半生を360ページにかけて追っていく事となる。

再会後は過去優位だった関係を覆す下剋上、よりによって猛に苦汁を味わせられる
展開で”受けざまぁ”として捉えてしまった。
何しろ13歳にして初対面の猛を僕だけの”犬”として扱う一稀に気味悪いものを感じてしまったのだが、サイコ味から段々と嫌なガキ、嫌な男ってふうにトーンダウンしていって逆にほっとしたかも知れない。
猛みたいな荒んだ男が一稀の元に這い上がってくる為に、執念を原動力にしてきた異常さには恐れ入る。
それ以上に凄かったのが、コンサルティング会社を設立し、人脈の伝手を作り、はたまた秘密の会員制サロンオーナーと登りつめながらも、呆気なくその地位を自ら壊した狂犬の一面だったが。

一稀は持ち前の計算高さ、猛はどん底の人生経験を何一つ無駄にしていないかのような用意周到さがあるのに、20年余りの年月をかけて『やらかした事の後始末』を背負ってきた感があるのが何だか不思議だ。
だからだろうか、この話に限っては読後に引っ掛かる部分とか、登場人物の〇〇がもうちょっとこうだったら、といった心残りが無く、作者が”書ききった”のだなと受け止められるのだ。
この二人の全ての後始末を済ませて新たな人生を見届けられたら良しと思えて、他の登場人物の行く末までは頭が回らなくなってくる。

9

すごくドキドキしました

執着攻×美人受、めちゃくちゃ好きなんです。
こちらの作者様のご本を読んだことはなかったのですが、
上記のCPと、笠井あゆみ先生の表紙イラストに惹かれ購入しました。

やばいですよ、2人の関係は13歳の頃から
始まるのです。ただ当時は官能的な肉体関係には
ありませんでしたがそれに酷似しております。
最初は受の一稀が、攻の猛を
自分に忠誠を誓えば一生犬として飼ってやる
と告げたのですが、
成長した猛に下剋上されてしまいました。

色々ありましたがハッピーエンドですよ、
よかった!

個人的評価
ストーリー ★★★★☆
登場人物 ★★★★☆
エロ度 ★★★★★

すさまじくエロくドキドキしたのに
ラストめちゃくちゃ感動しました。反則だ、、、

ただ、一稀の婚約者の女性が出てきますので
苦手な方は注意してください。

4

物凄く良かった!

夏乃穂足先生の作品は「ワンコは今日から溺愛されます」以来なんですが、こちらの作品はずっと本棚に眠ってたんです。厚さに怯んでいたんだと思いますが、なんでもっと早く読んでなかったのかと後悔してます。

多くの方がレビューして下さってるのですが、備忘録程度に感想を書きたいと思います。

まず「愛玩飼育」での一稀が、とても嫌な奴なんですよ。傲慢で自分だけが不幸だと思ってて、他者にも痛みや思いがあると思って無いです。ガチガチに凝り固まった常識やこうあるべきだと理想に縛られていて、唯一無二の存在である猛に出会っているのに最初から失敗してるんです。そして失って初めて損失感に苛まれる事になります。

そして二人が再会する「調教不全」、ここでも一稀は何にも変わってないんです。猛のセリフに何度も変われるきっかけともなるヒントが隠されているんですが、ガチガチに凝り固まった思考の一稀は気付きもしない…。そんな中、一稀が社長を務める四ノ宮グループを狙ったテロ事件が起きて、それをきっかけに一稀は猛の手によって全てを奪われて行きます。

ハッキリ言って一稀が嫌な奴なんで、この時点で気の毒だとか可哀想なんて思いませんでした。一稀がとうとう壊れてしまった時には、これからどう展開して着地点をどう持って行くのかドキドキした程です。

猛の一稀に対する執着や全てを捨てても構わないという激しいまでの愛にとても萌えました。
そして終盤の一稀と父親の会話で父親の愛情にやっと気が付いた様子にホッとしました。
そして明かされた猛の父の苛烈なまでの一稀の父への愛に感動さえしました。

再びの別離を経て今度は一稀が猛を失わないように行動に移すんですが、なかなか首を縦に振らない猛にドキドキしながら読みました。やはりここでも一稀は鈍感なんです。肝心なことが分かって無い。でも一稀が社長の座を託した白木の言葉でやっと気が付くんです。

一稀の言葉を聞いて初めて泣き顔を見せた猛と、唯一無二の存在をやっと手に入れた二人にとても感動しました。一稀が猛の為に用意した思い出のアレにも、なるほどと唸ってしまいました。

あとがきで知ったんですが、こちら夏乃先生の復帰作なんですね。素晴らしい作家さまが戻って来てくれた事がとても嬉しいです。
過去作を調べていて「茜色デイズ」は何となく記憶があるので読んだ事があるかも知れません。本棚から見つかったら再読してみようと思いました。

3

ここにまた執着MAXワンコいた~~!!


坊ちゃんで女王様な受けがボロボロな使用人の息子を自分だけの忠実な犬にしようと躾けますが、チワワのような犬と思ったら実は狼並みの狂犬~!

精神的にも立場的にも上だったはずが、逆転して受けが怯える姿にはゾクゾクします。

受けを中心に世界が回っていて、受けと離れるくらいなら死んだ方がマシ、というヤバい攻めです。
受けに隠れて裏でヤバいことしちゃうし、受けに彼女が出来て殺したいと言っちゃえるくらい受けに盲目。
執着好きの私としては大満足の執着具合です!

他の執着系とちょっと違うなぁと感じたのは、ちゃんと受けも依存気味なところ。
本当は好きだけれど、社長子息で同性愛へのハードルが高く受け入れ難いだけ。
その偏見とプライドが高いせいで攻めにボロボロにされてしまい、どちらかというと受けザマァ展開なのですがこういう設定が好きな人はもう、この先ネタバレ見ずに買った方がオススメです!!

3

あっぱれ!これが読める時代に生まれてよかった!!

読み終わって2日経ちましたが、読後の高揚感と余韻が消えてくれません。助けてください()

ストーリーの内容は他のレビューで書いていただいているので割愛。以下感想です。

ものすごく萌える本に出会ってしまった!!
この本が読める時代に生まれてきてよかった!!

最初から引き込まれ、あっという間に読み終えました。

夏乃先生の言葉選びが本当に巧みで、すらすら読めながらも、一言一言が心に入り込んでくるんです。最初から最後まで。息を呑むような臨場感、自分もそこにいるかのような錯覚。主人公の一稀が感じている今その感情を、そのまま私も受け取りました。ストーリーの波に飲み込まれているうちに、現実の時間があっという間に過ぎていきました。

表現したい心情や物事一つ一つに対して的確な単語を選んで読み手に届けてくるので、読み手の日本語の表現力も養えていって一石二鳥(と個人的に思っています)

あとがきにも、夏乃先生の作家としての繊細で胸が詰まるような気持ちが書かれています。あとがきを読むのは、本編を読み終わってからがおすすめです。

表紙と挿絵も美しい。この小説をより引き立ててくれています。

端から端まですばらしい。心と日常に潤いを与えてくれます。まさにあっぱれ。

手放したくない一冊です!
BLが好きな全ての人に読んでほしい一冊です!!

3

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