ネオンサイン・アンバー

neon sign amber

琥珀色的霓虹灯

ネオンサイン・アンバー
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神496
  • 萌×2193
  • 萌90
  • 中立28
  • しゅみじゃない22

--

レビュー数
74
得点
3550
評価数
829
平均
4.3 / 5
神率
59.8%
著者
おげれつたなか 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

媒体
漫画(コミック)
出版社
新書館
レーベル
Dear+コミックス
発売日
電子発売日
価格
¥670(税抜)  
ISBN
9784403665493

あらすじ

クラブのスタッフ・緒方は、店の客で女好きのギャル男・サヤと出会う。
ある日サヤに金を貸し、お礼にサヤの手料理を振る舞ってもらうが……。

表題作ネオンサイン・アンバー

クラブの黒服
ギャル男

その他の収録作品

  • Honey Honey(描き下ろし)
  • あとがき

レビュー投稿数74

ギャップ萌えしました

作家買いです。おげれつさんの新刊という事で楽しみに待っていました。

内容をざっくりと。すみません、ネタバレしてます。

クラブでスタッフとして働く緒方くん。前半は彼視点で話が進みます。
クラブに客としてよく訪れるギャル男のサヤ。はじめは単なる客として出会う二人ですが、そのあとサヤのトラブルに緒方くんが対処してあげたことで、お礼の意味もありサヤの実家の小料理屋で朝食をつくってもらうことに。

寡黙で表情が表に出ない緒方くんなので他人に誤解されがちなのですが、サヤは彼の気持ちを正しくくみ取ることができて。そんなこともあって、二人の距離は急速に近づくのですが…。

というお話。

緒方くん視点で進むので、緒方くんがサヤに惹かれていく過程が分かりやすい。サヤも緒方くんを憎からず思っているようで、早々に恋人同士になるのかな、と思ったのですが。

さすがおげれつさんというべきか、その後の怒涛の展開に圧倒されました。

サヤの過去の恋のトラウマ。
緒方くんへの切ない片想い。
そして、ゲイであることの葛藤。
見た目ギャル男で、普段明るいサヤの内面が徐々に明らかになるにつれ、健気なサヤに思わず落涙しました。

一方の緒方くんも。
緒方くんの中途半端な想いはサヤを大きく傷つけることになりましたが、でも、ノンケさんならああいう態度にもなってしまうのだろうとも思うのです。
その後、覚悟を決めた緒方くんは超絶にカッコよかった。

女の子大好きでチャラい男子って個人的にあまり好きではなので、読み始めたときはサヤよりも緒方くん寄りな気持ちで読み始めましたが、サヤの可愛い内面とのギャップに萌えまくり。おげれつさんの描き方がお上手なんでしょうね。

最後のエチシーンはサヤの可愛さに激萌えしました。
エロいし、可愛いし、あんなビジュアルでまっさらさんとか…!
反則級の可愛さでした。

おげれつさんの作品は全部読んでいますが、この作品が一番好きかも。

表紙も色遣いも良いし、サヤの気怠い色気に満ちていて、とっても素敵でした。

35

BPM120〜140のリアルな鼓動

やーなんだろう…なんかもうほんとただただ「巧い」!
ここ何作かのおげれつたなか作品はその一言に尽きるなぁと。
好みの合う合わないはあるとしても、巧いか巧くないかでいったら間違いなく巧いわけで、読者を物語の中に引き込むパワーが他を圧倒しています。

真夜中のクラブで始まる黒服とクラバーの恋!ということで、
今回の読みどころはやはり何と言っても、4つ打ちのリズムが作り上げる「鼓動のリアルさ」ではないでしょうか。
音のないマンガで、ホールの爆音すらもかき消してしまうほどの2人の生きた鼓動が聞こえてきそうな錯覚に読中何度も陥りました。
そして、その騒々しい「夜」との対比のように描かれる、サヤと勇介の2人だけの静かで優しい「朝」の光景のギャップがまた巧い。
そのギャップは、そのまま夜と昼間のサヤのギャップにもリンクしている。

非日常(=夜)と日常(=昼)の交錯の先に、必死に自分を隠して「夜」に生きているサヤの切ない生き方が見えてくるのです。
ゲイであるサヤは学生時代にそれを理由にヒドいイジメられ方をしており、真夜中のクラブで軽薄に生きることで、自分は普通(=異性愛者)の男達と一緒だという「安心感」を自分に与えているのです。
悲しい生き方だけど、そもそも夜の遊び場なんてどこもそういう人種が集まってる場所だと思う。
そんなリアルさが切なさを余計に煽ってくる。

対する勇介は、表情筋が死んでる…なんて言われてしまうほどにブスッとした無表情な男なんだけど、それなりに顔が良いからそれなりに遊び慣れてるチャラい夜の男で、チャラいから、サヤが自分の出にくい感情を読み取ってくれたってだけでノンケのくせにアッサリとサヤに惹かれ始め、ノンケのくせに女の子に使うようなテクニックを男のサヤに使ってその気にさせちゃったりするのですが、サヤの服を脱がせたところでふと我に返って怖気付いてしまうようなバカ男。
なんだけど、それがかえってとてもリアルで、現実をグサグサと容赦なく突き付けてくる。

「エスケープジャーニー」で思い知らされたたなかさんの凄さは、とにかくリアルを突き付けてくることだと思う。
なぜここまで描くのかと問いたくなるくらいに、容赦がない。
それでもたなかさんの作品を「好きだ!!」と思うのは、光が最後にちゃんと差し込むから。
以前「ほどける怪物」のレビューに「現実では救われ難い人にこそ、漫画の中では救われてほしい」と書いたのですが、やはりこの思いに尽きます。

今回、モブの顔が一切描かれていないのですよね。
学生時代にサヤがイジメられる原因を作ったクズ先輩の顔すら描かれていない。
描かれていたのはサヤのお母さんだけ。
“見せる必要のない顔”が徹底的に描かれていないんです。
だからこそ“見たい顔”が引き立つ。
最後のシーンにはヤラレタなぁ…

あと、この作品エッチシーンはたなか作品にしては少ないですがナニはそれなりに描かれており、途中には1ページを丸ごと使って勇介のをデカデカと描かれている箇所もあるので、電書派さんにはレンタを強くオススメします。
さすがにこのシーンちょっとギョッとしちゃったよw白抜きだとどうなってるんだろう…汗

ちなみにタイトルに書いたBPMというのは音楽のテンポのこと。
クラブでよくかかるような4つ打ちのドッドッドッドッってテンポがだいたいBPM120くらい。
一般的な心拍数(60〜70くらい)の成人がドキドキした時の心拍数もおそらくこれくらいだと思う。
このリズムが鳴り響いているのを想像しながら読むと、臨場感が増すと思います!
蛇足的補足でした。

27

受けが可哀想で可愛い

ネタバレ注意です

おげれつ先生の描く受けのチャラ男くんたちはどれも可愛くて好きなんですが、今回のチャラ男サヤちゃんはそのなかでもとびきりピュアで純真な心の持ち主なんです。見た目じゃ全然わからないんですけど、可愛くて、切なくて、可哀想な子です。

肌が褐色で女の子好きのチャラ男か~見た目があまり好みじゃないなぁ~と最初は思っていましたが、とんでもない。読めば分かりますが、サヤちゃんが可哀想すぎて可愛すぎて読後はサヤちゃーーーん!!泣泣って確実になります。

とにかく、サヤちゃんが私の中のどつぼでした…すごく可愛いくて、切ないんです。

高校の頃なついてた先輩に告白して、キモいとフラれてしまったあといじめを受け高校をやめてしまったサヤちゃん。
それ以来、ゲイである自分を隠して女の子好きを装っていましたが、バーで初めて男の人に、緒方くんに詰め寄られて相当びっくりドキドキしたんではないかと…。

緒方くんが男が好きじゃないと分かっていながら、自分に好意を向けてくれるのが嬉しくて、サヤちゃんが震えながら緒方くんにカミングアウトするシーンが見てて苦しかったです。足の指ぎゅって力入れてるシーンが…めっちゃ勇気出したんだろうなって…

割りと序盤から上手く行くのかと思いきや、いざ緒方くんがサヤちゃんの体を見て可愛いけどちゃんと男なんだと自覚して怖じ気づくという…。サヤちゃん勇気出して告白したのに、サヤちゃんのズボン脱がしてからごめんはひどい。あんまりだ。

サヤちゃんは昔好きだった先輩にキモいと言われたせいで、ずっとそういう自分に自己嫌悪し続けていて、緒方くんがごめんと言っても、キモかったのは俺の方じゃんとフォローするのも辛いです。そのあと緒方くん帰った後の泣き顔が、たなかさんさすがというか…モノローグはないけどサヤちゃんの気持ちがストレートに伝わってきました。

サヤちゃんはキモいと言われ慣れてると緒方くんには大丈夫だと強がっていましたが、最後には緒方くんの、サヤが誰かを好きになるのはキモいことじゃないよ、という言葉に救われてハッピーエンド。

その後、最後までしないけど本編はフェラ止まりで、描き下ろしで二人の初めてが描かれてます。サヤちゃん緒方くんに見ない方がいいとtnkを隠しますが、それに対して緒方くんが興奮すると返した後とか、緒方くんがサヤちゃんに色んな施しをしてる最中に「ありがと」「よかった」「やったぁ」とか答えてるのが泣けました。

以前緒方くんにごめんと言われたことで、また同じ事にならないか不安だったんだろうなと思うと…泣

緒方くんには、もうサヤちゃんを見つけてくれてありがとうございますと言いたい…

二人の繊細な心情が最後まできちんと統一性があって、分かりやすく、読みやすかったです。
とても読みごたえありましたし、読後感も最高でした。

25

リアルな心情

おげれつたなかさんの作品はほとんど読んでますが、この作品が一番好きです。

詳しい設定やあらすじは既出だと思いますので省きます。
攻の勇介。いや~いい男。
イケメンだし優しいし頼りになるし。
そして受の真崎。可愛い!

そして二人の惹かれ合う過程と、男同士故の葛藤。
リアルですね~。
そうだよね、ノーマルがいきなり同性を好きになっても、いざ体の関係もってなった時、そんな漫画みたいにすんなりいかないよね。
好きだけど、同性の体を改めて確認して進めなくなったり。
ほんと、こういう細かい心情を描くのが上手いですよね。

途中かなり切ないですが、ラストはちゃんとハッピーエンドです。
これはまた読みたいと思える作品でした。

19

テクニックと感性がすごい

​ おげれつたなか先生の作品の中では『恋愛ルビの正しいふりかた』の夏生が、一番可愛くて好きなんですが、こちらのサヤもとても可愛い人でした!夏生が好きな方は絶対好きになっちゃうタイプだと思う。一冊まるごとひとつのカップルのお話です。

 無表情なクラブのホールスタッフの緒方と、毎日のように出入りしてはナンパにいそしむ客のサヤ。緒方はサヤに「笑うな」と表情を見抜かれて、サヤは頭を優しくクシュっとされて、お互い気になる対象に…。
 唯一、表情を見抜いてくれるサヤのことを、もっと知りたいと思う緒方が、積極的に係わってゆく中で、サヤのことを「可愛い」「もっと触りたい」と思うようになり、自然な感じでキスして先に進もうとするのですが、あそこを見て可愛いサヤも男だったと言うことを実感して怖じ気づき、過去のトラウマで人の顔を読むことに長けているサヤは、そんな緒方の気持ちを見抜いてしまいます。

 緒方は「ごめん」と謝り最低のことをしたと自分を責めるし、取り返しのつかないことをしてしまったと愕然としている緒方の気持ちが、絵だけでも十分に伝わるのですが、私はどのシーンでも本当に可愛いサヤに萌えまくっていたので、「なんてことするんだ!」と途端に緒方が憎らしくなりました。だけどノンケ男子のリアルな反応って、まさにこの時の緒方みたいだと思うんですよね。それが本当に上手く表現されていて、流石だなぁと思いました。

 物語の中でここぞという瞬間を、まるでスローモーションのように切り取る先生の持ち味は、今作でも健在で、読んでいて本当にドキドキします。サヤの口元だけのコマもあちこちにあるのですが、それだけでサヤが抱える悩みや感情が想像出来ます。先生の巧みなテクニックと繊細な感性を感じました。

 サヤ以外には表情が伝わらない緒方ですが、サヤに関しては顔に感情が出まくっているので、ここまで好きになった相手はサヤが初めてなんだろうなと思う。

 本編では最後まではしていません。フェラまでです。前にサヤのあそこに怖じ気づいてしまった緒方が、ちゃんと男としてのサヤを受け止める覚悟を伝えるために、とても意味がある行為だったと思います。ここでフェラまでで止めておくなんて、先生すごいね。このシーンでノンケ×ゲイのストーリーがとてもリアルになったと思う。

 二人の初めては描き下ろしの「Honey Honey」で堪能出来ます。サヤがめちゃくちゃ可愛くて健気で、緒方がそんなサヤを大切そうに丁寧に抱くのが、見ていてとても幸せな気持ちになりました。

14

受けのサヤが愛しすぎる

サヤ…サヤぁ…サヤーー!!
もうわけもなく連呼したくなります。
サヤ、愛しすぎるよ…

ナンパばかりしているチャラ男のサヤと、表情がわかりにくい寡黙な感じの勇介。
でもサヤには辛い過去があり…

サヤが純粋で可愛くて、過去の話も、勇介がしてしまったことも、すごく可哀想で胸が苦しくなりました。

勇介が終始サヤを傷付けた自分を後悔してくれたことが救い。
サヤの「マジでぇ…やったぁ」など軽い感じなのにすごく重い言葉で、傷付いてきた人生の中の大きな喜びに感じられたことに、胸が熱くなった。

あのとき逃げ出したり諦めたりせずに、最後までサヤを追って気持ちを伝えてくれた勇介、本当にありがとう!
バーにサヤが遊びに来てくれたときの、自然に溢れる勇介の笑顔も最高!

12

「誰かを好きになるのはキモいことじゃないよ。」

ネタバレです。

「誰かを好きになるのはキモいことじゃないよ。」

おげれつたなか先生からのこんな直球メッセージ。
心にどしーんとぶつかって、泣いてしまいました。

人が誰かを好きになる、というこんなに人間的でこんなに素敵で幸せな事を、
同性だからという理由で、他者が「キモい」と断じてしまう。

その残酷さを身を持って知っているからこそ自分を偽っているサヤと、表情筋が死んでいて何を考えているか解らないと言われているユースケ。
そんな不器用な二人のお話。

あらすじは皆さま書いていらっしゃるので、自分の萌えポイントを超厳選して書きます。
ほんとはもっと書きたいけど膨大になるので。

・サヤがゲイである事を告白した時の足の指。
ぎゅっとしてて・・・どんだけ勇気いったんだろうなぁ・・。
それだけにその後のゆーすけの反応が悲しかった。
ノンケ男が想像でヌケたとしても、いざ現実を目にして混乱して・・というのもリアルでした。
その後のサヤの涙がいっぱいに溜まった表情に、こちらもぶわっと。。

・傷つけた事を謝まりにきたゆーすけに対して、今までずっとしてみたかったことが(ハグとかキスなど)できて嬉しかった、ありがとうって お礼を言っちゃう健気さ。どこまであなたいい子なの??

・描き下ろしでのサヤの反応は全てが神がかりに可愛い。
ユースケの上半身裸体でパクパクしてみたり、ありがと・・と、やったぁ、とか。

受けが可愛い!という攻めの気持ちと読者の気持ちがこんなにシンクロできる漫画はそうそうないんじゃないかと思います。

11

愛があふれる

さすがおげれつ先生、お見事な仕上がりになっております
表情筋が不自由なクラブのホール担当の攻と望んでないのに人の顔色を見ることにたけた受のお話です。
自分をわかってくれるさやちゃんに恋をする緒方くん。
普通のblだとノンケが恋に落ちたらそれでハッピーエンドだけどおげれつ先生はそこにリアルをぶち込んできます。
かわいくてそのこで抜けても現実の「男」のカラダに怖気づいてしまう。それを受け入れてしまうさやちゃんが愛おしい。緒方くんの中で勢いがあってイケイケの恋心が、愛に色づけされていく様がとても良かったです。

本当にいいもの見せていただきました。

9

無表情×チャラ男の痛甘いラブストーリー

感情が表情に出ないノンケ攻めと、女の子好きの唇ピアスのチャラ男受けというカップリングです。
クラブのホールスタッフをしている攻めが、客でいつも女の子をナンパしている受けと知り合い、あることがきっかけで朝食を食べさせてもらうことになる…という流れ。

進展はかなりゆっくり目です。攻めの視点のお話なのですが、ノンケだけあって、受けを可愛いと思い始めるのは早いのに、それが恋愛感情だと気づくのが遅いので。
しかも、やっと恋愛感情に気づいても踏ん切りがつかず、受けを傷つける。この展開にすごくムカついて、この時点での攻めへの好感度はとても低かった。
受けは、女の子好きのチャラ男かと思いきや、外見や態度と中身にすごくギャップのあるキャラ。ゲイバレしてハブられた学生時代のトラウマで、いろんなことを諦め、こうしていれば迫害されないというキャラを自分に課している人。健気で臆病で純粋で、こちらの好感度はうなぎ登り。

途中かなりやきもきさせられたぶん、くっついた時の萌えがすごかったです。攻めの視点なのに、完全に受けのほうに感情移入してしまい、キュンキュンでした。
ノンケの攻めに付き合ってもらっている、みたいな気持ちがなかなか抜けないようなのが切ないけれど、今後幸せになってほしいなと思います。

9

おげれつたなか流おとぎ話

やはり良い。
とても良い。

感情が顔に出ないせいで、彼女ができても「何を考えているか分からない」とフラれる勇介。
連夜クラブでナンパをしまくって、過去のトラウマを忘れようとするサヤ。
表紙から滲み出るビッチ臭とは裏腹に純愛ものです。

どうしても読みたい作品が入手困難で「せめてネタバレだけでも!」という場合を除いて、作品を読む前にレビューは読みません。いろいろな意味で驚きたいので、あらすじも極力見ないようにします。なので表紙の雰囲気だけが購入の決め手になります。
そのせいで失敗を幾度も繰り返してきたわけですが、こちらも本当に失敗しました。気に入った作家さんは読破する主義じゃなかったら、今も読んでいなかったかもしれないと思うと怖ろしい。読めてよかった!

クラブ。ナンパ目的で有名な常連客。フロアスタッフ。
この3つが揃っただけで爛れた夜の匂いが充満するわけですが、蓋を開けてみれば全く違うものが見えてきました。
早朝。開店前の小料理屋。湯気のあがるおいしい朝ごはん。
何ということだ。大好きな要素しかない。そこに添えられた美人系イケメンと正統派イケメン。ごちそうすぎます。ここは桃源郷ですか。それとも天竺でしょうか。

表情筋が死んでいる、何を考えているか分からないと言われ続けてきた勇介の、ちょっとした表情も読み取ってくれるサヤを「かわいい」と思い始めて、さりげなく触る勇介の仕草にきゅんきゅん必至です。サヤも本当に可愛くて、浴衣ナイトなんてわたしもうなじに釘付けな色気が溢れているので、胃袋もハートも掴まれた気持ちがよく分かります。
分かるだけにその先がつらい。ノンケとゲイの壁。自分が見ていたのは本当のサヤじゃなくて、男の体ではない想像上のサヤだったのかという逡巡。初めて自分を分かってくれたひとを拒絶して取り返しのつかない傷をつけた後悔。時間、戻したいですよね。時計の針を逆回転で戻ればいいのに。

ただこの先はおとぎ話です。
サヤのトラウマの相手との対決や決着のつけかたも理想的。勇介とサヤのその後も「こうなったらいいな」という理想の形になる。現実では因縁の同級生がたまたまあのタイミングで店に来ることはないでしょうし、殴られてあんな風になるとも思えない。
だけど、だからこそ良かった。決着にリアルを持ち込んだら後味の悪い作品になってしまっていたと思うので、悪を成敗してしあわせになる2人を見られて満足です。

決着がおとぎ話の代わりに、回想シーンはリアルだと思いました。
ちらちらと挟まれるサヤの回想に、さまざまなBL作品を短期間で読みまくったわたしの脳は「もしかして…」とハラハラしていましたが、そうそうレ○プや輪姦や同級生からの肉○器扱いや失恋からのビッチ化なんてないんですよね。ふつうは避けられるし、いじめも「しゃぶ○よ」みたいな方向へはいかないもの。改めて「そうだ、これがリアル!」と思い出せました。

「はじめて男の人にぎゅっとしてもらったり、キスできた。ずっとしてみたかったこと、できて嬉しかったよ。ありがとね」
それだけにサヤのこの台詞が重くのしかかる。これが現実だと突きつけられて、勇介の浅慮がますます浮き彫りになって感じられました。

リアルと理想をうまく組み合わせた素晴らしい作品です。
もしわたしのように「び、ビッチ臭がします!」と倦厭している方がいらっしゃったら、ぜひとも読んでほしい。地雷が多い方ほど好きになると思います。

9

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