条件付き送料無料あり!アニメイト特典付き商品も多数取扱中♪
(旧版を読んでの感想です。)とにかく最初から最後まで目の離せない作品でした。ストーリー展開はもちろんのこと、中村先生の洗練されていながら毒も孕んでいて、1つひとつのコマが芸術であるかのような魅惑の絵にも、引き込まれざるを得ないんです。主人公・トリノスが、恐らく彼自身にも説明のできないあまりに複雑で入り乱れた感情を抱いているから、それを表現する絵も自然と混沌とする。でも、様々なものが絡まり合った中でも、何がなんだか分からないとはならず、はっきりとした感情も垣間見える。サーカスというそれそのものがアートである舞台の中で、1人もがく男の姿をこれでもかと表現されていた絵は、本当に美しかったです。
オオナギと、レオと、2人のミシェル。トリノスを取り巻く男達には穏やかな人が多いですね。彼の佇まいがそうさせるのか、団長との情事以外は誰かに何かを無理強いされるということもありません。その一方で、彼が内心に抱える想いは闇が深い。弟のせいで感じていた諦め、彼に対する自分の想いへの恐怖。弟との日々は彼の心身を深く抉り続ける。サーカスにいる限り健全には生きられない自分と、同じ職場でもはつらつと生きられるレオ。私にはトリノスが彼にも単純に好意を感じているというだけでは済まないように見えました。
そして、2人目のミシェル。弟と重ねそうで、実際重ねて、やっぱり重ならなくて。それでも弟と同じ彼の名前も性別も、健気な性格も、トリノスに影響を与えるには十分な存在で。トリノスが救済されるのを期待しているようで、どこか混沌の中に埋まっていて欲しいような気もする。オオナギも似たような感情を持ってるんじゃ?とか、トリノス自身も心の片隅でそれを望んでいるのでは、なんて思ったり。この複雑な相関図の中で、トリノスが一体どこへ向かうのか、今はとてもワクワクしています。
主人公による現実と幻の倒錯、バラやサーカスといったシンボルの登場など、文学的色彩の強い作品です。
作品を描くにあたって、イメージや直感だけではなく綿密なリサーチがされたのだろうということが伝わってき、一見華やかに見えるサーカスの実情などかなり勉強になりました。
明日美子先生らしい耽美な作品でした。ただし、老人攻め、ヘタレ攻めがあまり好きではないので、カップリングは特に惹かれるところはありませんでした。
旧版未読。
ってか旧版と新装版の表紙の雰囲気全然違いますねΣ( ̄□ ̄)!
中村明日美子さんの妖しくも美しい描写とサーカスが合わさって…なんというか…すごい(語彙力orz)。
トリノスのことが好きなのに、素直になれなくて、からかったりしていたプリマの女の子、何気に気に入ってたので空中ブランコから落ちた時はショックでした。
でも生きてたの分かって良かった!
しかもちゃんと前に進んでる( *˙ω˙*)و グッ!
ってか、この子の客とトリノスの客の差が酷かった…。
ピエロのトリノスに初めてついた客は紳士なオオナギさん。
綺麗に身なりを整えさせてくれ、美味しい食事も与えてくれた。
かたやミナの客は変態サディスト。
縛るは序の口、ミナに放尿させて、それが掛かったケーキを食べさせたり…。
なんだろ、二人の客にしてもそうだけど、対称的な関係性が作品内に散りばめられてる。
弟とトリノスの比較。
飛ぶこと、落ちること。
生きている人と死んだ人。
中々にドロドロしてて…どこか危うい。
その中でトリノスとジャグラーのレオとの関係がホッとする。
描き下ろしSSもこの二人。
言葉は無いけど優しい雰囲気。
2巻で完結作品のようなので続き読むぞー。
全て通して買うと幸福になれるのが、新装版「中村明日美子コレクション」シリーズ。全てつながっていく表紙絵とかそれだけでワクワクしますよね。
このⅠ(からⅡ)に収録されているのは、明日美子先生のごく初期の作品「コペルニクスの呼吸」。サーカスを舞台にした官能的で耽美な物語です。
現在のフォーマットの完成されたBL作品ばかりを読み慣れた人の中には、苦手だと感じてしまう向きもあるかもしれないほどのアクの強さ。絵柄も今の明日美子先生の絵をもっと尖らせた感じです。
苦手な人はとことん苦手、大好きな人はとことん大好き!といったタイプの作品ですね。
しかし完成度は高く、いったんこの世界にハマってしまうと没入感がすごいのです。ちょっと変わったタイプの作品にチャレンジしてみたい人や、往年の少女漫画好きの面々にも読んでもらいたい作品です。
※以下、上下巻あわせた感想でネタバレあります。BLとしてではなく、作品としての評価が強いです。
それは弟なのか?自分なのか?
現実と非現実の境目をあやういバランスで行き来するタケオですが、物語はトリノス(=タケオ)と弟の関係を本流に、それ以外にもひろがっていきます。
重なる自分と貴方。合わせ鏡はいくつも見られます。
弟はトリノスを愛し、トリノスはミナをうちのめす。
タケオは自分自身に罰を欲し、
その罰を与えてくれるココ。
そのココは弟のミシェルを愛し、
オオナギと同じく、白い肌にはえる傷に欲情する自分を知るミシェル。
ミシェルはココを哀れみ、溺れるタケオの手をつかむ…
自分が誰かにした仕打ちは、またほかの誰かから自分に戻る。
「つないだクサリのように めぐる まわる くり返しループする…」
その人間関係の輪にいないのが、ジャグラーのレオ。
ピエロではなく、クラウンと自分を呼んでくれるレオ。
タケオが想いを寄せる”自分を解き放ってくれるかもしれなかった“レオは、ひとりで旅立っていってしまします。
(そう、JUNE世界は王子様が連れ出してくれて救われるなんてふうに甘くないのですよ…)
意外にもその鎖を断ち切るのが、物語のはじまりである団長というは皮肉なものですね。
サーカス(弟)から逃げ、逃げたさきのとりかご(オオナギ)から逃げ、
現実(ミシェル)から逃げ、ついにサーカス(本当の自分)にたどり着くタケオ。
人間てだめだなぁ、びっくりするくらい同じ事をくり返すんですよね。
何回も同じ事をくり返し、ようやく夢から覚める、輪(ピスト)から外れることができる。自己愛からの解放の物語なのかもしれません。
そして、書き下ろしですが、上巻はピカデリーでのささやかな恋のヒトコマ。下巻書き下ろしも、ささやかです。
ただ、その後のタケオやミシェルの世界に吹く風や日のひかりを感じられ、きっとこのお話が苦手たっだ方には救いになると思いますよ。
中村明日美子先生がデビュー15周年ということで新装版として発売された今作品。明日美子さんならではの繊細で美しい色遣いの表紙に、思わず目を奪われました。
実は中村先生の古い作品は読んだことがなく、旧版も持っていなかったのでフェアに乗っかりこれ幸いと購入してみました。
ちなみにアニメイトさんで「太田出版×アニメイト」のフェアが開催されていたので、アニメイトさんで購入してみました。8冊…。買えるかな。イヤ、たぶん買うと思うけど。
内容は旧版の方で書いてくださっていますが、一応ざっくりと。
とあるサーカスにピエロとして在籍しているトリノス。
サーカスでありながら陰で団員に客を取らせている団長ですが、その団長に飼われる形でトリノスはひっそりと生きています。
そんな怠惰な空気感の漂うサーカス団に、一人のジャグラー・レオが入団してきます。レオのジャグラーとしてのプライドや、真摯に訓練を繰り返す姿に、かつてサーカス団の一員として心血を注いでいた自分を振り返るようになっていきます。
が、日本人外交官・オオナギに見初められ、愛人として引き取られることに。そこから彼の生活が一変し…。
というお話でした。
中村作品で人気の高い作品と言えば「同級生」シリーズが挙げられると思いますが、同作品のように優しい空気感がお好きな方にはお勧めできない、ダークで、狂気に満ちた作品です。
また明日美子さんの絵柄は好みがはっきり分かれる作家さんだと思いますが、この作品はデビュー作ということもあり(2002年発行)、絵柄も今のものとは異なりさらに癖のある絵柄で苦手な方も多いのでは、と思います。
ですが人間の「黒さ」を浮き彫りにした、緻密でどっしりとしたストーリー展開には圧倒されました。こういうダークな話の方が中村さんの本質なのかもしれません。
女性との絡みもありますし、痛い表現もある。読み手を選ぶ作品でしょう。非BLに分類されているようですが、それも納得です。
「萌え」があるかと言われれば個人的な答えは否なので評価に悩むのですが、一つの物語として読むと、流石と言わざるを得ない素晴らしい作品でした。
団員を食い物にし、私腹を肥やす団長。
「プリマ」とは名ばかりの、実際は体を売り親の借金を返しているミナ。
過去の経験から、逃げ、隠れるように生きているトリノス。
自分の性癖を隠すために偽装結婚したオオナギ。
自分に非があるわけでもないのに婚約破棄され、オオナギにも良いように利用され、壊れてしまったココ。
楽な方へ流され、きっかけがあればどこまでも堕ちていってしまう、人間の本質やブラックさを正面からとらえた作品でした。
書き下ろしは『la sieste』。
トリノスとレオの日常が描かれています。特に言葉はなく、二人の間に流れるお互いを思いやる(BL的な意味ではない)優しい空気に、本編の殺伐とした気持ちが少しほっこりしました。
絵柄は今の絵柄で、非常に美しかったです。そしてセリフがなくともここまで表現できる明日美子さんにも脱帽です。
評価は悩みましたが、一つの作品としての評価で、☆5つを。