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kaori no keisho
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
上下巻同時発売のこの作品。とてもお洒落な装丁です。モノクロ調のイラストに文字は赤く。シルバーの帯が掛り、カバー下は黒とシルバーでまとめた、小説のような雰囲気です。
*ネタばれ注意*
忍を犯した羞恥から距離を置いていた竹蔵の元に、忍が突然現れて狂い始めた2人の関係。この巻であの日現れた理由がわかります。あの薫りを纏い忍の帰りを待つ妻の茉莉子。竹蔵に犯された日を忘れられなかった忍。茉莉子を最後まで抱くことができませんでした。
9話で初めて忍の心情がモノローグで語られます。「闇に犯される」「闇が何者かわからないと決めたのだ」。けれども、竹蔵が『他人』に情事を見せつけたことで、2人の関係が茉莉子にばれてしまいます。DNA鑑定書を前に「哀れな気分だわ」と醜悪に微笑む茉莉子。ここで初めて顔を見せます。ずっと描かれなかった茉莉子の顔が、こんな顔だったなんて!夫にも義弟にも要にも優しかった茉莉子。穏やかな優しい顔を想像していました。いや、きっと本来はそういう顔の人なのでしょう。明日美子先生は見せ方が本当に上手いです。
忍は最後にすると決意して、今度は竹蔵に目隠しをして抱かれます。何度も何度も・・・。そうして『おしまい』にしようとした翌朝、鑑定書を竹蔵に見られてしまい、ひどく動揺した忍は、本当の兄弟だとわかってもなお「愛してる」「にいさんを愛してるんだ」と訴える竹蔵をとうとう受け入れるのです。もしも鑑定書を見られていなかったら、また何事もなかったように過ごすつもりだったのでしょうか?それとも・・・。
結末には賛否あるでしょう。事故なのか自殺なのか。忍を失ってから届けられる、本心が綴られた手紙。JUNEの頃にはよくあったような終幕です。本当は続いてほしかった。2人で生きる道を用意して欲しかった。だけど、こんな終わり方をしたことで、私はきっと何度もこの作品を読むことになるのでしょう。
書き下ろしで、忍の息子の要が、父たちと同じような、けれどもまるで愛のないプレイに興じています。いつか要が父たちとは違う選択をする物語を読んでみたいと思いました。
追記 何度も読み返しているうちに、確信に思えてきたので追記します。(あくまで個人的な見解です)
忍も竹蔵も本当の兄弟だと感じていた。2人が何度も「義理の」と口にするのはそれを否定するため。お互いに知っているのは自分だけだと思っていた。竹蔵が要を交わりに加えたのは、要も同じ血を持ち、父の忍に自分と同じような思いを抱いていたから。感じていた疑惑が鑑定書で明らかになった後、忍が竹蔵に目隠しをしたのは、知らないままでいてほしいと望んだから。鑑定書を見た竹蔵はそれを見る前から気付いていたことを「ずっと兄さんを愛してるんだ」と忍に言い聞かせた。
真実を見せないための目隠し、そして彼らを狂わせた薫りは、彼らに流れる『同じ血の薫り』だったのだと思いました。
※こちらは上巻込みのレビューとさせていただきます。
わたしは、近親ものをあまり積極的に読む方ではありません。
中には素晴らしい作品があることも承知していますが、
読後どうしても、喉に細かい小骨が刺さったような
そんな引っ掛かりを感じてしまうのです。
けれど、『薫りの継承』について言えば
そのような引っ掛かりや嫌な感じはなく、
ただ、薄いヴェールのような”薫り”がたちこめる中を
呆然と立ちすくんでいる、そんな読後でした。
序盤から、忍と竹蔵というふたりの兄弟の間のそこここに
ピンとした緊迫感が張り巡らされており、
読み手はある種の緊張感を持って、物語の中へと誘われます。
ふたりが、薫りを纏ったような交わりを持つ関係となり、
交互するようにして
幼い頃の出会い、少年期、学生時代、
そして両親の死の直後の描写が、丁寧に重ねられていきます。
緊迫感の中に含まれている”薫り”の密度が、
回想毎に、段々濃くなっていくことに気づけば最後、
高揚を抑えることができなくなっていました。(上巻)
この物語の最大の魅せ場のひとつであり、且つあまりにも危険な描写は
薫りを纏ったような兄弟の交わりを
忍にとっては息子、竹蔵にとっては甥っ子の要に
魅(見)せるシーンにあると個人的には解釈しています。(上巻)
はじめは視覚的に、後々には要自身を兄弟の交わりに加えることによって
要は完全に彼らから”薫りの継承”を受けることになります。
そういった意味で、描き下ろしの要の物語(下巻巻末)は
とても納得のいくもので、けれどどこか物哀しさが含まれていて
明日美子さんの感性の深さに唸らされるばかりでした。
もうひとつの魅せ場は何と言っても、血の真相を知った上で竹蔵が愛を訴え
束の間の蜜月、狂おしい交わりを持つ場面。これにより、
血よりも濃い薫りの交わりが決定づけられたように感じました。(下巻)
兄弟が行き着いた結末の意味や真相については、
明日美子さんが明確にこうだと言えば、その通りだし
読み手がこう思いたいと思えば、そのようになるんだろうけれど
個人的には、ただ、描かれている通りなんだと思います。
事実だけが横たわっているような、そんな印象でした。
恐らくわたしにとってその事実より、もっと大きなものが
心を覆い尽くしているからだろうと思います。
血よりも濃いもの―ふたりの交わりのような薫り、が。
物語は勿論、タイトルから装丁に至るまで
文学、もしくは芸術を感じさせるほどの作品性・完成度の高さ。
評価については、他を思い巡らせることができませんでした。
薫りに導かれるようにして、”神”評価とさせていただきます。
※追記 2015/08/13付
とても浅はかで自己満足なものですが、本作(上下巻)に対する自分なりの落下点を見つけました。コメントをいただいたことにより行き着いたもので、コメント欄に載せております。ネタバレ注意の上、ご興味のある方はご覧ください。
迷宮のリコリスさまへ
もう、本当に長々と自己満足のように綴ってしまって申し訳なさでいっぱいです!
時間を置いたり年を重ねて読めば、また別の解釈が幾つも浮かび上がってきそうで、本当に色々な意味で読ませられ、魅せられる作品ですね♪
読み手に託され、解いていくような難解BLにハマりそうです、わたし(笑)
こんなふうに、作品について意見を交わすことができて、とても光栄だし、有意義で楽しかったです♡
また別の作品で、迷宮のリコリスさまとディスカッションできたら良いな、なんて小さな希望をこめて...本当にありがとうございました!
(*ネタばれ注意*)
冬草さま
わー、こんなに沢山、なんかすみません!!!
明日美子先生のこういった色んな解釈の出来る作品は、いつも心を持っていかれて、ひとりで悶々と思いを巡らせてしまうんです。だから「おおっ」と感じる素敵なレビューを拝見して、嬉しくてついコメントしてしまいました。このようなお返事をいただけるとは思っていなかったので、私のたわいない解釈に申し訳ないと思いつつも、新たなお話が伺えて、とてもワクワクしています。
『薫り=愛≒血』わかる気がします。私の中でも「血は濃い」と「血より濃い」は≒、とても似たものです。彼らの結末は、最後の忍の『優しい』微笑みを思うと、行ってしまったのだなと感じたけれど、もしかしたら次読むときは結末が変わるんじゃないかと、変わるわけがないのに期待してしまい、新しい気持ちで何度も何度も読まされてしまうのです。
暗転での要が、何度も母に「ごめん」と口にするのが切なくて、要の孤独を思うと、最後に忍の気持ちを知ることが出来た竹蔵は、幸せだったのかな。
いくら私があれこれ考えたところで、明日美子先生がこうだよと答えて下さるわけでもないのに考えずにはいられない。そんな危険な薫りをもつ作品でした。
BLで、しかもこういった問題作で、リアルでは中々議論することなど出来ないので、とても貴重な経験になりました。冬草さま、本当にありがとうございました。
(※個人的解釈が大いに含まれている内容です。ネタバレもありますので、読まれる方は十分ご注意ください。)
迷宮のリコリスさまへ
迷宮のリコリスさまの濃密な解釈、自分の中で咀嚼しながらじっくりと読ませていただきました。
迷宮のリコリスと同じように、わたし自身も”血は濃い”と解釈しました。血が濃いからこそ、忍は竹蔵を恐れ嫌悪し、そして愛してしまった。これは物語の根幹となる、揺るがない事実だと思います。
忍が自身に目隠ししたのも、血の濃さを恐れ、その嫌悪から目を背けるものだったのではないかと思っているのですが、血の真相を”事実”として知ったことで、目隠しを取り目を背けることをやめた(『何もかもすとんと腑に落ち...安堵すら覚えた』と忍は言っています)。そして忍はその真相を竹蔵にだけは知らせまいとするかのように今度は彼に目隠しをして、交わりを持つ。これで最後、これでおしまいだと、自分に言い聞かせながら...
ここで忍が、『これでおしまいだ』と思ったのは、血の真相を”事実”として認識したからですよね(”本能”としてとうの昔に気づいていたとわたしも思います)。
そして竹蔵も事実を知るのだけれど、それでも、血の真相を越えるかのように彼らの愛だけは揺るがなかった。だとするのなら、それは”濃い血”の上でこそ成り立つ、より深く”濃い薫り”の交わりがあるからなのだと思うのです。わたしの中では、薫り=血ではなく、端的に言えば、薫り=愛≒血なのだと思っています。
そして、ここまで来たので書いてしまいますが、今回この物語を改めて考えた末に、この兄弟の着地点というか結末の解釈が、ある言葉と共にすとんと心に落ちてきました。それは終盤死神のように意味ありげに再登場を果たした眼帯の男による言葉、『あんたは優しいからねェ』というもの。忍は優しかった。夫であり父親であり、会社を背負う人間として、彼は竹蔵との血や薫りを自分本位にこれからもずっと享受し続けるには、あまりにも優しすぎた。だからこそ、忍はあの結末を”自ら選んだ”のではないかと、そう思うに至ったのです。
すみません、コメント欄に書くにはあまりにも長文で、内容が的を得ていないことも重々承知しているつもりです。けれどコメントを頂いたことで、改めて作品を見直して自分なりの落下点を見つけ、どこかほっとした気持ちでいます。
切っ掛けを下さり、又、ここまで読んでくださった迷宮のリコリスさまには感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
冬草さま
2人の交わりを要に魅せるからのくだり、ものすごく共感しました!
まったく上手く書けそうもなくて要のシーンにはあまり触れなかったのですが、冬草さまのレビューに「おお!」と感動しました。
そして血よりも濃いものが・・・と私も感じていたんですが、
何度か読み返すうちに、やはり「血は濃い」なのかな?って思えてきたんです。
血のつながった要に魅せて交えて、それでも続いた2人の関係が、
他人に見せたことで終わりを迎える。そこに何か意味があるんじゃないかなって思えて。
忍は心のどこかで竹蔵が本当の弟だと感じていたし、
それでも愛してしまっていたのは、実は忍の方だった。
彼らを狂わせた薫りは『同じ血』の薫りだったのかなと・・・。
近親モノは萌属性の基本のキなので、作家さんの味付けによって好みが分かれます。このお話はどの角度から感想を書くにしても憎きネタバレを含まざるを得ません。なので、懐に余裕のある方は賭けで前情報なしにお読みになるか、ある程度物語のハイライトをお知りになりたい方のみ、レビュー群をご参考になさった方がよいのではないかと思うのですが、感想を認めるのはとても難しい作品でした。
『同級生』のようなボーイ・ミーツ・ボーイとは対極に位置するこの作品は、宿命を背負った二人の哀しい物語。同性であり、(義理にしても)血縁でもある者同士が無条件に惹かれあう。本来ならば当事者すら受け入れがたい官能の愉悦に溺れる時、兄は初めての時に視界を塞がれていたように、目隠しをし続ける。視覚を封印し、残る全ての感覚で弟を感じるという行為に、彼ら二人が「見たくない」事実への伏線が読みとれます。
タイトルを飾り、かつカギを握るモチーフとして、「薫り」という言葉が使われていますが、「香」ではなく「薫」の字を使っているところに作者の意図を窺わせます。「薫陶」の「薫」、他者を感化する。これについては忍(兄)の息子、要がその薫りを継承する者として描かれていますし、名前自体もそれを外してしまったらバラバラに分解してしまう扇の「要」だと思うと興味深いのですが、継承するものが一体何なのか、未だ明確に突き止められてはいません。「同性愛」?「近親相姦」?
また、忍の友人達との旅行に同行した竹蔵が宿泊先で遭遇し、未遂ではありますが性の手ほどきを受けた眼帯の男は、いわゆるトリックスターとして機能しているような気がします。物語の終盤、彼は路上生活者のようないでたちで再登場しますが、眼帯男を登場させることによって忍と竹蔵の二人は、己の意志を超えた次元で結びあわされているという一歩退いた神視点(強いフィクション色)を読者に提示していると同時に、彼に忍が「優しい」人間だと言わせることによって、その優しさが自身と愛する者を悲劇に導いたという皮肉を説明しているように解釈しました。
描線の細さやベタと余白のバランス、先生独特の時折ひょうきんにも見える目の表情が軽やかさを思わせ、地面にめり込むほどの打撃こそなかったけれども…重かったです。ストーリー自体は明快な類だと思いますが、全てのエピソードがエンディングへ向かって一気に収斂されていくそのスピード感が凄まじく、希望と絶望が同時に託されている終え方が、ありふれていそうなものなのに、予想もできたはずなのに、大変衝撃的に感じてしまいました。近親モノはこうであって欲しいと密かに求めていた結末でありながら、これほどまでに叩きのめされてしまうとは全く予想だにしなかったです。
お決まりの設定がその枠を超えて初めて、読む者が心揺さぶられる真の「物語」となる。その極致だと思います。(個人的には設定で作品を選ぶことに躊躇してしまうタイプですが。)
上下巻、同時発売だと続巻を待たなくていいので嬉しいです。
あ、ちなみにどの特典が良いか悩み、結局ファイルを選びアニメガさんで購入しました。アニメガさんで上下巻同時購入するとファイルがいただけますが、A4サイズで、表が上巻の表紙の忍、裏が下巻の表紙の竹蔵の絵柄でした。美しい絵柄が大きいサイズで堪能できてかなり満足です☆
他の特典はどうだったのか、ちょい気になりますねwww
さて下巻の内容ですが。
相変わらず目を隠し、自身の気持ちから目をそむけ身体の関係だけが続いていた二人ですが、忍の妻・茉莉子が自身の知り合いを竹蔵の妻にと一人のお嬢さんを竹蔵に紹介したことで二人の間にあった脆い関係が崩れ始めます。
彼女に二人の行為を見られたこと、茉莉子に関係がばれたこと、そして忍と竹蔵の二人に関する重大な秘密。
怒涛の流れの中で二人が出した答えに、涙腺が崩壊しました。まさに純愛。
忍以外何も持たない竹蔵とは異なり、忍の葛藤はいかほどだったのでしょう。茉莉子への懺悔の気持ち、世間体、そして竹蔵への愛情とそれに反するモラルの面での葛藤。
こんな関係は良くないと理性では理解できる。
けれど、相手への押さえきれない気持ちはあって。
だから目隠しをして、自分の気持ちに蓋をして、薫りだけで相手を認識する。
なんとも切ない恋心にウルッとしました。
最後、忍はただの事故だったと信じたい。茉莉子へ宛てた手紙経由だったとしても、竹蔵が忍の本心を知ることが出来て、本当に良かった。そして短い間だったとはいえ、目隠しを取り本心をさらけ出したセックスが出来た二人に安堵しました。ゆえに、やっと気持ちが通じたと思った矢先の出来事に竹蔵と共にちょっと放心してしまいました…。
ハピエンと言えるかと言えば、読み手によって受け止め方は異なる結末でした。が、あの終わり方は中村先生ならではの感性なんだとしみじみ。
甘々な雰囲気を好む方にはお勧めしにくいですが、それでもさすがと言わざるを得ない、神作品でした。
読み始めるやいなや、普段私をよろっている趣味嗜好や萌えツボは彼方へと吹き飛ばされ、裸の心だけが物語の強烈な磁場に引き込まれてゆくのを感じました。
恋は暴力なのだと、それを経験したことのない者にまで、これほどの説得力でうったえてくる物語を、私は知りません。
読み終えた今、ふたりの兄弟が抗いがたくひかれあったことが、必然であり当然であったと思えるのは、卓越した表現のためだけではなく、この作品に飲み込まれるように心を奪われた、私の読書体験そのものが、まるで狂気の恋のようであったからではないでしょうか。
読者の高次の体験までが、物語の成功のために仕組まれたものだとしたら、こんな恐ろしい才能と時代を共有できた幸せに、私は身震いを禁じ得ません。
※上巻にほぼ感想を載せています。
この物語には、いろいろ解釈に迷う部分が出てきますので、こちらにはそれの覚え書きとして。ネタバレ注意です。
ほかの方のレヴューでも書かれていた、銀行の前にいた眼帯の男が忍にかけた「あんたは優しいからねェ」とのことば。
これの対になるのが、別荘ベランダで竹蔵とはるかが話すシーンなのでは、と。
このときに竹蔵は『銀河鉄道の夜』のエピソードをひきあいに、「そんな気持ちにとてもなれないな、僕は」と語ります。
(これも、カンパネルラとジョバンニの旅と、忍と竹蔵の逃避行とその後を暗示させるかのよう?)
そして、それを受けてはるかが言う「竹蔵さんはやさしいんですね」という台詞につながります。
竹蔵はむしろやさしくはなく、エゴイスティックに生きており、ゆえにふたりは禁忌をこえて結ばれたけれど、忍はそうではなかったということなのでしょうか。
忍が茉莉子とキスをしている姿を竹蔵に見せつけるシーンと、竹蔵が忍とのセックスをはるかに見せつけるシーンの対比。
竹蔵がついつい女性の小さい足に目がいく描写。
「門扉にさわるな、汚れる」という忍のことば。
深読みすぎかもしれませんが、まだまだこの作品には美味しく食べられるところがありそうです。
そう、この作品の別の魅力としては、そういった自分なりの解釈を読者がふくらませる余地があるところ。明日美子先生が読者を信頼しているからこそ、ですね。
久しぶりに物凄いものを読ませて頂いた。
読み終わって1番はじめに思った事です。その後はもう形容するのが難しい気持ちで一杯になりました。
「狂ってしまっていたのだ この 薫りに」
作中のモノローグでこうあるように、まるで花の薫りに引き寄せられる虫のように、抗えず幾度も求め合う竹蔵と忍。
忍は目隠しをして、闇に犯される。闇の正体は追及しない。
そう固く誓いながら幾度も竹蔵を求めてしまう。
何故こんなに求めてしまうのか、もう狂気の域だと自分たちで分かっていても止められない。
何故二人はこんなにも求め合うのか…とか理由を追及するのはある意味
無粋で無意味なのかもしれない。やっぱり二人にしか分からないんだろうなぁ。
忍の手紙の一節
「初めて会った時から私は 彼を恐れていた
その理由が今ならよく分かる」
私はこれは忍が竹蔵を愛する事は自分にとって破滅の道しかない、と
どこか分かっていたから恐れていたのではないかと思いました。
なので作品全体の印象は、忍にとって命懸けの恋だったという印象です。
悲しいけどあのラスト以外はなかった二人かなと思います。
狂気と孤独と愛に満ちた二人の本当に短い蜜月が、二人にとって
何よりも幸せであったと願わずにはいられません。
竹蔵はこれからとても辛いだろうから、蜜月の時だけでも幸せで
あってほしいです。
息子の要。要によってタイトルの意味がよく分かった気がします。
あと銀行のシーンにいた眼帯の男。この男は上巻に登場したスキー旅行
でホテルで…の男ですよね、たぶん。何故下巻ではあんな状態になって
しまったのか、あの言葉の意味は、と気になってしまいます。
中村先生の才能にひたすら感服させられました。本当に凄い…。
先生また凄い作品待ってます!(笑)
はじめまして!
レビュー興味深く読ませていただきました。
あの眼帯の男、不気味でした!
正体がわからないですしね、客だったのかホテルの関係者だったのか。
妻の茉莉子すら顔が描かれたのが1度だけだったのに、
あの男は最初から鮮明に描かれていたので、どうしても気になってしまいます。
明日美子先生、すごすぎる。。。
私は怒った忍が父親を使って復讐したのかな?と思いました。
読後ホヤホヤ。
あえてどなたのレビューも読まずにまずは打ち出してみます。
この作品については特に、ほのめかすものや小さなことであれネタバレせずに読まれることを私は強くおすすめしたいです。読むことを決めている方や手元にある方は特に。以下、そういったネタバレをレビューの最後まで含みます。本当にうまく文章にできないのですが、自分なりのものです(※上下巻通してのレビューとします)。
※※※ネタバレ※※※
たとえば自分のなかにある答えがわかっていても、
導こうと思えばできるかもしれないとしても、
断じてその道を選んではならないような...
作品を通して流れる生ぬるい空気、手段。香りをまとう者たち。彼らの中だけに漂う甘く危ない薫り。それとともに流れていく刻。行ったり戻ったりする時間。一部を同じ時の中で感じながら、またその薫りを継ぐ者。どれも痛いほどの表現力でみせ話を進めます。
速いのかそうじゃないのかわからないほど激しく体を合わせるふたりのシーン。本から飛び出しそうで冷や冷やするほどです。目を覆い隠されることで気持ちをぶちまけることができる唯一の場だと私はどこからか感じていたのですが、だからその前後にはあんなにも冷気を残すのだろうか...と。そして、鑑定結果を知ったときの気持ちが、なんてことをしてしまったんだ...ではないこと、ここは忘れられません。もしかしたら、彼らはうれしくてたまらなかったのではないか。モノローグにも「安堵すら 覚えた」とあるように。旅行の一連のシーン、氷水のシーン、「兄さんの悪口言うやつがいたら僕は」のシーン、ランドセルを背負って「門扉にさわるな 汚れる」のシーン、どれもここでふわっと思い出されました。
下巻に移れば胸の奥がどんどん痛くなってくるし、のどのあたりが詰まるのですが、それをも含んだすばらしいエンディングが見られたと思っています。彼らが一緒になるという選択の良し悪しは別にして、小さいころから背負うものが大きく孤独だった彼はきっと "今が一番シアワセ" だったんじゃないだろうか。一方の彼には行き場のない悲しみが残るけれど、ラストで本当の想いを確かに受け取ったことで、この先いつかきっと、希望を持って進めるのではないか。私は一読後の今、そう感じています。また薫りを継いだもうひとりの彼は、なにを、だれを選んでいくのだろう。幸せは彼らのなかにあり、彼ら以外の誰にも決められないのだから。
自分の気持ちとしてはこの作品に評価など必要ないというか、してはならない気さえするのですが、評価をするとすれば。私にとっては神以外に考えられない作品。読み返すたびに違う思い、違う感じ方が生まれそうだとも思っています。それがこの作品の凄味であり、おもしろさだと予感してまずは本を閉じました。
「兄さん!」と呼ばれて振り返った忍の笑顔は本当に美しく穏やかだった。竹蔵にしか見せたことのないものだったんだろうな。
上下巻合わせての感想です。
人気な作家さんとは知ってたんだけど
中村先生の本は初めて読みました。
不快になる人がいたらすいません!
絵が苦手だったんです・・・
ファンの方ごめんなさい!
でもこの本を読んで他の本も読んでみようかな
という気になりました。
絵がどうとかいう問題じゃなかった・・・
インパクトがすごくて読んだ後ぼーっとしてました。
今でも上手に感想が言えません。
すごかった・・・としか・・・・
BLとか萌えとか超えてると思います。
私みたいに絵で苦手という人がいたら読んでほしいな~
と思いました!
BLというジャンルの漫画作品であるというよりは、凝った絵本や単館系シネマの方が近いような性質の作品です。ストーリーが軽視されているというわけではありませんが、粗筋やプロットの面白さを云々するよりは、一コマ一コマ、一ページ一ページの絵の美しさと、印象的な小物使い、そこから香り立つ気配を堪能するためのものに思えました。(上巻のレビューにも書きましたが、本当にこれは紙で購入して正解でした)
ラストはショッキングで、胸にグッと迫るものがあるのですが、これはやはりこの終わり方が一番余韻が残るのでしょうね。実際にいつまでも薫りが残っているような気すらします。
攻めが誰で受けが誰で当て馬が誰で…とか萌えとか近親モノとか…そういった属性に当てはめて語りたくない作品です。
これはエロではなく「官能」の世界でした。完璧。
迷宮のリコリス
更に追記(自分の記録のために書くので、コメント欄で)
『他人』の描かれ方がずっと気にかかっていました。眼帯の男とはるか。眼帯男は忍に、はるかは竹蔵に「優しい」と口にしますが、忍も竹蔵もこの2人に対して優しいそぶりさえ見せていません。2人の間にある『薫り』を知らない『他人』が、その中に入り込もうとすることに対する嫌悪が、忍は眼帯男の人生を転落させ、竹蔵は情事を見せることで復讐(仕返し?牽制?上手い言葉が思いつきません)したように感じています。